「いやぁ、年が変わってすぐ行けば空いてると思ったけれど、そんなことはないのねぇ・・・」
人ゴミの中、隣に居るであろうメリーにそう声をかける。私と同じように窮屈そうに(胸の分もしかしたら彼女の方が窮屈かもしれないガッデム)しているメリーは笑いながら、
「やっぱ来る人多いのねぇ」
「まぁ、皆考える事は同じってことねぇ・・・・・ま。あと少しなんだし、我慢して並ぶわよ」
私達秘封倶楽部は今、初詣に来ていた。
0:00丁度を私の便利な目で確認し家を出て、家から5分ほどの場所にある神社。私達は5円玉を持ち、賽銭を入れて手をあわせ、すぐに帰ろうと思っていた。
しかし、現実は非情だった。
0:00丁度に家を出るのが私たちだけのはずがないのだ。というか、既に先客で結構な行列ができていた。賽銭を入れてすぐ帰るつもりだった私とメリーは、寝巻きにジャケットを羽織っただけというなんともアホな格好でその行列に並んでいた。
待つこと20分。ようやく先頭から参列目の場所まできた。正直もうここから投げ入れてとっとと帰ってしまいたいけれど、それをやるのはなんとなく駄目な気がした。
というか、せっかく寒い思いをして待っていたのに、投げ入れて終わりなんて悲しい事をしたくなかった。
「さ、寒いメリー・・・・・・死ぬぅ・・・・・・」
「きゃっ!れ、蓮子!私も貴女とほとんど変わらない格好なんだから背中に冷えきった手を突っ込まないで!冷たい冷たい冷たい!!」
「いいじゃないちょっとぐらい!減るもんじゃないし」
「突然そんな冷たい手入れられたら寿命が減るわよ!」
などと、いかにも年頃の女子大生らしいやり取りをしているうちに、何時の間にやら先頭に立っていた。
私とメリーはほぼ同時に5円玉を入れ、二礼二拍手一礼をして列から外れる。
「はぁ~、やっと終わった・・・・・・まさかこんな事になるとは・・・・・・寒ッ!」
私の言葉に呆れたような視線を向けるメリー。
正直、貴女も同じような格好で同じような思考をした結果一緒にこんな状態になったんじゃないと全力でツッコミたいけれど、敢えて堪える。
「さ。さっさと帰るわよ!」
「待って蓮子!あそこ甘酒配ってるわ!」
メリーが目をキラキラさせながら私に言った。
そういえば、メリーは甘酒が好きだったっけ?
よく覚えていない。
「寒いし、せっかくだから貰いに行きましょうか」
「そうね!そうしましょう!」
気のよさそうなお婆さんから甘酒を受け取り、二人同時に一息でグイッと飲み干す。
「うぐぅっ・・・・・・!」
飲み干すと同時、酸素を求めて喘ぐような声が聞こえた――というか、私の声だった。
「どうしたの?蓮子」
「わ、忘れてた・・・・・・!」
忘れてた。
完ッ全に忘れていた。
「私、甘酒大嫌いだった・・・」
「えぇ!?・・・・・・・こんなに美味しいのに」
「えぇ~美味しい?なんか辺に甘いし、独特な匂いするし。正直悲しいくらいおいしくな――・・・・・・」
言葉を全て言い切る前に、甘酒を配っていたおばあさんの悲しそうな顔が目に入った。
しまった・・・っ!お婆さんの目の前でなんて話をしてしまったんだ私は!
「す、すみません・・・・・・」
とりあえず謝罪し、その場を若干速足で去る。甘酒を配っているおばあさんの目の前で甘酒嫌いなんだよネェ~ってどんな嫌がらせだ・・・・・・。
自分の愚行に呆れながら溜息を吐く。
「あら。新年早々溜息?今年くるハズの運が逃げてくわよ?」
「新年早々甘酒配ってたお婆さんの目の前であんな話をした時点で今年の運なんて高が知れてるわ・・・・・・」
「まぁ、それもそうかしらねぇ」
目を細めて私の言葉に同意したメリーは、突然何かをひらめいたように両手を合わせて、
「そういえば蓮子。貴女はなんてお願いしたの?」
「そんな事教えるわけないじゃない」
即答。
間髪入れずに私はそう応えた。
「えぇ~、いいじゃないケチィっ」
「というか、教えないほうがいいって聞いた事あるし」
「まぁ、大体予想つくしいいわ。どーせ結界暴き~とか、大学のレポートを楽に~とかでしょう?」
「ふふ。どうかしらね」
メリーの言葉に軽く応える私。
――どれもハズレよ、メリー。
と。
心の中で笑う。
本当の願いは。
私の、本当の願いは――・・・・・・。
゛――今年も、メリーと一緒に居られますように〟。
人ゴミの中、隣に居るであろうメリーにそう声をかける。私と同じように窮屈そうに(胸の分もしかしたら彼女の方が窮屈かもしれないガッデム)しているメリーは笑いながら、
「やっぱ来る人多いのねぇ」
「まぁ、皆考える事は同じってことねぇ・・・・・ま。あと少しなんだし、我慢して並ぶわよ」
私達秘封倶楽部は今、初詣に来ていた。
0:00丁度を私の便利な目で確認し家を出て、家から5分ほどの場所にある神社。私達は5円玉を持ち、賽銭を入れて手をあわせ、すぐに帰ろうと思っていた。
しかし、現実は非情だった。
0:00丁度に家を出るのが私たちだけのはずがないのだ。というか、既に先客で結構な行列ができていた。賽銭を入れてすぐ帰るつもりだった私とメリーは、寝巻きにジャケットを羽織っただけというなんともアホな格好でその行列に並んでいた。
待つこと20分。ようやく先頭から参列目の場所まできた。正直もうここから投げ入れてとっとと帰ってしまいたいけれど、それをやるのはなんとなく駄目な気がした。
というか、せっかく寒い思いをして待っていたのに、投げ入れて終わりなんて悲しい事をしたくなかった。
「さ、寒いメリー・・・・・・死ぬぅ・・・・・・」
「きゃっ!れ、蓮子!私も貴女とほとんど変わらない格好なんだから背中に冷えきった手を突っ込まないで!冷たい冷たい冷たい!!」
「いいじゃないちょっとぐらい!減るもんじゃないし」
「突然そんな冷たい手入れられたら寿命が減るわよ!」
などと、いかにも年頃の女子大生らしいやり取りをしているうちに、何時の間にやら先頭に立っていた。
私とメリーはほぼ同時に5円玉を入れ、二礼二拍手一礼をして列から外れる。
「はぁ~、やっと終わった・・・・・・まさかこんな事になるとは・・・・・・寒ッ!」
私の言葉に呆れたような視線を向けるメリー。
正直、貴女も同じような格好で同じような思考をした結果一緒にこんな状態になったんじゃないと全力でツッコミたいけれど、敢えて堪える。
「さ。さっさと帰るわよ!」
「待って蓮子!あそこ甘酒配ってるわ!」
メリーが目をキラキラさせながら私に言った。
そういえば、メリーは甘酒が好きだったっけ?
よく覚えていない。
「寒いし、せっかくだから貰いに行きましょうか」
「そうね!そうしましょう!」
気のよさそうなお婆さんから甘酒を受け取り、二人同時に一息でグイッと飲み干す。
「うぐぅっ・・・・・・!」
飲み干すと同時、酸素を求めて喘ぐような声が聞こえた――というか、私の声だった。
「どうしたの?蓮子」
「わ、忘れてた・・・・・・!」
忘れてた。
完ッ全に忘れていた。
「私、甘酒大嫌いだった・・・」
「えぇ!?・・・・・・・こんなに美味しいのに」
「えぇ~美味しい?なんか辺に甘いし、独特な匂いするし。正直悲しいくらいおいしくな――・・・・・・」
言葉を全て言い切る前に、甘酒を配っていたおばあさんの悲しそうな顔が目に入った。
しまった・・・っ!お婆さんの目の前でなんて話をしてしまったんだ私は!
「す、すみません・・・・・・」
とりあえず謝罪し、その場を若干速足で去る。甘酒を配っているおばあさんの目の前で甘酒嫌いなんだよネェ~ってどんな嫌がらせだ・・・・・・。
自分の愚行に呆れながら溜息を吐く。
「あら。新年早々溜息?今年くるハズの運が逃げてくわよ?」
「新年早々甘酒配ってたお婆さんの目の前であんな話をした時点で今年の運なんて高が知れてるわ・・・・・・」
「まぁ、それもそうかしらねぇ」
目を細めて私の言葉に同意したメリーは、突然何かをひらめいたように両手を合わせて、
「そういえば蓮子。貴女はなんてお願いしたの?」
「そんな事教えるわけないじゃない」
即答。
間髪入れずに私はそう応えた。
「えぇ~、いいじゃないケチィっ」
「というか、教えないほうがいいって聞いた事あるし」
「まぁ、大体予想つくしいいわ。どーせ結界暴き~とか、大学のレポートを楽に~とかでしょう?」
「ふふ。どうかしらね」
メリーの言葉に軽く応える私。
――どれもハズレよ、メリー。
と。
心の中で笑う。
本当の願いは。
私の、本当の願いは――・・・・・・。
゛――今年も、メリーと一緒に居られますように〟。
面白かったです。