「ゆかりんとっ☆」
「テンコーのっ!」
「「うきうき幻想郷ー!」」
お詫び:のっけからこんなノリでスミマセヌ
「遂にこのプリンセスゆかりんの本領が発揮される時が来たわよ藍!」
「何言ってるんですか。おちこぼれ意外何者でもありません」
「ゆかりんチョップ!」
「はぐっ!?」
「いいこと? 私は使用人、メイドになるのよ? 純情可憐な少女が必死に労働に勤しむ最中、上司にセクハラされたり無理難題を押し付けられたりしてイヤーンな悲劇のヒロインになるのよ?」
「それって私の事ですか?」
「そしてそんな絶望の最中、汚れたメイド服に身を包んだゆかりんが優しい王子様の手によって救われて・・・・・・きゃーーーーーーーっ☆」
「王子様って誰です?」
「兎に角これからプリンセスゆかりんのめくるめく門番生活が始まるわ! 皆さんチャンネルはそのまま☆」
「あーもう本当に帰って来ないで下さい」
提供:100回死んでもだいじょ~ぶ。の、イナバ薬局の提供でお送りしました。
以上あらすじ。此処からが本編↓
◆
「・・・・・・はっ!?」
「何よ」
「今もの凄く変な夢を見た気がするわ」
「仕事中に寝るな!」
スカーン!
紫は美鈴に頭をぶっ叩かれた。
八雲紫改めやくもゆかりんは、レミリア・スカーレットの命により紅魔館の門番に就任した。何故か門番なのに長袖ロングのメイド服など着ている。それも抜群に似合っております。むふり。
さて、今日まで門番を務めてきた紅美鈴は事故の怪我で養生中の筈なのだが。
「病み上がりなのにきつい突っ込みね中国」
「誰の所為だと思ってるんですか! あと中国言うな年増妖怪!!」
・・・・・・この通り元気である。
というのもメイド長の咲夜が、苦しむ美鈴を見かねて楽になれる薬をわざわざ永遠亭まで足を運んで貰って来てくれたのだ。普段は厳しいメイド長の優しい愛情に触れて美鈴は涙したが、咲夜はあくまでも「楽になれる薬」を貰いに行ったつもりだった。「いっそ死んだ方が」とレミリアと二人で話していたという噂もある。なんまんだぶ。
「はぁ、お嬢様は何故こんな奴を雇ったのかしら」
「私の方が頼れるからよ。きゃっ、ゆかりん自分で言っちゃった☆」
「・・・・・・くっ、新入りが生意気な!」
美鈴は頭から湯気を立ち上らせたが手を出そうとはしなかった。
何しろ実力の差は歴然、負けは必然である。下手に勝負を挑んでまた全身骨折させられてはたまらない。
「(ちらり)」
美鈴は横目で「八雲紫」を見る。
怪しくも美しく、妖絶な魅力が溢れる風貌。
完璧なるプロポーション(特に胸の辺り)
そして圧倒的な戦闘能力・・・・・・。
紫は門番として兼ね備えておきたい三要素を全て持ち合わせていた。当然どの要素でも美鈴には勝ち目が無い。
「(くっ、とんでもない奴が来てしまったわ。私にとっちゃ死活問題よ)」
「ふんふ~ん♪」
「(この一見莫迦に見える隙間妖怪が、真面目に門番なんかやった日には私の居場所が無くなりかねないわ)」
「♪ 誰だっ、誰だっ、誰だ~♪」
「(何処かで私の存在をアピールしないと此処から追い出されちゃう)」
「♪ 隙間開けば踊る影~♪」
「(その為には侵入者を迅速に排除して・・・・・・)」
「♪ そーれーはプリン~セス~♪」
「(咲夜さんやお嬢様に良いところ見せなきゃ!)」
「♪ ゆっかり~ん♪」
スカーン!
「はぶっ」
本日何発目か分からない拳骨が紫の脳天に炸裂した。
「やかましぃっ! 火の鳥に焼かれたいの!?」
「わぁぁぁん、美鈴にぶたれたー!」
ゆかりんは近くに居た見回りメイドAに泣き付く。
「・・・・・・門番長、今日はまだ一日目なんですから多めに見てあげましょうよ。よしよし、怖かったわねー」
「えーんえーん(ニヤニヤ)」
「もう嫌だー! 助けて咲夜さぁーん!!」
・・・・・・この二人は意外と良いコンビネーションをしている。
と、養生中のパチュリーは窓から見て思った。
◇
「さくや~」
「はいっ! 何か御用でしょうかお嬢様」
一方レミリアの私室では、咲夜が「れみりゃ」お嬢様の為に疾走していた。
「ゆかりんとめいりんはなかよくしてる??」
「勿論です。あの二人は仲が悪そうで実は良いのです。故に心配は無用ですよ」
「そっかー」
鼻の下をデレデレに伸ばしたメイド長は、一分一秒でもれみりゃお嬢様と一緒に居ようと四苦八苦していた。他人の話はさっさと切り上げ、二人で話せる楽しい話題に強制移行させるのだ。恐るべし。
「ねえさくや~、ご本よんで~」
「畏まりました」
来た来た来たぁ!
咲夜は心の中でガッツポーズをする。
れみりゃお嬢様にご本を読み聞かせるということは、膝の上にれみりゃお嬢様を乗せて鼻血を流せるという事である。毎回その殺人的な可愛らしさと言動や振る舞いに咲夜は再起不能に陥る。
「わ~い、じゃあこれー」
「はいはいお嬢様。慌てなくても大丈夫ですよ~」
うっへへへへへへ。
最早咲夜は爆発寸前である(鼻の穴とか)
「はい、じゃあお嬢様此方にどうぞ~」
ポンポン。
咲夜はエプロンを叩いて「バッチコイや!」といった表情でスタンバイOK。れみりゃお嬢様鼻血池地獄に堕つ。
・・・・・・しかし彼女は忘れていた。
今の紅魔館には幻想郷一危険で禍々しい、「あの」人物が居ることを。
「うふふ、じゃあ遠慮なく」
「そう遠慮なく・・・・・・って重っ!? お、お嬢様何時の間にこんなに成長を・・・・・・!?」
咲夜は脳内でれみりゃお嬢様との未成年以下禁止行為を妄想しつつ、手探りで膝を探る。
ふにっ。
何ですかこの妙な感触は。
「あぁん、咲夜メイド長ったら積極的。ゆかりん困っちゃう・・・・・・☆」
「・・・・・・死ねやぁぁあぁぁぁああぁぁあ!!」
少女撲殺中・・・・・・
「さ、お嬢様っ♪ 邪魔者も居なくなりましたのでゆっくりと・・・・・・」
「す~・・・す~・・・・・・」
「URYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!」
少女巻き戻し中・・・・・・
「あれ、さくやどうしたの? ご本は??」
「はぁ、はぁ・・・・・・はい、今からお読みしますよ~♪」
やくもゆかりん、暁に死す。
◇
「お腹空いたわ・・・・・・」
「誰の所為だと思ってるんですか! 監督不届きで私まで巻き添え食ったんですよ!?」
ぴゅーっ。
美鈴の頭から噴水のように血が噴き出す。
ぐぅーっ。
紫の腹の虫が鳴る。
「ああ、咲夜さんの愛が痛い・・・・・・」
「ああ、私のお腹が悲鳴を上げてる・・・・・・」
「・・・・・・あれだけ切り刻まれて何故貴方は無傷なのかしら」
「肉体と外傷の境界を弄ったのよ」
何でもありなのかこの隙間妖怪。
「じゃあ空腹と昼食の境界も弄ってよ」
「駄目」
「何故!」
「食べることは人生最大の喜びの一つ。それを無くすなんて勿体無いわ」
「断食は一人でやって」
「太るわよ」
「誰が!」
「あの~、ちょっと伺いたいのですが・・・・・・」
二人の会話に第三者の声が割り込む。何処かで聞いたことのあるような声。
「鶏肉ーっ!!」
「きゃああああああああ!!」
そして来訪者は紫に食われた。合掌。
◇
「お嬢様、少々お疲れのようですね」
「うん、ちょっとねむい・・・・・・・」
「今日は昼間から動きましたからね。少々仮眠でも取られますか?」
「ふあぁぁい・・・・・・そうする~・・・・・・」
こすこす。
れみりゃお嬢様は小さな手で目を擦る。
「(あああああっ! そ、そんな・・・そんなとろんとした顔で目を擦るなんて!! わ、私を誘っているのですか!?)」
「さくや~、ベッドにつれてって~・・・・・・」
「YEAHHHHHHHHH!!!」
「ひっ!?」
「あ、し、失礼しました。・・・・・・少し喉が詰まっただけです」
「びっくりした~」
「さ、さ、兎に角ベッドにお連れしますね」
咲夜はれみりゃお嬢様を優しく抱きかかえ、今のレミリアには大きすぎるベッドに寝かせる。
「・・・・・・ねえさくや~」
「はい?」
「さくやは、いっしょにねないの??」
ピーン。
その時何かが咲夜の中で切れた。
「ひ、ひ、ひ、ひひひひひひひひひ」
「・・・・・・さくや? どうしたの??」
「し、し、失礼致しますうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
ドタドタドタガキッ。
ドアノブが壊れた。
バタンドカパリン。
壷が割れた。
「??? へんなさくや」
◇
「はーっ、はーっ、はーっ・・・・・・」
「あらあら、とても部下には見せられない痴態ね」
「!!」
見られた。
誰にも見られてはならないこのやり取りを見られた。
お嬢様と私だけの世界に不法侵入者が現れた。即刻排除せよ。排除せよ。排除セヨ。ハイジョセヨ。
「・・・・・・やくもゆかりん、貴様は最早生かしておけぬ!」
「あら良いの? マスコミが見てる最中に更なる痴態を晒して??」
「!?」
パシャ! パシャ!
その時カメラのシャッター音が咲夜の耳に入った。咲夜は我に返る。
「いやー、これは素晴らしい写真が撮れました!」
「お褒め頂き感謝の極み」
其処に現れたのはブン屋の射命丸文だった。現状ではある意味紫よりも危険な人物である。
「先程足を食い千切られそうになったときはどうなることかと思いましたが・・・・・・やっぱり紅魔館はネタの宝庫ですねー」
「あ、プリンセスゆかりんの記事もちゃんと載せてね☆」
「了解です。よーし、明日は号外をばら撒きますよー!」
「・・・・・・貴方達、此処から生きて出られると思って?」
十六夜咲夜、ブチ切れモード発動。
咲夜はメイド服を靡かせ、大量のナイフを空に舞わせる。
「ああっ、ゆかりん大ピンチ! 上司に社内暴力を振るわれちゃう☆」
「ここは私にお任せを!『天狗流光符・鳥目の術』!!」
カッ!
その瞬間文の手が凄まじい光を放った。まあカメラのフラッシュを焚いただけなんですが。
「くっ!? め、目眩ましとは小癪な!!」
「よし、逃げましょう!」
ギュ~ン ホワ~ン
文の声と共に妙な音がしたかと思うと、咲夜の視界が回復した。
「・・・・・・あら?」
そして咲夜の前から二人の姿は消え、呆然とした表情で直立する美鈴が一人居るだけであった。
「・・・・・・貴方も、見たわね」
「え、え、え!? し、ししししししりません事実無根です!! お嬢様を手込めにしようとしたとか奇声を発したとかそんなことは私にはさっぱり!!」
「 死 ぬ が よ い 」
紅美鈴、暁に死す。
◇
「いやー、助かりました」
「これくらいどうってことないわ。貴方だって大した物よ」
紫と文は隙間から抜け出す。館の中では美鈴の処刑が始まった頃だろう。
「いやしかし貴方が門番とは驚きました。一体何があったんです?」
「えーとねー」
間。
「・・・・・・偶には労働も良いと思ったのよ」
「・・・・・・裏がありそうですね。この件についてはまたゆっくりと」
「あ、ちょっと待ちなさ・・・・・・」
しかし文は紫の言葉を無視して飛び去った。
「・・・・・・まあ良いわ。プリンセスゆかりんの名を幻想郷に知れ渡らせるチャンスだと思えば」
この期に及んでもプラス思考のやくもゆかりんである。
「あーあ、お腹空いたわ。ちょっと早いけど夕飯にしましょ」
ギュ~ン
紫は隙間を開いて何処かへ消えてしまった。
そして紅魔館の門番は誰も居なくなった。
◇
はてさて、果たしてやくもゆかりんはこのまま門番を続けられるのか?
・・・・・・私にも分かりません。
続く、かも。
*おまけ*
「妖夢ーっ!」
「何事ですか幽々子様? そんなに慌てて・・・・・・」
「た、たたた大変よ! 一大事よ!! 私達の平穏な生活に危機到来よ!!!」
幽々子様が此処まで慌てられるなんて・・・・・・。
もしかして新たな異変!?
「・・・・・・分かりました。お供します幽々子様」
「早く来て!」
場所は移って西行寺家の台所。
「・・・・・・こ、これは!?」
なんと先刻私が手塩に掛けて作った夕食の品々が、全て跡形も無く食い荒らされていたのだ!
「うう、もう駄目だわ。私達はこのまま餓え死ぬのね・・・・・・」
ぷちっ。
妖夢の中で何かが切れた。
「ゆ・ゆ・こ・さ・ま・?」
「何よ~、お腹空いて動けないのに~・・・・・・」
「・・・・・・幽々子様が大食漢で食い意地が張っていることはこの際許しましょう。しかし食卓に並ぶ前に苦労して作った料理の品々を、つまみ食いと称して全て平らげるのは許せません!!」
「え、え!? ちょ・・・・・・ちょっと待って妖夢! これは私じゃないわ!!」
「今「これは」と、言いましたか?」
「あ、い・・・・・・と、兎に角今回ばっかりは違うの! 信じて妖夢!!」
「私が何時もどれだけ苦労して幽々子様の夕食を用意していると思ってるんですか!」
「ひ、酷いわ妖夢! そんな目で私を見ていたの!?」
「今晩は夕食抜きです! 反省してください!!」
「そんな!? 夕食を食べずに寝たら私死んじゃうわ!!」
「既に死んでます! ・・・・・・私は今から明日の食料の買出しに行きますので、今日は先にお休みになって下さい!!」
「よ、よ~むぅ~~・・・・・・」
─────その時上空にはその様子を笑いながら眺める隙間妖怪の姿があったとさ。
「テンコーのっ!」
「「うきうき幻想郷ー!」」
お詫び:のっけからこんなノリでスミマセヌ
「遂にこのプリンセスゆかりんの本領が発揮される時が来たわよ藍!」
「何言ってるんですか。おちこぼれ意外何者でもありません」
「ゆかりんチョップ!」
「はぐっ!?」
「いいこと? 私は使用人、メイドになるのよ? 純情可憐な少女が必死に労働に勤しむ最中、上司にセクハラされたり無理難題を押し付けられたりしてイヤーンな悲劇のヒロインになるのよ?」
「それって私の事ですか?」
「そしてそんな絶望の最中、汚れたメイド服に身を包んだゆかりんが優しい王子様の手によって救われて・・・・・・きゃーーーーーーーっ☆」
「王子様って誰です?」
「兎に角これからプリンセスゆかりんのめくるめく門番生活が始まるわ! 皆さんチャンネルはそのまま☆」
「あーもう本当に帰って来ないで下さい」
提供:100回死んでもだいじょ~ぶ。の、イナバ薬局の提供でお送りしました。
以上あらすじ。此処からが本編↓
◆
「・・・・・・はっ!?」
「何よ」
「今もの凄く変な夢を見た気がするわ」
「仕事中に寝るな!」
スカーン!
紫は美鈴に頭をぶっ叩かれた。
八雲紫改めやくもゆかりんは、レミリア・スカーレットの命により紅魔館の門番に就任した。何故か門番なのに長袖ロングのメイド服など着ている。それも抜群に似合っております。むふり。
さて、今日まで門番を務めてきた紅美鈴は事故の怪我で養生中の筈なのだが。
「病み上がりなのにきつい突っ込みね中国」
「誰の所為だと思ってるんですか! あと中国言うな年増妖怪!!」
・・・・・・この通り元気である。
というのもメイド長の咲夜が、苦しむ美鈴を見かねて楽になれる薬をわざわざ永遠亭まで足を運んで貰って来てくれたのだ。普段は厳しいメイド長の優しい愛情に触れて美鈴は涙したが、咲夜はあくまでも「楽になれる薬」を貰いに行ったつもりだった。「いっそ死んだ方が」とレミリアと二人で話していたという噂もある。なんまんだぶ。
「はぁ、お嬢様は何故こんな奴を雇ったのかしら」
「私の方が頼れるからよ。きゃっ、ゆかりん自分で言っちゃった☆」
「・・・・・・くっ、新入りが生意気な!」
美鈴は頭から湯気を立ち上らせたが手を出そうとはしなかった。
何しろ実力の差は歴然、負けは必然である。下手に勝負を挑んでまた全身骨折させられてはたまらない。
「(ちらり)」
美鈴は横目で「八雲紫」を見る。
怪しくも美しく、妖絶な魅力が溢れる風貌。
完璧なるプロポーション(特に胸の辺り)
そして圧倒的な戦闘能力・・・・・・。
紫は門番として兼ね備えておきたい三要素を全て持ち合わせていた。当然どの要素でも美鈴には勝ち目が無い。
「(くっ、とんでもない奴が来てしまったわ。私にとっちゃ死活問題よ)」
「ふんふ~ん♪」
「(この一見莫迦に見える隙間妖怪が、真面目に門番なんかやった日には私の居場所が無くなりかねないわ)」
「♪ 誰だっ、誰だっ、誰だ~♪」
「(何処かで私の存在をアピールしないと此処から追い出されちゃう)」
「♪ 隙間開けば踊る影~♪」
「(その為には侵入者を迅速に排除して・・・・・・)」
「♪ そーれーはプリン~セス~♪」
「(咲夜さんやお嬢様に良いところ見せなきゃ!)」
「♪ ゆっかり~ん♪」
スカーン!
「はぶっ」
本日何発目か分からない拳骨が紫の脳天に炸裂した。
「やかましぃっ! 火の鳥に焼かれたいの!?」
「わぁぁぁん、美鈴にぶたれたー!」
ゆかりんは近くに居た見回りメイドAに泣き付く。
「・・・・・・門番長、今日はまだ一日目なんですから多めに見てあげましょうよ。よしよし、怖かったわねー」
「えーんえーん(ニヤニヤ)」
「もう嫌だー! 助けて咲夜さぁーん!!」
・・・・・・この二人は意外と良いコンビネーションをしている。
と、養生中のパチュリーは窓から見て思った。
◇
「さくや~」
「はいっ! 何か御用でしょうかお嬢様」
一方レミリアの私室では、咲夜が「れみりゃ」お嬢様の為に疾走していた。
「ゆかりんとめいりんはなかよくしてる??」
「勿論です。あの二人は仲が悪そうで実は良いのです。故に心配は無用ですよ」
「そっかー」
鼻の下をデレデレに伸ばしたメイド長は、一分一秒でもれみりゃお嬢様と一緒に居ようと四苦八苦していた。他人の話はさっさと切り上げ、二人で話せる楽しい話題に強制移行させるのだ。恐るべし。
「ねえさくや~、ご本よんで~」
「畏まりました」
来た来た来たぁ!
咲夜は心の中でガッツポーズをする。
れみりゃお嬢様にご本を読み聞かせるということは、膝の上にれみりゃお嬢様を乗せて鼻血を流せるという事である。毎回その殺人的な可愛らしさと言動や振る舞いに咲夜は再起不能に陥る。
「わ~い、じゃあこれー」
「はいはいお嬢様。慌てなくても大丈夫ですよ~」
うっへへへへへへ。
最早咲夜は爆発寸前である(鼻の穴とか)
「はい、じゃあお嬢様此方にどうぞ~」
ポンポン。
咲夜はエプロンを叩いて「バッチコイや!」といった表情でスタンバイOK。れみりゃお嬢様鼻血池地獄に堕つ。
・・・・・・しかし彼女は忘れていた。
今の紅魔館には幻想郷一危険で禍々しい、「あの」人物が居ることを。
「うふふ、じゃあ遠慮なく」
「そう遠慮なく・・・・・・って重っ!? お、お嬢様何時の間にこんなに成長を・・・・・・!?」
咲夜は脳内でれみりゃお嬢様との未成年以下禁止行為を妄想しつつ、手探りで膝を探る。
ふにっ。
何ですかこの妙な感触は。
「あぁん、咲夜メイド長ったら積極的。ゆかりん困っちゃう・・・・・・☆」
「・・・・・・死ねやぁぁあぁぁぁああぁぁあ!!」
少女撲殺中・・・・・・
「さ、お嬢様っ♪ 邪魔者も居なくなりましたのでゆっくりと・・・・・・」
「す~・・・す~・・・・・・」
「URYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!」
少女巻き戻し中・・・・・・
「あれ、さくやどうしたの? ご本は??」
「はぁ、はぁ・・・・・・はい、今からお読みしますよ~♪」
やくもゆかりん、暁に死す。
◇
「お腹空いたわ・・・・・・」
「誰の所為だと思ってるんですか! 監督不届きで私まで巻き添え食ったんですよ!?」
ぴゅーっ。
美鈴の頭から噴水のように血が噴き出す。
ぐぅーっ。
紫の腹の虫が鳴る。
「ああ、咲夜さんの愛が痛い・・・・・・」
「ああ、私のお腹が悲鳴を上げてる・・・・・・」
「・・・・・・あれだけ切り刻まれて何故貴方は無傷なのかしら」
「肉体と外傷の境界を弄ったのよ」
何でもありなのかこの隙間妖怪。
「じゃあ空腹と昼食の境界も弄ってよ」
「駄目」
「何故!」
「食べることは人生最大の喜びの一つ。それを無くすなんて勿体無いわ」
「断食は一人でやって」
「太るわよ」
「誰が!」
「あの~、ちょっと伺いたいのですが・・・・・・」
二人の会話に第三者の声が割り込む。何処かで聞いたことのあるような声。
「鶏肉ーっ!!」
「きゃああああああああ!!」
そして来訪者は紫に食われた。合掌。
◇
「お嬢様、少々お疲れのようですね」
「うん、ちょっとねむい・・・・・・・」
「今日は昼間から動きましたからね。少々仮眠でも取られますか?」
「ふあぁぁい・・・・・・そうする~・・・・・・」
こすこす。
れみりゃお嬢様は小さな手で目を擦る。
「(あああああっ! そ、そんな・・・そんなとろんとした顔で目を擦るなんて!! わ、私を誘っているのですか!?)」
「さくや~、ベッドにつれてって~・・・・・・」
「YEAHHHHHHHHH!!!」
「ひっ!?」
「あ、し、失礼しました。・・・・・・少し喉が詰まっただけです」
「びっくりした~」
「さ、さ、兎に角ベッドにお連れしますね」
咲夜はれみりゃお嬢様を優しく抱きかかえ、今のレミリアには大きすぎるベッドに寝かせる。
「・・・・・・ねえさくや~」
「はい?」
「さくやは、いっしょにねないの??」
ピーン。
その時何かが咲夜の中で切れた。
「ひ、ひ、ひ、ひひひひひひひひひ」
「・・・・・・さくや? どうしたの??」
「し、し、失礼致しますうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
ドタドタドタガキッ。
ドアノブが壊れた。
バタンドカパリン。
壷が割れた。
「??? へんなさくや」
◇
「はーっ、はーっ、はーっ・・・・・・」
「あらあら、とても部下には見せられない痴態ね」
「!!」
見られた。
誰にも見られてはならないこのやり取りを見られた。
お嬢様と私だけの世界に不法侵入者が現れた。即刻排除せよ。排除せよ。排除セヨ。ハイジョセヨ。
「・・・・・・やくもゆかりん、貴様は最早生かしておけぬ!」
「あら良いの? マスコミが見てる最中に更なる痴態を晒して??」
「!?」
パシャ! パシャ!
その時カメラのシャッター音が咲夜の耳に入った。咲夜は我に返る。
「いやー、これは素晴らしい写真が撮れました!」
「お褒め頂き感謝の極み」
其処に現れたのはブン屋の射命丸文だった。現状ではある意味紫よりも危険な人物である。
「先程足を食い千切られそうになったときはどうなることかと思いましたが・・・・・・やっぱり紅魔館はネタの宝庫ですねー」
「あ、プリンセスゆかりんの記事もちゃんと載せてね☆」
「了解です。よーし、明日は号外をばら撒きますよー!」
「・・・・・・貴方達、此処から生きて出られると思って?」
十六夜咲夜、ブチ切れモード発動。
咲夜はメイド服を靡かせ、大量のナイフを空に舞わせる。
「ああっ、ゆかりん大ピンチ! 上司に社内暴力を振るわれちゃう☆」
「ここは私にお任せを!『天狗流光符・鳥目の術』!!」
カッ!
その瞬間文の手が凄まじい光を放った。まあカメラのフラッシュを焚いただけなんですが。
「くっ!? め、目眩ましとは小癪な!!」
「よし、逃げましょう!」
ギュ~ン ホワ~ン
文の声と共に妙な音がしたかと思うと、咲夜の視界が回復した。
「・・・・・・あら?」
そして咲夜の前から二人の姿は消え、呆然とした表情で直立する美鈴が一人居るだけであった。
「・・・・・・貴方も、見たわね」
「え、え、え!? し、ししししししりません事実無根です!! お嬢様を手込めにしようとしたとか奇声を発したとかそんなことは私にはさっぱり!!」
「 死 ぬ が よ い 」
紅美鈴、暁に死す。
◇
「いやー、助かりました」
「これくらいどうってことないわ。貴方だって大した物よ」
紫と文は隙間から抜け出す。館の中では美鈴の処刑が始まった頃だろう。
「いやしかし貴方が門番とは驚きました。一体何があったんです?」
「えーとねー」
間。
「・・・・・・偶には労働も良いと思ったのよ」
「・・・・・・裏がありそうですね。この件についてはまたゆっくりと」
「あ、ちょっと待ちなさ・・・・・・」
しかし文は紫の言葉を無視して飛び去った。
「・・・・・・まあ良いわ。プリンセスゆかりんの名を幻想郷に知れ渡らせるチャンスだと思えば」
この期に及んでもプラス思考のやくもゆかりんである。
「あーあ、お腹空いたわ。ちょっと早いけど夕飯にしましょ」
ギュ~ン
紫は隙間を開いて何処かへ消えてしまった。
そして紅魔館の門番は誰も居なくなった。
◇
はてさて、果たしてやくもゆかりんはこのまま門番を続けられるのか?
・・・・・・私にも分かりません。
続く、かも。
*おまけ*
「妖夢ーっ!」
「何事ですか幽々子様? そんなに慌てて・・・・・・」
「た、たたた大変よ! 一大事よ!! 私達の平穏な生活に危機到来よ!!!」
幽々子様が此処まで慌てられるなんて・・・・・・。
もしかして新たな異変!?
「・・・・・・分かりました。お供します幽々子様」
「早く来て!」
場所は移って西行寺家の台所。
「・・・・・・こ、これは!?」
なんと先刻私が手塩に掛けて作った夕食の品々が、全て跡形も無く食い荒らされていたのだ!
「うう、もう駄目だわ。私達はこのまま餓え死ぬのね・・・・・・」
ぷちっ。
妖夢の中で何かが切れた。
「ゆ・ゆ・こ・さ・ま・?」
「何よ~、お腹空いて動けないのに~・・・・・・」
「・・・・・・幽々子様が大食漢で食い意地が張っていることはこの際許しましょう。しかし食卓に並ぶ前に苦労して作った料理の品々を、つまみ食いと称して全て平らげるのは許せません!!」
「え、え!? ちょ・・・・・・ちょっと待って妖夢! これは私じゃないわ!!」
「今「これは」と、言いましたか?」
「あ、い・・・・・・と、兎に角今回ばっかりは違うの! 信じて妖夢!!」
「私が何時もどれだけ苦労して幽々子様の夕食を用意していると思ってるんですか!」
「ひ、酷いわ妖夢! そんな目で私を見ていたの!?」
「今晩は夕食抜きです! 反省してください!!」
「そんな!? 夕食を食べずに寝たら私死んじゃうわ!!」
「既に死んでます! ・・・・・・私は今から明日の食料の買出しに行きますので、今日は先にお休みになって下さい!!」
「よ、よ~むぅ~~・・・・・・」
─────その時上空にはその様子を笑いながら眺める隙間妖怪の姿があったとさ。
最初の部分だけで必殺技の部分まで読んだ美鈴に大うけ。
……ていうかなんで十代の私がわかるの?(サバ読んでませんよ?)
もうゆかりんになってから幻想郷がボロボロですね。
それでももっとやってください。がんばれゆかりん!
つーか陰謀団って今考えると凄い名前だよなーと思う二十代(下一桁0)。
たまに年齢信じてもらえないんですが。
だけど1話での弱弱しさが普段の胡散臭さに戻っちゃったのが残念だよゆかりん。
しかし・・・メイド服姿のゆかりんが描かれた挿絵が欲しい所ですね。
脳内変換じゃ物足りないYO!!!11!!!
どんどんやって下さい。