まえがき
この作品にはうp主の自己解釈が多分に含まれています。
「それでも全然いいぜ!」という方はお進みください。
「ありがとうございました!」
これでお客さんは全員帰ったわね。常連さんもこれから来るとは思えないし、来たとしても売り切れた物が何品かあるから今日はこれで店じまいかな~
でも始めたころよりもお客さんは増えたけどヤツメウナギは毎回売れ残っちゃうな~
「まあ私がおつまみとして食べるにはちょうどいい量だからいいか」
今日はいつかの異変のようにきれいな満月だ。たまには、月を見ながら一人でお酒を飲むのもいいだろう。
「よし!それじゃあさっさと片付けて歌おう!」
私が幻想郷に来てもう何年もたった。
「今日は何を歌おうかな…」
――――――――――――――――――――――――――――――――
私には家族がいない。ただ、家族同然に暮らしていた人間が一人いた。
私と、そのおじいさんの出会いはほんの些細な出来事だった。
私がまだ体もろくに動かせなかった頃、巣の周りを何とか見てみたいと思い、身を乗り出した。
そうしたら風にあおられて、次の瞬間浮遊感が体を包み、気づいたらおじいさんの家にいた。
後で知ったことだが、その時私は巣から落ちてしまったらしい。
そして両親や兄妹はナニカに食べられてしまったらしく、巣の中はひどいありさまだったそうだ。
偶然、おじいさんが草むらに落ちていた私を見つけてくれなかったら、私も死んでいただろう。
そして、そのおじいさんに私は育てられた。
最初は、怖かった。 人間なんて初めて見たし、周りの環境も、聞こえる音も、食べるものさえも変わってしまったから。
けど、そのおじいさんの笑顔と変な歌をが私を安心させてくれ、だんだん人間も怖くなくなっていった。
そして、私が一人でも生きていけるぐらい大きくなると、おじいさんは私を拾った森に連れて行かれて、そこで暮らすように言ってくれた。
けど、私は命の恩人であるおじいさんが好きになり、おじいさんは止めたが、私は家に帰ってきた。
おじいさんの方も、情が移ったのか私が家で暮らすようになっても、無理に追い出したりはせず、たまにご飯を分けてくれるなど
私にやさしくしてくれた。それでも事あるごとに私を自然に返そうとしてたけど。
いつしか私とおじいさんはよく一緒に行動するようになり、種まきの手伝いをしてみたり、二人で市に出かけては、お酒を飲んで酔いつぶれてみたり。
なかでも、おじいさんの歌は色んな歌があって聞いてて楽しかった。いつも種まきとか市に出かける時とかに歌っていて私も真似して歌うようになったんだ。
ただ市に出かけた時に周りの人からも「変な歌だ」って言われてるのを見て、笑っちゃったっけ。
そういえば、何故私の両親が助けてくれなかったのか、私の両親がどうなっているのかをおじいさんが教えてくれたのもこの時だった。
その話を聞いて、きっと私は死ぬまでこの家で過ごせるんだろうって思った。
それが私の日常だった。なんてことのない日常かもしれないけど楽しいかった。
けど私とおじいさんが仲良くしていたのが、おばあさんには気に喰わなかったんだろう。
雨の時や、おじいさんが私を連れていけないところに行く時、私とおばあさんは一緒に家にいた。
そして、そうなると私は必ずおばあさんに攻撃された。
最初はただ、文句を言ってきたり、物を投げてくるぐらいだった。 私もあまり気にせず、物が飛んできてもそれを躱して逃げだすぐらいだった。
けど、時がたつにつれおばあさんの攻撃は激しくなり、私が寝ているときに物を覆いかぶせて窒息させようとしてきたり、おじいさんがいる時でも私を殴ろうとしてきた。
酷い時には、私を捕まえて囲炉裏で焼こうとしてきた。まあ、その時はおじいさんが気づいて、私を助けて、おばあさんに怒ってくれたんだけど。
今思うと、おじいさんはこのおばあさんから庇おうとして、私を自然に返そうとしたのかもしれない。
だけど、それに私は気づくことがなくその日を迎えた。
その日はおじいさんは、山向こうの親戚に近況を聞きに行く、と言って出かけていった。私はおばあさんと二人きりになり早く帰ってこないかな、と思い
歌っていた。しかしあいにく台風が来て、私は外に出ることがかなわなくなってしまった。
私が外に行けない時、おじいさんがいる時は、私はおじいさんからご飯を分けてもらっていた。けど、おばあさんからご飯がもらえるはずもなく、
私は日に日に弱っていった。そして台風が過ぎ、久しぶりの晴れた日の事だ。おばあさんは雨で傷ついた障子戸を、直すための糊を作ってから、畑の様子を見に行った。
私は、ご飯をもらえず衰弱していたから、その糊を食べてしまった。そして、それがおばあさんの狙いだったんだろう。私が糊を食べ始めてすぐにおばあさんが来て、
怒りに満ちた貌にどこかくらい喜びをにじませて、鋏を取り出した。
―――この薄汚い泥棒雀が!悪さをしたのはこの舌だね!―――
そういって私は舌を切られてしまった。そして、私はこのおばあさんから逃げ出した。
後ろから追ってくる気配はなかったけど必死に逃げて、私の故郷といえる森についた。けど私の体力はそこで尽きてしまい、草むらに落ちた。
ああ、私は死ぬんだな… そう思って目を閉じようとした時、私は見た。見た目は普通の人間だけど、明らかに何かが違うモノを。
―――ずいぶん長く生きている雀ね… ねぇ、あなた。何か望みはある?―――
幻聴かもしれない、けど私はそんな声を聞いた。私は答えた。
「もう一度…おじいさんと一緒に、歌いたい」
声は出なかったかもしれないが、そう私は願った。
そして私は意識を手放した…
―――それがあなたの願いなのね。でも、その強い思いがあれば、あなたの歌が届くかもしれないわ…。
次に目が覚めた時、姿形が変わっているかもしれないけどあなたの願いが叶う時が来るかもしれないわね。―――
――――――――――――――――――――――――――――――――
「―――すちー…みすち―?…みすちー起きて、朝だよ?」
「うーん…?」
「えーい起きろー!リグルキック!」
「ぎゃふん!」
私はリグルに起こされた。というかこれはひどくない?
「ちょっと!何するの!?」
「あっ起きた。おはよう!」
「おはようじゃないわよ!むちゃくちゃ痛いのよそれ!」
あーもう、最悪な目覚めだ。朝起きたら一つ残機が減るってなかなか無いわよ。
とりあえず、リグルに文句を言いながら私は体に積もっていた竹の葉を払いながら立ち上がった…あれ?
「私の布団は? というかここどこら辺?」
「みすちーの布団はそこの屋台の中にあると思うよ。
場所は多分だけど永遠亭の近くだね。それよりもみすちーの周りに酒瓶が転がってるけどもしかしてこれ全部飲んだの?」
「あー…だんだん思い出してきたわ」
たしか屋台を片づけた後月を見ながらお酒を飲んでたはず。そうして歌を歌っていたらなんか兎耳が見えて…。
そっから記憶がないな~。なんか紅い月を見て「夜中に騒ぐな!」って声が聞こえた気がするけど…
「まあいいわ。片づけるの手伝ってくれる?」
「いいけど、何かおごってくれる?」
「なんでも一串無料券でどう?」
「乗った!」
やっぱり誰かを動かすのにはこの手が一番よね~。それじゃあさっさと片付けちゃいますかね。
「そういえばさぁみすちー、『舌切り雀』ってお話知ってる?」
リグルが酒瓶をまとめながら話をしてきた。片づける時は喋らない方がいいと思うんだけどまあいいか。
「えーと…寺子屋の授業であったあれ?おじいさんが雀のお宿に行って金銀財宝をもらって、
意地悪ばあさんが魑魅魍魎の入った箱を持ち帰らせたっていう…」
「それそれ。でも本当のお話はちょっと違うらしいよ。
本としてまとめられているのはかんぜんちょーあく?の物語にするために改編した物だってけーねが言ってた!」
ふーん…。正直あの話は聞いてて嫌だったんだけど、本当のお話ってのも気になるわね。
「なんで知ってるのとかはまあいいとして、本当のお話って何かしら」
「おっ、やっぱり興味ある?まあ途中まではほとんど同じなんだけど…
雀が舌を切られ飛んで行ってしまった後、おじいさんは雀を探しに出かけようとしました。
しかし、おばあさんはあの手この手でおじいさんを引き留め、おじいさんとずっと一緒にいようとしました。
ある晩の事、おじいさんはおばあさんが寝静まったのを見計らって雀を探すために夜中にこっそりと家を抜け出しました。
おばあさんは朝起きるとおじいさんの姿が見えないことに気づきますが、おじいさんの寝床にあった「すぐに戻る」という書き置きを見て、
おじいさんはきっと戻ってくる、いつの日か帰ってきてその時はもう二度と放さないようにしよう、と考えおじいさんの帰りを待ち続けました。
どうやらほかの村人によると、おばあさんの体が悪くなり心の音が止まるその時までおじいさんは帰ってくると信じ続け、息を引き取ったそうです。
一方おじいさんの方は、雀に初めて出会ったところまで行きましたが、雀の羽根だけがありその羽根には血がついているのを見て、
雀がもうこの世にはいないことを悟りました。せめて羽根ぐらいはほかの雀がいるところにまで届けてやろうと思い、
おじいさんは、雀が暮らすという竹藪に向かいました。
しかし、おじいさんは竹藪に着いたところで蛇に噛まれてしまいます。それでもおじいさんは竹藪の奥に向かい歩いて行きました。
そして、おじいさんは竹藪から出てくることはありませんでした。
しかしそれからというもの、竹藪の奥深くに迷い込んだ者はどこか遠くの方から雀の声と一緒に変な歌が聞こえてくるようになったそうです。
どっとはらい
ってお話らしいよ。おばあさんは魑魅魍魎に殺されたんではないし、おじいさんはお宿で楽しい思いをしたわけでもない。
唯一の救いが竹藪でおじいさんはあの雀と同じ歌が聞けたんだろうってくらいだしね~。
こんなお話らしいけどどうだった?みすちー…って泣いてる!?どうしたの!?」
「いや、なんでもない…。お酒の残りが目にかかっただけだから…」
そっか。おじいさんは私じゃないけど、あの後一緒に歌えたんだね…
「いやいや、それってかなり痛いでしょ!水持ってきたからはやくこれで洗わなきゃ!」
「ありがと、リグル」
私はリグルが持ってきた水で顔を洗った。若干すっきりしたかも。
「はぁ~びっくりした。みすちー本当に大丈夫?」
「うん。まあまだ痛いけどそのうち治るでしょう。片づけも済んだしそろそろ行こう?」
「よーし!先行くよ!」
リグルはうなずいて先に飛んでいく…ってあいつせっかちね。私も一旦屋台の周りを見回して大丈夫なのを見てリグルの後を追う。
「…話してくれてありがと、リグル」
「ん~なんか言ったー!みすちー?」
「なんでもない!さあて今日も歌うわよ!」
遠く離れていても、おじいさんと歌った歌はここにあるんだから。
この作品にはうp主の自己解釈が多分に含まれています。
「それでも全然いいぜ!」という方はお進みください。
「ありがとうございました!」
これでお客さんは全員帰ったわね。常連さんもこれから来るとは思えないし、来たとしても売り切れた物が何品かあるから今日はこれで店じまいかな~
でも始めたころよりもお客さんは増えたけどヤツメウナギは毎回売れ残っちゃうな~
「まあ私がおつまみとして食べるにはちょうどいい量だからいいか」
今日はいつかの異変のようにきれいな満月だ。たまには、月を見ながら一人でお酒を飲むのもいいだろう。
「よし!それじゃあさっさと片付けて歌おう!」
私が幻想郷に来てもう何年もたった。
「今日は何を歌おうかな…」
――――――――――――――――――――――――――――――――
私には家族がいない。ただ、家族同然に暮らしていた人間が一人いた。
私と、そのおじいさんの出会いはほんの些細な出来事だった。
私がまだ体もろくに動かせなかった頃、巣の周りを何とか見てみたいと思い、身を乗り出した。
そうしたら風にあおられて、次の瞬間浮遊感が体を包み、気づいたらおじいさんの家にいた。
後で知ったことだが、その時私は巣から落ちてしまったらしい。
そして両親や兄妹はナニカに食べられてしまったらしく、巣の中はひどいありさまだったそうだ。
偶然、おじいさんが草むらに落ちていた私を見つけてくれなかったら、私も死んでいただろう。
そして、そのおじいさんに私は育てられた。
最初は、怖かった。 人間なんて初めて見たし、周りの環境も、聞こえる音も、食べるものさえも変わってしまったから。
けど、そのおじいさんの笑顔と変な歌をが私を安心させてくれ、だんだん人間も怖くなくなっていった。
そして、私が一人でも生きていけるぐらい大きくなると、おじいさんは私を拾った森に連れて行かれて、そこで暮らすように言ってくれた。
けど、私は命の恩人であるおじいさんが好きになり、おじいさんは止めたが、私は家に帰ってきた。
おじいさんの方も、情が移ったのか私が家で暮らすようになっても、無理に追い出したりはせず、たまにご飯を分けてくれるなど
私にやさしくしてくれた。それでも事あるごとに私を自然に返そうとしてたけど。
いつしか私とおじいさんはよく一緒に行動するようになり、種まきの手伝いをしてみたり、二人で市に出かけては、お酒を飲んで酔いつぶれてみたり。
なかでも、おじいさんの歌は色んな歌があって聞いてて楽しかった。いつも種まきとか市に出かける時とかに歌っていて私も真似して歌うようになったんだ。
ただ市に出かけた時に周りの人からも「変な歌だ」って言われてるのを見て、笑っちゃったっけ。
そういえば、何故私の両親が助けてくれなかったのか、私の両親がどうなっているのかをおじいさんが教えてくれたのもこの時だった。
その話を聞いて、きっと私は死ぬまでこの家で過ごせるんだろうって思った。
それが私の日常だった。なんてことのない日常かもしれないけど楽しいかった。
けど私とおじいさんが仲良くしていたのが、おばあさんには気に喰わなかったんだろう。
雨の時や、おじいさんが私を連れていけないところに行く時、私とおばあさんは一緒に家にいた。
そして、そうなると私は必ずおばあさんに攻撃された。
最初はただ、文句を言ってきたり、物を投げてくるぐらいだった。 私もあまり気にせず、物が飛んできてもそれを躱して逃げだすぐらいだった。
けど、時がたつにつれおばあさんの攻撃は激しくなり、私が寝ているときに物を覆いかぶせて窒息させようとしてきたり、おじいさんがいる時でも私を殴ろうとしてきた。
酷い時には、私を捕まえて囲炉裏で焼こうとしてきた。まあ、その時はおじいさんが気づいて、私を助けて、おばあさんに怒ってくれたんだけど。
今思うと、おじいさんはこのおばあさんから庇おうとして、私を自然に返そうとしたのかもしれない。
だけど、それに私は気づくことがなくその日を迎えた。
その日はおじいさんは、山向こうの親戚に近況を聞きに行く、と言って出かけていった。私はおばあさんと二人きりになり早く帰ってこないかな、と思い
歌っていた。しかしあいにく台風が来て、私は外に出ることがかなわなくなってしまった。
私が外に行けない時、おじいさんがいる時は、私はおじいさんからご飯を分けてもらっていた。けど、おばあさんからご飯がもらえるはずもなく、
私は日に日に弱っていった。そして台風が過ぎ、久しぶりの晴れた日の事だ。おばあさんは雨で傷ついた障子戸を、直すための糊を作ってから、畑の様子を見に行った。
私は、ご飯をもらえず衰弱していたから、その糊を食べてしまった。そして、それがおばあさんの狙いだったんだろう。私が糊を食べ始めてすぐにおばあさんが来て、
怒りに満ちた貌にどこかくらい喜びをにじませて、鋏を取り出した。
―――この薄汚い泥棒雀が!悪さをしたのはこの舌だね!―――
そういって私は舌を切られてしまった。そして、私はこのおばあさんから逃げ出した。
後ろから追ってくる気配はなかったけど必死に逃げて、私の故郷といえる森についた。けど私の体力はそこで尽きてしまい、草むらに落ちた。
ああ、私は死ぬんだな… そう思って目を閉じようとした時、私は見た。見た目は普通の人間だけど、明らかに何かが違うモノを。
―――ずいぶん長く生きている雀ね… ねぇ、あなた。何か望みはある?―――
幻聴かもしれない、けど私はそんな声を聞いた。私は答えた。
「もう一度…おじいさんと一緒に、歌いたい」
声は出なかったかもしれないが、そう私は願った。
そして私は意識を手放した…
―――それがあなたの願いなのね。でも、その強い思いがあれば、あなたの歌が届くかもしれないわ…。
次に目が覚めた時、姿形が変わっているかもしれないけどあなたの願いが叶う時が来るかもしれないわね。―――
――――――――――――――――――――――――――――――――
「―――すちー…みすち―?…みすちー起きて、朝だよ?」
「うーん…?」
「えーい起きろー!リグルキック!」
「ぎゃふん!」
私はリグルに起こされた。というかこれはひどくない?
「ちょっと!何するの!?」
「あっ起きた。おはよう!」
「おはようじゃないわよ!むちゃくちゃ痛いのよそれ!」
あーもう、最悪な目覚めだ。朝起きたら一つ残機が減るってなかなか無いわよ。
とりあえず、リグルに文句を言いながら私は体に積もっていた竹の葉を払いながら立ち上がった…あれ?
「私の布団は? というかここどこら辺?」
「みすちーの布団はそこの屋台の中にあると思うよ。
場所は多分だけど永遠亭の近くだね。それよりもみすちーの周りに酒瓶が転がってるけどもしかしてこれ全部飲んだの?」
「あー…だんだん思い出してきたわ」
たしか屋台を片づけた後月を見ながらお酒を飲んでたはず。そうして歌を歌っていたらなんか兎耳が見えて…。
そっから記憶がないな~。なんか紅い月を見て「夜中に騒ぐな!」って声が聞こえた気がするけど…
「まあいいわ。片づけるの手伝ってくれる?」
「いいけど、何かおごってくれる?」
「なんでも一串無料券でどう?」
「乗った!」
やっぱり誰かを動かすのにはこの手が一番よね~。それじゃあさっさと片付けちゃいますかね。
「そういえばさぁみすちー、『舌切り雀』ってお話知ってる?」
リグルが酒瓶をまとめながら話をしてきた。片づける時は喋らない方がいいと思うんだけどまあいいか。
「えーと…寺子屋の授業であったあれ?おじいさんが雀のお宿に行って金銀財宝をもらって、
意地悪ばあさんが魑魅魍魎の入った箱を持ち帰らせたっていう…」
「それそれ。でも本当のお話はちょっと違うらしいよ。
本としてまとめられているのはかんぜんちょーあく?の物語にするために改編した物だってけーねが言ってた!」
ふーん…。正直あの話は聞いてて嫌だったんだけど、本当のお話ってのも気になるわね。
「なんで知ってるのとかはまあいいとして、本当のお話って何かしら」
「おっ、やっぱり興味ある?まあ途中まではほとんど同じなんだけど…
雀が舌を切られ飛んで行ってしまった後、おじいさんは雀を探しに出かけようとしました。
しかし、おばあさんはあの手この手でおじいさんを引き留め、おじいさんとずっと一緒にいようとしました。
ある晩の事、おじいさんはおばあさんが寝静まったのを見計らって雀を探すために夜中にこっそりと家を抜け出しました。
おばあさんは朝起きるとおじいさんの姿が見えないことに気づきますが、おじいさんの寝床にあった「すぐに戻る」という書き置きを見て、
おじいさんはきっと戻ってくる、いつの日か帰ってきてその時はもう二度と放さないようにしよう、と考えおじいさんの帰りを待ち続けました。
どうやらほかの村人によると、おばあさんの体が悪くなり心の音が止まるその時までおじいさんは帰ってくると信じ続け、息を引き取ったそうです。
一方おじいさんの方は、雀に初めて出会ったところまで行きましたが、雀の羽根だけがありその羽根には血がついているのを見て、
雀がもうこの世にはいないことを悟りました。せめて羽根ぐらいはほかの雀がいるところにまで届けてやろうと思い、
おじいさんは、雀が暮らすという竹藪に向かいました。
しかし、おじいさんは竹藪に着いたところで蛇に噛まれてしまいます。それでもおじいさんは竹藪の奥に向かい歩いて行きました。
そして、おじいさんは竹藪から出てくることはありませんでした。
しかしそれからというもの、竹藪の奥深くに迷い込んだ者はどこか遠くの方から雀の声と一緒に変な歌が聞こえてくるようになったそうです。
どっとはらい
ってお話らしいよ。おばあさんは魑魅魍魎に殺されたんではないし、おじいさんはお宿で楽しい思いをしたわけでもない。
唯一の救いが竹藪でおじいさんはあの雀と同じ歌が聞けたんだろうってくらいだしね~。
こんなお話らしいけどどうだった?みすちー…って泣いてる!?どうしたの!?」
「いや、なんでもない…。お酒の残りが目にかかっただけだから…」
そっか。おじいさんは私じゃないけど、あの後一緒に歌えたんだね…
「いやいや、それってかなり痛いでしょ!水持ってきたからはやくこれで洗わなきゃ!」
「ありがと、リグル」
私はリグルが持ってきた水で顔を洗った。若干すっきりしたかも。
「はぁ~びっくりした。みすちー本当に大丈夫?」
「うん。まあまだ痛いけどそのうち治るでしょう。片づけも済んだしそろそろ行こう?」
「よーし!先行くよ!」
リグルはうなずいて先に飛んでいく…ってあいつせっかちね。私も一旦屋台の周りを見回して大丈夫なのを見てリグルの後を追う。
「…話してくれてありがと、リグル」
「ん~なんか言ったー!みすちー?」
「なんでもない!さあて今日も歌うわよ!」
遠く離れていても、おじいさんと歌った歌はここにあるんだから。
最後の一文がとても綺麗で、印象的でした。
ミスティアの回想シーンがちょっとのんびりした感じだったので、もうちょい緩急つければ読みやすかったと思います。
次はもう少しじっくりしたものを期待しています。