*東方文花帳参照ネタあり(たぶんこの注意書きはもう必要ないかもしれませんけど)
*東方花映塚ネタあり(恐らくこの注意書きは必要ないかもしれませんけど)
*一部のキャラが、酔って多少壊れています。ご注意を。
*私的設定として、酔った時の上戸を決めています。その他もろもろあります。ご容赦ください。
*恐らくご期待に沿えるような代物ではないので、あまり過度な期待を持たないでください。
今日も今日とで屋台を運んで、営業準備開始。屋台のセッティングをして、釜の準備をして、お酒の準備をして、材料の準備の仕込みを終え、赤提灯に火を灯す。これで、準備良し。
さあ、今日も焼き鳥の撲滅目指して、元気よく歌っていこう!
~一人目と二人目~
「ミスティアさん、お酒と串揚げのお代わりをお願いしますね。」
「あいよ。それにしてもお客さん、今日はよく飲みますね。」
なんとなく嬉しそうに一気飲みをするのは、鳥仲間の常連さん。新聞というものを作っているらしく、そういえば前に私も屋台の事で取材を受けたことがあった気が。でも、紹介してくれた割にはお客さんは増えなかったけど、新聞ってそんな物なのかな?
「今日はようやく今回の原稿があがったんです。後は印刷するだけなんですけど、ここまで来るのが長い道のりだったんですよ。ガセネタを掴まされるは取材拒否の意思で弾幕を浴びせられるはカメラを玩具にされるはと、取材するだけでも散々な目に会いましたからね。」
しみじみと語りだす天狗さんを見ていると、それだけでどれだけ苦労したかが分かる気がするな。ここにもよく疲れた顔をして飲みに来てたし、そのまま無理に酔い潰れようとしていた事もあったっけ。
「様々な障害がありましたが、それでも今日という日を迎えることが出来ました。これを祝わなくて何とする。という訳で、今日は思う存分飲もうと思っているんです。」
「へえー、それは目出度い事なんだね。うん、じゃあ私から一杯ご馳走してあげますね。」
ひょんな事から手に入れた高価なお酒を、天狗さんに出してあげる。本当は滅多に手に入れれないようなお酒なんだけど、こういう時に使わないと勿体無いよね。
美味しそうに飲んでいる天狗さんの為に、景気付けの為に何か歌ってあげようかな?
「女将、適当な酒と串揚げを頼みたい。っと、なんだ先客もいたのか。」
あれ、人里方面でたまに見かける白沢さんだ。初めてのお客さんだけど、来てくれて嬉しいな。この感激を歌に表そうかな?
「なんだとは酷いですね。これでも、私はここの常連なんですよ。」
「悪い、悪い。そう目くじら立てるな、せっかくの酒が不味くなるぞ。」
「それはそうと、慧音さんがこんな所でお酒とは以外ですね。里やその他の守りは良いんですか?」
「別に四六時中里を見張っている訳じゃない。それに、今夜は妹紅が大人しく家にいるから、他所に飲みに行く余裕があると言う訳だ。まあもっとも、もうそろそろ鰻の冬眠時期になるから、噂に聞く八目鰻の串揚げを食べてみなければと思ったのも事実だが。」
何となく、天狗さんが苦い顔をしてこちらをちらっと見た気がするな。なんなんだろう?
「まあ、酒と一緒にお腹に入れば、皆同じですよね。美味しい事には代わりが無いんですが。やっぱり、これは素材というよりもミスティアさん直伝のタレが凄いんですよね、きっと。」
「うん、何を一人でぶつぶつ言っているんだ。それよりも文よ、少し付き合わぬか?」
「いいですよ。たまには取材抜きで他人と飲むのも悪くないですね。」
それじゃあ、天狗さんのお祝いと白沢さんの歓迎の意を込めて、張り切って歌っていこうかな。
~♪♪♪~
「まったく、酷いものですよ。何か都合が悪い事があれば、すぐに焼き鳥だのフライドチキンだのって言い出しますからね。取材するのも命がけですよ。」
「いや、まあ、実際にされかかった訳じゃあないんだろう?」
「妹紅さんにはされそうになりましたけどね。それと、絶食五日目の霊夢さんの視線が酷く危険なものだった事もありました。」
「・・・妹紅の件に関しては、私から謝ろう。多分悪気が無かったはずだから、許してやってくれ。」
~♪♪♪♪~
「それにしても、竹林は危険ですね。たまに流れ弾が飛んできますから。」
「ああ、それもすまない。何度言っても妹紅が輝夜との喧嘩を止めようとしないからな。輝夜の方からも仕掛けてくるし、こればっかりはどうにもならないと思う。」
「よく飽きませんね、二人とも。故あればすぐにでも喧嘩しようとしていません?」
「まったくだ。それに、喧嘩するたびに服を駄目にするんだから、服を毎回用意するこちらの身にもなって欲しいものだよ。」
「へえ、慧音さんが妹紅さんの服を用意していたんですか。」
「仕方ないだろう。住所不定無職の妹紅に服や当て布を買う事ができる訳が無いし、妹紅に原始人のような格好をさせるわけにもいかない。だから、私が用意しなければならないんだが、妹紅の奴め、人の苦労を知らないで毎度毎度簡単に服を駄目にしおって。」
「予想以上に、慧音さんって大変なんですね。」
~♪♪♪♪♪~
「そう言えば、あの二人ってこの前の宴会の席でも喧嘩をしていましたよね。」
「ああ、すまない。酒の席で見苦しいものを見せてしまったな。」
「いえ、いいんです。いつも見慣れた光景ですし。流れ弾が鍋に命中して、皆で二人を袋叩きにしましたし。あれはあれで良い余興だったと思いますよ。」
「せめて暴れる場所くらい選んで欲しいものだ。出会ったら最後、人の家の中だろうが、田畑のド真中だろうが関係なく喧嘩をしようとするからな。後で謝って回る私の身にもなってくれと言いたい。」
「まさか、慧音さんが妹紅の不始末を全部謝って回っているんですか?」
「私がやらなきゃ、誰がやるというんだ。それに、無かった事にしてもいいが、相手に迷惑を掛けているからな。都合の悪い事を隠すというのもなんだし、やはり率直に詫びるべきだと私は思うんだ。」
「慧音さん、頑張ってくださいね。私、応援していますから。」
~♪♪♪♪♪♪~
あれ、天狗さんが白沢さんに泣きながらお酌をしてる。何か起きたていう感じじゃあないけど、どうしたんだろう?
~三人目~
天狗さんが、明日は印刷があるからといって帰っちゃった。もう少し飲んでいけば良かったのにと思ったんだけど、明日に備えなきゃいけないらしい。天狗さんも、気ままなようで意外と忙しいんだなあ。
「しかし、この串揚げは美味しい物だな。どこでこんな物を覚えたんだ?」
「それは企業秘密だよ~」
「まあ、いいか。それで、この屋台は儲かっているのか?」
「ぼちぼちっていう感じかな。お客さんは結構来るんだけど、ちゃんとお勘定を払ってくれる人と、ツケばかりの人がいるの。いつかちゃんと払ってくれるか心配しているんだけどね。」
「・・・まあ、諦めろ。言って聞くような連中だったら誰も苦労はしないだろうし、生きているのが不思議なくらいの財政状況の奴もいる。犬にでも噛まれたと思っておくんだな。」
少し同情する目で、白沢さんが私の心配事を言ってきた。私もそんなような気がしていたんだけど、改めて白沢さんに言われると結構悲しいな。でも、せっかく来てくれたお客さんを無下に追い返す訳にも行かないし、きっといつか払ってくれると信じているんだ。歌でも歌って、気長に待とう。
「おーい、酒を頼めるかい。熱燗と、あと適当なつまみをくれ。」
おやおや、いつぞやの死神さんだ。たまにそこら辺をほっつき歩いているのを見かけるけど、私の屋台に来るのは初めてのような気が。
「ほう、小町か。いいのか、こんな所で油を売っていて。しなければならない仕事が山積みしているんだろう?」
「良いんだ、別に。ちょっとくらい休みを挟んだほうが、作業能率があがるんだ。それに、夜は働く時間じゃなく、休む時間だ。」
「世の中には、残業や徹夜という言葉があるぞ。仕事を溜め込んだら、その分どこかで帳尻を合わせなくてはな。」
「そんな細かい事はいいんだって。やりたくない時に仕事しても、はかどりはしないんだから。やっぱりマイペースが一番だな、うん。」
横で白沢さんが苦い顔をしているのもなんのその。まるで気にした様子も無く、串揚げにかぶりついている。私としても、また霊魂が溢れかえるっていうのは気味が悪くて嫌なんだけど、美味しそうに八目鰻の串揚げを食べてくれるから気にするのを止めようかな。
そうだ、長旅の末ようやく寄航した仕事帰りの船乗りっぽい死神さんのために、労いの意味を込めて歌を歌ってあげよう。
~♪♪♪♪♪♪♪~
「かー、仕事が終わった後の酒は、やっぱり格別だなー!」
「本当にちゃんと仕事をしているのか。たまに人魂を見かけるぞ?」
「している、している。私が決めた一日の仕事量は、多分こなしている。三食昼寝の次にちゃんとこなしていると私は思っているぞ。それに、人魂が出たところでそんなに害が無いんだし、細かい事を一々気にしなさんな。ハゲるぞ。」
「以前の花の異常開花の際、私が里の者達に不安がらせないように事態の説明をするのに、どれだけ苦労したと思っているんだ?」
「苦労性だね。きっと楽に三途の川を渡れるに違いないよ。でも、私のその時の気分しだいだけどな。あっはっは!!」
「ええい、一々私の背中を叩くな。酒が飲めんではないか。」
~♪♪♪♪♪♪♪♪~
「しっかし、あの時は参ったよ。いくら運んでもきりが無いくらい人魂が溢れかえっていたからね。流石のあたいでも、閉口したものさ。」
「その割には、随分とのんびりしていたではないか。」
「そうでもなかったよ。あれはあれで一杯一杯だったからね。運んでも運んでも、一向に減った気がしない。休み休みにやらなくちゃあ、やってられないってもんよ。」
「まあ、それに関しては分からんでもないな。普段のサボり癖についてはどうだが知らんが。」
「四季様も、もう少し融通が利いてくれるといいんだけどなぁ。それは貴方の仕事だとか言って、あれだけの量をあたい一人にやらせようって言うんだから。臨時に他の死神を雇ってくるとかすれば、もっと早く片付くっていうのに。」
「それもそうなんだろうけど、お前も命拾いしたんじゃないのか。雇った死神が小町よりも優秀だったら、今頃クビになっていただろう?」
「違いない。あたいの首は、四季様の頭の頑固さで繋がっているのか。こいつは、けっさくだねぇ。」
「だから、背中を叩くなと言っとるだろう。串揚げが食べれないではないか。」
~♪♪♪♪♪♪♪♪♪~
「そんなにのんびりやっていて、映姫殿は何も言わないのか?」
「いいって、いいって。どうせ四季様だって結構プラプラしているんだから良いんだって。それに、死者達にあの説教を聞かせなくちゃならないと思うと、なんだか気が引けるんだ。」
「自分の仕事だろ、それが。それにしても、そんなに映姫殿の説教は厳しいものなのか?」
「そりゃあ、もう。ほとんど姑だな、ありゃ。姑の嫁に対するいびり同然のようなものだ。」
「そんなに酷いのか!?」
「誰も気にしないような事を、それこそ重箱の隅を突っついたような事を一々永遠と説教するんだから、堪ったもんじゃないさ。口答えは許さん、弁解も許さん、弁護士は不許可、それでもって結構頑固でたまに基準が分からない事を言う。それでネチネチと説教されるんだから、聞いているだけでも気が滅入よ。」
「・・・酷い言いようだな。」
「あんたもあの説教を受けてみれば分かるよ。自分だってほいほい外を出歩く事があるくせに、私が少しでも休憩しているとすぐに説教。お陰で変な説教癖がうつるし、酒でも飲んでなきゃ、やってられるかってんだ。」
「ああもう、分かった、分かったから叩くな。酒がこぼれるから、一々背中を叩くな。」
~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪~
へえ、死神さんってお酒が入ると豪快になるんだ。大声で喋ったり、笑いながら苦労話や愚痴をこぼしたり。でも、笑いながら白沢さんの背中を叩いているけど、ひょっとして叩き魔なのなかな?
~四人目と五人目~
「あー、やっぱりこんな所で油を売っている。」
あ、兎さんだ。たまに竹林でも会うんだけど、屋台にも来てくれるの。でも、お客さんとしてではなく、大抵の場合はお迎えさんとしてだけど。あ、そう言えば、たまに今流行りの食材とかお酒とか持ってきてくれて、相場よりも格安で売ってくれる事もあったっけ。
「あれ、てゐじゃん。どうしたの?」
兎さんが迎えに来るのは、先ほど来た月兎さん。前に兎鍋撲滅の為に鶏肉を推奨した時に喧嘩をした時もあったけど、今ではすっかり仲良しさん。この屋台の常連さんにもなってるの。
「どうしたの、じゃないわ。ちっとも散歩から帰ってこないから、様子を見てこいって言われたのよ。」
「うーん、まだ飲み足りないんだけどなぁ。そうだ、てゐも飲んでいかない?」
「馬鹿言わないでよ。ほら、さっさと、って、うわ!!」
兎さんが言い終わる前に、後ろからいきなり死神さんが兎さんに組み付く。ついさっきまで私の目の前で飲んでいたのに、何時の間に兎さんの後ろに回りこんだんだろう?
「いいねぇ、飲む人数は多いにかぎる。ほら、お前さんも固い事言わずに飲んでいこうや。」
「わぁ、鎌持った死神。何であんたがここにいるのよ!!」
「そりゃあ、あたいだからさ。ほらほら、四の五を言わずに飲んでいきなよ。あんまりガタガタ言うと、三途の川に叩き込むよ。」
「小町、無理やり人に飲ませるのはどうかと思うぞ。というか、脅迫してどうする。」
兎さんの抵抗と白沢さんの抗議も虚しく、兎さんは月兎さんと死神さんによって席まで引きずりこまれちゃった。なんだか、可愛そう。
「ミスティアさん、てゐにお酒と串揚げお願いね。」
「知らないからね、後で姫様や永琳様に怒られても。私はちゃんと呼びに来たんだから。」
「大丈夫。ちょっとぐらいなら平気だよ。」
そう言う少し酔いかかった月兎さん。何となくこのまま酔い潰れるまでいそうな気がするんだけど、兎さんも諦めたみたいだから、別にいいかな。私としてもいてくれる方が嬉しいし。
それじゃあ、人数が増えたところで、張り切って歌っていこう!
~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪~
「姫様も困ったものね。一日中家でごろごろしていたかと思ったら、ふらりと喧嘩をしに出て行く。そんな毎日の連続なんだけど、もう少し家の手伝いとか考えてくれてもいいと思うのよね。せめて自分の部屋の片付けくらいはしてほしいな。」
「へえ、一日中自分のしたいことしかやらないんだ。いいねぇ、あたいもそんな生活をしてみたいよ。」
「小町は今でも十分好き勝手やっているだろう。しかし、下手にあれこれ言わない分、やりやすいのではないのか。どこかの門番は、しょっちゅう主に振り回されているぞ。」
「それが、そうでもないの。姫様が喧嘩をしにいくと決まって服を焦がして駄目にしてくるんだけど、姫様は絹製の服じゃなきゃ嫌だって言うから。だから、姫様が喧嘩をしにいく度に、永遠亭の財政が傾くの。」
「・・・そうか、妹紅が容赦なく燃やしているあの服は絹製か。しかも、見たところオーターメイド物のようだし。喧嘩両成敗でそちらにも非があるとは言え、非常に複雑な気分だな。」
「もうちょっと姫様もそこら辺の事を理解して欲しいんだけどな。絹製の服がどれだけするとか、全然無頓着だもん。生活費稼ぐ為に私達がどれだけ苦労しているのか、少しは理解して欲しいな。」
「それで、仕方が無く詐欺に手を出したという訳かい。なんだか、咎めにくい話しだねぇ。泣かせるじゃないか。」
「断言できるが、それは違うと思うぞ。」
「てゐ、はっきり言っちゃいなよ。姫様は手間だけがかかる駄目人間予備軍だって。自分でご飯を食べたり一人でトイレに行けるところだけは痴呆老人よりは手間はかからなくて、服はともかく派手で煌びやかな物を買いあさったり着飾ったりする成金趣味よりはお金はかからない程度だって。」
「お、おい、鈴仙、お前かなり酔っているだろ。かなり容赦が無いぞ。って、てゐ、人の皿に手を出すな。」
~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪~
「姫様も姫様なら、師匠も師匠よ。姫様も師匠の言う事だけは割と聞いてくれるんだから、師匠の方からちゃんと注意するべきなのよ。それなのに、師匠は我関せずってな態度だし。」
「一応主従の関係なんだし、しょうがないんじゃないのか。それに永琳殿だって、色々薬を作っては売り出したりしているじゃないか。」
「実験台にされたこちらの身にもなってよ。それに、あれは趣味の範疇だから苦労とは言わないわ。どこぞの超ローカル新聞は役に立たないって事で訪問販売させられたし。実際に苦労したのは私達なのよ。」
「それで、あたいの所にも変な薬を持った兎が来たと言う訳かい。しっかし、あの薬は凄いねぇ、一回試してみたら病み付きになりそうだったよ。」
「それは、そうよ。あんな物混ぜたら、誰だって習慣性を持っちゃうわ。初めはそれとなく、それでいて後からじわじわ効くようにして、一度掴んだ金づるは二度と放さない。」
「おい、それって非常に危険な薬なんじゃないのか?」
「大丈夫よ、ちゃんと悪影響はほとんど無いようにしてあるらしいから。そこら辺の配慮とか調合術は凄いのに、なんでその知識をもっと役立つ所に使わないのかしら。私達の暮らしがもっと良くなるようにするとか。殆ど才能の無駄使いよ。」
「・・・後で姫様や永琳様に知られても知らないわよ。」
「ねえ、てゐ。この間人間からガメてきたお金、どうしたのかな。一応師匠に怒られて没収されたけど、まさか一部が懐に入っているなんて無いよね。そのお金で、自分だけの人参をこしらえているなんて事、無いよね。」
「これは、夢か。あの泣く子も騙すてゐが、雰囲気だけで押されている・・・」
~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪~
「おいおいてゐ、いくらなんでもピッチが早すぎないか。そんなにお酒ばかり飲んでいると、体に悪いぞ。」
「いいんじゃないの、青春なんだから。酒を浴びるほど飲みたくなる時だってあるだろうさ。飲みたい時は、じゃんじゃん飲むのが一番だ。」
「何が、青春だ。って、いい加減背中を叩くのを止めないか。いくら私だって仏じゃないぞ。」
「そうよ、この世に仏なんていないわ。もし仏がいたら、プー太郎の姫様や冷血師匠が楽をして、私達がこんなに苦労する事なんか無いはずよ。」
「鈴仙、お前飲みすぎだぞ。いくらなんでも、もうそろそろ止めておいた方がいい。」
「これが飲まずにやってられるかって言うのよ。普段からあれやれこれやれ言われて、それで何かイベントがあると永遠と餅つきさせられて。私やてゐが忙しく駆けずり回っているというのに、二人してのんびりとお茶をしているのよ。冗談じゃないわよ。ねえ、てゐ?」
「そ、そうね。ねえ、もういい加減帰らない?」
「まだよ。それに、てゐもまだ飲み足りなさそうじゃん。ほら、慧音のお酒もガンガン飲んでいるし。」
「・・・私には、必死に酔いの中に逃げようとしているようにしか見えないんだがな。」
「そう怒りなさんなって。それにしても、いいねぇ、青春だねぇ。あたいも負けてられないよ。おーい、熱燗をじゃんじゃん持ってきてくれ。」
「少しは状況を読まないか、この馬鹿者!」
~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪~
あれ、兎さんが月兎さんと死神さんの間で小さくなってる。その横で白沢さんが呆れたような表情をしてるけど、何かあったのかな?
~六人目~
「今晩は。あの、まだオーダーは受け付けていますか?」
「大丈夫だよ。基本的にうちは夜明けまでやってるから。」
あれ、誰だろう。遠慮がちに席の端の方に座ったけど、私この人知らないな。死神さんも月兎さんも知らなさそうな顔をしてるし。あ、でも白沢さんが意外そうな顔をしてる。
「お前さんは確か、紅魔館のパチュリー殿のところにいた従者だな。珍しいな、お前さんが外に出てくるなんて。」
「ええ、今日はパチュリー様が珍しくお嬢様と外へ出かけていったので、お暇をもらえたのです。それで、美鈴さんにどこか美味しい食べ物屋は無いかと聞きましたら、この屋台の事を教えてもらいました。」
うーん、あの門番、今度来たらサービスしてあげよ。でも嬉しいな、美味しい食べ物屋の名前に私の屋台が出てくるだなんて。頑張って焼き鳥撲滅を目指した甲斐があるというものだね。
「へえ、あのもやしのような体つきの姉ちゃんが、外出とはねぇ。こりゃ、明日は雨だわ。」
「よくもまあ本人の関係者の前でそういう事を平然と言えるな。それにしても、お前はパチュリー殿の事を知っているのか?」
「ああ、ごくたまに川を渡りに来るからね。ちょいと話し込んで追い返しているけど、いつ見ても細い体をしていたからねぇ。ありゃ、喘息こじらせると大変そうだよ。」
私も一度だけ宴会の席で見かけたことがあるけど、本当に弱そうな体をしていたな。あんなに細い腕をしていたら、お湯に入れただけでもダシが取れそう。ちゃんと食事を取ってるのかな?
「そうですか。いつもパチュリー様がお世話になっております。」
「なあに、いいって事よ。あたいも極力仕事量を増やしたくないだけなんだからさ。あんたが気にする事なんかないよ。」
「そんな事を威張るな、馬鹿者。」
さて、美味しいとの評判を聞いてきてくれたんだから、このお客さんには串揚げやお酒以外にも楽しんでもらわなくっちゃ。頑張って歌おう!
~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪~
「ふう、たまには新鮮な空気の元での食事というのも、良いものですね。この串揚げも美味しいし、お酒も美味しいですし。パチュリー様も外食をすればいいんですけど。」
「多分無理よ。あの筋金入りの日陰族が、図書館の外に出るわけ無いじゃん。」
「鈴仙、酒の勢いとはいえ、言いすぎだぞ。」
「いえ、いいんです。本当の事ですから。私も、もう少し外で体を動かした方がパチュリー様のお体に良いと思っているんです。言っても一向に聞いてもらえませんけど。」
「まあ、お前さんがそう言うなら。ところで、お前さんは酒を飲める口なのか。さっきから結構飲んでいるけど、大丈夫なのか?」
「いえ、お酒は殆ど飲んだことがありません。パチュリー様もあまりお飲みになられませんので。でも、美鈴さんが串揚げとお酒の両方を堪能するべし、と言ってましたので。」
「あいつ並に飲めればの話だ。無理して飲むとそこでダウンしているてゐの様になるから、程々にしておくんだ。」
「あたいは、別に飲みたいだけ飲めば良いと思うんだけどねぇ。人間、気が済むまで飲みたい時ってもんがあらぁがな。」
「小町のような飲兵衛は黙っていろ。と言うか、いい加減本当に私の背中を叩くのを止めてくれないか。落ち着いて酒が飲めん。」
~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪~
「なあ、ところでさ。一日中図書館に篭っていて、飽きないのかい。あたいだったら、そんな窮屈な生活五秒で嫌になるね。」
「パチュリー様はどうかは知りませんけど、私はパチュリー様が図書館を動かれようとしませんので。それに、図書館でしなければならない仕事は沢山ありますから。散らかすだけ散らかして帰っていく人がいますし。」
「それって、あの黒白、魔法使いの、事ね。うちにも、たまに荒らしに、来るけど、本当に迷惑よね・・・」
「いえ、パチュリー様がまんざらでも無いご様子なので。顔には出しませんけど、魔理沙さんが来られますと嬉しそうにしています。」
「眠そうだな、鈴仙。そろそろてゐを連れて帰ったらどうだ。それにしても、パチュリー殿がな。いっそうのこと、魔理沙に外に連れ出してもらえばどうだ。有意義な時間と健康な体が手に入って、一挙両得だぞ。」
「流石に、そこまでは。魔理沙さんも、本を勝手に持ち帰る事の方が優先順位高いみたいですし。それにしても、お酒って美味しいですね。飲んでいると、体がポカポカして気持ちが良いですし。」
「そうだろ、そうだろ。酒は良いだろう。人生、酒があってなんぼのものだからねぇ。あたいには、酒がない生活なんて考えられないよ。」
「小町が、人生語るな。それと、そろそろ控えたほうが良い。この飲兵衛の調子に合わせたら、すぐに潰れるぞ。」
「あれ、なんだか視界がクルクル回っているような気がします・・・」
~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪~
「それでですね、パチュリー様って酷いんですよ。無理だと分かっているのに、私に魔理沙さんの家まで本の取立てに行かせるんですから。」
「分かったから、お酒はもうその辺にしておくべきだと思うぞ。さっきからこの話を何回すれば気が済むんだ。」
「あれ、さっきもこの話をしましたか。それじゃあ、無理だと分かっているのに、魔理沙さんを体を張って止めなければならないですよ。敵わないって分かっているんですけど、黙って本を持って行かれる訳には行かないじゃないですか。」
「その話も、五回は聞いた。」
「そうですか。それでは、パチュリー様が無意味に図書館の模様替えをしようとする話は・・・」
「それは、十七回聞いた。悪い事は言わないから、もうそろそろお酒を止めにして帰った方が良いぞ。そうじゃなきゃ、そこでダウンしている鈴仙やてゐみたいに帰れなくなるぞ。」
「はあ、そうですか。なんだかとっても気持ちが良くて、もうちょっと飲んでいたい気分なのですが。」
「それは、限界を超えた証拠だ。明日に響いても、知らないぞ。」
「なんだい、なんだい。さっきから聞いてりゃ、つまらない飲み方をさせようとして。酒ってもんは、飲みたいだけガーと飲むもんだろ。あんたも、もっと飲みたいんだろう?」
「彼女は小町と違って、多忙の身なんだ。二日酔いするような飲み方をさせるな。」
「そうですね、もうちょっと飲みたいです。体がフワフワした感じがして、とっても気持ちが良いです。」
「だろう。ほらほら、じゃんじゃん飲もうや。」
「駄目だ、完全に手遅れだな。もう、知らん。」
「あんたも、そんな仏頂面してないで、飲んだ飲んだ。」
「ええい、絡み付いてくるな。だいたい、元はと言えば小町のせいで落ち着いて飲めなかったのだぞ!」
~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪~
気持ちよく歌い終えた後、白沢さん以外はみんな寝ちゃっていた。仕方が無いので、みんなに毛布をかけようとしたら、白沢さんが手伝ってくれた。でも、白沢さんの表情は、疲れ切ったような苦い表情をしているな。どうしたんだろう?
「女将、ここに勘定を置いてくよ。」
「あれ、もう帰っちゃうの。まだ夜明けまであるし、もう少し飲んでいけば良いのに。まだ飲み足りないって顔をしてるよ。」
「いや、今日はもういい。結局酔えなかったし、今更一人で飲むのもな。」
なんだか疲れ切った表情で、白沢さんは肩をすぼめる。うーん、なんだか可愛そうだな。どうにかしてあげたいな。
「そうだ。お客さん、私の相手をしてくれませんか?」
「うん、私が女将の相手を?」
「そうだよ。私も歌いっぱなしで喉が疲れちゃって、もうカラカラなの。でも、一人で飲むのも寂しいし。どうかな?」
「・・・まあ、それもいいか。ちょうど喧しい奴も黙っている事だし、正直まるで飲み足りていなかったし。」
「決まりだね。じゃあ、これは私からの奢りだよ。」
たまには、お客さんと飲んで夜を過ごすのも、良いよね♪
~~~ミスティアの人物名簿~~~
ミスティア・ローレライ:私の事だよ。いつもお客さんとは関係無しに、元気一杯歌を歌っています。最近の悩みは、お客さん中にツケが大分溜まっている人がいるんだけど、きっといつか払ってくれるよね?
射命丸 文:常連中の常連さん。かなりの確率で来てくれるの。酔ってもあまり騒がない、いい妖怪。来る度に落ち込んでたり喜んでたりと忙しいけど、たまに無理して酔い潰れようとする事も。新聞記者って、大変なんだなあ。通称、天狗さん。
上白沢 慧音:今日始めて来てくれたお客さん。満月の夜に会ったら非常に怖かったけど、一緒に飲んでみるととても良い人。でも、そのせいか色々とお酒の席で絡まれる事が多い、ちょっと可愛そうな人。多分に酔うと説教魔になる事が後に発覚。通称、白沢さん。
小野塚 小町:今日始めて来てくれたお客さん。飲むと威勢が良くなるんだけど、叩き魔。大声で喋るので、私の歌の邪魔になる事も。何となく船乗りって感じがするんだけど、酔うとちょっと親父臭くなるのは、みんなの秘密。通称、死神さん。
鈴仙・優曇華院・イナバ:常連さん。鳥鍋問題で喧嘩した事もあったけど、今はお友達。普段は良い人で、普通に酔うくらいなら何も問題は無い。でも、多分に酔いだすとエンジン全開。容赦の無い辛辣な言葉で、相手をバッサバッサと切り捨てる。かかり始めるとすぐに酔い潰れるのが救いかな。通称、月兎さん。
因幡 てゐ:常連さんじゃないけど、よく私の屋台に来てくれる妖怪。大体の場合は飲んでいる月兎さんを連れ戻しに来るんだけど、時々流行っているらしいお酒や食材を何故か格安で売ってくれる、とても良い妖怪。飲むと手癖が悪くなるのには要注意。通称、兎さん。
小悪魔:今日始めてのお客さん。どこかホンワカしていて、良い妖怪。でも、今日屋台に来てくれるまで知らなかったの、御免なさい。下戸なので、飲ますな、注意!(白沢さん談)通称、小悪魔さん。
*東方花映塚ネタあり(恐らくこの注意書きは必要ないかもしれませんけど)
*一部のキャラが、酔って多少壊れています。ご注意を。
*私的設定として、酔った時の上戸を決めています。その他もろもろあります。ご容赦ください。
*恐らくご期待に沿えるような代物ではないので、あまり過度な期待を持たないでください。
今日も今日とで屋台を運んで、営業準備開始。屋台のセッティングをして、釜の準備をして、お酒の準備をして、材料の準備の仕込みを終え、赤提灯に火を灯す。これで、準備良し。
さあ、今日も焼き鳥の撲滅目指して、元気よく歌っていこう!
~一人目と二人目~
「ミスティアさん、お酒と串揚げのお代わりをお願いしますね。」
「あいよ。それにしてもお客さん、今日はよく飲みますね。」
なんとなく嬉しそうに一気飲みをするのは、鳥仲間の常連さん。新聞というものを作っているらしく、そういえば前に私も屋台の事で取材を受けたことがあった気が。でも、紹介してくれた割にはお客さんは増えなかったけど、新聞ってそんな物なのかな?
「今日はようやく今回の原稿があがったんです。後は印刷するだけなんですけど、ここまで来るのが長い道のりだったんですよ。ガセネタを掴まされるは取材拒否の意思で弾幕を浴びせられるはカメラを玩具にされるはと、取材するだけでも散々な目に会いましたからね。」
しみじみと語りだす天狗さんを見ていると、それだけでどれだけ苦労したかが分かる気がするな。ここにもよく疲れた顔をして飲みに来てたし、そのまま無理に酔い潰れようとしていた事もあったっけ。
「様々な障害がありましたが、それでも今日という日を迎えることが出来ました。これを祝わなくて何とする。という訳で、今日は思う存分飲もうと思っているんです。」
「へえー、それは目出度い事なんだね。うん、じゃあ私から一杯ご馳走してあげますね。」
ひょんな事から手に入れた高価なお酒を、天狗さんに出してあげる。本当は滅多に手に入れれないようなお酒なんだけど、こういう時に使わないと勿体無いよね。
美味しそうに飲んでいる天狗さんの為に、景気付けの為に何か歌ってあげようかな?
「女将、適当な酒と串揚げを頼みたい。っと、なんだ先客もいたのか。」
あれ、人里方面でたまに見かける白沢さんだ。初めてのお客さんだけど、来てくれて嬉しいな。この感激を歌に表そうかな?
「なんだとは酷いですね。これでも、私はここの常連なんですよ。」
「悪い、悪い。そう目くじら立てるな、せっかくの酒が不味くなるぞ。」
「それはそうと、慧音さんがこんな所でお酒とは以外ですね。里やその他の守りは良いんですか?」
「別に四六時中里を見張っている訳じゃない。それに、今夜は妹紅が大人しく家にいるから、他所に飲みに行く余裕があると言う訳だ。まあもっとも、もうそろそろ鰻の冬眠時期になるから、噂に聞く八目鰻の串揚げを食べてみなければと思ったのも事実だが。」
何となく、天狗さんが苦い顔をしてこちらをちらっと見た気がするな。なんなんだろう?
「まあ、酒と一緒にお腹に入れば、皆同じですよね。美味しい事には代わりが無いんですが。やっぱり、これは素材というよりもミスティアさん直伝のタレが凄いんですよね、きっと。」
「うん、何を一人でぶつぶつ言っているんだ。それよりも文よ、少し付き合わぬか?」
「いいですよ。たまには取材抜きで他人と飲むのも悪くないですね。」
それじゃあ、天狗さんのお祝いと白沢さんの歓迎の意を込めて、張り切って歌っていこうかな。
~♪♪♪~
「まったく、酷いものですよ。何か都合が悪い事があれば、すぐに焼き鳥だのフライドチキンだのって言い出しますからね。取材するのも命がけですよ。」
「いや、まあ、実際にされかかった訳じゃあないんだろう?」
「妹紅さんにはされそうになりましたけどね。それと、絶食五日目の霊夢さんの視線が酷く危険なものだった事もありました。」
「・・・妹紅の件に関しては、私から謝ろう。多分悪気が無かったはずだから、許してやってくれ。」
~♪♪♪♪~
「それにしても、竹林は危険ですね。たまに流れ弾が飛んできますから。」
「ああ、それもすまない。何度言っても妹紅が輝夜との喧嘩を止めようとしないからな。輝夜の方からも仕掛けてくるし、こればっかりはどうにもならないと思う。」
「よく飽きませんね、二人とも。故あればすぐにでも喧嘩しようとしていません?」
「まったくだ。それに、喧嘩するたびに服を駄目にするんだから、服を毎回用意するこちらの身にもなって欲しいものだよ。」
「へえ、慧音さんが妹紅さんの服を用意していたんですか。」
「仕方ないだろう。住所不定無職の妹紅に服や当て布を買う事ができる訳が無いし、妹紅に原始人のような格好をさせるわけにもいかない。だから、私が用意しなければならないんだが、妹紅の奴め、人の苦労を知らないで毎度毎度簡単に服を駄目にしおって。」
「予想以上に、慧音さんって大変なんですね。」
~♪♪♪♪♪~
「そう言えば、あの二人ってこの前の宴会の席でも喧嘩をしていましたよね。」
「ああ、すまない。酒の席で見苦しいものを見せてしまったな。」
「いえ、いいんです。いつも見慣れた光景ですし。流れ弾が鍋に命中して、皆で二人を袋叩きにしましたし。あれはあれで良い余興だったと思いますよ。」
「せめて暴れる場所くらい選んで欲しいものだ。出会ったら最後、人の家の中だろうが、田畑のド真中だろうが関係なく喧嘩をしようとするからな。後で謝って回る私の身にもなってくれと言いたい。」
「まさか、慧音さんが妹紅の不始末を全部謝って回っているんですか?」
「私がやらなきゃ、誰がやるというんだ。それに、無かった事にしてもいいが、相手に迷惑を掛けているからな。都合の悪い事を隠すというのもなんだし、やはり率直に詫びるべきだと私は思うんだ。」
「慧音さん、頑張ってくださいね。私、応援していますから。」
~♪♪♪♪♪♪~
あれ、天狗さんが白沢さんに泣きながらお酌をしてる。何か起きたていう感じじゃあないけど、どうしたんだろう?
~三人目~
天狗さんが、明日は印刷があるからといって帰っちゃった。もう少し飲んでいけば良かったのにと思ったんだけど、明日に備えなきゃいけないらしい。天狗さんも、気ままなようで意外と忙しいんだなあ。
「しかし、この串揚げは美味しい物だな。どこでこんな物を覚えたんだ?」
「それは企業秘密だよ~」
「まあ、いいか。それで、この屋台は儲かっているのか?」
「ぼちぼちっていう感じかな。お客さんは結構来るんだけど、ちゃんとお勘定を払ってくれる人と、ツケばかりの人がいるの。いつかちゃんと払ってくれるか心配しているんだけどね。」
「・・・まあ、諦めろ。言って聞くような連中だったら誰も苦労はしないだろうし、生きているのが不思議なくらいの財政状況の奴もいる。犬にでも噛まれたと思っておくんだな。」
少し同情する目で、白沢さんが私の心配事を言ってきた。私もそんなような気がしていたんだけど、改めて白沢さんに言われると結構悲しいな。でも、せっかく来てくれたお客さんを無下に追い返す訳にも行かないし、きっといつか払ってくれると信じているんだ。歌でも歌って、気長に待とう。
「おーい、酒を頼めるかい。熱燗と、あと適当なつまみをくれ。」
おやおや、いつぞやの死神さんだ。たまにそこら辺をほっつき歩いているのを見かけるけど、私の屋台に来るのは初めてのような気が。
「ほう、小町か。いいのか、こんな所で油を売っていて。しなければならない仕事が山積みしているんだろう?」
「良いんだ、別に。ちょっとくらい休みを挟んだほうが、作業能率があがるんだ。それに、夜は働く時間じゃなく、休む時間だ。」
「世の中には、残業や徹夜という言葉があるぞ。仕事を溜め込んだら、その分どこかで帳尻を合わせなくてはな。」
「そんな細かい事はいいんだって。やりたくない時に仕事しても、はかどりはしないんだから。やっぱりマイペースが一番だな、うん。」
横で白沢さんが苦い顔をしているのもなんのその。まるで気にした様子も無く、串揚げにかぶりついている。私としても、また霊魂が溢れかえるっていうのは気味が悪くて嫌なんだけど、美味しそうに八目鰻の串揚げを食べてくれるから気にするのを止めようかな。
そうだ、長旅の末ようやく寄航した仕事帰りの船乗りっぽい死神さんのために、労いの意味を込めて歌を歌ってあげよう。
~♪♪♪♪♪♪♪~
「かー、仕事が終わった後の酒は、やっぱり格別だなー!」
「本当にちゃんと仕事をしているのか。たまに人魂を見かけるぞ?」
「している、している。私が決めた一日の仕事量は、多分こなしている。三食昼寝の次にちゃんとこなしていると私は思っているぞ。それに、人魂が出たところでそんなに害が無いんだし、細かい事を一々気にしなさんな。ハゲるぞ。」
「以前の花の異常開花の際、私が里の者達に不安がらせないように事態の説明をするのに、どれだけ苦労したと思っているんだ?」
「苦労性だね。きっと楽に三途の川を渡れるに違いないよ。でも、私のその時の気分しだいだけどな。あっはっは!!」
「ええい、一々私の背中を叩くな。酒が飲めんではないか。」
~♪♪♪♪♪♪♪♪~
「しっかし、あの時は参ったよ。いくら運んでもきりが無いくらい人魂が溢れかえっていたからね。流石のあたいでも、閉口したものさ。」
「その割には、随分とのんびりしていたではないか。」
「そうでもなかったよ。あれはあれで一杯一杯だったからね。運んでも運んでも、一向に減った気がしない。休み休みにやらなくちゃあ、やってられないってもんよ。」
「まあ、それに関しては分からんでもないな。普段のサボり癖についてはどうだが知らんが。」
「四季様も、もう少し融通が利いてくれるといいんだけどなぁ。それは貴方の仕事だとか言って、あれだけの量をあたい一人にやらせようって言うんだから。臨時に他の死神を雇ってくるとかすれば、もっと早く片付くっていうのに。」
「それもそうなんだろうけど、お前も命拾いしたんじゃないのか。雇った死神が小町よりも優秀だったら、今頃クビになっていただろう?」
「違いない。あたいの首は、四季様の頭の頑固さで繋がっているのか。こいつは、けっさくだねぇ。」
「だから、背中を叩くなと言っとるだろう。串揚げが食べれないではないか。」
~♪♪♪♪♪♪♪♪♪~
「そんなにのんびりやっていて、映姫殿は何も言わないのか?」
「いいって、いいって。どうせ四季様だって結構プラプラしているんだから良いんだって。それに、死者達にあの説教を聞かせなくちゃならないと思うと、なんだか気が引けるんだ。」
「自分の仕事だろ、それが。それにしても、そんなに映姫殿の説教は厳しいものなのか?」
「そりゃあ、もう。ほとんど姑だな、ありゃ。姑の嫁に対するいびり同然のようなものだ。」
「そんなに酷いのか!?」
「誰も気にしないような事を、それこそ重箱の隅を突っついたような事を一々永遠と説教するんだから、堪ったもんじゃないさ。口答えは許さん、弁解も許さん、弁護士は不許可、それでもって結構頑固でたまに基準が分からない事を言う。それでネチネチと説教されるんだから、聞いているだけでも気が滅入よ。」
「・・・酷い言いようだな。」
「あんたもあの説教を受けてみれば分かるよ。自分だってほいほい外を出歩く事があるくせに、私が少しでも休憩しているとすぐに説教。お陰で変な説教癖がうつるし、酒でも飲んでなきゃ、やってられるかってんだ。」
「ああもう、分かった、分かったから叩くな。酒がこぼれるから、一々背中を叩くな。」
~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪~
へえ、死神さんってお酒が入ると豪快になるんだ。大声で喋ったり、笑いながら苦労話や愚痴をこぼしたり。でも、笑いながら白沢さんの背中を叩いているけど、ひょっとして叩き魔なのなかな?
~四人目と五人目~
「あー、やっぱりこんな所で油を売っている。」
あ、兎さんだ。たまに竹林でも会うんだけど、屋台にも来てくれるの。でも、お客さんとしてではなく、大抵の場合はお迎えさんとしてだけど。あ、そう言えば、たまに今流行りの食材とかお酒とか持ってきてくれて、相場よりも格安で売ってくれる事もあったっけ。
「あれ、てゐじゃん。どうしたの?」
兎さんが迎えに来るのは、先ほど来た月兎さん。前に兎鍋撲滅の為に鶏肉を推奨した時に喧嘩をした時もあったけど、今ではすっかり仲良しさん。この屋台の常連さんにもなってるの。
「どうしたの、じゃないわ。ちっとも散歩から帰ってこないから、様子を見てこいって言われたのよ。」
「うーん、まだ飲み足りないんだけどなぁ。そうだ、てゐも飲んでいかない?」
「馬鹿言わないでよ。ほら、さっさと、って、うわ!!」
兎さんが言い終わる前に、後ろからいきなり死神さんが兎さんに組み付く。ついさっきまで私の目の前で飲んでいたのに、何時の間に兎さんの後ろに回りこんだんだろう?
「いいねぇ、飲む人数は多いにかぎる。ほら、お前さんも固い事言わずに飲んでいこうや。」
「わぁ、鎌持った死神。何であんたがここにいるのよ!!」
「そりゃあ、あたいだからさ。ほらほら、四の五を言わずに飲んでいきなよ。あんまりガタガタ言うと、三途の川に叩き込むよ。」
「小町、無理やり人に飲ませるのはどうかと思うぞ。というか、脅迫してどうする。」
兎さんの抵抗と白沢さんの抗議も虚しく、兎さんは月兎さんと死神さんによって席まで引きずりこまれちゃった。なんだか、可愛そう。
「ミスティアさん、てゐにお酒と串揚げお願いね。」
「知らないからね、後で姫様や永琳様に怒られても。私はちゃんと呼びに来たんだから。」
「大丈夫。ちょっとぐらいなら平気だよ。」
そう言う少し酔いかかった月兎さん。何となくこのまま酔い潰れるまでいそうな気がするんだけど、兎さんも諦めたみたいだから、別にいいかな。私としてもいてくれる方が嬉しいし。
それじゃあ、人数が増えたところで、張り切って歌っていこう!
~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪~
「姫様も困ったものね。一日中家でごろごろしていたかと思ったら、ふらりと喧嘩をしに出て行く。そんな毎日の連続なんだけど、もう少し家の手伝いとか考えてくれてもいいと思うのよね。せめて自分の部屋の片付けくらいはしてほしいな。」
「へえ、一日中自分のしたいことしかやらないんだ。いいねぇ、あたいもそんな生活をしてみたいよ。」
「小町は今でも十分好き勝手やっているだろう。しかし、下手にあれこれ言わない分、やりやすいのではないのか。どこかの門番は、しょっちゅう主に振り回されているぞ。」
「それが、そうでもないの。姫様が喧嘩をしにいくと決まって服を焦がして駄目にしてくるんだけど、姫様は絹製の服じゃなきゃ嫌だって言うから。だから、姫様が喧嘩をしにいく度に、永遠亭の財政が傾くの。」
「・・・そうか、妹紅が容赦なく燃やしているあの服は絹製か。しかも、見たところオーターメイド物のようだし。喧嘩両成敗でそちらにも非があるとは言え、非常に複雑な気分だな。」
「もうちょっと姫様もそこら辺の事を理解して欲しいんだけどな。絹製の服がどれだけするとか、全然無頓着だもん。生活費稼ぐ為に私達がどれだけ苦労しているのか、少しは理解して欲しいな。」
「それで、仕方が無く詐欺に手を出したという訳かい。なんだか、咎めにくい話しだねぇ。泣かせるじゃないか。」
「断言できるが、それは違うと思うぞ。」
「てゐ、はっきり言っちゃいなよ。姫様は手間だけがかかる駄目人間予備軍だって。自分でご飯を食べたり一人でトイレに行けるところだけは痴呆老人よりは手間はかからなくて、服はともかく派手で煌びやかな物を買いあさったり着飾ったりする成金趣味よりはお金はかからない程度だって。」
「お、おい、鈴仙、お前かなり酔っているだろ。かなり容赦が無いぞ。って、てゐ、人の皿に手を出すな。」
~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪~
「姫様も姫様なら、師匠も師匠よ。姫様も師匠の言う事だけは割と聞いてくれるんだから、師匠の方からちゃんと注意するべきなのよ。それなのに、師匠は我関せずってな態度だし。」
「一応主従の関係なんだし、しょうがないんじゃないのか。それに永琳殿だって、色々薬を作っては売り出したりしているじゃないか。」
「実験台にされたこちらの身にもなってよ。それに、あれは趣味の範疇だから苦労とは言わないわ。どこぞの超ローカル新聞は役に立たないって事で訪問販売させられたし。実際に苦労したのは私達なのよ。」
「それで、あたいの所にも変な薬を持った兎が来たと言う訳かい。しっかし、あの薬は凄いねぇ、一回試してみたら病み付きになりそうだったよ。」
「それは、そうよ。あんな物混ぜたら、誰だって習慣性を持っちゃうわ。初めはそれとなく、それでいて後からじわじわ効くようにして、一度掴んだ金づるは二度と放さない。」
「おい、それって非常に危険な薬なんじゃないのか?」
「大丈夫よ、ちゃんと悪影響はほとんど無いようにしてあるらしいから。そこら辺の配慮とか調合術は凄いのに、なんでその知識をもっと役立つ所に使わないのかしら。私達の暮らしがもっと良くなるようにするとか。殆ど才能の無駄使いよ。」
「・・・後で姫様や永琳様に知られても知らないわよ。」
「ねえ、てゐ。この間人間からガメてきたお金、どうしたのかな。一応師匠に怒られて没収されたけど、まさか一部が懐に入っているなんて無いよね。そのお金で、自分だけの人参をこしらえているなんて事、無いよね。」
「これは、夢か。あの泣く子も騙すてゐが、雰囲気だけで押されている・・・」
~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪~
「おいおいてゐ、いくらなんでもピッチが早すぎないか。そんなにお酒ばかり飲んでいると、体に悪いぞ。」
「いいんじゃないの、青春なんだから。酒を浴びるほど飲みたくなる時だってあるだろうさ。飲みたい時は、じゃんじゃん飲むのが一番だ。」
「何が、青春だ。って、いい加減背中を叩くのを止めないか。いくら私だって仏じゃないぞ。」
「そうよ、この世に仏なんていないわ。もし仏がいたら、プー太郎の姫様や冷血師匠が楽をして、私達がこんなに苦労する事なんか無いはずよ。」
「鈴仙、お前飲みすぎだぞ。いくらなんでも、もうそろそろ止めておいた方がいい。」
「これが飲まずにやってられるかって言うのよ。普段からあれやれこれやれ言われて、それで何かイベントがあると永遠と餅つきさせられて。私やてゐが忙しく駆けずり回っているというのに、二人してのんびりとお茶をしているのよ。冗談じゃないわよ。ねえ、てゐ?」
「そ、そうね。ねえ、もういい加減帰らない?」
「まだよ。それに、てゐもまだ飲み足りなさそうじゃん。ほら、慧音のお酒もガンガン飲んでいるし。」
「・・・私には、必死に酔いの中に逃げようとしているようにしか見えないんだがな。」
「そう怒りなさんなって。それにしても、いいねぇ、青春だねぇ。あたいも負けてられないよ。おーい、熱燗をじゃんじゃん持ってきてくれ。」
「少しは状況を読まないか、この馬鹿者!」
~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪~
あれ、兎さんが月兎さんと死神さんの間で小さくなってる。その横で白沢さんが呆れたような表情をしてるけど、何かあったのかな?
~六人目~
「今晩は。あの、まだオーダーは受け付けていますか?」
「大丈夫だよ。基本的にうちは夜明けまでやってるから。」
あれ、誰だろう。遠慮がちに席の端の方に座ったけど、私この人知らないな。死神さんも月兎さんも知らなさそうな顔をしてるし。あ、でも白沢さんが意外そうな顔をしてる。
「お前さんは確か、紅魔館のパチュリー殿のところにいた従者だな。珍しいな、お前さんが外に出てくるなんて。」
「ええ、今日はパチュリー様が珍しくお嬢様と外へ出かけていったので、お暇をもらえたのです。それで、美鈴さんにどこか美味しい食べ物屋は無いかと聞きましたら、この屋台の事を教えてもらいました。」
うーん、あの門番、今度来たらサービスしてあげよ。でも嬉しいな、美味しい食べ物屋の名前に私の屋台が出てくるだなんて。頑張って焼き鳥撲滅を目指した甲斐があるというものだね。
「へえ、あのもやしのような体つきの姉ちゃんが、外出とはねぇ。こりゃ、明日は雨だわ。」
「よくもまあ本人の関係者の前でそういう事を平然と言えるな。それにしても、お前はパチュリー殿の事を知っているのか?」
「ああ、ごくたまに川を渡りに来るからね。ちょいと話し込んで追い返しているけど、いつ見ても細い体をしていたからねぇ。ありゃ、喘息こじらせると大変そうだよ。」
私も一度だけ宴会の席で見かけたことがあるけど、本当に弱そうな体をしていたな。あんなに細い腕をしていたら、お湯に入れただけでもダシが取れそう。ちゃんと食事を取ってるのかな?
「そうですか。いつもパチュリー様がお世話になっております。」
「なあに、いいって事よ。あたいも極力仕事量を増やしたくないだけなんだからさ。あんたが気にする事なんかないよ。」
「そんな事を威張るな、馬鹿者。」
さて、美味しいとの評判を聞いてきてくれたんだから、このお客さんには串揚げやお酒以外にも楽しんでもらわなくっちゃ。頑張って歌おう!
~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪~
「ふう、たまには新鮮な空気の元での食事というのも、良いものですね。この串揚げも美味しいし、お酒も美味しいですし。パチュリー様も外食をすればいいんですけど。」
「多分無理よ。あの筋金入りの日陰族が、図書館の外に出るわけ無いじゃん。」
「鈴仙、酒の勢いとはいえ、言いすぎだぞ。」
「いえ、いいんです。本当の事ですから。私も、もう少し外で体を動かした方がパチュリー様のお体に良いと思っているんです。言っても一向に聞いてもらえませんけど。」
「まあ、お前さんがそう言うなら。ところで、お前さんは酒を飲める口なのか。さっきから結構飲んでいるけど、大丈夫なのか?」
「いえ、お酒は殆ど飲んだことがありません。パチュリー様もあまりお飲みになられませんので。でも、美鈴さんが串揚げとお酒の両方を堪能するべし、と言ってましたので。」
「あいつ並に飲めればの話だ。無理して飲むとそこでダウンしているてゐの様になるから、程々にしておくんだ。」
「あたいは、別に飲みたいだけ飲めば良いと思うんだけどねぇ。人間、気が済むまで飲みたい時ってもんがあらぁがな。」
「小町のような飲兵衛は黙っていろ。と言うか、いい加減本当に私の背中を叩くのを止めてくれないか。落ち着いて酒が飲めん。」
~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪~
「なあ、ところでさ。一日中図書館に篭っていて、飽きないのかい。あたいだったら、そんな窮屈な生活五秒で嫌になるね。」
「パチュリー様はどうかは知りませんけど、私はパチュリー様が図書館を動かれようとしませんので。それに、図書館でしなければならない仕事は沢山ありますから。散らかすだけ散らかして帰っていく人がいますし。」
「それって、あの黒白、魔法使いの、事ね。うちにも、たまに荒らしに、来るけど、本当に迷惑よね・・・」
「いえ、パチュリー様がまんざらでも無いご様子なので。顔には出しませんけど、魔理沙さんが来られますと嬉しそうにしています。」
「眠そうだな、鈴仙。そろそろてゐを連れて帰ったらどうだ。それにしても、パチュリー殿がな。いっそうのこと、魔理沙に外に連れ出してもらえばどうだ。有意義な時間と健康な体が手に入って、一挙両得だぞ。」
「流石に、そこまでは。魔理沙さんも、本を勝手に持ち帰る事の方が優先順位高いみたいですし。それにしても、お酒って美味しいですね。飲んでいると、体がポカポカして気持ちが良いですし。」
「そうだろ、そうだろ。酒は良いだろう。人生、酒があってなんぼのものだからねぇ。あたいには、酒がない生活なんて考えられないよ。」
「小町が、人生語るな。それと、そろそろ控えたほうが良い。この飲兵衛の調子に合わせたら、すぐに潰れるぞ。」
「あれ、なんだか視界がクルクル回っているような気がします・・・」
~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪~
「それでですね、パチュリー様って酷いんですよ。無理だと分かっているのに、私に魔理沙さんの家まで本の取立てに行かせるんですから。」
「分かったから、お酒はもうその辺にしておくべきだと思うぞ。さっきからこの話を何回すれば気が済むんだ。」
「あれ、さっきもこの話をしましたか。それじゃあ、無理だと分かっているのに、魔理沙さんを体を張って止めなければならないですよ。敵わないって分かっているんですけど、黙って本を持って行かれる訳には行かないじゃないですか。」
「その話も、五回は聞いた。」
「そうですか。それでは、パチュリー様が無意味に図書館の模様替えをしようとする話は・・・」
「それは、十七回聞いた。悪い事は言わないから、もうそろそろお酒を止めにして帰った方が良いぞ。そうじゃなきゃ、そこでダウンしている鈴仙やてゐみたいに帰れなくなるぞ。」
「はあ、そうですか。なんだかとっても気持ちが良くて、もうちょっと飲んでいたい気分なのですが。」
「それは、限界を超えた証拠だ。明日に響いても、知らないぞ。」
「なんだい、なんだい。さっきから聞いてりゃ、つまらない飲み方をさせようとして。酒ってもんは、飲みたいだけガーと飲むもんだろ。あんたも、もっと飲みたいんだろう?」
「彼女は小町と違って、多忙の身なんだ。二日酔いするような飲み方をさせるな。」
「そうですね、もうちょっと飲みたいです。体がフワフワした感じがして、とっても気持ちが良いです。」
「だろう。ほらほら、じゃんじゃん飲もうや。」
「駄目だ、完全に手遅れだな。もう、知らん。」
「あんたも、そんな仏頂面してないで、飲んだ飲んだ。」
「ええい、絡み付いてくるな。だいたい、元はと言えば小町のせいで落ち着いて飲めなかったのだぞ!」
~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪~
気持ちよく歌い終えた後、白沢さん以外はみんな寝ちゃっていた。仕方が無いので、みんなに毛布をかけようとしたら、白沢さんが手伝ってくれた。でも、白沢さんの表情は、疲れ切ったような苦い表情をしているな。どうしたんだろう?
「女将、ここに勘定を置いてくよ。」
「あれ、もう帰っちゃうの。まだ夜明けまであるし、もう少し飲んでいけば良いのに。まだ飲み足りないって顔をしてるよ。」
「いや、今日はもういい。結局酔えなかったし、今更一人で飲むのもな。」
なんだか疲れ切った表情で、白沢さんは肩をすぼめる。うーん、なんだか可愛そうだな。どうにかしてあげたいな。
「そうだ。お客さん、私の相手をしてくれませんか?」
「うん、私が女将の相手を?」
「そうだよ。私も歌いっぱなしで喉が疲れちゃって、もうカラカラなの。でも、一人で飲むのも寂しいし。どうかな?」
「・・・まあ、それもいいか。ちょうど喧しい奴も黙っている事だし、正直まるで飲み足りていなかったし。」
「決まりだね。じゃあ、これは私からの奢りだよ。」
たまには、お客さんと飲んで夜を過ごすのも、良いよね♪
~~~ミスティアの人物名簿~~~
ミスティア・ローレライ:私の事だよ。いつもお客さんとは関係無しに、元気一杯歌を歌っています。最近の悩みは、お客さん中にツケが大分溜まっている人がいるんだけど、きっといつか払ってくれるよね?
射命丸 文:常連中の常連さん。かなりの確率で来てくれるの。酔ってもあまり騒がない、いい妖怪。来る度に落ち込んでたり喜んでたりと忙しいけど、たまに無理して酔い潰れようとする事も。新聞記者って、大変なんだなあ。通称、天狗さん。
上白沢 慧音:今日始めて来てくれたお客さん。満月の夜に会ったら非常に怖かったけど、一緒に飲んでみるととても良い人。でも、そのせいか色々とお酒の席で絡まれる事が多い、ちょっと可愛そうな人。多分に酔うと説教魔になる事が後に発覚。通称、白沢さん。
小野塚 小町:今日始めて来てくれたお客さん。飲むと威勢が良くなるんだけど、叩き魔。大声で喋るので、私の歌の邪魔になる事も。何となく船乗りって感じがするんだけど、酔うとちょっと親父臭くなるのは、みんなの秘密。通称、死神さん。
鈴仙・優曇華院・イナバ:常連さん。鳥鍋問題で喧嘩した事もあったけど、今はお友達。普段は良い人で、普通に酔うくらいなら何も問題は無い。でも、多分に酔いだすとエンジン全開。容赦の無い辛辣な言葉で、相手をバッサバッサと切り捨てる。かかり始めるとすぐに酔い潰れるのが救いかな。通称、月兎さん。
因幡 てゐ:常連さんじゃないけど、よく私の屋台に来てくれる妖怪。大体の場合は飲んでいる月兎さんを連れ戻しに来るんだけど、時々流行っているらしいお酒や食材を何故か格安で売ってくれる、とても良い妖怪。飲むと手癖が悪くなるのには要注意。通称、兎さん。
小悪魔:今日始めてのお客さん。どこかホンワカしていて、良い妖怪。でも、今日屋台に来てくれるまで知らなかったの、御免なさい。下戸なので、飲ますな、注意!(白沢さん談)通称、小悪魔さん。
いいなぁこの雰囲気。
現実じゃあこういう屋台も幻想になってしまっているんですかねぇ。
女将さん、串焼き二つと熱燗。
少し温めにね。
このなんとも言えないのんびりした雰囲気、大好きです。
苦労性の白沢さんや、他ではあまり見れない毒舌な月兎さんが個人的にツボでした。
小悪魔かぁいい(*´∀`)
ほのぼのとした雰囲気が好きです。客同士の掛け合いがステキすぎてもう・・・
いろいろ過酷な条件で働いている幻想郷の労働階級には、こういった場が必要なのですよ、きっと。
こんな飲み屋で馬鹿やりたいものです。
明日のために今日ぶっ壊れるのも必要なんでしょうね。
私は飲むだけなら飲めるけれどあまりたしなまないので良くはわかりませんが……とりあえず小悪魔みたいなタイプは飲ませないように注意ですね。それとも、酔わせて……?
だが歌が流れる静かな夜に少しだけ賑やかに会話を交し合う風景は
実に素敵でした。
妖怪も人間も飲みすぎには注意しましょう。^ ^;)
今回も面白いもの有難うゴザイマス
次回はアリス・魔理沙の登場を希望。
まぁ、酒飲んで飲まれるのはともかくとして。
やばい…女将ミスティ…まじ惚れそう。(笑)
私も同じく、シリーズ化希望でっ。
エンジン全開うどんげがいいです。でも愚痴の内容が割とよく知られてるものなので、それに加えて少しひねった愚痴を考えるのもいいかもしれません。
あと、せっかくアンコールやったんですから、これはもうぜひコンプを目指しましょうw
でも飲みすぎには注意してね。
アンコールも期待通りですよGJ!!
この作品のおかげでみすちーの好感度ががんがん上がってますw
シリーズ化希望がここにも一人。
今回も良い雰囲気の小粋な居酒屋、堪能させていただきました。
前回に引き続きキャラ各々の上戸設定が巧みですね。あーたしかにこいつこんな感じ、って思います。
もしよろしければもう少しこの酔いどれ横丁の人情話、堪能させてくださいな。
え? 多すぎるって?
なに、いいモン読ませてもらったからね。
釣りはとっといてくれよ。
次回も楽しみにしております。
個人的にはもこやけーねverも見てみたいです
相変わらずまったりとした雰囲気で好きですよ
読みながら「うんうん、わかるよわかるよ・・」とか言ってしまう
出来ることならいける所まで行っていただきたい
幻想郷の皆さんは、今日も気苦労が絶えないんですね・・・合掌
シリーズ化、もししていただけるのでしたらば次回お待ちしています
あぁ、女将さん。一番人が良くておせっかい焼き故か酒の席でもなだめ役になる
慧音さんに肝焼と串巻、あと熱燗回してやってください。私のおごりということで
そんなとこで恐れるくらいなら「このネタは無茶かなぁ?」と戦々恐々としつつ次の作品を作ってくれた方が売り上げも伸びますよ♪
この雰囲気大好物です。
またここに飲みに来ますね~♪
あ、お勘定?じゃあ、ハイ、これ。つ100点
え?お釣り?そんなもんいらないよ。上手いもん頂いたからね、気持ちだよ♪
お勘定置いときますね♪
何か自分も一緒に飲んでるような気持ちになります!
みすちーの女将役も最高! 客の邪魔をせず美味しい料理と酒を出す。
客のプライベートに口を出さず、ただ歌っているだけ。
あーほんとにこういう店に飲みに行きたいなぁ
しかし……パチェ……良く三途の川に来てるのか……
この自然な感じが良いので。
一点だけちょっと気になる点を。「かわいそう」は当て字にするなら「可哀相」です。
間隔が空いても良いので続編期待してます。
やはり慧音さんはどこでも世話を焼きたがるようで…いい人(半分だけど)だ
もっと先が読みたいです。
シリーズ化希望!
目に浮かびました。
コレは良い屋台を覗かせてもらいました。
アンコールアンコール!
苦労人だなぁ・・・。
愚痴ってるうどんげの後ろにえーりんを立たせてみたいとか
ついつい色々と妄想してしまいました