山海経に曰く。
東の果て、青丘の北に黒歯国があり、その更に北に扶桑と呼ばれる巨木が聳えている。
その高さは実に300里、梢は天に達し、根は黄泉にまで伸び、葉はカラシナに似る。
扶桑の下には湯源の谷があり、10の太陽が水浴びをする。太陽は皆、鳥を載せ一つの太陽が戻ると一つの太陽が出てゆく。
天を巡って草臥れた太陽を彼らの母がを洗って枝に干し、その輝きを蘇らせると言う。
東の果てにあるこの樹にちなみ、日ノ本の旧い名を「扶桑国」とも呼ぶ。
* * *
「これはまた、なんとも見事な」
地の底の都を眺め、純狐は感嘆の声を上げる。
次の怨念の再発まで幻想郷をゆるりと巡ろうとした次第だったが、友人から面白い場所があると教えられた。
なんでも、放棄された地獄を利用した都なのだとか。
はて、地獄の女神が面白いと言う地獄の都とはいかなるものか、と赴いた次第であるが……なるほど、これは面白い。
「地の底の、黄泉の跡地に活気があるとは」
大抵の世界の地下世界は死の世界である。
既に終わった者たちのそこは、穢れと静寂と暗鬱に満ち満ちたというのが常識なのだが、この地下にそのような空気は無い。
地上から追われた厄介者どもが住まうというが、さりとて怨叉も感じぬ。
どこを向いても厄・疫・悪と物騒な連中が雁首を揃えているというのに、聊かも淀んでおらぬ。
追われた者にも関わらずこの有様とは、一体この地底はいかなる時代を過ごしてきたのだろう。
永い時の中で、怨みを忘れてしまったのか、それとも最初から恨みなど無かったのか。
いずれにしろ、まるでこの都は自分のようだ。
月から見えぬ場所に、自分に似た土地がある、という事にすっかり純狐は上機嫌となり、あちらこちらを歩き回る。
見知らぬ何かは地底の住民の目を引くが、純狐はそのような事を一切気にかけない。
そういうものを含めての地底観光というのが面白いせいだ。
地上の里や街、外の世界の地下街とも違う。
無論、月の都とも違う、天蓋のある街というのが実に良い。
天が見えるという当たり前がないだけで、都は全く違うモノに、驚きを持ったモノに変化する。
地の底の都は、純狐の期待通りの都である。
尤も、そのお陰で気が付くとすっかり都から外れた場所に出てしまう。
これはいかぬ、すぐに戻ろうとするが、純狐の視界が遠くに妙な建物を捉えた。
今までの古風な都とは違う、何やら随分と近代的な建物だ。
天蓋に伸びるほどに高いそれは、知る者なればビルディングと呼ぶだろう。
「地下にあんなものが」
如何なるものが何の用でアレを作ったのか。
折角の観光なのだ、是非隅々まで見て回ろうと、純狐はそのビルディングを目指して歩みを始めた。
* * *
硫黄の匂いが立ち込め、嫌に蒸し暑いその場所にたつ奇怪極まりないビル。
遠くから見ても高い事が判るそのビルは、近くで見て見るとまさに見上げるようである。
明らかに地上にも達しているであろう。作りを見ても、最近作られた物が判る。
地上と地下を結ぶ通路にしてはいささか大仰過すぎるし、なにより関係者以外立ち入り禁止の看板。
「中は見られないのかしら?」
禁じられていれば観たくなる。
それを自制できるぐらいには純狐は大人だ。
しばらく周囲を見回ってみたが、どうにも埒があかず仕方なく都に戻ろう、と背を向けた時である。
嫌に重い音を立てて扉が開く音がした。
何かと思い、振り返った次の瞬間に、純狐は黒い影が飛び出してくるを見た。
「おーわったー!!」
実に元気の良い叫び声を上げて出てきたのは、一羽の烏である。
黒なのに炎を思わせる髪を振りかざし、同じような黒い羽根を精一杯に広げて、扉から純孤を飛び越えて地に降り立つその烏。
純狐が目を白黒させていると、烏がくるりとこちらに向いた。
「……誰?」
「お前こそ何者です?」
「私? 私は空だよ!」
烏が応える。
太陽の様に明るい娘だ。堂々と己の名を名乗れる者は極悪人か愚か者と相場が決まっているが、さてこの娘はどちらなのだろう。
「で、貴女は誰?」
「私の名は純狐。今は暇を持て余すブラブラ旅の仙霊である」
「……うにゅ?」
ちょっと気取った名乗りをしてみたが、どうもスベってしまったようだ。
「空、と言ったね?」
「うん」
「ここの関係者なの?」
「うん!」
「ここは何の施設なのかしら」
「知らない!」
「知らない?」
「うん、知らない」
うむ、どうやらこの烏は愚か者の方のようだ。
しかもとびっきりの。
「知らずにこの施設にいるの?」
「だって知らなくてもお仕事できるし」
「何の仕事……と聞いても判らないのでしょうねぇ」
「うん、良く分かんないけど、パワー全開にしてるんだよ!」
「おやまぁ、そんな全開にしてて大変じゃないの?」
「大変だし、すっごく疲れるけど、温泉に入るとぜんぶ吹っ飛んじゃうの!」
そこで、純狐はこの硫黄の匂いが温泉のものである事を知る。
嫌に蒸し暑いのも、近くに源泉があって湯気がただよっているせいなのか。
「近くに温泉があるの?」
「そうだよ、すぐそこにあるんだ」
すぐそこか。
少し歩き回ったし、湯に浸かって一息つくのも良いかもしれない。
「私も入ってよいかしら?」
「え? うーん、いいんじゃないかな。地上じゃ巫女も温泉に入るんでしょ、私知ってるよ!」
なんでもない事を、得意げに話す烏。
その有様がなんだか幼い子供の様に見える。
「ふふっ、なら案内して貰える?」
「いいよ、こっち!」
烏がパタパタと羽根を揺らして地下を飛ぶ。
騒がしい子だな、と思いつつ、純狐はそんな空の姿を観て微笑むのであった。
そうして案内された先は、間欠泉地下センター専用温泉という看板が掲げられている建物。
専用、という看板に純狐は眉根を潜めたが、空曰く「大丈夫だよ!」との事。
先ほどのやり取りから、本当に大丈夫なのか若干不安であったが、話を聞くに地底の鬼や妖怪も時折利用するらしい。
河童たちが管理をしている、との事だが、彼らも気にしておらず、専用というのも有名無実化しているのだろう。
まぁ、よくある話である。
それは兎も角として、建物の中は清潔感のある脱衣所と幻想郷にしては近代的な洗面所。
これも河童が造ったのだろうか。と、感心するまえに、空はさっさと服を脱いで、籠の中に突っ込んで奥へと突撃してしまう。
「いっちばーん!」
「おや、まぁ」
なんとも、騒がしい。
一番風呂が嬉しいのか。
いや、一番風呂がというより、その場の勢いが楽しいのだろう。
幼い子供の様と評したが、まさしく子供なのだろう。
くすくすと笑い、純狐も衣を脱いで髪を纏め上げ浴室の扉を開く。
途端に大量の湯気が純狐を包み、それを抜けた先には予想よりも大きな浴槽が広がっていた。
十人ほどならば余裕を以て入れるだろう、他に入浴中の者はおらず、これを二人で占領できるのはさぞかし気持ちが良いだろう。
上機嫌で桶を手に取り、湯をくみ上げて身を清める。
空はというと、とっくに湯に浸かって気持ちよさそうにしていた。
次いで、純狐も、と足を付けた瞬間である。
「あーがりー!」
濡れて黒い羽根からしぶきを上げて、空が湯から上がろうとする。
余りにも短いそれに、流石の純狐も目を白黒させてしまった。
「もう出てしまうの?」
「うん!」
「まだ体も温まってないでしょうに」
「でも、体も洗ったし、ちゃんとお湯に入ったよ?」
まさに烏の行水だが、これはいかぬ。
何の仕事をしているのかは知らないが、折角の温泉での癒しが無駄になってしまうではないか。
「ゆっくり浸かって……そう、100まで数えて出るのが良いのよ」
「知ってる! さとり様が言ってたよ! ……でも、数えてる間にこんがらがっちゃって判んなくなっちゃうから……」
空がしゅんと項垂れる。
さとり様、というのが誰かは判らないが、空にちゃんと風呂でのマナーを教えている者がいるのだろう。
空も、なんとかそれを実践しようとしたが失敗している、と、そんな所だろうか。
純狐は「ふむ」と一つ頷いて湯の中に進み、空に手招きをする。
「空、いらっしゃい」
「うん?」
「私と話をしましょう。さとり様の事を教えてくれる?」
「さとり様の事? いいよ、何でも聞いて!」
二人は揃って湯に浸かり、そして空は大いに語る。
自分の主が古明地さとり、という妖怪で地霊殿で他の動物達と共に使えている事。
妹の古明地こいしとも時折遊ぶ事。
一番の親友であるお燐にいつも世話になっている事。
なんだか良く分からないけど、太陽の力を得て強くなった事。
それで地上を破壊しようとしたが、巫女に負けてしまった事
沢山の事を、空は語り、純狐はそれを一つ一つ聞いた。
途中で何回も仲間の事を語るが、それだけ地霊殿の皆の事が大切なのだろうというが尚良くわかるというものだ。
「お前たちは、扶けあっているのだね」
「うん!」
地上破壊を目論んだ凶鳥である事が信じられぬほどに朗らかな笑顔だ。
語る姿を観ても判る、この子はきっと、自由な子だ。
己の思うままに誰かを愛し、己の思うままに何かを行い、だがしかし課せられた事も受け入れられる。
だからこそ、自由なのだ。
「さて、そろそろ良いでしょう」
「うにゅ? 出るの?」
「えぇ、もう十分よ」
「うん、じゃあ出よう!」
空がばさり、と羽根を広げると羽根から湯がしぶきとなって飛び散る。
当然、純狐にもかかって思わず声が出てしまった。
「あ、ごめんなさい」
「いいのよ。それにしても、羽根も随分と重そうね」
「だから、羽根を動かして水を飛ばすの」
「なるほど」
純狐が少し離れ、お空は思いっきり羽根を羽搏かせる。
そのまま飛びそうな勢いで、羽根に入り込んだ湯を振り払っているのだ。
それが終わり、二人は脱衣所に戻る。
用意されていたタオルで体を拭い、髪を拭く。
空の髪は、湯にしっとりと艶がでて、まさに濡れ烏の様相だ。
惜しむらくは、空自身がそれをわしゃわしゃと乱雑に拭いてしまう事だろうか。
「……さすがに櫛はおいてないか」
共同で使う浴場だからか、櫛の類は置いていない。
純孤もここで入浴する予定は無かったので、持ってきてはいない。
もしあれば、あの髪と羽根を梳いてやれるのだが。
無いものは仕方がない。
「じゃあ、帰ろうよ」
「そうしよう」
温泉からの帰り道(と言っても空にとってのだが)にて、空はとても上機嫌であった。
家に帰るのが、それほど楽しみなのだろうか。
純狐は家に帰る、という事をすっかり忘れてしまった。
いや、家に帰るだけではない、様々な事を永い年月の中で忘れてしまい、今の純狐は怨念を礎にした何かである。
今こうしているのも、怨念の揺らぎが緩やかであるという事でしかない。
恨みつらみが純粋化して、却って理性になっているのは幸なのか不幸なのか。
……すくなくとも、空のような自分と違う純粋を「羨ましい」と思えるのは幸であると思いたい。
「それでね、巫女がすっごい乱暴なんだよ」
「お前も巫女にやられたのね」
「そうなんだよ! 紅のと翠の!」
「私も、その二人に会ったわ」
道の間でも会話を交わし、そうこうしている内に二人は地底の中でも一際見事で大きな館にたどり着く。
「ここが地霊殿」
「うん、さとり様のお屋敷だよ」
そして、空の家であり純狐の家では無い。
故に、二人はここでお別れである。
「それじゃ空。今日は楽しかったわ」
「……」
「空?」
「すごいや! 体がまだあったかい!」
空は、何か途轍もない発見をしたように跳び上がる。
「ねぇねぇ、これが温泉の効果なの?」
「そうよ。ゆっくり浸かれば、その分、体も長く温まるの」
「だからさとり様、100まで数えなさいって言ってたんだ」
しきり感心しきって頷くその姿をみて、純孤はくすりと笑う。
しかし、空の表情は次の瞬間に曇ってしまった。
「あ……でも、次はちゃんと100まで数えられるかな」
「おや、100まで数える必要なんて無いわ」
「どうゆうこと?」
「数えるのが大変なら、今日の様に話をしながら浸かればよい」
「あ! そうか!」
曇った顔がまたぱっと花咲いて。
ほんとうに見て居て飽きない子だ。
「それでは、改めて。今日は楽しかったわ空」
「私もだよ、有難う! 明日もまた会える?」
「数日は地底に逗留するつもりだから、また会いに来よう」
「うん、約束だよ!」
空は地霊殿に走ってゆき、入り口で振り返って大きく手を振る。
純狐も、小さく手を振ってそれに応えるのであった。
* * *
それから、何日かが経った。
純狐は適当な宿を取り、当初の目的の通りにのんびりと地底観光を楽しんでいる。
ただ一つ、予定と違うのは、風呂に関する事がらであった。
宿の湯では無く、空と共にあの温泉に浸かっている。
ある日は北を、ある日は南を、時には東に西へと気ままに足を運ぶが、最後はあの温泉で汗を流す。
空はその日にあった事を、一生懸命に話してくれる。
純狐も、その日に見た事を話し、時には空に教えてもらう。
話の端々から、空の知があまり良く無いのは理解しているが、だからと言って空の知識を軽んじるつもりはない。
純狐が知らぬ事を、空が知っている事だってあるのだ。
そうして補い合うのが大切なのを純孤は知っている。
もちろん、そんな硬い事だけではない。
むしろ、湯気の中であがる空の笑い声が、なんとも楽しくて、だから足を運ぶのだ。
湯に浸かって体を温め、話をして時間を愉しむ。
このようなのは何時ぶりだろう。
純狐は、すっかり空との時間を気に入ってしまった。
とは言え、時間は常に過ぎてゆく。
押しとどめようともそれは一時。永劫に逃れる術は無い。
その日は、そんな日だった。
「ほら、空、いらっしゃい」
「うん」
湯から上がった二人は、鏡の前に並ぶ。
空は椅子に座り、純狐はその後ろに立つ。
手に持つのは、黄楊の櫛である。
地下に来た次の日に、工芸品の店を覗いて、出来る限り上等なものを選んで買ってきたのだ。
やはり、風呂からあがったのならば髪を梳かねばならぬ。
それは如何なる者であろうと、女子の嗜みと言うものだ。
しかし、空はその辺りに無頓着で、髪は手入れしないの? と聞くと、主にやってもらうのだが、仲間が沢山いて順番なので偶にになってしまうそうなのだ。
実に勿体ないと思うと、つい世話を焼きたくなってしまった。
純狐は、空の見事な髪を手に取って櫛を入れる。
乱雑に扱っているのに、気持ちよく櫛が通る良い髪だ。
もっと手入れをするならば、きっとため息が出るぐらいに輝くに違いない。
気持ちよさそうにされるがままの空を見て、純狐はついほころんでしまう。
こんな事は、本当に何時ぶりであろうか。
遥かなる記憶の彼方から引きずり出す事も出来ない程の昔である。
とは言え、こんな関係も今日でお終いだ。
地底観光もあらかた終わり、明日はまた地上や異界で気の向くままに過ごす日々になる。
「ねぇ、本当に帰っちゃうの?」
「ええ」
「ふぅーん」
空の会話も、なんとなく弾まない。
何時もだったら明るく華やかなこの時間が、いやに静かだ。
言葉を交わせど、あまり続かず、髪を梳く音ですら聞こえそうになる。
そんなのがどれほど続いただろう。
「さあ、終わったわよ」
純狐が、空を開放する。
湯で濡れ、純孤が梳いたその髪。
艶やかなれど妖しさは無く、黒の中に炎が揺らめく様だ。
空の子供の様な明るさに隠れがちだが、その美しさは確かに空を輝かせている。
鏡の中に映ったその黒を見て、少し沈んでいた空の顔もまた輝く。
右に左にと角度を変え、火の粉が散る様に軽やかな髪を楽しんで。
そして、満面の笑顔で、こう言うのだ。
「ありがとう! お母さん!!」
純狐が、聞いた言葉で大きく目を見開く。
空も、言った言葉できょとんとする。
「お母さんだって。えへへ、間違えちゃった」
照れくさそうに笑う空。
純狐は……今だに、言葉に反応しきる事が出来ない。
母、予想だにしていなかった言葉だ。
そして、とても懐かしい言葉だった。
「ねえ、お母さん……って、また言っちゃった」
悩ましそうに頭を抱える空に、純狐は、自分でも驚くような声をかける。
「なあに、空」
そう、まるで、子供をあやすような、その声。
純狐自身が忘れ去って、二度と覚える事も無いと思っていた。
それを、今になって、当たり前の様に使えている。
不思議な事だろうか。
純粋なる怨念の上に立つ、名前すら覚えていない自分が、こんな事を出来るのは。
だが、自分の声に笑顔を見せる空の前に、そんな疑問は消し飛んでしまう。
「うん、あのね、お母さん……また、会いに来てくれる?」
「……えぇ……えぇ、勿論よ空」
「本当に!?」
母。
嗚呼! なんという響きであろう!
名もなき仙霊の、その始まり。
今に続く荒ぶる怨みの、その根源。
それが、こんなにも、嬉しいのか。
こんなにも、愛おしいのか。
血も繋がらぬ、縁も無い、たった数日の、けれども確かに自分を慕ってくれる娘の心を抱きしめたい。
命が最初に出会うもの。
誰かとの繋がりの、一番最初。
この国が扶桑国と呼ばれるよりもさらに古い時代からある、その概念。
それに、いま再び出会おうとは!
「どうしたの? お母さん」
「何でもないわ、そう、なんでもないのよ」
純狐は空の手を取る。
その、夜を振り払う陽の暖かさ。
「今度来た時は、地霊殿の皆を紹介してくれる?」
「うん! もちろんだよ! さとり様やこいし様や、お燐や……えぇっと、兎に角沢山、沢山、皆でお母さんを待ってるからね!」
空が笑い、純狐は微笑む。
それが、全てであった。
後日、約束通りに地底を訪れた純狐を、空が「お母さんだよ!」と地霊殿に紹介してちょっとした騒ぎになるのだが……
それはまた、別の話である。
東の果て、青丘の北に黒歯国があり、その更に北に扶桑と呼ばれる巨木が聳えている。
その高さは実に300里、梢は天に達し、根は黄泉にまで伸び、葉はカラシナに似る。
扶桑の下には湯源の谷があり、10の太陽が水浴びをする。太陽は皆、鳥を載せ一つの太陽が戻ると一つの太陽が出てゆく。
天を巡って草臥れた太陽を彼らの母がを洗って枝に干し、その輝きを蘇らせると言う。
東の果てにあるこの樹にちなみ、日ノ本の旧い名を「扶桑国」とも呼ぶ。
* * *
「これはまた、なんとも見事な」
地の底の都を眺め、純狐は感嘆の声を上げる。
次の怨念の再発まで幻想郷をゆるりと巡ろうとした次第だったが、友人から面白い場所があると教えられた。
なんでも、放棄された地獄を利用した都なのだとか。
はて、地獄の女神が面白いと言う地獄の都とはいかなるものか、と赴いた次第であるが……なるほど、これは面白い。
「地の底の、黄泉の跡地に活気があるとは」
大抵の世界の地下世界は死の世界である。
既に終わった者たちのそこは、穢れと静寂と暗鬱に満ち満ちたというのが常識なのだが、この地下にそのような空気は無い。
地上から追われた厄介者どもが住まうというが、さりとて怨叉も感じぬ。
どこを向いても厄・疫・悪と物騒な連中が雁首を揃えているというのに、聊かも淀んでおらぬ。
追われた者にも関わらずこの有様とは、一体この地底はいかなる時代を過ごしてきたのだろう。
永い時の中で、怨みを忘れてしまったのか、それとも最初から恨みなど無かったのか。
いずれにしろ、まるでこの都は自分のようだ。
月から見えぬ場所に、自分に似た土地がある、という事にすっかり純狐は上機嫌となり、あちらこちらを歩き回る。
見知らぬ何かは地底の住民の目を引くが、純狐はそのような事を一切気にかけない。
そういうものを含めての地底観光というのが面白いせいだ。
地上の里や街、外の世界の地下街とも違う。
無論、月の都とも違う、天蓋のある街というのが実に良い。
天が見えるという当たり前がないだけで、都は全く違うモノに、驚きを持ったモノに変化する。
地の底の都は、純狐の期待通りの都である。
尤も、そのお陰で気が付くとすっかり都から外れた場所に出てしまう。
これはいかぬ、すぐに戻ろうとするが、純狐の視界が遠くに妙な建物を捉えた。
今までの古風な都とは違う、何やら随分と近代的な建物だ。
天蓋に伸びるほどに高いそれは、知る者なればビルディングと呼ぶだろう。
「地下にあんなものが」
如何なるものが何の用でアレを作ったのか。
折角の観光なのだ、是非隅々まで見て回ろうと、純狐はそのビルディングを目指して歩みを始めた。
* * *
硫黄の匂いが立ち込め、嫌に蒸し暑いその場所にたつ奇怪極まりないビル。
遠くから見ても高い事が判るそのビルは、近くで見て見るとまさに見上げるようである。
明らかに地上にも達しているであろう。作りを見ても、最近作られた物が判る。
地上と地下を結ぶ通路にしてはいささか大仰過すぎるし、なにより関係者以外立ち入り禁止の看板。
「中は見られないのかしら?」
禁じられていれば観たくなる。
それを自制できるぐらいには純狐は大人だ。
しばらく周囲を見回ってみたが、どうにも埒があかず仕方なく都に戻ろう、と背を向けた時である。
嫌に重い音を立てて扉が開く音がした。
何かと思い、振り返った次の瞬間に、純狐は黒い影が飛び出してくるを見た。
「おーわったー!!」
実に元気の良い叫び声を上げて出てきたのは、一羽の烏である。
黒なのに炎を思わせる髪を振りかざし、同じような黒い羽根を精一杯に広げて、扉から純孤を飛び越えて地に降り立つその烏。
純狐が目を白黒させていると、烏がくるりとこちらに向いた。
「……誰?」
「お前こそ何者です?」
「私? 私は空だよ!」
烏が応える。
太陽の様に明るい娘だ。堂々と己の名を名乗れる者は極悪人か愚か者と相場が決まっているが、さてこの娘はどちらなのだろう。
「で、貴女は誰?」
「私の名は純狐。今は暇を持て余すブラブラ旅の仙霊である」
「……うにゅ?」
ちょっと気取った名乗りをしてみたが、どうもスベってしまったようだ。
「空、と言ったね?」
「うん」
「ここの関係者なの?」
「うん!」
「ここは何の施設なのかしら」
「知らない!」
「知らない?」
「うん、知らない」
うむ、どうやらこの烏は愚か者の方のようだ。
しかもとびっきりの。
「知らずにこの施設にいるの?」
「だって知らなくてもお仕事できるし」
「何の仕事……と聞いても判らないのでしょうねぇ」
「うん、良く分かんないけど、パワー全開にしてるんだよ!」
「おやまぁ、そんな全開にしてて大変じゃないの?」
「大変だし、すっごく疲れるけど、温泉に入るとぜんぶ吹っ飛んじゃうの!」
そこで、純狐はこの硫黄の匂いが温泉のものである事を知る。
嫌に蒸し暑いのも、近くに源泉があって湯気がただよっているせいなのか。
「近くに温泉があるの?」
「そうだよ、すぐそこにあるんだ」
すぐそこか。
少し歩き回ったし、湯に浸かって一息つくのも良いかもしれない。
「私も入ってよいかしら?」
「え? うーん、いいんじゃないかな。地上じゃ巫女も温泉に入るんでしょ、私知ってるよ!」
なんでもない事を、得意げに話す烏。
その有様がなんだか幼い子供の様に見える。
「ふふっ、なら案内して貰える?」
「いいよ、こっち!」
烏がパタパタと羽根を揺らして地下を飛ぶ。
騒がしい子だな、と思いつつ、純狐はそんな空の姿を観て微笑むのであった。
そうして案内された先は、間欠泉地下センター専用温泉という看板が掲げられている建物。
専用、という看板に純狐は眉根を潜めたが、空曰く「大丈夫だよ!」との事。
先ほどのやり取りから、本当に大丈夫なのか若干不安であったが、話を聞くに地底の鬼や妖怪も時折利用するらしい。
河童たちが管理をしている、との事だが、彼らも気にしておらず、専用というのも有名無実化しているのだろう。
まぁ、よくある話である。
それは兎も角として、建物の中は清潔感のある脱衣所と幻想郷にしては近代的な洗面所。
これも河童が造ったのだろうか。と、感心するまえに、空はさっさと服を脱いで、籠の中に突っ込んで奥へと突撃してしまう。
「いっちばーん!」
「おや、まぁ」
なんとも、騒がしい。
一番風呂が嬉しいのか。
いや、一番風呂がというより、その場の勢いが楽しいのだろう。
幼い子供の様と評したが、まさしく子供なのだろう。
くすくすと笑い、純狐も衣を脱いで髪を纏め上げ浴室の扉を開く。
途端に大量の湯気が純狐を包み、それを抜けた先には予想よりも大きな浴槽が広がっていた。
十人ほどならば余裕を以て入れるだろう、他に入浴中の者はおらず、これを二人で占領できるのはさぞかし気持ちが良いだろう。
上機嫌で桶を手に取り、湯をくみ上げて身を清める。
空はというと、とっくに湯に浸かって気持ちよさそうにしていた。
次いで、純狐も、と足を付けた瞬間である。
「あーがりー!」
濡れて黒い羽根からしぶきを上げて、空が湯から上がろうとする。
余りにも短いそれに、流石の純狐も目を白黒させてしまった。
「もう出てしまうの?」
「うん!」
「まだ体も温まってないでしょうに」
「でも、体も洗ったし、ちゃんとお湯に入ったよ?」
まさに烏の行水だが、これはいかぬ。
何の仕事をしているのかは知らないが、折角の温泉での癒しが無駄になってしまうではないか。
「ゆっくり浸かって……そう、100まで数えて出るのが良いのよ」
「知ってる! さとり様が言ってたよ! ……でも、数えてる間にこんがらがっちゃって判んなくなっちゃうから……」
空がしゅんと項垂れる。
さとり様、というのが誰かは判らないが、空にちゃんと風呂でのマナーを教えている者がいるのだろう。
空も、なんとかそれを実践しようとしたが失敗している、と、そんな所だろうか。
純狐は「ふむ」と一つ頷いて湯の中に進み、空に手招きをする。
「空、いらっしゃい」
「うん?」
「私と話をしましょう。さとり様の事を教えてくれる?」
「さとり様の事? いいよ、何でも聞いて!」
二人は揃って湯に浸かり、そして空は大いに語る。
自分の主が古明地さとり、という妖怪で地霊殿で他の動物達と共に使えている事。
妹の古明地こいしとも時折遊ぶ事。
一番の親友であるお燐にいつも世話になっている事。
なんだか良く分からないけど、太陽の力を得て強くなった事。
それで地上を破壊しようとしたが、巫女に負けてしまった事
沢山の事を、空は語り、純狐はそれを一つ一つ聞いた。
途中で何回も仲間の事を語るが、それだけ地霊殿の皆の事が大切なのだろうというが尚良くわかるというものだ。
「お前たちは、扶けあっているのだね」
「うん!」
地上破壊を目論んだ凶鳥である事が信じられぬほどに朗らかな笑顔だ。
語る姿を観ても判る、この子はきっと、自由な子だ。
己の思うままに誰かを愛し、己の思うままに何かを行い、だがしかし課せられた事も受け入れられる。
だからこそ、自由なのだ。
「さて、そろそろ良いでしょう」
「うにゅ? 出るの?」
「えぇ、もう十分よ」
「うん、じゃあ出よう!」
空がばさり、と羽根を広げると羽根から湯がしぶきとなって飛び散る。
当然、純狐にもかかって思わず声が出てしまった。
「あ、ごめんなさい」
「いいのよ。それにしても、羽根も随分と重そうね」
「だから、羽根を動かして水を飛ばすの」
「なるほど」
純狐が少し離れ、お空は思いっきり羽根を羽搏かせる。
そのまま飛びそうな勢いで、羽根に入り込んだ湯を振り払っているのだ。
それが終わり、二人は脱衣所に戻る。
用意されていたタオルで体を拭い、髪を拭く。
空の髪は、湯にしっとりと艶がでて、まさに濡れ烏の様相だ。
惜しむらくは、空自身がそれをわしゃわしゃと乱雑に拭いてしまう事だろうか。
「……さすがに櫛はおいてないか」
共同で使う浴場だからか、櫛の類は置いていない。
純孤もここで入浴する予定は無かったので、持ってきてはいない。
もしあれば、あの髪と羽根を梳いてやれるのだが。
無いものは仕方がない。
「じゃあ、帰ろうよ」
「そうしよう」
温泉からの帰り道(と言っても空にとってのだが)にて、空はとても上機嫌であった。
家に帰るのが、それほど楽しみなのだろうか。
純狐は家に帰る、という事をすっかり忘れてしまった。
いや、家に帰るだけではない、様々な事を永い年月の中で忘れてしまい、今の純狐は怨念を礎にした何かである。
今こうしているのも、怨念の揺らぎが緩やかであるという事でしかない。
恨みつらみが純粋化して、却って理性になっているのは幸なのか不幸なのか。
……すくなくとも、空のような自分と違う純粋を「羨ましい」と思えるのは幸であると思いたい。
「それでね、巫女がすっごい乱暴なんだよ」
「お前も巫女にやられたのね」
「そうなんだよ! 紅のと翠の!」
「私も、その二人に会ったわ」
道の間でも会話を交わし、そうこうしている内に二人は地底の中でも一際見事で大きな館にたどり着く。
「ここが地霊殿」
「うん、さとり様のお屋敷だよ」
そして、空の家であり純狐の家では無い。
故に、二人はここでお別れである。
「それじゃ空。今日は楽しかったわ」
「……」
「空?」
「すごいや! 体がまだあったかい!」
空は、何か途轍もない発見をしたように跳び上がる。
「ねぇねぇ、これが温泉の効果なの?」
「そうよ。ゆっくり浸かれば、その分、体も長く温まるの」
「だからさとり様、100まで数えなさいって言ってたんだ」
しきり感心しきって頷くその姿をみて、純孤はくすりと笑う。
しかし、空の表情は次の瞬間に曇ってしまった。
「あ……でも、次はちゃんと100まで数えられるかな」
「おや、100まで数える必要なんて無いわ」
「どうゆうこと?」
「数えるのが大変なら、今日の様に話をしながら浸かればよい」
「あ! そうか!」
曇った顔がまたぱっと花咲いて。
ほんとうに見て居て飽きない子だ。
「それでは、改めて。今日は楽しかったわ空」
「私もだよ、有難う! 明日もまた会える?」
「数日は地底に逗留するつもりだから、また会いに来よう」
「うん、約束だよ!」
空は地霊殿に走ってゆき、入り口で振り返って大きく手を振る。
純狐も、小さく手を振ってそれに応えるのであった。
* * *
それから、何日かが経った。
純狐は適当な宿を取り、当初の目的の通りにのんびりと地底観光を楽しんでいる。
ただ一つ、予定と違うのは、風呂に関する事がらであった。
宿の湯では無く、空と共にあの温泉に浸かっている。
ある日は北を、ある日は南を、時には東に西へと気ままに足を運ぶが、最後はあの温泉で汗を流す。
空はその日にあった事を、一生懸命に話してくれる。
純狐も、その日に見た事を話し、時には空に教えてもらう。
話の端々から、空の知があまり良く無いのは理解しているが、だからと言って空の知識を軽んじるつもりはない。
純狐が知らぬ事を、空が知っている事だってあるのだ。
そうして補い合うのが大切なのを純孤は知っている。
もちろん、そんな硬い事だけではない。
むしろ、湯気の中であがる空の笑い声が、なんとも楽しくて、だから足を運ぶのだ。
湯に浸かって体を温め、話をして時間を愉しむ。
このようなのは何時ぶりだろう。
純狐は、すっかり空との時間を気に入ってしまった。
とは言え、時間は常に過ぎてゆく。
押しとどめようともそれは一時。永劫に逃れる術は無い。
その日は、そんな日だった。
「ほら、空、いらっしゃい」
「うん」
湯から上がった二人は、鏡の前に並ぶ。
空は椅子に座り、純狐はその後ろに立つ。
手に持つのは、黄楊の櫛である。
地下に来た次の日に、工芸品の店を覗いて、出来る限り上等なものを選んで買ってきたのだ。
やはり、風呂からあがったのならば髪を梳かねばならぬ。
それは如何なる者であろうと、女子の嗜みと言うものだ。
しかし、空はその辺りに無頓着で、髪は手入れしないの? と聞くと、主にやってもらうのだが、仲間が沢山いて順番なので偶にになってしまうそうなのだ。
実に勿体ないと思うと、つい世話を焼きたくなってしまった。
純狐は、空の見事な髪を手に取って櫛を入れる。
乱雑に扱っているのに、気持ちよく櫛が通る良い髪だ。
もっと手入れをするならば、きっとため息が出るぐらいに輝くに違いない。
気持ちよさそうにされるがままの空を見て、純狐はついほころんでしまう。
こんな事は、本当に何時ぶりであろうか。
遥かなる記憶の彼方から引きずり出す事も出来ない程の昔である。
とは言え、こんな関係も今日でお終いだ。
地底観光もあらかた終わり、明日はまた地上や異界で気の向くままに過ごす日々になる。
「ねぇ、本当に帰っちゃうの?」
「ええ」
「ふぅーん」
空の会話も、なんとなく弾まない。
何時もだったら明るく華やかなこの時間が、いやに静かだ。
言葉を交わせど、あまり続かず、髪を梳く音ですら聞こえそうになる。
そんなのがどれほど続いただろう。
「さあ、終わったわよ」
純狐が、空を開放する。
湯で濡れ、純孤が梳いたその髪。
艶やかなれど妖しさは無く、黒の中に炎が揺らめく様だ。
空の子供の様な明るさに隠れがちだが、その美しさは確かに空を輝かせている。
鏡の中に映ったその黒を見て、少し沈んでいた空の顔もまた輝く。
右に左にと角度を変え、火の粉が散る様に軽やかな髪を楽しんで。
そして、満面の笑顔で、こう言うのだ。
「ありがとう! お母さん!!」
純狐が、聞いた言葉で大きく目を見開く。
空も、言った言葉できょとんとする。
「お母さんだって。えへへ、間違えちゃった」
照れくさそうに笑う空。
純狐は……今だに、言葉に反応しきる事が出来ない。
母、予想だにしていなかった言葉だ。
そして、とても懐かしい言葉だった。
「ねえ、お母さん……って、また言っちゃった」
悩ましそうに頭を抱える空に、純狐は、自分でも驚くような声をかける。
「なあに、空」
そう、まるで、子供をあやすような、その声。
純狐自身が忘れ去って、二度と覚える事も無いと思っていた。
それを、今になって、当たり前の様に使えている。
不思議な事だろうか。
純粋なる怨念の上に立つ、名前すら覚えていない自分が、こんな事を出来るのは。
だが、自分の声に笑顔を見せる空の前に、そんな疑問は消し飛んでしまう。
「うん、あのね、お母さん……また、会いに来てくれる?」
「……えぇ……えぇ、勿論よ空」
「本当に!?」
母。
嗚呼! なんという響きであろう!
名もなき仙霊の、その始まり。
今に続く荒ぶる怨みの、その根源。
それが、こんなにも、嬉しいのか。
こんなにも、愛おしいのか。
血も繋がらぬ、縁も無い、たった数日の、けれども確かに自分を慕ってくれる娘の心を抱きしめたい。
命が最初に出会うもの。
誰かとの繋がりの、一番最初。
この国が扶桑国と呼ばれるよりもさらに古い時代からある、その概念。
それに、いま再び出会おうとは!
「どうしたの? お母さん」
「何でもないわ、そう、なんでもないのよ」
純狐は空の手を取る。
その、夜を振り払う陽の暖かさ。
「今度来た時は、地霊殿の皆を紹介してくれる?」
「うん! もちろんだよ! さとり様やこいし様や、お燐や……えぇっと、兎に角沢山、沢山、皆でお母さんを待ってるからね!」
空が笑い、純狐は微笑む。
それが、全てであった。
後日、約束通りに地底を訪れた純狐を、空が「お母さんだよ!」と地霊殿に紹介してちょっとした騒ぎになるのだが……
それはまた、別の話である。
紺珠伝キャラのSSはまだまだ多くないけれど、それでも珍しいと断言できるキャラチョイスで新鮮でした。
癒やされました。
紺珠伝の純狐は怒りに突き動かされていたけれど、空に出会ったこの純狐さんなら、
きっとテーマ曲のピュアヒューリーズも全然違う優しい曲になるのではないかなと思ったり。
それにしても凄いや…
四聖堂さんの作品を1つ読む度に好きなキャラが一人また一人と増えてしまう…
素敵な幻想郷をありがとうございました。