微エロかもしれません
百合風味かもしれません
媚薬かもしれません
嫌いな方は戻りましょう。
花が咲き乱れる、人気も、妖怪も、幽霊さえも居ない、秘密の場所。
そこは、秘密の場所。
私――小野塚 小町のお昼ねスポットだ。
今もお日様の、柔らかくて暖かい日差しを全身に受けながら、彼女は至福の時間をすごしていた。
「んふー……、いい気持ち……」
仕事中にもかかわらず全身を弛緩させ、日向ぼっこに興じていると
ポサリ、と傍らに何かが落ちる音がした。
……おかしいなぁ、周囲にリンゴの木なんて無いはずだけど……
「ぁふ……、ん?」
気になるので起きて周囲を見渡す。
「……リボン?」
そう、赤いリボンが落ちていた。
明らかに、その場には不釣合いな代物。
「……だれか落としたのかな?」
まぁいいや、拾っとこう
緩慢な動作で起き上がると、赤いリボンを拾い上げようと手を伸ばす。
丁度、拾おうと屈んだその時、不吉な影が小町を覆う。
「!?…………、あの、これはですね……、その……」
「へぇ、あなたは上司と喋る時はお尻を突き出して喋るって躾けられたのですか……」
うぁー……、やっぱり……
恐る恐る振り向き、すかさず謝り倒す。
「すみません四季様、すみません」
シシオドシのように、何度も何度も頭を下げる。
頭を下げるたびに、小町の豊かな胸がたゆん、と揺れる。
「……もう、あなたは直ぐに謝ればいいと思って……」
四季映姫・ヤマザナドゥ
あたいの上司で、閻魔様。
よく巡回して、あたいを見つけてはしょっちゅう叱る。
……あたい、四季様に嫌われてるのかな?
「もう……、気をつけ!」
「きゃんッ」
突然の号令に、ビシッと直立不動になる。
当然、手の中の赤いリボンを握り締めることになる
ぅう……説教やだよぉ……誰か助けてーッ
映姫が直立する小町をジロジロと見る。
「そう、あなたは少し……」
(ふふ……助けてあげましょうか?)
どこからか声がする。
……もう、誰でもいいから助けてーッ
ふッと、急に音が消え薄暗くなる。
「あ……れ?」
音が無いどころか、四季様が止まっている。
それに……
「はぁい♪」
赤いリボンを握った手から、”空間の切れ目”ができて、そこから女性が顔を覗かせていた。
「あんた……だれ?」
「もう、あなたが私を拾って呼んだのでしょ?」
と、扇で口元を隠し、クスクスと笑う。
……リボンの妖怪?
って、そんな妖怪見たことも聞いたことも無い
「まぁいいや。 それで、リボンのあなたは四季様に何をしたの?」
動かなくなった四季様は、さっきから瞬き一つしていない。
「あぁ、静と動の境界を弄ったのよ。
今のこの場は私と、私の一部を握っている貴女以外は全て停止しているわ」
「ふぅん……、それでどうやってあたいを助けてくれるの?」
扇で口元を隠したまま、ニヤーっと薄気味悪く目を細める。
「うふふ……、それはこの境界を戻してからの、お楽しみよ
それじゃあ、境界を戻すわよ~」
ザァッと、風の音と、揺れる草の音が一度に甦る。
光の量も急に元に戻ったため、思わず顔をしかめる
「ンッ……」
数回の瞬きの後、目を開くと……
あ、あれ? 居ない……
「四季様?」
「……なに?」
声が下から聞こえる。
まさか……、私と四季様は同じくらいの背……
視線を少し下げてみる……
居た!
って、なんでぇえええ?
「……なによ、こまち?」
何故か、四季様が子供の姿になっていたのだ
(そうそう、服のサイズはサービスよ♪)
あの女の声が聞こえるが、握っていたリボンはいつの間にか無くなっている。
……どこから? いや、それよりも
あのリボンの女が四季様を子供にした事は確かね……
でも、どうやって?
「もう、こまちはすこし……」
困惑する私を尻目に、小さくなった四季様はお説教を続けようとしていた。
ぅー、小さくなってもお説教だなんてー
まぁ、多少は気が楽になったけど……
「こまちは……、すこし……んと……、なんだっけ?」
「へ?」
もしかして四季様……説教の内容を忘れちゃった?
妙な声を出した私を、小さな四季様はジト目で睨みつける
「ぅー……」
ジィイイイッ
どんなに唸っても、思い出せないらしく段々涙目になってくる
……ちょっと可愛いかも……
「むぅーッ! んでもいいや、こまちは地獄行きー!」
「へ? ……ぇえええぇぇえッ!?」
罪状読み上げすら無しですか?
(あらあら~、いきなり地獄行きになちゃったわねぇ)
って、誰のせいよ!
「ぅう、四季様ぁそんな殺生です……」
「地獄行き~、地獄行き~」
王笏でを振り回しながら地獄行きを嬉しそうに連呼する。
完全に子供だ
だが、子供とはいえ閻魔は閻魔だ。
その判決は閻魔自身が撤回しない限り絶対である。
そして、四季様は過去一度も撤回したことは無い。
(あら、相手は子供よ? 諦めないで……)
だから、あんたが言うな!
「四季様ぁ、後生ですから、なんでもしますから~」
「うー、……こまち、なんでもするの?」
王笏を振り回すのをやめて、あたいを見つめる。
「はい……なんでもします、だから地獄行きは勘弁を……」
子供の身長にあわせて、前屈みになって両手を合わせる。
「んー……、どうしよ……ぅ……かな……」
映姫の視線が一点へ集中する。
「………それじゃあ……こまち」
「は、はい、なんですか?」
「りょうてひろげて、じっとして!」
「こう、ですか……?」
言われたとおり、両手を広げる。
「うん……、わぁい」
満足そうに微笑むと子供になった映姫の、小柄な体が、小町の両腕の中に飛び込んでくる。
もふッ!
「うわわッ、四季様?」
「んふー……、うふふ……」
すりすり~、すりすり~
嬉しそうに、小町の豊かな胸に頬ずりする。
(……あらまぁ♪)
「あ、あの、四季様?」
「こまちのおむね、おっきくて、やらかーぃ……、んふー……」
映姫はその、ちっちゃな体で更にぎゅっと抱きつく。
「……し、四季様は……おっきいのが好きなんですか?」
「うん、だいすきーッ」
四季様……、……か……、可愛い……
四季様はもう一度、私の胸に顔を埋めると小さく呟いた
「んふ……、かぁさまみたい……」
……し、四季様ッ!!!
思わずちっちゃくなった映姫の体をと抱きしめる。
「あッ……」
くぅううううッ、可愛いよぉ……
ぎゅーっと、思わず力が入ってしまう。
「こ、まち……ぃ」
苦しそうな声で自分の名前を呼ばれて、あわてて映姫を離す。
「あぁ、すみません四季様ッ……、い、痛くなかったですか?」
心配そうに覗き込む小町に
「うぅん、……もっと……ぎゅってして……ほしいなぁ……」
映姫は下を向いて恥ずかしそうに、おねだりする
ずきゅーーーーーーーーーーんッ
小町は完全に心を射抜かれてしまった。
「―――ッッッ!!!」
そんな小町に上目使いでトドメの一言。
「……ダメ?」
「ぁ……、アびゅッ♪」
奇声を発して、鼻から赤いアーチを噴出してぶっ倒れる小町。
その表情は、まるで生涯に一遍の悔いの無い、至福に満ちた笑顔だった。
▼△▼△▼
すっごく、気持ちが良い……
後頭部が柔らかいし……
頬を撫でる風も清々しい……
でも……あれ?
なんで、後頭部が柔らかいの?
「小町、……小町」
あ……四季様に呼ばれてる……
「んッ……、な、なんでしょうか?」
目を開けると、四季様が覗き込んできた。
「うわッ、四季様!?」
「よかった……、お説教を始めたら突然倒れるんだから……びっくりするでしょ?」
あ……後頭部が柔らかかったのは、四季様の膝枕だったんだ……
……あれ?
お説教始めたら倒れたって……
さっきの小さい四季様は……夢だったの?
でも、まぁ……、いっか……
お説教から解放されたのは間違いないんだから……
「気分が悪いのなら……言わないとダメでしょう?」
覗き込んだまま、四季様にやんわりと叱られる。
こんなに優しい四季様って久しぶりだなぁ……
それに、顔が逆さまに見えるから、なんだか叱られている気分がしない……
視線をさらに上に移すと、道服に包まれた大きなふくらみが見える。
「……あ、四季様……」
「うん、どうかした?」
「……四季様、実は大きい……ですよね?」
映姫も、小町の視線に気がつく。
「ば……馬鹿なこと言わないの! ……それに私は……、自分のより……」
ごにょごにょと言葉を濁す。
こんな四季様、初めてだ……
「……他の人の大きい胸が好きだとか?」
「―――ッッ!! う、うるさい、もう膝枕はヤメ!」
と、顔を真っ赤にして突然立ち上がったせいで、後頭部を地面に打ち付けてしまう。
「あいたッ、……四季様、ひどい……」
後頭部を摩りながら、小町も起き上がる。
「ほら、仕事に戻りなさいッ、ホラ、早く!」
そう、早口で捲し上げると映姫は閻魔庁舎へと歩を進める。
「あぁん、四季様ー、待って下さいよ~」
恥ずかしそうに、足早に去ってゆく上司の背を小町は追いかけるのだった。
▼△▼△▼
場所は変わって、とある辺境のとあるお屋敷のとある、部屋。
突然クスクスと笑い出す屋敷の主人――八雲 紫その人である。
「紫様、なに笑ってるんですか?」
主人に問うのは、彼女の式である私――八雲 藍の役目だった。
「ふふ、弱点をみつけたのよ」
「弱点、ですか……」
「えぇ……、まさか、あんな趣味があるとはねぇ……うふふ……これで、地獄も私の自由ね~」
……地獄!?
なんでまた、そんな場所?
「それにね、今後進展があるようにーって、帰り際に少しだけ頑固と素直の境界をすこーしだけ弄っておいたのよ」
「……進展、ですか……?」
って、急に呼び出されて鼻血の処理をしてる最中、そんな事をしてたんですか……
「えぇ、進展♪ ……次覗いたら、刺激の強いシーンが見られるかも……うふふふふふ……」
どこの誰かは知らないけれど、紫様に目を付けられたのが運の尽き。
ご愁傷様……
「あ、そういえば……」
「あら、なにかしら?」
「冥界でなにやらやってるようですよ……春がどうのこうのと……」
「ふーん……、まぁいいわ。 私は寝なおすから、後はお願いね~」
手をひらひらさせながら、スキマに身を落とす。
「……ふぅ」
まったく、たまに起きると、気まぐれで訳のわからない事をして、
その後始末を私に押し付けるんだから……
藍はもう一度、溜息を吐くのだった
百合風味かもしれません
媚薬かもしれません
嫌いな方は戻りましょう。
花が咲き乱れる、人気も、妖怪も、幽霊さえも居ない、秘密の場所。
そこは、秘密の場所。
私――小野塚 小町のお昼ねスポットだ。
今もお日様の、柔らかくて暖かい日差しを全身に受けながら、彼女は至福の時間をすごしていた。
「んふー……、いい気持ち……」
仕事中にもかかわらず全身を弛緩させ、日向ぼっこに興じていると
ポサリ、と傍らに何かが落ちる音がした。
……おかしいなぁ、周囲にリンゴの木なんて無いはずだけど……
「ぁふ……、ん?」
気になるので起きて周囲を見渡す。
「……リボン?」
そう、赤いリボンが落ちていた。
明らかに、その場には不釣合いな代物。
「……だれか落としたのかな?」
まぁいいや、拾っとこう
緩慢な動作で起き上がると、赤いリボンを拾い上げようと手を伸ばす。
丁度、拾おうと屈んだその時、不吉な影が小町を覆う。
「!?…………、あの、これはですね……、その……」
「へぇ、あなたは上司と喋る時はお尻を突き出して喋るって躾けられたのですか……」
うぁー……、やっぱり……
恐る恐る振り向き、すかさず謝り倒す。
「すみません四季様、すみません」
シシオドシのように、何度も何度も頭を下げる。
頭を下げるたびに、小町の豊かな胸がたゆん、と揺れる。
「……もう、あなたは直ぐに謝ればいいと思って……」
四季映姫・ヤマザナドゥ
あたいの上司で、閻魔様。
よく巡回して、あたいを見つけてはしょっちゅう叱る。
……あたい、四季様に嫌われてるのかな?
「もう……、気をつけ!」
「きゃんッ」
突然の号令に、ビシッと直立不動になる。
当然、手の中の赤いリボンを握り締めることになる
ぅう……説教やだよぉ……誰か助けてーッ
映姫が直立する小町をジロジロと見る。
「そう、あなたは少し……」
(ふふ……助けてあげましょうか?)
どこからか声がする。
……もう、誰でもいいから助けてーッ
ふッと、急に音が消え薄暗くなる。
「あ……れ?」
音が無いどころか、四季様が止まっている。
それに……
「はぁい♪」
赤いリボンを握った手から、”空間の切れ目”ができて、そこから女性が顔を覗かせていた。
「あんた……だれ?」
「もう、あなたが私を拾って呼んだのでしょ?」
と、扇で口元を隠し、クスクスと笑う。
……リボンの妖怪?
って、そんな妖怪見たことも聞いたことも無い
「まぁいいや。 それで、リボンのあなたは四季様に何をしたの?」
動かなくなった四季様は、さっきから瞬き一つしていない。
「あぁ、静と動の境界を弄ったのよ。
今のこの場は私と、私の一部を握っている貴女以外は全て停止しているわ」
「ふぅん……、それでどうやってあたいを助けてくれるの?」
扇で口元を隠したまま、ニヤーっと薄気味悪く目を細める。
「うふふ……、それはこの境界を戻してからの、お楽しみよ
それじゃあ、境界を戻すわよ~」
ザァッと、風の音と、揺れる草の音が一度に甦る。
光の量も急に元に戻ったため、思わず顔をしかめる
「ンッ……」
数回の瞬きの後、目を開くと……
あ、あれ? 居ない……
「四季様?」
「……なに?」
声が下から聞こえる。
まさか……、私と四季様は同じくらいの背……
視線を少し下げてみる……
居た!
って、なんでぇえええ?
「……なによ、こまち?」
何故か、四季様が子供の姿になっていたのだ
(そうそう、服のサイズはサービスよ♪)
あの女の声が聞こえるが、握っていたリボンはいつの間にか無くなっている。
……どこから? いや、それよりも
あのリボンの女が四季様を子供にした事は確かね……
でも、どうやって?
「もう、こまちはすこし……」
困惑する私を尻目に、小さくなった四季様はお説教を続けようとしていた。
ぅー、小さくなってもお説教だなんてー
まぁ、多少は気が楽になったけど……
「こまちは……、すこし……んと……、なんだっけ?」
「へ?」
もしかして四季様……説教の内容を忘れちゃった?
妙な声を出した私を、小さな四季様はジト目で睨みつける
「ぅー……」
ジィイイイッ
どんなに唸っても、思い出せないらしく段々涙目になってくる
……ちょっと可愛いかも……
「むぅーッ! んでもいいや、こまちは地獄行きー!」
「へ? ……ぇえええぇぇえッ!?」
罪状読み上げすら無しですか?
(あらあら~、いきなり地獄行きになちゃったわねぇ)
って、誰のせいよ!
「ぅう、四季様ぁそんな殺生です……」
「地獄行き~、地獄行き~」
王笏でを振り回しながら地獄行きを嬉しそうに連呼する。
完全に子供だ
だが、子供とはいえ閻魔は閻魔だ。
その判決は閻魔自身が撤回しない限り絶対である。
そして、四季様は過去一度も撤回したことは無い。
(あら、相手は子供よ? 諦めないで……)
だから、あんたが言うな!
「四季様ぁ、後生ですから、なんでもしますから~」
「うー、……こまち、なんでもするの?」
王笏を振り回すのをやめて、あたいを見つめる。
「はい……なんでもします、だから地獄行きは勘弁を……」
子供の身長にあわせて、前屈みになって両手を合わせる。
「んー……、どうしよ……ぅ……かな……」
映姫の視線が一点へ集中する。
「………それじゃあ……こまち」
「は、はい、なんですか?」
「りょうてひろげて、じっとして!」
「こう、ですか……?」
言われたとおり、両手を広げる。
「うん……、わぁい」
満足そうに微笑むと子供になった映姫の、小柄な体が、小町の両腕の中に飛び込んでくる。
もふッ!
「うわわッ、四季様?」
「んふー……、うふふ……」
すりすり~、すりすり~
嬉しそうに、小町の豊かな胸に頬ずりする。
(……あらまぁ♪)
「あ、あの、四季様?」
「こまちのおむね、おっきくて、やらかーぃ……、んふー……」
映姫はその、ちっちゃな体で更にぎゅっと抱きつく。
「……し、四季様は……おっきいのが好きなんですか?」
「うん、だいすきーッ」
四季様……、……か……、可愛い……
四季様はもう一度、私の胸に顔を埋めると小さく呟いた
「んふ……、かぁさまみたい……」
……し、四季様ッ!!!
思わずちっちゃくなった映姫の体をと抱きしめる。
「あッ……」
くぅううううッ、可愛いよぉ……
ぎゅーっと、思わず力が入ってしまう。
「こ、まち……ぃ」
苦しそうな声で自分の名前を呼ばれて、あわてて映姫を離す。
「あぁ、すみません四季様ッ……、い、痛くなかったですか?」
心配そうに覗き込む小町に
「うぅん、……もっと……ぎゅってして……ほしいなぁ……」
映姫は下を向いて恥ずかしそうに、おねだりする
ずきゅーーーーーーーーーーんッ
小町は完全に心を射抜かれてしまった。
「―――ッッッ!!!」
そんな小町に上目使いでトドメの一言。
「……ダメ?」
「ぁ……、アびゅッ♪」
奇声を発して、鼻から赤いアーチを噴出してぶっ倒れる小町。
その表情は、まるで生涯に一遍の悔いの無い、至福に満ちた笑顔だった。
▼△▼△▼
すっごく、気持ちが良い……
後頭部が柔らかいし……
頬を撫でる風も清々しい……
でも……あれ?
なんで、後頭部が柔らかいの?
「小町、……小町」
あ……四季様に呼ばれてる……
「んッ……、な、なんでしょうか?」
目を開けると、四季様が覗き込んできた。
「うわッ、四季様!?」
「よかった……、お説教を始めたら突然倒れるんだから……びっくりするでしょ?」
あ……後頭部が柔らかかったのは、四季様の膝枕だったんだ……
……あれ?
お説教始めたら倒れたって……
さっきの小さい四季様は……夢だったの?
でも、まぁ……、いっか……
お説教から解放されたのは間違いないんだから……
「気分が悪いのなら……言わないとダメでしょう?」
覗き込んだまま、四季様にやんわりと叱られる。
こんなに優しい四季様って久しぶりだなぁ……
それに、顔が逆さまに見えるから、なんだか叱られている気分がしない……
視線をさらに上に移すと、道服に包まれた大きなふくらみが見える。
「……あ、四季様……」
「うん、どうかした?」
「……四季様、実は大きい……ですよね?」
映姫も、小町の視線に気がつく。
「ば……馬鹿なこと言わないの! ……それに私は……、自分のより……」
ごにょごにょと言葉を濁す。
こんな四季様、初めてだ……
「……他の人の大きい胸が好きだとか?」
「―――ッッ!! う、うるさい、もう膝枕はヤメ!」
と、顔を真っ赤にして突然立ち上がったせいで、後頭部を地面に打ち付けてしまう。
「あいたッ、……四季様、ひどい……」
後頭部を摩りながら、小町も起き上がる。
「ほら、仕事に戻りなさいッ、ホラ、早く!」
そう、早口で捲し上げると映姫は閻魔庁舎へと歩を進める。
「あぁん、四季様ー、待って下さいよ~」
恥ずかしそうに、足早に去ってゆく上司の背を小町は追いかけるのだった。
▼△▼△▼
場所は変わって、とある辺境のとあるお屋敷のとある、部屋。
突然クスクスと笑い出す屋敷の主人――八雲 紫その人である。
「紫様、なに笑ってるんですか?」
主人に問うのは、彼女の式である私――八雲 藍の役目だった。
「ふふ、弱点をみつけたのよ」
「弱点、ですか……」
「えぇ……、まさか、あんな趣味があるとはねぇ……うふふ……これで、地獄も私の自由ね~」
……地獄!?
なんでまた、そんな場所?
「それにね、今後進展があるようにーって、帰り際に少しだけ頑固と素直の境界をすこーしだけ弄っておいたのよ」
「……進展、ですか……?」
って、急に呼び出されて鼻血の処理をしてる最中、そんな事をしてたんですか……
「えぇ、進展♪ ……次覗いたら、刺激の強いシーンが見られるかも……うふふふふふ……」
どこの誰かは知らないけれど、紫様に目を付けられたのが運の尽き。
ご愁傷様……
「あ、そういえば……」
「あら、なにかしら?」
「冥界でなにやらやってるようですよ……春がどうのこうのと……」
「ふーん……、まぁいいわ。 私は寝なおすから、後はお願いね~」
手をひらひらさせながら、スキマに身を落とす。
「……ふぅ」
まったく、たまに起きると、気まぐれで訳のわからない事をして、
その後始末を私に押し付けるんだから……
藍はもう一度、溜息を吐くのだった
>今のこの場は私と、私の一部を握っている貴女以外は全て停止しているわ
・・・・・・スカラベアンデッド?
※仮面ライダー剣に登場した時間停止の能力を持つアンデッド(咲夜さんにあらず)。
周辺一体の時間を停止させるが、スカラベアンデッドの持つ布状の装飾品を
所持していれば、時間停止の効果を受けずに停止した時間の中を動ける。