我魂魄なり我妖夢なり 庭師なり御方様が警士なり
冥界静謐にして白玉楼不穏
幽々子様西行寺の御方様 無聊散じに御所望の品ありと
そはもしや いつぞやの如く春の欠け 春の素かと危ぶめば
否いな否 春は十分桜も十全 されど不足は甘露な茶菓子
願わくば庭師 生界より持ち帰り来たれ と
さもなくば 菓子職人の十や百 死に誘うのもやむなき仕儀 と
手狭なねぐら白玉楼 無為な住人無策な死人は勘弁勘弁
我魂魄なり我妖夢なり 双剣背負って一目散に いざ下向つかまつる
湖畔にほとり降り立てば 妖怪一匹ご機嫌調子
見れば齧るは菓子麺麭(ぱん)の類
それな菓子麺麭をば所望 と持ちかければ
これなるはわが夕餉なり されど世間は一つ穴一つ
願いを聞くなら譲り渡すにやぶさかならず と金髪妖
その願いを聞こういま聞こう と二度繰り返すは魂魄なり妖夢なり
されば と宵闇の妖 頬赤らめて言うところには
われ未だ霊の味わいを知らず 夜歩く者として羞恥のきわみ
願わくば御身 その半身をばひと齧りさせんと
我魂魄なり我妖夢なり およそがえんじ得ぬことなれど
菓子なからずんば御方様 誘死死誘死死 死々累々
かくてはやむなし覚悟のしどころ 嘆息交じりに頷きたり
齧られ舐められ甘噛みされ ほうほうのていで退散し
やっと入手の菓子麺麭をば 如何なるものかと見てみれば
中に詰まるは妖の好物 いやはや これは御前に出す訳には
齧られ損の噛まれもうけ 我魂魄なり我妖夢なり
せんなく周囲を探り見れば 蛙相手に戯れながら
氷菓子ほおばる妖精の姿 これ天佑なりと譲渡を訴え
さればと氷精条件言うには われ未だ霊を凍らせた試しなし
願わくば足下 わが冷気にて氷漬けたらんと
無論のちほどしっかりと 溶かしてみせてしんぜるゆえ
と鳥肌浮かぶ薄笑い
我魂魄なり我妖夢なり とうてい首肯しえぬ代償なれど
菓子なくばわが御方様 死に誘うこと土砂降りのごとし
嗚呼さても 詮方なしと不承不承受け容れたり
二度の失敗三度目の正直 命からがら溶かされ撤退
ようよう購いし氷菓子 どれほどのものと確かめれば
こはいかに 見る間に溶けて崩れて垂れ流れ
残るは ハズレ と書かれし棒切れのみ
かの氷精の冷気なくば 溶ける仕組みの菓子とおぼし
さてもはても 震え凍えて流した洟は流し損か流しもうけか
意気も消沈足取り重く ふらり寄ったは紅魔の巣
見れば門衛満悦顔で 何やらほおばり ご機嫌上々
そは何ぞ と問えば門番えびす顔で
これなるは 故郷より届きし点心なりと
その菓子をば譲り候えと持ちかければ
こはふるさとの味 代え難きものなり
されどこれも何かの縁 譲らないでもない所存
とはいえ無償で渡す気はなし と
我魂魄なり我妖夢なり もはや矢でも槍でも望むところ
されば と番人口開いて言うよう
わが故郷を好いて貰いたい
わがふるさとを知って
わが祖国の歌を口ずさんで
わが思い出の地へ想いを馳せてほしい
それに勝るむくいはない と
我魂魄にして我妖夢 頷き首肯し微笑み返し
澄み切りきったる墨染の天 異郷の歌と幽郷の舞
銀光返す弦月の影 双剣射二太刀放
幻姿交錯生葬の境 我魂魄なり我妖夢なり
こうしてかくしてしこうして ようやくの態で菓子をば入手
我魂魄なり我妖夢なり わっせわっせと足早に帰還
幽々子様に御方様にお目見え参上
あら庭師 そんなに疲れて果ててぐったりで
あたかも死人か半死人みたい と呑気なお言葉
それはさておきさておいて 御茶菓子をば持ち帰りて候と言上
すると幽々様御方様 ああ丁度 御菓子を貰った所なの
隙間の同胞からの贈り物でね そうあのお転狐のお手製だそうよ
出来立てのほやほやだから美味しそう さあ午後の御茶にしましょう
あらどうしたの庭師の人 そこは墓穴じゃありませんよ
我魂魄なり我妖夢なり
冥界静謐にして白玉楼不穏
幽々子様西行寺の御方様 無聊散じに御所望の品ありと
そはもしや いつぞやの如く春の欠け 春の素かと危ぶめば
否いな否 春は十分桜も十全 されど不足は甘露な茶菓子
願わくば庭師 生界より持ち帰り来たれ と
さもなくば 菓子職人の十や百 死に誘うのもやむなき仕儀 と
手狭なねぐら白玉楼 無為な住人無策な死人は勘弁勘弁
我魂魄なり我妖夢なり 双剣背負って一目散に いざ下向つかまつる
湖畔にほとり降り立てば 妖怪一匹ご機嫌調子
見れば齧るは菓子麺麭(ぱん)の類
それな菓子麺麭をば所望 と持ちかければ
これなるはわが夕餉なり されど世間は一つ穴一つ
願いを聞くなら譲り渡すにやぶさかならず と金髪妖
その願いを聞こういま聞こう と二度繰り返すは魂魄なり妖夢なり
されば と宵闇の妖 頬赤らめて言うところには
われ未だ霊の味わいを知らず 夜歩く者として羞恥のきわみ
願わくば御身 その半身をばひと齧りさせんと
我魂魄なり我妖夢なり およそがえんじ得ぬことなれど
菓子なからずんば御方様 誘死死誘死死 死々累々
かくてはやむなし覚悟のしどころ 嘆息交じりに頷きたり
齧られ舐められ甘噛みされ ほうほうのていで退散し
やっと入手の菓子麺麭をば 如何なるものかと見てみれば
中に詰まるは妖の好物 いやはや これは御前に出す訳には
齧られ損の噛まれもうけ 我魂魄なり我妖夢なり
せんなく周囲を探り見れば 蛙相手に戯れながら
氷菓子ほおばる妖精の姿 これ天佑なりと譲渡を訴え
さればと氷精条件言うには われ未だ霊を凍らせた試しなし
願わくば足下 わが冷気にて氷漬けたらんと
無論のちほどしっかりと 溶かしてみせてしんぜるゆえ
と鳥肌浮かぶ薄笑い
我魂魄なり我妖夢なり とうてい首肯しえぬ代償なれど
菓子なくばわが御方様 死に誘うこと土砂降りのごとし
嗚呼さても 詮方なしと不承不承受け容れたり
二度の失敗三度目の正直 命からがら溶かされ撤退
ようよう購いし氷菓子 どれほどのものと確かめれば
こはいかに 見る間に溶けて崩れて垂れ流れ
残るは ハズレ と書かれし棒切れのみ
かの氷精の冷気なくば 溶ける仕組みの菓子とおぼし
さてもはても 震え凍えて流した洟は流し損か流しもうけか
意気も消沈足取り重く ふらり寄ったは紅魔の巣
見れば門衛満悦顔で 何やらほおばり ご機嫌上々
そは何ぞ と問えば門番えびす顔で
これなるは 故郷より届きし点心なりと
その菓子をば譲り候えと持ちかければ
こはふるさとの味 代え難きものなり
されどこれも何かの縁 譲らないでもない所存
とはいえ無償で渡す気はなし と
我魂魄なり我妖夢なり もはや矢でも槍でも望むところ
されば と番人口開いて言うよう
わが故郷を好いて貰いたい
わがふるさとを知って
わが祖国の歌を口ずさんで
わが思い出の地へ想いを馳せてほしい
それに勝るむくいはない と
我魂魄にして我妖夢 頷き首肯し微笑み返し
澄み切りきったる墨染の天 異郷の歌と幽郷の舞
銀光返す弦月の影 双剣射二太刀放
幻姿交錯生葬の境 我魂魄なり我妖夢なり
こうしてかくしてしこうして ようやくの態で菓子をば入手
我魂魄なり我妖夢なり わっせわっせと足早に帰還
幽々子様に御方様にお目見え参上
あら庭師 そんなに疲れて果ててぐったりで
あたかも死人か半死人みたい と呑気なお言葉
それはさておきさておいて 御茶菓子をば持ち帰りて候と言上
すると幽々様御方様 ああ丁度 御菓子を貰った所なの
隙間の同胞からの贈り物でね そうあのお転狐のお手製だそうよ
出来立てのほやほやだから美味しそう さあ午後の御茶にしましょう
あらどうしたの庭師の人 そこは墓穴じゃありませんよ
我魂魄なり我妖夢なり
こういうのもいいなぁ。
声に出して読んでみるとテンポも上々。
良く考えられてると感心致しました。
頭悪くて読むのに時間が掛かった。
おそらくこの感想が目につく事は無いであろうが
賞賛せずにはいられない
素晴らしい。
せかせかした感じがよく出た、いいテンポだと思います。
しかし気のせいでしょうか、妖夢が苦労するSSって多いですよね…。(-_-;)