注:原作設定と若干の矛盾があるかもしれませんが細かいことは気にしないでください。
また、釣りについていろいろ作中で書いていますが作者は海釣りしかやったことがなく、
その海釣りにしても数回しかやってないTHE初心者です。
よって調べながら書きはしましたが、間違って書いている個所もあると思います。そういった個所を発見された方は
「幻想郷ではこうなんだ」と考えるか「無知乙」と心の中で罵っておいてください。
妖怪の山、天狗や河童などが住み人間はもちろん力のある妖怪でも近寄らない山である。
その山の近くにある川で地底の妖怪である火車猫と地獄鴉が釣りをしていた。
「どうお燐釣れた?」
「全然、せっかく地上に来たんだから地底じゃできないことをしようと思ったけど、こうも釣れないもんかねぇ」
どうやら二人は釣りをしているらしい。二人は少し離れて釣り糸を垂らしてただ魚が食いつくのを待っている。
本来なら、こういった山の近くにいる人や妖怪はすぐさま哨戒天狗に追われ、山から遠ざけられるのだがこの場所ではそうでもないようだ。
「せっかくうるさい天狗たちが来ないからここでならゆっくり釣れるかなって思ったんだけどねぇ……」
「う~ん、ご飯がお魚にあわないのかな……お燐は何で釣ろうとしてるの?」
「えっ?ああ餌の事かい?あたいはこれさ」
そういってお燐は釣竿をふって糸の先の針をお空の方に持っていく。
「わっとっと。え~とこれは…お肉?」
釣り糸の先には生肉(地底産地獄鶏の胸肉)が刺さっていて、お燐はこれで魚を吊ろうとしていたらしいのだが……
「これはちょっとお肉大きすぎない?」
「そうかねぇ?あたいが一口でギリ食べられる大きさだからちょうどいいと思ったんだけど」
「いやいやお燐。少し前に二人でおつかいに行ったときこれを食べられるほど大きな口をしたお魚はいなかったじゃん!」
「あっ」
致命的なことに大きすぎて針が全く見えていないのだ。これでは魚が食いついても針に刺さらず逃げてしまう。
「それにお肉は焼いた方がいいにおいもしてお魚が寄ってくるんじゃないかな?」
「おお!お空いい考え!それじゃあこの肉を細かく切って焼いてみるよ」
そういってお燐は生肉を外して下準備を始めた。……肉を見て二人ともよだれが垂れているが気にしないでおこう。
「そういえばお空は何を餌にしているんだい?」
「ふっふっふ!私はちゃんとお魚の事を考えたご飯だよ!」
「へ~自信満々じゃないかい。それじゃあちょっと拝見」
お燐が生肉を引きちぎりながらお空の餌箱を覗き込んだ。その中にあったのは
「木の実かい?なるほどね~。これなら魚も食いつける大きさだしいいにおいもする。よさそうじゃないか。それでも釣れないのかい?」
「うん……木の実自体は川から上げるたびに針から無くなっているから食いついてはいると思うんだけど」
お空は釣竿を振り上げる。見ると確かに木の実はついていないようだが……
「ね?釣り針から無くなっているからだからお魚は食べてるはずなんだよ」
「あの~お空さん。その針はどっから持ってきたんだい?」
「うにゅ?さとり様が私のマントを直していた時に使っていた針だよ?」
「おバカ!これじゃあ食いつくも何も投げ入れた時に抜けるに決まってるじゃないか!」
お空が使っていたのは縫い針だった。というかよく見ると釣り糸も視認しづらい白い糸ではなく真っ黒な糸だった。
「そりゃあ川から上げるたびに餌がなくなっているわけだよ……」
「うにゅう……毎回木の実を針に刺すと中々引っかかってくれないのもそのせいだったのか」
「それに早く気づきなよ……そもそも糸が黒いから魚からしたらパッと見で怪しすぎて近寄らないじゃないか」
「だって白いと私も魚も見えづらいじゃん!」
「見えづらくていいんだよ!気づかれちゃまずいんだから!
まあしょうがないか、あたいの針と糸をあげるよ。念のためにいっぱい持ってきたからね」
「ありがとう!お燐!」
お空は満面の笑みを浮かべるとお燐の道具のほうに歩いていき、ガサゴソと準備を始めた。やがて二人とも指摘された点を直し釣りを再開した。
「これできっと釣れるね!お燐」
「そうだね。帰ったら釣った魚でちょっとしたお祭りをやろうか。お空」
~一時間後~
「釣れないね……」「そうだね……」
あれから釣りを再開した二人だが、どうやら全く釣れないようだ。
「何がダメなんだろうねぇ?餌も無くならないし何かが食いつく気配もないし(もぐもぐ)」
「う~ん、全然わからない。そろそろ話す内容も無くなってきちゃったしね(パクパク)」
「本当にねぇ……あっお空私の木の実無くなったから頂戴」
「ちょっとまってね~。はい、木の実10粒。代わりにお肉貰うね」
「ああいいよ」
二人とも持ってきた餌を食べながら釣りをしているようだ。それでいいのかとか食べていいのかとか言っちゃだめだ。
その関係かさっきよりも近い場所で釣りをしている。
「ほんっとうにひまだねぇ……」
「だね……何がダメなんだろう」
「釣れますか?」
「ひゃい!?」「うにゅ!?」
急に耳元で声がした。とっさに二人ともスペルカードを取り出しつつ迎撃態勢を取りながら振り向くと
「いや…そんなにびっくりされるとは私も思ってなかったよ」
そこにいたのはさとりの妹であるこいしだった。
「はぁ~こいし様ですか。びっくりさせないで下さいよ」
「本当ですよ!普段ならともかく、こんな油断しているときに天狗がくるかもしれないところで驚かさないで下さいよ!」
「なんで天狗がくるところで油断してるのか分からないんだけど……まあいいや。それで釣りをしてるみたいだけど釣れた?」
こいしが魚を入れる(と思われる)籠の中をのぞいてみる。が、案の定中には肉の骨と木の実の皮しか入っていなかった。
「それが全く釣れないんですよ。何でだかわからないんですよねぇ」
「そうだ!こいし様なら魚を釣る方法を何か知ってるんじゃないですか?よかったら私たちに教えてください!」
「その前になんで骨とか皮とかがあるのかが私は不思議だよ……」
こいしはため息をつきながら二人の竿を引っ張る。そうしておいて二人をこちらに向かせて講義が始まった。
「ちょっと長くなるから流されないように引き揚げとくね。それじゃあまず、魚は何を食べているでしょうか。お燐!」
「えっ。そりゃあお肉とかじゃないんですか?」
「私もお肉か木の実や草とかかなって思って普段私達が食べているようなものを持ってきたんですけど…違うんですか?」
二人ともそう思っているようで何がおかしいのかわかっていないようだ。
「違うわよ……そもそも水に住んでいる妖怪ならともかく、陸に上がれないただの魚が肉だの草だの食べるわけないでしょ?
魚を釣る時には基本川辺で取れる虫がいいのよ」
「へぇ~」「うにゅう…」
「具体的な種類を上げるとクロカワムシやカワゲラ、ヒラタカゲロウあたりが釣れやすいらしいわ。他にも陸にいる虫でも…
たとえばカミキリムシの幼虫とかは釣れやすいのよ」
「なるほど」「…………」
「まあここまで言っておいてなんだけど私もそこらへんの釣り人の話をきいたり、お姉ちゃんの本の知識しかないから偉そうなことは言えない
んだけどね。まあ少なくとも餌は肉とか木の実じゃなくて虫を使いなさいということらしいよ」
「へ~ありがとうございます!他にコツってありますか?」
「そうね……二人はもしかしたら話しながら釣ってたりしなかった?」
「やってました……あまりにも暇だったもので」
「それがダメなのよ。魚は案外音に敏感でね、石を転がしたりちょっと咳をしただけでも逃げちゃうの。これは私が実際に人に気づかれない
状態で音を立てたら魚が逃げたから確実な情報だよ」
「ふむふむ、もしかしたら同じ理屈で自分の影が川に映っていたのも悪いのかもしれませんね」
「他には川の流れに沿って一緒に竿をゆっくり動かすとか上下に餌を揺らしたりして、
魚に不自然にみられなくかつ魚の興味を引く動きをするのがコツなんだって」
「そっか!餌の動きは考えていませんでした。そういえば二人で並んで釣っているんですけどこれは大丈夫なんですかね?」
「う~ん並んだからって釣りづらいとかはないと思うけど、糸が絡まるから少し離れて吊った方がいいかもしれないね」
「は~釣りって色々コツがいるんですね、いろいろと教えてくださりありがとうございます!」
お燐は目を輝かせて今にも釣りを再開したそうなワクワクした顔をしている。こいしもその顔を見て微笑んだ。
「他にもコツがあるのかもしれないけど私が知っているのはこのくらいだね。虫ならあそこの木にいっぱいいたのを見たから
それを使えばいいだろうし、糸や竿も本格的なものじゃなくても釣れるみたいだから頑張ってね」
こいしは川の上流の方にあった木の一つを指さす。見ると木の皮がはがれてそこから樹液が出ているように見える。
「至れり尽くせりじゃないですか!ありがとうございます!ほらお空行くよ!……お空?」
お空の返事がない。不思議に思ったお燐とこいしがお空を覗き込むと、
「…ZZZ」
…眠っていた。どうやらお話が難しすぎたようだ。
「それじゃあ、無事に虫も捕れたので本格的に教わったことを生かして釣ってみます!お空は反省するように!」
「うん……ごめんなさいこいし様」
お空の頭にはでっかいたんこぶができている。どうやらお燐に思いっきり殴られたらしい。
「いいのいいの気にしないで、それじゃあ私はそろそろ行くね。釣れたら晩御飯はその魚をごちそうしてね~」
こいしはそういって飛んで行った。こいしを見送った後、お燐とお空は改めて気合を入れている。ちなみに竿は一本だ。
どうやら二人で協力して魚を釣ることにしたらしい。
「よし、確認するよ。餌はこの虫、音は立てない、川に影を移さない、川の流れに沿って竿を動かす。いいね?」
「うん!よ~し釣るぞ~」
こうして、二人の釣りが(正しい方法で)始まった。
「釣れないね」「まだ30分ぐらいじゃないか。頑張ればきっと釣れるさ」
「うにゅう…」「お空、静かに魚が逃げちゃうよ」
「……」「……」
「暇だね…」「そうだね…」
~3時間後(釣りを始めてから4時間経過)~
「ZZZ…」「にゅう…」
待ちつかれて二人は寝てしまったようだ。お空の肩にお燐の頭が乗り、その上にお空の頭が乗っていて二人で舟をこいでいる。
パシャ
「っ!」「きた!?」
ついに二人の竿に手ごたえが来た。引っ張ると重さを感じる。
「これは来たね!よし!逃がさないように慎重に引っ張るよ!」
「合点!」
二人は初めての魚を逃がしてなるものかと、冷静に獲物を観察し弾幕ごっこで培った勘もフル動員して少しづつ岸に近づけていく。
「もう少しだ…お空!1・2・3で一気に引き上げるよ!」
「了解!」
「1…」「2…」「「3!」」
二人は針にかかった獲物を流すことなく釣り上げることができた!
「はあはあはあ…!やったねお空!」
「うん!これでこいし様においしいお魚を食べさせてあげられるね!」
二人は喜び飛び跳ねて喜んだ。そして釣ったものを見に行くとそこにあったのは…
「……え~と、これはなんだい」
「……長靴じゃないかな」
「…………」「…………」
「「そりゃないよ~!」」
「…お~いそこで何やってるんだい?」
「……誰だい?」「うにゅう……」
二人が打ちひしがれてしばらくするとどこからか声が聞こえてきた。どうやら川の方から声が聞こえてきたらしい。
二人がそちらに向くと、船がちょうど川辺に付きそこから女の人が下りてきた。
「うん?誰かと思ったら旧地獄の猫と鴉かい?なんでこんなところにいるんだ」
二人は話す気力もないらしく、無言で釣竿を指さす。それを見た女性が怪訝な顔をする。
「釣りをやってたのかい?なんでこんなところで……何か釣れたかい?」
「4時間近く粘ってこれだけだよ、お姉さん……」
お燐は長靴を見せる。するとその長靴を見た女性が目を丸くする。
「へぇ!釣れたのかい!なかなかいい腕してるじゃないか」
「何…?お姉さん、ケンカ売ってるの…?」
「私たちは今機嫌が悪いから下手したら消し炭になって何も残らなくなるよ…」
お燐とお空はスペルカードを取り出し、妖力を集中させ始める。それを見た女性はあわてて叫びだす。
「いやいやちょっと!?あたいは本心から感心してるんだよ!ここで何かが釣れるなんてめったにないから他の所なら普通に大量に釣れる
はずって意味なんだよ!」
その言葉に二人は怪訝な顔をする。
「ここで釣れるなんて…ってどういう意味だい?」
紅い髪をした背の高い女性は、鎌を持った手で頭をかきながら答える。
「いや、だって、ねぇ?
ここは三途の川だからねぇ」
また、釣りについていろいろ作中で書いていますが作者は海釣りしかやったことがなく、
その海釣りにしても数回しかやってないTHE初心者です。
よって調べながら書きはしましたが、間違って書いている個所もあると思います。そういった個所を発見された方は
「幻想郷ではこうなんだ」と考えるか「無知乙」と心の中で罵っておいてください。
妖怪の山、天狗や河童などが住み人間はもちろん力のある妖怪でも近寄らない山である。
その山の近くにある川で地底の妖怪である火車猫と地獄鴉が釣りをしていた。
「どうお燐釣れた?」
「全然、せっかく地上に来たんだから地底じゃできないことをしようと思ったけど、こうも釣れないもんかねぇ」
どうやら二人は釣りをしているらしい。二人は少し離れて釣り糸を垂らしてただ魚が食いつくのを待っている。
本来なら、こういった山の近くにいる人や妖怪はすぐさま哨戒天狗に追われ、山から遠ざけられるのだがこの場所ではそうでもないようだ。
「せっかくうるさい天狗たちが来ないからここでならゆっくり釣れるかなって思ったんだけどねぇ……」
「う~ん、ご飯がお魚にあわないのかな……お燐は何で釣ろうとしてるの?」
「えっ?ああ餌の事かい?あたいはこれさ」
そういってお燐は釣竿をふって糸の先の針をお空の方に持っていく。
「わっとっと。え~とこれは…お肉?」
釣り糸の先には生肉(地底産地獄鶏の胸肉)が刺さっていて、お燐はこれで魚を吊ろうとしていたらしいのだが……
「これはちょっとお肉大きすぎない?」
「そうかねぇ?あたいが一口でギリ食べられる大きさだからちょうどいいと思ったんだけど」
「いやいやお燐。少し前に二人でおつかいに行ったときこれを食べられるほど大きな口をしたお魚はいなかったじゃん!」
「あっ」
致命的なことに大きすぎて針が全く見えていないのだ。これでは魚が食いついても針に刺さらず逃げてしまう。
「それにお肉は焼いた方がいいにおいもしてお魚が寄ってくるんじゃないかな?」
「おお!お空いい考え!それじゃあこの肉を細かく切って焼いてみるよ」
そういってお燐は生肉を外して下準備を始めた。……肉を見て二人ともよだれが垂れているが気にしないでおこう。
「そういえばお空は何を餌にしているんだい?」
「ふっふっふ!私はちゃんとお魚の事を考えたご飯だよ!」
「へ~自信満々じゃないかい。それじゃあちょっと拝見」
お燐が生肉を引きちぎりながらお空の餌箱を覗き込んだ。その中にあったのは
「木の実かい?なるほどね~。これなら魚も食いつける大きさだしいいにおいもする。よさそうじゃないか。それでも釣れないのかい?」
「うん……木の実自体は川から上げるたびに針から無くなっているから食いついてはいると思うんだけど」
お空は釣竿を振り上げる。見ると確かに木の実はついていないようだが……
「ね?釣り針から無くなっているからだからお魚は食べてるはずなんだよ」
「あの~お空さん。その針はどっから持ってきたんだい?」
「うにゅ?さとり様が私のマントを直していた時に使っていた針だよ?」
「おバカ!これじゃあ食いつくも何も投げ入れた時に抜けるに決まってるじゃないか!」
お空が使っていたのは縫い針だった。というかよく見ると釣り糸も視認しづらい白い糸ではなく真っ黒な糸だった。
「そりゃあ川から上げるたびに餌がなくなっているわけだよ……」
「うにゅう……毎回木の実を針に刺すと中々引っかかってくれないのもそのせいだったのか」
「それに早く気づきなよ……そもそも糸が黒いから魚からしたらパッと見で怪しすぎて近寄らないじゃないか」
「だって白いと私も魚も見えづらいじゃん!」
「見えづらくていいんだよ!気づかれちゃまずいんだから!
まあしょうがないか、あたいの針と糸をあげるよ。念のためにいっぱい持ってきたからね」
「ありがとう!お燐!」
お空は満面の笑みを浮かべるとお燐の道具のほうに歩いていき、ガサゴソと準備を始めた。やがて二人とも指摘された点を直し釣りを再開した。
「これできっと釣れるね!お燐」
「そうだね。帰ったら釣った魚でちょっとしたお祭りをやろうか。お空」
~一時間後~
「釣れないね……」「そうだね……」
あれから釣りを再開した二人だが、どうやら全く釣れないようだ。
「何がダメなんだろうねぇ?餌も無くならないし何かが食いつく気配もないし(もぐもぐ)」
「う~ん、全然わからない。そろそろ話す内容も無くなってきちゃったしね(パクパク)」
「本当にねぇ……あっお空私の木の実無くなったから頂戴」
「ちょっとまってね~。はい、木の実10粒。代わりにお肉貰うね」
「ああいいよ」
二人とも持ってきた餌を食べながら釣りをしているようだ。それでいいのかとか食べていいのかとか言っちゃだめだ。
その関係かさっきよりも近い場所で釣りをしている。
「ほんっとうにひまだねぇ……」
「だね……何がダメなんだろう」
「釣れますか?」
「ひゃい!?」「うにゅ!?」
急に耳元で声がした。とっさに二人ともスペルカードを取り出しつつ迎撃態勢を取りながら振り向くと
「いや…そんなにびっくりされるとは私も思ってなかったよ」
そこにいたのはさとりの妹であるこいしだった。
「はぁ~こいし様ですか。びっくりさせないで下さいよ」
「本当ですよ!普段ならともかく、こんな油断しているときに天狗がくるかもしれないところで驚かさないで下さいよ!」
「なんで天狗がくるところで油断してるのか分からないんだけど……まあいいや。それで釣りをしてるみたいだけど釣れた?」
こいしが魚を入れる(と思われる)籠の中をのぞいてみる。が、案の定中には肉の骨と木の実の皮しか入っていなかった。
「それが全く釣れないんですよ。何でだかわからないんですよねぇ」
「そうだ!こいし様なら魚を釣る方法を何か知ってるんじゃないですか?よかったら私たちに教えてください!」
「その前になんで骨とか皮とかがあるのかが私は不思議だよ……」
こいしはため息をつきながら二人の竿を引っ張る。そうしておいて二人をこちらに向かせて講義が始まった。
「ちょっと長くなるから流されないように引き揚げとくね。それじゃあまず、魚は何を食べているでしょうか。お燐!」
「えっ。そりゃあお肉とかじゃないんですか?」
「私もお肉か木の実や草とかかなって思って普段私達が食べているようなものを持ってきたんですけど…違うんですか?」
二人ともそう思っているようで何がおかしいのかわかっていないようだ。
「違うわよ……そもそも水に住んでいる妖怪ならともかく、陸に上がれないただの魚が肉だの草だの食べるわけないでしょ?
魚を釣る時には基本川辺で取れる虫がいいのよ」
「へぇ~」「うにゅう…」
「具体的な種類を上げるとクロカワムシやカワゲラ、ヒラタカゲロウあたりが釣れやすいらしいわ。他にも陸にいる虫でも…
たとえばカミキリムシの幼虫とかは釣れやすいのよ」
「なるほど」「…………」
「まあここまで言っておいてなんだけど私もそこらへんの釣り人の話をきいたり、お姉ちゃんの本の知識しかないから偉そうなことは言えない
んだけどね。まあ少なくとも餌は肉とか木の実じゃなくて虫を使いなさいということらしいよ」
「へ~ありがとうございます!他にコツってありますか?」
「そうね……二人はもしかしたら話しながら釣ってたりしなかった?」
「やってました……あまりにも暇だったもので」
「それがダメなのよ。魚は案外音に敏感でね、石を転がしたりちょっと咳をしただけでも逃げちゃうの。これは私が実際に人に気づかれない
状態で音を立てたら魚が逃げたから確実な情報だよ」
「ふむふむ、もしかしたら同じ理屈で自分の影が川に映っていたのも悪いのかもしれませんね」
「他には川の流れに沿って一緒に竿をゆっくり動かすとか上下に餌を揺らしたりして、
魚に不自然にみられなくかつ魚の興味を引く動きをするのがコツなんだって」
「そっか!餌の動きは考えていませんでした。そういえば二人で並んで釣っているんですけどこれは大丈夫なんですかね?」
「う~ん並んだからって釣りづらいとかはないと思うけど、糸が絡まるから少し離れて吊った方がいいかもしれないね」
「は~釣りって色々コツがいるんですね、いろいろと教えてくださりありがとうございます!」
お燐は目を輝かせて今にも釣りを再開したそうなワクワクした顔をしている。こいしもその顔を見て微笑んだ。
「他にもコツがあるのかもしれないけど私が知っているのはこのくらいだね。虫ならあそこの木にいっぱいいたのを見たから
それを使えばいいだろうし、糸や竿も本格的なものじゃなくても釣れるみたいだから頑張ってね」
こいしは川の上流の方にあった木の一つを指さす。見ると木の皮がはがれてそこから樹液が出ているように見える。
「至れり尽くせりじゃないですか!ありがとうございます!ほらお空行くよ!……お空?」
お空の返事がない。不思議に思ったお燐とこいしがお空を覗き込むと、
「…ZZZ」
…眠っていた。どうやらお話が難しすぎたようだ。
「それじゃあ、無事に虫も捕れたので本格的に教わったことを生かして釣ってみます!お空は反省するように!」
「うん……ごめんなさいこいし様」
お空の頭にはでっかいたんこぶができている。どうやらお燐に思いっきり殴られたらしい。
「いいのいいの気にしないで、それじゃあ私はそろそろ行くね。釣れたら晩御飯はその魚をごちそうしてね~」
こいしはそういって飛んで行った。こいしを見送った後、お燐とお空は改めて気合を入れている。ちなみに竿は一本だ。
どうやら二人で協力して魚を釣ることにしたらしい。
「よし、確認するよ。餌はこの虫、音は立てない、川に影を移さない、川の流れに沿って竿を動かす。いいね?」
「うん!よ~し釣るぞ~」
こうして、二人の釣りが(正しい方法で)始まった。
「釣れないね」「まだ30分ぐらいじゃないか。頑張ればきっと釣れるさ」
「うにゅう…」「お空、静かに魚が逃げちゃうよ」
「……」「……」
「暇だね…」「そうだね…」
~3時間後(釣りを始めてから4時間経過)~
「ZZZ…」「にゅう…」
待ちつかれて二人は寝てしまったようだ。お空の肩にお燐の頭が乗り、その上にお空の頭が乗っていて二人で舟をこいでいる。
パシャ
「っ!」「きた!?」
ついに二人の竿に手ごたえが来た。引っ張ると重さを感じる。
「これは来たね!よし!逃がさないように慎重に引っ張るよ!」
「合点!」
二人は初めての魚を逃がしてなるものかと、冷静に獲物を観察し弾幕ごっこで培った勘もフル動員して少しづつ岸に近づけていく。
「もう少しだ…お空!1・2・3で一気に引き上げるよ!」
「了解!」
「1…」「2…」「「3!」」
二人は針にかかった獲物を流すことなく釣り上げることができた!
「はあはあはあ…!やったねお空!」
「うん!これでこいし様においしいお魚を食べさせてあげられるね!」
二人は喜び飛び跳ねて喜んだ。そして釣ったものを見に行くとそこにあったのは…
「……え~と、これはなんだい」
「……長靴じゃないかな」
「…………」「…………」
「「そりゃないよ~!」」
「…お~いそこで何やってるんだい?」
「……誰だい?」「うにゅう……」
二人が打ちひしがれてしばらくするとどこからか声が聞こえてきた。どうやら川の方から声が聞こえてきたらしい。
二人がそちらに向くと、船がちょうど川辺に付きそこから女の人が下りてきた。
「うん?誰かと思ったら旧地獄の猫と鴉かい?なんでこんなところにいるんだ」
二人は話す気力もないらしく、無言で釣竿を指さす。それを見た女性が怪訝な顔をする。
「釣りをやってたのかい?なんでこんなところで……何か釣れたかい?」
「4時間近く粘ってこれだけだよ、お姉さん……」
お燐は長靴を見せる。するとその長靴を見た女性が目を丸くする。
「へぇ!釣れたのかい!なかなかいい腕してるじゃないか」
「何…?お姉さん、ケンカ売ってるの…?」
「私たちは今機嫌が悪いから下手したら消し炭になって何も残らなくなるよ…」
お燐とお空はスペルカードを取り出し、妖力を集中させ始める。それを見た女性はあわてて叫びだす。
「いやいやちょっと!?あたいは本心から感心してるんだよ!ここで何かが釣れるなんてめったにないから他の所なら普通に大量に釣れる
はずって意味なんだよ!」
その言葉に二人は怪訝な顔をする。
「ここで釣れるなんて…ってどういう意味だい?」
紅い髪をした背の高い女性は、鎌を持った手で頭をかきながら答える。
「いや、だって、ねぇ?
ここは三途の川だからねぇ」
ほのぼのしてていいね
でも釣れた事はないそうだw
ボウズで帰宅する羽目にならなくてよかった