Coolier - 新生・東方創想話

八椛鏡ノ裏

2015/05/07 02:51:36
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いつかのはなし

『暗い嵐の夜だった。
 山の木々は風でざわめき、雨が家々の屋根を打ち鳴らす。
 雷光は暗闇を照らし、容赦なく雷がどこかに落ちたり落ちなかったりしていた。

 ボカーン!
 ボカーン!
 ボカーン!
 ボカーン!』

「ひどい」

呟きは彼……椛のものだ。何がって、この日記の出来である。
もしこれが小説だったとすれば、なんてひどい内容なのだろうか。
だいたい出だしからして上手くない。一読しただけで出版社に「頼むからもう送ってくるな」と断り状を送られるレベルだ。
幸いというべきか先のは日記であり小説ではないのだから、読む者は書いた本人以外基本的にありえないので問題にはならない。……はずだ。
それで、先のが小説ではなく日記である以上その日の事実を捉えてなければ妄想夢日記になってしまうのだが、
意外なことに描写としては間違っていなかった。雷雨に嵐。それがその夜の山の様子である。
もう秋だというのに梅雨か何かのように雨が降りはじめ、仕事を早い目に終わらせて自室で日記を書いていたというのが椛の今の状況であった。
が、自分の文才の無さに嫌になって寝床に転がる。
傍らには将棋盤。誰か挑戦者が来た時に応えられるように出しっぱなしにしているのであった。
しかしこんな日では自分に挑もうなどという人物もいるはずもなく……と、そこまで考えた時であった。
ドンドンと扉を叩く音がする。聞き間違いかと思ったが、再度扉がノックされた。
こんな夜更けに豪雨の中扉を叩くのは誰だろう?
そんな歌劇のようなことを考えながら玄関へ走り、扉を開くとそこには一人の狐が立っていた。
正確には……いや、正確なことは言えないのだが、白い狐の面をかぶった黒い髪の……少年?少女?であった。

「こんばんは。申し訳ないけど少し雨宿りをさせてもらえるかな?」

これまた男女どちらとも取れる声色で目の前の狐はしゃべった。意外にも大人びた口調で。
妖怪の見た目は年齢と必ずしも一致しない。であれば目の前の子供は椛よりも長く生きている誰かである可能性もある。
いずれにせよ……

「ええどうぞ。大変でしたでしょう」

断るだけの理由を椛は持ち合わせていなかったため、快くその不審者を招き入れた。
もとより道場破りのように対局を求めて知らない相手が次々来る家なのだ、いまさらどうということはない。
その天狗は、永桜末那(とさくら まな)、と名乗った。

「呼びにくかったら常若さんとでも呼んでね」
「そっちのほうが呼びにくいですよ。永桜さん」

聞きなれない名だ、と首を傾げる。
見た目も不思議なら、名前も不思議なものになるのだろうか?

「じゃあ末那でいいよ。おにーサン。それと名乗る必要はないよ、犬走椛君」

そして当然のように、末那は椛の名前を口にした。教師が生徒の名前を呼ぶような響きだった。

「ご存知なんですか」
「まあ、おにーサンは有名人だからね。剣の腕はさておき、将棋の腕は他の追随を許さない白狼天狗がいるって」
「できれば後半だけであってほしいのですけれどね」

知らない相手にそのように認識されているというのは、正直苦笑を禁じ得なかった。
が、事実なので仕方がないし、文句もない。

「だけど、剣の腕もなかなか侮れない。決して負けることはないそうじゃないか」
「逃げ足が速いだけですよ」
「いやいや、生き残る能力というのはそれだけで大事だよ。
 指揮官……とまで言わずとも、軍師だったら重宝しそうだね」
「褒め言葉として受け取っておきます」

謝意を述べながらも、まるで査定をされているようだと椛は感じていた。
この天狗は一体何者なのだろうか。見たところ鴉天狗ではないようだが。

「ところで常若さん」
「……」
「どうしたんですか?」
「いや、本当にそう呼ばれるとは思わなかったので……」
「じゃ、なんでさっきそう呼んでって言ったんですか」

ともかく。

「いくつか質問してもよろしいですか」
「するだけならね」

できれば答えてください、と前置きして椛は切り出した。

「失礼ですが。男性ですか、女性ですか」
「見てわからない?……冗談だよ、構えないでくれ。そうだね、生物学上は女になるのかな」
「それで十分です。フェミニストを気取るつもりはありませんが、女性を相手にするのであれば相応の態度が必要ですので」

言いながら、椛は居住まいを正した。
年上の女性の相手は慣れているが、夜の自室で二人きりというのは意味もなく緊張を促した。何の意味もないけれど。

「次に……私は茜部隊所属なのですが、末那さんはどちらの部隊なので?」

質問と同時に兜巾の色を目で確認しようとして、末那が何もかぶっていないことに気づいた。
兜巾の色は所属の部隊名と一致するため、それで目安になるのだが……。

「あーごめん。それはちょっとね、答えられない」

口元に(面をつけてはいるが)人差し指を立てて答えられない、という仕草をしてみせた。
所属を明らかにできない、というのは決して理にかなわないものではない。
隠密、諜報、そういうのに所属している可能性があるのなら、所属を秘匿する必要はある。
とはいうものの、そういう場合は「所属を隠す」ことが諜報部隊であることを意味してしまうので、仮の所属ぐらい用意してありそうなものだが……所属そのものが答えられないというのはどういうことだろう?

「そうですか」

あまり深くは詮索しないことにした。女性に根掘り葉掘りものを聞くものではないな、と。

「では……その仮面には何か意味が?」
「外してくれとストレートに言わないあたりが優しいね」

しかしながら、椛にとってはそれは別に優しさではなかった。
単にそうしたほうがいいと思ったからだ。彼女にしてみればそれをこそ優しさと呼ぶのかもしれないが。

「意味か。意味なんて特にないよ」
「意味もなく仮面をつけてらっしゃる?」
「たとえばこれがファッションだったらそこに意味はいらないでしょう?」

白い狐の仮面をファッションでつける者がいるとは思えないのだが。
しかしそういう好みというのは人それぞれであるがゆえにどうとでも言えてしまう。
ならば。

「ではお尋ねしますが、その仮面を外していただけますか?」
「いいよ。でもタダでとはいかないな」

そう言って、末那は椛の後ろにあるものを指さした。
「『将棋の腕は他の追随を許さない』……君のその腕前を見てみたいな、おにーサン。
 君が僕の顔を見たいというように」
 
将棋盤。それが、その指の先にあるものだった。
「勝負に勝てば、外していただけると?」
「そうだね。でも、常勝不敗の君が言うとやはりぞっとするね。僕は弱いんだ
 で、本命通り君が勝ったら顔だけじゃなく、僕の渾名を教えてあげる」
 
それは……落差というか、期待値、偏差値、そういうものがおかしいのではないだろうか。
ただ、気になった。

「渾名?」
「そ、渾名。僕をよく知ってる子はそれで呼ぶんだよね」
「常若さん、ではなく?」
「あー、あんなのは方便……じゃない、冗談の範疇だよ」

所属を隠しながら、そういう情報を開示してもらえるというのは興味を惹かれた。

「いいでしょう。その勝負、お受けします」
「ありがと」

勝負は一本きりの真剣勝負。駒振りの結果、先手は末那となった。

「先手必勝、って言うけど。さてその『必ず』は一体どこから来たんだろうね」
「それは剣の話でしょうね、将棋に必ずはありません」
「おにーサンがそれを言うかなー。一度も負けたことのないという君が」

笑いながら末那は歩を動かした。
そうして、椛は盤面を観測する。
己の指す手、相手の返す手、その行き着く先、その全てを。

「君は……」

末那が息を呑む。それほどまでに、鬼気迫るものを椛は纏っている、
必ずはない、とは言ったが。椛は今回もいつもと同じように、自分が勝つパターンを見出した。
そうして、めまいと頭痛を抑えながら、それに従って駒を動かす。

「……大丈夫?」
「見ての通りですよ」

否定も肯定もそこにはなかった。大丈夫かどうか、なんて椛にはわからない。
ただ一つ言えるのは、彼はどうあろうとも勝ち続けるということだった。

「行きますよ」

そう前置きして手を動かす。ここから先は、未来の選別だ。
見えている光景のうち、どれに当てはまるか……
それに応じて、指す手を決めるだけ。

「……じゃあ、こっちを」
「はい」
「えっと……これかな」
「はい、ではここです」
「容赦ないね……」
「そちらですか、ならばこうで」
「もう少しゆっくりでもいいんだよ」
「これが私のペースですから。どうぞ」

末那が長考の末ゆっくりと駒を動かすのに対し、椛は瞬時に手を返す。
一手ごとに脳裏の未来は少しずつ欠落し、残されたものに従った光景が実際に盤面に展開されていく。
全てが予定調和、全てが予測可能。
だけれども、椛はそれをつまらないとは思っていなかった。

「急いでるように見えますか」

よく、対局相手から言われることを椛は自分から問うた。

「とてもね。対局を始めた途端、生き急いでいるみたいにすら見えるよ」
「そう見えるのなら、そうであるのかもしれません。私は、私のペースで動いているだけですけど」

そう椛は苦笑した。彼は決してせっかちな方ではない。
ただ将棋のことになるとムキになる一面はあるのも事実だった。

「じゃ少し話でもしようか」

そう切り出したのは末那の方だった。

「棋士としての君はいま見ている通りなのだろうけど、剣士としての君はどんななのかな」
「それは苦手な分野の話で動揺を誘う作戦ですか?」
「というわけでもないけど。おにーサンはこの山を守る者として、この山をどう思っているのかなって」

柔和な笑顔を思わせる、しかし韜晦を許さないような口調で末那が補足する。

「ああ、なんだ。そういうことなら……」

一息ついて。

「愛しています」
「――――――大きく、出たね」

意外な答えを聞いた、とばかりに末那が息をのむ。

「私は剣士としては二流、きっと三流以下ですけど
 でも、白狼天狗の家に生まれて、育って、生きて、ここにいる。
 他の世界を知っているではありません。けれど、ここは私の住まう世界です。
 嫌いなわけがない」
「嫌いじゃなくても、愛するとまでいくものなのかな?」
「ですよ。仕事仲間の皆と木々の中を駆けたり、
 家族と木陰で話をしたり、友人と川で戯れたり。
 そんな日々を過ごす世界が、私は大好きです。
 誰にもそれは負けるつもりはありません」
 
末那はその言葉に指す手をすっかり止めていた。椛はそれを咎めることもなく、寂しげに締めくくる。

「それだけに……その行く末を見届けられないのが、残念でなりません」
「そう……君はもう、わかっているんだね」

嘆息。それは椛のものだったか、末那のものだったか。

「君の眼がどんなに危険で特殊なものかも。
 何かの間違いで与えられてしまったと言ってもいいくらい」
「ええ、そうなのでしょうね」
「どうして君は指すことをやめないの?だって行き着く先は……」
「死ぬとわかっているからって、生きることをやめますか?
 私にとっては指すことは生きることなんですよ
 この眼をもって生まれたのは不幸なのかもしれない。
 でも、私はこの人生しか知らない。だったら不幸でもなんでもありません」
「勝つとわかっているなら、やるだけ無駄かもしれないのに?」

椛は首を振った。

「無駄なことはありませんよ。結果が見えているとしても過程はいくらでもあります。
 それに自分には見えるだけ。互いが何を話し、何を聞いて、何を感じたかなんてわかろうはずがない。
 だから無駄なことなんてないんです。それに……」
「それに?」
「一人ぐらい、一生全勝のまま指し続けた棋士として、この山に名を残したっていいでしょう?」

長く生きながらえるよりも、太く短く、ただし確かに生きた証を残したいと。
そういう椛の眼に、迷いはなかった。

「そう……君は何も諦めてないんだ。むしろ夢を見ているんだね」
「かもしれませんね。私ほど負けを怖れている棋士はいないのかもしれません」
「命を焼きつくすような生き方は、とても眩しいな」

笑って、末那は自分の手を指した。
そうしてその後、彼らはいろいろなことを話しながら対局を続けた。
椛の家族の話。一人っ子である彼は、しかし可愛い妹が欲しかったということ。
山の話。主に友人の河童と白狼天狗の今後について。
境界にあるという神社の話。当代の巫女に娘が生まれたという噂。
さらに外にあるという世界の話。どのような世界か、椛には想像もつかないと。
そうして、終わる時が来た。

「王手です」
「うん」
「投了なさいますか」
「そうだね。君が退いて、上に報告するように……僕は負けを認めるよ」
「ありがとうございます」

深々と一礼する。どんな対局であろうとも、彼は常に礼節を忘れることはなかった。

「楽しい時間でした……とても」
「僕もだよ。なんでだろうね、負けたのに」
「勝ち負けが全てじゃありませんから」
「でも負けたくないんでしょ」

お互いに笑いながら、盤を片付ける。
不思議なことに椛は末那のことを古くからの友人であるように感じていた。
それほどまでに、彼女の纏う空気は居心地がよかった。

「さて、それじゃ約束だったね……僕の渾名と顔」
「ああ、そうでした」

対局の楽しさに、つい約束を忘れていた。

「一つだけお願い。聞いても驚くなとは言わないけど、態度を変えたりしないでね」
「?……はい」
「それじゃ言うけど。僕は皆から天魔と呼ばれているんだ」
「……………………えっ」

耳を疑った。そして聞き返した。

「て、天魔様って、あああああの天魔様!?」
「どの天魔を指していってるのか知らないけど、うん、まあ、多分予想通りだと思う」

そう言いながら、彼女は仮面を外した。そこにあった顔は、いつか遠くで見たきりの、
天狗の頂点その人であるように見受けられた。
いつの間にか、その背に紺と白という特徴的な色の翼が生えている。
その翼を、見間違えるはずがない。

天魔という存在がそんなに選択肢があるほどいるという話は聞いたことはない。
であるならば、椛の知っている天魔は一人しか居なかった。

「えっ、あ、えと、その……」
「うん、そのままでいいよ。僕はそんな偉いものじゃないから」
「ご冗談を!なにこれこわい」
「怖くないよ」

末那……あらため、天魔は苦笑する。こうなるのがわかっていたからこそ、態度を変えるなといったのに。

「それにほら、証拠なんてないじゃない。僕は偽物かもしれないよ」
「え、あ、そう……ですね。でも、天魔様を疑うなんて、そんなこと……」

畏れ多い、と。椛は否定する。
天魔を騙るなど意味が無い。雲の上の存在であるがゆえに見たことがないという者は多いが、
雲の上の存在であるからこそ、下る罰を考えればそんなことを企てる者はいないのだから。

「ですが、何故天魔様が私のところなどに」
「あっさり信じてくれるんだね、優しいな。
 それはさっき言ったよ。犬走椛という天狗を知りたかったんだ。
 そしてその目的はほぼ達成できたよ。棋士としての君も、白狼天狗の君も知ることができたからね」

無敵の棋士。退却すれど決して負けない、山を愛する白狼天狗。それは噂に違わず、天魔の予想を超えていた。

「その常勝の記録に唯一でも黒星を付けられなかったのは残念だ。
 もしかしたらと思ったんだけど……それができるのは僕じゃなかったようだね」
「もったいないお言葉です」

椛は頭を垂れる。

「ちぇー残念。『初めての人』になりそびれちゃったよ」
「台無しですよ」
「まあ、冗談はさておいて。君の人生を否定はしない。だけど一つ、負け惜しみを言っておくよ。
 君は一つ間違えてることがある」
「……それは?」
「教えてあげない。それはきっと、君を負かすことができる相手が教えてくれるよ」

そんな相手が、という考えが椛の頭をよぎる。それを見抜いてか、天魔はピシャリと言った。

「こーら。いるわけがないと思うのは傲慢だよ。天狗になっちゃいけない。
 愚直で謙虚なのが白狼天狗のいいところなんだから」
「……はい」

深々と、粛々と、椛は己の不覚を悔いた。

「ん、じゃあ、そろそろお暇しよう……」

そう言って天魔は立ち上がろうとして、再び膝をついた。

「とその前に……もう一つ」
「……?」

はて、と首を傾げる。そういえば、先ほど天魔は「ほぼ」目的が達成できたと言った。
それの意味するところは……?

「もう一つの目的、というかお礼がしたい。僕の突然の訪問に付き合ってくれた君に。いいかなおにーサン?」
「はい。なんなりと」
「恐縮しないで。立場抜きで僕は君をお気に入っちゃったみたいだよ。
 だからね……その君の燃えるような人生のうち、ちょっとだけ、一瞬だけ、時間を僕にちょうだい」
「……申し訳ありません、意図が……」
「んもう、鈍感だね!じゃ、僕から貰っちゃうからいいよ」

言うが早いか、天魔は将棋盤越しに椛の唇に口づけた。触れるだけの、簡単な愛情表現。

「―――――――!?!?!?」

目を白黒させて、顔を真っ赤にする椛。

「えっと、あの!?天魔様!?天魔様が今、私に!?
 末那さんが天魔様で、天魔様が女で私が男で!?モーリス・ルブランがヴァン・ダイン!?」
「落ち着いて、意味不明なことになってるよ」
「あう、あうあう……」

その狼狽ぶりを微笑みながら天魔は受け入れた。

「かわいいなぁ。おにーサン、絶対将棋とか真面目な話だとそんな顔見せないでしょう?
 だからね……僕は、そんな顔を見ておきたかったんだ。あ、さっきのはもちろん本気でね」
「いや…………その」
「迷惑だった?」
「とんでもない……夢のようです」

それは事実だった。外した仮面の下の顔は、かわいらしい一人の少女のもので。
立場さえなければ、この「恐縮」という感情をかなぐり捨てて、好意を伝えたくなるようですらあった。

「ただ、立場としてはやはり」
「そんなの、瑣末事だよ。君は白狼天狗と天魔の間に越えられない壁があるとか、自分を不可触民か何かだと思っているのかな?
 だとしたらそれは大間違いだ。本来、天狗は平等なんだよ。
 今、美味しい蜜を吸っている上部層がそう言ってるだけ。
 だからこそ……僕は君を好いていることを否定しないし、君が僕を愛していると言い切ったったことも喜んで受け入れるよ」
「言ってませんよ!?」
「あれーそうだっけー?僕の聞き間違いだったのかな?
 ま、いいや。じゃあ、本当にそろそろお暇するよ」

そう言うと、天魔は微笑んで今度こそ立ち上がった。
彼女が戸口を開けると、雨は嘘のように上がり、月の光が雲間から射していた。

「君に会えてよかった。どうか、その命が燃え尽きるその時まで、輝いていておくれ」

それが別れの言葉。天魔は彼を残し、空へと飛び去った。

残された椛はただ茫然と、突然の来訪者が夢だったのではないかと思いながら、それを見上げていた。
しかし、彼の部屋に残された仮面が、今までのことが夢ではないということの、動かぬ証左となっていた。


椛がその命を燃やしつくしたのは、それからしばらくしてのことだった。
人払いをされた彼の部屋に、ふわりと現れた二色の羽。
それを見た時、彼はああ、その時が来たのだな、と感じた。

彼女は彼を気に入ったと言ったが、やはり彼自身も、彼の言葉通り彼女に懸想していたのだ。
最後の瞬間、唯一愛した女性に看取られながら、生涯不敗の棋士は、妖怪の山から旅立っていった。
はじめましてですか。多分絶対違うでしょう。

はじめこのストーリーは八椛鏡ノ改に入れようかどうしようかと迷ったのですが、
単一の話とすることにしました。
天魔タグではなくオリキャラタグにしたのは、天魔というキャラクターに対する解釈が独自であるがゆえ、です。
さてさて、どう映りましたでしょうか。
一条信太
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コメント



0.40簡易評価
1.10名前が無い程度の能力削除
読者は自分ではないということを全く理解していない。あまりにも酷い独り善がり。
2.90名前が無い程度の能力削除
面白かったです