注意!
・このssは、キャラの過去を勝手につくっちゃってます。
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いつだったか、こんな会話をしたことがある。
「ーーが無いだって!それはあんまりだと思うぜ、霊夢」
「別に無くても困らないわよ。そんなもの」
本当に、無くても困らないものだった。
けど、魔理沙は妙に拘り、
「うーーん・・・そうだ、無ければつくりゃいい」
私がつくってやるよ。
そう言って、勝手につくってしまったのだ。
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東方シリーズss
朝まで霊夢。夜は魔理沙。
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霊夢の朝は、結構早い。毎日規則正しく6時起きである。
半には朝食に口をつけ、7時までには活動を開始する。
博霊神社に、霊夢はひとりで暮らしている。
知り合いはいるが、さすがに朝から訪ねて来るようなのはいない・・・こともなかった。
「霊夢、このおひたし、ちょっと味が薄いぜ」
「・・・自分で醤油かけて調整しなさい」
くされ縁の魔法使い少女、霧雨 魔理沙。
美味しそうにご飯をたべる彼女が、訪ねてきた理由を思い返して、霊夢は内心ため息をついた。
朝っぱらから訪ねてきて、魔理沙はこんなことを言い出した。
「朝まで霊夢することにしたぜ」
「・・・なにそれ。変なクスリでもきまったの?」
さっぱり意味不明である。
用がないならバイバイ、と霊夢は背を向けたが、
「あー待て待て、真面目に話すからさ」
「はあ・・・ま、いいわ。なんの用?」
「実はだな・・・」
霊夢と魔理沙はよく弾幕ごっこーー模擬戦のようなことをやるが、霊夢の方が少し強い。
割合にして、6対4くらいで霊夢が勝つのである。
実力は、大体同じくらい。
しかし、少しの差がでる。
その差は、いったい何なのかーーー
「霊夢に一日ひっついて、理由を探ろうというわけさ」
「超えられない実力の壁とか」
それは無い、と魔理沙は首をふる。
「私のような努力家がこんな怠け者を超えられないなんて、あるわけないだろ」
「・・・あ、そう」
魔理沙の努力は認めるが、面と向かって怠け者よわばりされると腹が立つ。
・・・まあ、強く否定はしないが。
「そういうわけで、今日一日、ずっとひっついてまわるぜ」
「なにがそういうわけなんだか・・・」
止めても聞かないのが魔理沙である。
肩をすくめて、霊夢はしぶしぶ「・・・どうぞ」と言ったのだった。
「ちょっと魔理沙、たまってるじゃないの」
「ま、まてよ、おまえ速すぎだぞ」
朝御飯を食べたあと、ふたりは皿洗いをしていた。
洗い桶につけておいた昨晩のぶんと、朝御飯で使ったぶん。
合わせればそこそこの量になる。
霊夢が洗い、魔理沙が水気を拭き取る。
流れ作業でやっているのだが、霊夢の洗うスピードに魔理沙がついていけないのだ。
「ちゃんと洗ってるんだろうな?」
「失礼ね。疑うんなら確かめてみなさいよ」
ほら、と皿を突き出され、受け取って凝視する魔理沙。
「・・・むう、ピカピカだぜ」
「わかったら、さっさと拭いて」
言うあいだにも、どんどん洗い済みのものが積みあがっていく。
まともに拭いてたんじゃ追いつかない。
「ここはひとつ、魔法でまとめて・・・」
「やめんか」
指先から炎を出した魔理沙に、霊夢は突っ込みチョップを放った。
洗い物が終わると、居間に戻ってまったりする。
緑茶をお供にぼーっとするひと時は、何者にもかえがたい幸福である。
「おい、なにかしなくていいのか?」
「あら、魔理沙はなにかやりたいの?」
「やりたかないが・・・」
たとえば。落ち葉とか。
秋もそろそろ終わりが近付き、木々の葉はほとんど抜け落ちている。
落ち葉は境内に、庭に、地面を埋め尽くさんばかりである。
「掃こうとか思わないのか?」
「思わない」
「おまえな・・・」
少しは仕事しろよと言う魔理沙に、心外だと霊夢は言い返した。
「御祓いとかの依頼はちゃんとこなしてるんだから」
「それはそうだが・・・」
「それに、私のほうが強い理由を探りたいんでしょ?
だったら、普段どおりの私を観察したほうがいいと思うけど」
ずずーっと茶をすすって、はふ・・・と一息。
この楽しみがわからないから、魔理沙は弱いんじゃないだろうか、なんて思ったり。
「お茶は幻想郷の宝ね・・・」
「・・・なんだかなあ」
やりきれないような顔で、魔理沙も緑茶に手をのばした。
まったりしているうちに、緑茶もきれてしまい。
昼も近くなって、霊夢は腰をあげた。
「どっか行くのか?」
「裏庭。魔理沙もくる?」
「そうだな、ついてくよ」
ここでぐたーっとしていても仕方ない。
霊夢のあとに続いて、魔理沙も裏庭に出た。
裏庭には、霊夢のつくった家庭菜園がある。
神社の収入は安定しないので、野菜だけでも自給しようと、始めたのだ。
母なる大地の恵みは、巫女の台所の心強い支えである。
「これ、装備していたほうがいいわよ」
小屋から出てきた霊夢は、軍手とエプロンを魔理沙に手渡した。
「サンキュ」
「ま、そんなにすることないけどね」
するのは、野菜を引っぱり出すだけだ。
2,3日たべる分だけ取ったら、それでおしまい。
「そうね・・・残ってるお芋、全部掘っちゃおうか。あとは、大根とか2,3本回収しましょ」
「結構あるな・・・今度、知り合い集めて焼き芋でもするか?」
「いいわね。焼き芋にかこつけて、落ち葉も掃かせれば一石二鳥だわ」
「・・・とっとと掘るぜ」
どうして思考がそっちにいくのだろう。
肩をおとして、魔理沙は作業にとりかかった。
お芋とはもちろん、秋の代名詞さつま芋である。
畑を縦横無尽にめぐっている蔓を掻き分け、芋の頭を見つける。
回りの土をスコップで掘って、芋の姿がほとんど見えてきたら、手で土を掻き分けて掘り出す。
言葉にしてみれば簡単だが、実際にやってみると疲れる作業なのだ。
芋はかなり長いし、傷をつけないためには、慎重に土を掘らなければならない。
ずっとしゃがんだまま掘るというのもポイント。結構、腰にこたえるのである。
「芋なんて掘るのも、久しぶりだな・・・」
感傷にひたりながら、魔理沙は土だらけの手を見つめた。
懐かしい、畑の土の匂い。太陽の匂いだーーとは、誰が言った言葉だったか。
「芋掘りしたことあるの?」
「ああ、子供のころな」
幻想郷にくる前、まだ魔法もろくに知らなかったころだ。
祖父に連れられ、何度か畑いじりをしたことがあった。
「たまには、土いじりもいいもんだ」
「毎日やってみる気はない?助かるんだけど」
「遠慮しとくぜ。たまにやるからいいんだよ」
残念。笑って、霊夢は作業に戻る。
魔理沙も、真下の芋に視線を戻した。
野菜を回収したら、すこし遅めの昼御飯。
「すぐ出来るから」と台所に行った霊夢が、しばらくして持ってきたのはうどんだった。
採りたての新鮮な野菜と、半熟卵が上にのっている。
「めずらしいな、うどんなんて」
「昨日、村のひとが持ってきてくれたのよ」
霊夢の仕事は、基本的には無報酬である。
しかし、向こうがお礼やつきあいで持ってきてくれたものは、断る道理はない。
「使わないと、忘れたままカビさせちゃいそうだから」
「寒くなってきたしな。うどんもいいと思うぜ」
いただきます、と箸をつけようとした魔理沙に、霊夢はタオルを渡した。
「汁がはねるから、つけといたほうがいいわよ」
「気が付かなかったぜ。サンキュ」
ありがたく受け取る。
一張羅が鰹だし風味になるのはごめんだった。
タオルを装備して、ずるずるとうどんをすするふたり。
時折、鈴虫がりーん、りーんと鳴く。
「まだ、いきてるんだな・・・」
「あれが生きてるうちは、まだ秋ね・・・」
秋の風物詩である、鈴虫。
命ある限り、ひたすら鳴き続ける。
秋を守るために。
「そう考えると、鈴虫ってかっこいいな」
「そう?」
「だって、勝ち目なんて無いのに戦ってるんだぜ」
どうせ冬の到来はさけられず、彼らは全滅してしまう。
しかし、漢たちは戦わずにはいられないのだ。
「かっこいいだろ」
「私は、どっちかというと幽々子を思い出すわね」
半年前、西行桜を咲かせるために幻想郷中の春を奪った彼女。
霊夢が取り戻すまで、幻想郷はずっと冬のままだった。
「こないだ輝夜の騒動があったばかりなんだから、しばらくは平穏に暮らしたいわ」
「私は、鈴虫大戦上等なんだけどな」
この前の輝夜騒動は、紅魔館のふたりが解決して出番が無かった。
お祭り娘な魔理沙としては、出張れなかったのが悔しいのである。
「なら、魔理沙がやってみれば?」
「私がか?」
「冬を奪って、“雪桜を咲かせるのに必要なのだーー”とか」
楽しい弾幕ごっこができるわよ。
全然楽しくなさそうに、霊夢は言う。
「楽しい弾幕ごっこ?」
「みんなこぞって取り戻しにくるでしょ」
「あーーなるほどな」
冬を取り戻すため、みんな魔理沙を倒しにやって来るだろう。
いままでは倒す側だったが、黒幕になって倒されるのもいいかもしれない。
容易く負けてやる気はないが。
「いいかもな。来年にでもやってみるか」
「がんばってね。紫とか幽々子とかレミリアとか来るかもしれないけど」
「うげっ・・・そいつは勘弁だぜ」
かつての黒幕オールスター。
輝夜かえーりんが入れば完璧だ。
「よく考えたら、私らの知り合いってとんでもない奴らばかりだな」
「そうねえ・・・よく勝ってこれたもんだわ」
過去の戦いを思い返しながら、ふたりはしみじみとうどんをすする。
ずるずる。ずるずる。
りーん。りーん。
昼御飯を食べたあとは、再び緑茶でまったり。
なにかするでもなく、ぼーっとして過ごす。
「暇だな・・・」
「そう?」
「そうだよ」
暇で暇でしかたない。
お前はどうなんだ、と魔理沙は訊いた。
「そうねえ・・・」
確かに暇ではある、と霊夢も思う。
けど、今日は特にする事も無い。
「御祓いとかの依頼は無いし、調味料とかも切れてないし・・・」
でも、それ以上に。
「何もしないっていうのも、いいものよ?」
「そうかあ?」
怪訝な顔をする魔理沙に、霊夢は言った。
「何もせずに、ただぼーっとしている時間が心地いいの」
上手くは言えないが、なんとなく満ち足りた気分になれるのである。
分からないかな?と訊いてみたが、
「・・・分からん」
「それは残念」
魔理沙とこうしている時間は、けっこう好きなのだが。
ちょっぴり寂しかったので、ぼそっと言ってみた。
「だから魔理沙は弱いのね」
「・・・それは関係ないと思うぞ」
あっさり否定されて、今度はちょっぴり悔しかった。
なにごともなく、日は過ぎていって。
夕御飯を食べ、お風呂に入って。
星空の下、湯上りのふたりは縁側に並んで座っていた。
「のんびりした一日だったな・・・」
「そうね・・・」
仕事も、事件もなく。平穏な一日。
こんな日々があるから、たまの大騒ぎが楽しくなるのだろう。
「ねえ、魔理沙」
「うん?」
「強さの秘密は、分かったの?」
そういえば、そんなこと言ってたっけ。
霊夢に尋ねられて、いまさら魔理沙は思い出した。
「さっぱりだぜ」
「でしょうね。探す気があるなら、とっくに見つけてるだろうから」
1年2年のつき合いではない。
魔理沙にその気があれば、もっと早く言い出しているはずだ。
「本当は、別の用があるんでしょ?」
「・・・まあな」
頷いて、魔理沙はぽつりと言った。
「なあ、霊夢・・・今日が何の日か、覚えてるか」
「今日・・・何かあったの?」
「・・・お前の、誕生日だよ」
「誕生日・・・あっ」
思い出した。
去年、魔理沙と交わした言葉を。
霊夢には、物心つく前の記憶がない。
気が付けば、この博霊神社にいたのだ。
かつては親代わりの古妖怪がいたが、彼も霊夢の過去は知らず。
当然、誕生日もなく。
それを知った魔理沙は、過剰なまでに反応した。
「誕生日がないだって!それはあんまりだと思うぜ、霊夢」
「別に無くても困らないわよ。そんなもの」
本当に、無くても困らなかった。
しかし、魔理沙は妙に拘り、
「うーん・・・そうだ、無ければつくりゃいい。
私がつくってやるよ。そうだな・・・」
10月30日。
私たちが出会った、あの日にしよう。
「いいな。来年から、お前の誕生日は10月30日」
覚えとけよーーーそう、魔理沙は言ったのだ。
「あれ、本気だったの?」
「本気だぜ。誕生日はないといけないものなんだよ」
「ふうん・・・」
霊夢としては、誕生日などどうでもいい。
しかし、魔理沙の拘る理由が気になった。
自分のことでもないのに、誕生日などになぜ拘るのか。
「あの時は訊かなかったけど、なんで誕生日に拘るの?」
「・・・ちょっと長話になるけど、いいか?」
「いいわ。聞かせて」
時間なら十二分にある。
「私の、子供のころの話だ・・・」
魔理沙は、月を見上げてゆっくりと話し始めた。
霧雨 魔理沙は、魔法使いの家系である霧雨家の三女として生まれた。
魔法使いの家は、子も優秀な魔法使いに育てようとする。
家系を守るため。技と英知を継承させるため。
幼いころより訓練は始められ、力なき者は恥晒しと蔑まれる。
魔理沙は、その恥晒しだった。
魔法の力は兄妹にくらべて格段に劣り、皆が魔理沙を蔑んだ。
両親でさえ、魔理沙の世話をメイドの老婆に一任し、けっして目を向けることがなかった。
自分はいらない子なんだ。
侮蔑と嘲笑のなかで、悲しみと寂しさだけが募っていく。
暗く、卑屈な少女に・・・魔理沙はなっていった。
誕生日。
兄妹たちは盛大に祝ってもらえる日も、気付いてさえもらえずひとりぼっち。
たったひとり、老婆が祝ってくれたが、彼女にすら当り散らしてしまう。
ーーあたしなんて、いらない子なんだ。生まれてこない方がよかったんだ。
ーーおまえだってそう思ってるくせに、ケーキなんて焼いて善いひとぶるな!
焼いてくれたケーキを、床に叩きつけて。
叩かれることを覚悟して、魔理沙は目を瞑った。
ーー叩かれなかった。
老婆は、魔理沙を痛いほどきつく抱きしめ、言った。
そんな悲しいことを言うんじゃない。
わたしは、お嬢様が大好きだ。お嬢様と出会えて、本当に良かったと思ってる。
だから、いらない子だなんて、言わないでほしい。
ーー生まれてきてくれて、ありがとう。
生まれてきてくれて、ありがとう。自分の生への、心からの祝福。
老婆の言葉は、乾いた心の深くまで沁みこんだ。
嬉しくて、でも、気持ちを上手く言葉に出来なくて。
涙をぽとぽと零しながら、魔理沙はありがとうとごめんなさいを、うめくように繰り返した。
「ほんとに嬉しくてさ。あの言葉だけで、どんなに辛いことがあっても、平気だって思った」
「そう・・・」
霊夢は表情を変えず、何とも言わない。
「なんだ、同情とかしてくれないのか?」
「してほしいの?」
「いいや。されたら怒る」
にっと笑って、魔理沙はつづける。
「けど、誕生日は大事だと思うんだ。
その人の生と、その人に出会えたことを祝福するのは」
「・・・かもね。それで?」
「だからさ・・・お前を、祝福したいんだよ」
霊夢が何か言う前に、魔理沙はぐっと両肩を掴んだ。
顔を近づけて、囁くように言葉にする。
ーー生まれてきてくれて、ありがとう。
ーー私と出会ってくれて、ありがとう。
「まり・・・」
「黙ってろよ」
暴れようとする霊夢を、押さえつけたまま。
ーーそっと、唇を重ねた。
唇が軽く触れるだけの、フレンチ・キッス。
しかし、霊夢は顔を真っ赤に染めたまま、動かなくなった。
魔理沙は小さく笑って、
「Happy Bithday♪ reimu♪」
誕生日、おめでとうーーーーーー
少し考えてみるとそんなにオリジナルとも言えませんし。
ほのぼのもおいしいものですね。お饅頭、ご馳走様でした。
魔理沙が見せる優しさや格好良さがよく伝わってきますし、
その魔理沙からの祝福を素直に受け入れる霊夢も可愛いです。
ただ、誕生日の日にちははっきり明記しなくても良かったかなとも感じます。
今回はオリジナル設定も説明がついてましたし、
違和感が有るほどの設定でもなかったので、非常に素直に読めました。
可愛らしい甘さと神社のまたーり空間が幻視できる作品でした。
有難うございます。
でも、それは二人にとっては特別な一日で・・・お見事でした
鈴虫の鳴き声(りーん、りーん)が一瞬「えーりんえーりん」に見えてしまった私はそろそろ危険でしょうか。
↑は置いといて、悪くありませんでした。
これからもそのほのぼのさで霊夢を描いてください。
霊夢かわいいよ霊夢かわいいよ
しかし残念なのはフレンチキスのことを軽いキスと書いてしまったこと。
フレンチキスというのはディープキスと同じ意味で、舌を絡ませあう濃厚なキスを指します。
つまり、「唇が軽く触れるだけの」という部分を削って脳内補完すればネチョ(ry