東方真剣勝負
ルール
1、 博麗神社の神命によって対戦カードが選ばれる
2、 勝利者には名誉という名の尊厳が与えられる
3、 対戦形式も神命で提示されるが、細かいルールは対戦者同士が話し合って同意のもと、決定される
プロローグ
始まりは唯の暇つぶしだったかもしれない。だがそれが意味を持った、あるいは、それに意味が「持たされた」のは偶然ではない。
幻想郷は、退屈していた。
外界から来るもの拒まず、内界から去る者がいなかったから。
目新しいものが当たり前になっていった。画期的なシステムが飽きられるようになった。中途半端な異変なんかじゃ、幻想郷は満たされなくなっていたのだ。
そこでその暇つぶしは意味を持つことになった。
文字通り、次々と湧いてくる「暇」という害虫を「つぶす」、という。
実は意味などいらなかったのかもしれないが、そういうことになってしまった。
と、いうわけで。
がやがやと博麗神社の境内に人影が集まっていた。
影は人の形だったが実はその内の半数以上は人ではない。人ならざる者。妖怪?仙人?神?とにかく、そんな感じ。
その内の隅っこのほうに、一風変わった人の子がいた。
「あれー?あっきゅん、ここいらにいるって昨日は言ってたのにー……」
人里で一風変わった本屋として名を有し始めている、鈴奈庵。
その店主の娘、本居小鈴。
「あっきゅーん……。あっきゅん、どこー……?」
まあうん、こんな感じの女の子。
……。
ほんとに、まったくもう。
「あ!あっきゅん!やーっと見つけたよー。ここ、普段からじゃ考えられないくらい人が沢山いてさー、迷子になりかけてたんだ……いって!なにすんのよ!」
あっきゅんはやめろって普段から言ってんでしょうが、っまったく。
「えー!かわいいじゃん!あっきゅん!あっきゅん!あっきゅんきゅん!」
勝手にコールを自主制作するな。てかうるさいから黙って。
「引きこもあっきゅん!病弱あっきゅん!耳年増っきゅん!」
はーい後半ただの悪口―。しかも微妙に語呂悪―い。
「弱いぞあっきゅん!頑張れあっきゅん!戦えあっきゅん!」
私が体弱いの分かってんなら戦わせんな!
ああもう。ダメだ。本題に戻らなくちゃ。
おほん。
ここ最近、博麗神社では不定期にとあるイベントが行われる。ちょっとしたお祭りであり、宴会の一次会であり、そして神聖な神事である。
不定期とはいえ幻想郷の要人へ事前連絡はしてあるらしく、それでも幻想郷の主要人物がこうまで都合よく一堂に会する機会などめったにない。
そうね、人物の例を挙げるならば……。
小鈴、出番よ。
「はいはーい!私、この為に来たようなもんだしねー!」
いつの間に自主制作コールを終えたのか、元気に返事が返ってくる。
ホント、こういうところはしっかりしてるのにねぇ。
「大きく分けて人族と妖怪に分けられるんだけど……。まずは人族から!私たちが属する種族ね。まあ紹介程度に4人ほど」
ちょっと小鈴、あんた自作のイラスト持ってきたの?
「そうだよー!絵があったほうが解りやすいと思ってね!あ、そんな有名な人、もう知っとるわ!っていう物知りな人は聞き流してていいからねー!」
「まず欠かせないのが、由緒正しいこの博麗神社の正統な巫女さんであり、妖怪退治のプロフェッショナル、博麗霊夢さん!どんな異変でもすぐスパッと解決しちゃう、すっごくカッコいい人なんだから!
そして霊夢さんと同じくらい欠かせないのが、霧雨魔理沙さん!一見すると男勝りでガサツな感じなんだけど、困っている人を絶対に見逃さない、実はすっごく優しいひとなの!
3人目は人族の中でもちょっと異質で。湖の畔の紅い館、通称紅魔館で吸血鬼のメイドさんをしてる、十六夜咲夜さん!銀髪がとっても綺麗で賢くて垢ぬけてて……こういうの一言でなんて言えばいいんだろう?」
瀟洒、でいいんじゃない?
「あ、それいただき。とっても瀟洒なの!とにかくすっごく頼れるお姉さん!
あともう一人、東風谷早苗さん!妖怪の山で守屋神社っていう神社の巫女さん兼神様をしてる、これまたすっごい人なんだよ!同じ巫女さんってことで何かと霊夢さんと比べられることが多いんだけどね、早苗さんには奇跡の力と二人の神様がついてるの!すごいでしょ!」
小鈴、あんた「すごい」しか言ってなくてさっきの説明から何も詳しい情報が得られそうにないんだけど。視聴者さん、顔に「困惑」って文字が張り付いてるわよ。絵からも髪の色くらいしかわかんないし。
「えっ?そうだった?」
まったく、この子は。
っと。ごめんね。小鈴の雑な分かりにくい説明がまだ途中なんだけど、もうそろそろ始まるみたい。太鼓の音が聞こえてきたわ。
「えー!どうしたらいいのよ!」
しょうがない。時間が無いなら、今回対戦する二人だけでも順に解説を入れていくしかないでしょ。
大体、時間が足りないのはあんたが迷子になりかけてて、というかもうなってて、それを私が探すのに手間取ったからじゃない。そんな……。あっ、ちょっと待って。
もしもし、文さん?なんですって?まだ趣旨を説明できてない?え、あれだけじゃ説明不足だったっていうんですか?私の完璧な説明が?うそでしょ?……ちっ、これだから私はこんなことしたくなかったのに……。
「あー!あっきゅん!それ、あれ、えっとなんていうんだっけ、まいく?忘れちゃった!とにかくそれ貸して!」
あっ!小鈴!何してるのよ!えっさっきのも放送してた?それマジ?
「えー!視聴者のみなさーん!今回から私たちは完全独占潜入取材!シカケもヤラセもどんとこい!の精神で、ここ!」
「博麗神社主催、幻想郷真剣勝負の特別生中継を敢行しておりますー!」
「ルールは簡単!博麗神社の由緒正しい儀式によって呼び出された神様の神命によって対戦カードが選ばれます!同時に競技種目も提示されますが、それは対戦者同士が協議することで細かいルールが決められる!……ってっちょ、あっきゅん!割り込んでこないで!」
しかしその勝負の全容は長い間、世間には公表されず、闇に包まれたままでした。そこで「このままではいけない」「表現の自由が危ない」と奮起し立ち上がったのがこの私、稗田阿求なのです!皆様、どうぞ阿求に清き一票を!有難う御座います、稗田、稗田阿求でございます……ってなによ小鈴!突然背後からチョップかまさないで!
「なによ小鈴!じゃないわよ。あんたはいつから外の世界の政治家?になったんだ。そんなことして、さっきのイメージダウンの挽回しようとしてんだって、バレバレだからね」
え、あー、あれね。あれはねー。うん。
先程の発言は撤回させていただきます。ってことで。
「だからあんたは政治家かって」
ああ!こんなアホなことしてたら向こうのほうで対戦カードが発表されそうじゃない!行くわよ!小鈴!
「ああ!待ってよあっきゅん!……っぺぎゃ!」
あっきゅんはやめろ言うとるやろがい!
「忘れてたの!いちいち殴らなくてもいいじゃん!とにかく急いで!」
分かってるわよ!ちょっと先行ってて!
「早く追いかけてきてよねー!」
分かってるわよー!
はあ。
こほん。
えー、急ぎ足ですがここで一旦中継を中断します。また後、今回対戦する両者が確定してから改めて放送を再開したいと思います。
そしてお知らせが一つ。
今現在、私たちのいるところと、視聴者の皆さんのいるところの時間の流れは必ずしも一定ではありません。場合によっては次の放送がかなり遅れてしまう可能性がございます。その点はご了承ください。
しかし心配はいりません。
私たちはこの放送を視聴者の皆さんにお届けする責務を背負っております。
誰かがやらなくてはいけない。
阿求がやらずに、誰がやる!です!
最後に。
私たち、このような放送は全くの素人なため、見苦しい場面が多々あったかと思われます。この場を借りてお詫び申し上げます。
そして、私たちはこの放送をもっとより良くするために、視聴者の皆さんからのご意見、ご要望、ご質問等々を募集します。
気付いた点、良かった点は勿論、至らなかった点、改善点もどしどしここまでお送りくださーい。……ここ、映像では多分ここらへんに写ってるはず。
……これ、ほんとに下のほうにお便りの宛先、映ってるんでしょうね……?
あ、もういい?おっけー。
さて、お別れの時間です。最後まで早足であっという間でしたが仕方ありません。それでは皆さん、また次の放送をお楽しみにー!っと。
待ってー!小鈴―!私、体が弱いんだから走らせないでよー!
ルール
1、 博麗神社の神命によって対戦カードが選ばれる
2、 勝利者には名誉という名の尊厳が与えられる
3、 対戦形式も神命で提示されるが、細かいルールは対戦者同士が話し合って同意のもと、決定される
プロローグ
始まりは唯の暇つぶしだったかもしれない。だがそれが意味を持った、あるいは、それに意味が「持たされた」のは偶然ではない。
幻想郷は、退屈していた。
外界から来るもの拒まず、内界から去る者がいなかったから。
目新しいものが当たり前になっていった。画期的なシステムが飽きられるようになった。中途半端な異変なんかじゃ、幻想郷は満たされなくなっていたのだ。
そこでその暇つぶしは意味を持つことになった。
文字通り、次々と湧いてくる「暇」という害虫を「つぶす」、という。
実は意味などいらなかったのかもしれないが、そういうことになってしまった。
と、いうわけで。
がやがやと博麗神社の境内に人影が集まっていた。
影は人の形だったが実はその内の半数以上は人ではない。人ならざる者。妖怪?仙人?神?とにかく、そんな感じ。
その内の隅っこのほうに、一風変わった人の子がいた。
「あれー?あっきゅん、ここいらにいるって昨日は言ってたのにー……」
人里で一風変わった本屋として名を有し始めている、鈴奈庵。
その店主の娘、本居小鈴。
「あっきゅーん……。あっきゅん、どこー……?」
まあうん、こんな感じの女の子。
……。
ほんとに、まったくもう。
「あ!あっきゅん!やーっと見つけたよー。ここ、普段からじゃ考えられないくらい人が沢山いてさー、迷子になりかけてたんだ……いって!なにすんのよ!」
あっきゅんはやめろって普段から言ってんでしょうが、っまったく。
「えー!かわいいじゃん!あっきゅん!あっきゅん!あっきゅんきゅん!」
勝手にコールを自主制作するな。てかうるさいから黙って。
「引きこもあっきゅん!病弱あっきゅん!耳年増っきゅん!」
はーい後半ただの悪口―。しかも微妙に語呂悪―い。
「弱いぞあっきゅん!頑張れあっきゅん!戦えあっきゅん!」
私が体弱いの分かってんなら戦わせんな!
ああもう。ダメだ。本題に戻らなくちゃ。
おほん。
ここ最近、博麗神社では不定期にとあるイベントが行われる。ちょっとしたお祭りであり、宴会の一次会であり、そして神聖な神事である。
不定期とはいえ幻想郷の要人へ事前連絡はしてあるらしく、それでも幻想郷の主要人物がこうまで都合よく一堂に会する機会などめったにない。
そうね、人物の例を挙げるならば……。
小鈴、出番よ。
「はいはーい!私、この為に来たようなもんだしねー!」
いつの間に自主制作コールを終えたのか、元気に返事が返ってくる。
ホント、こういうところはしっかりしてるのにねぇ。
「大きく分けて人族と妖怪に分けられるんだけど……。まずは人族から!私たちが属する種族ね。まあ紹介程度に4人ほど」
ちょっと小鈴、あんた自作のイラスト持ってきたの?
「そうだよー!絵があったほうが解りやすいと思ってね!あ、そんな有名な人、もう知っとるわ!っていう物知りな人は聞き流してていいからねー!」
「まず欠かせないのが、由緒正しいこの博麗神社の正統な巫女さんであり、妖怪退治のプロフェッショナル、博麗霊夢さん!どんな異変でもすぐスパッと解決しちゃう、すっごくカッコいい人なんだから!
そして霊夢さんと同じくらい欠かせないのが、霧雨魔理沙さん!一見すると男勝りでガサツな感じなんだけど、困っている人を絶対に見逃さない、実はすっごく優しいひとなの!
3人目は人族の中でもちょっと異質で。湖の畔の紅い館、通称紅魔館で吸血鬼のメイドさんをしてる、十六夜咲夜さん!銀髪がとっても綺麗で賢くて垢ぬけてて……こういうの一言でなんて言えばいいんだろう?」
瀟洒、でいいんじゃない?
「あ、それいただき。とっても瀟洒なの!とにかくすっごく頼れるお姉さん!
あともう一人、東風谷早苗さん!妖怪の山で守屋神社っていう神社の巫女さん兼神様をしてる、これまたすっごい人なんだよ!同じ巫女さんってことで何かと霊夢さんと比べられることが多いんだけどね、早苗さんには奇跡の力と二人の神様がついてるの!すごいでしょ!」
小鈴、あんた「すごい」しか言ってなくてさっきの説明から何も詳しい情報が得られそうにないんだけど。視聴者さん、顔に「困惑」って文字が張り付いてるわよ。絵からも髪の色くらいしかわかんないし。
「えっ?そうだった?」
まったく、この子は。
っと。ごめんね。小鈴の雑な分かりにくい説明がまだ途中なんだけど、もうそろそろ始まるみたい。太鼓の音が聞こえてきたわ。
「えー!どうしたらいいのよ!」
しょうがない。時間が無いなら、今回対戦する二人だけでも順に解説を入れていくしかないでしょ。
大体、時間が足りないのはあんたが迷子になりかけてて、というかもうなってて、それを私が探すのに手間取ったからじゃない。そんな……。あっ、ちょっと待って。
もしもし、文さん?なんですって?まだ趣旨を説明できてない?え、あれだけじゃ説明不足だったっていうんですか?私の完璧な説明が?うそでしょ?……ちっ、これだから私はこんなことしたくなかったのに……。
「あー!あっきゅん!それ、あれ、えっとなんていうんだっけ、まいく?忘れちゃった!とにかくそれ貸して!」
あっ!小鈴!何してるのよ!えっさっきのも放送してた?それマジ?
「えー!視聴者のみなさーん!今回から私たちは完全独占潜入取材!シカケもヤラセもどんとこい!の精神で、ここ!」
「博麗神社主催、幻想郷真剣勝負の特別生中継を敢行しておりますー!」
「ルールは簡単!博麗神社の由緒正しい儀式によって呼び出された神様の神命によって対戦カードが選ばれます!同時に競技種目も提示されますが、それは対戦者同士が協議することで細かいルールが決められる!……ってっちょ、あっきゅん!割り込んでこないで!」
しかしその勝負の全容は長い間、世間には公表されず、闇に包まれたままでした。そこで「このままではいけない」「表現の自由が危ない」と奮起し立ち上がったのがこの私、稗田阿求なのです!皆様、どうぞ阿求に清き一票を!有難う御座います、稗田、稗田阿求でございます……ってなによ小鈴!突然背後からチョップかまさないで!
「なによ小鈴!じゃないわよ。あんたはいつから外の世界の政治家?になったんだ。そんなことして、さっきのイメージダウンの挽回しようとしてんだって、バレバレだからね」
え、あー、あれね。あれはねー。うん。
先程の発言は撤回させていただきます。ってことで。
「だからあんたは政治家かって」
ああ!こんなアホなことしてたら向こうのほうで対戦カードが発表されそうじゃない!行くわよ!小鈴!
「ああ!待ってよあっきゅん!……っぺぎゃ!」
あっきゅんはやめろ言うとるやろがい!
「忘れてたの!いちいち殴らなくてもいいじゃん!とにかく急いで!」
分かってるわよ!ちょっと先行ってて!
「早く追いかけてきてよねー!」
分かってるわよー!
はあ。
こほん。
えー、急ぎ足ですがここで一旦中継を中断します。また後、今回対戦する両者が確定してから改めて放送を再開したいと思います。
そしてお知らせが一つ。
今現在、私たちのいるところと、視聴者の皆さんのいるところの時間の流れは必ずしも一定ではありません。場合によっては次の放送がかなり遅れてしまう可能性がございます。その点はご了承ください。
しかし心配はいりません。
私たちはこの放送を視聴者の皆さんにお届けする責務を背負っております。
誰かがやらなくてはいけない。
阿求がやらずに、誰がやる!です!
最後に。
私たち、このような放送は全くの素人なため、見苦しい場面が多々あったかと思われます。この場を借りてお詫び申し上げます。
そして、私たちはこの放送をもっとより良くするために、視聴者の皆さんからのご意見、ご要望、ご質問等々を募集します。
気付いた点、良かった点は勿論、至らなかった点、改善点もどしどしここまでお送りくださーい。……ここ、映像では多分ここらへんに写ってるはず。
……これ、ほんとに下のほうにお便りの宛先、映ってるんでしょうね……?
あ、もういい?おっけー。
さて、お別れの時間です。最後まで早足であっという間でしたが仕方ありません。それでは皆さん、また次の放送をお楽しみにー!っと。
待ってー!小鈴―!私、体が弱いんだから走らせないでよー!