秋が深まり葉は紅く染まっていく。
ここに来るまでは見たこともなかった色だ。
いや、紅自体はいつも見ているが、紅に染まる景色も良く見るのだが。
その残酷に美しいそれと違い、この紅葉という景色は憂いに似た美しさを帯びている。
ここに来るまでは見たことが無かった、そもそも景色なんか、見ようと思うこともなかった。
なら、そういったものに興味が惹かれるようになった私は変わったのだろう。彼女と同じく、私も変わったのだろう。
「パチェ、パチェー…パチュリー・ノーレッジー!」
ぼんやりと景色を眺めていた私を、彼女が、華美なる吸血鬼レミリア・スカーレットが醒ます。
頬を膨らませ、口を尖らせている。500年を生きた伝説の怪異にも関わらず、その姿はまるであどけない普通の少女だ。
「どうしたの?」
「いえ、少し考え事をしていたの」
表情がコロコロと変わる。
さっきまではムッとしていたのに、今は反応を示さない私を少し不思議がっている。そんな顔を見ると、小さな笑いが溢れる。
そんな私が気に食わなかったのだろうか、また彼女は少し拗ねた顔をする。
本当に良く変わる。
そのどれもが私を惹きつける。
紅葉と違った、紅色。快活で鮮やかな紅。
「ねぇ、レミィ?私達は変わるのかしら?」
唐突な質問に対し、彼女は目を丸くする。
それも束の間、腕を組み、いつもの自信に満ちた笑みが浮かぶ。
たださっきとは打って変わった、艶やかな微笑み。見ただけで人を蠱惑しかしづかせてしまいそうな、私の5倍の厚みを含んだ吸血鬼の表情。
そして言い放つ。
「そりゃあね、変わるさ。
ここに来たことも変化だろう。それが分からないアンタじゃないだろう?」
運命を見通すその紅き瞳が私を射抜く。まるで、全てを見透かすかのように。
きっと、この吸血鬼は分かっているのだろう。
私が何を思いどうしてこんな話をしたのか。この娘はなんでも分かるのだから。特殊な異能なんて無くても、私のことはみんな知っているのだから、この感情も視えているはずだ。
でも何も言ってくれなかった。
「そうね…。くだらないことを聞いたわ。忘れてちょうだい」
だから私は席を立とうとする。なんとなく、その場に居たくなかったから。そう、なんとなくだ。
他意はない。
たが、
「ただね、パチェ」
吸血鬼は話を続けた。
優しく笑いかけながら、宥めるように言葉を加えた。
「私がどれだけ変わろうと、アンタがどれだけ変わろうと、時が移ろいこの景色を幾度も眺めても…、私とパチェは変わらないわ」
いつまでも振り回されるってことね、そう言いながら私は椅子に座り直す。
そして、大きめの本を広げる。
彼女は今どんな顔をしているのだろう。
私は今、どんな表情に変わっているのだろう。
たしかなのは、紅葉とは違う、彼女のような紅に染まっているということだ。
ここに来るまでは見たこともなかった色だ。
いや、紅自体はいつも見ているが、紅に染まる景色も良く見るのだが。
その残酷に美しいそれと違い、この紅葉という景色は憂いに似た美しさを帯びている。
ここに来るまでは見たことが無かった、そもそも景色なんか、見ようと思うこともなかった。
なら、そういったものに興味が惹かれるようになった私は変わったのだろう。彼女と同じく、私も変わったのだろう。
「パチェ、パチェー…パチュリー・ノーレッジー!」
ぼんやりと景色を眺めていた私を、彼女が、華美なる吸血鬼レミリア・スカーレットが醒ます。
頬を膨らませ、口を尖らせている。500年を生きた伝説の怪異にも関わらず、その姿はまるであどけない普通の少女だ。
「どうしたの?」
「いえ、少し考え事をしていたの」
表情がコロコロと変わる。
さっきまではムッとしていたのに、今は反応を示さない私を少し不思議がっている。そんな顔を見ると、小さな笑いが溢れる。
そんな私が気に食わなかったのだろうか、また彼女は少し拗ねた顔をする。
本当に良く変わる。
そのどれもが私を惹きつける。
紅葉と違った、紅色。快活で鮮やかな紅。
「ねぇ、レミィ?私達は変わるのかしら?」
唐突な質問に対し、彼女は目を丸くする。
それも束の間、腕を組み、いつもの自信に満ちた笑みが浮かぶ。
たださっきとは打って変わった、艶やかな微笑み。見ただけで人を蠱惑しかしづかせてしまいそうな、私の5倍の厚みを含んだ吸血鬼の表情。
そして言い放つ。
「そりゃあね、変わるさ。
ここに来たことも変化だろう。それが分からないアンタじゃないだろう?」
運命を見通すその紅き瞳が私を射抜く。まるで、全てを見透かすかのように。
きっと、この吸血鬼は分かっているのだろう。
私が何を思いどうしてこんな話をしたのか。この娘はなんでも分かるのだから。特殊な異能なんて無くても、私のことはみんな知っているのだから、この感情も視えているはずだ。
でも何も言ってくれなかった。
「そうね…。くだらないことを聞いたわ。忘れてちょうだい」
だから私は席を立とうとする。なんとなく、その場に居たくなかったから。そう、なんとなくだ。
他意はない。
たが、
「ただね、パチェ」
吸血鬼は話を続けた。
優しく笑いかけながら、宥めるように言葉を加えた。
「私がどれだけ変わろうと、アンタがどれだけ変わろうと、時が移ろいこの景色を幾度も眺めても…、私とパチェは変わらないわ」
いつまでも振り回されるってことね、そう言いながら私は椅子に座り直す。
そして、大きめの本を広げる。
彼女は今どんな顔をしているのだろう。
私は今、どんな表情に変わっているのだろう。
たしかなのは、紅葉とは違う、彼女のような紅に染まっているということだ。
「雰囲気がある」以上の、SSとしての魅力があると
より良かったと思います。