「十六夜咲夜、ね…」
神綺の食事の支度をしながら、夢子が呟いた。
夢子は今まで幻想郷のメイドの事を気にかけた事など無かったし、そもそも幻想郷にメイドがいる事すら知らなかった。
ただ、ついさっき久しぶりに魔界に来たアリスから、幻想郷のメイドの話を聞いて初めて興味を持つようになった。
アリス自身は咲夜にさほど興味がある様では無かったが、夢子が咲夜と何かと似ているのでつい話してみたのだった。
「でもその人は神のメイドって訳じゃ無いんでしょう?」
「そりゃまあ、そこまで共通点がある事は普通無いと思いますけど…」
黙々と食事をとりながら神とメイドが話し合う。
「私としてはその、十六夜咲夜に会ってみたいんですけどね」
「じゃあ会ってみたら?」
神綺があっさりと言う。
しかし彼女がどんな人間かも知らないのに、馴れ馴れしく話しかけたりするのはかなり無謀じゃないかと夢子は思った。
一応咲夜が「紅魔館」にいるというのはアリスから聞いたので知っている事は知っているのだが、今一つ彼女自身のイメージが思い浮かばない。
もしかしたら滅茶苦茶猟奇的かもしれないし、滅茶苦茶引っ込み思案かもしれないし、滅茶苦茶捻くれてるかもしれない。性格までは夢子も聞いていなかったのでそこは予想するしかない。
それに神綺を放って魔界を出て行く訳にはいかない。神綺だけでは正直心許ない部分もあるからだ。
ただ、いつか咲夜に相見える時が来るのだろうと、何気なく待ち望んでいる夢子だった。
そしてそれから間も無い頃。
神綺も寝ている早朝、夢子は魔界の見回りに出かけていた。
万が一あの時の四人の様な奴らが来ていたら、非常に困るからなのは言うまでもない。
門番のサラに不法侵入者がいないか確認していたその時だった。
「ちょっとここを通して貰えるかしら?」
割り込んできたのは銀髪のメイドだった。…何処かで見た事があるような。いや、見たんじゃない、聞いたんだった。
まさしく彼女はアリスが話していた…
「貴方、もしかすると十六夜咲夜…でしょ?」
「えっ、あ、ああそうだけど…何か?」
何と運が良いことか。こんな所で会えるとは思わなかった。と夢子が一人喜んでいると、いつの間にか咲夜の手を握っていた。
「ずっと貴方に会いたかったの!無理にとは言わないけど色々聞かせて貰えるかしら」
「は、はあ…」
「ゆ、夢子さん…?」
不味い、サラにまで引かれている。というか魔界の者でも無いのに入ってこようとしている立派な侵入者に何を話しているんだ、と正気に戻る。
「い、いや何でもないわ。それより勝手に魔界に入ろうだなんておこがましい事言ってると…痛い目に合うわよ」
決まった…やっぱり夢子さんはこうでなくては。と何とか自分に言い聞かせる。
「…そんなに私に会えて嬉しかった…?」
え、と今更自分の表情に気がつく夢子。
「夢子さん凄く嬉しそうな顔してたよ」
サラが驚いた様な顔で一言。
「なっ…」
「まあ、お嬢様に魔界がどんな物か見て来いって言われただけだし、魔界人も見る事が出来たしもう帰るわ。なんかごめんなさいね」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!別に私はそんなんじゃ…」
呼んでも咲夜は振り向かなかった。いや、そりゃ悪いのは私だけど…と一瞬思った。しかし
もう二度と咲夜には会いたくない、とつくづく思う事になった夢子であった。
神綺の食事の支度をしながら、夢子が呟いた。
夢子は今まで幻想郷のメイドの事を気にかけた事など無かったし、そもそも幻想郷にメイドがいる事すら知らなかった。
ただ、ついさっき久しぶりに魔界に来たアリスから、幻想郷のメイドの話を聞いて初めて興味を持つようになった。
アリス自身は咲夜にさほど興味がある様では無かったが、夢子が咲夜と何かと似ているのでつい話してみたのだった。
「でもその人は神のメイドって訳じゃ無いんでしょう?」
「そりゃまあ、そこまで共通点がある事は普通無いと思いますけど…」
黙々と食事をとりながら神とメイドが話し合う。
「私としてはその、十六夜咲夜に会ってみたいんですけどね」
「じゃあ会ってみたら?」
神綺があっさりと言う。
しかし彼女がどんな人間かも知らないのに、馴れ馴れしく話しかけたりするのはかなり無謀じゃないかと夢子は思った。
一応咲夜が「紅魔館」にいるというのはアリスから聞いたので知っている事は知っているのだが、今一つ彼女自身のイメージが思い浮かばない。
もしかしたら滅茶苦茶猟奇的かもしれないし、滅茶苦茶引っ込み思案かもしれないし、滅茶苦茶捻くれてるかもしれない。性格までは夢子も聞いていなかったのでそこは予想するしかない。
それに神綺を放って魔界を出て行く訳にはいかない。神綺だけでは正直心許ない部分もあるからだ。
ただ、いつか咲夜に相見える時が来るのだろうと、何気なく待ち望んでいる夢子だった。
そしてそれから間も無い頃。
神綺も寝ている早朝、夢子は魔界の見回りに出かけていた。
万が一あの時の四人の様な奴らが来ていたら、非常に困るからなのは言うまでもない。
門番のサラに不法侵入者がいないか確認していたその時だった。
「ちょっとここを通して貰えるかしら?」
割り込んできたのは銀髪のメイドだった。…何処かで見た事があるような。いや、見たんじゃない、聞いたんだった。
まさしく彼女はアリスが話していた…
「貴方、もしかすると十六夜咲夜…でしょ?」
「えっ、あ、ああそうだけど…何か?」
何と運が良いことか。こんな所で会えるとは思わなかった。と夢子が一人喜んでいると、いつの間にか咲夜の手を握っていた。
「ずっと貴方に会いたかったの!無理にとは言わないけど色々聞かせて貰えるかしら」
「は、はあ…」
「ゆ、夢子さん…?」
不味い、サラにまで引かれている。というか魔界の者でも無いのに入ってこようとしている立派な侵入者に何を話しているんだ、と正気に戻る。
「い、いや何でもないわ。それより勝手に魔界に入ろうだなんておこがましい事言ってると…痛い目に合うわよ」
決まった…やっぱり夢子さんはこうでなくては。と何とか自分に言い聞かせる。
「…そんなに私に会えて嬉しかった…?」
え、と今更自分の表情に気がつく夢子。
「夢子さん凄く嬉しそうな顔してたよ」
サラが驚いた様な顔で一言。
「なっ…」
「まあ、お嬢様に魔界がどんな物か見て来いって言われただけだし、魔界人も見る事が出来たしもう帰るわ。なんかごめんなさいね」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!別に私はそんなんじゃ…」
呼んでも咲夜は振り向かなかった。いや、そりゃ悪いのは私だけど…と一瞬思った。しかし
もう二度と咲夜には会いたくない、とつくづく思う事になった夢子であった。