死にたくて、死にたくてたまらなかった。
このまま、死んでしまった方がいっそ楽になれると思った。
臆病な私は、生き続けることが怖かった。
輪に首をかけた。
狭隘な白い館にアリスは住んでいる。
幼少の頃より勉学に励み、魔法使いになりたいと考えていた。そのため、自ら特別な存在であると恃んでいた。
才穎な頭脳はこの地では評判高いものであった。
実際、そうであり、彼女はまわりのどの人間よりも成績が良かった。
まわりの人々からは、頭の良い才媛であると専ら評判であった。
性は、日を追うて高慢になり、碌々たる者と伍することをせず、かといって、己と同じく珠持ちうる者とも伍することをせず
朋友と呼べる間柄は彼女には一人もいなかった。
いつの日か、彼女に悪辣な物言いをぶつける者が多くなり、彼女はそれを怏々としていたが、
独善的選民思想とも呼べる思想を持っていた彼女は、それを虚仮として一顧だにしなかった。
だが、その文句が日毎増してゆくと彼女は遂に食言し、往年の才媛アリスは自身の粗探しを行った。
彼女の自負心は傷つけられ、それが他人からならまだしも、自分で自分を傷つけたので、深い傷は癒えなかった。
しかし、魔法使いの節は折らず、故山を辞し、本格的に修行に努めた。
同輩は幾ばくかはいたが、かねてより高慢な才媛アリスはやはり伍することはしなかった。
同輩もまた率先して彼女と伍そうとせず、別の者と近しくなっていた。
それをアリスは楽しまず、独善的な性格は抑えることができなくなっていた。
また同時に、かつて悪辣な言葉を吐かれ、自身で自身を傷つけたことを回想し、恐怖し、
その同輩と、嫌々ながらも自ら伍することを決めた。
共に切磋琢磨するのも、笑い合うのも初めてであった。
反面、劣等らしく思う者と肩を並べる己に怒りを感じてきた。
これは彼女の選民思想によるものであった。
それでも、彼女は修行を同輩と共に努めた。
数年後、卒業試験でもある捨食の試験を迎えた。
捨食とは、食事と睡眠を魔力で補う術である。これを会得すれば晴れて魔法使いとなり、一覧表に名を連ねることになる。
試験前日に、彼女達は共に魔法使いになることを誓っていたため、この試験、彼女は誠実に取り組み会得した。
しかし、他の同輩達は会得することはできなかった。いや、わざと落としたのだった。
彼女は、激しく詰問した。
同輩曰く、人間に未練があり、人間ならざることへの恐怖からわざと落とした。
彼女はそれを「臆病者」と罵った。
同時に許せなかった。碌々と見下していた連中と肩を並べていた自分を。
同輩達は、彼女の高慢な物言いを激しく詰った。
その口調はかつて彼女に対して悪辣な文句を放った連中と同じものであった。
彼女は、黙ってその場から離れた。
物陰に隠れ、声を忍んで泣いた。
半ば得心行かぬまま節を折ってまで劣等な者と伍することをしたのにこの仕打ち。
屈辱の極みであった。浅はかな自身を憎んだ。彼女の倨傲の性はますます太っていった。
それでも、見事自分が夢にまで見た魔法使いになることができた。
彼女は何年かぶりに帰郷した。しかし、暖かく迎えてくれるものは誰もいなかった。
畏怖嫌厭、白眼視、罵詈雑言が彼女の帰郷を暖かく冷たく迎えた。家族すらも彼女を罵った。
郷党の才媛の居場所はどこにも無かった。郷里の要注意標識に自分の顔が載っていた。
それを目にしたときの屈辱は筆舌に尽くせぬものであった。
どいつもこいつも低俗である故に選民である自分に羨望しているのだろう、と言い聞かせた。
ある日、一人の女が彼女のもとを訪れた。この女はかつて彼女に悪辣な言葉を浴びせたことがあった。
「無様ね。当然よ、明晰な頭脳をもっていたのに、魔法使いなんかになるからよ。教師や医者等の、郷党のための職を奉じておけばよかったものを」
「僻みかしら。無様なのはどちらなのかしらね。下賤な人間は羨望だけしていれば良いわ」
「あなたの高慢で倨傲な物言いは変わらないわね。その上、異類の身に成り果てたのだから、救うのが難しいわね」
「だからなんなのかしら。私は特別だから、今まで一人で歩んできた。これからもそう。一人は慣れているわ。
貴女たちのように碌々に伍することしかできないような無能とは違うのよ」
「その腐った選民思想というか狂疾が自分の首を絞めていることに気づいたら?あなた醜いわ。
それにね、私たちはお互いを無能だなんて思っちゃいない。他人を見下すことでしか自分を保てない臆病者とはわけがちがうわ」
「だまれ!」
彼女は女に対して魔法を使った。女の体は4、5メートル程勢いよく飛ばされ、木の幹にぶつかった後、地面にもたれた。
「ひ、人殺し!!妖怪!殺される・・・。だれか助けて!!!!!!」
声を聞きつけた人たちが集まってきた。彼女は一目散にその場から逃げた。
郷のはずれの森まで逃げ、その中の桃の木に寄りかかって休んだ。
女の言う通り臆病者な自分であった。
朋友と交わらなかったのは、才があると思っていたので、その才を超えられてしまうのが怖かったから。だから、人を見下し、刻苦勉励した。
他人からの痛罵を一顧だにしなかったのは、それを自覚してしまうと心に傷を負うから。結局自覚してしまった。それ故、痛罵は人一倍怖い。
魔法使いになったのは、憧れでもあったし、本気を出さない言い訳が欲しかったからだ。
魔法使いという人間を超越した存在になれば、人間への情けから本気をだすことはしなくても良くなると考えたからだ。
臆病故に本気をだしたくない。本気を出して負ければ立ち直れなくなるから。
だから勉励した。刻苦を厭わなかった。
ひとえに、倨傲な臆病さと、独善な過信である。
これらに板挟みになり、苛まされ、それが狂疾となって、それが正しいと歪んだ思想に発展したのだろう。
なんと愚かなのだろう。
自分は臆病者ではないと過信していた。その過信も臆病な過信であった。
自分は臆病者だ。その証左に、今は人間でない自分に恐懼している。
先ほど、女を魔法で飛ばし、危害を加えた。劣等な存在は自分ではないか。
真実を見抜かれ、逆上して能力を使うとは。魔法使いの風上にもおけない。
彼女は、死を思うた。呪術で使う縄を取り出した。それを桃の木の枝に縛り、輪を作った。
首をかけ、吊った。
意識がだんだんと朦朧としてくる。考えもまとまらなくなり、真っ白になってゆく。
途端に、ブチッと音がして気が付くと目の前には星空が広がっていた。
昇天の最中かと思ったが、それは違い、どうやら縄が切れ、今は地面に仰向けとなっているようだ。
死ねなかった。だが、どうにも安堵している。憤悶に苛まされていない。寧ろ、慙恚の念がある。
生きるのが怖くて死のうとしたのに、死ぬのも怖がっていたと失敗した今気づいたからだ。
思わず笑みがこぼれた。これからどうするか。
事件を起こしてしまったし、起こさずとも居場所なぞ無いし、郷里は出るしかない。
どこへ行こうか。それは、旅しながら考えるか。
瞑想しながら起き上がると、彼女はおかしな点に気づいた。
先程までの森とまるで違う。桃の木が無く、他の木々もまるで違う。
ここはどこなのだろうか。
この後、彼女、アリス・マーガトロイドはここが幻想郷だということに気付くことになる。
目が覚めると時計は既に13時を指していた。
昨日夜遅くまで人形を手縫いしていたからだろう。
魔法使いの特性上、睡眠、食事は取らなくても良いのだが、彼女、アリスは人間と同じように睡眠も食事もとっている。
毎日そうしていると、体がそれに慣れ、人間に近しい習慣になってしまったようだ。
窓を見やると、見覚えのある少女が不安げな顔できょろきょろしていたのが目に入った。
「すいません。道に迷ってしまって・・・」
安堵した顔で話しているのは本居小鈴。鈴奈庵の看板娘である。
「おまけに家に上げさせて頂いて・・・」
「いいのよ、こんなのしょっちゅうだから。ほっとけないもの」
アリスは紅茶を差し出した。
「わぁー、いただきます!!」
「ところで、どうして魔法の森にいたのよ」
「え・・・っと、それは・・・、妖魔本をもっと理解するためには、強くあらねばと思いまして。妖魔強いところを阿求に尋ねたら、
魔法の森をオススメされて」
「だからって・・・。ここは危ないって知っているでしょう」
「でも、そう言われると入りたくなるじゃないですか。私は臆病者じゃないので!」
「・・・臆病者じゃないのね」
「はい」
「ねぇ、あなたに聞きたいことがあるの」
「へ、なんですか?」
「これは、友達のお話なのだけど。その子は自分が臆病でそんな自分が嫌いなの。どうしてあげればいいと思う」
「うーん・・・、でも、自分で自分を臆病だと思っているなら、もうそれは臆病者じゃないですよ。自分で自分の弱さに気付くのって
とても強くなければできませんよ」
「そ、そうなの?」
「そうですよ!ちなみになんで臆病なんですかその人?」
「えーと、たしか、自分の才能を誰かに超えられることが怖いんだって。だから必死で刻苦していたわ」
「なんですかそれ・・・。でも、偉いですねその人、刻苦を厭わないなんて。きっと、本当に才能に富んだ人だと思いますよ。
怖いものに打ち勝つために努力をしたのだと思います。強くて立派じゃないですか!今度褒めてあげてくださいね」
「そうね、今度伝えておくわ」
「紅茶ごちそうさまでした」
アリスは小鈴に帰り道の地図を渡した。
小鈴は深々とお辞儀をした後、帰っていった。
小鈴の言葉が頭を反芻する。
人間らしい生活を続けているのは、妖怪に完全になってしまうのを恐れていたからなのに。
私は本当に強いのだろうか?
強いかどうかは今でもわからない。だから、強くありたいと願う。だから努力は惜しまない。
これからも、ずっと。
このまま、死んでしまった方がいっそ楽になれると思った。
臆病な私は、生き続けることが怖かった。
輪に首をかけた。
狭隘な白い館にアリスは住んでいる。
幼少の頃より勉学に励み、魔法使いになりたいと考えていた。そのため、自ら特別な存在であると恃んでいた。
才穎な頭脳はこの地では評判高いものであった。
実際、そうであり、彼女はまわりのどの人間よりも成績が良かった。
まわりの人々からは、頭の良い才媛であると専ら評判であった。
性は、日を追うて高慢になり、碌々たる者と伍することをせず、かといって、己と同じく珠持ちうる者とも伍することをせず
朋友と呼べる間柄は彼女には一人もいなかった。
いつの日か、彼女に悪辣な物言いをぶつける者が多くなり、彼女はそれを怏々としていたが、
独善的選民思想とも呼べる思想を持っていた彼女は、それを虚仮として一顧だにしなかった。
だが、その文句が日毎増してゆくと彼女は遂に食言し、往年の才媛アリスは自身の粗探しを行った。
彼女の自負心は傷つけられ、それが他人からならまだしも、自分で自分を傷つけたので、深い傷は癒えなかった。
しかし、魔法使いの節は折らず、故山を辞し、本格的に修行に努めた。
同輩は幾ばくかはいたが、かねてより高慢な才媛アリスはやはり伍することはしなかった。
同輩もまた率先して彼女と伍そうとせず、別の者と近しくなっていた。
それをアリスは楽しまず、独善的な性格は抑えることができなくなっていた。
また同時に、かつて悪辣な言葉を吐かれ、自身で自身を傷つけたことを回想し、恐怖し、
その同輩と、嫌々ながらも自ら伍することを決めた。
共に切磋琢磨するのも、笑い合うのも初めてであった。
反面、劣等らしく思う者と肩を並べる己に怒りを感じてきた。
これは彼女の選民思想によるものであった。
それでも、彼女は修行を同輩と共に努めた。
数年後、卒業試験でもある捨食の試験を迎えた。
捨食とは、食事と睡眠を魔力で補う術である。これを会得すれば晴れて魔法使いとなり、一覧表に名を連ねることになる。
試験前日に、彼女達は共に魔法使いになることを誓っていたため、この試験、彼女は誠実に取り組み会得した。
しかし、他の同輩達は会得することはできなかった。いや、わざと落としたのだった。
彼女は、激しく詰問した。
同輩曰く、人間に未練があり、人間ならざることへの恐怖からわざと落とした。
彼女はそれを「臆病者」と罵った。
同時に許せなかった。碌々と見下していた連中と肩を並べていた自分を。
同輩達は、彼女の高慢な物言いを激しく詰った。
その口調はかつて彼女に対して悪辣な文句を放った連中と同じものであった。
彼女は、黙ってその場から離れた。
物陰に隠れ、声を忍んで泣いた。
半ば得心行かぬまま節を折ってまで劣等な者と伍することをしたのにこの仕打ち。
屈辱の極みであった。浅はかな自身を憎んだ。彼女の倨傲の性はますます太っていった。
それでも、見事自分が夢にまで見た魔法使いになることができた。
彼女は何年かぶりに帰郷した。しかし、暖かく迎えてくれるものは誰もいなかった。
畏怖嫌厭、白眼視、罵詈雑言が彼女の帰郷を暖かく冷たく迎えた。家族すらも彼女を罵った。
郷党の才媛の居場所はどこにも無かった。郷里の要注意標識に自分の顔が載っていた。
それを目にしたときの屈辱は筆舌に尽くせぬものであった。
どいつもこいつも低俗である故に選民である自分に羨望しているのだろう、と言い聞かせた。
ある日、一人の女が彼女のもとを訪れた。この女はかつて彼女に悪辣な言葉を浴びせたことがあった。
「無様ね。当然よ、明晰な頭脳をもっていたのに、魔法使いなんかになるからよ。教師や医者等の、郷党のための職を奉じておけばよかったものを」
「僻みかしら。無様なのはどちらなのかしらね。下賤な人間は羨望だけしていれば良いわ」
「あなたの高慢で倨傲な物言いは変わらないわね。その上、異類の身に成り果てたのだから、救うのが難しいわね」
「だからなんなのかしら。私は特別だから、今まで一人で歩んできた。これからもそう。一人は慣れているわ。
貴女たちのように碌々に伍することしかできないような無能とは違うのよ」
「その腐った選民思想というか狂疾が自分の首を絞めていることに気づいたら?あなた醜いわ。
それにね、私たちはお互いを無能だなんて思っちゃいない。他人を見下すことでしか自分を保てない臆病者とはわけがちがうわ」
「だまれ!」
彼女は女に対して魔法を使った。女の体は4、5メートル程勢いよく飛ばされ、木の幹にぶつかった後、地面にもたれた。
「ひ、人殺し!!妖怪!殺される・・・。だれか助けて!!!!!!」
声を聞きつけた人たちが集まってきた。彼女は一目散にその場から逃げた。
郷のはずれの森まで逃げ、その中の桃の木に寄りかかって休んだ。
女の言う通り臆病者な自分であった。
朋友と交わらなかったのは、才があると思っていたので、その才を超えられてしまうのが怖かったから。だから、人を見下し、刻苦勉励した。
他人からの痛罵を一顧だにしなかったのは、それを自覚してしまうと心に傷を負うから。結局自覚してしまった。それ故、痛罵は人一倍怖い。
魔法使いになったのは、憧れでもあったし、本気を出さない言い訳が欲しかったからだ。
魔法使いという人間を超越した存在になれば、人間への情けから本気をだすことはしなくても良くなると考えたからだ。
臆病故に本気をだしたくない。本気を出して負ければ立ち直れなくなるから。
だから勉励した。刻苦を厭わなかった。
ひとえに、倨傲な臆病さと、独善な過信である。
これらに板挟みになり、苛まされ、それが狂疾となって、それが正しいと歪んだ思想に発展したのだろう。
なんと愚かなのだろう。
自分は臆病者ではないと過信していた。その過信も臆病な過信であった。
自分は臆病者だ。その証左に、今は人間でない自分に恐懼している。
先ほど、女を魔法で飛ばし、危害を加えた。劣等な存在は自分ではないか。
真実を見抜かれ、逆上して能力を使うとは。魔法使いの風上にもおけない。
彼女は、死を思うた。呪術で使う縄を取り出した。それを桃の木の枝に縛り、輪を作った。
首をかけ、吊った。
意識がだんだんと朦朧としてくる。考えもまとまらなくなり、真っ白になってゆく。
途端に、ブチッと音がして気が付くと目の前には星空が広がっていた。
昇天の最中かと思ったが、それは違い、どうやら縄が切れ、今は地面に仰向けとなっているようだ。
死ねなかった。だが、どうにも安堵している。憤悶に苛まされていない。寧ろ、慙恚の念がある。
生きるのが怖くて死のうとしたのに、死ぬのも怖がっていたと失敗した今気づいたからだ。
思わず笑みがこぼれた。これからどうするか。
事件を起こしてしまったし、起こさずとも居場所なぞ無いし、郷里は出るしかない。
どこへ行こうか。それは、旅しながら考えるか。
瞑想しながら起き上がると、彼女はおかしな点に気づいた。
先程までの森とまるで違う。桃の木が無く、他の木々もまるで違う。
ここはどこなのだろうか。
この後、彼女、アリス・マーガトロイドはここが幻想郷だということに気付くことになる。
目が覚めると時計は既に13時を指していた。
昨日夜遅くまで人形を手縫いしていたからだろう。
魔法使いの特性上、睡眠、食事は取らなくても良いのだが、彼女、アリスは人間と同じように睡眠も食事もとっている。
毎日そうしていると、体がそれに慣れ、人間に近しい習慣になってしまったようだ。
窓を見やると、見覚えのある少女が不安げな顔できょろきょろしていたのが目に入った。
「すいません。道に迷ってしまって・・・」
安堵した顔で話しているのは本居小鈴。鈴奈庵の看板娘である。
「おまけに家に上げさせて頂いて・・・」
「いいのよ、こんなのしょっちゅうだから。ほっとけないもの」
アリスは紅茶を差し出した。
「わぁー、いただきます!!」
「ところで、どうして魔法の森にいたのよ」
「え・・・っと、それは・・・、妖魔本をもっと理解するためには、強くあらねばと思いまして。妖魔強いところを阿求に尋ねたら、
魔法の森をオススメされて」
「だからって・・・。ここは危ないって知っているでしょう」
「でも、そう言われると入りたくなるじゃないですか。私は臆病者じゃないので!」
「・・・臆病者じゃないのね」
「はい」
「ねぇ、あなたに聞きたいことがあるの」
「へ、なんですか?」
「これは、友達のお話なのだけど。その子は自分が臆病でそんな自分が嫌いなの。どうしてあげればいいと思う」
「うーん・・・、でも、自分で自分を臆病だと思っているなら、もうそれは臆病者じゃないですよ。自分で自分の弱さに気付くのって
とても強くなければできませんよ」
「そ、そうなの?」
「そうですよ!ちなみになんで臆病なんですかその人?」
「えーと、たしか、自分の才能を誰かに超えられることが怖いんだって。だから必死で刻苦していたわ」
「なんですかそれ・・・。でも、偉いですねその人、刻苦を厭わないなんて。きっと、本当に才能に富んだ人だと思いますよ。
怖いものに打ち勝つために努力をしたのだと思います。強くて立派じゃないですか!今度褒めてあげてくださいね」
「そうね、今度伝えておくわ」
「紅茶ごちそうさまでした」
アリスは小鈴に帰り道の地図を渡した。
小鈴は深々とお辞儀をした後、帰っていった。
小鈴の言葉が頭を反芻する。
人間らしい生活を続けているのは、妖怪に完全になってしまうのを恐れていたからなのに。
私は本当に強いのだろうか?
強いかどうかは今でもわからない。だから、強くありたいと願う。だから努力は惜しまない。
これからも、ずっと。
それと凝り固まった者が小娘のしかも実感を伴わない言葉をそう簡単に受付けますかねぇ…。
それはあくまで自分と合わない自分の努力を否定したがっている誰かにとっての自分であり、自分が嫌いな相手に依存することになりますから
依存してる相手や思想に逆らったアリスの悲劇といいますか喜劇といいますか
彼女は周りに精神的な依存した以上周りに合わすべきでしたし、自分を貫くには都合の悪い相手に依存せず自分か自分を貫くのに都合の良い相手に依存すれば良かったんですが
と言っても彼女は健在してるんであながち彼女も間違いじゃない気がします
自分が依存する思想以外は皆臆病に見えるのが人間のサガですが、現実色んな思想や人間がいても健在してるのでどれもそこまで間違いじゃないんでしょう
大事なのは努力する予定を立ててきちんと実行して成果を出すこと、特に生き伸びるという成果と周りの評価という成果を出すことであり依存する思想やコミュ二ティはその時その時での一つの成果に過ぎないと思います
このアリス最大の欠点は思想が正直にもダイレクトに表に出したことと他人の思想を素直にもダイレクトに受け止めてしまったことだと思います
やはりフィルターが大事ですね
相手に合わすために猫を被るという正直にならないためのフィルターと相手の言い分をダイレクトに受け止めない素直にならないためのフィルターが
正直者故の苦悩なんでしょう 嘘というフィルターのない正直者は相手を啓蒙するか自分が啓蒙されるかの選択肢しかなくなる だから正直者だらけなら世の中争いばかりか単一的な世界になってしまう
多様で平和な世の中のためには、強かで素直じゃないが信念のある嘘つきが必要なんでしょう
だからこのアリスは正直者でストイックで魔女なアリスらしいと言えないこともないと思います なんつーかアリスが最もゲスに染める環境において堕ち方を見てるようで下品なキャラ愛を感じます グヘヘ
長くなって申し訳ないですが要約するとアリスのカチューシャを一晩中コトコト煮込んで食べるか一日中クンカクンカするか非常に悩ましいということです
独自のアリスの生い立ちを描いたからこそ、それが幻想郷でのアリスにどう影響して今に至るのかが見えて欲しかったし、
小鈴との関わりもサラリとし過ぎていて、前半で描かれたアリスの内面の深刻さへの解としては、ちょっと弱かったように思えました。
とはいえ、色々と考えを巡らせられる良い作品だったと思います。ありがとうございました。