Coolier - 新生・東方創想話

そして二人は出会いを果たす

2015/10/28 21:02:47
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「それでは、行ってまいります」
「いってらっしゃい、聖。ゆっくり休んできてください」
「はい」
 私の名前は、聖白蓮と申します。
 私、恥ずかしながら、己の趣味として『温泉巡り』がございます。
 ここ、幻想郷は、とてもよい温泉が多数湧いております。
 温泉好きの私にとって、この世界は、とても住みやすく居心地もいいものです。
 此度もこうして、温泉へ向かうのですが、少し、この世界の温泉の素晴らしさを、皆様に語らせて頂こうと思います。


 まず、第一に考えるのが、地底の温泉です。
 地底と言うのは地面の下なわけですから、当然、温泉が豊富に湧いております。
 その種類、湯量も豊富。
 どの温泉に入っても当たりばかりで外れがない。
 体の疲労を癒したり、傷を癒したり。はたまた、のんびりと、ただ心が安らぐ――そんな気持ちと空気を求めて、温泉を旅するというのは素晴らしいことです。
 また、近年は、ここによい温泉旅館が出来ました。
 お値段も安く、お部屋も綺麗で、お世話をしてくれる従業員の方々も、皆、己の職務に忠実で、そしてお客様への慈愛の心に満ちています。
 あそこの温泉は、長居するのが一番ですね。
 最低でも三日。何せ、それくらいはいないと、あちこちの温泉を楽しめないのです。
 旅館の中にある内湯だけではない。町中、あちこちに湧いている温泉を楽しむのに、一日二日ではとてもとても。
 浴衣に身を包み、下駄をからころ鳴らしながら、地底の町並みを歩いてみれば、『ここは地獄だ。罪人どもの行き着く果てだ』という評判など、嘘であると断言することが出来るでしょう。

「おっ、姉ちゃん、今日も地底に遊びに来たのかい!」
「どうだい。ここは。居心地いいだろう。わはははは!」
「どうだい、姉ちゃん。風呂入ったら、俺達と一杯やらないかい! 最近は酒の相手がいなくてつまらん!」
「おい、バカを言うな。この姉さんはな、そりゃー、偉い、徳の高いお坊様なのよ。
 そのお坊様に対して酒を勧めるたぁ、お前さんは本当に罪深いねぇ」
「おう、そいつは知らなかった。
 悪かったなぁ、姉ちゃん。
 俺ぁ、そこの店でみやげ物売ってるんだがよ。まぁ、こいつで許してくれ。な?
 ――ありがとさん! またきてくれよ!」

 このような感じに、人情味にあふれた方々ばかりなのです。
 ついつい、受け取った温泉饅頭一箱を滞在中にぺろりと平らげてしまいます。
 あ、地底の温泉饅頭はとても美味しいのですよ。あんこの甘さも控えめ、どちらかというと、しっとりというよりはさっぱり系。もちもちの皮があんこの控えめな甘さと合わさって、これがもう絶品なのです。
 これまた、寺で待つ皆々のために、10箱くらい買っていってしまうのも、むべなるかなと言いますか。
 そして宿である温泉旅館に戻り、お風呂を楽しむのです。
 お風呂でゆっくりと汗を流して疲れを取り、ふぅと息をついた後、着替えをしてから飲むフルーツ牛乳は格別ですね。


 続きまして、妖怪の山の温泉のお話をさせて頂きます。
 この温泉は、近年、幻想郷住民の楽しみとなると共に体力向上、運動能力向上などに役立っているといわれる『妖怪の山登山道』の途中にある温泉です。
 お名前は、『天狗のお宿』。
 山を登り、その中腹に建つ、大きな大きな、とても立派な温泉宿です。
 普通に泊まると、この温泉はとてもお値段が高く、とてもではありませんが、常用することは出来ません。
 年に一度程度、寺のもの達を連れて、一日限りの骨休め、という具合に利用しているのですが、最近は、この温泉は日帰り湯も始めたとのことです。
 その場合のお値段は通常の、よくある温泉と利用料金が一緒であるため、お安く、素晴らしい温泉を楽しめます。
 温泉の質がいいのはもちろんなのですが、やはり、この温泉の最大の価値は妖怪の山から眺めることの出来る、幻想郷の絶景でしょう。
 内湯、露天風呂共に建物の上の方に作られているため、窓から、そして手すりの向こうから、広大な幻想郷を眺めることが出来るのです。なんという贅沢でしょうか。
 これからは紅葉の季節となり、赤く色づいた世界を存分に堪能することが出来ます。
 もうそれだけで、心を満足させることの出来る、素晴らしい時間を味わうことが出来ると言っていいでしょう。
 お風呂を上がってほっこりしながら、やはり、脱衣場の休憩スペースからコーヒー牛乳片手に幻想郷の風景を眺めるのも素晴らしいものです。
 もちろん、このお宿の素晴らしいところは温泉だけではありません。
 お料理、そしてお部屋に関しては、他の温泉施設には大変申し訳ないのですが、この温泉が一番と言っていいでしょう。
 日帰り湯のお客様に貸し出している休憩スペースは、それ用に作られた客室なのですが、この時点でもうすごい。
 なんといいますか、ここはまるで宴会場か、と言いたくなるほど広いお部屋がそこにあるのです。
『疲れた場合はお昼寝も可能』と書かれたお布団もあり、ふかふかのお布団に横になると、そのつもりがなくても睡魔に負けてしまいます。
 室内の設備もまた豪華で、和室と洋室の両方を楽しむことが出来、『れーぞーこ』の中には冷たく冷えたお飲み物(さぁびすなので無料だそうです)も入っているという、至れり尽くせりです。
 るぅむさぁびす、というものを使うとお部屋でマッサージを受けることも出来ます。
 これには追加料金がかかってしまうのですが、疲れた体を癒すには、たまの利用もいいものです。
 ここでのんびりと休憩して、もう一回お風呂に入ってから、ご飯を食べる。季節の素材を生かした豪華なお食事に舌鼓を打って、のんびりと下山する。それが、この温泉の、私の楽しみ方ですね。
 みんなで泊まる場合は、大きなお部屋を借りまして、そこで一日、日頃の枷を外して楽しむのです。
 温泉の中で働く従業員の方々も、皆、真面目な方々ばかり。
 天狗と言うのはプライドが高く、他のもの達を見下す癖があるといわれていましたが、それはデマだと断言することが出来るでしょう。

「おみやげいかがですかー?」
「あ、いつものお客様。お世話になってます。
 最近、新しく追加した、天狗のお宿限定のお菓子なんですけど」
「これなんて、とっても美味しいんですよ! ぜひ!」
「今なら、お一つ買ってくれたお客様には、もう一つ、プレゼントしちゃってます!」

 と言う具合に、ちょこっと商売上手なところもございまして、ついつい、みんなの分のお土産が増えてしまうのは仕方ありませんね。
 あ、ちなみに、今回の新作お菓子と言うのはもなかでした。
 使っているあんこと砂糖を変えたとかで、従来のものよりも濃厚な甘みを堪能することが出来ます。
 これがまた美味しくて、気がついたら、箱の中身がまるっと消えていたのですが……はて、どこへ行ってしまったのでしょう。
 仕方ないので、もう一つもなかを買って、そこを後にする私でした。


 さて、最後にご紹介しますのは、どこあろう博麗神社の裏手側にある小さな温泉です。
 ここは地底の温泉とつながった温泉であると言われているのですが、少し、地底の温泉とも質が違います。
 何といいますか……癒しの力が違うといいますか。
 これもまた、ここが神域であるが故の効果なのかもしれません。
 ここの管理……と言うか、土地の持ち主である博麗霊夢さん曰く、『まぁ、好きに利用すればいいんじゃない? お金? 興味ないし。あ、でも、くれるなら、お賽銭よろしく』という感じで、誰でも利用が出来る温泉となっています。
 お金を払わずに利用する不届き者もいるとは言っていましたが、当人が、『別にお金を取るための施設じゃない』と言っていることから、あまりそこを追及するのも仕方ないような気がします。
 第一、温泉自体の管理はされていませんから。
 当然、脱衣場もなければ、外からの視線をカットする衝立などもありません。
 まさに、『自然の中の温泉』というわけです。
 それなりに広く大きな温泉なのですが、山から猿やいのししなどといった、野生の動物がやってきて温泉につかっていることもあるそうです。
 ここで楽しむ温泉は、これまでの温泉とは、また違う風情を与えてくれます。
 これぞまさに、自然との一体化。人間から次のものへと昇華するための『修行』と言えるのではないでしょうか。
 修行とは、何も心身を厳しい状況に置くことばかりを指すのではありません。
 心と体をゆっくりととろけさせ、意識を拡大させ、もって、自分よりもさらに大きなものへと同一化を図るのも、また、特に精神修行の一つです。
 これはなかなか難しい。ただだらけているように見えてしまうのもあれなところはあるかもしれませんが、何より、自分の意識を広げるというのが難しいのです。
 私も、なかなか、この領域に到達することは出来ません。
 ただゆっくり温泉を堪能するだけになってしまってはいけません。
 ……まぁ、たまにはそれもいいのですけどね。せっかく、休憩しに来てるのですから。
 真面目というのは大切だといいますが、真面目すぎるのは問題なのだ、と誰もに言われます。
 人には休息が必要です。意識を常に張り詰めさせていると、ふとしたことで切れてしまった場合、もう元に戻ることは出来ませんから。
 そう考えると、毎日、のんびり過ごしている博麗霊夢さんの生活と言うのは、ある種の悟りの頂点と言えるのかもしれませんね。
 ……好意的に見すぎているような気もしますけれど。
 さてさて。
 この温泉は、純粋にお湯を楽しむだけの温泉ですので、お風呂上りのコーヒー牛乳ですとか、お土産のお饅頭などはありません。
 材料とかを持っていったりすると、霊夢さんが作ってくれたりもするのですが。
 さすがにそれは図々しいので、私はのんびりとお湯を堪能させていただいたら、お礼を言って立ち去ることにしています。
 ……こうした日常も、悪くはないものです。
 ちなみに霊夢さん自体は、あまりこの温泉は使っていないそうです。歩いていくのがめんどくさいから、とか何とか。
 さすがにだらけすぎですね。そういうのはよくないので、ちょっと腰に手を当てて叱ってしまうこともあるのですが、さて、本人に効いているかどうか。


「さあ、今日のお湯は、どこにいこうかな」

 高く広がる青空の下、お気に入りのお湯を求めて、旅立つ私でした。
 あ、三日後くらいには帰ってきますよ。お土産持って。




「青娥殿、お土産を頼みますぞ!」
「はーい。布都ちゃん、待っててね」
「青娥~、いってらっしゃ~い」
「芳香、みんなに迷惑をかけてはいけませんよ」
「青娥さん、のんびり骨休めをしてきてください」
「ありがとうございます、神子さま。では、行って参ります」

 わたくしの名前は霍青娥と申します。
 ここ……えっと……ん~、何と説明したらよろしいでしょうか。
 此の世でありながら此の世でない、彼の世でありながら彼の世でもない世界で暮らす、一介の仙人でございます。
 ここで、親愛なる、そして敬愛すべきもの達と暮らしております。
 これはわたくしの望んだ日常であり、結果でございます。しかしながら、やはり、毎日の暮らしの中で疲れはたまってしまうもの。
 時たま、わたくしは温泉に出かけることがございます。
 温泉と言うのはいいものです。体と心を癒し、明日への活力を養ってくれます。
 ただお湯に浸かるだけという行為ではありますが、そこから得られるものは大きく、投資に対する見返りは非常に大きいものでございます。
 さて、わたくしがやってまいりますのは、幻想郷と言う場所でございます。
 この、かつての『日ノ本』の形が残る世界は、割と生きやすい場所です。困りごとなども多数ございますが、それは半分以上は身から出たさび。自分のなした不徳故と考え、相対するのもやむなしといったところですか。
 ともあれ、そんな日常を過ごすのですから、たまの休息は必要でございます。
 そこで向かうのが温泉と言うわけです。
 リラックスの頂点との評価も高い、この施設。幻想郷は湯量も豊富。どこの地面を掘っても温泉が出てきます。
 利用しない手はないでしょう。

 わたくしのお気に入りの温泉施設として、まず、地底の温泉がございます。
 ここはとても素晴らしいお湯を楽しめると共に、よき時間、よき経験が出来る場でもございます。
 たとえば一例を申し上げますと――。

「あ、おねーさん! また来てくれたんだ!」
「はい。また、ここのお湯を楽しませていただこうかと」
「いいよいいよー! リピーター大歓迎!
 よーし、そんなお姉さんには、こいしちゃんがお背中流してあげよう!」
「あら、ありがとうございます」

 地底の少女、古明地こいしさん。
 かわいらしい彼女が出迎えてくれる温泉。なんと素晴らしいものでしょうか。
 彼女と一緒にお湯に浸かっていると、毎日の苦労なんてどこへやら。きれいさっぱり忘れて吹っ飛んで、明日への活力が、もう体の奥底からみなぎってくるといいますか。

「今度、お姉ちゃんも連れてくるから!
 お姉ちゃんも、毎日、お仕事忙しいから、たまには温泉に入って休憩するべきだと思うのです!」
「そうですわね。休むということは大切です。働く……と言うか、動いてばかりでは、疲れて動けなくなってしまいますものね」
「さっすがお姉さん、わかってるぅ!」
「温泉でのんびりするというのは、明日への活力を養うために、とても重要ですものね」
「だよね!」

 無邪気で元気な少女の白い素肌。
 これを見たその瞬間、わたくしの中に満ち溢れるのは明日への生命のパワーでございます。
 やはり、温泉と言うのは素晴らしい。
 地底の温泉、お勧めですよ。


 さて、続きますのは妖怪の山の温泉でございます。
 こちらの温泉、とても豪華で見事な温泉宿でして、名前は『天狗のお宿』と言うそうです。
 山の中腹、登山道を登っていくと現れる――少し言い方は悪いかもしれませんが、場違いに大きくて見事で、そして豪華な建物がそれです。
 登山をしてきて疲れて、汗もかいて。
 少し休憩したいな、というそのタイミングで、この宿は現れます。
 入ってみると、広い空間に見事な設備。そして目を引く調度品。
 天狗の方々に話を聞いたところ、ここは『天魔』と言う妖怪が『幻想郷で一番の観光地を目指す、その拠点』として建設したものだそうです。
 利用者は老若男女様々で、そのどなたもが、この温泉を楽しみ、そして満足しております。
 質の高いサービスの対価は少し……いえ、かなりお高いのですが、お部屋はほとんどが、いつでも予約が入っているそうで。
 家族で旅に出てきて、一番の『休日』を楽しみたい場合は、ここに来るのが最適の選択肢、とまで言われております。
 さてさて。
 この妖怪の山も、あちこちに温泉が湧いておりまして、ここもその一つです。
 ここの温泉は、山に湧く温泉の中でも一番いいものを使っているそうで、なるほど、乳白色のそのお湯は、通称『美肌の湯』と言われております。当然、女性の利用者が非常に多いのです。

「わーい! 楓ちゃん、まてまてー!」
「やーだよー!」

 お風呂はとても広く、大勢の人が一度に入浴できます。
 その中を走り回る少女たち……あらあら、危ないですよ。滑って転んで怪我をしたら大変です。

「こら、危ないでしょう。おやめなさい」
「はーい!」
「はーいはーい!」

 このかわいらしい少女たちは、白狼天狗、という天狗だそうです。
 いつ来ても、この温泉に、誰かいるのですよね。お仕事、少し暇なのかしら。とはいえ、少女ですから。きっと、お母さんとかが働いているのでしょうね。
 元気一杯、精気を弾けさせながら駆け回り、笑いあう彼女たちを見ていると、心が温かくなります。
 それ以外にも、これまたかわいらしい河童さんとかもいたりします。
 彼女たちは彼女たちで、『自分たちの温泉』を持っているらしく、あまりこちらに出てきたりはしないらしいのですが、それでも時たま、出会うことが出来ます。
 彼女たちが白狼天狗の少女たちと遊んでいるところなど、本当に心の和む光景です。

「おーい、早苗ー! 早く早くー!」
「はーい!」

 あ、そうそう。
 この山には『守矢神社』と言う神社がございまして。
 そこにおわします神様が、こちらに足を運ぶこともあるのです。

「あれ、あんた、以前もいたよね」
「こんにちは、青娥さん」
「ええ。ごきげんよう」

 その中の一人、洩矢諏訪子さまという神様は、これまた愛らしい少女です。
 もう何千年もの間、このようにかわいらしい姿のままというのは、神の時間は他のあらゆる生き物の時間とは違うということを実感させられますね。
 彼女に出会えた時は、滔々と、神代の頃のお話をしてもらうようにしています。
 仙人とは知識の権化。多くの知識、知恵を蓄えることで、仙人として徳を積み、格を上げる行為となります。
 神様のお話は神聖にして貴重ですから。
 こうしたチャンスは逃す理由はございません。
 お時間の許す限り、お話に耳を傾けるのが、言ってみれば、下々のもの達の役目ではないでしょうか。
 こうした、貴重な時間を得られるチャンス、そして、暖かな温泉を味わうことの出来る、天狗のお宿。なかなか、侮りがたい温泉ですわね。


 さて、最後にやってまいりますのは、博麗神社と言う小さな神社の裏手にある温泉です。
 こちらは神域に存在する湯ということで、周囲の……幻想郷のあちこちにある温泉とは、また少し、違った空気を持っています。
 空気がとても清浄であり、神性に満ちています。
 その空気を吸い込むと、体の中から穢れが抜け落ちていくような……そんな錯覚に囚われます。
 こちらの温泉は、湯は透明に透き通った、神域の気配を現すかのようなお湯です。
 お湯自体は地底の温泉と同質のものということですが、やはり、その空気と言うか、気配がそれに作用するのですね。
 こちらの神社の管理をしております、博麗霊夢さまにお金を払ってお湯を利用させていただくと、それだけで、仙人としての存在が高まっていくような気配を覚えます。
 これこそ、仙人としての修行ということでしょうか。
 お湯に包まれているその感覚は、母親の母胎に回帰したような感覚すら受けます。
 純粋で、何物にも囚われることのない、静かな時間。
 それを吸収することで、仙人として、力を高めていくのです。

「……ねぇ、ルナ。人がいるんだけど」
「それをどうしてわたしに言うのよ。サニーに言ってよ」
「あの人、別に、こっちをどうにかする人じゃないし、一緒にお風呂くらいいいんじゃないの?」

 そんな声が聞こえたので、そちらに視線をやると、かわいらしい妖精さんが3人。
 彼女たちは、この神社の境内に住んでいるらしい『光の三妖精』と名乗る妖精さんなのだそうで。

「ごきげんよう」
「うわ、何で気づいてるの!?」
「ルナが何かミスをしたのではないかしら」
「またスターは人のせいにする!」
「そんなところで騒いでないで、一緒にいかがですか?」

 彼女たちににっこり微笑むと、妖精と言うのは、人に馴れやすいというか、ある種、警戒心が薄いというか。
 こちらが何もしないということがわかっていれば、あまりおどおどびくびくする必要もないと考えているのかもしれませんね。
『お湯、ご一緒してもいいですか』と尋ねられるので、『もちろんです』と答えます。
 その見た目にぴったりな、かわいらしいお姿の彼女たちは、お湯の中でもこちらから距離をとってくるのが少々残念といいましょうか。
 しかし、妖精と言うのは、その場の『気配』そのものだとも言われております。
 ある種、他者から距離をとることで、存在の『希薄さ』というものを体現していると考えれば、なるほど、それは正しい行動であるのかもしれません。

「今度は誰もいない時に来ましょうよ」
「それはスターが何とかしなさいよ。そういうの得意でしょ」
「そうそう」
「あら、そうやって人を頼りにするのね。
 だったら、もう少し、こちらに協力的でもいいんじゃない?」
「よく言うよ」
「ほんとよね」

 何やらちょっともめているようですが、結局は、仲がいいのでしょう。
 彼女たちはその後、よくわからないお話を楽しそうにしておりました。
 彼女たちの話にそっと耳を傾けつつ、こちらはこちらで、ゆっくりのんびりと、神聖な空気と自分を同居させる修行に勤しみます。
 お風呂で体と心を休ませつつ、なお、自分の修行できるなんて、お得なところですわね。
 こうした、自分との対話が出来る場所は、幻想郷広しと言えどもそうはありません。
 やはり博麗神社、油断できないところですわ。


「さて、今日はどの温泉に足を運ぼうかしら」
 たまには大きく羽を伸ばすことの出来るこの時間。
 たっぷりと、堪能しなくては。




「あら、白蓮さま」
「まあ、青娥さん」
「ごきげんよう」
「ごきげんよう。
 青娥さんはどちらへ?」
「わたくしは、少々、温泉へ」
「まあ、青娥さんもなのですか? 実は私もなのです」
「まあまあ、奇遇ですわね。どちらへ?」
「そうですね……。
 今日は、地底の温泉にしようかなぁ、と」
「まあ、そうですか。
 でしたら、わたくしもご一緒してよろしいでしょうか?」
「ええ、ええ。ぜひとも。
 青娥さんも温泉好きなのですね。奇遇です」
「ええ、全く。
 ああ、それでは参りましょう。白蓮さま」
「はい。温泉、楽しみですね」
「ええ。温泉、楽しみですわね」
こうして、二人は泉友(と書いて『とも』と読む)となった――。
なお、双方の理解には大幅な飛躍と齟齬があるのだが、それを気にしてはいけないのである。
haruka
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コメント



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1.80奇声を発する程度の能力削除
良かったです
5.80絶望を司る程度の能力削除
若干青娥の目的がなんか違うw
7.100ペンギン削除
目的が噛み合ってるようでまるで違うw
8.100名前が無い程度の能力削除
やはりブルーはいつも通りだった!
9.80名前が無い程度の能力削除
甘味:ピンク
温泉:ブルー
両方:グラデ

三人目の仲間かな?(違