*東方文花帳参照ネタあり(この注意書きはもう必要ないかもしれませんけど)
*一部のキャラが、酔って多少壊れています。言葉遣いも多少変わっています。ご注意を。
*私的設定として、酔った時の上戸を決めています。また、それ以外にも私的設定が少しありますのでご容赦ください。
結構な重労働になるが屋台を所定の位置に運んで、釜に火を入れ、赤提灯に火を灯す。これで準備完了。後は私の歌声に誘われて客がやって来るのを待つだけ。
さあ、今日も焼き鳥撲滅に向けて頑張ろう。
~~~一人目~~~
早くも私の歌声に引かれて客がやって来た。っと思ったら、なんだ、意外と常連な妖怪か。せっかく今日は新しい客を鳥目にしてやろうと思ったのにな。でも、お客はお客だし、この妖怪とは仲が良い。だから、うんと歌ってあげよう。
あれ、今日はこのお客、なんだか顔が暗いな。何があったんだろう。一応、鳥仲間としては心配だ。
「ミスティアさん、お酒一升瓶でお願い。」
うわ、どしょっぱつからヘビーな注文が来たな。よし、景気付けに明るい歌を歌ってあげよう。
二曲、三曲と調子よく歌っていると、追加の注文が入る。また一升瓶ごとの注文で、よほど飲み足りないと見た。
「お客さん、どうしたの。今日はいつもよりもお酒が過ぎてるよ。お酒ばかり飲んでないで、ちゃんと八目鰻も食べなきゃ体に毒だから。」
「いいんです、今日はお酒に浸かりたい気分なんです。」
「でも、天狗って飲兵衛じゃなかったの?」
「時々、それが憎くなりますよ。まあ、それでも酔う方法ってのが無い訳じゃないんですけど。悪酔いしちゃいますけどね。」
またお客さんが飲みだしたので、私は歌を再会する。天狗の酔い方ってのは初耳だったけど、私にとってはどうでもいい事。歌に関係なければ、興味は無や。
「いいですね、ミスティアさんは。なんとなく悩みなんて無さそうですよね。」
「私は歌えていれば、それで幸せよ。」
「羨ましい限りです。」
「じゃあ、お客さんも歌おうよ。そんな暗い顔をしていないで、心の底から歌おう。そうすれば、きっと幸せな気分になれるよ。」
「歌はいいですけど、心の底のものを吐き出すってのには賛成です。ちょっと聞いてくれますか?」
酔いのせいで大分赤くなった顔をしながら、お客さんが喋りだす。はじめはポツポツとだったが、酒が進むにつれてだんだんと色んな事を話し出した。
「そりゃあ~私が好きでやっている事ですけどね~。でも、一週間の苦労が水の泡に消えるのは耐え難い物なんですよ~。」
~~~♪
「確かに~私がチルノさんの事を侮っていたのは~事実ですよ~。」
~~~~♪
「ですけどね~あそこでアイシクルフォールに~当たるとは~思わなかったんですよ~。あんな避け方が分かれば~確実に避けれるスペルカードなんて~当たるはずが無いじゃないですか~。」
~~~~~♪
「それなのに~なんで今回に限って~弾幕が変わっているんですか~こんちくしょう~~。お陰でカメラはいじられるし~いきなりフィルムを抜き出すし~あれを撮る為にどれだけ苦労したと思っているんですか~あのスカタンが~~ウィク。」
~~~~~~♪
「-----------------------------------」
~~~~~~~♪
しばらく気持ちよく歌っていたら、お客さんが今にも眠りそうになって居るのに気がついた。まだ一応目を開いてぶつぶつ何かを言っているけど、もう正気かどうかは判別つきそうにないや。でも、ここで眠られると後から来るお客さんの迷惑になりそうだから、帰ってもらおう。
「お客さん、駄目ですよ。眠るんだったら、自分の家で寝なきゃ。」
ありゃま、寝ちゃったよ。でも、何となく起こすのも可愛そうなので、毛布を掛けてあげてそのまま寝かせてあげよう。少し席を替わってもらうけど。
~~~二人目と三人目~~~
のんびりと歌っていたら、よく見かけるメイドと何処かで見た事があるような門番が私の歌に引き寄せられて来た。でも、もう既に何処かで飲んできているみたいで、割と出来上がっているみたい。
「美鈴、もう一軒飲んでいくわよ。」
「ええっ、またですか。もう帰りましょうよ。」
「何よ、今日は酒に付き合うって言ったのは、美鈴でしょう。つべこべ言わずに、もう一軒ぐらい付き合いなさい。」
訂正。出来上がっているのはメイドだけで、門番の方は割りと素面。て言うか、酔うに酔えない様子みたい。構図としては、無理やり部下を引きずり回している上司ってな感じかな。
「親父、酒!!」
「咲夜さん、ミスティアさんに失礼ですよ。いくら猛禽類で、あの鋭い爪と口で人間を食べているからといって、一応は少女なんですから。ああ、ミスティアさん、余り気にしないでください。咲夜さんは随分と酔っ払っているだけですから。後、八目鰻の串揚げ二人分もお願いしますね。」
随分と色々と酷い事言われたような気がするが、歌でも歌って気を紛らわそう。でも、なんだか珍しいな。メイドは酔っ払っているというより、荒れているっていう感じがする。
「ああ、咲夜さん。そんな一気飲みばかりしたら、体に悪いですよ。ほら、串揚げも食べませんと。」
「うっさいわね、私がどう酒を飲もうと勝手でしょう。私はまだまだ飲み足りないのよ。」
随分と荒れているな。頼むから、暴れないで欲しいな。
「それより咲夜さん、こんなに遅くまで飲んでいて良いんですか。いくらお嬢様が昼間起きていたとは言え、いい加減館に戻った方が良いような気がしますけど。」
「今日はいいのよ。お嬢様は博麗神社に行く為に、無理して昼間中起きていたんですから。お嬢様にしてみれば、ほぼ貫徹ね。明日の夜まで、何かあってもまず起きないわ。」
言うとすぐにまたお酒を一気飲みしだす。何か忌々しい事を思い出したみたいに、自棄になってお酒を飲んでいる。そのメイドの横で、何か諦めたように門番が飲んでいる。永遠と愚痴を聞かされている門番に、何となく同情しちゃうな。
「まったく、お嬢様はあんな巫女の何処が良いと言うのよ。あんな一日中何もしないでボーとしているだけの巫女が、お嬢様の気を引こうなんざ十年早いっていうのよ。」
「いくら博麗神社でお嬢様にまったく相手にされなかったり、会話に入れてもらえなかったりしたとしても、それは言いすぎですよ。」
「うっさいわね、こちとらお嬢様の為に献身的に働いてきたのよ。雨の日も風の日も、例え夜中だろうが弾幕の中だろうが、身を粉にして尽くしてきたの。それなのに、あんな降って湧いたプー太郎巫女にお嬢様はうつつを抜かしているのよ。酒でも飲んでなきゃ、やってられないわ!!」
あー、色々と重症だな。とりあえず、落ち着けるように心が静まるような歌でも歌ってあげよう。
~~~~~~~~♪
「咲夜さん、もういい加減お酒を控えた方がいいと思いますよ。これ以上飲むと、明日のお仕事に支障をきたしかねませんし。」
「仕事がなんだって言うのよ。お嬢様は私が必死になって仕事をしても、別になんとも思ってくれないわ。だったら、仕事をすることに何の意味があるって言うのよ。」
「それはいくらなんでも自棄になりすぎですよ。咲夜さんだって別に、お嬢様の気を引く為に仕事をしてきた訳じゃないでしょう。些細な事でいじけないでくださいよ。」
「・・・いいわよね、貴方は。いつもいつも暇そうで。」
「そういう言い方、止めましょうよ。」
~~~~~~~~~♪
「もう帰りましょうよ。いくらなんでも、明日出勤できませんよ。」
「別に、私がいなくたって困る事なんか無いでしょう。それより、私がいなくなった事で、皆が喜び叫ぶ姿が目に浮かぶわ。」
「そんなこと無いですよ。咲夜さんがいてくれませんと、滞る事が山ほど出てきます。皆は意外とのんびりしていますからね。ですから、変に考えるのは止めましょうよ。」
「よく言うわ。皆が私に後ろ指を差している事ぐらい知っているのよ。」
「そんな事ありません。あんな激務のポスト、誰もつきたがらなかったので、咲夜さんがついてくれた事で皆感謝しているぐらいなんですから。一般メイドはともかく管理職以上のメイドには戦々恐々のポストで有名でしたからね。だから、咲夜さんがあれこれ言っても、誰も文句を言わないはずですよ。だから、酔って悪く考えるのは止めましょう。」
「何よ、どうもすんなりメイド長になれたと思ったら、私が人柱になったって言う事?」
「ま、まあ、そういうものの見方もありますね。」
~~~~~~~~~♪
「咲夜さん・・・」
「まだよ、まだ飲み足りないの。帰りたかったら、貴方だけでも帰っていいわ。今まで私の相手をしてくれてありがとう。でも、これ以上は無理に付き合う必要はないわ。」
「泥酔した咲夜さんを残していける訳無いじゃないですか。ちゃんと紅魔館に送り届けないと、近所迷惑になってしまいますから。」
~~~~~~~~~~♪
思う存分歌っていると、なにやら険悪なムードが漂ってきた。どうやら酔ったメイドに門番が絡まれているみたい。いるんだよね、お酒を飲むとやたらと絡みたくなる人って。なんか、門番がいらない事言っちゃったのかな?
~~~四人目~~~
今日も絶好調の歌に引き寄せられて来たのか、よく見かける庭師がやって来た。ただ、何故か知らないが少し戸惑っているみたい。よこよく考えてみると、庭師が来るのは初めてのような気がする。
「あ、あの、お酒をお願いします。」
少し緊張した感じで、長椅子の端にちょこんと座る。まるで、ちょっと冒険を冒してみたくなった子供が、初めて夜の世界に足を踏み入れた感じだ。
「あら、妖夢じゃない。貴方がこんな所でお酒を頼むだなんて、珍しい事もあるものね。」
「あ、貴方達は、」
早くも夜の世界の洗礼を受けそうだ。さっきまで飲んでいた二人が、この庭師に気がついたのだ。門番はともかく、メイドの方はかなり出来上がっていて、こういうのに初心そうな庭師にはかなり危険かも。
「貴方みたいなお子様が夜中に出歩いて酒だなんて、貴方の保護者は何しているのかしら。」
「幽々子様は、保護者じゃない。それに、子ども扱いをしないで!!」
「すぐにムキになるところが、お子様の証拠よ。悪い事は言わないから、お子様はすぐに帰って、歯でも磨いて布団に入りなさい。それとも、保護者の添い寝が無ければ、夜も満足に寝付けないのかしら?」
「何を!!」
一気に険悪な雰囲気になっちゃったな。酔っ払って見境無く挑発するメイドに、素面でもあっさりと挑発に乗る庭師。一見酔っていない庭師が有利に見えるが、意外にもメイドの顔は不敵である。止めないと、不味いかな。とりあえず、落ち着けるような歌でも歌おうかな?
「二人とも、いい加減にしましょう。ほら、ミスティアさんが迷惑そうな顔をしていますよ。咲夜さんも、酔っ払って人に突っかかるだなんて、みっともないですよ。」
どうやら門番の取り計らいで事無きを得たみたい。まだ酔っ払っているメイドも庭師も気を取り直して席に着いてくれた。
「えーと、今日は幽々子さんは一緒じゃないんですか。こういう場には、必ず来る様なイメージがあるんですけど。」
「幽々子様はもうお休みになられているわ。」
「ふうん、じゃあ妖夢が屋台に一人で来るなんて、一体どういう風の吹き回しなの?」
メイドに聞かれて、庭師が黙り込む。何となく、私としては背伸びをしたい年頃なんだと思うんだけどな。
「まあまあ咲夜さん、あまり聞かないであげましょうよ。妖夢さんにだって、きっと色々とあるんじゃないですか。」
「まあ、いいわ。それにしても、妖夢が屋台で酒とはね。この間の宴会で、真っ先に酔い潰れたのがよっぽど悔しかったのかしら。家だとあまりお酒の飲ませてもらえないから、屋台でお酒の練習とか。」
庭師が少し肩をすぼめた。どうやら、メイドの発言は少なからず当たっているみたい。主に黙って、影でお酒に強くなろうとしているなんて、何となく微笑ましいな。
よし、ここは応援も兼ねて、色んな歌を歌ってあげよう。
~~~~~~~~~~~♪
「妖夢、さっきから飲みながら溜息ばかりついているけど、どうしたの?」
「あ、いえ、何でもないわ。こっちの事だから、気にしないで。」
「何よ、煮え切らない娘ね。こういう酒の場なんだから、腹に溜めたものは出しちゃうものよ。ほら、聞いてあげるから、言ってみなさい。」
「咲夜さんの場合は、お酒の勢いで周囲に当り散らしているだけのような気もしますが。」
「うっさいわね、美鈴。放っといてよ。」
~~~~~~~~~~~~♪
「白玉楼には固定収入がある訳でも、大金がある訳でもない。それなのに、ちっとも私の言う事を聞いてくれない。私がもう少し食べる量を控えてほしいと言うと、決まって妖夢がどうにかしなさいって言うし。幽々子様は、私にこれ以上何をどうしろというのよ。」
「分かるわよ、妖夢。主の理不尽な言葉に泣きたくなる気持ち、痛いほど分かるわ。」
「咲夜さんの場合は違うでしょう。今日は、お嬢様に少し間を外してくれて言われただけじゃないですか。それも、なんでもない事で。」
「ほら、妖夢。泣いていないでもっと飲みなさい。」
「幽々子様は私が食費捻出でどれだけ苦労していると思っているの。私が頑張って内職をして稼いだお金を、なんだと思っているの。お金が自然に生えてくる訳無いじゃない。それなのに、あんなにも湯水のごとくお金を食費に使うだなんて。」
「まるで聞いていませんね。」
~~~~~~~~~~~~~♪
「ただでさえ食費にお金がかかっているというのに、最近では珍しい食材を食べてみたいなんて言い出しているし。そんな物買うお金が何処にあると思っているの。それなのに、たまに来る怪しげなローカル新聞の商品欄やどこかの店の通信販売のカタログを食い入るように見ているしまつ。本当に幽々子様は白玉楼の財政状況を分かっているの!?」
「うんうん、分かるわ、妖夢。貴方の苦労は手に取るように分かる。だから、もっと飲みなさい。」
「これ以上飲ますのは、流石に不味いんじゃないですか。妖夢さんはお酒にあまり強くないんですし。」
「うう、幽々子様。ほんの少し、ほんの少しでいいですから、今の財政状況と私の苦労を分かってくださいよ・・・」
「妖夢さん、そんなに自棄になってお酒ばかり飲んでいると体に悪いですよ。ほら、八目鰻の串揚げもちゃんと食べませんと。」
「すいません、美鈴さん。」
「今は辛いかもしれませんけど、私ならともかく妖夢さんならそのうちに必ず報われる日が来ますよ。だから、その日を夢見て今は耐えましょう。」
「美鈴が言うと、なんだか妙な説得力があるわね。」
~~~~~~~~~~~~~~♪
あれ、庭師が泣きながらお酒を飲んでいる。庭師が泣き上戸だというのは、少し以外だな。でも、この雰囲気、なんか良いかも。
~~~五人目~~~
あれからしばらく歌った後、またまた私の歌に誘われてお客がやって来た。今度のお客は、余り見かける事のない狐さん。何となく仕事帰りに一杯やっていくってな感じかな。
「店主、焼酎と八目鰻の串揚げを頼む。おっと、咲夜と美鈴と妖夢、屋台の脇には毛布に包まった文か。意外と豪勢なメンバーだな。」
「そういうあんたもここに飲みに来てるじゃない。それに、文は私達が来る前にリタイアしていたわ。」
「八目鰻の評判を聞いてな。鰻が冬眠しないうちに食べにいこうと思っていたのだ。なんでも、酒の摘みに最適だとか。」
うーん、そう言ってもらえると、私も頑張ってやっている甲斐があるというものだ。ひょっとして、焼き鳥を撲滅できる日は意外と近いかも?
「しかし、紅魔館のお前らはともかく、妖夢がこんな所で酒とは驚いたな。幽々子殿は知っているのか。」
「妖夢は社会勉強と自己鍛錬の真っ最中よ。保護者の同伴はいらないし、保護者が知る必要も無いわ。それよりも、あんたはこんな所に来て大丈夫なの。手のかかりそうな猫娘やいくら手があっても足りない万年寝太郎の主がいるんじゃなくて?」
「大丈夫だ。橙はさっき寝かしつけてきたし、紫様は珍しく昼間起きていたせいで叩いても起きそうに無い。今は、今日ようやく訪れた自由な時間だ。」
やれやれといった感じで美味しそうに串揚げを頬張るその姿を見て、さっきのイメージをかえた。何となく、寝る前に一杯飲みに来た専業主婦っていう感じかな。よく分からないけど、なんだか大変そうだ。
労いの意味を込めた歌を歌ってあげよう。
~~~~~~~~~~~~~~~♪
「紫様も、もう少しピシッとしてくださると、こちらとしても助かるんだけどな。家事の手伝いとかもそうだが、このままでは橙の教育によろしくない。」
「そうですか、でも何もしてくれないほうがいい時もありますよ。時々お嬢様は私に無理難題言って、私が困るのを楽しみますからね。お嬢様は退屈しのぎのつもりでしょうが、その度泣かされる私としては堪ったものじゃないですよ。」
「私も、やれこれが食べたい、やれこれが飲みたいと言われて困っていますよ。しかも、私の場合は本気で言われますからね。幽々子様は、一体どれだけ食べれば気がすむんでしょうか。もう、用意する身にもなってくださいよ。」
「そうか、シャキッとしたらしたで苦労が耐えないのか。なんとも前途多難な話だな。まあ、そう泣くな、妖夢。私もなんだか無性に泣きたい気分なんだから。」
~~~~~~~~~~~~~~~~♪
「人が精一杯働いているというのに、紫様は素知らぬ顔。橙だって私の手伝いをしてくれるというのに、何であの方は整然と昼寝ができるのだ!?」
「落ち着いてくださいよ、藍さん。どこも同じようなものみたいですし。」
「しかしだな、寝ているときはともかく、起きている時ぐらい手伝ってくれてもいいのではないか。それに、あのグーたらぶり。いつ橙に悪影響を及ぼすか分かったものではない。このごろ橙は夜更かしをするようになったし、心配で心配で気が気ではない。」
「そこんとこは、あんたが上手くやるしかないでしょうね。言ったところで直ったら、誰も苦労はしないわよ。ねえ、って、妖夢はもうダウン寸前かしら。」
「ああ、もう、頭痛いし熱いし、脱ぎてー」
「脱ぐな、この脱ぎ魔が。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~♪
「橙~頼むから~悪い子だけには~ならないでおくれ~」
「うっさいわね~さっきから橙~橙って~あんたの頭には橙しかないの~」
「お前に~私の~何が~分かると~言うのだ~橙は~私の~心のよりどころ~なんだ~」
「ふん~橙ごときの~お子様が~心の拠り所だなんて~笑わせてくれるわ~ほら美鈴も~言ってやんなさいよ~お嬢様は最高だって~って~なんだ~リタイアしちゃったの~」
「なんだと~お前には~橙の~良さが~分からないのか~」
「分かる訳~無いでしょう~あんな猫娘が~」
「お前に~橙の~良さを~教えてやる~橙はな~橙はな~」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉちぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん」
「五月蝿い!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~♪
ひとしきり歌い終えた後、気がつくと皆は眠っていた。ただ、狐さんの倒れている周りには酒の瓶の破片が散乱しているけど、何かあったのかな?
まあ、それはさておき、仕方が無いので皆を毛布で包んであげる。それから一人を屋台の脇にある予備の長椅子に寝かせてある天狗さんの横に、後の二人はそのままにしておいた。皆、よく眠っているな。
まだ夜明けまで時間はあるけど、この分だと今日はもう店仕舞いかな。
そっと起こさないように釜の火を落とし、赤提灯の火も消した。ただ、皆が起きるまで暇なので、歌でもうたっていよう。
~~~ミスティアの関係者(お客さん込み)名簿~~~
ミスティア・ローレライ:私の事。八目鰻の屋台の店主やっています。歌いだすと周りが見えなくなるけど、注文はちゃんと受け付けるので安心してね。
射命丸 文:お得意様。でも、今日は唯の飲んだ暮れ。普通に酔って、普通に酔い潰れる、普通な妖怪なのかも。通称、天狗。
十六夜 咲夜:頻度は多くないけど、たまに来るお客さん。普段は割りと良い人なんだけど、酔うと質が悪くなるの。所構わず絡みだす絡み上戸かしら。通称、メイド。
紅 美鈴:メイドさんと同じく、たまに来るお客さん。酔っても騒がなくて良い妖怪なんだけど、他人と飲むとどうしても受けにまわっちゃうみたい。こう、飲み会の席で上司に散々愚痴られる平社員てきな感じかな。通称、門番。
魂魄 妖夢:今まで来た事が無かったお客さん。飲むと泣き出す泣き上戸。でも、泣きながら飲む姿はちょっと可愛い。通称、庭師。
八雲 藍:この妖怪も同じく今まで来た事の無かったお客さん。お酒が入ると無性に脱ぎたくなる困った妖怪で、脱ぎ魔。ひょっとして、素でも脱いでいるかも。通称、狐さん。
*一部のキャラが、酔って多少壊れています。言葉遣いも多少変わっています。ご注意を。
*私的設定として、酔った時の上戸を決めています。また、それ以外にも私的設定が少しありますのでご容赦ください。
結構な重労働になるが屋台を所定の位置に運んで、釜に火を入れ、赤提灯に火を灯す。これで準備完了。後は私の歌声に誘われて客がやって来るのを待つだけ。
さあ、今日も焼き鳥撲滅に向けて頑張ろう。
~~~一人目~~~
早くも私の歌声に引かれて客がやって来た。っと思ったら、なんだ、意外と常連な妖怪か。せっかく今日は新しい客を鳥目にしてやろうと思ったのにな。でも、お客はお客だし、この妖怪とは仲が良い。だから、うんと歌ってあげよう。
あれ、今日はこのお客、なんだか顔が暗いな。何があったんだろう。一応、鳥仲間としては心配だ。
「ミスティアさん、お酒一升瓶でお願い。」
うわ、どしょっぱつからヘビーな注文が来たな。よし、景気付けに明るい歌を歌ってあげよう。
二曲、三曲と調子よく歌っていると、追加の注文が入る。また一升瓶ごとの注文で、よほど飲み足りないと見た。
「お客さん、どうしたの。今日はいつもよりもお酒が過ぎてるよ。お酒ばかり飲んでないで、ちゃんと八目鰻も食べなきゃ体に毒だから。」
「いいんです、今日はお酒に浸かりたい気分なんです。」
「でも、天狗って飲兵衛じゃなかったの?」
「時々、それが憎くなりますよ。まあ、それでも酔う方法ってのが無い訳じゃないんですけど。悪酔いしちゃいますけどね。」
またお客さんが飲みだしたので、私は歌を再会する。天狗の酔い方ってのは初耳だったけど、私にとってはどうでもいい事。歌に関係なければ、興味は無や。
「いいですね、ミスティアさんは。なんとなく悩みなんて無さそうですよね。」
「私は歌えていれば、それで幸せよ。」
「羨ましい限りです。」
「じゃあ、お客さんも歌おうよ。そんな暗い顔をしていないで、心の底から歌おう。そうすれば、きっと幸せな気分になれるよ。」
「歌はいいですけど、心の底のものを吐き出すってのには賛成です。ちょっと聞いてくれますか?」
酔いのせいで大分赤くなった顔をしながら、お客さんが喋りだす。はじめはポツポツとだったが、酒が進むにつれてだんだんと色んな事を話し出した。
「そりゃあ~私が好きでやっている事ですけどね~。でも、一週間の苦労が水の泡に消えるのは耐え難い物なんですよ~。」
~~~♪
「確かに~私がチルノさんの事を侮っていたのは~事実ですよ~。」
~~~~♪
「ですけどね~あそこでアイシクルフォールに~当たるとは~思わなかったんですよ~。あんな避け方が分かれば~確実に避けれるスペルカードなんて~当たるはずが無いじゃないですか~。」
~~~~~♪
「それなのに~なんで今回に限って~弾幕が変わっているんですか~こんちくしょう~~。お陰でカメラはいじられるし~いきなりフィルムを抜き出すし~あれを撮る為にどれだけ苦労したと思っているんですか~あのスカタンが~~ウィク。」
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しばらく気持ちよく歌っていたら、お客さんが今にも眠りそうになって居るのに気がついた。まだ一応目を開いてぶつぶつ何かを言っているけど、もう正気かどうかは判別つきそうにないや。でも、ここで眠られると後から来るお客さんの迷惑になりそうだから、帰ってもらおう。
「お客さん、駄目ですよ。眠るんだったら、自分の家で寝なきゃ。」
ありゃま、寝ちゃったよ。でも、何となく起こすのも可愛そうなので、毛布を掛けてあげてそのまま寝かせてあげよう。少し席を替わってもらうけど。
~~~二人目と三人目~~~
のんびりと歌っていたら、よく見かけるメイドと何処かで見た事があるような門番が私の歌に引き寄せられて来た。でも、もう既に何処かで飲んできているみたいで、割と出来上がっているみたい。
「美鈴、もう一軒飲んでいくわよ。」
「ええっ、またですか。もう帰りましょうよ。」
「何よ、今日は酒に付き合うって言ったのは、美鈴でしょう。つべこべ言わずに、もう一軒ぐらい付き合いなさい。」
訂正。出来上がっているのはメイドだけで、門番の方は割りと素面。て言うか、酔うに酔えない様子みたい。構図としては、無理やり部下を引きずり回している上司ってな感じかな。
「親父、酒!!」
「咲夜さん、ミスティアさんに失礼ですよ。いくら猛禽類で、あの鋭い爪と口で人間を食べているからといって、一応は少女なんですから。ああ、ミスティアさん、余り気にしないでください。咲夜さんは随分と酔っ払っているだけですから。後、八目鰻の串揚げ二人分もお願いしますね。」
随分と色々と酷い事言われたような気がするが、歌でも歌って気を紛らわそう。でも、なんだか珍しいな。メイドは酔っ払っているというより、荒れているっていう感じがする。
「ああ、咲夜さん。そんな一気飲みばかりしたら、体に悪いですよ。ほら、串揚げも食べませんと。」
「うっさいわね、私がどう酒を飲もうと勝手でしょう。私はまだまだ飲み足りないのよ。」
随分と荒れているな。頼むから、暴れないで欲しいな。
「それより咲夜さん、こんなに遅くまで飲んでいて良いんですか。いくらお嬢様が昼間起きていたとは言え、いい加減館に戻った方が良いような気がしますけど。」
「今日はいいのよ。お嬢様は博麗神社に行く為に、無理して昼間中起きていたんですから。お嬢様にしてみれば、ほぼ貫徹ね。明日の夜まで、何かあってもまず起きないわ。」
言うとすぐにまたお酒を一気飲みしだす。何か忌々しい事を思い出したみたいに、自棄になってお酒を飲んでいる。そのメイドの横で、何か諦めたように門番が飲んでいる。永遠と愚痴を聞かされている門番に、何となく同情しちゃうな。
「まったく、お嬢様はあんな巫女の何処が良いと言うのよ。あんな一日中何もしないでボーとしているだけの巫女が、お嬢様の気を引こうなんざ十年早いっていうのよ。」
「いくら博麗神社でお嬢様にまったく相手にされなかったり、会話に入れてもらえなかったりしたとしても、それは言いすぎですよ。」
「うっさいわね、こちとらお嬢様の為に献身的に働いてきたのよ。雨の日も風の日も、例え夜中だろうが弾幕の中だろうが、身を粉にして尽くしてきたの。それなのに、あんな降って湧いたプー太郎巫女にお嬢様はうつつを抜かしているのよ。酒でも飲んでなきゃ、やってられないわ!!」
あー、色々と重症だな。とりあえず、落ち着けるように心が静まるような歌でも歌ってあげよう。
~~~~~~~~♪
「咲夜さん、もういい加減お酒を控えた方がいいと思いますよ。これ以上飲むと、明日のお仕事に支障をきたしかねませんし。」
「仕事がなんだって言うのよ。お嬢様は私が必死になって仕事をしても、別になんとも思ってくれないわ。だったら、仕事をすることに何の意味があるって言うのよ。」
「それはいくらなんでも自棄になりすぎですよ。咲夜さんだって別に、お嬢様の気を引く為に仕事をしてきた訳じゃないでしょう。些細な事でいじけないでくださいよ。」
「・・・いいわよね、貴方は。いつもいつも暇そうで。」
「そういう言い方、止めましょうよ。」
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「もう帰りましょうよ。いくらなんでも、明日出勤できませんよ。」
「別に、私がいなくたって困る事なんか無いでしょう。それより、私がいなくなった事で、皆が喜び叫ぶ姿が目に浮かぶわ。」
「そんなこと無いですよ。咲夜さんがいてくれませんと、滞る事が山ほど出てきます。皆は意外とのんびりしていますからね。ですから、変に考えるのは止めましょうよ。」
「よく言うわ。皆が私に後ろ指を差している事ぐらい知っているのよ。」
「そんな事ありません。あんな激務のポスト、誰もつきたがらなかったので、咲夜さんがついてくれた事で皆感謝しているぐらいなんですから。一般メイドはともかく管理職以上のメイドには戦々恐々のポストで有名でしたからね。だから、咲夜さんがあれこれ言っても、誰も文句を言わないはずですよ。だから、酔って悪く考えるのは止めましょう。」
「何よ、どうもすんなりメイド長になれたと思ったら、私が人柱になったって言う事?」
「ま、まあ、そういうものの見方もありますね。」
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「咲夜さん・・・」
「まだよ、まだ飲み足りないの。帰りたかったら、貴方だけでも帰っていいわ。今まで私の相手をしてくれてありがとう。でも、これ以上は無理に付き合う必要はないわ。」
「泥酔した咲夜さんを残していける訳無いじゃないですか。ちゃんと紅魔館に送り届けないと、近所迷惑になってしまいますから。」
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思う存分歌っていると、なにやら険悪なムードが漂ってきた。どうやら酔ったメイドに門番が絡まれているみたい。いるんだよね、お酒を飲むとやたらと絡みたくなる人って。なんか、門番がいらない事言っちゃったのかな?
~~~四人目~~~
今日も絶好調の歌に引き寄せられて来たのか、よく見かける庭師がやって来た。ただ、何故か知らないが少し戸惑っているみたい。よこよく考えてみると、庭師が来るのは初めてのような気がする。
「あ、あの、お酒をお願いします。」
少し緊張した感じで、長椅子の端にちょこんと座る。まるで、ちょっと冒険を冒してみたくなった子供が、初めて夜の世界に足を踏み入れた感じだ。
「あら、妖夢じゃない。貴方がこんな所でお酒を頼むだなんて、珍しい事もあるものね。」
「あ、貴方達は、」
早くも夜の世界の洗礼を受けそうだ。さっきまで飲んでいた二人が、この庭師に気がついたのだ。門番はともかく、メイドの方はかなり出来上がっていて、こういうのに初心そうな庭師にはかなり危険かも。
「貴方みたいなお子様が夜中に出歩いて酒だなんて、貴方の保護者は何しているのかしら。」
「幽々子様は、保護者じゃない。それに、子ども扱いをしないで!!」
「すぐにムキになるところが、お子様の証拠よ。悪い事は言わないから、お子様はすぐに帰って、歯でも磨いて布団に入りなさい。それとも、保護者の添い寝が無ければ、夜も満足に寝付けないのかしら?」
「何を!!」
一気に険悪な雰囲気になっちゃったな。酔っ払って見境無く挑発するメイドに、素面でもあっさりと挑発に乗る庭師。一見酔っていない庭師が有利に見えるが、意外にもメイドの顔は不敵である。止めないと、不味いかな。とりあえず、落ち着けるような歌でも歌おうかな?
「二人とも、いい加減にしましょう。ほら、ミスティアさんが迷惑そうな顔をしていますよ。咲夜さんも、酔っ払って人に突っかかるだなんて、みっともないですよ。」
どうやら門番の取り計らいで事無きを得たみたい。まだ酔っ払っているメイドも庭師も気を取り直して席に着いてくれた。
「えーと、今日は幽々子さんは一緒じゃないんですか。こういう場には、必ず来る様なイメージがあるんですけど。」
「幽々子様はもうお休みになられているわ。」
「ふうん、じゃあ妖夢が屋台に一人で来るなんて、一体どういう風の吹き回しなの?」
メイドに聞かれて、庭師が黙り込む。何となく、私としては背伸びをしたい年頃なんだと思うんだけどな。
「まあまあ咲夜さん、あまり聞かないであげましょうよ。妖夢さんにだって、きっと色々とあるんじゃないですか。」
「まあ、いいわ。それにしても、妖夢が屋台で酒とはね。この間の宴会で、真っ先に酔い潰れたのがよっぽど悔しかったのかしら。家だとあまりお酒の飲ませてもらえないから、屋台でお酒の練習とか。」
庭師が少し肩をすぼめた。どうやら、メイドの発言は少なからず当たっているみたい。主に黙って、影でお酒に強くなろうとしているなんて、何となく微笑ましいな。
よし、ここは応援も兼ねて、色んな歌を歌ってあげよう。
~~~~~~~~~~~♪
「妖夢、さっきから飲みながら溜息ばかりついているけど、どうしたの?」
「あ、いえ、何でもないわ。こっちの事だから、気にしないで。」
「何よ、煮え切らない娘ね。こういう酒の場なんだから、腹に溜めたものは出しちゃうものよ。ほら、聞いてあげるから、言ってみなさい。」
「咲夜さんの場合は、お酒の勢いで周囲に当り散らしているだけのような気もしますが。」
「うっさいわね、美鈴。放っといてよ。」
~~~~~~~~~~~~♪
「白玉楼には固定収入がある訳でも、大金がある訳でもない。それなのに、ちっとも私の言う事を聞いてくれない。私がもう少し食べる量を控えてほしいと言うと、決まって妖夢がどうにかしなさいって言うし。幽々子様は、私にこれ以上何をどうしろというのよ。」
「分かるわよ、妖夢。主の理不尽な言葉に泣きたくなる気持ち、痛いほど分かるわ。」
「咲夜さんの場合は違うでしょう。今日は、お嬢様に少し間を外してくれて言われただけじゃないですか。それも、なんでもない事で。」
「ほら、妖夢。泣いていないでもっと飲みなさい。」
「幽々子様は私が食費捻出でどれだけ苦労していると思っているの。私が頑張って内職をして稼いだお金を、なんだと思っているの。お金が自然に生えてくる訳無いじゃない。それなのに、あんなにも湯水のごとくお金を食費に使うだなんて。」
「まるで聞いていませんね。」
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「ただでさえ食費にお金がかかっているというのに、最近では珍しい食材を食べてみたいなんて言い出しているし。そんな物買うお金が何処にあると思っているの。それなのに、たまに来る怪しげなローカル新聞の商品欄やどこかの店の通信販売のカタログを食い入るように見ているしまつ。本当に幽々子様は白玉楼の財政状況を分かっているの!?」
「うんうん、分かるわ、妖夢。貴方の苦労は手に取るように分かる。だから、もっと飲みなさい。」
「これ以上飲ますのは、流石に不味いんじゃないですか。妖夢さんはお酒にあまり強くないんですし。」
「うう、幽々子様。ほんの少し、ほんの少しでいいですから、今の財政状況と私の苦労を分かってくださいよ・・・」
「妖夢さん、そんなに自棄になってお酒ばかり飲んでいると体に悪いですよ。ほら、八目鰻の串揚げもちゃんと食べませんと。」
「すいません、美鈴さん。」
「今は辛いかもしれませんけど、私ならともかく妖夢さんならそのうちに必ず報われる日が来ますよ。だから、その日を夢見て今は耐えましょう。」
「美鈴が言うと、なんだか妙な説得力があるわね。」
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あれ、庭師が泣きながらお酒を飲んでいる。庭師が泣き上戸だというのは、少し以外だな。でも、この雰囲気、なんか良いかも。
~~~五人目~~~
あれからしばらく歌った後、またまた私の歌に誘われてお客がやって来た。今度のお客は、余り見かける事のない狐さん。何となく仕事帰りに一杯やっていくってな感じかな。
「店主、焼酎と八目鰻の串揚げを頼む。おっと、咲夜と美鈴と妖夢、屋台の脇には毛布に包まった文か。意外と豪勢なメンバーだな。」
「そういうあんたもここに飲みに来てるじゃない。それに、文は私達が来る前にリタイアしていたわ。」
「八目鰻の評判を聞いてな。鰻が冬眠しないうちに食べにいこうと思っていたのだ。なんでも、酒の摘みに最適だとか。」
うーん、そう言ってもらえると、私も頑張ってやっている甲斐があるというものだ。ひょっとして、焼き鳥を撲滅できる日は意外と近いかも?
「しかし、紅魔館のお前らはともかく、妖夢がこんな所で酒とは驚いたな。幽々子殿は知っているのか。」
「妖夢は社会勉強と自己鍛錬の真っ最中よ。保護者の同伴はいらないし、保護者が知る必要も無いわ。それよりも、あんたはこんな所に来て大丈夫なの。手のかかりそうな猫娘やいくら手があっても足りない万年寝太郎の主がいるんじゃなくて?」
「大丈夫だ。橙はさっき寝かしつけてきたし、紫様は珍しく昼間起きていたせいで叩いても起きそうに無い。今は、今日ようやく訪れた自由な時間だ。」
やれやれといった感じで美味しそうに串揚げを頬張るその姿を見て、さっきのイメージをかえた。何となく、寝る前に一杯飲みに来た専業主婦っていう感じかな。よく分からないけど、なんだか大変そうだ。
労いの意味を込めた歌を歌ってあげよう。
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「紫様も、もう少しピシッとしてくださると、こちらとしても助かるんだけどな。家事の手伝いとかもそうだが、このままでは橙の教育によろしくない。」
「そうですか、でも何もしてくれないほうがいい時もありますよ。時々お嬢様は私に無理難題言って、私が困るのを楽しみますからね。お嬢様は退屈しのぎのつもりでしょうが、その度泣かされる私としては堪ったものじゃないですよ。」
「私も、やれこれが食べたい、やれこれが飲みたいと言われて困っていますよ。しかも、私の場合は本気で言われますからね。幽々子様は、一体どれだけ食べれば気がすむんでしょうか。もう、用意する身にもなってくださいよ。」
「そうか、シャキッとしたらしたで苦労が耐えないのか。なんとも前途多難な話だな。まあ、そう泣くな、妖夢。私もなんだか無性に泣きたい気分なんだから。」
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「人が精一杯働いているというのに、紫様は素知らぬ顔。橙だって私の手伝いをしてくれるというのに、何であの方は整然と昼寝ができるのだ!?」
「落ち着いてくださいよ、藍さん。どこも同じようなものみたいですし。」
「しかしだな、寝ているときはともかく、起きている時ぐらい手伝ってくれてもいいのではないか。それに、あのグーたらぶり。いつ橙に悪影響を及ぼすか分かったものではない。このごろ橙は夜更かしをするようになったし、心配で心配で気が気ではない。」
「そこんとこは、あんたが上手くやるしかないでしょうね。言ったところで直ったら、誰も苦労はしないわよ。ねえ、って、妖夢はもうダウン寸前かしら。」
「ああ、もう、頭痛いし熱いし、脱ぎてー」
「脱ぐな、この脱ぎ魔が。」
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「橙~頼むから~悪い子だけには~ならないでおくれ~」
「うっさいわね~さっきから橙~橙って~あんたの頭には橙しかないの~」
「お前に~私の~何が~分かると~言うのだ~橙は~私の~心のよりどころ~なんだ~」
「ふん~橙ごときの~お子様が~心の拠り所だなんて~笑わせてくれるわ~ほら美鈴も~言ってやんなさいよ~お嬢様は最高だって~って~なんだ~リタイアしちゃったの~」
「なんだと~お前には~橙の~良さが~分からないのか~」
「分かる訳~無いでしょう~あんな猫娘が~」
「お前に~橙の~良さを~教えてやる~橙はな~橙はな~」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉちぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん」
「五月蝿い!!」
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ひとしきり歌い終えた後、気がつくと皆は眠っていた。ただ、狐さんの倒れている周りには酒の瓶の破片が散乱しているけど、何かあったのかな?
まあ、それはさておき、仕方が無いので皆を毛布で包んであげる。それから一人を屋台の脇にある予備の長椅子に寝かせてある天狗さんの横に、後の二人はそのままにしておいた。皆、よく眠っているな。
まだ夜明けまで時間はあるけど、この分だと今日はもう店仕舞いかな。
そっと起こさないように釜の火を落とし、赤提灯の火も消した。ただ、皆が起きるまで暇なので、歌でもうたっていよう。
~~~ミスティアの関係者(お客さん込み)名簿~~~
ミスティア・ローレライ:私の事。八目鰻の屋台の店主やっています。歌いだすと周りが見えなくなるけど、注文はちゃんと受け付けるので安心してね。
射命丸 文:お得意様。でも、今日は唯の飲んだ暮れ。普通に酔って、普通に酔い潰れる、普通な妖怪なのかも。通称、天狗。
十六夜 咲夜:頻度は多くないけど、たまに来るお客さん。普段は割りと良い人なんだけど、酔うと質が悪くなるの。所構わず絡みだす絡み上戸かしら。通称、メイド。
紅 美鈴:メイドさんと同じく、たまに来るお客さん。酔っても騒がなくて良い妖怪なんだけど、他人と飲むとどうしても受けにまわっちゃうみたい。こう、飲み会の席で上司に散々愚痴られる平社員てきな感じかな。通称、門番。
魂魄 妖夢:今まで来た事が無かったお客さん。飲むと泣き出す泣き上戸。でも、泣きながら飲む姿はちょっと可愛い。通称、庭師。
八雲 藍:この妖怪も同じく今まで来た事の無かったお客さん。お酒が入ると無性に脱ぎたくなる困った妖怪で、脱ぎ魔。ひょっとして、素でも脱いでいるかも。通称、狐さん。
ようですよ。
最近は小洒落た飲み屋が多くて、飲み屋の親父に愚痴零せるような店が
少なくて残念。まーみすちーは客の愚痴なんざ聞いちゃいないですが。
この甲斐甲斐しい美鈴と世話をされる咲夜さんに皆はときめかぬのだろうか?
それはさて置き,面白かったです。
酔いどれ幻想郷を堪能しました。
咲夜さんとか特に
良い店良い酒良い仲間。そして愚痴を聞いてくれる(?)店主。
…幻想卿の外では、もう失われてしまったのでしょうか?
そう思ったのは初めてです。
次号の新聞に今日のお話がすっぱ抜かれると言うオチかと思いました。
気遣いしているみすちーと、最期の名簿が可愛いです。
と言うか、やっぱり脱ぐんかい狐はw
面白かったです。他の人達も見てみたい。
いや、ほのぼのは違うでしょうか? でも、何かあったかい感じがしましたよ。屋台は良いですねぇ……。
饂飩とかこまっちゃんとか、その辺りが来ても面白そうです。こまっちゃんなんか聞き上手ですし。
咲夜さんが絡むのは想像しにくい…というかできなかったですね。
新しい着眼点ありがとう。
私はむしろ美鈴が暴走して咲夜さんの一撃で撃沈(ついでにゲ○吐く)なイメージが…
泣き上戸の庭師萌え
それがBGMの真骨頂。
次回作への期待を込めて90点。
お仕置きみたいなオチかと思ったけど、恙無く(?)終わったみたいでよかったよかった
にしても、酒は本性をさらけ出すというが・・・酒に飲まれちゃ駄目ですよ、皆さん?
常日頃苦労しまくりの哀れなるウワバミ従者達に幸あれ
おしい!
そういえばミスチーって店やっていたんでしたっけ。食べられるイメージしかなかったんですが(ぉ
ああ、こんな居酒屋で友人どもと酒飲んでクダ巻きたいなあ…とか思いました。
こんなお話をもっと読みたいものです。
最後、専業主婦(属性:狐)は一升瓶の底で殴られたんでしょうねぇ…南無
鰻食いたい……。
私も屋台に行っても良いでしょうか??
そんな俺は学生なんで呑めませんが
こういう場所がほしいですw