○○高校 卒
△△大学 悪魔文学部司書専攻 在学
資格等 魔術書管理技能検定1級免許 魔法図書司書資格
私、小悪魔は魔界の普通の高校を卒業し普通の大学に在学中です。私の家庭には母は専業主婦、父は魔界の中小企業で働いています。特に不自由ない生活でした。でも私には何か足りない気がします。こんなにも普通でいいのか、こんなにも平坦な悪魔生でいいのか。私は悩みました。そう悩みつつ大学最後の春、就職活動もせずただ自堕落な生活、不規則な睡眠時間、連日の飲み会、いったいいつまで遊べば気が済むのかと親に言われる始末です。昨日の私をナレーションするなら 小悪魔が買ったのは…ビール一本…しかし一本買っては止まらない…気づけば…豪遊っ!小悪魔、二日続けての豪遊!親のスネでの豪遊!
改めて言うまでもないクズです。これではきっと平坦な生活が続く、いやこれよりひどい生活になるかもしれません。
それでも私は、夢があります。I have a dream. こんな小さな家ではなくババーンと大きなお城で王女様のような生活がしたい。毎日豪華な食事で、たくさんのメイドが控え、豪勢なドレスを着てイケメン悪魔と舞踏会。
きっと無理だと思います。でも、あと数か月に望みをかけます。あきらめたらそこで試合終了です。
そして、そんな私の人生に大きな転機が訪れました。
それは夏でした。
いつものように講義を受け終わり、私は帰ろうと思いました。今日は金曜日、バイトも休み。はやく家に帰り、撮りためていたドラマを見ようと気持ち早めに帰ることにしました。しかし今日は生憎の雨。かばんには傘を常備しているのですが、今日は忘れました。帰るのは雨が弱まってからにすることを余儀なくされました。小悪魔しょんぼり。ずっと立っているのも疲れるので、大学の図書館に行くことにしました。雨だからか図書館には多くの人がいました。
座れるところ空くまで掲示板を見ることにしました。どれもたいしたことを書いていませんでしたが、ひとつ目に留まりました。
『司書のできる悪魔募集 レミリアスカーレット』
スカーレット家といえば、外の世界にいらっしゃる吸血鬼の一族だったはずです。レミリアという方は知りませんが、きっとすごい吸血鬼なのでしょう。こんな名家から、こんな中堅大学の生徒に募集がかかっているのでしょうか。私は気になり、続きを読むことにしました。
『幻想郷に移転記念として図書館の別館を新設します。また従来の図書館を広げ、飲食スペースなどを新設します。そして、魔術書保管室も増設いたします。』
やはり、力のある人は違います。たかが引っ越しで図書館の別館を作ったり図書館を広げたりするなんてスケールが違います。私の家なんて、引っ越し祝いはケーキだけだったのに。
私のような、下っ端普通悪魔には関係ないと思いつつ最後まで読むことにしました。
『募集要件 魔術書管理技能検定1級免許 魔法図書司書資格 を有する者。
人型悪魔であること
仕事内容 館内の清掃等 図書の整理及び管理 館長の世話
備考 紅魔館の住み込みでの業務となります。また、メイド業務の研修があります。
制服は支給されます
給与 月 レミリアお嬢様の気分次第 気分次第でボーナス有
空気がきれいで美しい庭があります。レイクビューの美しい館で働きませんか? おいしい食事、清潔で美しい私室。レミリア様をはじめとするやさしい上司ばかりです。アットホームな職場ですよ。あなたのスキルをいかして、ワンランク上の人生を
連絡先 紅魔館人事部 紅美鈴 ○○○―×××―△△△△
住所 幻想郷紅魔館人事部』
私には、一つ自慢できることがあります。それは魔術書管理技能検定の1級免許を持っていることです。まぁこれは運よく取れただけで、まったくもって実力じゃありません。入学後なんの授業をとればいいのかわからなかった私は仕方なく学生課に相談しました。学生課のおじさんが言うにはみんな1級免許の講座をとっているらしいので取ることにしました。後々、授業が始まってからわかったのですが学生課の人は間違えていました。あのクソじじいめ、呪ってやる。呪いなんて出来ないけど、気持ちだけは呪います。1級の免許に同じ学部の子なんて一人もいませんでした。それどころか、生徒すらほとんどいませんでした。回を追うたびに参加者は減り、最後は私だけになっていました。やめようと思いましたが、どうも教授がかわいそうで最後まで受けることにしました。結果、マンツーマンレッスンのおかげでまあまあ難関といわれる1級の資格をもらいました。
私は人型の悪魔ですから、参加要件は満たしています。採用かどうかは置いといて、私の夢とは少し外れていますが良くないですか? 美しい湖と庭と森、かっこいい城、メイド服いいです。しかも、大学生活が無駄になりません。
住み込みですから愛しの家から離れますが、そろそろ親の目も怖いので自立しようではありませんか。小悪魔一世一代の大決断。よろよろ歩き始める 希望へ向かって 捨てたのだ 惰性の安息を。
最近読んだ本にこう書かれていました、「明日から頑張るんじゃない、今日、今日だけ頑張るんだっ、今日を頑張った者、今日を頑張り始めた者のみに、明日が来るんだよ」そうです、善は急げです。さっそく応募します。
なんと、一次審査は合格でした。来ました、運が巡ってきています。二次審査は面接です。幻想郷までいかなければなりませんが、そんなこと大きな夢の前には些細なことです。
私は魔界の洋服店でちょっと高めのいい服を揃え、髪形もちょっと高めの美容院でセットしました。ここで落ちるわけにはいきません。夢の城暮しを手放すわけにはいきません。
勝ったらどうするじゃない、勝たなきゃダメだ。これも最近読んだ本の言葉です。あの本面白かったです。私はあんなにクズではありませんが。ともかく、面接を成功させなければいけません。通信講座でマナーも学びました、ペン字講座も受けました。いまの私は今までの小悪魔ではありません。いうなら 大・小悪魔 です。うん?これ中悪魔かな…。
さぁ、つぎの面接を受けるのは私。まず、深呼吸。こーーーあぁーーーー。よしいける。
「次の方~」女性の声が聞こえました。
まずはノック。コンコンコン三回。家で一日百回、トイレのドアで練習しました。失礼はありません。美しい音が室内に響いたはずです。
ガチャ「失礼し「どうぞ」ます」
あ、まずい。勢い余って開いてしまった。うわぁ、初っ端からミスです。ですがここで狼狽えてはいけません。ここから卍解です。金色足そg…違う違う。ここから挽回です。
「△△大学から参りました。×××です。本日は面接の機会を与えてくださりありがとうございます。失礼します「どうぞお掛け…」あっ…」
一人で面接練習したのが祟りました。面接官から言われるなんておもってもいませんでした。くっ、この大・小悪魔を惑わすとはこの女なかなかのやり手だな。私はそのやり手の面接官を見つめました。紅い髪のロングです。西洋風の顔立ちではありませんが、目は大きく鼻も高くなかなかの美女です。しかし、同じ赤髪では私に軍配が上がりますね。なんたって大・小悪魔ですから。顔は勝ったので目線をすこし下げました。そこにいたのは魔物、メイド服がはちきれんばかりの巨乳。ちっ、こればかりは小悪魔負けました。あれは反則です。
とりあえず、まだ二度の失敗です。仏の顔も三度まで。まだ挽回できるはずです。
「それでは面接を始めます」赤髪のメイドさんは言いました。
「まずは自己紹介をお願いします」
私が自己紹介を言おうと息を吸ったその時、突然奥から声が聞こえました。
「あーもう、こう凄いやつこないの? どいつもこいつも同じことばっか。だめだめ、あんたさっきのやつみたいなんじゃ不採用よ」
私は少し体をずらして奥を見ました。うすいカーテンがあり、はっきりとは見えませんが奥にはいかにも王様が座るような椅子にちびっこが一人、その隣に紫色の人影が一つ。
「いい、あんたがどうしても採用されたいならわたしが雇いたくなるような何かをみせなさい」
「レミィ あなたが雇う訳ではないのよ。私の使い魔を選ぶの、わかっているかしら?」
「もちろんわかっているわよ パチェ けれど、ここは私の城なの。私の気に入らないものは埃一つでも入れさせないわ」
「なら、いい加減自分の部屋の掃除をしたら? それともあの散らかったゴミがお気に入りなのかしら? 王は王でもゴミ山の王は友人にはなりたくないわ」
「私の部屋は特例よ、特例。掃除は気が向いたらなの。そういうパチェだって図書館の整理ができないから使い魔を召喚するのでしょ?」
えー小悪魔、混乱中です。面接官は一向に奥の二人を止めずにニコニコしています。おい、止めろよ。しかし、この小悪魔重大な事実を聞きました。あの少ない会話から、真実を探り当てる小悪魔さんカッコいい! あの紫はこう言いました レミィと。つまりきっと、あのちびっここそ偉大な吸血鬼様 レミリアスカーレットなのでしょう。そして、隣にいるのが百年を生きた魔女パチュリーノーレッジなのでしょう。もっとしわくちゃのおばちゃんかと思っていましたが、声色から推測するにかなり若そうです。となると、目の前の赤髪さんは紅美鈴さんに違いありません。これで大体の紅魔館像はつかめてきました。
そうこう思案していると、前の美鈴さんが口を開きました。
「お嬢様方~ 面接終わらなくなっちゃうので進めていいですか?」
さすがメイドさん。この緊迫した空気を打破してくれました。これは後に思ったのですが、美鈴さんのメイド服姿なんてこれ以来、見たことがありません。目に焼き付けるべきでした。
「いいわ、どうせこいつもたいしたこと言わないだろうし進めなさい」
「そうね私もそろそろティータイムがしたいから進めましょう」
「そんなかんじなので、改めて自己紹介をお願いします」
こいつら…私は人生を掛けてきたんだぞ!! もうちょっと真剣になれよ!! あと、あのちっびこなんて言いやがった? 大したことない? この私が? 飲み会ではようと鬼絡みで恐れられたこの私がたいしたことないだと 頭にきました。久しぶりにこの小悪魔の本気をみせてあげようではありませんか。とびっきりの自己紹介をたたきつけてやります。
「私の名は、ルシh…おっとまずい。私の真名(マナ)を言いいそうになったわ。コホン失礼、私の名前 そうね小悪魔とでもしましょう。それで、魔界にいる星の数ほどいる悪魔の中からわたしの運命の糸を引いたのはだれかしら? 数ある運命そうフェイトの中から、わたしを選ぶという真実の選択をしたあなたはすばらしいわ。運命を操っているのかともおもえるこの奇跡。この奇跡はどこぞのちゃちゃな聖人の起こすような雑多な奇跡ではない。これはまさに二つの背反するパラレルワールドが同じ運命のもとに収束するかのような奇跡。私の経歴を見て驚かないで。それは仮初の経歴。真の経歴は偉大なる魔女との契約により解き明かされるの。私の真の力は赤い月の儀式によって秘匿されているの。私の力はあまりに強大ですべてを封印するには非常に大きな力が必要だった。いまではその力は盲目にして白痴の王アザトースによって失わされた。けれど、赤い月の…「もう結構です」眷属が」
やった、やりきった。普通の自己紹介も考えていたけれど、普通ではダメといわれてしまっては私が中二の時から考えていたこの自己紹介をするしかないでしょう。途中で切られてしまったが、あれだけ言えれば十分です。私の悪魔的魅力、悪魔的知力、などなど様々なスキルが見せつけられたに違いないです。もう、雇う以外の選択肢があるでしょうか?いいえありません。内定間違いなし。小悪魔嬉しすぎて作詞した曲も朗読したい気分です
自己紹介を言ったあとの余韻が少し覚めて面接官をみると、青ざめています。どうしたのでしょうか。体調でも悪いのでしょうか。
辺りはまだ自己紹介で放った私の渾身のポエムの余韻に浸っているので静寂です。それもそのはず、中二から今の今まで推敲に推敲を重ねた最高の自己紹介ポエムなのですから。
どっぷりと余韻をかんじた後、奥のちびっこが口を開きました
「あなた、採用」
「レッ!!レミィ!! あなた馬鹿なの?こんな頭がお花畑みたいなやつ雇えるわけないじゃないの」
「聞いたか パチェ 彼女の力は赤い月の儀式によって秘匿されているのよ!! あと真名だったかしら? 彼女、ルシって言ってたわよね? きっとルシファーだわ。堕天使の
いい、すごくいい。決定よ。決定。この子に決めた」
「もうなんでもいいわ(絶対にウソだし、アザトースとかありえないじゃん。)」
私はこうして、紅魔館に就職となりました。蒸し返されたくない、最悪の黒歴史を背負って。
けれど、夢はかなえられました。それと同じくらいの犠牲を払って。
その数年後、赤い月の日私はまた蒸し返されるのであります。紅霧異変、そう赤い月の儀式によって私は真の力が解放される予定でしたがもちろんそんなものは起きず、巫女にはぼこぼこにされ魔法使いには丸焼きにされました。
でも、わたしはあきらめません。あきらめずに夢を追いかけたら叶ったのですから。
祈り続けたら真の力が解放されるかもしれません。あきらめません、叶うまでは。
△△大学 悪魔文学部司書専攻 在学
資格等 魔術書管理技能検定1級免許 魔法図書司書資格
私、小悪魔は魔界の普通の高校を卒業し普通の大学に在学中です。私の家庭には母は専業主婦、父は魔界の中小企業で働いています。特に不自由ない生活でした。でも私には何か足りない気がします。こんなにも普通でいいのか、こんなにも平坦な悪魔生でいいのか。私は悩みました。そう悩みつつ大学最後の春、就職活動もせずただ自堕落な生活、不規則な睡眠時間、連日の飲み会、いったいいつまで遊べば気が済むのかと親に言われる始末です。昨日の私をナレーションするなら 小悪魔が買ったのは…ビール一本…しかし一本買っては止まらない…気づけば…豪遊っ!小悪魔、二日続けての豪遊!親のスネでの豪遊!
改めて言うまでもないクズです。これではきっと平坦な生活が続く、いやこれよりひどい生活になるかもしれません。
それでも私は、夢があります。I have a dream. こんな小さな家ではなくババーンと大きなお城で王女様のような生活がしたい。毎日豪華な食事で、たくさんのメイドが控え、豪勢なドレスを着てイケメン悪魔と舞踏会。
きっと無理だと思います。でも、あと数か月に望みをかけます。あきらめたらそこで試合終了です。
そして、そんな私の人生に大きな転機が訪れました。
それは夏でした。
いつものように講義を受け終わり、私は帰ろうと思いました。今日は金曜日、バイトも休み。はやく家に帰り、撮りためていたドラマを見ようと気持ち早めに帰ることにしました。しかし今日は生憎の雨。かばんには傘を常備しているのですが、今日は忘れました。帰るのは雨が弱まってからにすることを余儀なくされました。小悪魔しょんぼり。ずっと立っているのも疲れるので、大学の図書館に行くことにしました。雨だからか図書館には多くの人がいました。
座れるところ空くまで掲示板を見ることにしました。どれもたいしたことを書いていませんでしたが、ひとつ目に留まりました。
『司書のできる悪魔募集 レミリアスカーレット』
スカーレット家といえば、外の世界にいらっしゃる吸血鬼の一族だったはずです。レミリアという方は知りませんが、きっとすごい吸血鬼なのでしょう。こんな名家から、こんな中堅大学の生徒に募集がかかっているのでしょうか。私は気になり、続きを読むことにしました。
『幻想郷に移転記念として図書館の別館を新設します。また従来の図書館を広げ、飲食スペースなどを新設します。そして、魔術書保管室も増設いたします。』
やはり、力のある人は違います。たかが引っ越しで図書館の別館を作ったり図書館を広げたりするなんてスケールが違います。私の家なんて、引っ越し祝いはケーキだけだったのに。
私のような、下っ端普通悪魔には関係ないと思いつつ最後まで読むことにしました。
『募集要件 魔術書管理技能検定1級免許 魔法図書司書資格 を有する者。
人型悪魔であること
仕事内容 館内の清掃等 図書の整理及び管理 館長の世話
備考 紅魔館の住み込みでの業務となります。また、メイド業務の研修があります。
制服は支給されます
給与 月 レミリアお嬢様の気分次第 気分次第でボーナス有
空気がきれいで美しい庭があります。レイクビューの美しい館で働きませんか? おいしい食事、清潔で美しい私室。レミリア様をはじめとするやさしい上司ばかりです。アットホームな職場ですよ。あなたのスキルをいかして、ワンランク上の人生を
連絡先 紅魔館人事部 紅美鈴 ○○○―×××―△△△△
住所 幻想郷紅魔館人事部』
私には、一つ自慢できることがあります。それは魔術書管理技能検定の1級免許を持っていることです。まぁこれは運よく取れただけで、まったくもって実力じゃありません。入学後なんの授業をとればいいのかわからなかった私は仕方なく学生課に相談しました。学生課のおじさんが言うにはみんな1級免許の講座をとっているらしいので取ることにしました。後々、授業が始まってからわかったのですが学生課の人は間違えていました。あのクソじじいめ、呪ってやる。呪いなんて出来ないけど、気持ちだけは呪います。1級の免許に同じ学部の子なんて一人もいませんでした。それどころか、生徒すらほとんどいませんでした。回を追うたびに参加者は減り、最後は私だけになっていました。やめようと思いましたが、どうも教授がかわいそうで最後まで受けることにしました。結果、マンツーマンレッスンのおかげでまあまあ難関といわれる1級の資格をもらいました。
私は人型の悪魔ですから、参加要件は満たしています。採用かどうかは置いといて、私の夢とは少し外れていますが良くないですか? 美しい湖と庭と森、かっこいい城、メイド服いいです。しかも、大学生活が無駄になりません。
住み込みですから愛しの家から離れますが、そろそろ親の目も怖いので自立しようではありませんか。小悪魔一世一代の大決断。よろよろ歩き始める 希望へ向かって 捨てたのだ 惰性の安息を。
最近読んだ本にこう書かれていました、「明日から頑張るんじゃない、今日、今日だけ頑張るんだっ、今日を頑張った者、今日を頑張り始めた者のみに、明日が来るんだよ」そうです、善は急げです。さっそく応募します。
なんと、一次審査は合格でした。来ました、運が巡ってきています。二次審査は面接です。幻想郷までいかなければなりませんが、そんなこと大きな夢の前には些細なことです。
私は魔界の洋服店でちょっと高めのいい服を揃え、髪形もちょっと高めの美容院でセットしました。ここで落ちるわけにはいきません。夢の城暮しを手放すわけにはいきません。
勝ったらどうするじゃない、勝たなきゃダメだ。これも最近読んだ本の言葉です。あの本面白かったです。私はあんなにクズではありませんが。ともかく、面接を成功させなければいけません。通信講座でマナーも学びました、ペン字講座も受けました。いまの私は今までの小悪魔ではありません。いうなら 大・小悪魔 です。うん?これ中悪魔かな…。
さぁ、つぎの面接を受けるのは私。まず、深呼吸。こーーーあぁーーーー。よしいける。
「次の方~」女性の声が聞こえました。
まずはノック。コンコンコン三回。家で一日百回、トイレのドアで練習しました。失礼はありません。美しい音が室内に響いたはずです。
ガチャ「失礼し「どうぞ」ます」
あ、まずい。勢い余って開いてしまった。うわぁ、初っ端からミスです。ですがここで狼狽えてはいけません。ここから卍解です。金色足そg…違う違う。ここから挽回です。
「△△大学から参りました。×××です。本日は面接の機会を与えてくださりありがとうございます。失礼します「どうぞお掛け…」あっ…」
一人で面接練習したのが祟りました。面接官から言われるなんておもってもいませんでした。くっ、この大・小悪魔を惑わすとはこの女なかなかのやり手だな。私はそのやり手の面接官を見つめました。紅い髪のロングです。西洋風の顔立ちではありませんが、目は大きく鼻も高くなかなかの美女です。しかし、同じ赤髪では私に軍配が上がりますね。なんたって大・小悪魔ですから。顔は勝ったので目線をすこし下げました。そこにいたのは魔物、メイド服がはちきれんばかりの巨乳。ちっ、こればかりは小悪魔負けました。あれは反則です。
とりあえず、まだ二度の失敗です。仏の顔も三度まで。まだ挽回できるはずです。
「それでは面接を始めます」赤髪のメイドさんは言いました。
「まずは自己紹介をお願いします」
私が自己紹介を言おうと息を吸ったその時、突然奥から声が聞こえました。
「あーもう、こう凄いやつこないの? どいつもこいつも同じことばっか。だめだめ、あんたさっきのやつみたいなんじゃ不採用よ」
私は少し体をずらして奥を見ました。うすいカーテンがあり、はっきりとは見えませんが奥にはいかにも王様が座るような椅子にちびっこが一人、その隣に紫色の人影が一つ。
「いい、あんたがどうしても採用されたいならわたしが雇いたくなるような何かをみせなさい」
「レミィ あなたが雇う訳ではないのよ。私の使い魔を選ぶの、わかっているかしら?」
「もちろんわかっているわよ パチェ けれど、ここは私の城なの。私の気に入らないものは埃一つでも入れさせないわ」
「なら、いい加減自分の部屋の掃除をしたら? それともあの散らかったゴミがお気に入りなのかしら? 王は王でもゴミ山の王は友人にはなりたくないわ」
「私の部屋は特例よ、特例。掃除は気が向いたらなの。そういうパチェだって図書館の整理ができないから使い魔を召喚するのでしょ?」
えー小悪魔、混乱中です。面接官は一向に奥の二人を止めずにニコニコしています。おい、止めろよ。しかし、この小悪魔重大な事実を聞きました。あの少ない会話から、真実を探り当てる小悪魔さんカッコいい! あの紫はこう言いました レミィと。つまりきっと、あのちびっここそ偉大な吸血鬼様 レミリアスカーレットなのでしょう。そして、隣にいるのが百年を生きた魔女パチュリーノーレッジなのでしょう。もっとしわくちゃのおばちゃんかと思っていましたが、声色から推測するにかなり若そうです。となると、目の前の赤髪さんは紅美鈴さんに違いありません。これで大体の紅魔館像はつかめてきました。
そうこう思案していると、前の美鈴さんが口を開きました。
「お嬢様方~ 面接終わらなくなっちゃうので進めていいですか?」
さすがメイドさん。この緊迫した空気を打破してくれました。これは後に思ったのですが、美鈴さんのメイド服姿なんてこれ以来、見たことがありません。目に焼き付けるべきでした。
「いいわ、どうせこいつもたいしたこと言わないだろうし進めなさい」
「そうね私もそろそろティータイムがしたいから進めましょう」
「そんなかんじなので、改めて自己紹介をお願いします」
こいつら…私は人生を掛けてきたんだぞ!! もうちょっと真剣になれよ!! あと、あのちっびこなんて言いやがった? 大したことない? この私が? 飲み会ではようと鬼絡みで恐れられたこの私がたいしたことないだと 頭にきました。久しぶりにこの小悪魔の本気をみせてあげようではありませんか。とびっきりの自己紹介をたたきつけてやります。
「私の名は、ルシh…おっとまずい。私の真名(マナ)を言いいそうになったわ。コホン失礼、私の名前 そうね小悪魔とでもしましょう。それで、魔界にいる星の数ほどいる悪魔の中からわたしの運命の糸を引いたのはだれかしら? 数ある運命そうフェイトの中から、わたしを選ぶという真実の選択をしたあなたはすばらしいわ。運命を操っているのかともおもえるこの奇跡。この奇跡はどこぞのちゃちゃな聖人の起こすような雑多な奇跡ではない。これはまさに二つの背反するパラレルワールドが同じ運命のもとに収束するかのような奇跡。私の経歴を見て驚かないで。それは仮初の経歴。真の経歴は偉大なる魔女との契約により解き明かされるの。私の真の力は赤い月の儀式によって秘匿されているの。私の力はあまりに強大ですべてを封印するには非常に大きな力が必要だった。いまではその力は盲目にして白痴の王アザトースによって失わされた。けれど、赤い月の…「もう結構です」眷属が」
やった、やりきった。普通の自己紹介も考えていたけれど、普通ではダメといわれてしまっては私が中二の時から考えていたこの自己紹介をするしかないでしょう。途中で切られてしまったが、あれだけ言えれば十分です。私の悪魔的魅力、悪魔的知力、などなど様々なスキルが見せつけられたに違いないです。もう、雇う以外の選択肢があるでしょうか?いいえありません。内定間違いなし。小悪魔嬉しすぎて作詞した曲も朗読したい気分です
自己紹介を言ったあとの余韻が少し覚めて面接官をみると、青ざめています。どうしたのでしょうか。体調でも悪いのでしょうか。
辺りはまだ自己紹介で放った私の渾身のポエムの余韻に浸っているので静寂です。それもそのはず、中二から今の今まで推敲に推敲を重ねた最高の自己紹介ポエムなのですから。
どっぷりと余韻をかんじた後、奥のちびっこが口を開きました
「あなた、採用」
「レッ!!レミィ!! あなた馬鹿なの?こんな頭がお花畑みたいなやつ雇えるわけないじゃないの」
「聞いたか パチェ 彼女の力は赤い月の儀式によって秘匿されているのよ!! あと真名だったかしら? 彼女、ルシって言ってたわよね? きっとルシファーだわ。堕天使の
いい、すごくいい。決定よ。決定。この子に決めた」
「もうなんでもいいわ(絶対にウソだし、アザトースとかありえないじゃん。)」
私はこうして、紅魔館に就職となりました。蒸し返されたくない、最悪の黒歴史を背負って。
けれど、夢はかなえられました。それと同じくらいの犠牲を払って。
その数年後、赤い月の日私はまた蒸し返されるのであります。紅霧異変、そう赤い月の儀式によって私は真の力が解放される予定でしたがもちろんそんなものは起きず、巫女にはぼこぼこにされ魔法使いには丸焼きにされました。
でも、わたしはあきらめません。あきらめずに夢を追いかけたら叶ったのですから。
祈り続けたら真の力が解放されるかもしれません。あきらめません、叶うまでは。
普通に求人を大学に出してる、仕事内容に「館長の世話」とかしれっと書いてる、クソ怪しいPR文章を考えた美鈴、こあの自己PRでレミリアが好きそうとか思ったらマジに採用など、単純に面白かったです
なんで大学生にもなって中二病が治療されてないんだ……
続編をぜひ希望です。
それと福本顔の小悪魔を想像してしまいました…
文章のテンポの良さって、やはり偉大ですね。
面白かったです!