霊夢が初めてその店を訪れたのは去年の冬の事だった。
小雪がひらひらと風に舞う師走の夜、屋台で酒を引っ掛けた後に酔い醒ましがてらとろとろと歩いて帰路に着いているときに見つけた。
はて、こんな店あったかな、と首を傾げつつ、霊夢は風変わりなその建物をじっと眺めた。平屋ばかりが立ち並ぶ里の建物事情の中で、二階建ての造りがまずめずらしい。ひょっこりと頭一つ飛び出した形でそいつは静かに立っていた。
店先には溢れだすようにして水槽が並んでいた。掌に乗るようなものから、大人がふたりがかりでも持ち上げられないだろう大きなものまで、大小様々な水槽がうまい具合に霊夢の腰の高さほどまで積み上げられている。
なにがはいっているのかしらん、と覗き込むと中は随分とさみしいものだった。どの水槽にも魚は勿論、生き物の姿は見当たらない。ただいずれも水は張られ、丁寧に砂利は敷き詰められている。変な店だ。霊夢は改めて思った。
おかしなのは空っぽの水槽だけじゃない。店の軒下には季節外れの風鈴がいくつもぶら下げられており、時折、ちりんと鳴いている。裸電球がひとつ吊るされただけの薄暗い店内をちらりと覗けば、これまた空の水槽たちに混じって、色々な大きさの達磨たちが目についた。
「こりゃひどい」
酔いのせいか、けろけろと笑いながら霊夢は一人ごちた。
果たしてこんな異様で薄気味悪い店に客など来るのか。そのくせこんな夜更けまで開いているとは、なんともまあずれたこと。思いつつ、霊夢はその店の中へと足を踏み入れていた。奇妙さも、ここまでくるといっそ興味が湧いてくる。
中に入って霊夢は気付いた。二階建てだとばかりに思っていたが、どうやらこの建物、上に部屋はないらしい。顔の高さにぶら下がった裸電球の先を追えば、行き着く先は梁がむき出しになったままの屋根だった。
霊夢はぽかんと口を開けて仰いだ。外観のあの高さがそのまま一部屋の高さになっているのだ。当然ながら随分と高い。
店内には外と同様、水槽が積み上げられていた。時に達磨も交えつつ、まるでお城の石積みのように器用に組み合わされて積まれている。それは店の壁に近づくほどに高くなった。霊夢は自分の背の倍はあろうかという位置に積み上げられた大きな水槽を見上げると、ふるりとちいさく震えた。ここの店主は何かの拍子でこいつらが崩れたりすることは考えちゃいないんだろうか。一歩足を引いた。もしもの為に逃げ足を用意しておく。
屋根の梁には裸電球の他に金魚鉢と提灯がぶら下げられていた。紐の長さはまちまちで、中には手を伸ばせば届くような高さまで降りてきている金魚鉢もあった。しかし例によって中身は空である。ただ澄んだ水だけが満たされていた。
赤い色した提灯たちに明かりは灯ってはいなかった。この広い部屋の明かりをちいさな裸電球ひとつがまかなっていた。その電球のコードは屋根の梁へとくくりつけられた後、その梁に沿ってそのまま店の奥へと繋がっていた。
店の奥には襖で仕切られた部屋があった。品物を並べるために広くとられた土間とは一線を画すようにして小上がりが設けられている。一畳ほどのそのちいさなスペースの先に、コードの先が繋がる、襖で仕切られたその部屋がある。
襖の向こうは静かだった。うっすらと開いた隙間の向こうは暗い。行燈のやわらかな明かりも、火鉢の赤い光もそこにはなかった。あるのはただ、深淵のような静かな闇。
今更になって霊夢はぞっとした。こんな遅く、雪がちらつく師走の晩に、一体どうして明かりも暖もとらずに店を開けるのだ。まさか寝てしまっただなんてこともあるまい。あの襖の向こうに人がいるのか。いや、そもそも人なのか。
霊夢はぺったんこのちゃんちゃんこの上から自分の体を抱いた。ぶるりと体が震えた。
ちりん、ちりん、と風がないた。
ふり返ると往来にひとり、じっとこちらを見詰めるものがいる。
そいつは真っ赤な番傘を刺していた。影になって顔が見えない。いや、顔だけじゃない。不思議なことにそいつの体や着ている服までもが全て、のっぺりとした黒で塗りつぶされていた。まるで影そのものがひとりで歩いてきたようだ。思ってから、自分の考えが比喩ではないことに霊夢は気付いた。
音もなく傘を閉じ、滑るようにすうっとそいつは店へと入ってきた。
電球の明かりの下でも、そいつの顔は黒いままだった。そこにはただ深く暗い闇が張り付いているだけ。そしてそいつの足元がまっさらなことに霊夢は気付いた。そこにあるべき影がなかった。
霊夢から少し離れた距離にそいつはとまった。
背丈は霊夢より少しちいさい。着物のようなものを着て、どうやら下駄をはいているらしかった。肩口で切りそろえられた髪がしゃらしゃらとゆれた。ちいさな女の子だった。
――きんぎょ。
どこからだろうか声が弾けた。
鈴の音のように凛としてころころと可愛らしい声だった。
――きんぎょ。
女の子は霊夢を指さした。
「ちがうわ」
霊夢は声を絞り出した。
「金魚じゃない。私は人よ。博麗の巫女」
ひどく震えた声だった。
――どうして。
ややあってまた声がした。
それからどうやら女の子は首をかしげたらしかった。
――どうしてここに。
「わからない。私も一体いつの間にここに迷い込んだのか知らないのよ」
ごめんなさい、と霊夢は頭を下げた。
「お店だと思って入ったの。あなたのおうちだとは気付かなくて」
りん、と風がなく。
それからしばらく沈黙が続いた。
――そうなの。
女の子が訊ねた。「ええ」と霊夢は頷いた。
――そうか。そうね。たしかにすこし、ちがう。
目を閉じて、と女の子は言った。
霊夢は少し躊躇した。
――だいじょうぶ。かえしてあげる。こわくないよ、めをとじて。
霊夢はゆっくりとまぶたを下ろした。それから、ぎゅうと強く目をつぶった。
――いいこ。
うっすらとそんな声が聞こえた。
目を開いた時に飛び込んだのは、見知った自分の家の天井だった。
どうやら炬燵にもぐったままに寝てしまっていたらしい。赤いちゃんちゃんこを羽織った霊夢は眠気眼をこすりつつ、もぞもぞと炬燵を抜け出して上体を起こした。
炬燵の机の上には蜜柑が山盛りになった籠と、半分ほど酒が入ったままの湯飲みがひとつ。師走の冷えた夜だ。温まりがてらひとりきりの晩酌に洒落込もうと燗酒を飲んでいたんだった。
思い出すと、うっすらと頭が痛い。どうやら少し悪酔いしたらしい。
水でも飲んで酔いを醒まそうかとおもむろに立ち上がると、ころん、と何かが落ちた。訝しげに霊夢は眉をひそめ、畳の上に転がったそいつを拾う。
握り拳ほどの大きさのそれは赤い達磨だった。
そうしてなにもかも霊夢は思い出した。
「不思議なことがあるものです」
話をきかせると、ふむふむと早苗は頷いた。
翌日のことである。分社の掃除に訪ねてきた早苗を捕まえて、霊夢は昨晩の奇妙な夢の話を語った。ひとりで抱え込んでいることに少しばかり耐えかねていた時だった。
炬燵に向かい合って座るふたりの間には蜜柑が山盛りになった籠と、熱いお茶が淹れられた湯飲みがふたつ。それから件の達磨があった。早苗はぱくぱくと蜜柑を大いに食べ、お茶を二度もおかわりした。それから達磨を時折指先でつつきながら話を聞いた。それがあまりに自然体だったものだから、話しているうちに次第に霊夢も落ち着いてきて、終いにはいつものようになっていた。
「ねえ、どう思う」と霊夢は訊ねた。
「妖怪かなんかの仕業かしら」
「うーむ」
早苗はうなった。
「そんなにおっかないものじゃない気がするんですよね」
「ふむ。それはどうしてまた」
「勘です」
「この野郎、他人事だと思いやがって」
「いやいやだってなにもされなかったんでしょう?」
「それは、まあ」
「私はむしろ神様に近い気がするなあ」
早苗は言った。「それもセンスがいい神様です。この達磨はなんとも愛らしい」
そうして早苗はころころと達磨を転がした。
「後輩としてぜひとも助言を承りたいものです」
「あんたまだ人間でしょうが」
「現人神ですよう」と早苗はふくれた。
「しかし霊夢さんも人の子だったんですねえ」と早苗。
「そうじゃなかったみたいな言い方やめろ」
「まさか『こわい夢を見たの……』なんて、涙ぐみながら服の袖を握ってくるとは思いませんでしたよ」
「記憶を捏造するな」
「ここはお姉さんとして今夜は添い寝してあげないこともないです」
「いらん」
「てれんなよ」
「てれてねえし」
あの日以来、霊夢は度々夢の中であの店を訪れた。
相変わらず水槽は空っぽで、春が過ぎ、いよいよ夏を迎えるまで、軒先には風鈴がぶら下がっていた。目が覚めると傍らには達磨が転がっていた。訪れる度に数は増えていき、そのうちいくつかは早苗の家へと引き取られていった。
女の子はあまり喋らなかった。霊夢が店を訪ねると、また来たの、と言った。帰る時にはいつも彼女のさじ加減で、目を閉じて、と言われた。達磨の礼を言うと、照れたようにくすくすと笑った。
女の子は多くは店の中にいる。土間にしゃがみ込んで水槽を眺めていることもあれば、小上がりに腰かけていることや、襖の向こうの部屋で座布団の上に座っていることもある。部屋はひどくちいさく、小上がりの倍ほどの広さしかなかった。座布団が一枚あるほかはごろごろと達磨が転がっているだけで、可愛らしかったが、ひどくさみしくもあった。
早苗の言葉のおかげか、霊夢は女の子のことがすっかり怖くなくなっていた。神様みたいだと彼女が言ったことも、最近じゃあながち間違いじゃないように思っていた。女の子には不思議なやわらかさがあった。
夜風が少しばかり冷たい、七月十日のことだった。
寝冷えしてしまわないようにと、ぺったんこのちゃんちゃんこを着込んで布団にもぐると、次に気付いた時には霊夢は通りの真ん中に立っていた。
またか、と思いつつ、とろとろと歩き出す。兎にも角にも、こうしてここに来た以上はまずはあの店へ行かなくてはならない。からんころん、と下駄を鳴らしながら、もうすっかり慣れた道を霊夢は歩いた。
ひとつ、ふたつと角を曲がって、件の店が並ぶ通りに入ると、辺りが不意に明るいことに気付いた。見れば、あの店の明かりが往来まで漏れている。すぐに霊夢はそれが店の提灯の明かりだと思った。あのなんとも言えない独特のやわらかな光はきっとそうだ。しかし、こんなことは初めてである。霊夢は少しばかり足を速めて店へと急いだ。
店に入ると霊夢はすぐに違和感を覚えた。
提灯の明かりが灯っていることではない。なにやらじっと見られているような気がした。
ちりん、と風がないた。
――またきたの。
ふり返ると女の子が立っていた。
「今日はどうしたの」と霊夢が訊ねようと口を開くと、女の子は右手の人差し指を静かに唇に当てた。霊夢は従って、口を閉じた。
――おどろいちゃうから。
女の子はそう言って霊夢の横を通り過ぎた。それからあの裸電球の下で立ち止まると、こちらに来るよう手招きした。
驚かせるとは一体なんのことだろうか。思いつつも、霊夢はなるたけ音を立てないように彼女のもとへ向かった。
霊夢は自分の顔の高さにぶら下がった電球を見た。いくつもの提灯が店の外までその明かりで室内を満たしているのだ。さすがの裸電球も普段よりは存在感が薄かった。人工的なちかちかとした光を発するそいつを、女の子は両手でゆっくりと包み込む。
店の中は少し薄暗くなった。
そうして霊夢は水槽の中に金魚の姿を見たのだった。
しぃ、と女の子は霊夢に念押しをする。
――おどろいちゃうから。
空っぽだったはずの水槽には色とりどりの金魚の姿があった。
掌に乗るようなものから、大人がふたりがかりでも持ち上げられないだろう大きなものまで、大小様々な水槽の中に、金魚がぷかぷか泳いでいる。大きい水槽には大きな金魚が、梁からぶら下がる金魚鉢にはその大きさに見合った金魚が。
ひょろりとしたやつからまん丸いやつまで、飛び出たり出なかったりするくりくりとした目で金魚たちは霊夢をじっと見ていた。
――そとに。
女の子が言った。
霊夢が頷くと、彼女は重ねた両手をゆっくりと開いた。指の隙間から光が漏れていくと、次第に金魚はその姿に影を落とし始めた。やがてまっ黒く影のようになり、裸電球が室内を再び照らし出す頃には、じんわりと消えて見えなくなった。
女の子の後に続いて往来に出ると、霊夢はこちらに近づいてくる者に気付いた。遠くの方に、ふわふわとした丸いオレンジの光がいくつかゆれている。
「どうして貴女がここにいるのですか、博麗霊夢」
閻魔は抑揚のない声で無表情にそう言った。
彼女の傍らには、ほおずきが四つ、内側から蝋燭の火のようなゆらめく明かりを発してふわふわと浮かんでいた。
「あんたこそ、なんで私の夢の中にいるのよ」
「ゆめ?」と閻魔は眉をわずかにひそめて繰り返す。
「なるほど。どうやらほころびがあったようですね」
「ここは生者の来る処ではありません」と閻魔。
「死者の国、冥界です」
閻魔が右手を泳がせた。すう、となめらかに彼女が指先を走らせると、その動きに合わせて通りに並んだ平屋に順に明かりが灯っていく。そうして明かりの満ちた往来には、次第に人や生き物の姿が現れ始めた。
「死者たちです」
閻魔が言った。
霊夢は閻魔の傍らに立ち、彼女の従えたほおずきの放つ明かりの中にいた。死者たちはまるでその明かりを避けるように歩いた。
「じきに向こうはお盆でしょう。迎え火が焚かれるその時まで、彼らはこうしてここで待つのです」
そうして閻魔は再び手で宙を切った。ふっと明かりは消えていき、辺りはとんと暗くなる。通りには霊夢と閻魔、それから女の子の姿しか残っていなかった。
「見えなくなっただけです」閻魔は言った。
「あんたも?」
「まさか」と閻魔。
「閻魔が死者も見れずにどうすると言うの」
霊夢たちは通りを歩き出した。
からんころんと足元で下駄が鳴いた。辺りにはそれきり音らしい音はなかった。
女の子はいつぞやの真っ赤な番傘を刺してついてきた。するすると何かを避けて歩くようにして、彼女は猫のように軽やかに歩いた。
「ねえ」と霊夢は声をかけた。
「あなたも神様なの」
訊ねると、女の子は首をかしげたようだった。
「彼女は神ではありません」
閻魔は前を向いたままそう言った。
「ですがもとは地蔵でした」
「もと?」と今度は霊夢が首をかしげる番だった。
「手を合わす人もいなくなり、風で倒れたきり忘れ去られた地蔵でした。信仰を失い、およそ力もなくして消えかけていたところを私がこうして冥界に縛り付けたのです」
「仏様か、どおりで」霊夢は頷いた。
「彼女にはここで死者の送りと、迎えを頼んでいます」
「あのお店は?」
ああ、と閻魔は声をあげた。
「現世でなにがあったのか知りませんが、彼女には達磨と金魚に少しばかり夢中になるきらいがあるのです」
湯気のように霧が立ち込めてきた。
いよいよ向こうが見えなくなったとき、閻魔が足を止めた。どうやらここが冥界の淵らしい。
「真っ直ぐ歩きなさい。決して振り返らず、ただ前へ。そしたらもうここへ迷い込むこともないでしょう」
「ありがとう」と霊夢は言った。それからくるくると傘を回す女の子の方を見た。
「次に会うのは私が死んだ時みたいね」
霊夢は笑いかける。
「その時はどうぞよろしく」
――こちらこそ。
そう言って女の子は笑ったらしかった。
ある時、山向こうの村へと駆り出されたことがあった。
人間がとうの昔に捨て置いた廃村に、どうやら妖怪たちが住み着いているらしい。そればかりなら構わないが、夜な夜な火を焚いて騒いでおり、なにやら気味が悪い。少し様子を見に行ってほしいと頼まれた。
人がいなくなった家というのはあっという間に崩れてゆく。
かやぶき屋根の家々はどれも半分朽ちかけていて、緑をその身に茂らせていた。田畑は荒れ放題の有り様で、そんな中、一本の柿の木だけがオレンの実を綺麗にこさえていた。季節は秋だった。
廃寺を住まいにして騒いでいたのは狸たちだった。
軽く注意をしてそれで終いにした。あまり騒ぐと狸汁にされてしまうよ、と霊夢が言うと、彼らはそろって体を震わせた。意地悪が過ぎたなと霊夢は少し後悔した。
寺の脇には井戸があった。どうやら狸たちが使っているらしく、傍には水の張られた桶が置かれていた。
流行病か、あるいは妖怪か。村を捨てなくてはならなかった理由はわからないが、ここはどうにも良い村だったように霊夢には思われた。
黄金色した穂を風に躍らす稲でいっぱいになった村を霊夢は幻視した。囲炉裏の煙をもくもくあげる見事なかやぶき屋根の家や、そこに住む人々の姿も。夏には冷たい井戸の水を桶に張って、子どもらが水遊びをしたかもしれない。時には瓜をつけて冷やしたり、あるいは金魚を泳がせたり。
ぺったんこのちゃんちゃんこを風にふわりとなびかせながら霊夢は泳ぐように村を歩いて見て回った。後には、狸たちが列をなしてついてきた。
村の外れにこんもりとした緑の山があった。霊夢の腰の高さほどしかないそのちいさな山は、よく見ると、朽ちて潰れたお堂だった。
狸たちがわらわらとその周りに群がった。
霊夢はすっかり崩れた木製のそのちいさなお堂をひとかけらずつ持ち上げて、丁寧に退けていった。苔むしたり、草が芽吹いたりする腐った木片を取り去っていくと、赤い色が見えた。それはぽっきりと柄の折れた番傘だった。
霊夢はほとんど夢中になって彼女を探した。
およそ場違いな朽ちた達磨を見つけたときには涙がでそうになった。
こんもりとした緑の山の下には倒れたお地蔵さまがあった。石でできたお地蔵様を持ち上げるのは苦労したが、霊夢はなんとか彼女を起こした。
霊夢はしゃがみ込んで手を合わせた。狸たちも真似をした。
目を閉じると、ちりん、と風が耳の奥でないた。
――またきたの。
そう言って女の子は笑ったらしかった。
おわり。
なんだろ、文字が書きたくなった
序盤のちょっとぞっとする感も含めて、きれいなお話でした
きれいな物語で、何か心にくるものを感じました。
とても綺麗な作品でした。
それが襖の奥の闇に気付いた瞬間から一気に寒々しい物へと転じ、
顔の見えない童女の出現でホラーさながらの恐怖へと高まっていくが、
他ならぬ童女自身のやわらかな声で、その恐怖がそっと取り払われる。
こうした始まりから終わりに至るまで、作品全体に漂う空気の移り変わりが流れるように鮮やかで、ごく自然に物語に浸ることが出来ました。
現実における早苗との気楽な会話から安心感を得て、不思議な夢を楽しむようになっていく霊夢の描写も、とても自然だったと思います。
その不思議な夢の正体が明かされてからの別れと、思いがけない再会に至るまで、悲しむでもなく寂しがるでもなく、ただただ穏やかな童女の姿には、確かに道端にたたずむお地蔵様の優しい笑顔が浮かびます。
淡々としていながらも丁寧で柔らかい文章が、そうした空気を作り出しているのでしょう。
個人的には特に、「笑ったらしかった」という表現と、「泳ぐように村を歩いて見て回った」という表現が印象に残っています。
前者は少女の無邪気さとこの世のものならざる存在の遠さとが同居しているようで印象深く、後者は狸たちを引き連れてのんびりと廃村を見て回る霊夢のふわふわとした足取りを想像させてくれて穏やかな気分になりました。
地に足をつけていながらもどこかゆらゆらと漂うような姿は、確かに金魚を思い出させますね。
博麗の巫女や妖怪退治屋ではなく、一人の呑気な少女としての霊夢の魅力が良く伝わってきました。
以上、長々と書いてしまいましたが、ともかく全体に漂う雰囲気が素晴らしく、文章も読みやすい良作でした。
読ませて頂きまして、ありがとうございました。
良い作品でした
何と表現したら良いか分からないのが悔しいのですが、物語中に漂う不思議な空気とふわふわした霊夢がとてもマッチしていたと感じました
素晴らしい時間をありがとうございます
不思議な寂寥感
良かったです
作者さんは音と響きを大事してるのかしら とか?
なんと言うか いちいち 言葉がかわいい
>一本の柿の木だけがオレンの実を綺麗にこさえていた
オレンと呼ぶこともあるの? 私は初めて聞く
こうゆう作品にふと出会えるからそそわはいいよね。つい顔を出してしまう
悔やまれるのは既に簡易評価してしまったこと
素晴らしかった
これはもっと評価されてほしいなあ