※この作品は『東方花映塚』、つまり大結界異変のちょい前が舞台となっています。もっと言えば、アリスが魔界を飛び出してから約一年後です。
時間設定に少々作者の意図が少々反映されていますが、あまり気にしないでください。
――卯一刻(午前五時頃)
「フフフーン、フフフン、フーン、フーン……♪」
魔法の森にある西洋風の一軒家。。この家の主、アリス・マーガトロイドは楽しそうに鼻歌を歌いながらテーブルクロスを取り換え、テーブルの真ん中には花を置いていた。
まだ日は昇ったばかりなのだが、妙にテンションが高い。今日は何かあるのだろうか?
「フーフフー、フンフ……あっ、そろそろいいかしら?」
アリスはそう言うとソファーに脱ぎ捨てられていたエプロンに頭を通してキッチンの方へ向かった。
「うん、良い具合ね」
アリスがオーブンを開けると、そこにはケーキのスポンジが良い具合に焼かれていた。彼女も乙女なのだからケーキくらい作ったところでどこもおかしくは無いのだが、随分とサイズが大きい。ゆうに五人分はあるだろう。そんなに食べてしまったら太ってしま……いや、それはそれで可愛いかも。
なんて、筆者が馬鹿なことを考えている間に、アリスはケーキに――予め用意しておいたのであろう――生クリームやイチゴ、板チョコなんかを使ってデコレーションを始めていた。
あぁ、ようやく分かった。板チョコに書かれている「Happy Birthday」の文字。彼女は自分の誕生日祝いとしてケーキを焼いていたのだ。でも、待てよ。ケーキは約五人前。失礼ながら、アリスの交流関係は希薄だ。一体、誰を誘ったのであろうか?
「……うん、できた。招待状はもう送ったし、正午にはみんな来てくれるはずね。魔理沙に霊夢、いつも本を借りているパチュリーに人形の材料を融通してくれている霖之助さん。楽しみだわ。ね、上海♪」
「シャンハーイ♪」
バースデーケーキのデコレーションを終え、一息ついた所でアリスの肩のあたりに浮いている上海に向かって笑顔を向けるアリス。上海も心なしか嬉しそうで両腕を万歳させていた。蓬莱は他の人形を指揮して部屋の片づけ・装飾を担当している。三角巾とエプロンを身に付け、生クリームを頬につけている笑顔のアリスが可愛い。
「じゃ、次はパスタでも作ろうかしら。上海はスープの様子を見ておいて、あと少しで出来上がるはずだから」
「シャンハーイ」
上海に料理の番をさせ、自分は人形には難しい作業をこなしていくアリス。効率が良さそうだ。
――巳一刻(午前九時頃)
アリスは、ソファーの上で体育座りしながら出来上がった豪華な料理をぼんやりと見つめていた。
「あーあ、みんな早く来ないかな……」
三時間前行動だなんて聞いたことも無い。気持ちは分かるが、いくら何でも気が早すぎる。上海と蓬莱はアリスの両横で彼女にもたれ掛るようにして寝ている。なかなか絵になる光景だった。
さて、ここまでの経緯を整理してみよう。
今日はアリスの年に一度の――そう何度あっても困る――誕生日。彼女は身近な五人の友人に招待状を送って、正午から開かれるパーティーを心待ちにしていた。だが、アリスの家にはアリスしか人手は無い。そのため、前日に人間の里へ買い出しに行き、パーティーの下拵えをしてから眠りに就いたのだった。
翌朝、つまり今朝、アリスは中々寝付けなかった上に思ったよりも目が早くに覚めたため、パーティーの準備に張り切っていたのが先ほど。要は遠足の前日によく眠れないのと同じだ。
そして今、早くから準備を始めたおかげか、パーティーよりも一と半刻(約三時間)ほど前にはやるべきことが全て済んでしまった。もちろん、料理が冷めてしまっては折角の準備が台無しになってしまうので、保温の魔法は施してある。それでも、楽しいイベントを前にすると、時間は非常に長く感じるものなのだ。アリスもそうだった。
おっと、どうやら話し込んでいる間に時間も大分過ぎたようだ。そろそろ本編に戻るとしよう。
――午一刻(午前十一時頃)
「……まさか、みんな私のこと忘れてないわよね? 一人ぼっちの誕生パーティーなんて……まさかね……うぅ……」
すっかりショゲてしまったアリス。体育座りをしていたはずだが、いつの間にか頭が膝の間にめりこみそうだった。
まぁ、確かにこれだけ整った会場で一人ぼっちというのは辛すぎる。筆者も同じ心境になると思う。だが、まだ予定より一時間も前なのだ。もう少しゆとりというものを持って貰いたいのだが――
(コンコン)
ノックの音がアリスの耳に入る。その途端、先程までの鬱は何だったのか、アリスの顔は喜色に満ち、小走りしながら玄関へと向かいドアへ手をかけると――
「(ガチャッ)はい、いらっしゃ――」
硬直するアリス。何があった?
「はい、こんにちは。今日もいい天気ね」
そこに立っていたのは、赤と橙のチェックの入った服を着て、日傘を差しながらクルクル回している素敵な笑顔の大妖怪――そう、風見幽香だった。
アリスと幽香の付き合いは意外と長い。その始まりについて、軽く触れておこうと思う。
彼女たちが初めて出会ったのはアリスの故郷、魔界だった。アリスは襲撃に来た巫女にコテンパテンにやられて、啜り泣きを漏らしながら魔界神の住むパンデモニウムへと歩いていた。もう飛ぶ気力すら残っていなかったようだ。その頃のアリスの容姿はまだまだ幼く、青と白の服を着込み、頭には同じく青いリボンをしている可愛らしい幼女だった。
そんな彼女の前に降り立ったのが、素敵な笑顔を浮かべ、口元を歪める幽香の姿だった。
彼女は魔界神と遊んだ(?)帰り道に、一人トボトボ歩く幼女を見つけ、その嗜虐心がくすぐられたのか、何かイケナイことを思いついたようだった。。直後、アリスの泣き声が周囲に響き渡ったという……一体、何をされたことやら。
と、まぁ、そんな出会いだったので、アリスは決して幽香に良い感情は持っていなかった。その後、アリスは幻想郷へと来てリベンジを試みたのだったが、再び泣かされたのだった。アリスが幻想郷に住まいを構えてからしばらくの間は幽香に会う事は無かったのだが、永夜異変の後にばったりと会ってしまったのだった。さぁ、そろそろ話を本編に戻そう。
「…………」
「この家では客人を無言でもてなすのかしら?」
何事も無いかのようにサラッと言う幽香。
「あ、あんたみたいな奴を呼んだ覚えなんかないわよ! 帰って頂戴っ」
つい、本音を漏らしてしまうアリス。次の瞬間、ハッとしたかのような顔になるが、もう遅い。幽香の唇は吊り上がっていた――
「へぇー、ふーん、そう。だったら、これで帰らせてもらうわ」
「え?」
簡単に引き下がる幽香にアリスは間の抜けたて声を出してしまった。
「いや、ね。いいのよ、別に。一人ぼっちの豪華なパーティー、楽しみよねぇ……えっ? 誰かを誘ったって? 四人も? あぁ、やだやだ。全く、あなたはいつまで経っても成長しないわね。誰も来るわけないじゃない♪ 良い歌を教えてあげるわ。ハッピバースデー、じ・ぶ・ん♡」
何でそこまで知ってんだよ。そう言いたい気持ちもどこへやら、アリスは先程まで抱え込んでいた不安に拍車をかけられたのか、アリスの目には涙が浮かび上がりポロポロと頬を零れ始めた……そして、幽香をキッと睨みつけると、涙を袖で拭い、何も言わずにドアを荒々しく閉めて家に籠ってしまった。
一方、当の幽香はと言うと、満足気な笑み……ではなく、つまらなそうな表情を浮かべていた。どうやら、ムキになってもらい、そこをイジりたかったようだが、アリスは真に受けてしまったのだった。
苛めるだけ苛めた幽香は、期待外れの展開に溜息を吐き、頭を掻くと、そのまま玄関から離れていった。
――午三刻(午後十二時頃)
「グスッ、ヒック……エッ、なによう。あんなこと……グスッ、言わなくたって、いいじゃない、ヒック……」
アリスは泣いていた。抱え込んでいた不安が爆発したら最後、後は坂道を転がる毛玉同然だった。アリスの周囲に浮かんで励まそうとする上海と蓬莱。だが、全く効果は無いようだ。
幽香とのやり取りを終え、泣き始めてから涙が枯れる頃迄には、すでに半刻が過ぎており、壁に掛けてある時計が正午を告げる音色がたった一人の部屋に虚しく響き渡る――
(コンコン)
耳の錯覚だろうか、時計の発する音に混じってノックの音が聞こえた気がする。ふと顔を上げると――
(コンコン)
再び聞こえた。決して幻聴などでは無い。アリスは涙の跡を拭うと玄関へと向かい、再びドアに手を伸ばした――
ところで、アリスは大きな勘違いをしていた。幽香に苛められ、気が動転していたのだろうが、まだ約束の時間は過ぎていなかったのだ。つまり、思い込みで泣き腫らしていたのだった。それはつまり、何を意味するのだろうか?
「(ガチャッ)どちらさ――」
「ア・リ・ス・ちゃ~~~~ん♡」
「え……きゃあ!」
いきなり吸血鬼の作ったロケットのような勢いで抱きついてきた客人によって玄関で押し倒されるアリス。倒れる寸前に赤い服と銀色の髪が見えたが誰だろう? 絶対どこかで見覚えがある。
アリスは誘った客人のリストを思い浮かべてみた。赤い服……うん、霊夢しかいない。だが、霊夢はこんなテンションではないはずだ。では、銀髪……霖之助? だとしたら間違いなく犯罪行為だ。全国のアリスファンにリンチされるだろう。もちろん、アリスも即『Grimoire of Alice』を解禁だ。ま、冷静に考えれば、流石の霖之助もそんな短慮ではあるまいて。
だが、もう他に候補がいない。アリスが視線を動かすと、そこには彼女の控えめな胸に頭をうずめて横に動かす頭があった。くすぐったい。
そして、その頭からピョコンと飛び出ている特徴的なサイドテールが喜んでいる子犬の尻尾のように揺れていた。間違いない、この人は――
「マ、ママ!?」
そう、来客とはアリスの母親とも言える存在、魔界神こと神綺だった……招待状は出されていないはずだが。顔を上げた神綺は、今度はアリスに頬ずりをし始めた。末の娘とは言え溺愛しすぎだ。
「ん~~、アリスちゃんってば~、ずっと連絡くれなかったから心配して来ちゃったわよ。お誕生日おめでとう♡」
「あ、ありがとう。って、マ……神綺様、なんでここに!? お仕事があるんじゃ……」
神綺の呼び方を変えるアリス。これでも一応「神」なのだから当然であろう。顔を赤らめているアリスはまるで「ママ」から「お母さん」に切り替えようとしている小学男児のようだ。
「もう、アリスちゃんったら~、ママでいいのよ。いえ、ママって呼んで頂戴(←真剣っ)。お仕事? アリスちゃんのお誕生日なんですもの。仕事の一つや二つくらいほっぽり出したって問題なしよ」
ありすぎだろう。神綺の母の愛に満ち溢れる言葉はアリスにとって嬉しいものだったが、内心は複雑だ。
「それにね、最近夢子ちゃんったら私の筆跡そっくりにサインできるようになったのよ。だから何の心配もいらないわ」
そう言う問題じゃない、アリスはそう叫びたかった。大方、夢子は頻繁な神綺の脱走の度に代筆をせざるを得ない状況にあるのだろう……完全な越権行為だが。気の毒な夢子姉さん、アリスはそう思っていた。
アリスがそんなこと考えている間に、神綺は起き上がっていて、押し倒された形になっているアリスを立ち上がらせた。
「さ、こんな所で立ち話もなんだし、中に入りましょ。アリスちゃん、ちゃんとお掃除お洗濯してる?」
「もちろんよ、私だって子供じゃないもん」
まるで小さい子に言い聞かせるように尋ねる神綺。そんな会話が懐かしく、アリスは顔を赤らめながら胸を張って答えた。完全に子供である。
「そうね、アリスちゃんも随分成長したみたいね……もう捨食は習得したの?」
アリスの背丈や胸なんかを見てそう言う神綺。
「まぁね。こっちに来て意外とすぐに習得できたわ。ユキやマイ達に魔法を教えてもらっていたからかしらね? そう言えば、二人は元気にしている?」
そのアリスの言葉に神綺は誇らしげだ。
「流石、私の『娘』ね。もちろん、ユキやマイも元気にしているわよ(……あら、家の中からユキとマイの魔力を感じるわね。どうしてかしら?)。あの子たちよりアリスちゃんの方がもう背丈は追い抜いちゃっているわね……あれから、アリスちゃんが魔界を出てから、もう一年、か」
「……うん」
霊夢たちによって魔界が襲撃――※『東方怪綺談』より――された後、アリスは自分の誕生日に魔界を出て幻想郷に赴き、色々あって住まいを構えることになったのだった。
おそらく読者諸兄の中には、神綺の内心の台詞の意味はなんぞ? これ程までにアリスを溺愛している神綺がなぜ魔界からアリスを出したのか? 捨食を身に付けたくせにこの一年でアリスが成長しすぎでは? など色々な疑問があるだろうが、それはまた別のお話なのである。
そうして、家に上がった二人。アリスの用意した会場に足を入れた神綺は部屋の様子を見るなり左手を口に当てて泣きそうな顔をした。
「ちょっ、えっ? ま、ママ。どうしたの!?(あっ、こんな準備して私しかいないからきっとママは――)」
「いや、ね。アリスちゃんにもお友達ができたんだなって思ったら……」
嬉しさ故だったようだ。なるほど、確かに一人分とは到底思えない料理を見れば自ずと察することが出来よう。それに、神綺はパーティの開始時間を知らないのだから。
「で、で、いつお友達は来るのかしら?」
初めて娘のお友達が家に遊びに来るのを嬉しそうに待ち構える母親のような神綺。実際にそうなのだが。だが、アリスの顔は晴れない。何せ、時間になっても誰一人としてまだ来ていないのだから。だが、隠し通せるわけが無いし、やはり言わねばなるまい、そう決心したアリスは口を開くのだった。
「あ、あのね、ママ。実は、私……」
「うん? どうしたの? アリスちゃ――」
(コンコン)
「――ッ!」
突然聞こえてきたノックの音。間違いない、今度こそ――。
「あら、お友達じゃない? ママが出てあげるわね♡」
「あ、ちょっと、待っ――」
玄関へスキップでもするかのようにして向かう神綺。そしてそれを制止するアリス。どっちが親なんだか。だが、アリスの制止は届かず、神綺はドアを開けた。
「(カチャッ)はぁ~い、こんに――」
笑顔のまま硬直する神綺。今日のドア運は良くないようだ。なんだ、ドア運って。
当の来客は見知らぬ人が出てきたため、驚いたようだったが、神綺の背後から小走りでアリスが来るのを目にした来客は口を開いた。
「霖之助さん!」
「やぁ、アリス。遅れてすまないね……ところで、この方は?」
ドアの前に立っていたのは、香霖堂の店主、森近霖之助だった。彼は自身の目の前で固まっている神綺に困り顔だった。
「あ、その人は――」
「母です♡ アリスちゃんがお世話になっておりますぅ(怒)」
アリスの言葉を遮る神綺。何だろう、口調は丁寧なのに妙に怖い。
「あぁ、お母さんでしたか」
「あんたに『お義母さん』と呼ばれる筋合いはない(笑)」
とんでもない誤解だ。
「え? ……あぁ、僕は森近霖之助と申します。この近くに店を構えていまして、アリスさんには昵懇にしてもらっています」
流石は常識に囚われてはいけない幻想郷。最初は戸惑ったものの、霖之助は普段通りに自己紹介をしていた。
だが、神綺はそうはいかなかった。
「……(キィー、バタンッ)」
無言でドアを閉める神綺。
「ちょっと、ママ!?」
余りの展開に驚くアリス。当の神綺はアリスの目線に会うように屈みこんで真剣すぎる眼差しでこう言うのだった。
「アリスちゃん、あなたに男の人は早すぎるわよ。ママ、そんな子に育てた覚えはないわ!」
ずっこけるアリス。ただの親バカだった。
「ちょ、霖之助さんはそんなんじゃないってば!」
「いーえ、ママに分からないことなんてないわ! パーティーに男の人を呼ぶってことはそうなんでしょ!」
誤解はするらしい。まるで娘の彼氏を始めて目の当たりにした父親のようだ。女だけど。
「折角来てくれたのに、何てことするのよ!」
「アリスちゃんの貞操を守るためならママは鬼にも悪魔にだってなるわ!」
魔界神の言う台詞か。神綺は自分の言葉で何を思ったのか、顔色を一転させた。
「はっ、まさか、アリスちゃん……あいつに体を許しちゃったの……?」
「な、な……」
顔を赤らめるアリス。だが、もちろん、それは神綺の言葉が的を得ていたからではない。むしろボークだ。アリスは都会派魔法使い、つまりは温室育ちの初心(うぶ)だった。故に神綺の言葉に顔を赤らめてしまっただけなのだ。
だが、神綺はそれを肯定の意に捉えてしまったようだ。
「そ、そんな……ア、アリスちゃんの純潔が……」
アリスとは対照的にガタガタと震える神綺は怯えたように真っ青になっていた。
「ま、ママのバカァ―!!」
耐え切れずに叫ぶアリス。神綺の動きが止まる。
「私はまだ処女よ! 魔界風に言うならヴァージンよ!!」
魔界風だったのか、ヴァージンって。その言葉にほっとしたかのように顔に血の気が戻る神綺。無言でアリスをその胸に抱きしめた。アリスもまだ怒ってはいるようだが、心なしか満更でも無さそうだ。
母娘喧嘩もこれで終わりを告げたようだ。めでたしめでたし。
お・わ・り♡
……いや、ちょっと待て。冷静に状況を整理してみよう。なぜ二人は喧嘩を始めたのか? もちろん、『霖之助』が来たからだ。では、当の霖之助はどこにいる? ……正解。彼は今、玄関の前に置き去りだ。そして、両者を隔てる物は木の扉一枚。そんな状況下、大声でのやり取りはどうなる? もちろん、筒抜けだった。ヴァージン云々も。
「あー、今日はお日柄がよろしくないみたいだから、後日また来るよ。取り敢えず、プレゼントはここに置いておくから、後で取っておいてくれ。それじゃ」
そう言って気まずそうに、そそくさと帰路に就く霖之助。その背後からは
「もう来んなぁぁぁぁぁぁ!! (←泣き声)」
「なに言ってんのよぉぉぉ! バカァァァ!!」
二人の叫びが響き渡ったという。しかし、なんで神綺が泣いているのだろう?
――午の四の刻(午後十二時三十分頃)
「ママのバカバカバカァー!!」
「いや、あれはアリスちゃんのことをを思って……」
パーティーの会場になっている居間のソファーでアリスは腰かけている神綺の胸元をポカポカ殴りながらバカ、バカと連呼していた。全く痛そうではない。完全に幼子のそれだった……だが、神綺の顔を見ると、精神的なダメージは大きいようだ。
「私、こっちに来てから……ずっと一人ぼっちで……ようやく、霊夢や魔理沙と会えて、少しずつでも親しい人を増やしていったのに、どうして邪魔するのよぉ……さっきの霖之助さんだって、いつもお人形の材料やお洋服の生地とかを融通してくれているのにぃ……それに、それに……どうして魔理沙たちは、来ないの、よぅ…………」
「ア、アリスちゃん……あら?」
泣き疲れたのか、はたまた昨夜の睡眠不足が祟ったのか、神綺の胸元にもたれる形でアリスは眠りこけてしまった。そんなアリスを神綺は優しく抱き上げてソファーの上に寝かせた。そして、アリスの部屋に行こうとすると、いつの間にか居間に来ていた上海と蓬莱が毛布を持って神綺に差し出していたので、礼を言ってそれを受け取り、それをアリスに掛けると、神綺自身もソファーに座り、アリスの頭を持ち上げて自身の膝の上に乗せると、愛しむようにして愛娘を見つめながら、優しくその金髪を撫でるのだった。
「私は、いつまでもアリスちゃんを子供だとばかり思っていたけれど、少しずつ、少しずつでも前に進もうと頑張っていたのね……。私の自慢の娘はしっかりと成長してくれていたみたい。嬉しいわ……ママ、悪い事しちゃったな……」
そう言うと同時に、上海や蓬莱は神綺の目の前に降りてきた。
その二体を見つめるうちに、神綺は気付いた。自律人形ではないが、人形師抜きで、ある程度の意志を持つかのように振る舞う、この二体の人形に対する違和感に……
「……そう、あなた達は、いつもアリスちゃんを見守ってくれていたのね」
「シャンハーイ……」
「ホラーイ……」
「ありがとね、ユキ、マイ……」
人形たちの言葉の裏に、何が込められていたのか、それは神綺にも分からない。だが、感じることはできたと思う。
一人の魔界神と二体の人形は、スヤスヤと眠るアリスを優しく見守っていた。さながら、眠り姫の周りにいる小人たちのように。
では、姫の眠りを覚ます王子様はいつ来るのだろうか――
――未の刻(午後一時頃)
アリスが眠り始めてから数十分が経った。神綺はまだアリスの髪を撫でている。すると――
「(ガチャッ)おーい、アリス。邪魔するぜー」
「なによ、来てやったのに顔くらい出しなさいよ。素直じゃないわねー」
ノックもせず、無遠慮に上がりこんで来たのは、魔理沙と霊夢だった。
そう言えば、さっき神綺がドアを閉めた際に鍵を閉めるのを忘れていたっけ。それでも勝手に上がりこんでくるのもどうかと思うが……。
「ん、う~ん……?」
二人の賑やかな声にアリスも目を覚ましたようだ。神綺もまだ寝ぼけているアリスを撫でながら、アリスの友人が来たことを喜んでいるようだ……それが例え、この間コテンパテンにやられた相手だとしても。
「アリス? 居ないのか……って、こりゃ珍しい顔だぜ」
「ほんとね。久しぶりじゃない、神綺」
居間に入ってきた二人は部屋に神綺が居ることに驚いているようだった。
「久しぶりね、二人とも。少しは大きくなったようね(←何が?)」
「余計なお世話よ」
普段通りのそっけなさで返す霊夢。
「あら、そう?……それにしても、魔理沙。あなた、口調が変わってない?」
「こっちが素だぜ。ま、こっちにも色々あるってこった」
神綺の問いにニカっと笑って答える魔理沙。その指は霊夢の脇腹を突っついていた。
「(チョンチョン)ん? 魔理沙、どうしたの……あぁ」
霊夢はニヤニヤする魔理沙の指差す方――神綺の膝の上――に目を動かすと、そこには寝ぼけ眼で起き上がろうとするアリスの姿があった。アリスは二人の姿を認めると、寝ぼけたように口を開いた。
「あれ……魔理沙と、霊夢? ……どうしてここに?」
そんなアリスの言葉に呆れたかのような霊夢。
「はぁ? あんたがパーティーするって言うから来てやったんでしょうが」
「アリス、今でもママの膝の上で寝ているんだな。気持ちよさそうだったぜ(プフッ)」
霊夢とは対照的に笑いをこらえながらそう言う魔理沙。
「え、ママ?」
アリスは魔理沙の言うことが分からなかったようで、先程まで頭を乗せていたところへ目を向けると、ソファーの色とは異なる赤い布地が見えた。おかしいわね、そう思って顔を上に向けると、そこには満面の笑みを浮かべた神綺の顔があるのだった。
「え、えぇ!? どうして私、ママに膝枕してもらってるの!?」
「ふふ、ひ・み・つ♡」
ここでアリスが泣き疲れて眠った、など言えば二人に笑われることが目に見えていたので神綺はそう答えるのだった。アリスは羞恥と驚きで神綺から距離を取ろうとしたのだが、ソファーの上でそのように動けばどうなるか? 下にひっくり返った。頭から勢いよく。その様子を見て魔理沙は爆笑し、霊夢と神綺は苦笑していた。
「ねぇ、アリスちゃん。お友達も来てくれたんだし、そろそろパーティーを始めましょうよ、ね♪」
ひっくり返って涙目で頭を擦るアリスの手を引っ張って立ち上がらせながら神綺はニコニコ顔でそう言った。
「え? あぁ、そうね。みんな揃ったみたいだし、そろそろ始めましょうか」
「あれ? 食器は五人分あるけど、誰か足りないんじゃない?」
「てっきり香霖も来るかと思ってたぜ」
言われてみると、この場にいるのはアリス、神綺、魔理沙、霊夢の四人だ。魔理沙たちがそう思うのも無理はない。そんな疑問にアリスは困ったように神綺の顔を見ながら言った。
「実はね、さっき霖之助さんが来てくれたんだけど……色々あって、帰っちゃったのよ」
隣で気まずそうにあらぬ方角を見る神綺。悪戯のバレた子供のようだ。
「あぁ、それでか。玄関の所にこれが落ちてたぜ。ホレ」
魔理沙はそう言いながら小脇に挟んでいた包みをアリスへ投げた。
「ブッ……ま、魔理沙! 何するのよ!!」
見事アリスの顔面にストライク。このまま痴話喧嘩が始まるかと思ったが、
「まあまあ、アリスちゃん。折角だから開けてみたら?」
魔理沙へ喰ってかかろうとするアリスを制して神綺は矛先をずらした。折角のパーティーだ。神綺のとりなしは正解だった。
アリスはソファーに腰掛けると、包みを開けた。
「あっ、この布生地……」
そこに入っていたのは洋服の服となる色とりどりの生地だった。その中には、かねてより欲しいと思っていたが、高くて手の出せなかったものもあった。霖之助、漢である。
「へぇー、良かったじゃない」
「香霖もいいとこあるじゃないか」
「良かったわね、アリスちゃん(後で香霖堂とやらに行って謝ろうかしら?)」
三人も興味津々とばかりに霖之助のプレゼントを覗き込む。惜しむらくは、この場に霖之助がいないことか。
「うれしいな。あとでお礼にクッキーでも焼いていこうかな」
プレゼントなのにお返しを考えるアリス。律儀だ。
「私も食べたいぜ」
「アリスちゃん、ママには?」
「あー、はいはい。分かりましたよ……って、そう言えばクッキーも作ってあったっけ(パチンッ)」
アリスが指を鳴らすと、保温のため、外気と料理を遮断していた魔法が解除され、部屋中に出来立て同然の美味しそうな香りが漂い始めた。
「へぇ~、やっぱりあんたって料理上手いのね。美味しそうじゃない」
「早く食いたいぜ」
「アリスちゃん、早く、早く♪」
一番子供っぽい神綺様。それはそれでいいと思う。
取り敢えず、四人はテーブルを囲むようにして各々席に着いた。
「おっ、そうだ、霊夢。私たちもプレゼント渡そうぜ」
「早く食べたいんだけど……ま、こういうのは最初の方がいいか」
そう言って霊夢は巫女服の袖野中に、魔理沙は脱いだとんがり帽子の中に手を入れてプレゼントとやらを取り出した。どこに入れてんだよ、と突っ込みたかったが、アリスとしては二人――特にジリ貧かつ他人に無関心な霊夢――からのプレゼントに対して、口には出さないものの内心喜んでいた。……あくまで口に出さないだけで、表情にはありありと出ていたが。それがアリスのチャームポイント。
「はい、これ」
「プレゼントだぜ」
「……はい?」
二人から渡されたものを見てアリスは疑問で返してしまった。だが、それも無理はない。
「魔理沙、この魔導書って私が貸してたやつじゃない。いつからあなたのものになったのよ……」
なんと、他人に貸した(?)ものが自分へのプレゼントと言う形で帰ってくるとは……筆者には想像もできない境地だ。
「いたたた……耳引っ張るなって。一生じゃなくてすぐ『返した』んだからいいじゃないか」
火に油を注ぐとはこのことか。一度魔理沙は辞書で『プレゼント』の意味を調べるべきだ。
「そう言う問題じゃないでしょ! そもそも前提が間違ってるじゃない!! それに、霊夢! 何なのよ、この『賽銭不要参拝券(一回限り)』って!!」
巫女さんならではのプレゼントだ。筆者は全力で要らないが。
「別にいいじゃない」
「よくないっ」
そう言って三人は口げんかを始めた。だが、三人の顔に浮かぶ笑みを見ていると、神綺はむしろ微笑ましく思い、愛する娘の現在(いま)を密かに喜んでいるのだった。
しばらくして
「はぁ、はぁ、霊夢。もういいんじゃないか?」
「そ、そうね。もうペコペコで限界よ」
不思議な会話をする二人に同じく疲れ果てたアリスが質問を挟む。
「な、なんの、こと、よ……?」
普段がインドア派だから相当疲れているようだ。
「これはサプライズだぜ」
「サプライズ?」
「そうよ。紫が教えてくれたんだけど、外の世界で流行っているみたい。だから、最初に適当なものを渡して反応を楽しんでから本命をドーンって渡すつもりだったのよ」
そういうものだっけ?
「そ、そうだったの?」
ホッとしたような顔をするアリス。確かに、あれがプレゼントでは面白くないだろう。
「これが私たちからのプレゼントだぜ」
魔理沙が立ち上がってスカートの内側のポケットから高級茶葉の缶と星を模(かたど)ったペンダントを出して差し出した。
「こっちの御茶缶は私からよ」
と霊夢。
後で聞いたところによると、霊夢は八雲紫に『何か(←筆者にも分からない)』を代償に外の世界から取り寄せてもらったらしい。もちろん、アリスの嗜好を考慮して紅茶の茶葉だ。しかも、かなり貴重な茶葉らしい。それにしても、それってお茶缶に入っているものなのだろうか? 筆者は緑茶はなので良く分からない。まぁ、霊夢らしくていいが。
「んで、このペンダントは私が作ったんだ。マジックアイテムとして使えるかもだぜ☆」
魔理沙からのプレゼントは銀板を星形に磨いて作られたペンダントだった。吸血鬼対策になるかも? 魔理沙らしく、所々にムラがあったが、アリスとしては手作りのプレゼントを心底喜んでいた。
「(うわぁ。顔、ニヤけてないわよね?……うん、宝物にしよっと)ふ、ふん。相変わらず不器用ね。ま、貰ってあげるわ」
ツンデレだ。全く、どっちが不器用なんだか。
だが、渡した魔理沙も嬉しそうに笑っている――慣れているのかもしれない――からまあこれでいいのだろう。
「私たちからは以上だぜ。神綺も何か持ってきてないのか?」
「そうよね。母親なんだから、私たちの想像もつかないものなんじゃないかしら?」
魔界神相手に呼び捨て、と不遜な魔理沙。無駄にハードルを上げる霊夢。この二重攻撃に神綺はむしろ「ふふふ……」とか言いながら満面の笑みを浮かべていた。余程プレゼントに自信が有るのだろう。
「私からアリスちゃんへのプレゼントは……これよ!」
「「お、おぉ~~!」」
驚く魔理沙と霊夢。無理もないどこから取り出したのか、神綺のプレゼントは彼女の身長の半分くらいの大きさだったのだから。
「さ、アリスちゃん、開けてみて♡」
「う、うん。(ビリッ)……えぇ!?」
包装を開いて仰天するアリス。魔理沙と霊夢は一瞬呆気にとられたものの、大爆笑していた。よほど想像もつかないものだったようだ。
さて、神綺からのプレゼント、それは『1/2サイズ 神綺人形(ぬいぐるみ・デフォルメ仕様・Made in Diablerie)』だった。欲しい。
「くっ、ぷふっ……よ、良かったじゃない」
目に涙を浮かべる霊夢。
「良かったな、アリス。今日から寝る時は一人じゃなくなってさ(←爆笑)」
腹を抱えながら笑い転げる魔理沙。むかついたので、さっき渡された魔導書をブン投げた。ボール。アリスはコントロールが良くなかった。
「痛ッ! ……い、いい度胸してるじゃない(怒)」
魔導書はしっかりと霊夢のおでこにヒットしていた。席を立った霊夢に寄り詰められてアリスはタジタジだ。魔理沙は笑いながらその様子を見ている。
「ははは……ほれ、アリス。ママにお礼でも言ったらどうなんだ?」
魔理沙に言われて見てみると、神綺はニコニコしながらアリスの感想を待っていた。
「あぅ……その、と、とっても嬉しいわ。ありがとう……ママ」
「はい、どういたしまして」
そう言って人目も憚らずにアリスを胸に抱きしめる神綺。アリスの顔はリンゴよりも真っ赤になっていたが、心なしか嬉しそうだ。
一方、魔理沙と霊夢は、神綺の親バカっぷりに苦笑していたが、親と触れ合えるアリスをうらやましくも思っていた。魔理沙はその思いを断ち切るかのように口火を切った。
「じゃ、私はアリスが甘えている間に一足早く御馳走をいただくぜ☆」
「だ、誰が甘えてなんて――」
「あんた以外に誰がいるのよ」
相変わらず仲のいい三人。さぁ、楽しい、楽しいお誕生日パーティーの始まりだ。
その後、アリスの作ったバースデーケーキに蝋燭を刺して息で吹き消す、という伝統行事を行ってから食えや、吞めやのどんちゃん騒ぎになった。え、ロウソクの本数? 【自主規制】本だとさ。
夜には、魔理沙が庭に出て星の魔法によるイルミネーションを見せてくれたが、打ち上げた弾幕のいくつきかがアリスの家に落下したため、アリスと口喧嘩になるといった、いつも通りのトラブルが多々あったようだが、それでも楽しい一時がヒロシゲ顔負けに流れ去っていった。
アリスはその間、ずっと表情のどこかで笑いを浮かべていたという。
――亥の二の刻(午後九時三十分頃)
どんちゃん騒ぎを始めて早くも四刻(約八時間)以上の時間が過ぎた。楽しい時間はあっという間に過ぎ、心地よい疲れもドッとやってくるものだ。
案の定、四人は遊び疲れて思い思いにだらけていた。料理もあらかた片付いていた。そんな時――
(コンコン)
本日何回目かのノックの音がした。こんな時間に一体誰だろう、そう思いながらアリスはドアを開けに玄関へ向かうのだった。
「はぁ~い(ガチャッ)あれ、夢子姉さん?」
「久しぶりね、アリス。元気そうでよかったわ。お誕生日おめでとう。はい、プレゼントよ」
玄関にいたのは、赤いメイド服の女性、夢子だった。出てきた妹の成長ぶりを喜ぶかのように笑顔で頭を撫でながら小さな包みを手に握らせる夢子。
彼女は、神綺の傍に仕える最強クラスの魔界人であり、神綺の娘、そしてアリスの姉に当たる人物だ。
「ありがとう。でも珍しいね。夢子姉さんがこっちに来るなんて」
プレゼントの包みを受け取ったアリスの笑顔に満足していた夢子の表情は一転して複雑なものなった。
「ちょっとね、サボり癖のついた魔界神サマを連れ戻しに来ただけよ。メイドの仕事と魔界神の仕事の掛け持ちは地獄以外の何物でもないわ……」
確かに、紅い屋敷のメイドとは違って時間操作のできない夢子にとって、それは激務を越えて過労死しかねないものなのだろう。
「夢子姉さんも大変ね……上がって、ママはこっちよ」
その後、酔い潰れていた魔界神は従者によって引きずられるかのようにして魔界へと帰っていったのだった。
部屋に残された三人。
「んじゃ、私たちも帰るか?」
「そうね、今日は楽しかったわ。また今度ね。おやすみ」
そう言うと二人もそれぞれの家に帰っていった。こういう場ではサッパリとした別れ方の方が後味がいいものだ、と場馴れしている二人には分かっているかもしれない。
一人居間に残されたアリス。だが、昼前のような寂寥感は無く、むしろ先程までの興奮に酔っていた。そして、湯浴みを済ませると、寝間着に着替えて神綺人形を手に抱きながらベッドの上に腰掛けた。
「楽しかったけど、眠くなっちゃった……そう言えば、夢子姉さんは何をくれたんだろう?」
先程夢子から渡された包みを手に取るアリス。大きさは本と同じくらいだったが、どうも厚みが足りない気がする。
「(ペリッ)これって――」
封を切って中身を取り出したアリス。そこ入っていたのは六通の手紙だった。もちろん、魔界にいる姉たち――ちゃっかり神綺のも混ざっていた(←なぜ来たし)――からだった。
久々に読んで感じる肉親の言葉、その内にあるアリスへの愛……読んでいる内にアリスの視界が歪む。
「みんな……グスッ、今度、里帰りでもしよっかな」
アリスはその手紙を机の引き出しへ大切に仕舞い、神綺人形を抱きながら眠りに就くのだった。
おやすみなさい……
時間設定に少々作者の意図が少々反映されていますが、あまり気にしないでください。
――卯一刻(午前五時頃)
「フフフーン、フフフン、フーン、フーン……♪」
魔法の森にある西洋風の一軒家。。この家の主、アリス・マーガトロイドは楽しそうに鼻歌を歌いながらテーブルクロスを取り換え、テーブルの真ん中には花を置いていた。
まだ日は昇ったばかりなのだが、妙にテンションが高い。今日は何かあるのだろうか?
「フーフフー、フンフ……あっ、そろそろいいかしら?」
アリスはそう言うとソファーに脱ぎ捨てられていたエプロンに頭を通してキッチンの方へ向かった。
「うん、良い具合ね」
アリスがオーブンを開けると、そこにはケーキのスポンジが良い具合に焼かれていた。彼女も乙女なのだからケーキくらい作ったところでどこもおかしくは無いのだが、随分とサイズが大きい。ゆうに五人分はあるだろう。そんなに食べてしまったら太ってしま……いや、それはそれで可愛いかも。
なんて、筆者が馬鹿なことを考えている間に、アリスはケーキに――予め用意しておいたのであろう――生クリームやイチゴ、板チョコなんかを使ってデコレーションを始めていた。
あぁ、ようやく分かった。板チョコに書かれている「Happy Birthday」の文字。彼女は自分の誕生日祝いとしてケーキを焼いていたのだ。でも、待てよ。ケーキは約五人前。失礼ながら、アリスの交流関係は希薄だ。一体、誰を誘ったのであろうか?
「……うん、できた。招待状はもう送ったし、正午にはみんな来てくれるはずね。魔理沙に霊夢、いつも本を借りているパチュリーに人形の材料を融通してくれている霖之助さん。楽しみだわ。ね、上海♪」
「シャンハーイ♪」
バースデーケーキのデコレーションを終え、一息ついた所でアリスの肩のあたりに浮いている上海に向かって笑顔を向けるアリス。上海も心なしか嬉しそうで両腕を万歳させていた。蓬莱は他の人形を指揮して部屋の片づけ・装飾を担当している。三角巾とエプロンを身に付け、生クリームを頬につけている笑顔のアリスが可愛い。
「じゃ、次はパスタでも作ろうかしら。上海はスープの様子を見ておいて、あと少しで出来上がるはずだから」
「シャンハーイ」
上海に料理の番をさせ、自分は人形には難しい作業をこなしていくアリス。効率が良さそうだ。
――巳一刻(午前九時頃)
アリスは、ソファーの上で体育座りしながら出来上がった豪華な料理をぼんやりと見つめていた。
「あーあ、みんな早く来ないかな……」
三時間前行動だなんて聞いたことも無い。気持ちは分かるが、いくら何でも気が早すぎる。上海と蓬莱はアリスの両横で彼女にもたれ掛るようにして寝ている。なかなか絵になる光景だった。
さて、ここまでの経緯を整理してみよう。
今日はアリスの年に一度の――そう何度あっても困る――誕生日。彼女は身近な五人の友人に招待状を送って、正午から開かれるパーティーを心待ちにしていた。だが、アリスの家にはアリスしか人手は無い。そのため、前日に人間の里へ買い出しに行き、パーティーの下拵えをしてから眠りに就いたのだった。
翌朝、つまり今朝、アリスは中々寝付けなかった上に思ったよりも目が早くに覚めたため、パーティーの準備に張り切っていたのが先ほど。要は遠足の前日によく眠れないのと同じだ。
そして今、早くから準備を始めたおかげか、パーティーよりも一と半刻(約三時間)ほど前にはやるべきことが全て済んでしまった。もちろん、料理が冷めてしまっては折角の準備が台無しになってしまうので、保温の魔法は施してある。それでも、楽しいイベントを前にすると、時間は非常に長く感じるものなのだ。アリスもそうだった。
おっと、どうやら話し込んでいる間に時間も大分過ぎたようだ。そろそろ本編に戻るとしよう。
――午一刻(午前十一時頃)
「……まさか、みんな私のこと忘れてないわよね? 一人ぼっちの誕生パーティーなんて……まさかね……うぅ……」
すっかりショゲてしまったアリス。体育座りをしていたはずだが、いつの間にか頭が膝の間にめりこみそうだった。
まぁ、確かにこれだけ整った会場で一人ぼっちというのは辛すぎる。筆者も同じ心境になると思う。だが、まだ予定より一時間も前なのだ。もう少しゆとりというものを持って貰いたいのだが――
(コンコン)
ノックの音がアリスの耳に入る。その途端、先程までの鬱は何だったのか、アリスの顔は喜色に満ち、小走りしながら玄関へと向かいドアへ手をかけると――
「(ガチャッ)はい、いらっしゃ――」
硬直するアリス。何があった?
「はい、こんにちは。今日もいい天気ね」
そこに立っていたのは、赤と橙のチェックの入った服を着て、日傘を差しながらクルクル回している素敵な笑顔の大妖怪――そう、風見幽香だった。
アリスと幽香の付き合いは意外と長い。その始まりについて、軽く触れておこうと思う。
彼女たちが初めて出会ったのはアリスの故郷、魔界だった。アリスは襲撃に来た巫女にコテンパテンにやられて、啜り泣きを漏らしながら魔界神の住むパンデモニウムへと歩いていた。もう飛ぶ気力すら残っていなかったようだ。その頃のアリスの容姿はまだまだ幼く、青と白の服を着込み、頭には同じく青いリボンをしている可愛らしい幼女だった。
そんな彼女の前に降り立ったのが、素敵な笑顔を浮かべ、口元を歪める幽香の姿だった。
彼女は魔界神と遊んだ(?)帰り道に、一人トボトボ歩く幼女を見つけ、その嗜虐心がくすぐられたのか、何かイケナイことを思いついたようだった。。直後、アリスの泣き声が周囲に響き渡ったという……一体、何をされたことやら。
と、まぁ、そんな出会いだったので、アリスは決して幽香に良い感情は持っていなかった。その後、アリスは幻想郷へと来てリベンジを試みたのだったが、再び泣かされたのだった。アリスが幻想郷に住まいを構えてからしばらくの間は幽香に会う事は無かったのだが、永夜異変の後にばったりと会ってしまったのだった。さぁ、そろそろ話を本編に戻そう。
「…………」
「この家では客人を無言でもてなすのかしら?」
何事も無いかのようにサラッと言う幽香。
「あ、あんたみたいな奴を呼んだ覚えなんかないわよ! 帰って頂戴っ」
つい、本音を漏らしてしまうアリス。次の瞬間、ハッとしたかのような顔になるが、もう遅い。幽香の唇は吊り上がっていた――
「へぇー、ふーん、そう。だったら、これで帰らせてもらうわ」
「え?」
簡単に引き下がる幽香にアリスは間の抜けたて声を出してしまった。
「いや、ね。いいのよ、別に。一人ぼっちの豪華なパーティー、楽しみよねぇ……えっ? 誰かを誘ったって? 四人も? あぁ、やだやだ。全く、あなたはいつまで経っても成長しないわね。誰も来るわけないじゃない♪ 良い歌を教えてあげるわ。ハッピバースデー、じ・ぶ・ん♡」
何でそこまで知ってんだよ。そう言いたい気持ちもどこへやら、アリスは先程まで抱え込んでいた不安に拍車をかけられたのか、アリスの目には涙が浮かび上がりポロポロと頬を零れ始めた……そして、幽香をキッと睨みつけると、涙を袖で拭い、何も言わずにドアを荒々しく閉めて家に籠ってしまった。
一方、当の幽香はと言うと、満足気な笑み……ではなく、つまらなそうな表情を浮かべていた。どうやら、ムキになってもらい、そこをイジりたかったようだが、アリスは真に受けてしまったのだった。
苛めるだけ苛めた幽香は、期待外れの展開に溜息を吐き、頭を掻くと、そのまま玄関から離れていった。
――午三刻(午後十二時頃)
「グスッ、ヒック……エッ、なによう。あんなこと……グスッ、言わなくたって、いいじゃない、ヒック……」
アリスは泣いていた。抱え込んでいた不安が爆発したら最後、後は坂道を転がる毛玉同然だった。アリスの周囲に浮かんで励まそうとする上海と蓬莱。だが、全く効果は無いようだ。
幽香とのやり取りを終え、泣き始めてから涙が枯れる頃迄には、すでに半刻が過ぎており、壁に掛けてある時計が正午を告げる音色がたった一人の部屋に虚しく響き渡る――
(コンコン)
耳の錯覚だろうか、時計の発する音に混じってノックの音が聞こえた気がする。ふと顔を上げると――
(コンコン)
再び聞こえた。決して幻聴などでは無い。アリスは涙の跡を拭うと玄関へと向かい、再びドアに手を伸ばした――
ところで、アリスは大きな勘違いをしていた。幽香に苛められ、気が動転していたのだろうが、まだ約束の時間は過ぎていなかったのだ。つまり、思い込みで泣き腫らしていたのだった。それはつまり、何を意味するのだろうか?
「(ガチャッ)どちらさ――」
「ア・リ・ス・ちゃ~~~~ん♡」
「え……きゃあ!」
いきなり吸血鬼の作ったロケットのような勢いで抱きついてきた客人によって玄関で押し倒されるアリス。倒れる寸前に赤い服と銀色の髪が見えたが誰だろう? 絶対どこかで見覚えがある。
アリスは誘った客人のリストを思い浮かべてみた。赤い服……うん、霊夢しかいない。だが、霊夢はこんなテンションではないはずだ。では、銀髪……霖之助? だとしたら間違いなく犯罪行為だ。全国のアリスファンにリンチされるだろう。もちろん、アリスも即『Grimoire of Alice』を解禁だ。ま、冷静に考えれば、流石の霖之助もそんな短慮ではあるまいて。
だが、もう他に候補がいない。アリスが視線を動かすと、そこには彼女の控えめな胸に頭をうずめて横に動かす頭があった。くすぐったい。
そして、その頭からピョコンと飛び出ている特徴的なサイドテールが喜んでいる子犬の尻尾のように揺れていた。間違いない、この人は――
「マ、ママ!?」
そう、来客とはアリスの母親とも言える存在、魔界神こと神綺だった……招待状は出されていないはずだが。顔を上げた神綺は、今度はアリスに頬ずりをし始めた。末の娘とは言え溺愛しすぎだ。
「ん~~、アリスちゃんってば~、ずっと連絡くれなかったから心配して来ちゃったわよ。お誕生日おめでとう♡」
「あ、ありがとう。って、マ……神綺様、なんでここに!? お仕事があるんじゃ……」
神綺の呼び方を変えるアリス。これでも一応「神」なのだから当然であろう。顔を赤らめているアリスはまるで「ママ」から「お母さん」に切り替えようとしている小学男児のようだ。
「もう、アリスちゃんったら~、ママでいいのよ。いえ、ママって呼んで頂戴(←真剣っ)。お仕事? アリスちゃんのお誕生日なんですもの。仕事の一つや二つくらいほっぽり出したって問題なしよ」
ありすぎだろう。神綺の母の愛に満ち溢れる言葉はアリスにとって嬉しいものだったが、内心は複雑だ。
「それにね、最近夢子ちゃんったら私の筆跡そっくりにサインできるようになったのよ。だから何の心配もいらないわ」
そう言う問題じゃない、アリスはそう叫びたかった。大方、夢子は頻繁な神綺の脱走の度に代筆をせざるを得ない状況にあるのだろう……完全な越権行為だが。気の毒な夢子姉さん、アリスはそう思っていた。
アリスがそんなこと考えている間に、神綺は起き上がっていて、押し倒された形になっているアリスを立ち上がらせた。
「さ、こんな所で立ち話もなんだし、中に入りましょ。アリスちゃん、ちゃんとお掃除お洗濯してる?」
「もちろんよ、私だって子供じゃないもん」
まるで小さい子に言い聞かせるように尋ねる神綺。そんな会話が懐かしく、アリスは顔を赤らめながら胸を張って答えた。完全に子供である。
「そうね、アリスちゃんも随分成長したみたいね……もう捨食は習得したの?」
アリスの背丈や胸なんかを見てそう言う神綺。
「まぁね。こっちに来て意外とすぐに習得できたわ。ユキやマイ達に魔法を教えてもらっていたからかしらね? そう言えば、二人は元気にしている?」
そのアリスの言葉に神綺は誇らしげだ。
「流石、私の『娘』ね。もちろん、ユキやマイも元気にしているわよ(……あら、家の中からユキとマイの魔力を感じるわね。どうしてかしら?)。あの子たちよりアリスちゃんの方がもう背丈は追い抜いちゃっているわね……あれから、アリスちゃんが魔界を出てから、もう一年、か」
「……うん」
霊夢たちによって魔界が襲撃――※『東方怪綺談』より――された後、アリスは自分の誕生日に魔界を出て幻想郷に赴き、色々あって住まいを構えることになったのだった。
おそらく読者諸兄の中には、神綺の内心の台詞の意味はなんぞ? これ程までにアリスを溺愛している神綺がなぜ魔界からアリスを出したのか? 捨食を身に付けたくせにこの一年でアリスが成長しすぎでは? など色々な疑問があるだろうが、それはまた別のお話なのである。
そうして、家に上がった二人。アリスの用意した会場に足を入れた神綺は部屋の様子を見るなり左手を口に当てて泣きそうな顔をした。
「ちょっ、えっ? ま、ママ。どうしたの!?(あっ、こんな準備して私しかいないからきっとママは――)」
「いや、ね。アリスちゃんにもお友達ができたんだなって思ったら……」
嬉しさ故だったようだ。なるほど、確かに一人分とは到底思えない料理を見れば自ずと察することが出来よう。それに、神綺はパーティの開始時間を知らないのだから。
「で、で、いつお友達は来るのかしら?」
初めて娘のお友達が家に遊びに来るのを嬉しそうに待ち構える母親のような神綺。実際にそうなのだが。だが、アリスの顔は晴れない。何せ、時間になっても誰一人としてまだ来ていないのだから。だが、隠し通せるわけが無いし、やはり言わねばなるまい、そう決心したアリスは口を開くのだった。
「あ、あのね、ママ。実は、私……」
「うん? どうしたの? アリスちゃ――」
(コンコン)
「――ッ!」
突然聞こえてきたノックの音。間違いない、今度こそ――。
「あら、お友達じゃない? ママが出てあげるわね♡」
「あ、ちょっと、待っ――」
玄関へスキップでもするかのようにして向かう神綺。そしてそれを制止するアリス。どっちが親なんだか。だが、アリスの制止は届かず、神綺はドアを開けた。
「(カチャッ)はぁ~い、こんに――」
笑顔のまま硬直する神綺。今日のドア運は良くないようだ。なんだ、ドア運って。
当の来客は見知らぬ人が出てきたため、驚いたようだったが、神綺の背後から小走りでアリスが来るのを目にした来客は口を開いた。
「霖之助さん!」
「やぁ、アリス。遅れてすまないね……ところで、この方は?」
ドアの前に立っていたのは、香霖堂の店主、森近霖之助だった。彼は自身の目の前で固まっている神綺に困り顔だった。
「あ、その人は――」
「母です♡ アリスちゃんがお世話になっておりますぅ(怒)」
アリスの言葉を遮る神綺。何だろう、口調は丁寧なのに妙に怖い。
「あぁ、お母さんでしたか」
「あんたに『お義母さん』と呼ばれる筋合いはない(笑)」
とんでもない誤解だ。
「え? ……あぁ、僕は森近霖之助と申します。この近くに店を構えていまして、アリスさんには昵懇にしてもらっています」
流石は常識に囚われてはいけない幻想郷。最初は戸惑ったものの、霖之助は普段通りに自己紹介をしていた。
だが、神綺はそうはいかなかった。
「……(キィー、バタンッ)」
無言でドアを閉める神綺。
「ちょっと、ママ!?」
余りの展開に驚くアリス。当の神綺はアリスの目線に会うように屈みこんで真剣すぎる眼差しでこう言うのだった。
「アリスちゃん、あなたに男の人は早すぎるわよ。ママ、そんな子に育てた覚えはないわ!」
ずっこけるアリス。ただの親バカだった。
「ちょ、霖之助さんはそんなんじゃないってば!」
「いーえ、ママに分からないことなんてないわ! パーティーに男の人を呼ぶってことはそうなんでしょ!」
誤解はするらしい。まるで娘の彼氏を始めて目の当たりにした父親のようだ。女だけど。
「折角来てくれたのに、何てことするのよ!」
「アリスちゃんの貞操を守るためならママは鬼にも悪魔にだってなるわ!」
魔界神の言う台詞か。神綺は自分の言葉で何を思ったのか、顔色を一転させた。
「はっ、まさか、アリスちゃん……あいつに体を許しちゃったの……?」
「な、な……」
顔を赤らめるアリス。だが、もちろん、それは神綺の言葉が的を得ていたからではない。むしろボークだ。アリスは都会派魔法使い、つまりは温室育ちの初心(うぶ)だった。故に神綺の言葉に顔を赤らめてしまっただけなのだ。
だが、神綺はそれを肯定の意に捉えてしまったようだ。
「そ、そんな……ア、アリスちゃんの純潔が……」
アリスとは対照的にガタガタと震える神綺は怯えたように真っ青になっていた。
「ま、ママのバカァ―!!」
耐え切れずに叫ぶアリス。神綺の動きが止まる。
「私はまだ処女よ! 魔界風に言うならヴァージンよ!!」
魔界風だったのか、ヴァージンって。その言葉にほっとしたかのように顔に血の気が戻る神綺。無言でアリスをその胸に抱きしめた。アリスもまだ怒ってはいるようだが、心なしか満更でも無さそうだ。
母娘喧嘩もこれで終わりを告げたようだ。めでたしめでたし。
お・わ・り♡
……いや、ちょっと待て。冷静に状況を整理してみよう。なぜ二人は喧嘩を始めたのか? もちろん、『霖之助』が来たからだ。では、当の霖之助はどこにいる? ……正解。彼は今、玄関の前に置き去りだ。そして、両者を隔てる物は木の扉一枚。そんな状況下、大声でのやり取りはどうなる? もちろん、筒抜けだった。ヴァージン云々も。
「あー、今日はお日柄がよろしくないみたいだから、後日また来るよ。取り敢えず、プレゼントはここに置いておくから、後で取っておいてくれ。それじゃ」
そう言って気まずそうに、そそくさと帰路に就く霖之助。その背後からは
「もう来んなぁぁぁぁぁぁ!! (←泣き声)」
「なに言ってんのよぉぉぉ! バカァァァ!!」
二人の叫びが響き渡ったという。しかし、なんで神綺が泣いているのだろう?
――午の四の刻(午後十二時三十分頃)
「ママのバカバカバカァー!!」
「いや、あれはアリスちゃんのことをを思って……」
パーティーの会場になっている居間のソファーでアリスは腰かけている神綺の胸元をポカポカ殴りながらバカ、バカと連呼していた。全く痛そうではない。完全に幼子のそれだった……だが、神綺の顔を見ると、精神的なダメージは大きいようだ。
「私、こっちに来てから……ずっと一人ぼっちで……ようやく、霊夢や魔理沙と会えて、少しずつでも親しい人を増やしていったのに、どうして邪魔するのよぉ……さっきの霖之助さんだって、いつもお人形の材料やお洋服の生地とかを融通してくれているのにぃ……それに、それに……どうして魔理沙たちは、来ないの、よぅ…………」
「ア、アリスちゃん……あら?」
泣き疲れたのか、はたまた昨夜の睡眠不足が祟ったのか、神綺の胸元にもたれる形でアリスは眠りこけてしまった。そんなアリスを神綺は優しく抱き上げてソファーの上に寝かせた。そして、アリスの部屋に行こうとすると、いつの間にか居間に来ていた上海と蓬莱が毛布を持って神綺に差し出していたので、礼を言ってそれを受け取り、それをアリスに掛けると、神綺自身もソファーに座り、アリスの頭を持ち上げて自身の膝の上に乗せると、愛しむようにして愛娘を見つめながら、優しくその金髪を撫でるのだった。
「私は、いつまでもアリスちゃんを子供だとばかり思っていたけれど、少しずつ、少しずつでも前に進もうと頑張っていたのね……。私の自慢の娘はしっかりと成長してくれていたみたい。嬉しいわ……ママ、悪い事しちゃったな……」
そう言うと同時に、上海や蓬莱は神綺の目の前に降りてきた。
その二体を見つめるうちに、神綺は気付いた。自律人形ではないが、人形師抜きで、ある程度の意志を持つかのように振る舞う、この二体の人形に対する違和感に……
「……そう、あなた達は、いつもアリスちゃんを見守ってくれていたのね」
「シャンハーイ……」
「ホラーイ……」
「ありがとね、ユキ、マイ……」
人形たちの言葉の裏に、何が込められていたのか、それは神綺にも分からない。だが、感じることはできたと思う。
一人の魔界神と二体の人形は、スヤスヤと眠るアリスを優しく見守っていた。さながら、眠り姫の周りにいる小人たちのように。
では、姫の眠りを覚ます王子様はいつ来るのだろうか――
――未の刻(午後一時頃)
アリスが眠り始めてから数十分が経った。神綺はまだアリスの髪を撫でている。すると――
「(ガチャッ)おーい、アリス。邪魔するぜー」
「なによ、来てやったのに顔くらい出しなさいよ。素直じゃないわねー」
ノックもせず、無遠慮に上がりこんで来たのは、魔理沙と霊夢だった。
そう言えば、さっき神綺がドアを閉めた際に鍵を閉めるのを忘れていたっけ。それでも勝手に上がりこんでくるのもどうかと思うが……。
「ん、う~ん……?」
二人の賑やかな声にアリスも目を覚ましたようだ。神綺もまだ寝ぼけているアリスを撫でながら、アリスの友人が来たことを喜んでいるようだ……それが例え、この間コテンパテンにやられた相手だとしても。
「アリス? 居ないのか……って、こりゃ珍しい顔だぜ」
「ほんとね。久しぶりじゃない、神綺」
居間に入ってきた二人は部屋に神綺が居ることに驚いているようだった。
「久しぶりね、二人とも。少しは大きくなったようね(←何が?)」
「余計なお世話よ」
普段通りのそっけなさで返す霊夢。
「あら、そう?……それにしても、魔理沙。あなた、口調が変わってない?」
「こっちが素だぜ。ま、こっちにも色々あるってこった」
神綺の問いにニカっと笑って答える魔理沙。その指は霊夢の脇腹を突っついていた。
「(チョンチョン)ん? 魔理沙、どうしたの……あぁ」
霊夢はニヤニヤする魔理沙の指差す方――神綺の膝の上――に目を動かすと、そこには寝ぼけ眼で起き上がろうとするアリスの姿があった。アリスは二人の姿を認めると、寝ぼけたように口を開いた。
「あれ……魔理沙と、霊夢? ……どうしてここに?」
そんなアリスの言葉に呆れたかのような霊夢。
「はぁ? あんたがパーティーするって言うから来てやったんでしょうが」
「アリス、今でもママの膝の上で寝ているんだな。気持ちよさそうだったぜ(プフッ)」
霊夢とは対照的に笑いをこらえながらそう言う魔理沙。
「え、ママ?」
アリスは魔理沙の言うことが分からなかったようで、先程まで頭を乗せていたところへ目を向けると、ソファーの色とは異なる赤い布地が見えた。おかしいわね、そう思って顔を上に向けると、そこには満面の笑みを浮かべた神綺の顔があるのだった。
「え、えぇ!? どうして私、ママに膝枕してもらってるの!?」
「ふふ、ひ・み・つ♡」
ここでアリスが泣き疲れて眠った、など言えば二人に笑われることが目に見えていたので神綺はそう答えるのだった。アリスは羞恥と驚きで神綺から距離を取ろうとしたのだが、ソファーの上でそのように動けばどうなるか? 下にひっくり返った。頭から勢いよく。その様子を見て魔理沙は爆笑し、霊夢と神綺は苦笑していた。
「ねぇ、アリスちゃん。お友達も来てくれたんだし、そろそろパーティーを始めましょうよ、ね♪」
ひっくり返って涙目で頭を擦るアリスの手を引っ張って立ち上がらせながら神綺はニコニコ顔でそう言った。
「え? あぁ、そうね。みんな揃ったみたいだし、そろそろ始めましょうか」
「あれ? 食器は五人分あるけど、誰か足りないんじゃない?」
「てっきり香霖も来るかと思ってたぜ」
言われてみると、この場にいるのはアリス、神綺、魔理沙、霊夢の四人だ。魔理沙たちがそう思うのも無理はない。そんな疑問にアリスは困ったように神綺の顔を見ながら言った。
「実はね、さっき霖之助さんが来てくれたんだけど……色々あって、帰っちゃったのよ」
隣で気まずそうにあらぬ方角を見る神綺。悪戯のバレた子供のようだ。
「あぁ、それでか。玄関の所にこれが落ちてたぜ。ホレ」
魔理沙はそう言いながら小脇に挟んでいた包みをアリスへ投げた。
「ブッ……ま、魔理沙! 何するのよ!!」
見事アリスの顔面にストライク。このまま痴話喧嘩が始まるかと思ったが、
「まあまあ、アリスちゃん。折角だから開けてみたら?」
魔理沙へ喰ってかかろうとするアリスを制して神綺は矛先をずらした。折角のパーティーだ。神綺のとりなしは正解だった。
アリスはソファーに腰掛けると、包みを開けた。
「あっ、この布生地……」
そこに入っていたのは洋服の服となる色とりどりの生地だった。その中には、かねてより欲しいと思っていたが、高くて手の出せなかったものもあった。霖之助、漢である。
「へぇー、良かったじゃない」
「香霖もいいとこあるじゃないか」
「良かったわね、アリスちゃん(後で香霖堂とやらに行って謝ろうかしら?)」
三人も興味津々とばかりに霖之助のプレゼントを覗き込む。惜しむらくは、この場に霖之助がいないことか。
「うれしいな。あとでお礼にクッキーでも焼いていこうかな」
プレゼントなのにお返しを考えるアリス。律儀だ。
「私も食べたいぜ」
「アリスちゃん、ママには?」
「あー、はいはい。分かりましたよ……って、そう言えばクッキーも作ってあったっけ(パチンッ)」
アリスが指を鳴らすと、保温のため、外気と料理を遮断していた魔法が解除され、部屋中に出来立て同然の美味しそうな香りが漂い始めた。
「へぇ~、やっぱりあんたって料理上手いのね。美味しそうじゃない」
「早く食いたいぜ」
「アリスちゃん、早く、早く♪」
一番子供っぽい神綺様。それはそれでいいと思う。
取り敢えず、四人はテーブルを囲むようにして各々席に着いた。
「おっ、そうだ、霊夢。私たちもプレゼント渡そうぜ」
「早く食べたいんだけど……ま、こういうのは最初の方がいいか」
そう言って霊夢は巫女服の袖野中に、魔理沙は脱いだとんがり帽子の中に手を入れてプレゼントとやらを取り出した。どこに入れてんだよ、と突っ込みたかったが、アリスとしては二人――特にジリ貧かつ他人に無関心な霊夢――からのプレゼントに対して、口には出さないものの内心喜んでいた。……あくまで口に出さないだけで、表情にはありありと出ていたが。それがアリスのチャームポイント。
「はい、これ」
「プレゼントだぜ」
「……はい?」
二人から渡されたものを見てアリスは疑問で返してしまった。だが、それも無理はない。
「魔理沙、この魔導書って私が貸してたやつじゃない。いつからあなたのものになったのよ……」
なんと、他人に貸した(?)ものが自分へのプレゼントと言う形で帰ってくるとは……筆者には想像もできない境地だ。
「いたたた……耳引っ張るなって。一生じゃなくてすぐ『返した』んだからいいじゃないか」
火に油を注ぐとはこのことか。一度魔理沙は辞書で『プレゼント』の意味を調べるべきだ。
「そう言う問題じゃないでしょ! そもそも前提が間違ってるじゃない!! それに、霊夢! 何なのよ、この『賽銭不要参拝券(一回限り)』って!!」
巫女さんならではのプレゼントだ。筆者は全力で要らないが。
「別にいいじゃない」
「よくないっ」
そう言って三人は口げんかを始めた。だが、三人の顔に浮かぶ笑みを見ていると、神綺はむしろ微笑ましく思い、愛する娘の現在(いま)を密かに喜んでいるのだった。
しばらくして
「はぁ、はぁ、霊夢。もういいんじゃないか?」
「そ、そうね。もうペコペコで限界よ」
不思議な会話をする二人に同じく疲れ果てたアリスが質問を挟む。
「な、なんの、こと、よ……?」
普段がインドア派だから相当疲れているようだ。
「これはサプライズだぜ」
「サプライズ?」
「そうよ。紫が教えてくれたんだけど、外の世界で流行っているみたい。だから、最初に適当なものを渡して反応を楽しんでから本命をドーンって渡すつもりだったのよ」
そういうものだっけ?
「そ、そうだったの?」
ホッとしたような顔をするアリス。確かに、あれがプレゼントでは面白くないだろう。
「これが私たちからのプレゼントだぜ」
魔理沙が立ち上がってスカートの内側のポケットから高級茶葉の缶と星を模(かたど)ったペンダントを出して差し出した。
「こっちの御茶缶は私からよ」
と霊夢。
後で聞いたところによると、霊夢は八雲紫に『何か(←筆者にも分からない)』を代償に外の世界から取り寄せてもらったらしい。もちろん、アリスの嗜好を考慮して紅茶の茶葉だ。しかも、かなり貴重な茶葉らしい。それにしても、それってお茶缶に入っているものなのだろうか? 筆者は緑茶はなので良く分からない。まぁ、霊夢らしくていいが。
「んで、このペンダントは私が作ったんだ。マジックアイテムとして使えるかもだぜ☆」
魔理沙からのプレゼントは銀板を星形に磨いて作られたペンダントだった。吸血鬼対策になるかも? 魔理沙らしく、所々にムラがあったが、アリスとしては手作りのプレゼントを心底喜んでいた。
「(うわぁ。顔、ニヤけてないわよね?……うん、宝物にしよっと)ふ、ふん。相変わらず不器用ね。ま、貰ってあげるわ」
ツンデレだ。全く、どっちが不器用なんだか。
だが、渡した魔理沙も嬉しそうに笑っている――慣れているのかもしれない――からまあこれでいいのだろう。
「私たちからは以上だぜ。神綺も何か持ってきてないのか?」
「そうよね。母親なんだから、私たちの想像もつかないものなんじゃないかしら?」
魔界神相手に呼び捨て、と不遜な魔理沙。無駄にハードルを上げる霊夢。この二重攻撃に神綺はむしろ「ふふふ……」とか言いながら満面の笑みを浮かべていた。余程プレゼントに自信が有るのだろう。
「私からアリスちゃんへのプレゼントは……これよ!」
「「お、おぉ~~!」」
驚く魔理沙と霊夢。無理もないどこから取り出したのか、神綺のプレゼントは彼女の身長の半分くらいの大きさだったのだから。
「さ、アリスちゃん、開けてみて♡」
「う、うん。(ビリッ)……えぇ!?」
包装を開いて仰天するアリス。魔理沙と霊夢は一瞬呆気にとられたものの、大爆笑していた。よほど想像もつかないものだったようだ。
さて、神綺からのプレゼント、それは『1/2サイズ 神綺人形(ぬいぐるみ・デフォルメ仕様・Made in Diablerie)』だった。欲しい。
「くっ、ぷふっ……よ、良かったじゃない」
目に涙を浮かべる霊夢。
「良かったな、アリス。今日から寝る時は一人じゃなくなってさ(←爆笑)」
腹を抱えながら笑い転げる魔理沙。むかついたので、さっき渡された魔導書をブン投げた。ボール。アリスはコントロールが良くなかった。
「痛ッ! ……い、いい度胸してるじゃない(怒)」
魔導書はしっかりと霊夢のおでこにヒットしていた。席を立った霊夢に寄り詰められてアリスはタジタジだ。魔理沙は笑いながらその様子を見ている。
「ははは……ほれ、アリス。ママにお礼でも言ったらどうなんだ?」
魔理沙に言われて見てみると、神綺はニコニコしながらアリスの感想を待っていた。
「あぅ……その、と、とっても嬉しいわ。ありがとう……ママ」
「はい、どういたしまして」
そう言って人目も憚らずにアリスを胸に抱きしめる神綺。アリスの顔はリンゴよりも真っ赤になっていたが、心なしか嬉しそうだ。
一方、魔理沙と霊夢は、神綺の親バカっぷりに苦笑していたが、親と触れ合えるアリスをうらやましくも思っていた。魔理沙はその思いを断ち切るかのように口火を切った。
「じゃ、私はアリスが甘えている間に一足早く御馳走をいただくぜ☆」
「だ、誰が甘えてなんて――」
「あんた以外に誰がいるのよ」
相変わらず仲のいい三人。さぁ、楽しい、楽しいお誕生日パーティーの始まりだ。
その後、アリスの作ったバースデーケーキに蝋燭を刺して息で吹き消す、という伝統行事を行ってから食えや、吞めやのどんちゃん騒ぎになった。え、ロウソクの本数? 【自主規制】本だとさ。
夜には、魔理沙が庭に出て星の魔法によるイルミネーションを見せてくれたが、打ち上げた弾幕のいくつきかがアリスの家に落下したため、アリスと口喧嘩になるといった、いつも通りのトラブルが多々あったようだが、それでも楽しい一時がヒロシゲ顔負けに流れ去っていった。
アリスはその間、ずっと表情のどこかで笑いを浮かべていたという。
――亥の二の刻(午後九時三十分頃)
どんちゃん騒ぎを始めて早くも四刻(約八時間)以上の時間が過ぎた。楽しい時間はあっという間に過ぎ、心地よい疲れもドッとやってくるものだ。
案の定、四人は遊び疲れて思い思いにだらけていた。料理もあらかた片付いていた。そんな時――
(コンコン)
本日何回目かのノックの音がした。こんな時間に一体誰だろう、そう思いながらアリスはドアを開けに玄関へ向かうのだった。
「はぁ~い(ガチャッ)あれ、夢子姉さん?」
「久しぶりね、アリス。元気そうでよかったわ。お誕生日おめでとう。はい、プレゼントよ」
玄関にいたのは、赤いメイド服の女性、夢子だった。出てきた妹の成長ぶりを喜ぶかのように笑顔で頭を撫でながら小さな包みを手に握らせる夢子。
彼女は、神綺の傍に仕える最強クラスの魔界人であり、神綺の娘、そしてアリスの姉に当たる人物だ。
「ありがとう。でも珍しいね。夢子姉さんがこっちに来るなんて」
プレゼントの包みを受け取ったアリスの笑顔に満足していた夢子の表情は一転して複雑なものなった。
「ちょっとね、サボり癖のついた魔界神サマを連れ戻しに来ただけよ。メイドの仕事と魔界神の仕事の掛け持ちは地獄以外の何物でもないわ……」
確かに、紅い屋敷のメイドとは違って時間操作のできない夢子にとって、それは激務を越えて過労死しかねないものなのだろう。
「夢子姉さんも大変ね……上がって、ママはこっちよ」
その後、酔い潰れていた魔界神は従者によって引きずられるかのようにして魔界へと帰っていったのだった。
部屋に残された三人。
「んじゃ、私たちも帰るか?」
「そうね、今日は楽しかったわ。また今度ね。おやすみ」
そう言うと二人もそれぞれの家に帰っていった。こういう場ではサッパリとした別れ方の方が後味がいいものだ、と場馴れしている二人には分かっているかもしれない。
一人居間に残されたアリス。だが、昼前のような寂寥感は無く、むしろ先程までの興奮に酔っていた。そして、湯浴みを済ませると、寝間着に着替えて神綺人形を手に抱きながらベッドの上に腰掛けた。
「楽しかったけど、眠くなっちゃった……そう言えば、夢子姉さんは何をくれたんだろう?」
先程夢子から渡された包みを手に取るアリス。大きさは本と同じくらいだったが、どうも厚みが足りない気がする。
「(ペリッ)これって――」
封を切って中身を取り出したアリス。そこ入っていたのは六通の手紙だった。もちろん、魔界にいる姉たち――ちゃっかり神綺のも混ざっていた(←なぜ来たし)――からだった。
久々に読んで感じる肉親の言葉、その内にあるアリスへの愛……読んでいる内にアリスの視界が歪む。
「みんな……グスッ、今度、里帰りでもしよっかな」
アリスはその手紙を机の引き出しへ大切に仕舞い、神綺人形を抱きながら眠りに就くのだった。
おやすみなさい……
アドバイスありがとうございます。
正直言って、このような場に自分の文章を載せるのはまだ二回目なので、どのような文体が自分と読者の方々に適しているか模索している最中です(そのためには誰かに読んでいただかないとわからない点も多々あるため投稿を続けさせていただきます)。
前作は一人称視線から、そして少し硬めの文体にしていたため、その逆に今作は軽めの文体を目指したのですが、ご指摘の通りに軽すぎて空回りしていますね。
あと何度失敗するかもしれませんが、今回のように批評をつけてやってください。自分でも納得のいく物語が作れるまでss作りを止めるつもりはないので、それまでは見守ってくださると幸いです。
なお、同時に投降した連載物ですが、自分としては必ず成し遂げたい企画なので、点数等を記録した後、本日の14:00に一度削除して、後日文章作りに慣れてから改変版と第二話以降を投稿させていただきます。
この作品は負の遺産として残しますので、こうしたらいい、といった批評をいただき今後の糧にさせていただく所存です。
このままの感じでお願いします
やっぱこういう話とアリスが好き
それに小説50冊なんて読まなくていいですよ数冊ならともかく
寧ろ小説なんて五十冊も読んだら確実にあほになっちゃいますよ 等価交換的な感じに持っていかれちゃうというか
そんなことするよりためになりそうな本読んでた方が余程人生にもネタにも肥やしになると思いますしお寿司
小説なんていわばスパムフードみたいなもんですしいくら毒も栄養も両方云々と言っても少量だから毒は薬なワケで多過ぎたらやっぱり毒なのよねん
地の文で筆者の存在を出し過ぎなのは良くないかと感じましたがストーリーの全体的な出来自体は悪くはないと思います。
ただ一部に構成が変かなと思うような部分があったのでそこも改善できればもっと良くなるはずです。
それと評論家気取りの批判コメントをされてる方がいますが大体そういうのは作品を書く努力も知らないような輩なのであまりまともに取り合う必要はないかと。
7さん、ストーリー自体は評価頂けているので前回のコメ返しでも記した通り、文体の模索を続けていきます。
9さん、このような作品に高評価をつけていただき感謝します。自分もアリスが好きなので次に彼女を出すときはもっと出来の良いものを投稿したいです。
また、この文体を好意的に受け止めていただきありがたく思います。ですが、流石に自分でもやりすぎた感はあるので、このように軽い文体は時折作品内にちょこちょこ混ぜ込む形で出そうと思います。
『凄く良かったです/やっぱこういう話とアリスが好き』。
このコメントを見て気力が回復しました。次回作も評価頂けるよう頑張ります。
10さん、ごもっともな意見ありがとうございます。
次回からは地の文には気をつけようと思います。他の点に対する好意的なお言葉には頭が下がる思いです。
これは我儘になりますが、後学の為にどのあたりに違和感を感じたか(次回作以降で結構ですので)指摘していただけると思います。
今回新たにコメントをいただいたお二方のように、自分の作品を少しでも楽しんでくれた人がいる、ということは次回作を作る上での大きな励みとなります。
おそらく、次の投稿は一月後位ですが是非覗いてやってください。
コメ返しは投稿日から一カ月分は確実に返しますので是非コメントしてやってください。