――身体は恋符で出来ている
世界は愛から創られる――
【巫女と恋・普通の魔法使いの素敵な恋愛係】
「私、魔理沙が好きなの」
「………………うぇい!?」
それは突然の告白だった。
いつものように箒に乗ってやってきた魔理沙に、何の前置きもなく切り出す。
「好きだったの。ずっと……」
魔理沙は鳩が豆鉄砲くらったよりおかしな顔をしていたけれど、もう私は我慢の限界だった。口に出してしまったのだから、後戻りは出来ない。
「や、ちょ……霊夢?だってお前……その……なんというか、ほら、私はこれでも女のはしくれだぜ?むしろアレだ、ビューティフルレイディだぜ」
言うと思った。
「関係ないわ、そんなこと。私は女の魔理沙が好きだってわけじゃない。魔理沙が好きなの」
魔理沙は真っ赤になって俯いてしまう。
でも、照れてくれているのなら嬉しい。私の気持ちが伝わってくれているなら嬉しい。
まっすぐな本心からの気持ち。
目の前の少女が欲しい。いつの間にか隣に居て、それが当たり前になっていて。たまに些細なことで喧嘩して、気付くとやっぱり隣で笑っている。私よりも小さくて、抱きしめたら折れてしまいそうな体なのに、いつだって何に対しても一生懸命で。壁を越えられなかったら越えるまで努力を惜しまない、幻想郷一の頑張り屋さん。たまらなく愛おしい、霧雨魔理沙という存在。
居るだけじゃなくて、もっとよく私をみて欲しい。話すだけじゃなくて、肌に触れて欲しい。友情じゃなくて、愛情が欲しい。
日に日に思いは増していった。おかしくなってしまいそうなほどに。
この思いを伝えてしまったら、もう元の関係には戻れない。
魔理沙が私の隣から消えてしまうかもしれない。
嫌だ。嫌、そんなのは絶対に嫌。
けれど、今のままじゃ魔理沙に何をしてしまうかもわからない。
それほどに、私は魔理沙を愛していた。
「本気……なのか?」
顔を上げた魔理沙に、もう戸惑いの色はない。
「……」
魔理沙の目をじっと見つめる。
魔理沙の瞳に移った私の顔は、今にも泣き出しそうな、酷い顔をしていた。
「本気……なんだな」
魔理沙はそれだけですべてわかってくれたようだった。
「三日間ほど、時間をくれないか?」
その答えに、拒絶されなくてホっとしたような、しかしやはり魔理沙は私のことを愛していないのではないかと不安になるような二律背反の感情が生まれる。
私は頷き、飛び立つ魔理沙を見送った。
部屋にあがって、少し……泣いた。
「まいったぜ……」
家路の途中……思わずため息が出る。
まだ心臓の鼓動が鳴り止まない。
「いや、まいることもないんだが……しかしなぁ」
正直、よくわからない。
霊夢に好きだといわれて、嬉しかったのは確かだ。
顔に血が上ってなんだかとても恥ずかしかったし、心臓は痛いほどに高く鳴り響いていた。
一般的な“恋”とやらの症状に似ていなくもないが、魔理沙はただ困惑するばかりだ。
「だけど、いままでは普通に……それに相手は同姓で……しかも霊夢……」
しかも霊夢……と言った所でまた顔がほてり始めた。
「何がしかもなんだ?あ~、もう……あ、いや、これは悪いのかいいのか??」
だんだん、血が頭にまで上ってきているようで、まともに考えることが出来なくなってきた。
「あー!よくわからん!!」
速度を上げて、一目散に突っ切る。
とにかく一度家に帰って落ち着いて考えよう。そう、まずは落ち着かなくては。
まだドキドキと脈打つ胸を隠すようにおさえて、一筋の流星が走る。
魔理沙が帰ってから半刻も経っただろうか。
「くすん……魔理沙ぁ」
袖がいい加減びしょびしょになってきたので泣きやむことにする。
「三日かぁ、その間は会えないのかな」
三日魔理沙が来ないなんて別段珍しいことではないはずなのに、なんだかとても寂しかった。
「断られたらどうしよう……」
そのときは仕方ない。拉致って飼おう。
「そうね、第一魔理沙が断るわけないわ。きっと私の愛を受け止めてくれて……「霊夢……じつは私も霊夢のことが……」なんてっ!なんて言っちゃったりなんかして!!あぁ、そしてその晩二人はベッドの中でスイート……マイドリーム・マイラブ魔理沙ぁ(はぁと」
「楽しそうね」
「!?」
スキマがあった。
年増がいた。
「って、誰が年増!!」
「あんただ!このノゾキスキマ!!」
絶妙のタイミングで現れやがって……いや、こいつのことだから初めから覗いていたに違いない。
「ま、まぁいいわ」
霊夢の手に霊符が握り締められたのをみて、紫が一歩退く。
「にしても……霊夢もお年頃なのねぇ……」
「うるさい、何しに来たのよ。人の妄想の邪魔をしないでくれる?」
「……妄想の邪魔をしないでなんて言われたの初めてだわ……人間からは」
妖怪にはあったのか?
「いいから消えて。しっしっ」
「まぁまぁ……魔理沙に会えないのが寂しいんでしょう?」
「……だから何?」
「覗く?」
スキマを開ける紫。その先には魔理沙邸が。
「覗く!!」
即答した。
結局、家に帰ってからも何も考えられなかった。
脳裏に浮かんでは繰り返される、霊夢の告白。
「私、魔理沙が好きなの」
……
「あぁ!!どうしちまったってんだ!?」
恥ずかしさに耐えられずに叫ぶ。
心臓が痛い。
「まさか新手の心臓病か?」
などと馬鹿なことを言ってみる。
いつまで経っても動悸がとまらない。
「とにかく……だ」
とにかく、これから……。
「私は……どうしたらいいんだ?」
わからない。
わからないけど、霊夢は本気だった。
本気のときしか見せない目をしてた。
私を……本気で好きだって……。
「好き……か……恋だなんだって魔砲ぶっ放してる割には考えたこともなかったな」
考え込んでいたうちに、すっかり夜の闇に包まれていた空を窓から見上げ、軽くため息をつく。
「断っちまったら……あいつ、どんな顔するんだろう」
正直、霊夢が悲しんだり、落ち込んだりしてる様な想像は出来ない。きっと、平気な顔して、「ん、そう」だなんて抜かすんじゃないか。
……いや、でも案外落ち込んでくれたりするのかな、ちょっと試してみたい気も……嘘だって言ったら……殺されるか。
っていうかそれが嘘なら好きなのか?
「本当……よく、わからないぜ」
「青い!青すぎる!これが若さよねぇ♪」
「んもう魔理沙ったら可愛いんだからもう♪断られても落ち込むどころか逆に燃えるわよ、私が諦めるわけないじゃない、地の底まで追って追って押し倒すわよ(はぁと」
そんな魔理沙の葛藤をよそに、スキマから覗いていた二人は悶えていた。クネクネと。
「っていうかあんたやっぱり年寄りくさい」
「……」
そして覗き継続。
「あ、みて紫!魔理沙が起きたわ♪あぁ可愛いわまぶたなんかこすっちゃってもう今すぐ食べちゃいたいくらい(はぁと」
「もういいでしょ~?ね、眠い……」
夜通しで覗いてた。
今日は恋とやらについて調べてみることにしよう。
昨日まったく考えがまとまらなかった魔理沙は、まず恋とは何か。そこから調べてみることにした。
そして魔理沙は魔法使いの定番に着替えるため、寝ぼけ眼でぱぢゃまを脱ぎ始めた。
ブシュッ……ピチャ
「ひゃぁ!?な、なんだ!?何か赤い液体が……鉄の匂い……血……か?」
ちゃっかり着替えを覗いていた霊夢の鼻からドピュっと噴出したそれは魔理沙のうなじにジャストヒットした。
「うわ……どうみても血だ。な、なんだ?なんなんだ?」
慌てて紫がスキマを閉じる。
一応死角になるように創ってはいたが、血痕を辿られれば見つかりかねない。
「何やってるのよ、バレるところだったじゃない!」
「紫……私素晴らしいこと思いついちゃった」
霊夢の目が爛々と輝いている。危険だ。
「え……あ、私もう帰って……」
「魔理沙がその……あの行為を始めるときも覗いて同調すればそれはもう一人遊びじゃないわよね?」
「私は何も聞こえない!!なんにも!!じゃあそーゆーことで!!」
ガシ!!
逃げようとした紫の首根っこを折りかねない勢いで掴む。
「紫。これは貴女の協力がなければできないの。っていうかあんたに拒否権はない。あるとすればそれはあんたがこの世から消えるときだけだ」
爛々と。キュピーンとか擬音だしかねないほど霊夢の瞳は輝いていた。
(なんでこんなことに……)
紫は面白そうだからって何でもかんでも首を突っ込むのやめよう……と、人生で初めて思った。
そらもうすごい恐かった。鼻血出しながら首絞めてくる巫女は。
――ヴワル魔法図書館――
「膨大な資料の揃っているここなら、きっとみつかる私の恋♪そうよ私は恋する乙女かっこ疑問」
朝のことは綺麗さっぱり忘れ去って、いつものごとく忍び込む。
霧雨魔理沙・朝のポエムを思わず声に出しながら、目当ての本を探す。
「何言ってるの?」
ポエム聞かれたーー!!
「ぱぱぱぱっぱぱぱっぱっぱパttyリ!?」
「少しは落ち着きなさいよ。で、恋がどうたらって聞こえたけど……」
「なななななんでここに!?いつもならこの時間は小悪魔と優雅に小洒落たティータイムじゃ!?」
「魔理沙の匂いがしたから……」
「匂いかよ!!」
「匂いよ。具体的に言うと体臭……部分的に言えばシャンプーのメーカーは……」
魔理沙は口をぱくぱくさせながらパチュリーの魔理沙の匂い講座(?)を聞いていた。
「そうね……あそこの匂いから察するに……女の子の日は……」
「うぉい!!それどこの匂いだよ!!」
泣いた。
私は一歩大人の階段を強制的にのぼらせられた様な気持ちになった。
「ま、それはそれとして、恋が何?」
「結構重要だぜ、うら若き乙女にとっては……」
匂い……魔女って嗅覚いいのか?……新説だな。
「つまり、恋する乙女の魔理沙がここに来たということは……」
「そうだぜ、恋について調べに……」
「魔理沙の恋する相手が私ってことでいいのね!?」
パチュリーさん大興奮。回る。回るよ。風を巻き起こしながら大回転だ、ハッハーだぁ!!
「私、恋してます!魔理沙に恋してます!!」
言いながら三方向にレーザーを放つパチュリー。しかも回る。
「こ、これはァッ!恋符「ノンディレクショナルレーザー」!!」
……パクられた!?
既に自分がパクったことすら忘れている魔理沙。
「いや、そんなこと言ってる場合じゃない。回るパチュリー。そして恋符……これから導き出される結論は一つ!私は今パチュリーに回りながら告白されているぅ!!」
「さっき普通に言ったわー。私恋してます!」
回りながらパチュリーが応える。
「つまり……恋というのはすなわち攻撃。アタックなのか!?」
「アタックナンバーワーン」
いかん。回りすぎてそろそろパチュリーがおかしくなってきたぜ。
というかレーザー乱射で偉いことになってる。
「よし!……メイド長に見つかる前にとんずらだぜ」
「あ、ちょっと魔理沙!告白がまだ……」
パチュリーが魔理沙に集中……被弾した。
「恋が痛いー!!」
「待って魔理沙……ゲボグハァッ!」
レーザーに直撃して吹っ飛んでいく魔理沙を追おうとしたパチュリーだが、回りすぎて嘔吐した。割と瀕死。
「痛ぅ……油断したぜ……」
どうにか家にたどり着いたが、もう気力がない。ダメだ、今日はもうさっさと寝よう。明日頑張ろう。
夕焼けに、破れた服から露出された肌が照らされる。
グー……
お腹が鳴る。
あぁ、そういえば昼飯食ってないや。紅魔館で馳走になろうと思ってたんだけどなぁ……。
心なしか家の中から良い匂いがする。
戸を開ける。
「あ、お帰り魔理沙。お風呂にする?ご飯にする?それともわ・た・s」
バタン!!
閉めた。
これは幻覚だ。
だって私三日待てって言ったし。
そう、幻覚。
もう一度戸を開く。
「ちょっと魔理沙!ひどいじゃない」
やっぱり見える。
オィこれ幻覚にしちゃリアルだな、霊夢が裸エプロンで包丁持ってるよ。こえーよ、しまえよ包丁。最低でも肌隠せよ。
「魔理沙、ボーっとしてないで早く入ってよ、今日は私が夕飯作ってあげるから」
そう言われてみれば確かにキッチンからいい匂いがする。
「まぁ、とりあえず風呂だ。疲れたし、大分汚れちまったし……」
霊夢に対する突っ込みは後回しにして……というか突っ込み所が多くて今の疲労困憊の私じゃ無理だ。
とりあえず、私は風呂に向かった。
「っはぁ……生き返るぜー♪」
自慢の自家製温泉。現代人の疲れた体も心もリフレッシュ♪風呂はいいね~。
「湯加減どぉ~?」
と、霊夢の声が聞こえた。
「ん~、申し分ないぜ」
「そう、よかった」
すぐ後ろから。耳に息がかかるくらいに。
「わぁ!!」
飛びのいた……確かに霊夢は後ろに居た……ハズなのに。
ガシィ!
飛びのいた先に霊夢がいた。しかも両腕をしっかりとつかまれた。
「霊夢、何で!?」
「何って……背中を流しに♪」
「いやいいから!っつかもう流すの我慢できない、お前に三日待てって言ったじゃん!!」
「我慢できなくって……テヘ」
「テヘいうな!」
……色々揉まれたり洗われたり弄られた。
夕食は既に出来ていた。
魔理沙好みに和の食文化をパーフェクトメイキング。
……風呂に入ってる間はどうしていたんだ?博麗マジック?
「ん……霊夢の味だ」
そこに他意はない。もはや日常の味になりつつあった、霊夢の作ってくれる味だ。
が、人によっては……まれに妖怪によっても、この言葉を聞いて意味を取り違えるアレなものがいる。
「ええ!?そりゃ妄想では味わったり味あわせたりしたけどそれがビバ現実にも影響して魔理沙と既成事実が!!」
霊夢がいつも妄想で魔理沙を舐めたり魔理沙のアレを舐めたりその逆もまた……などと妄想しているのは既に日常茶飯事だった。
「何言ってるんだ?いつも霊夢が作ってくれる味噌汁だろ?」
「……魔理沙はそれを天然で言うから恐いのよ……魔女やらが聞いたら嫉妬の嵐よ?それ」
そりゃ、そうよね……でも近いうちには……ドゥフフフフフ
「?」
「すまなかったな、色々と世話になっちまって」
「いいわよ、別に。好きでやったことだし」
夕食の後、魔理沙は霊夢に礼を言った。
実際、かなり助かった。とてもじゃないが今日は一人では適当なものしか作れなかっただろうし、なんだかんだで風呂では洗ってもらってさっぱりした。(他意なし)
「でもこのベッドじゃ二人は辛いかな」
「……ちょっと待て。まさか泊まっていくつもりか?」
「?何言ってるの、当たり前じゃない」
「当たり前じゃない。どうしたんだ?今日の霊夢は?特に何もないような日にウチに泊まってくなんて珍しい」
そもそも霊夢が魔理沙の家を訪れることが珍しいことだ。大抵は魔理沙の方から訪れるので、その必要もなかったのだが。
でも、私から魔理沙に近づくっていうことが大事なのよ。
そう、もう私なしでは生きていけない体にしてあげるわ♪
というか既に私はそうなのよ。魔理沙と片時も離れていたくない。
「アプローチをね、ほら、もう告白しちゃったし、後は押して押して押しまくろうと」
魔理沙の顔が見る間に赤くなる。可愛い……。うかつにそんな顔見せてると押し倒すわよ?理性切れて。
「と、とにかく!今日は帰ってくれ」
「まぁ狭いベッドで身を寄せ合うってのもいいわね」
「聞けよ……っておい!?」
魔理沙の言を無視して襟首を掴んでベッドルームへと引きずっていく。
魔理沙は必死に抵抗しているようだが、本当に疲れているらしく、障害にはならない程度のものだった。
「ひゃん!」
そのままちょっと乱暴に魔理沙をベッドに押し倒す。
「あの、霊夢?えと……」
乱暴にベッドに押し倒されてすこし怯えた表情で私に顔を向ける魔理沙。うん、これが見たかった。可愛いわねもう♪
しかし……これはまずい。どうにか理性を保て私。ここで今押し倒してしまったら魔理沙に嫌われてしまうかもしれない。一応三日待てって言われてたし。とても疲れてるみたいだし。
「れ、霊夢?」
魔理沙が不安そうに私をみてる。やめろ襲うぞ。いや抑えろ霊夢。ここが正念場だ。ここで魔理沙に腕枕だ、好感度アップだ。私の腕に頭を預けて気持ちよさそうに眠る魔理沙。腕にはここちよい魔理沙の重み、ふわふわの髪が私の顔にかかって……そしてそのままいただきま……。いや抑えろ、頑張れ霊夢。
霊夢の葛藤は魔理沙に覆いかぶさったまま延々と続いていた。途中魔理沙が何か言うたびに一瞬アクションをとりかけるが(唇をたこのように突き出したり、手をわきわきさせたり、なんか濡れてたり)やがて魔理沙は自分に覆いかぶさっている霊夢を気にしながらも眠りについてしまった。
ちょっとどうしてこんな状態で眠れるのよ?……よほど疲れていたのね……。それはともかく今ならチューチューしてもばれないわね。でもいけないわ霊夢。魔理沙の信頼を裏切るようなまねをしてはダメ。起きたら全身キスマークだなんて流石の魔理沙も許してくれないわ……いやまてよ?それなら魔理沙は人前に姿を見せられなくなる……魔理沙からはどこにも出かけられない。つまり魔理沙は私だけのもの。でも……でも……いくら二人だけでも魔理沙に嫌われてしまったら意味がないわ。私は魔理沙の体が欲しいわけじゃない。愛し愛されたいのよ。
……ぁ、私あのまま眠っちゃったんだっけ。
朝の光に、魔理沙の瞼が開く。開いた瞳に最初にうつったのは……。
「いや、でもそこから真実の愛に発展するかも……でもやっぱりだめよ、愛があっってこそそれは幸せな行為に……一回でも一方的には……それにホントに嫌われちゃうかもしれないし……」
昨夜からぶっ通しで魔理沙を襲うか襲うまいか悩み続けて、目を真っ赤に見開いて何かぶつぶつ言っている霊夢だった。
「ヒィイイイイイイイイ!!!!」
眠気はバッチシとんだ。目覚めは最悪だったが。
「な、なぁ、大丈夫なのか?」
目をギラギラさせている霊夢に遠慮がちに聞く?
「大丈夫よ、魔理沙は座って待ってて」
霊夢は朝食を作ってくれている。
だけど、聞けば一晩私を見て眠れなかったらしい。果たして大丈夫なんだろうか?
「あれ?」
そう思った矢先に霊夢がバランスを崩して、倒れる。
「霊夢!」
あわてて支えてやる。
「ごめん、なんかちょっと立ちくらみが……」
「いいから無理するな、私が作るからお前は寝てろよ……な」
心配してくれて、とても優しい顔。
魔理沙は優しい。
「うん……ごめん」
「謝んなくていいって」
そう、優しいのよ、魔理沙は。なんだかんだ言って。
霊夢は魔理沙のベッドに寝ながら、ある作戦を考え付いた。
「つまり、病気になって、なんやかんやのうちに魔理沙に本当の気持ちを確かめる!!」
病気になる為に薬を貰いにいく……なんて変な話だが、あの薬師ならおそらく毒の一つや二つはもっているだろう。
「霊夢、飯出来たぜ♪」
その時、魔理沙が朝食を持って入ってきた。
「立てるか?」
魔理沙に肩を借りて起き上がる。
「ん、大丈夫……ねえ魔理沙」
「ん?」
「あ~んってして?」
ここぞとばかりに甘えてみる。
「ば、ばか!!……そんだけ元気があれば十分だろ。食ったらちゃんと寝ろよ?」
「んもう、魔理沙のいけず~(はぁと」
ちょっと残念だけど……まぁそれは結ばれてからね♪
「よし!」
昼まで休んで、大体調子は戻った。
さっそく壊しに行くわけだが。
「じゃぁ魔理沙!また来るわーー!!」
「え、お前体はもうだいじょ……」
気付いたときにはもう飛び去っていた。
「……まぁもう大丈夫みたいだな……さぁて、結局どうしたものか……」
そしてまた悩む。
「ぴったりなのがあるにはあるけど……」
永琳は突然の来訪者の突然の頼みに、少し渋い声で答えた。
「何か問題でもあるの?」
「秘薬というか……禁薬なのよ、昔、とある宗教で愛を確かめるために使われていた、禁薬。あまり良い結果にはならなかったから禁じられてしまって、もうその宗派も現存しないけれど」
「禁薬?どのへんが禁?」
「失敗すると死ぬのよ」
「……」
「使用者は丸一日病苦に苦しみ、その日の内に、自分の愛する人からの接吻を受けなければならない。愛する気持ちに一片の嘘もあってはならない。さらに相手側からも同様に愛がなければ失敗。そのまま死んでしまうわ」
「使うわ。確かにぴったりの薬じゃない」
私は躊躇わなかった。
「……いいの?」
「今の私は、魔理沙を愛する気持ちだけで生きているようなものよ、魔理沙が私を愛していないのならどちらにせよ生きている価値はないわ」
「貴女を好いている人は他にもいるかもしれない。それにもし魔理沙が貴女を愛していなくても、貴女が死んで誰より悲しむのはきっと……」
「“私が”魔理沙じゃないと嫌なの。それに……私の為に泣いてくれるなら。それで魔理沙の心に私がずっと残ってくれるなら」
「……そう。その決意は揺るがないのね……」
「決意だなんてたいそうなものじゃないわ、ごく普通にそう思えるだけ」
そして私はその薬を飲んだ。
「霊夢が倒れた!?」
ウドンゲは永琳に事情を聞いてすぐに魔理沙を訪ねた。
「そうよ!いいからさっさとついてきて!」
ウドンゲは魔理沙をつれていくために先導して飛ぼうとした……が。
「五月蝿い!どけ!!」
「わっ、ちょ……っと……早っ……」
ウドンゲを一瞬で追い抜いて、鴉天狗さえも凌駕するほどのスピードで魔理沙は駆けた。
残されたウドンゲは呆然としながら、魔理沙の飛び去ったほうを見て、つぶやく。
「でも師匠……本当にいいんですか?霊夢が死んで、魔理沙が壊れてしまったら、幻想郷は……」
「霊夢……」
私の呼びかけに、霊夢は苦しそうに私を見た。
息も荒く、顔も赤い。見る間に汗がふきだしてきて、熱が相当高いことがわかる。
「魔理沙……来てくれたのね……」
「ったりまえだろ!なぁ私に何かできることはないか!?」
「……キス……」
「魚か!!魚のキスが食べたいんだな!!よしわかった、すぐに持ってきてやる!!」
「え……」
魔理沙は飛び去った。
「霊夢!ほらキスだ!!」
夜通し駆け回った。
海まで行って、体裁をきにせずに。
魔理沙は手に魚をもって戻ってきた。
「違うの……魔理沙、そうじゃなくて……その……チュー」
「チューハイか!!そうだな血液の巡りが良くなるからな!!」
魔理沙は飛び去った。
「霊夢!チューハイはなかったから私の秘蔵の酒を持ってきたぜ!ほらのめ!!」
「って馬鹿!!病人に酒を飲ませるな!」
「痛っ!」
永琳に思いっきり殴られた。
「そうじゃないのよ!これは私の薬で……あぁもう時間がない!」
すでに霊夢に意識はなかった。かなり危ない状況だ。
魔理沙が飛び回っているうちに一日が終わろうといしていた。
「お前の薬?オイ!どういうことだ!!!」
「いいから霊夢にキスしなさい!!」
「あぁ!?」
「ぐだぐだ言ってんじゃないわよ!霊夢を助けたいんでしょう!?それしか方法はないのよ!!」
何がなんだかよくわからないが、どうもいつものこいつとは雰囲気が違う。
何故キスをしなければならないのかわからないが、嘘はついていないように見える。
とにかく助かる方法があるならなんだってやってやる。
「頼む霊夢!死なないでくれ!!」
魔理沙は霊夢を助けたい一心で、霊夢にキスをした。
それは唇が軽く触れるだけのキスだったが、魔理沙にとって初めての、そして思いのつまったキスだった。
「何だよ!何も起きないじゃないか!!」
魔理沙がキスをしてから更に数分が経過して、いよいよ一日の終わりが迫ってきた。
「やっぱり……駄目なのかしら……」
「助かるんじゃなかったのか!?私を騙したのか!?」
「落ち着きなさい!!」
永琳の声は明らかにいつものそれとは違う。余裕のない声だった。
「霊夢がこのまま起きないというのなら、それは貴女の責任」
「っざっけんな!!!霊夢を死なせてたまるか!!」
「ったくっ馬鹿な人ねぇ……あんたが霊夢を心の底から愛してれば霊夢は死なずにすんだのよ!」
「……んだ……よ、それ?」
「霊夢はねぇ、あんたに愛されてないなら死んだほうがいいって。だから私の薬を使ったの。霊夢の愛は間違いなく本物で、後はあんたが霊夢を愛してれば霊夢は死にはしなかった!」
「なんだよそれ、なんなんだよ!霊夢!お前はッ……」
「……」
永琳はそのまま部屋から出て行った。
24時間という時間が静かに流れ去った。
「馬っ……鹿野郎!!!!」
魔理沙はその場に崩れ落ちた。
涙が溢れてくる。
私は……霊夢を……
「ん……馬鹿よね」
「くそっ!畜生!!お前が死んでいい理由なんかないだろう!!」
「……」
愛して……
「愛してるんだ……愛してるんだよ霊夢!!お前が居なくなるなんて、そんなの嫌だ!!お前のいない人生なんて嫌だ!気付いたんだよ!お前は私の大切な……大切な人だって!!嫌なんだよ私は、お前じゃなきゃ!!」
「そうね……理由、ないわね……今は」
「なら、何……で?」
「おはよう……いや、今はもう昼だからおそよう……かな?」
幻かと思った。
涙で滲んだ世界が晴れていく。
そこにいたのはやっぱり霊夢で、霊夢は起き上がって私を抱きかかえてくれた。
「霊夢?霊……夢?」
「ごめん、魔理沙のキス……気が付いてたんだけど、二人だけで、邪魔されたくないなって」
「よか……った……」
「ん……ありがとう。魔理沙のおかげで助かった」
また涙があふれてきて、しばらく泣いていたけど。それは悲しいものじゃなくて、とても優しいものだった。
「悪かったわね……取り乱して」
「気にするな、結果オーライだぜ」
しかし永琳があんなに取り乱すなんて思わなかった。
「実はあの薬、過去に成功者がいなくてね……もしかしたら失敗だったのかと、思っていたのよ」
「ちょっと……そんな薬を私に使わせたの?」
「ごめんなさいね……でも、あの薬は私が創り出したもので、絶対に成功していたはずなのよ。それなのに、誰も……。もし私が調合を調合を間違えていたら?この薬のせいで死んでいった多くの人たちになんていったらいいの?本当に愛し合っていた人たちが死んでいたとしたら……そう思うと恐かった。もし霊夢が死んだら……、失敗だなんて思いたくなかった……だから、魔理沙にも。責任をなすりつけて、自分だけは罪の意識から逃げようとしてた」
永琳は声を震わせて言った。永遠を生きる、それはつまり、自分の罪も永遠に消えることはないということだ。
「なら感謝しろよ?私たちのおかげで、お前は間違ってなかったって証明できたわけだからな」
魔理沙はそう言ってニカっと笑った。
やはり魔理沙に似合うのは笑顔だ。泣いている顔はそそられるものがあるが。
「ええ……そうね。ありがとう」
他人を悲しみから救い出せるその笑顔に、私は魅かれたのだから。
「じゃあ改めて聞きましょうか」
比較的近かった魔理沙の家に着いてから、私は尋ねた。
「あ?何をだ?」
「だから告白の答え。三日目でしょ?」
「ぅ……だから愛してるって……言ったじゃないか」
魔理沙はすぐに顔を赤くして後ろを向いてしまう。
そんな魔理沙が可愛くて、後ろから抱き着いて攻める。
「あの時の魔理沙は素直で可愛かったのになぁ♪私のいない人生なんて嫌……かぁ」
「うぅ……」
後ろ向きでよくわからないが、きっと魔理沙の顔は茹蛸みたいに真っ赤になっているだろう。
「まぁいいわ、でも、これで我慢しなくてもいいのよね」
「我慢って?」
「私が眠れなかったときにしたかったこと!」
「わっ……んっ!?」
振り向いた魔理沙の唇を奪い、押し倒す。
魔理沙は、最初こそ驚いて抵抗したが、私がずっと唇を話を離さずに抱いているうちに、おとなしくなっていった。
布団もないし、誰か訪ねて来たらすぐに見られてしまうようなところだったけれど、そんなことはもう意識の外。やっと魔理沙と一つになれる。頭の中はそれだけだった。
世界は愛から創られる――
【巫女と恋・普通の魔法使いの素敵な恋愛係】
「私、魔理沙が好きなの」
「………………うぇい!?」
それは突然の告白だった。
いつものように箒に乗ってやってきた魔理沙に、何の前置きもなく切り出す。
「好きだったの。ずっと……」
魔理沙は鳩が豆鉄砲くらったよりおかしな顔をしていたけれど、もう私は我慢の限界だった。口に出してしまったのだから、後戻りは出来ない。
「や、ちょ……霊夢?だってお前……その……なんというか、ほら、私はこれでも女のはしくれだぜ?むしろアレだ、ビューティフルレイディだぜ」
言うと思った。
「関係ないわ、そんなこと。私は女の魔理沙が好きだってわけじゃない。魔理沙が好きなの」
魔理沙は真っ赤になって俯いてしまう。
でも、照れてくれているのなら嬉しい。私の気持ちが伝わってくれているなら嬉しい。
まっすぐな本心からの気持ち。
目の前の少女が欲しい。いつの間にか隣に居て、それが当たり前になっていて。たまに些細なことで喧嘩して、気付くとやっぱり隣で笑っている。私よりも小さくて、抱きしめたら折れてしまいそうな体なのに、いつだって何に対しても一生懸命で。壁を越えられなかったら越えるまで努力を惜しまない、幻想郷一の頑張り屋さん。たまらなく愛おしい、霧雨魔理沙という存在。
居るだけじゃなくて、もっとよく私をみて欲しい。話すだけじゃなくて、肌に触れて欲しい。友情じゃなくて、愛情が欲しい。
日に日に思いは増していった。おかしくなってしまいそうなほどに。
この思いを伝えてしまったら、もう元の関係には戻れない。
魔理沙が私の隣から消えてしまうかもしれない。
嫌だ。嫌、そんなのは絶対に嫌。
けれど、今のままじゃ魔理沙に何をしてしまうかもわからない。
それほどに、私は魔理沙を愛していた。
「本気……なのか?」
顔を上げた魔理沙に、もう戸惑いの色はない。
「……」
魔理沙の目をじっと見つめる。
魔理沙の瞳に移った私の顔は、今にも泣き出しそうな、酷い顔をしていた。
「本気……なんだな」
魔理沙はそれだけですべてわかってくれたようだった。
「三日間ほど、時間をくれないか?」
その答えに、拒絶されなくてホっとしたような、しかしやはり魔理沙は私のことを愛していないのではないかと不安になるような二律背反の感情が生まれる。
私は頷き、飛び立つ魔理沙を見送った。
部屋にあがって、少し……泣いた。
「まいったぜ……」
家路の途中……思わずため息が出る。
まだ心臓の鼓動が鳴り止まない。
「いや、まいることもないんだが……しかしなぁ」
正直、よくわからない。
霊夢に好きだといわれて、嬉しかったのは確かだ。
顔に血が上ってなんだかとても恥ずかしかったし、心臓は痛いほどに高く鳴り響いていた。
一般的な“恋”とやらの症状に似ていなくもないが、魔理沙はただ困惑するばかりだ。
「だけど、いままでは普通に……それに相手は同姓で……しかも霊夢……」
しかも霊夢……と言った所でまた顔がほてり始めた。
「何がしかもなんだ?あ~、もう……あ、いや、これは悪いのかいいのか??」
だんだん、血が頭にまで上ってきているようで、まともに考えることが出来なくなってきた。
「あー!よくわからん!!」
速度を上げて、一目散に突っ切る。
とにかく一度家に帰って落ち着いて考えよう。そう、まずは落ち着かなくては。
まだドキドキと脈打つ胸を隠すようにおさえて、一筋の流星が走る。
魔理沙が帰ってから半刻も経っただろうか。
「くすん……魔理沙ぁ」
袖がいい加減びしょびしょになってきたので泣きやむことにする。
「三日かぁ、その間は会えないのかな」
三日魔理沙が来ないなんて別段珍しいことではないはずなのに、なんだかとても寂しかった。
「断られたらどうしよう……」
そのときは仕方ない。拉致って飼おう。
「そうね、第一魔理沙が断るわけないわ。きっと私の愛を受け止めてくれて……「霊夢……じつは私も霊夢のことが……」なんてっ!なんて言っちゃったりなんかして!!あぁ、そしてその晩二人はベッドの中でスイート……マイドリーム・マイラブ魔理沙ぁ(はぁと」
「楽しそうね」
「!?」
スキマがあった。
年増がいた。
「って、誰が年増!!」
「あんただ!このノゾキスキマ!!」
絶妙のタイミングで現れやがって……いや、こいつのことだから初めから覗いていたに違いない。
「ま、まぁいいわ」
霊夢の手に霊符が握り締められたのをみて、紫が一歩退く。
「にしても……霊夢もお年頃なのねぇ……」
「うるさい、何しに来たのよ。人の妄想の邪魔をしないでくれる?」
「……妄想の邪魔をしないでなんて言われたの初めてだわ……人間からは」
妖怪にはあったのか?
「いいから消えて。しっしっ」
「まぁまぁ……魔理沙に会えないのが寂しいんでしょう?」
「……だから何?」
「覗く?」
スキマを開ける紫。その先には魔理沙邸が。
「覗く!!」
即答した。
結局、家に帰ってからも何も考えられなかった。
脳裏に浮かんでは繰り返される、霊夢の告白。
「私、魔理沙が好きなの」
……
「あぁ!!どうしちまったってんだ!?」
恥ずかしさに耐えられずに叫ぶ。
心臓が痛い。
「まさか新手の心臓病か?」
などと馬鹿なことを言ってみる。
いつまで経っても動悸がとまらない。
「とにかく……だ」
とにかく、これから……。
「私は……どうしたらいいんだ?」
わからない。
わからないけど、霊夢は本気だった。
本気のときしか見せない目をしてた。
私を……本気で好きだって……。
「好き……か……恋だなんだって魔砲ぶっ放してる割には考えたこともなかったな」
考え込んでいたうちに、すっかり夜の闇に包まれていた空を窓から見上げ、軽くため息をつく。
「断っちまったら……あいつ、どんな顔するんだろう」
正直、霊夢が悲しんだり、落ち込んだりしてる様な想像は出来ない。きっと、平気な顔して、「ん、そう」だなんて抜かすんじゃないか。
……いや、でも案外落ち込んでくれたりするのかな、ちょっと試してみたい気も……嘘だって言ったら……殺されるか。
っていうかそれが嘘なら好きなのか?
「本当……よく、わからないぜ」
「青い!青すぎる!これが若さよねぇ♪」
「んもう魔理沙ったら可愛いんだからもう♪断られても落ち込むどころか逆に燃えるわよ、私が諦めるわけないじゃない、地の底まで追って追って押し倒すわよ(はぁと」
そんな魔理沙の葛藤をよそに、スキマから覗いていた二人は悶えていた。クネクネと。
「っていうかあんたやっぱり年寄りくさい」
「……」
そして覗き継続。
「あ、みて紫!魔理沙が起きたわ♪あぁ可愛いわまぶたなんかこすっちゃってもう今すぐ食べちゃいたいくらい(はぁと」
「もういいでしょ~?ね、眠い……」
夜通しで覗いてた。
今日は恋とやらについて調べてみることにしよう。
昨日まったく考えがまとまらなかった魔理沙は、まず恋とは何か。そこから調べてみることにした。
そして魔理沙は魔法使いの定番に着替えるため、寝ぼけ眼でぱぢゃまを脱ぎ始めた。
ブシュッ……ピチャ
「ひゃぁ!?な、なんだ!?何か赤い液体が……鉄の匂い……血……か?」
ちゃっかり着替えを覗いていた霊夢の鼻からドピュっと噴出したそれは魔理沙のうなじにジャストヒットした。
「うわ……どうみても血だ。な、なんだ?なんなんだ?」
慌てて紫がスキマを閉じる。
一応死角になるように創ってはいたが、血痕を辿られれば見つかりかねない。
「何やってるのよ、バレるところだったじゃない!」
「紫……私素晴らしいこと思いついちゃった」
霊夢の目が爛々と輝いている。危険だ。
「え……あ、私もう帰って……」
「魔理沙がその……あの行為を始めるときも覗いて同調すればそれはもう一人遊びじゃないわよね?」
「私は何も聞こえない!!なんにも!!じゃあそーゆーことで!!」
ガシ!!
逃げようとした紫の首根っこを折りかねない勢いで掴む。
「紫。これは貴女の協力がなければできないの。っていうかあんたに拒否権はない。あるとすればそれはあんたがこの世から消えるときだけだ」
爛々と。キュピーンとか擬音だしかねないほど霊夢の瞳は輝いていた。
(なんでこんなことに……)
紫は面白そうだからって何でもかんでも首を突っ込むのやめよう……と、人生で初めて思った。
そらもうすごい恐かった。鼻血出しながら首絞めてくる巫女は。
――ヴワル魔法図書館――
「膨大な資料の揃っているここなら、きっとみつかる私の恋♪そうよ私は恋する乙女かっこ疑問」
朝のことは綺麗さっぱり忘れ去って、いつものごとく忍び込む。
霧雨魔理沙・朝のポエムを思わず声に出しながら、目当ての本を探す。
「何言ってるの?」
ポエム聞かれたーー!!
「ぱぱぱぱっぱぱぱっぱっぱパttyリ!?」
「少しは落ち着きなさいよ。で、恋がどうたらって聞こえたけど……」
「なななななんでここに!?いつもならこの時間は小悪魔と優雅に小洒落たティータイムじゃ!?」
「魔理沙の匂いがしたから……」
「匂いかよ!!」
「匂いよ。具体的に言うと体臭……部分的に言えばシャンプーのメーカーは……」
魔理沙は口をぱくぱくさせながらパチュリーの魔理沙の匂い講座(?)を聞いていた。
「そうね……あそこの匂いから察するに……女の子の日は……」
「うぉい!!それどこの匂いだよ!!」
泣いた。
私は一歩大人の階段を強制的にのぼらせられた様な気持ちになった。
「ま、それはそれとして、恋が何?」
「結構重要だぜ、うら若き乙女にとっては……」
匂い……魔女って嗅覚いいのか?……新説だな。
「つまり、恋する乙女の魔理沙がここに来たということは……」
「そうだぜ、恋について調べに……」
「魔理沙の恋する相手が私ってことでいいのね!?」
パチュリーさん大興奮。回る。回るよ。風を巻き起こしながら大回転だ、ハッハーだぁ!!
「私、恋してます!魔理沙に恋してます!!」
言いながら三方向にレーザーを放つパチュリー。しかも回る。
「こ、これはァッ!恋符「ノンディレクショナルレーザー」!!」
……パクられた!?
既に自分がパクったことすら忘れている魔理沙。
「いや、そんなこと言ってる場合じゃない。回るパチュリー。そして恋符……これから導き出される結論は一つ!私は今パチュリーに回りながら告白されているぅ!!」
「さっき普通に言ったわー。私恋してます!」
回りながらパチュリーが応える。
「つまり……恋というのはすなわち攻撃。アタックなのか!?」
「アタックナンバーワーン」
いかん。回りすぎてそろそろパチュリーがおかしくなってきたぜ。
というかレーザー乱射で偉いことになってる。
「よし!……メイド長に見つかる前にとんずらだぜ」
「あ、ちょっと魔理沙!告白がまだ……」
パチュリーが魔理沙に集中……被弾した。
「恋が痛いー!!」
「待って魔理沙……ゲボグハァッ!」
レーザーに直撃して吹っ飛んでいく魔理沙を追おうとしたパチュリーだが、回りすぎて嘔吐した。割と瀕死。
「痛ぅ……油断したぜ……」
どうにか家にたどり着いたが、もう気力がない。ダメだ、今日はもうさっさと寝よう。明日頑張ろう。
夕焼けに、破れた服から露出された肌が照らされる。
グー……
お腹が鳴る。
あぁ、そういえば昼飯食ってないや。紅魔館で馳走になろうと思ってたんだけどなぁ……。
心なしか家の中から良い匂いがする。
戸を開ける。
「あ、お帰り魔理沙。お風呂にする?ご飯にする?それともわ・た・s」
バタン!!
閉めた。
これは幻覚だ。
だって私三日待てって言ったし。
そう、幻覚。
もう一度戸を開く。
「ちょっと魔理沙!ひどいじゃない」
やっぱり見える。
オィこれ幻覚にしちゃリアルだな、霊夢が裸エプロンで包丁持ってるよ。こえーよ、しまえよ包丁。最低でも肌隠せよ。
「魔理沙、ボーっとしてないで早く入ってよ、今日は私が夕飯作ってあげるから」
そう言われてみれば確かにキッチンからいい匂いがする。
「まぁ、とりあえず風呂だ。疲れたし、大分汚れちまったし……」
霊夢に対する突っ込みは後回しにして……というか突っ込み所が多くて今の疲労困憊の私じゃ無理だ。
とりあえず、私は風呂に向かった。
「っはぁ……生き返るぜー♪」
自慢の自家製温泉。現代人の疲れた体も心もリフレッシュ♪風呂はいいね~。
「湯加減どぉ~?」
と、霊夢の声が聞こえた。
「ん~、申し分ないぜ」
「そう、よかった」
すぐ後ろから。耳に息がかかるくらいに。
「わぁ!!」
飛びのいた……確かに霊夢は後ろに居た……ハズなのに。
ガシィ!
飛びのいた先に霊夢がいた。しかも両腕をしっかりとつかまれた。
「霊夢、何で!?」
「何って……背中を流しに♪」
「いやいいから!っつかもう流すの我慢できない、お前に三日待てって言ったじゃん!!」
「我慢できなくって……テヘ」
「テヘいうな!」
……色々揉まれたり洗われたり弄られた。
夕食は既に出来ていた。
魔理沙好みに和の食文化をパーフェクトメイキング。
……風呂に入ってる間はどうしていたんだ?博麗マジック?
「ん……霊夢の味だ」
そこに他意はない。もはや日常の味になりつつあった、霊夢の作ってくれる味だ。
が、人によっては……まれに妖怪によっても、この言葉を聞いて意味を取り違えるアレなものがいる。
「ええ!?そりゃ妄想では味わったり味あわせたりしたけどそれがビバ現実にも影響して魔理沙と既成事実が!!」
霊夢がいつも妄想で魔理沙を舐めたり魔理沙のアレを舐めたりその逆もまた……などと妄想しているのは既に日常茶飯事だった。
「何言ってるんだ?いつも霊夢が作ってくれる味噌汁だろ?」
「……魔理沙はそれを天然で言うから恐いのよ……魔女やらが聞いたら嫉妬の嵐よ?それ」
そりゃ、そうよね……でも近いうちには……ドゥフフフフフ
「?」
「すまなかったな、色々と世話になっちまって」
「いいわよ、別に。好きでやったことだし」
夕食の後、魔理沙は霊夢に礼を言った。
実際、かなり助かった。とてもじゃないが今日は一人では適当なものしか作れなかっただろうし、なんだかんだで風呂では洗ってもらってさっぱりした。(他意なし)
「でもこのベッドじゃ二人は辛いかな」
「……ちょっと待て。まさか泊まっていくつもりか?」
「?何言ってるの、当たり前じゃない」
「当たり前じゃない。どうしたんだ?今日の霊夢は?特に何もないような日にウチに泊まってくなんて珍しい」
そもそも霊夢が魔理沙の家を訪れることが珍しいことだ。大抵は魔理沙の方から訪れるので、その必要もなかったのだが。
でも、私から魔理沙に近づくっていうことが大事なのよ。
そう、もう私なしでは生きていけない体にしてあげるわ♪
というか既に私はそうなのよ。魔理沙と片時も離れていたくない。
「アプローチをね、ほら、もう告白しちゃったし、後は押して押して押しまくろうと」
魔理沙の顔が見る間に赤くなる。可愛い……。うかつにそんな顔見せてると押し倒すわよ?理性切れて。
「と、とにかく!今日は帰ってくれ」
「まぁ狭いベッドで身を寄せ合うってのもいいわね」
「聞けよ……っておい!?」
魔理沙の言を無視して襟首を掴んでベッドルームへと引きずっていく。
魔理沙は必死に抵抗しているようだが、本当に疲れているらしく、障害にはならない程度のものだった。
「ひゃん!」
そのままちょっと乱暴に魔理沙をベッドに押し倒す。
「あの、霊夢?えと……」
乱暴にベッドに押し倒されてすこし怯えた表情で私に顔を向ける魔理沙。うん、これが見たかった。可愛いわねもう♪
しかし……これはまずい。どうにか理性を保て私。ここで今押し倒してしまったら魔理沙に嫌われてしまうかもしれない。一応三日待てって言われてたし。とても疲れてるみたいだし。
「れ、霊夢?」
魔理沙が不安そうに私をみてる。やめろ襲うぞ。いや抑えろ霊夢。ここが正念場だ。ここで魔理沙に腕枕だ、好感度アップだ。私の腕に頭を預けて気持ちよさそうに眠る魔理沙。腕にはここちよい魔理沙の重み、ふわふわの髪が私の顔にかかって……そしてそのままいただきま……。いや抑えろ、頑張れ霊夢。
霊夢の葛藤は魔理沙に覆いかぶさったまま延々と続いていた。途中魔理沙が何か言うたびに一瞬アクションをとりかけるが(唇をたこのように突き出したり、手をわきわきさせたり、なんか濡れてたり)やがて魔理沙は自分に覆いかぶさっている霊夢を気にしながらも眠りについてしまった。
ちょっとどうしてこんな状態で眠れるのよ?……よほど疲れていたのね……。それはともかく今ならチューチューしてもばれないわね。でもいけないわ霊夢。魔理沙の信頼を裏切るようなまねをしてはダメ。起きたら全身キスマークだなんて流石の魔理沙も許してくれないわ……いやまてよ?それなら魔理沙は人前に姿を見せられなくなる……魔理沙からはどこにも出かけられない。つまり魔理沙は私だけのもの。でも……でも……いくら二人だけでも魔理沙に嫌われてしまったら意味がないわ。私は魔理沙の体が欲しいわけじゃない。愛し愛されたいのよ。
……ぁ、私あのまま眠っちゃったんだっけ。
朝の光に、魔理沙の瞼が開く。開いた瞳に最初にうつったのは……。
「いや、でもそこから真実の愛に発展するかも……でもやっぱりだめよ、愛があっってこそそれは幸せな行為に……一回でも一方的には……それにホントに嫌われちゃうかもしれないし……」
昨夜からぶっ通しで魔理沙を襲うか襲うまいか悩み続けて、目を真っ赤に見開いて何かぶつぶつ言っている霊夢だった。
「ヒィイイイイイイイイ!!!!」
眠気はバッチシとんだ。目覚めは最悪だったが。
「な、なぁ、大丈夫なのか?」
目をギラギラさせている霊夢に遠慮がちに聞く?
「大丈夫よ、魔理沙は座って待ってて」
霊夢は朝食を作ってくれている。
だけど、聞けば一晩私を見て眠れなかったらしい。果たして大丈夫なんだろうか?
「あれ?」
そう思った矢先に霊夢がバランスを崩して、倒れる。
「霊夢!」
あわてて支えてやる。
「ごめん、なんかちょっと立ちくらみが……」
「いいから無理するな、私が作るからお前は寝てろよ……な」
心配してくれて、とても優しい顔。
魔理沙は優しい。
「うん……ごめん」
「謝んなくていいって」
そう、優しいのよ、魔理沙は。なんだかんだ言って。
霊夢は魔理沙のベッドに寝ながら、ある作戦を考え付いた。
「つまり、病気になって、なんやかんやのうちに魔理沙に本当の気持ちを確かめる!!」
病気になる為に薬を貰いにいく……なんて変な話だが、あの薬師ならおそらく毒の一つや二つはもっているだろう。
「霊夢、飯出来たぜ♪」
その時、魔理沙が朝食を持って入ってきた。
「立てるか?」
魔理沙に肩を借りて起き上がる。
「ん、大丈夫……ねえ魔理沙」
「ん?」
「あ~んってして?」
ここぞとばかりに甘えてみる。
「ば、ばか!!……そんだけ元気があれば十分だろ。食ったらちゃんと寝ろよ?」
「んもう、魔理沙のいけず~(はぁと」
ちょっと残念だけど……まぁそれは結ばれてからね♪
「よし!」
昼まで休んで、大体調子は戻った。
さっそく壊しに行くわけだが。
「じゃぁ魔理沙!また来るわーー!!」
「え、お前体はもうだいじょ……」
気付いたときにはもう飛び去っていた。
「……まぁもう大丈夫みたいだな……さぁて、結局どうしたものか……」
そしてまた悩む。
「ぴったりなのがあるにはあるけど……」
永琳は突然の来訪者の突然の頼みに、少し渋い声で答えた。
「何か問題でもあるの?」
「秘薬というか……禁薬なのよ、昔、とある宗教で愛を確かめるために使われていた、禁薬。あまり良い結果にはならなかったから禁じられてしまって、もうその宗派も現存しないけれど」
「禁薬?どのへんが禁?」
「失敗すると死ぬのよ」
「……」
「使用者は丸一日病苦に苦しみ、その日の内に、自分の愛する人からの接吻を受けなければならない。愛する気持ちに一片の嘘もあってはならない。さらに相手側からも同様に愛がなければ失敗。そのまま死んでしまうわ」
「使うわ。確かにぴったりの薬じゃない」
私は躊躇わなかった。
「……いいの?」
「今の私は、魔理沙を愛する気持ちだけで生きているようなものよ、魔理沙が私を愛していないのならどちらにせよ生きている価値はないわ」
「貴女を好いている人は他にもいるかもしれない。それにもし魔理沙が貴女を愛していなくても、貴女が死んで誰より悲しむのはきっと……」
「“私が”魔理沙じゃないと嫌なの。それに……私の為に泣いてくれるなら。それで魔理沙の心に私がずっと残ってくれるなら」
「……そう。その決意は揺るがないのね……」
「決意だなんてたいそうなものじゃないわ、ごく普通にそう思えるだけ」
そして私はその薬を飲んだ。
「霊夢が倒れた!?」
ウドンゲは永琳に事情を聞いてすぐに魔理沙を訪ねた。
「そうよ!いいからさっさとついてきて!」
ウドンゲは魔理沙をつれていくために先導して飛ぼうとした……が。
「五月蝿い!どけ!!」
「わっ、ちょ……っと……早っ……」
ウドンゲを一瞬で追い抜いて、鴉天狗さえも凌駕するほどのスピードで魔理沙は駆けた。
残されたウドンゲは呆然としながら、魔理沙の飛び去ったほうを見て、つぶやく。
「でも師匠……本当にいいんですか?霊夢が死んで、魔理沙が壊れてしまったら、幻想郷は……」
「霊夢……」
私の呼びかけに、霊夢は苦しそうに私を見た。
息も荒く、顔も赤い。見る間に汗がふきだしてきて、熱が相当高いことがわかる。
「魔理沙……来てくれたのね……」
「ったりまえだろ!なぁ私に何かできることはないか!?」
「……キス……」
「魚か!!魚のキスが食べたいんだな!!よしわかった、すぐに持ってきてやる!!」
「え……」
魔理沙は飛び去った。
「霊夢!ほらキスだ!!」
夜通し駆け回った。
海まで行って、体裁をきにせずに。
魔理沙は手に魚をもって戻ってきた。
「違うの……魔理沙、そうじゃなくて……その……チュー」
「チューハイか!!そうだな血液の巡りが良くなるからな!!」
魔理沙は飛び去った。
「霊夢!チューハイはなかったから私の秘蔵の酒を持ってきたぜ!ほらのめ!!」
「って馬鹿!!病人に酒を飲ませるな!」
「痛っ!」
永琳に思いっきり殴られた。
「そうじゃないのよ!これは私の薬で……あぁもう時間がない!」
すでに霊夢に意識はなかった。かなり危ない状況だ。
魔理沙が飛び回っているうちに一日が終わろうといしていた。
「お前の薬?オイ!どういうことだ!!!」
「いいから霊夢にキスしなさい!!」
「あぁ!?」
「ぐだぐだ言ってんじゃないわよ!霊夢を助けたいんでしょう!?それしか方法はないのよ!!」
何がなんだかよくわからないが、どうもいつものこいつとは雰囲気が違う。
何故キスをしなければならないのかわからないが、嘘はついていないように見える。
とにかく助かる方法があるならなんだってやってやる。
「頼む霊夢!死なないでくれ!!」
魔理沙は霊夢を助けたい一心で、霊夢にキスをした。
それは唇が軽く触れるだけのキスだったが、魔理沙にとって初めての、そして思いのつまったキスだった。
「何だよ!何も起きないじゃないか!!」
魔理沙がキスをしてから更に数分が経過して、いよいよ一日の終わりが迫ってきた。
「やっぱり……駄目なのかしら……」
「助かるんじゃなかったのか!?私を騙したのか!?」
「落ち着きなさい!!」
永琳の声は明らかにいつものそれとは違う。余裕のない声だった。
「霊夢がこのまま起きないというのなら、それは貴女の責任」
「っざっけんな!!!霊夢を死なせてたまるか!!」
「ったくっ馬鹿な人ねぇ……あんたが霊夢を心の底から愛してれば霊夢は死なずにすんだのよ!」
「……んだ……よ、それ?」
「霊夢はねぇ、あんたに愛されてないなら死んだほうがいいって。だから私の薬を使ったの。霊夢の愛は間違いなく本物で、後はあんたが霊夢を愛してれば霊夢は死にはしなかった!」
「なんだよそれ、なんなんだよ!霊夢!お前はッ……」
「……」
永琳はそのまま部屋から出て行った。
24時間という時間が静かに流れ去った。
「馬っ……鹿野郎!!!!」
魔理沙はその場に崩れ落ちた。
涙が溢れてくる。
私は……霊夢を……
「ん……馬鹿よね」
「くそっ!畜生!!お前が死んでいい理由なんかないだろう!!」
「……」
愛して……
「愛してるんだ……愛してるんだよ霊夢!!お前が居なくなるなんて、そんなの嫌だ!!お前のいない人生なんて嫌だ!気付いたんだよ!お前は私の大切な……大切な人だって!!嫌なんだよ私は、お前じゃなきゃ!!」
「そうね……理由、ないわね……今は」
「なら、何……で?」
「おはよう……いや、今はもう昼だからおそよう……かな?」
幻かと思った。
涙で滲んだ世界が晴れていく。
そこにいたのはやっぱり霊夢で、霊夢は起き上がって私を抱きかかえてくれた。
「霊夢?霊……夢?」
「ごめん、魔理沙のキス……気が付いてたんだけど、二人だけで、邪魔されたくないなって」
「よか……った……」
「ん……ありがとう。魔理沙のおかげで助かった」
また涙があふれてきて、しばらく泣いていたけど。それは悲しいものじゃなくて、とても優しいものだった。
「悪かったわね……取り乱して」
「気にするな、結果オーライだぜ」
しかし永琳があんなに取り乱すなんて思わなかった。
「実はあの薬、過去に成功者がいなくてね……もしかしたら失敗だったのかと、思っていたのよ」
「ちょっと……そんな薬を私に使わせたの?」
「ごめんなさいね……でも、あの薬は私が創り出したもので、絶対に成功していたはずなのよ。それなのに、誰も……。もし私が調合を調合を間違えていたら?この薬のせいで死んでいった多くの人たちになんていったらいいの?本当に愛し合っていた人たちが死んでいたとしたら……そう思うと恐かった。もし霊夢が死んだら……、失敗だなんて思いたくなかった……だから、魔理沙にも。責任をなすりつけて、自分だけは罪の意識から逃げようとしてた」
永琳は声を震わせて言った。永遠を生きる、それはつまり、自分の罪も永遠に消えることはないということだ。
「なら感謝しろよ?私たちのおかげで、お前は間違ってなかったって証明できたわけだからな」
魔理沙はそう言ってニカっと笑った。
やはり魔理沙に似合うのは笑顔だ。泣いている顔はそそられるものがあるが。
「ええ……そうね。ありがとう」
他人を悲しみから救い出せるその笑顔に、私は魅かれたのだから。
「じゃあ改めて聞きましょうか」
比較的近かった魔理沙の家に着いてから、私は尋ねた。
「あ?何をだ?」
「だから告白の答え。三日目でしょ?」
「ぅ……だから愛してるって……言ったじゃないか」
魔理沙はすぐに顔を赤くして後ろを向いてしまう。
そんな魔理沙が可愛くて、後ろから抱き着いて攻める。
「あの時の魔理沙は素直で可愛かったのになぁ♪私のいない人生なんて嫌……かぁ」
「うぅ……」
後ろ向きでよくわからないが、きっと魔理沙の顔は茹蛸みたいに真っ赤になっているだろう。
「まぁいいわ、でも、これで我慢しなくてもいいのよね」
「我慢って?」
「私が眠れなかったときにしたかったこと!」
「わっ……んっ!?」
振り向いた魔理沙の唇を奪い、押し倒す。
魔理沙は、最初こそ驚いて抵抗したが、私がずっと唇を話を離さずに抱いているうちに、おとなしくなっていった。
布団もないし、誰か訪ねて来たらすぐに見られてしまうようなところだったけれど、そんなことはもう意識の外。やっと魔理沙と一つになれる。頭の中はそれだけだった。
中身は何時も通り壊れていましたねw
やっぱり、こわ(壊&怖)霊夢でleon様の右に出る者はいませんな(褒め言葉
…で、最後はやっぱり食われるw
nice
もうその言葉を聞くと次もやっぱり壊していこうとか思っちゃいますが(笑
bernerd様>魔理沙頑張れ魔理沙負けるな
魔理沙を可愛く書いてあげたいとおもいつつ大体酷い目にあわせてしまいます(汗
都市制圧型ボン太君様>フェイントです(笑
嘘です、すいません耐えられずにやっぱりこうなりました(汗
名前が無い程度の能力様>ラブ……になってるのでしょうか?(汗
二回ほどかなり方向転換したのでちょっとどこにいってるのかわからないロケットです(笑
すみません感想慣れてなくて緊張しております。
りらっくす、りらっくま……すーはー……
ええと。ラブいですね。いつもながらというかいつも以上に。
もっとやってください。マリアリ!
大好きです。続きのラブラブライフ編も楽しみですっ
今がそのとき!
GJ!
その勢いあふれる文章力羨ましいです。
まじめに霊夢を受け止めようとする魔理沙と、恋する乙女はスーパーガール霊夢の未来に幸あれ。
…年増もがんばr
でも、薬の話周辺や「星・月」のシリアスな展開もなかなかのものだと思います。
どちらも楽しませていただきました。
いつものラブだったんですか!?確かに狂愛ですが(汗
……え、続きあるんですか?(笑
おやつ様>基本的に菜がないです(笑
単品で読むとお腹を壊すので気をつけてください♪
れふぃ軍曹様>いえいえ、全然ないです文章力(汗
……勢いだけなら(笑
そしていつのまにか霊夢は完全に壊れキャラに……(汗
名前が無い程度の能力様>幸あれ♪(笑
年増ガンバ……今回脇役を務めてくれた方々を投げっぱなしで終わってる感が(汗
弾幕に散る程度の能力様>いい加減マリレイで魔理沙の強いとこを書きたいのですがこれが脳内デフォなので(笑
星・月は壊してないのにかなり楽しく書けたので、そういってくれると嬉しいです♪
次回予告も何故かワラってしまいました。
次回も楽しみにしてます♪
次回予告は(嘘)ですので大体書かずに終わると思います(汗