<紅魔館>
幽々子は、咲夜の執務室へと向かっていた。
昼食を済ませ、さあ楽しい野良仕事の始まりだ。となけなしの気合を入れた所での呼び出しである。
思い当たる節は……存分にある。
というかありすぎで、どれが理由なのか判別できなかったが。
「メイド長、花子です」
「……入りなさい」
「失礼します」
幽々子を迎えたのは、予想通り存分に苛立った様子の咲夜だった。
眉間に皺を寄せ、机をせわしなくトントンと叩く様は、見ていて気の毒な程である。
「貴方、これからの予定はどうなってるの?」
「え? あ、はい。昨日と同じで農場だと思います」
「……思います?」
「……農場です。野良仕事大好きです。わーい」
等とは言うものの、言葉の響きからは、喜色の欠片も感じられない。
「そう。楽しみにしてる所を悪いけど、今日は別の仕事をして貰うわ」
が、そんな台詞をまったく意に介さず、大量の紙束を取り出す咲夜。
俗に、手紙と呼ばれている類のものであった。
「……おやつ?」
「貴方、白ヤギ?」
「い、いえ、ほんの冗談です」
「……これを全部、今日中に届けて頂戴。それが貴方の仕事です」
「ええと、いくつか質問が……」
「貴方に任せる理由は、宛名を見れば分かるわ。
それと農場の方は、私の与り知らぬ内に入った新入りにやってもらいます。
終身名誉おさんどんなんて名乗るくらいだから、さぞかし頑張ってくれるんじゃないかしら」
「……」
言葉にも視線にも棘があった。
実際、藍までもがここで働くようになった事態に関しては、幽々子は一切関知していない。
それどころか、今だに顔すら合わせていないのだ。
だが、この様子だと、咲夜はそう思ってはくれていないようだ。
かくも日頃の行いは大事である。
「他は無いわね? ならさっさと行く!」
「は、はいっ」
幽々子が視界の外に消えたのを確認すると、咲夜は深い深いため息を付いた。
「……ふぅ……まったく、何から何まで狂わされてる気がするわ……」
この郵便配達なる微妙な仕事は、本来専門的に任されていた人物がいたのだが、
そのメイドは、昨日の早朝、自室の窓から転落して入院中だった。
不思議な事に幽々子と同室の人物である。
聞くまでもないのだが、一応ということで理由を問いただしてみたところ、
『花子だけはガチ』という分かるような分からないような言葉が返って来た。
何故か、とても満足気な表情で。
「……さて、また張り紙直さないと……」
どこか遠い目をしつつ、咲夜は立ち上がる。
言葉通り、手には一枚の張り紙があった。
『本日より、二回以上のおかわり、及び常識の範疇外の大盛り、
及び初回における大量の注文、及び五度に分けての食事を禁止する。 by 十六夜咲夜』
文言が幽々子一人に宛てられたものであるのは明白だ。
それこそ、直接申し渡せば良い事なのだろうが、こうなればもはや意地だった。
ドアを開ける段階となり、ふと気が付いたように視線を動かす。
壁に掛けられた簡素なカレンダー。
日付にして五日後の所に、大きく丸印が打たれていた。
「……はぁ……」
任を受けた幽々子は、直ぐに準備に入った。
と、言っても、革製の鞄をたすき掛けに下げただけ。
これさえあれば、どんな人物だろうと郵便屋に早変わり、という至高の一品である。
制服は無いんですか、と尋ねるべきか少し悩んだのは秘密だ。
ぎぃ、と通用口を押し開くと、溢れんばかりの陽射しが目に入った。
一般的には良い天気と言うのだろうが、この館の主にとっては最悪の天候だろう。
「アレは今頃はまだ寝てるのかしらねぇ……ん?」
ふと、横を見ると、正門の前で仁王立ちする美鈴の姿があった。
口を真一文字に結んでは、人類は十進法を採用しましたのポーズを取ったまま微動だにしない。
それぞれの手には、体格に不釣合いとも思われるごっつい長物などが握られていた。
声を掛けるべきかと思ってはみたが、その余りにも真剣な様子を前にすると、どうしても躊躇われる。
という訳で、美鈴ではなく、他の人物に聞いてみることにした。
「あのー」
「ん?」
傍に立っていた門番隊のメイドが、くるりと振り向いた。
記憶が確かなら、初日に一緒に仕事をした人物である。
「あ、花子。……どしたのその格好?」
「え、見て分かりませんか?」
「分からないから聞いてるんじゃないの」
どうやら、鞄の効果はそれほど高くはないようだった。
「ちょっと仕事を命じられまして……それより、美鈴さんどうかしたんですか?」
「ああ……今朝、ちょいと一悶着あってねぇ」
メイド曰く、突如として襲来した藍と名乗る暴漢を相手に奮戦した美鈴だったが、力及ばす敗北。
数刻の後に、意識を取り戻したかと思うと、あの姿勢を取るようになったらしい。
何でも、門番としての究極の構えだ。との天啓を受けたそうな。
「まぁ、今回は相手が悪かったとしか言い様が無いんだけどね……」
「はぁ……」
実際、藍を相手に互角に戦えただけでも十分だと思う。
が、それは門番としての矜持とやらが許さないのだろう。
「あの、美鈴さんに伝えておいて下さいますか」
「ん、何?」
「その姿勢は、火事と多数の死者を招く可能性が高いので止めましょう。って」
「???」
はてな顔の同僚を他所に、幽々子は飛び立った。
門の脇に桶が置いていないことを確認しつつ。
「流石に……ねぇ」
<白玉楼>
魂魄妖夢は困惑していた。
視線を上げると、飛び込んでくるのは喜色満面の紫の笑顔。
卓上に並べられたるは、ほのかに湯気を上げる料理らしき何か。
いつぞや見た光景な気がしたが、その時とは配役が逆であった。
「……」
「どしたの?」
「あの、失礼な事を聞いて良いですか?」
「『紫様って、お料理出来たんですか?』かしら」
「う……」
ズバリその通りだった。
紫という人物は、その力の大きさ以上に、グータラの代名詞として有名な存在である。
これと並び立つものと言えば、二ート界の巨頭、蓬莱山輝夜くらいのものだろう。
そんな輩が事もあろうに料理と来た。
食事を取るのが面倒で餓死、のほうがまだ信憑性は高い。
ぶっちゃけ、ありえない。
「……凄く失礼な事考えてない?」
「い、いえ、滅相もありません」
妖夢は考える。
まず、この料理がまともなものである可能性。
……意外にも、ある。
例えば、目の前にある肉じゃが。
こうして観察する分には、ごく普通の見栄えである。
大概、料理が壊滅的に下手な人とは、無知から来るものか、
もしくは味覚が致命的に壊れているかのどちらかが理由である。
その点、紫がどうかと言うと、こうして見た目がマトモな物を作った以上、調理法は知っているのだろうし、
食事に関しては意外と口煩い事から、味覚も正常の筈だ。
ならば大丈夫。きっと。多分。恐らく。
「で、では頂きます」
妖夢は箸を手に取り、恐る恐る料理を口へと運ぶ。
そして、きっちり三十回噛んだ後、ごくりと咀嚼する。
「……」
「どう?」
「凄く……美味しいです」
世辞ではなく、本心だった。
正直な話、妖夢自身が作ってもこの味が出せるとは思えなかった。
それ程までに紫の料理は完成されていた。
「ふふ、驚いたでしょう。こう見えても料理は得意なのよ。
藍に教えたのも私なんだから」
「そうだったんですか……」
合点が行った、とばかりに大きく頷くと、妖夢は勢い良く箸を動かし始めた。
冷めない内に食べるのが礼儀であると知っていたから。
「ところで、妖夢って誰から料理を教わったのかしら?
まさか幽々子に出来るとも思えないし……」
「んぐっ……ん、お師匠様です」
「え、妖忌!?」
大層驚いた、とばかりに紫は大きく仰け反る。
「そんなに意外でしたか?」
「い、いえね。あの爺様と料理が全然結び付かないから……」
紫の脳内に、もわもわと情景が浮かぶ。
ピンクのエプロンを付けて、台所に立つ、むくつけき大男。
お玉片手に味見などをしつつ、「んー、ちょいと塩味が足らんな」等とのたまう姿。
デザートの林檎は、もちろんウサギさんの形に……
犯罪だ。
誰か警察呼んで来い!
「でも、やっぱりお料理の修行も厳しかったです。鰹節を硝子の破片で削らされたり、
屋根の上でかつら剥きをさせられたり、薩摩芋と人参でケーキを作れとか言われたり……」
「あ、ああ、そっちの方面なのね」
少しだけ納得できた。
<幽々子千里行>
「私はメイドあなたのメイド~」
幽々子はまっことご機嫌であった。
普段なら決して有り得ない歌声すら飛び出している。
この仕事。考えてみたら、紅魔館で働き始めて以来、初の外出である。
しかも、五月蝿く監視されるようなものではなく、手紙さえ届ければ後は自由だ。
故に機嫌が良くなるのも仕方の無いことだろう。
そして、歌声が響くのも仕方の無いことだろう。
が、選曲に関してはいかがなものか。
「掃除洗濯お料理セ……」
突如として歌は止まった。
それと同時に、一人赤面してはイヤイヤなどを始め出す始末。
季節は秋だが、彼女の周辺には春な空気が漂っていた。
「……っと、着いたわね」
そうこうしているうちに、最初の目的地へと到着したようだ。
眼下に広がるのは、存分に寂れており、崩壊していないのが不思議とも思われる神社。
幽々子がメイドなどを始める原因となった場所である。
「さて、お仕事お仕事……って、この格好じゃ拙いわね」
今、自分は紅魔館の従業員として動いている。
だが、流石にメイド服になった程度では、知り合いが見れば誰であるか一目瞭然だろう。
ここはもう一つ、捻りを加える必要がある。
そう考えた幽々子は、何やら肩から下げた鞄を、ごそごそと漁り出したのだった。
「平和ねぇ……」
霊夢は一人、縁側に座りお茶を啜っていた。
これぞ博麗神社の原風景……であった筈なのだが、ある日を境に、とんと訪れなくなった光景である。
理由は、霊夢の背後に並べられた雀卓にある。
これのおかげで、博麗神社は別の呼び名の方が有名になってしまったという、いわく付きの一品だ。
が、どういう都合か、ここ最近はあまり客が訪れなくなったのだ。
無論、比例して霊夢の懐に入る収入も減退しているのだが、
それを差し引いても歓迎すべき事態だった。
騒がしいのはたまにで十分だ。
霊夢は今、間違いなく幸せだった。
「そこの紅白!!」
幸せは、素っ頓狂な声の前に、無残にも吹き飛ばされた。
「ったく……少しは静かな時間くらいくれたって……」
眼前においでなさった訪問者の前に、霊夢は絶句した。
服装には見覚えがある。
確か、咲夜が着ているのと同じタイプのメイド服だ。
すると目の前のコレはメイドなのだろうか。
しかし、メイドとは、鉄仮面などを被っているものなのだろうか。
そんな持論を展開しようのものなら、世のメイド好きに袋叩きにされかねない。
だが、現実にそれは存在している。
そのくせ、自己主張の強い胸は健在だ。
頭隠して胸隠さず。
使い道の少ない諺の誕生だ。
「……何してんの、幽々子」
「幽々子なんて知らないわ。もちろん花子も知らない。
私は正義の配達メイド、カリスマスク!
この溢れ出るカリスマを恐れぬのなら、配達物を受け取りなさい!」
「……」
どこから突っ込んで良いのか、非常に悩む状況だった。
花子って誰やねん。か?
正義超人なのか配達員なのかメイドなのかはっきりせい。というのもアリだ。
カリスマ無いから。これも中々シンプルで良い。
が、霊夢が選んだのは、どれでもなかった。
「はいはい、受け取るからさっさと紅魔館にでも冥界にでも英吉利にでも帰れ」
あっさりと流したのだ。
こういう時は、突っ込まないほうが上手く行く、との判断である。
「(……こんなにあっさりとバレるなんて、どこに問題があったのかしら……)」
カリスマスクこと幽々子は戸惑っていた。
自分でも会心の変装と思っていたのだが、結果は無残なものだった。
問題があるとしたら、間違いなくその思考回路にあるのだが、
それが出来る唯一の人物である霊夢が突っ込もうとしないため、幽々子には気が付きようがない。
結局、幽々子は顔に存分に疑問符を浮かべつつ手紙を渡すと、すごすごと立ち去る事しか出来なかった。
仮面のせいで表情は見えないのだが。
「ああ、幽々子」
「だから私はカリスマスクだって……」
「妖夢を泣かせたくないなら、その仮面は捨てたほうが良いわよ」
「……」
意味は分からないが、凄く説得力があった。
カリスマスク、3分で廃業である。
初っ端に問題はあったものの、幽々子の即席郵便屋は概ね良い感じで進んでいた。
というのも、配達の相手が、魔法使いであったり、人形遣いであったり、騒霊姉妹であったりと、
霊夢のみならず、どれも知り合いばかりだったからである。
咲夜が幽々子に任せたのも頷けるというものだ。
また、自身の存在を偽る事を止めたのも、上手く進んでいる原因だった。
考えてみれば、紅魔館の外で正体がバレようと、問題があるはずもないのだ。
些か気付くのが遅かったが。
そして現在、幽々子の眼前にあるのは、竹林に囲まれた巨大な日本家屋。
二月程前に起こった、永夜の怪事の舞台となった場所、永遠亭である。
その際、幽々子と妖夢は、何故か疲弊し切っていた化け兎達を片っ端から伸して回り、
力ずくで事件の解決に成功したのである。
ともなると、訪問にも多少の後ろめたさがありそうなものではあるが、
この冥土さんにはそういった感情は無いらしい。
堂々と玄関を開け放つと、大声でのたまったのだ。
「てるよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「やかまっしゃあ!! 誰がてるよやねん!!」
瞬時に言葉を返したのは、永遠亭の主、蓬莱山輝夜その人であった。
「あら、自らお出迎えなんて珍しい事もあるものね」
「自分で呼んでおいて、よくそんな台詞を吐けるわね……」
呆れ顔のまま、すたすたと引っ込んでいく輝夜。
そして、当たり前のように付いていく幽々子。
が、永遠亭に住まう兎達は、誰一人として奇異の視線を送る事は無かった。
「で、何の用なの? そんな女中の格好なんてしちゃって」
「古い物言いね。これはメイド服といって時代の最先端を走っている……」
そう、慣れていたのだ。
幻想郷に君臨する三つの大家。紅魔館、白玉楼、永遠亭。
そのうち、紅魔館と白玉楼の関係は、言うまでも無く険悪だ。
今、幽々子が紅魔館のメイドなどをやっているのが、その証拠である。
また、紅魔館と永遠亭の仲も、今ひとつよろしくないといった所だろうか。
そもそも、永夜の怪事以来、殆ど交流が無いのだ。
では残る白玉楼と永遠亭はどうかと言うと……これが意外にもかなり良好な関係であった。
仮にもカチコミをかけた者とかけられた者であるにも関わらずだ。
始まりは、満月の影響で目を患った妖夢を、騒動の首謀者の一人であった永琳が治療した事だった。
それを切っ掛けとして、両家の間では活発と呼んで良い程度に行われるようになった。
また、もっとも大きかったのは、当主である幽々子と輝夜の関係にあったりする。
お互いに姫と呼ばれるような身分だというのもあってか、二人はすんなりと意気投合したのである。
それこそ周囲のほうが驚いたくらいに。
実は、ねとげーなる遊戯を通じて以前からの知り合いだった、等という説もあるが、真実の程は定かではない。
もちろん、覆しがたい個人間の感情のもつれも多少は生まれたりはしたものの、
大勢に影響を及ぼすようなものでも無かった。
「ふーん……貴方も暇なのね」
「まぁ暇というか、必然的というか……」
客間へと河岸を移し、暢気にくっちゃべる二人。
会話は自然と、今の幽々子の境遇についてへと流れていた。
「とてもじゃないけど、私には考えられないわね。
何かをRMT……もとい、質に入れてでもお金を作らせるわ」
「……でしょうね」
千年物のニートの発言は、流石に説得力に溢れていた。
はたらく? なにそれ、おいしい? とでも言わないだけまだマシだろう。
もっとも、数日前までの幽々子なら言いかねない所ではあるが。
「ま、貴方が妙なところで活動的なのは、今に始まった事じゃなかったわね」
「……」
褒められているのか、貶されているのか、些か判別に苦しむ所だ。
実際問題、貶されたところで仕方の無い状況とも言えるが。
そも、ここ永遠亭との交流の発端も、輝夜の言う妙な所で活動的になった成果だ。
「失礼しまーす。お茶をお持ちしました」
がらり、と襖を開け放ったのは、見覚えのある月兎だった。
「あら鈴仙ちゃん。相変わらずしおれた耳ね」
「……それが挨拶ですか」
「冗談よ。今日は随分と見事に直立してるじゃない」
「え、嘘っ!?」
慌てて、自らの耳をぺたぺたと触り出す鈴仙。
が、それがいつもの如くへにょっているのを確認すると、がくりと項垂れた。
気のせいか、耳も当社比200%で下へと向いていた。
「……また騙しましたね?」
「……少しは疑うという事を知りなさいな」
相変わらず、見事なまでの馬鹿正直振りだった。
弾幕はああも捻くれているというのに、不思議なものである。
そう言えば妖夢も、剣による肉弾戦はともかく、弾幕はかなり変則的だった気がする。
もしや、弾幕とは性格とは真逆の性質になるものなのだろうか。
「……」
「って、どうしてそこで私を見るの?」
「……詮無きことよ」
仮定は、仮定だった。
しばらくの間、鈴仙も交えて益体もない世間話に興じていた三人であったが、
輝夜が何やら時間を確認したかと思うと言い放った。
「さて、それじゃ私は出かけるわね」
幽々子は耳を疑った。
それだけでは足りなかったのか、鈴仙の耳も疑った。
が、それは出会った当初から疑っていたので関係無い。
ともかく、今聞こえた声は、確かに輝夜のものだった。
すると……
「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」
永遠亭に、幽々子の叫び声が響き渡った。
「……ねぇイナバ。私って一体何だと思われてるのかしら」
「ええと……とてもじゃないけど私の口からは言えません……」
動揺のあまり、ヒンズースクワットを始める幽々子を、冷たい目で眺めていた輝夜だったが、
やがてため息を付くと、鞄片手に立ち上がった。
「じゃ、後は宜しくね」
「あ、はい。師匠にもお伝えしておきます」
「って、ちょい待って! 本当に出かけるの!?」
絵描き歌を始めたところで、幽々子が我に返る。
「嘘吐いてどうするのよ。まぁ、お出かけって言うほど雅なものじゃないわ。いつもの殺し合いよ」
「……ああ、アレね」
成る程、と理解する。
それならば外出も頷ける所だ。
相手取るであろう蓬莱人が些か気の毒とは思ったが、それが日常であるのなら仕方ないだろう。
千年以上に渡る確執に、首を突っ込む気は無い。
「ふふふ……地の底から沸きあがる多数の混合物の入り混じった液体で散々に苦しめた後に、
無数の生き物死に物の類を胃に詰め込んで止めを刺す……そんな極悪なプランよ」
「……それって、温泉旅行って言わない?」
「気のせいよ」
全然、確執っぽくなかった。
というか、意外と仲良しさんのようだった。
「あ、いけない」
永遠亭を後にしようとした段で、気がついた。
本題を済ませていなかったのだ。
取り出した手紙に書かれた宛名は、蓬莱山輝夜。
が、その当人は、既に楽しい温泉旅行へと赴いてしまった。
これは問題だ。
「……どうしました?」
玄関から動かないのを怪訝に思ったのだろう、鈴仙が戸惑いがちに声を掛ける
「鈴仙ちゃん、ちょっと耳貸して」
「はい……?」
「ふぅ~~」
「うきゃっ!?」
生暖かい息を吹きかけられ、鈴仙は思わず飛び跳ねる。
「な、何するんですかっ!」
「あ、ゴメンね。つい……」
「からかうのも程々にね。疑心暗鬼になられたら困るもの」
その声を聞いた途端に、幽々子の表情が硬いものへと変化する。
また、それとは逆に、鈴仙の表情が安堵に緩む。
「む……そういや貴方もいたのね」
「お言葉ねぇ」
背後に立っていた人物は、やれやれとばかりに首を振った。
八意永琳。永遠亭の実質的な支配者。
そして、幽々子が永遠亭でもっとも苦手とする人物であった。
理由は幽々子自身にも良く分かっていない。
自分をも上回る自己主張の激しい胸が原因かもしれないし、
その内面を読み取らせようとしない性格にあるかもしれない。
もしくは、妖夢と必要以上に仲が良いのが理由という可能性もある。
が、考えてみれば、これらの点は殆ど紫にも当てはまってしまうのだ。
幽々子自身にも分からないという所以である。
「……ほら、お届け物よ」
「手紙? 貴方、いつから配達屋になったの?」
「何だって良いでしょ」
「まぁ良いけど、これって姫宛てじゃないの。さっき会ってたんでしょう?」
「忘れてたのよ。別に貴方相手でも良いでしょ、どうせ検閲とかしてるんだろうし」
「それもそうね」
「って、否定しなさいよ」
やはり、というか言葉に棘が出てしまう。
見れば永琳の背後に回った鈴仙が、陰から舌などを出していた。
これまでの訪問でいくらか仲良くなった感はあったのだが、やはり彼女の優先順位は覆らないのだろう。
「……では、失礼しますわ」
居心地の悪くなった事もあり、幽々子は言い捨てるように永遠亭を後にした。
「まったくもう……」
「……んー……」
「ん? 師匠、どうしました?」
「いえ、ね。ちょっと気になって」
永琳の視線は、先程幽々子から受け取った手紙に注がれていた。
「(……拙い傾向ね)」
日はとうに暮れ、夜と言ってもよい時間帯。
人気の無い森の上空を、ふよふよと、見るからに危なっかしい様子で飛ぶ幽々子の姿があった。
そこに、先程までの壮健さは微塵も見られない。
「うう……おなかすいた……」
これが理由である。
らしいと言えば、あまりにもらしい。
「こんな事なら、永遠亭で何か頂いてくるんだったわ……」
後悔既に遅し。
現在地は永遠亭から離れること遥か遠い。
とは言え、紅魔館に戻る訳にも行かない。
今だ任務は達成されていないのだ。
「ああ……フライドチキンが空を飛んでいるわ……」
ついには幻覚まで見始める始末である。
どうやらカオス耐性は無いようだ。
「もえる~もえる~も~え~るぅ~~おれのこころがぁ~~」
失礼。幻覚ではなかった。
幻想郷に歌を唄う存在は数あれども、このような寂れた場所で、明日への叫びを熱唱する奇特な輩はごく少ない。
そのごく少ない存在の一人が彼女……夜雀の怪ことミスティア・ローレライだった。
もっとも、最近は薄幸のとりさんと呼ばれていたりする。
その所以は……言うまでもなかろう。
「食べ物を粗末にしては……いけないわよね」
それまでヘタれきっていた幽々子の目が、狩人のものへと変わる。
「私は私は貴方から食べ始めますぅーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
その狩人ではない。
「しろいまっとにぃ~~、ん?」
気分良く唄っていたところを、何やら奇怪な叫びが遮ってくれた。
まことに不快である。
不快の元は断ち切るべきだ。
どれ、一つ闇夜の恐怖を教えて進ぜよう、とばかりに振り向くとそこには……
「食堂とは食べる所と見つけたり……我、餓鬼となりて、目の前の鳥すべてを……喰らう!」
「……!?」
闇夜を軽く飲み込むであろう恐怖が、いた。
それが誰であるのか、ミスティアは理解したくなかった。
あるときはミンチにされかけ、あるときは羽をむしられかけ、あるときは足に食いついて下さったそのお方。
天敵と書いて幽々子と読む、まさに彼女にとって最凶最悪の存在であった
「や、やぁ、良い夜ね。こんなに素敵な夜に殺生沙汰は好ましく無いと思わない?」
半ば駄目元で説得を試みる。
その飢えに飢えた様子から、大方無駄だろうとは思ったが。
「あら、この鶏肉活きが良いわね……踊り食いとは何て贅沢なのかしら」
やはり無駄だった。
「あのね。あんた、もう少し相手の話を……」
「え? 私が好きなのは手羽先よりモモ肉よ。でも今日の所は軟骨だって文句は言わないわ」
そも、会話にすらなっていない。
今の幽々子に見えているのは、ミスティアというより、ただの食材なのだろう。
「うが~~~! 毎回毎回この扱い! 自機キャラを舐めるんじゃないってのよ!」
ついにミスティアは切れた。
やけくそとも言うが。
「失礼ね、舐めたりなんかしないわよ。かじりはしますけど」
「コンチクショウが! 私の歌を聴けぇ!」
ミスティアは赤い戦闘機を背景に、弾幕を展開した。
果たして彼女の歌は幽々子に通じるのか。
「……へぐぅ……」
結論から言うと、幽々子は負けた。
捕まえるどころか、面白いように弾幕を喰らっての墜落である。
当たり判定が初代シルヴァーホークに匹敵する大きさであったのだから無理も無い。
どうやら空腹は彼女からあらゆる能力を奪い去っていたようだ。
ミスティアは来ない……というか、とうに逃げ去っていった。
状況的に考えれば、日頃の恨みを晴らすチャンスの筈なのだが、
それでも第一歩を踏み出せない辺り、彼女がいかに幽々子を恐れているかがよく分かろう。
「ふふ……夜雀如きに打ち落とされた挙句の餓死か……後の歴史家は私を笑うでしょうね」
もう死んでいる。との突っ込みも入らない。
もちろん歴史食いも来ない。
今の幽々子は、どこまでも一人だった。
「手紙……届け切れませんでした……ごめんなさいメイド長……」
落下した際に口が開いたのか、鞄に入っていた筈の手紙が、ちょうど目の前に転がっていた。
もう届くことの無いであろう手紙。
ふと最後に、その相手が誰であるのかが知りたいと思った。
幽々子は残り少ない力を振り絞って、手紙を手に取る。
< 八雲紫 様 >
「……」
それは、偶然だったのだろうか。
記された宛名は、嫌というほどよく知っている人物。
そして、記憶が確かなら彼女は今、白玉楼に在住している筈だ。
白玉楼。
ほんの三日離れていただけで、こうも懐かしい響きに感じるとは。
「……行かないと……」
死人嬢である幽々子の目に、明らかな生気が宿る。
明らかに矛盾しているのだが、そんな事はどうでもよかった。
今の彼女を支えているのは、使命感。
そう、何としてでもこの手紙を届けなくてはならない。
己の留守を守る友の為に。
幽々子は立ち上がる。
そして、力強く地面を蹴ると、目指すべき場所……冥界に向けて飛び立ったのだった。
「妖夢のごはん……!」
本音が出ていた。
<白玉楼>
紫と妖夢の二人は、夕食後のお茶を楽しんでいた。
特に会話は無かったが、別段重い空気という訳でもない。
無いのだが……
「(うーん……このままじゃマズいわね)」
紫は内心悩みを抱えていた。
何がというと、現状についてだった。
白玉楼に来てからの紫の生活形態は、食べては寝て、寝ては食べての繰り返しである。
それは、マヨヒガ時代と何が違うんですかと問われると答えに詰まるのだが、問題はそういう事ではない。
今、紫がここにいる理由は、あくまでも幽々子の代理役である。
即ち、行動も幽々子に倣ったものでなくてはいけない、と思っているのだが、
どうにも幽々子の行動パターンというものが分からないでいた。
妖夢が何も言わない以上、幽々子もただ食っちゃ寝生活しているだけなのでは、とも思う。
だが、それだけでは足りない。
何かイベントが必要だ、という漠然とした思いがふよふよと浮かぶのだ
「ねぇ、妖夢」
「何ですか?」
「貴方、何かしたい事は無い?」
で、紫が出した結論はこれだった。
どうせ幽々子の衝動的な思考など、考えた所で分かる筈もない。
ならば、せめて妖夢のリクエストに答えるくらいが、今の自分に出来ることだろう、と。
「また突然ですね……うーん……」
「……」
「うーーん……」
「……」
「うーーーん……」
「……な、無いの? 何も無いの?」
「うーーーーん……」
妖夢は真剣に考えている。
が、それはいかがなものだろう。
自分がやりたい事を言うのが、それ程までに悩むような事なのか。
欲が無いと言えば聞こえが良いが、それでは余りにも不憫では無いか。
いや、それだけでは済まない。
もはや、魂魄妖夢という自我の、消滅の危機ですらある。
「あ、一つありました」
「な、何? 今なら何だって聞いてあげちゃうわよ」
心情も相まって、勢い込んで詰め寄る紫。
が、妖夢から放たれた言葉は、紫をさらなる欝へと引きこむものだった。
「幽々子様に、お料理を食べて頂きたいです」
「え……」
「きっと、慣れない場所で苦労なさっているでしょうし、少しでも力になれれば……なんて。
本音を言えば、早く帰って来て欲しいですけど、それは私の我侭ですから」
「……」
この期に及んで、口にしたのは幽々子の名前。
幽々子の喜びこそが、妖夢にとっての喜びである。とでも言いたいのだろうか。
冗談ではない。
元はと言えば、今回の騒動は、幽々子の放蕩の末に引き起こされたものだ。
従って、幽々子が苦労するのは自業自得である。
それに妖夢が付き合わされる道理などない。
従者には従者の自覚が必要なのと同じように、主人にはまた主人としての自覚が必要だろう。
だが、今回の幽々子の行動は、明らかにそれを放棄していた。
仮に、自分達が白玉楼を訪ねなかったらどうなっていたか。
……恐らくは、何ら変わりなく、一人で白玉楼を守っていただろう。
それは、例え妖夢自身が良いと思っていても、紫にとっては許しがたい事であった。
「紫様? どうしました?」
「……妖夢」
感極まったのか、紫はぎゅむ、と妖夢を抱きしめた。
「ゆ、ゆ、ゆ、ゆかりさま!?」
「妖夢……貴方はもっと我侭になるべきよ」
「な、何を……」
「いえ、ならなくちゃいけないの。
もし、幽々子がそれを許さないというのなら……私は幽々子から貴方を奪うわ」
「……紫様……」
しばし、動揺を隠せずにいた妖夢であったが、紫が本気であることを悟ると、大人しく身を任せた。
「なら、一つ我侭を言わせ下さい」
「……何かしら」
「今日は、一緒に寝て下さいますか。実は少し、寂しかったんです」
「……ええ、勿論OKよ」
ようやく引き出せた、僅かばかりの本音。
それでも紫には、貴重な第一歩だと感じられた。
……と、同時に、従来の悪戯心が騒ぎ始めた。
「一緒に寝るということは、その先も期待して良いのよね?」
「……え?」
「まさか妖夢のほうから求めてくるなんて思わなかったわ、さぁ今夜はハッスルするわよ!」
「ちょ、ちょい待って下さい! どうしてそうなるんですか!?」
「ええい、問答無用!」
無論、本気ではない。
だが、明日以降の事を考えれば、この程度のおちゃらけは必要だろう。
等と自分に言い訳しつつ、紫は妖夢を押し倒した。
「紅の館からこんばんわー! ご主人様が来ましたよーーー! よーむー、何か食べるもの……」
正に、最悪のタイミングだった。
襖を大きく開け放った幽々子、押し倒した紫、されるがままの妖夢。
三者三様の姿ではあったが、一様に固まった事だけは共通していた。
「ゆ……」
「ゆ?」
「こ?」
上から順に、幽々子、妖夢、紫である。
要するに、何かを言おうとした幽々子に、謎な呻きを二人が返したという事だ。
「紫のばかっ!」
そんな事知るか。とばかりに、叫びを上げる幽々子。
「ちょっと、幽々子、落ち着いて……」
「うるさい! おばか! 覗き魔! コスプレマニア! 無駄飯喰らい! おっぱいおばけ!」
幽々子の憤りは止まらない。
ただ思うがままに、悪口を並べ立てていく。
が、それに対して紫が返した言葉は、実に辛辣なものだった。
「……自己紹介?」
「……っ!」
堪らず、幽々子はくるりと踵を返す。
「あ、幽々子様っ!」
それを見た妖夢は、どこから取り出したのか、何やら包みのようなものを幽々子に向けて放り投げた。
幽々子はそれを見ることなく、背面キャッチすると、逃げるように飛び去っていった。
「ねぇ、今、何を渡したの?」
「夕食の残りで作ったおにぎりです。……ってそんな事より、どうして止めを刺すような事言うんですか!」
「……どうしてかしらね」
言葉を濁してはみたが、本音ははっきりしていた。
今の心情で、幽々子に肩入れする気になれなかったのだ。
「追いかけるなんて言わないわよね? 今の幽々子には何を言ったって無駄よ」
「でも、このままじゃ……」
「そうね……でも、まぁ」
紫は立ち上がると、幽々子のいた場所に落ちていた紙を拾い上げた。
「切っ掛けらしきものは、置いていったみたいよ?」
幽々子が置いていったもの……手紙は二通。
一つが、紫宛て。
そしてもう一つは、妖夢宛てのものであった。
<紅魔館>
「色々あったけど、今日もお疲れ様、私。っと」
人気の無くなった……というか元々人気のない門の前で、美鈴はうーんと伸びをする。
両手に持っていた筈の得物は、既に何処へと放り投げられていた。
実のところ、極めて苦しかったので誰かが止めてくれるのを待っていたというのは内緒である。
天啓とは、その程度のものだったのだろう。
「……ん?」
詰め所へと戻ろうとした最中、何やら接近してくる人物が視界に入った。
警報は鳴らない。
それは即ち、紅魔館の関係者である証拠である。
「アレは……花子?」
疑問系ではあるが、内心では確信していた。
あれほど絶大なるインパクトを残してくれた奴を忘れよう筈も無い。
というか、今もインパクト十分だった。
「ひっく……えぐっ……もぐ……」
彼女は泣いていた。
と、同時に、何かを食べていた。
「ちょっと花子! 一体どうしたってのよ!?」
「ひぐっ……あ……めーりんさん……はむ……」
「って、泣くのか食べるのかどっちかにしなさいっての」
「ぐすっ……たべます……」
「食べるの!?」
このまま突っ込みマシーンと化するのは何としても避けたい事態である。
そう判断した美鈴は、半ば強制的に幽々子を詰め所へと連れ込んだのだった。
「ふーん……成る程ねぇ」
「ひっく……」
幽々子は事のあらましを、詳細に語った。
実は自分が、とある王家の妾腹から生まれた、望まれぬ子であったこと。
だが、3年前に神託を受け、一つの指輪を探す為に旅立ったこと。
そこでレミリアと出会い、メイドを志すようになったこと。
が、今になって王家の血筋が自分しか残っていないという事実を知ったこと。
そして今日、すべての諍いに決着を付けたこと。等々……。
言うまでも無いが、混じりっ気無しの純然たる大嘘だった。
当然と言えば当然である。
もし本当の事を説明するなら、初っ端から自分が西行寺幽々子であるとばらさなければいけないからだ。
というか、いい加減気付きそうなものではあるが、どうにもその様子は見られない。
人が良いのと鈍感である事は、密接な関係にあるのだと幽々子は理解した。
「でも、まぁ、済んだのなら良いんじゃないの? 何かしら過去に傷がある奴なんて、ここには沢山いるしね」
「……はい……」
しかも、先程のデマを信じたようだった。
思いつくがままに適当に並べたストーリーであったが、もしやそれすらも紅魔館では自然な経歴なのだろうか。
が、それにしたところで、ここまであっさり受け入れられてしまうと、罪悪感が沸いてくる。
「その、ありがとうございました。私、もう大丈夫です」
「あ、うん、気にしないでよ。私で良けりゃいつでも相談くらい乗るからさ」
「……はい」
朗らかな笑顔を見せる美鈴に、幽々子は心の中で謝罪しつつ、逃げるように立ち去るのだった。
「(世界って、広いのね……)」
多少ながら落ち着きを取り戻した幽々子は、咲夜の執務室を訪れていた。
配達完了の報告の為である。
実のところ、全部届けきった記憶は無いのだが、不思議と鞄は空になっていた。
そこで幽々子は、きっと無意識のうちに行っていたのだろうと、極めて自分に都合の良い結論を出したのだった。
「……花子です。只今戻りました」
しばらく待ってみるが、返事は無い。
「いないのかしら……あれ?」
ドアノブは手ごたえ無くあっさりと回った。
見れば、室内からは薄っすらと明かりが漏れている。
あの自称、完全で瀟洒なメイドが、鍵も掛けず明かりも付けっぱなしで外出するだろうか?
有り得ない。
「メイド長、入ります」
そう判断した幽々子は、静かにドアを開く。
出発前に訪れた時と、何ら変わり無い整然とした風景。
机の上だけがカオスの極みとなっているのも変わらない。
その向こう側に、両手を組んで座っている咲夜の姿があるのもまた同様。
……の筈だった。
目の前まで来たにも関わらず、咲夜は何の反応も見せなかった。
一瞬、変わり身の術か何かかと思ったが、いかな咲夜でも忍法は使えまい。
「……メイド長? どうしました?」
焦れた幽々子は、机を回り込む。
と、同時に。
咲夜の身体がぐらりと揺らぎ、椅子から転げるように倒れた。
「……咲夜!?」
「く……はぁ、……はぁ……」
禁を破ったにも関わらず、咲夜から咎める言葉は出ない。
いや、出せないのだろう。
咲夜はただ、苦悶の表情で吐息を漏らし続けていた。
ゆゆ様、その歌は危険です。思わず襲いたqあwせdrftgyふじこlp
ゆかりんと妖夢のコンビも中々良いものですね。和みました。なにやら話がシリアスな方向へ動き出しそうで続きが気になります。
それはいいとして(え)…今回も小ネタ有難うゴザイマス。
ラストの場面でコナンを連想してみたり。いや死んでなくてよかった。
元ネタのほとんどが分からなかったけど、おもしろかったデス。
咲夜の腹には深々と刺さったナイフとフォーク。
そこへ不自然なタイミングで駆けつけてくるメイドたち。
「違う! 私じゃない!」
花子の悲痛な叫びが木霊する…。
次回・紅魔館の冥土さん(7.5)乞うご期待!』
なんてことを即興で考え付いてしまった自分っていったい…。
と、それは置いといて(?)
相変わらず小ネタ満載で楽しく読ませていただきました。
十話前後で完結ですか…先が長いような短いような。
ともあれ頑張ってください。
「おっぱいおばけ!」→「おっぱいはげ!」に見えた…。
こーゆーのも良いなぁ
続き楽しみにしてます。
読み応えバッチリです。
一体何が始まるんです?