(ふぅ、今日は一段と冷えるなぁ、今日が非番で本当によかった)
私こと犬走椛は数少ない貴重な非番の日を炬燵に潜って過ごしていた。
(しかし妖怪の山には電気という物が発達していて本当によかったなぁ、こういうところだけはあの山のうさんくさい神様達に感謝せねば)
と思いながら蜜柑が入った籠に腕を伸ばしていると不意に玄関の戸を叩く音がした。
(なんですかこんなわざわざ寒い日に、まさか急に見回りが入ったとかじゃ・・・)
いやな予感がしつつも、厚着を着て戸を開くと
「椛、たしか今日は非番の日ですよね、スキーをやりに行きましょう!」
私の上司、射命丸文が目を輝かせながら言ってきた。
どうやら見回りのことじゃないようなので良かったと胸を撫で下ろしつつもなぜ急に文様が家に来たのかさっぱり分からなかった。
「あー・・・文様?突然人の家にやってきて何かと思えばすきぃ?を誘うとか何なんですか、今日は非番だから家でゆっくりしようと思ったのですが」
「だらしないですねぇ、炬燵で丸くなるのは猫の特権ですよ?犬は喜んで庭を駆け回らなきゃ」
「だからいつも言ってるように犬じゃなくて狼ですよ、いい加減ちゃんと区別してくださいよ」
「早苗さんから聞いたところこの時期にはスキーという物をやるのが風物詩らしいですよ」
「人の話を聞いてください、まぁそれはさておきさっきも言っていたすきぃというものは一体なんですか?守矢の巫女から教えてもらったって事は多分外の世界のことでしょうが」
「さすが椛、勘がいいですね、多分詳しくは知らないであろう椛にスキーという物を一から教えてあげますよ」
「まず玄関だと寒いと思うんで家の中に入ってくださいよ」
「あやや、そういう気配りが出来て椛は偉い子ですねぇ」
貴方は私の親か何かか。
「それではおじゃましまーす」
犬走家 居間
とりあえず文様からスキーなるものを教えてもらった。
簡単に要約すると鉄の板を靴に貼り付けて平らな雪面で滑る運動だという。
「私はいいです、文様一人でどうぞ」
「えええ!ここは雰囲気的に椛も一緒に来る話じゃないんですか!?」
「私はどこぞの天界にいる竜宮の使いじゃないんですから雰囲気なんて読めません、一人で行くのが嫌ならはたてさんでも連れてけばいいじゃないですか」
「いやほら、はたては誘ったらずっと愚痴ばっか言ってて滑らずに終わりそうじゃないですか!」
「そんなこと知りませんよ、とにかく私は今日一日家でゆっくりするのですから博麗の巫女なり白黒の魔法使いなりを誘ってみてはどうでしょうか」
「霊夢さんも魔理沙さんもノリが悪くて付き合ってくれなかったんですよー!」
「じゃあ私もそのノリが悪かった一人って事で、我慢して一人で行ってください」
「そ、それでは椛の非番の日を一日増やしますからどうですか!」
私はその瞬間しまったと思った。
顔は多分真顔のままだったが尻尾を無意識に振っていたことに気づいた。
我々白狼天狗にとって尻尾は感情がストレートに表現される部位であり、尻尾を振るということは喜びの感情を表していることになる。
「あやぁ?椛も非番が増えると嬉しいんじゃないですかぁ?」
すっごく悪い顔してきたぞこの鴉天狗・・・
「・・・ハァ、本当に非番の日を一日増やしてくれるんですね?」
「そりゃあもちろん、この射命丸文一度言ったことは決して捻じ曲げない鴉天狗ですよ!」
うさんくさいなぁ、と思いつつ私は上着を着て文様と家を出ることにした。
妖怪の山 某所
文様とスキー場なるところに着くとそこには一面銀世界の雪の斜面が広がっていた。
「うわぁ、こんなのいつの間に作ったんだか・・・」
「河童達が一晩でやってくれたそうですよ」
河童、恐るべし・・・
「それはさておきさっきの話の中に出てきたスキー板とストックはどうするんですか?」
「それは大丈夫、だってあそこにほら」
と文様が指を指した方向を見ると
「香霖堂出張店 スキー用具貸し出ししています」と描かれた小屋が建っていた。
「香霖堂の店主さんにこの話をしたとき店の奥からスキー用具を取り出してきたんです」
とまぁ他愛もない話をして私と文様は香霖堂の店主からスキー用具(有料)を借り、早速頂上付近に行った。
「さて、頂上に着いたわけですけど実は私も滑り方とか分からないんですよねぇ」
「え、やり方を知らないで私を誘ったんですか?」
「ええまぁ、とりあえず何とかなるかなぁって」
「なんですかそれ、もう色々と無茶苦茶じゃないですか」
文様に愚痴を言いながらこのままくっちゃべってても何も始まらないので先に滑ってみることにした。
微妙なバランス感覚が癖だが真っ直ぐには滑れるようになった。
この調子で曲がろうと右足に重心を置くと、
ボフッ
と私はバランスを崩して雪に突っ込んでしまった、バランスを取るのが意外と難しい。
そういえば文様はどうしただろうと思い先ほどの頂上付近を見てみると、
「椛ー、結構難しいようですかー?」
まだ滑ってなかったようだ。
「そりゃ初めてやることですから難しいに決まってるじゃないですか、ってか文様は滑らないんですか?」
「い、いや私は先に椛の様子を見てから滑ろうかと思いますのでー・・・」
「・・・そうですか、それでは文様、」
とスキー板とストックを持ちながら空を飛んで文様の後ろに回り、
「せっかくなんで文様も滑りましょう、ね?」
と言いながら文様の背中をPON☆と押した。
「あ、あぁぁぁやぁぁぁぁぁぁぁ!」
と勢いよく滑っていった。
「あ、椛さんこんにちは」
「早苗さん、どうも」
どうやら守矢の巫女も来ていたようだ、ちょうどいい、止まり方や曲がり方を教えてもらおう。
「もっ椛、これどうやって止まるんですかぁ!?」
「椛さんと文さんはスキーをしに来たのですか?」
「ええ、私も文様も初心者で、そういえばこれ滑っている途中でどうやって止まったり曲がったりすればいいのですか?」
「ああ、まず止まる方法は足をこう八の字みたいにしてですね、」
と足を内股気味に八の字にした。
「あっ、ちょっ、止まらない!どんどん加速してくぅぅ!」
「それで曲がる方法は始めの頃は八の字のままゆっくりと曲がる方に重心を置く練習をしたほうがいいと思います」
そういいながら実証して見せてくれた。
なるほど、ああやれば上手くできるのか。
「ああああああああぁぁぁぁぁ・・・あ」
ボフッ
「大変参考になりました、ありがとうございました」
「いえいえ、では失礼します」
と言いながら滑っていく守矢の巫女、とりあえず練習してみよう。
私は足を八の字にしながら減速しつつゆっくりと大きく左右に曲がりながら進み始める。
運動神経は多分良いほうなのですぐに慣れていった。
そしてそのまま文様が雪に埋もれたあたりに近づいてゆく。
「文様ー、生きてますかー?こんなところで倒れたら私との約束はどうなるんですかー?」
「も、もうちょっと他の言葉はなかったんですか?」
「守矢の巫女に色々教わりましたからある程度滑れる位には教えますよ」
「大ちゃーん、このソリってのすっごく速いねー!そして止まらないねー!」
「ち、チルノちゃーん、待ってぇー」
閑話休題
1時間後
「ひゃっほーい!気持ちいいですねー!」
と言いながら凄い勢いで滑っていく文様、曲がり方と止まり方を教えただけであそこまでハイテンションになるのか・・・
なんだかんだで滑っているうちに日が沈み始めた。
「今日はこのぐらいにしておきましょう」
「その言い方だと次がありそうですね・・・」
「また来れたらいいですねぇ」
「次の非番は年末年始なんで無理ですね」
「えーいけずー」
「とりあえず今日はお疲れ様でした、私も疲れたし、炬燵が恋しくなったので一足先に失礼しますね」
「はぁ、ではここで解散しましょう、お疲れ様でした」
今日は文様の我侭でスキーという物を始めた、実際爽快感がある物だったが私には向いてないだろう、雪の妖怪なら喜んでやりそうだが。
まぁそんな感じで私の貴重な一日が終わった。
次の休暇こそは一日中炬燵に潜りたいと思う。
私こと犬走椛は数少ない貴重な非番の日を炬燵に潜って過ごしていた。
(しかし妖怪の山には電気という物が発達していて本当によかったなぁ、こういうところだけはあの山のうさんくさい神様達に感謝せねば)
と思いながら蜜柑が入った籠に腕を伸ばしていると不意に玄関の戸を叩く音がした。
(なんですかこんなわざわざ寒い日に、まさか急に見回りが入ったとかじゃ・・・)
いやな予感がしつつも、厚着を着て戸を開くと
「椛、たしか今日は非番の日ですよね、スキーをやりに行きましょう!」
私の上司、射命丸文が目を輝かせながら言ってきた。
どうやら見回りのことじゃないようなので良かったと胸を撫で下ろしつつもなぜ急に文様が家に来たのかさっぱり分からなかった。
「あー・・・文様?突然人の家にやってきて何かと思えばすきぃ?を誘うとか何なんですか、今日は非番だから家でゆっくりしようと思ったのですが」
「だらしないですねぇ、炬燵で丸くなるのは猫の特権ですよ?犬は喜んで庭を駆け回らなきゃ」
「だからいつも言ってるように犬じゃなくて狼ですよ、いい加減ちゃんと区別してくださいよ」
「早苗さんから聞いたところこの時期にはスキーという物をやるのが風物詩らしいですよ」
「人の話を聞いてください、まぁそれはさておきさっきも言っていたすきぃというものは一体なんですか?守矢の巫女から教えてもらったって事は多分外の世界のことでしょうが」
「さすが椛、勘がいいですね、多分詳しくは知らないであろう椛にスキーという物を一から教えてあげますよ」
「まず玄関だと寒いと思うんで家の中に入ってくださいよ」
「あやや、そういう気配りが出来て椛は偉い子ですねぇ」
貴方は私の親か何かか。
「それではおじゃましまーす」
犬走家 居間
とりあえず文様からスキーなるものを教えてもらった。
簡単に要約すると鉄の板を靴に貼り付けて平らな雪面で滑る運動だという。
「私はいいです、文様一人でどうぞ」
「えええ!ここは雰囲気的に椛も一緒に来る話じゃないんですか!?」
「私はどこぞの天界にいる竜宮の使いじゃないんですから雰囲気なんて読めません、一人で行くのが嫌ならはたてさんでも連れてけばいいじゃないですか」
「いやほら、はたては誘ったらずっと愚痴ばっか言ってて滑らずに終わりそうじゃないですか!」
「そんなこと知りませんよ、とにかく私は今日一日家でゆっくりするのですから博麗の巫女なり白黒の魔法使いなりを誘ってみてはどうでしょうか」
「霊夢さんも魔理沙さんもノリが悪くて付き合ってくれなかったんですよー!」
「じゃあ私もそのノリが悪かった一人って事で、我慢して一人で行ってください」
「そ、それでは椛の非番の日を一日増やしますからどうですか!」
私はその瞬間しまったと思った。
顔は多分真顔のままだったが尻尾を無意識に振っていたことに気づいた。
我々白狼天狗にとって尻尾は感情がストレートに表現される部位であり、尻尾を振るということは喜びの感情を表していることになる。
「あやぁ?椛も非番が増えると嬉しいんじゃないですかぁ?」
すっごく悪い顔してきたぞこの鴉天狗・・・
「・・・ハァ、本当に非番の日を一日増やしてくれるんですね?」
「そりゃあもちろん、この射命丸文一度言ったことは決して捻じ曲げない鴉天狗ですよ!」
うさんくさいなぁ、と思いつつ私は上着を着て文様と家を出ることにした。
妖怪の山 某所
文様とスキー場なるところに着くとそこには一面銀世界の雪の斜面が広がっていた。
「うわぁ、こんなのいつの間に作ったんだか・・・」
「河童達が一晩でやってくれたそうですよ」
河童、恐るべし・・・
「それはさておきさっきの話の中に出てきたスキー板とストックはどうするんですか?」
「それは大丈夫、だってあそこにほら」
と文様が指を指した方向を見ると
「香霖堂出張店 スキー用具貸し出ししています」と描かれた小屋が建っていた。
「香霖堂の店主さんにこの話をしたとき店の奥からスキー用具を取り出してきたんです」
とまぁ他愛もない話をして私と文様は香霖堂の店主からスキー用具(有料)を借り、早速頂上付近に行った。
「さて、頂上に着いたわけですけど実は私も滑り方とか分からないんですよねぇ」
「え、やり方を知らないで私を誘ったんですか?」
「ええまぁ、とりあえず何とかなるかなぁって」
「なんですかそれ、もう色々と無茶苦茶じゃないですか」
文様に愚痴を言いながらこのままくっちゃべってても何も始まらないので先に滑ってみることにした。
微妙なバランス感覚が癖だが真っ直ぐには滑れるようになった。
この調子で曲がろうと右足に重心を置くと、
ボフッ
と私はバランスを崩して雪に突っ込んでしまった、バランスを取るのが意外と難しい。
そういえば文様はどうしただろうと思い先ほどの頂上付近を見てみると、
「椛ー、結構難しいようですかー?」
まだ滑ってなかったようだ。
「そりゃ初めてやることですから難しいに決まってるじゃないですか、ってか文様は滑らないんですか?」
「い、いや私は先に椛の様子を見てから滑ろうかと思いますのでー・・・」
「・・・そうですか、それでは文様、」
とスキー板とストックを持ちながら空を飛んで文様の後ろに回り、
「せっかくなんで文様も滑りましょう、ね?」
と言いながら文様の背中をPON☆と押した。
「あ、あぁぁぁやぁぁぁぁぁぁぁ!」
と勢いよく滑っていった。
「あ、椛さんこんにちは」
「早苗さん、どうも」
どうやら守矢の巫女も来ていたようだ、ちょうどいい、止まり方や曲がり方を教えてもらおう。
「もっ椛、これどうやって止まるんですかぁ!?」
「椛さんと文さんはスキーをしに来たのですか?」
「ええ、私も文様も初心者で、そういえばこれ滑っている途中でどうやって止まったり曲がったりすればいいのですか?」
「ああ、まず止まる方法は足をこう八の字みたいにしてですね、」
と足を内股気味に八の字にした。
「あっ、ちょっ、止まらない!どんどん加速してくぅぅ!」
「それで曲がる方法は始めの頃は八の字のままゆっくりと曲がる方に重心を置く練習をしたほうがいいと思います」
そういいながら実証して見せてくれた。
なるほど、ああやれば上手くできるのか。
「ああああああああぁぁぁぁぁ・・・あ」
ボフッ
「大変参考になりました、ありがとうございました」
「いえいえ、では失礼します」
と言いながら滑っていく守矢の巫女、とりあえず練習してみよう。
私は足を八の字にしながら減速しつつゆっくりと大きく左右に曲がりながら進み始める。
運動神経は多分良いほうなのですぐに慣れていった。
そしてそのまま文様が雪に埋もれたあたりに近づいてゆく。
「文様ー、生きてますかー?こんなところで倒れたら私との約束はどうなるんですかー?」
「も、もうちょっと他の言葉はなかったんですか?」
「守矢の巫女に色々教わりましたからある程度滑れる位には教えますよ」
「大ちゃーん、このソリってのすっごく速いねー!そして止まらないねー!」
「ち、チルノちゃーん、待ってぇー」
閑話休題
1時間後
「ひゃっほーい!気持ちいいですねー!」
と言いながら凄い勢いで滑っていく文様、曲がり方と止まり方を教えただけであそこまでハイテンションになるのか・・・
なんだかんだで滑っているうちに日が沈み始めた。
「今日はこのぐらいにしておきましょう」
「その言い方だと次がありそうですね・・・」
「また来れたらいいですねぇ」
「次の非番は年末年始なんで無理ですね」
「えーいけずー」
「とりあえず今日はお疲れ様でした、私も疲れたし、炬燵が恋しくなったので一足先に失礼しますね」
「はぁ、ではここで解散しましょう、お疲れ様でした」
今日は文様の我侭でスキーという物を始めた、実際爽快感がある物だったが私には向いてないだろう、雪の妖怪なら喜んでやりそうだが。
まぁそんな感じで私の貴重な一日が終わった。
次の休暇こそは一日中炬燵に潜りたいと思う。
初心者が下手にスキーをするのは危ないのは良く分かります。私も初めて行ったスキーで止まり方が分からず、盛大にこけた事がありますので。