「人形を作ろう」
それは、思いがけない言葉だった。
とある冬の日、私達秘封倶楽部は部室でいつものようにお茶を飲んでいた
その日は京都でもそれまでで最も寒かったらしく、外出する人も早々見かけなかった。ちなみに、今日は終業式の日。だいたいの生徒は帰ってしまったようだが文化系の一部のでは残っている部活動もあるようだ。
秘封クラブもその一つである。
そんな時、いつもは『こういう時こそ出掛けよう』とか言うあの蓮子が人形を作ろうと言い出したので驚きなのである。
「別にいいけど…なぜにこのタイミングで人形なのかしら」
「今思いついたからよ」そんなものだとは思っていた。
「それで、どんな人形を作るのよ?ウサギ?それともキツネ?」
「自分達のよ」その発想はなかった、蓮子は続ける
「お互いに自分の人形を作るの。そして私はメリーの、メリーには私の人形を渡すのよ」
「それをやってどうなるのよ?」
「お互いに秘封クラブとしての記憶だけじゃなくってものとして残るじゃない、それって大人になってもきっと大切にすると思うのよ」
こうなってしまったからには蓮子は止まらない。
あきらめて手伝うしかなさそうだ
「わかったわ、私の家に裁縫道具があるから一緒に行きましょ」
「うん!」そう頷いた蓮子はとてもうれしげだった
「基本的には勝手に使ってもらっていいから」
私の家に着いたのはもう夕方だった。といってもこの時期は太陽も早く沈むのでそこまで時間は遅くないけども。
「はーい」蓮子の返事が聞こえたのを確認して私はお茶を入れる、いつものことだ。というか部室でやってることと変わらないような…
「蓮子、ここはね…」家の中に教える声が響く
元々私の両親は仕事が忙しいためかほぼ家には戻らない。戻るとしたら
年末年始とお盆に戻るかどうかだ。ちなみに今年は、母は戻ってくると連絡があったが父はわからない。まあ関係ないのだが。
しばらく沈黙が続いていたこの部屋で蓮子が話す
「ねえ、メリー」
「何、蓮子?」
「今年もいっぱいいろんな所冒険して、旅して、遊んだよね」
「…そうねぇ、なんだかんだで忙しい一年だったわね。」
「メリーはさ、大学卒業したらどうするの?進学?就職?」
「わたしはね、就職しようと思ってるのよ。」
「どこに行くの?」
「まだわからない。でも、戦争に巻き込まれている子供達を助けてあげる仕事をしたいわ。」
「そうなんだ、私は…」
「蓮子、そこ縫い方違うわよ。」
年が明けて新学期が始まった。昨日雪が降ったせいでまだ路肩にも少しながら雪が残っている。蓮子と私はできあがった人形を放課後に部室で渡す約束をしていた。そもそも私と蓮子はクラスが違うのでそれくらいしか学校で渡す方法はなかったのだ。
そして放課後…私は蓮子が部室にくるのを待っていた。
「メリー、来たよん」
「ああ、もうお茶入れてあるわよ」
「ふぅ、さてそれじゃ交換しますか」蓮子は言った
「そうね、えーと…これね。はい蓮子」
自分を模した人形を渡すのは若干照れくさかった。
「ありがとう!すごいよくできてるね」褒められるとうれしい物である
「そうかしら、気に入っていただけたみたいでなによりだわ」
「それじゃあ…これは私から。」そういって人形を渡される。
その人形はちょっと作りが粗くて、ちょっと縫い目も粗くて、
だけど何故か、とても心が温まるのである。それは、普通の人形ではあり得ない事だった。
「…どうした、気に入らなかった?」蓮子が訪ねてくる
「いいえ、こんなに心がこもった物をありがとう」
わたしは、笑って返すのだった―
続くかも
それは、思いがけない言葉だった。
とある冬の日、私達秘封倶楽部は部室でいつものようにお茶を飲んでいた
その日は京都でもそれまでで最も寒かったらしく、外出する人も早々見かけなかった。ちなみに、今日は終業式の日。だいたいの生徒は帰ってしまったようだが文化系の一部のでは残っている部活動もあるようだ。
秘封クラブもその一つである。
そんな時、いつもは『こういう時こそ出掛けよう』とか言うあの蓮子が人形を作ろうと言い出したので驚きなのである。
「別にいいけど…なぜにこのタイミングで人形なのかしら」
「今思いついたからよ」そんなものだとは思っていた。
「それで、どんな人形を作るのよ?ウサギ?それともキツネ?」
「自分達のよ」その発想はなかった、蓮子は続ける
「お互いに自分の人形を作るの。そして私はメリーの、メリーには私の人形を渡すのよ」
「それをやってどうなるのよ?」
「お互いに秘封クラブとしての記憶だけじゃなくってものとして残るじゃない、それって大人になってもきっと大切にすると思うのよ」
こうなってしまったからには蓮子は止まらない。
あきらめて手伝うしかなさそうだ
「わかったわ、私の家に裁縫道具があるから一緒に行きましょ」
「うん!」そう頷いた蓮子はとてもうれしげだった
「基本的には勝手に使ってもらっていいから」
私の家に着いたのはもう夕方だった。といってもこの時期は太陽も早く沈むのでそこまで時間は遅くないけども。
「はーい」蓮子の返事が聞こえたのを確認して私はお茶を入れる、いつものことだ。というか部室でやってることと変わらないような…
「蓮子、ここはね…」家の中に教える声が響く
元々私の両親は仕事が忙しいためかほぼ家には戻らない。戻るとしたら
年末年始とお盆に戻るかどうかだ。ちなみに今年は、母は戻ってくると連絡があったが父はわからない。まあ関係ないのだが。
しばらく沈黙が続いていたこの部屋で蓮子が話す
「ねえ、メリー」
「何、蓮子?」
「今年もいっぱいいろんな所冒険して、旅して、遊んだよね」
「…そうねぇ、なんだかんだで忙しい一年だったわね。」
「メリーはさ、大学卒業したらどうするの?進学?就職?」
「わたしはね、就職しようと思ってるのよ。」
「どこに行くの?」
「まだわからない。でも、戦争に巻き込まれている子供達を助けてあげる仕事をしたいわ。」
「そうなんだ、私は…」
「蓮子、そこ縫い方違うわよ。」
年が明けて新学期が始まった。昨日雪が降ったせいでまだ路肩にも少しながら雪が残っている。蓮子と私はできあがった人形を放課後に部室で渡す約束をしていた。そもそも私と蓮子はクラスが違うのでそれくらいしか学校で渡す方法はなかったのだ。
そして放課後…私は蓮子が部室にくるのを待っていた。
「メリー、来たよん」
「ああ、もうお茶入れてあるわよ」
「ふぅ、さてそれじゃ交換しますか」蓮子は言った
「そうね、えーと…これね。はい蓮子」
自分を模した人形を渡すのは若干照れくさかった。
「ありがとう!すごいよくできてるね」褒められるとうれしい物である
「そうかしら、気に入っていただけたみたいでなによりだわ」
「それじゃあ…これは私から。」そういって人形を渡される。
その人形はちょっと作りが粗くて、ちょっと縫い目も粗くて、
だけど何故か、とても心が温まるのである。それは、普通の人形ではあり得ない事だった。
「…どうした、気に入らなかった?」蓮子が訪ねてくる
「いいえ、こんなに心がこもった物をありがとう」
わたしは、笑って返すのだった―
続くかも
2人に幸せが訪れますように…
細かいようですが気になりました