この図書館は本当に広いですねぇ。
司書である私も、どの本がどこらへんにあるのか覚えるのには苦労しました。
ここは本のジャンルごとに本棚が分けられているんですが、一つだけ特別な本棚があるのです。
それはパチュリー様の机から一番近い本棚。
パチュリー様が椅子に座ってても手を伸ばせば届く距離にあります。
ここにはパチュリー様が今迄読んだ膨大な数の本の中でも、特にお気に入りの本が入る場所なんです。
何十年も図書館に篭って本を読み続けてきたパチュリー様が選ぶお気に入りですから、そりゃあ素晴らしい本が入っているに違いありません。
普段無口でも本に関してはとてもうるさいお方です。
そんな彼女の厳しい目で選ばれた本が、つまらない本であるわけがありませんからね。
そう考えていると、少し気になる事が出てきました。
もし私が本を書いたなら、パチュリー様は一体どんな評価をされるのでしょうか?
そりゃあ数々の名作を生み出してきた作家様達には敵わないとは思いますが、もしパチュリー様がちょっとでも褒めてくださったならそれだけでも凄い事ではないですか。
だってあのパチュリー様ですよ?パチュリー様以上に本を読んだ人が他に存在するのでしょうか?
幻想郷一、いや、世界一たくさん本を読んだ人物だと私は信じております。
そんな凄い人がいつも側にいるのに、本を書いて評価を頂かないなんて勿体無いじゃあないですか。
これから少しずつ書いていこうかと思います。
私もこの図書館に泊まり込みを始めてから長いです。
パチュリー様には遠く及びませんがそれなりに本を読んでいます。
案外高い評価を得ちゃったりするかもしれませんね。
「小悪魔、何を笑っているの?」
あ、しまった、どうやら妄想してたら表示に出てしまっていたみたいです。
「な、なんでもないですっ!」
「そう、それより読み終わった本を片づけて貰いたいんだけど」
そう言われて私は机に目をやってギョッとしました。
パチュリー様が読み終わった本が積まれてタワーが出来ています。
本当にこのお方は本を読むスピードが速いです。
油断するといつもこんな風に本が溜まってしまいます。
「も、申し訳ございません!すぐに片づけます!」
私は大急ぎで大量の本を抱えると、本棚に向かって飛び立ちました。
それから、仕事の合間に少しずつ物書きをする生活が始まりました。
といっても、1日の大半はパチュリー様のお世話や、掃除などで潰れちゃいますから、昼休みや寝る前にちょっと書く程度ですけどね。
でも、始めてみるとこれが結構楽しいもので、どんなものを書こうかと考えてる時は本当にワクワクします。
そんな感じで毎日少しずつ書き続けたんですけど、本当に少しずつなんで中々進みません。
半年以上かかってようやく全部の内容を書き終えました。
書いた紙に表紙を付けて、紐で結んだら完成です。
残念なことに製本技術が無いのでものすごい手作り感溢れる本が出来ました。
表紙が白紙だとなんだか寂しいので、手描きでクマちゃんを入れておきました。
絵心に関しては自分で見てもかなり酷いものです。
でも重要なのは中身ですからね、気にしない気にしない。
ついに完成したという事で、さっそくパチュリー様に見せに行こうと思ったのですが、今になって急に恥ずかしくなって来ました。
もうこれは黒歴史ということで自分の部屋に隠してしまおうか悩みましたが、それじゃあ書いた意味が無くなってしまうので、勇気を出してパチュリー様の元に向かいます。
パチュリー様は読書を邪魔されると怒るので、一冊読み終わったタイミングを狙います。
パタンとパチュリー様がさっきまで読んでいた本を閉じ、積み上がった既読済みの本タワーの一番上に置きました。
ああ!私ったらまたやってしまいました。自分の本の事に気をとられてまたあんな高いタワーを...
本を見せたらすぐに片づけようと思いつつ、パチュリー様の元に直行します。
「あ、あのぉ...パチュリー様」
「ん?何?」
「あ、アンノォ...実は最近趣味で本を書いてたんです。よかったら読んでもらえませんか?」
「へー...」
以外にもパチュリー様は眉ひとつ動かしません。
一応本を開いてはくれたので読んではもらえるみたいですが...
ものすごい勢いでページがペラペラ捲られます。
パチュリー様が読書のスピードが速いのは知っていますが、なんだか横から見てると適当に読み飛ばされているのではと不安になってきます。
「ふう」
私の本をあっという間に読み終えてしまうと、パチュリー様は私の本をタワーの一番上に置きました。
私はどんな感想がくるかドキドキしながら待機していたのですが、パチュリー様は何も言わずに次の本を読み始めようとしました。
「あっ、パチュリー様っ」
私は慌てて声をかけました。
「んー?」
「あの、どうでした?」
「んー...うん...」
帰ってきたのはそんな気力の無い返事だけでした。
そのままパチュリー様は次の本を開き黙々と読み始めます。
なんということでしょう。
私の作品は評価さえ貰えなかったのです。まあ、所詮私はただの使い魔です。当然と言えば当然でしょう。読んでもらえただけでも感謝です。
しかし不思議なものです。本というものは書くまでにはものすごい時間がかかるのに、読む時にはその十分の一の時間もかからずに読めてしまうのですから。
本を書くのにどれだけ構想を練ったとしても、読む方は気に入らなければ簡単にポイっと捨ててしまえるのです。本当に不思議なものです。
それにしても以外でした。
まさか良い悪い以前にノーコメントとは、これならば本など書かない方が良かったのかもしれません。
今思えば馬鹿な事をしたものです。熱心に書き物をしていた時間でもっと別の事が出来たのかもしれないのに、こんな事のために時間を浪費してしまうとは...
「小悪魔、どうしたのぼーっとして」
「はっはい!!すみません、大丈夫です」
突然パチュリー様に声をかけられ驚いてしまいました。
私とした事が仕事も忘れもの思いにふけってしまうとは...
「そこの読み終わった本、片付けてもらえる?」
「あっ!も、申し訳ありません!今すぐ!」
私は慌てて積み上がった本を両手で抱えました。
「ちょっと待ちなさい」
私が飛ぼうとした時、急に呼び止められました。
そして、パチュリー様は私が抱えていた本の一番上のものを手に取りました。
「これはここね」
そう言ってパチュリー様はその本をお気に入りの本棚にしまったのです。
司書である私も、どの本がどこらへんにあるのか覚えるのには苦労しました。
ここは本のジャンルごとに本棚が分けられているんですが、一つだけ特別な本棚があるのです。
それはパチュリー様の机から一番近い本棚。
パチュリー様が椅子に座ってても手を伸ばせば届く距離にあります。
ここにはパチュリー様が今迄読んだ膨大な数の本の中でも、特にお気に入りの本が入る場所なんです。
何十年も図書館に篭って本を読み続けてきたパチュリー様が選ぶお気に入りですから、そりゃあ素晴らしい本が入っているに違いありません。
普段無口でも本に関してはとてもうるさいお方です。
そんな彼女の厳しい目で選ばれた本が、つまらない本であるわけがありませんからね。
そう考えていると、少し気になる事が出てきました。
もし私が本を書いたなら、パチュリー様は一体どんな評価をされるのでしょうか?
そりゃあ数々の名作を生み出してきた作家様達には敵わないとは思いますが、もしパチュリー様がちょっとでも褒めてくださったならそれだけでも凄い事ではないですか。
だってあのパチュリー様ですよ?パチュリー様以上に本を読んだ人が他に存在するのでしょうか?
幻想郷一、いや、世界一たくさん本を読んだ人物だと私は信じております。
そんな凄い人がいつも側にいるのに、本を書いて評価を頂かないなんて勿体無いじゃあないですか。
これから少しずつ書いていこうかと思います。
私もこの図書館に泊まり込みを始めてから長いです。
パチュリー様には遠く及びませんがそれなりに本を読んでいます。
案外高い評価を得ちゃったりするかもしれませんね。
「小悪魔、何を笑っているの?」
あ、しまった、どうやら妄想してたら表示に出てしまっていたみたいです。
「な、なんでもないですっ!」
「そう、それより読み終わった本を片づけて貰いたいんだけど」
そう言われて私は机に目をやってギョッとしました。
パチュリー様が読み終わった本が積まれてタワーが出来ています。
本当にこのお方は本を読むスピードが速いです。
油断するといつもこんな風に本が溜まってしまいます。
「も、申し訳ございません!すぐに片づけます!」
私は大急ぎで大量の本を抱えると、本棚に向かって飛び立ちました。
それから、仕事の合間に少しずつ物書きをする生活が始まりました。
といっても、1日の大半はパチュリー様のお世話や、掃除などで潰れちゃいますから、昼休みや寝る前にちょっと書く程度ですけどね。
でも、始めてみるとこれが結構楽しいもので、どんなものを書こうかと考えてる時は本当にワクワクします。
そんな感じで毎日少しずつ書き続けたんですけど、本当に少しずつなんで中々進みません。
半年以上かかってようやく全部の内容を書き終えました。
書いた紙に表紙を付けて、紐で結んだら完成です。
残念なことに製本技術が無いのでものすごい手作り感溢れる本が出来ました。
表紙が白紙だとなんだか寂しいので、手描きでクマちゃんを入れておきました。
絵心に関しては自分で見てもかなり酷いものです。
でも重要なのは中身ですからね、気にしない気にしない。
ついに完成したという事で、さっそくパチュリー様に見せに行こうと思ったのですが、今になって急に恥ずかしくなって来ました。
もうこれは黒歴史ということで自分の部屋に隠してしまおうか悩みましたが、それじゃあ書いた意味が無くなってしまうので、勇気を出してパチュリー様の元に向かいます。
パチュリー様は読書を邪魔されると怒るので、一冊読み終わったタイミングを狙います。
パタンとパチュリー様がさっきまで読んでいた本を閉じ、積み上がった既読済みの本タワーの一番上に置きました。
ああ!私ったらまたやってしまいました。自分の本の事に気をとられてまたあんな高いタワーを...
本を見せたらすぐに片づけようと思いつつ、パチュリー様の元に直行します。
「あ、あのぉ...パチュリー様」
「ん?何?」
「あ、アンノォ...実は最近趣味で本を書いてたんです。よかったら読んでもらえませんか?」
「へー...」
以外にもパチュリー様は眉ひとつ動かしません。
一応本を開いてはくれたので読んではもらえるみたいですが...
ものすごい勢いでページがペラペラ捲られます。
パチュリー様が読書のスピードが速いのは知っていますが、なんだか横から見てると適当に読み飛ばされているのではと不安になってきます。
「ふう」
私の本をあっという間に読み終えてしまうと、パチュリー様は私の本をタワーの一番上に置きました。
私はどんな感想がくるかドキドキしながら待機していたのですが、パチュリー様は何も言わずに次の本を読み始めようとしました。
「あっ、パチュリー様っ」
私は慌てて声をかけました。
「んー?」
「あの、どうでした?」
「んー...うん...」
帰ってきたのはそんな気力の無い返事だけでした。
そのままパチュリー様は次の本を開き黙々と読み始めます。
なんということでしょう。
私の作品は評価さえ貰えなかったのです。まあ、所詮私はただの使い魔です。当然と言えば当然でしょう。読んでもらえただけでも感謝です。
しかし不思議なものです。本というものは書くまでにはものすごい時間がかかるのに、読む時にはその十分の一の時間もかからずに読めてしまうのですから。
本を書くのにどれだけ構想を練ったとしても、読む方は気に入らなければ簡単にポイっと捨ててしまえるのです。本当に不思議なものです。
それにしても以外でした。
まさか良い悪い以前にノーコメントとは、これならば本など書かない方が良かったのかもしれません。
今思えば馬鹿な事をしたものです。熱心に書き物をしていた時間でもっと別の事が出来たのかもしれないのに、こんな事のために時間を浪費してしまうとは...
「小悪魔、どうしたのぼーっとして」
「はっはい!!すみません、大丈夫です」
突然パチュリー様に声をかけられ驚いてしまいました。
私とした事が仕事も忘れもの思いにふけってしまうとは...
「そこの読み終わった本、片付けてもらえる?」
「あっ!も、申し訳ありません!今すぐ!」
私は慌てて積み上がった本を両手で抱えました。
「ちょっと待ちなさい」
私が飛ぼうとした時、急に呼び止められました。
そして、パチュリー様は私が抱えていた本の一番上のものを手に取りました。
「これはここね」
そう言ってパチュリー様はその本をお気に入りの本棚にしまったのです。
あとがきよくわからんけど
この作品では、読者を恐れる小説書きの心情が見事に表されていると思いました。
自分の作品が誰にも目を付けられず沈んでいくんじゃないかという強い不安と、もしかしたら自分が初めて書いた作品だって評価してもらえるんじゃないかという淡い期待、その葛藤と板挟みを小悪魔から如実に感じ取れます。
自分も、きっと皆だって初めて創作活動に乗り込んだときはこう感じると思います。いい作品でした。
こいっ! パチェこあ、いや、小悪魔ブームこいっ!
後書きだけでなく内容もですが、余計な皮肉を入れずにはいられないのですか?
まさかここで教徒に会うとは
筆者との出会いに感謝
楽しませてもらいました。