久しぶりにこちらの世界に来てみたら、いきなり悪霊に拉致られた。
そんな経緯をもつ『岡崎 夢美』と『北白河 ちゆり』は、せっせと何かを作っていた。
夢美「ねえ。」
ちゆり「何だ?」
夢美「何で、前回は私たちは名前が出てなかったの?」
ちゆり「ああ、きっと作者の陰謀・・・・。」
ぴんぽんぱんぽ~ん
魅魔『放送禁止コード言ったやつ!くれぐれも気をつけるように。』
ぴんぽんぱんぽ~ん
ちゆり「盗聴されてるのか?」
夢美「地獄耳なだけじゃないかしら。」
その後は、黙々と製作を続ける。
夢美「・・・・・出来た。」
ちゆり「何作ってたんだ?」
ちゆりは、特に何もしてなかったらしい。
夢美「爆弾。」
ちゆり「そんなもん、どうするつもりだ?」
夢美「決まってるじゃない。あの悪霊のところに投げつけるのよ。」
ぴんぽんぱんぽ~ん
魅魔『今、悪霊って言ったやつ。出て来な。』
ぴんぽんぱんぽ~ん
ちゆり「・・・・それで、どさくさにまぎれて船に逃げ帰るか。」
夢美「そういうことよ。それじゃ、がんばってね。」
ちゆり「・・・・・・は?」
夢美「あんたが、あの建物に爆弾をしかけてくるのよ。」
ちゆり「でも、あの辺はもうとっくに禁止エリア・・・・・。」
夢美「そこは、知恵で乗り切って。」
ちゆり「根性のほうが必要だと思うけどな。」
夢美「それに、主催者さんもお呼びみたいだし。」
ちゆり「用があるのは、御主人様のほうじゃなかったか?」
夢美「つべこべ言わずに、さっさと行く。」
ちゆり「とほほ・・・・・。」
主人の命には逆らえない。
仕方なく、建物の方へ向かうちゆり。
そこへ現われる人影。
?「それじゃあ、困るのよ。」
ちゆり「誰だ!?」
?「人に名前を聞くときは・・・・。」
ちゆり「ああ、私か?そうだな。岡崎 夢美だ。職業、変態科学者。」
?「フランドールよ。邪教徒さん。」
ちゆり「あ~、この世界では、科学は邪教か。ところで、何で困るんだ?」
フランドール「こんな楽しいこと。簡単に終わってもらったら、つまらないじゃない。」
ちゆり「いや、私たちは、早く帰りたいんだけど・・・・。」
フランドール「問答無用!」
フランドールは本を振りかざし、ちゆりに殴りかかった。
パコーン!
ちゆり「ぐは・・・・・・・。」
ちゆりは防ぎきれず、本の角を脳天に喰らって倒れた。
その一部始終を見ていた、薄情な御主人。
夢美「まあ、素敵。前に来たときはこんなの見れなかったわ。」
フランドール「あなたも、これの一撃がほしいのかしら?」
夢美「何で、こんな時に限って、データの収集が出来ないのかしら・・・・。」
フランドール「お話、聞いてるの?」
夢美「・・・・そもそも、何でこの世界に生まれなかったのかしら・・・・。」
フランドール「・・・・・。」
夢美「考えてたら、悔しくなってきたわ。」
フランドール「悔しかったら、どうするの?」
夢美「こうする!」
夢美は、懐から何かを取り出す。
夢美「夢美謹製!超小型地球破壊爆弾!」
ちゆり「それだけはやめろ~!!」
死んでたはずのちゆりが、突如復活した。
そして、何処からともなく取り出したパイプ椅子で、思いっきり夢美の頭を殴りつけた。
バコーン!
夢美「・・・・・・きゅう・・・・・。」
ぱた
地球の破壊者は、倒れた。
ちゆり「やった・・・。私は・・・、地球を救った・・・ん・・・だ・・・・。」
ぱた
地球を救った救世主も、倒れた。
残された幻想郷の破壊神は、
フランドール「これは、使えるわね・・・・・・。」
パイプ椅子を拾い上げると、その場から去って行った。
小さな地球防衛戦争になど、興味はないのである。
・
・
・
こっちは妖夢。
主人はまだ見つからないらしい。
妖夢「・・・・・・寝てるのかな?」
幽々子がやられたという放送は、未だに無い。
それ故妖夢は、幽々子を探し続けている。
妖夢「う~ん、どうしようか・・・・。」
なんて考えてたその時、
ヒュ!
上から何かが飛んできた。
キン!
それを刀で打ち落とす妖夢。
妖夢「出てきな。」
妖夢は、それ、ナイフが飛んできた方に向かって語りかけた。
咲夜「流石ね。」
出て来たのは、咲夜。
妖夢「名無しの中国と、ちんどん長女を見たわ。アレは、あなたがやったのね。」
咲夜「そうよ。」
妖夢「次は私・・・・、ってこと?」
構えを取る妖夢。
咲夜「そのつもりだったんだけどね。」
妖夢「?」
咲夜「やっぱりあんたは、一筋縄じゃいかないみたいね。だから、今はやめとく。」
妖夢「・・・・・・ふ!」
妖夢は咲夜に斬りかかった。
カキィン!
刀をナイフで受け止める咲夜。
咲夜「・・・・殺る気なの?」
妖夢「さっきのナイフのお返しよ。それ以外なんでもないわ。」
咲夜「そう。」
二人の殺気が消える。
咲夜「ところで、うちのお嬢様、見なかった?」
妖夢「あんたのとこのお嬢様なら、手下を連れて歩いてたわ。」
咲夜「その手下とは?」
妖夢「紅白なのと白黒なの。」
咲夜「やっぱり。」
妖夢「で、お返しに、私の質問に答えて。」
咲夜「見てないわ。」
妖夢「まだ、何も言ってない。」
咲夜「あんたのところのお嬢様でしょ?見てないわ。残念だけどね。」
妖夢「そう。」
情報交換をする二人。
咲夜「・・・・・・さて、これでお互いに貸し借りは無く、用も無くなったわね。」
妖夢「次に合ったときは・・・・・。」
咲夜「どうなるのかしら?楽しみね・・・。」
二人は、互いに背を向けると、それぞれ別方向に歩いて行った。
・
・
・
ここは・・・・・。
何処?
神社?
あー、帰って来れたんだ。
魔理沙「あー、帰って来れたぜ。」
あら、魔理沙。
生きてたのね。
言っとくけど、あんたの家じゃあないわ。
レミリア「やっぱりここが、一番居心地がいいわねー。」
・・・・あんたは自分の家に帰れ。
ま、無事だったからいいか。
魔理沙「それにしても、まさか霊夢がなあ。」
レミリア「そうよねえ。今でも信じられないわ。」
え?
ちょっと、何のことよ?
魔理沙「あのまま行方不明になるなんて、誰が思ったことやら。」
レミリア「今ごろ地獄ね。」
魔理沙「地獄の鬼の大将になってたりな。」
何で?
私はここにいるわ。
魔理沙「ま、そう簡単に死ぬようなやつじゃないから、そのうちフラっと帰ってくるだろ。」
レミリア「それもそうね。」
いや、だから。
私、ここにいるって。
レミリア「それじゃあ、鬼が居ないこの機会を利用して・・・・。」
魔理沙「お嬢様、あんたも悪(ワル)だねえ。くくく・・・・。」
レミリア「ふふふ・・・・。」
?
待て。
何しようっての?
魔理沙「略奪、開始~!!」
レミリア「おじゃましま~す。」
!!
こら!
勝手に人の家に上がるな!
魔理沙、箪笥を漁るな。
レミリア、台所行っても血なんてないわよ。
魔理沙「お。」
レミリア「どうしたの?」
魔理沙「来いよ。面白いもん、見つけたぜ。」
何見つけたのよ・・・・。
魔理沙「霊夢の日記。」
!
何ぃ~~!
レミリア「面白そうね。読ませて。」
魔理沙「慌てるなって。ゆっくり見ようじゃねえか。」
見るな!
見るな!
魔理沙「・・・・・・・・。」
レミリア「・・・・・・・。」
・・・・・・・。
魔理沙「・・・・・・・プ。」
レミリア「・・・・・・ふふ。」
魔理沙「ぶわはははははは!」
レミリア「あはははは。」
こら。
何を見た!?
魔理沙「あ~、あいつらしいぜ。まさかこんな・・・・。」
レミリア「ね~。そんなんでこんなんだなんてねえ。」
何よ?
何処見てるのよ?
やめて。
これ以上見るな。
魔理沙「それじゃあ、続きを・・・・・。」
やめてって!
レミリア「うふふふふ・・・・。」
やめろ~~~!!!
・
・
・
霊夢「やめろ~~~!!!」
ガバ!
布団から飛び起きる霊夢。
霊夢「って、あれ?ここは何処?」
アリス「お目覚めかしら?」
霊夢「見ての通りよ。」
アリス「見ての通りね。」
傍にいたのは、七色の人形使い『アリス・マーガトロイド』。
霊夢「あんたがここまで運んできたの?」
アリス「そうよ。旧友のよしみでね。」
霊夢「トドメぐらい、簡単にさせたんじゃない?この状況だったらね。」
アリス「それも考えたんだけどね。」
霊夢「けど?」
アリス「まあ、あんたが生きてた方が、何かと都合がいいと思ってね。」
霊夢「それはどうも。で、あんたは何してるの?それに、ここは何処?」
アリス「ここは、島にある灯台よ。」
霊夢「で?」
アリス「私はここで、新しく手に入れた人形たちと篭城しているところよ。」
霊夢「新しく手に入れた人形?」
アリス「ええ。」
アリスは自慢気に説明し始めた。
アリス「ええと、まずは民家で拾った『名無しの中国人形』。」
霊夢「・・・・・・は?」
アリス「次に『宵闇のそーなのかー人形』。」
霊夢「・・・・・・ちょっと。」
アリス「それから、『合奏ちんどん人形』。これは三体セットね。」
霊夢「待て待て。」
アリス「何よ?」
霊夢「その人形って、もしかして・・・。」
アリス「その辺で拾ったのよ。」
霊夢「・・・・・あんた、何時からネクロマンシーまでやり始めたのよ。」
アリス「人形の操術を応用しただけなんだけど。」
霊夢「ひょっとして、私も死んでたら・・・・。」
アリス「そうねえ。『博麗の腐乱死体人形』になってたかもね。」
霊夢「腐らすな。」
アリス「『博愛の仏蘭西人形』みたいな名前で、お洒落じゃない。」
霊夢「そんな寒いギャグのネタにされるなんて、絶対いやだ。」
人形の説明は、とりあえず終わったようだ。
アリス「まあ、しばらくここで、ゆっくりしていくのがいいわ。」
霊夢「うん。そうさせてもらう。」
アリス「何か、聞きたいこととか、ある?」
霊夢「そうねえ。私が気絶してる間、誰か死んだって放送無かった?」
アリス「ええと、確か、異世界がどうこう、邪教徒がどうこうって放送があったとおもうわ。」
霊夢「あ~、わかんないわ。」
アリス「後は、悪霊言うな、放送禁止コードに気をつけろとか言う放送くらいね。」
霊夢「魅魔も必死ね。」
アリス「そうだ。忘れてたけど、あんた、今までどうしてたの?」
霊夢「今まで?そうね。わがままお嬢様のお守りかな?」
アリス「それで、盾にされてこのザマと。」
霊夢「まあね。それで、あとは魔理沙が一緒だったんだけど。」
アリス「盾にされて。」
霊夢「このザマよ。」
アリス「二人とも、案外心配してるんじゃない?」
霊夢「それは、絶対に無い。」
・
・
・
魔理沙「へ~っくしょい!」
レミリア「くしゅん。」
魔理沙「あ~、誰かウワサしてんのか?人気者は困るぜ。」
レミリア「霊夢、大丈夫かな?」
魔理沙「あいつのことだ。死にはしないだろ。」
レミリア「死んでなきゃ、後が怖いわ。」
魔理沙「・・・・・それもそうか。霊夢、極楽浄土は、きっといいところだから、さっさと逝くのがいいぜ。」
・
・
・
アリス「で、そんな二人と、何でチーム組んでたの?」
霊夢「魔理沙が言うには、脱出の方法があるって。」
アリス「ほんとなの?」
霊夢「さあ?」
アリス「信用できないわ。」
霊夢「実のところ、私もあんまり信用してない。っていうか、信用出来なくなった。」
アリス「それじゃ、私と組まない?手数と盾は多いわよ。」
霊夢「う~ん・・・・・・。考えとく。」
アリス「そう。それじゃあ、私は人形の様子を見てくるわ。ごゆっくりね。」
霊夢「・・・・・・。」
そう言って、アリスは部屋を去っていった。
~~~・・・、~~~~・・・
霊夢「何か、外が騒がしいわねえ。」
・
・
・
アリスが拾った人形の自慢をしていたころ、灯台のある一室。
テーブルにイス、時計、料理用と思われるガスコンロなどが備わっている部屋。
その部屋の中では、
美鈴「ナマエ、ナマエ!ワタシノナマエ、イウヨロシ!」
リリカ「チュウゴク、チュウゴクー!」
美鈴「チガウチガウ。ワタシメイリンアルヨ。」
ルーミア「ソーナノカー。」
メルラン「ワタシ、スゴクフツウ!」
ルナサ「・・・・・オチツケ。アンタ、フツウジャナイ・・・・・。」
当の人形たちが騒いでいた。
リリカ「ワーイ!ヒアソビヒアソビ~!」
何を思ってか、ちんどん人形の一人が、ガスコンロをいじり始めた。
ルナサ「・・・・ヒアソビ、ヨクナイ・・・・・・・。」
メルラン「ジョウショウキリュウ、オコル。」
ルーミア「ソーナノカー。」
美鈴「ワタシ、ホンメイリンアルヨ!チュウゴクチガウアルネ!」
リリカ「チュウゴクウルサイヨー。ヤイチャエー。」
ボッ!
ちんどん人形3は、中国人形に火をつけた。
美鈴「アツイ!アツイアルヨ!」
リリカ「ヒダルマ、ヒダルマ~!」
ルナサ「・・・・・・カジ、ナル・・・・・。」
ルーミア「ソーナノカー。」
ルナサ「・・・・・ショウカ、スル・・・・。」
メルラン「エキタイハッケン。ブッカケル。」
ルナサ「・・・・・ソレ、アブラ・・・・・。」
パシャ
ちんどん人形2が、液体(油)を中国人形にぶっかける。
ボワアアア~!
火が油に引火した。
美鈴「ギイヤアアアア~!アツイアルヨ~~!」
ルナサ「・・・・・・ヒ、コッチ、キタ・・・・・・・。」
ルーミア「ソーナノカー。」
メルラン「アツイ~。」
リリカ「ネエサン、タノシソウ。」
部屋は、火の海と化した。
・
・
・
アリスは霊夢と話を終えると、人形の様子を見に行った。
アリス「・・・・なんとなく騒がしかったけど、何かあったのかな?」
アリスの中に、疑惑が湧く。
アリス「・・・・・気温が上がってきたわねえ。」
そう思っているうちに、部屋に着いた。
そして、部屋のドアのノブに手をかけて開けようとした。
カチャ・・・・。
アリス「・・・・・・・あれ?」
カチャ、カチャ・・・・。
開かない。
アリス「どうしたのかしら?」
仕方ないので、ちょっと力をこめて開けようと試みた。
アリス「せ~の・・・・!」
どど~ん!!!!
・
・
・
どど~ん!!!!
霊夢「なによ、もう。うるさいなあ・・・・。」
あまりの騒々しさに、霊夢はベッドから這い出た。
そして、先ほどアリスが歩いていったほうへ向かって行った。
霊夢「なんか、気温が上がってきたわねえ。」
なんて思っていると、霊夢の視界に、大変なものが映った。
何かと黒焦げの廊下、そして廊下に落ちている黒焦げの人。
霊夢「・・・・・何があったのよ?」
アリス「・・・・・・・・。」
アリスに話し掛けても返事は無い。
続いて霊夢は、部屋を覗いてみた。
そこには、黒焦げの人形が五体。
霊夢「・・・・・だから、一体何があったの・・・・?」
霊夢にはわからんが、部屋は密室でその中で火災。
人形たちはまとめて焼死。
アリスはドアを開けたときに発生したバックドラフトで死亡。
まあ、そういうわけである。
霊夢「誰も答えてくれないし、さっさと行くか・・・。皆の衆、ご冥福をお祈りするわ・・・・。」
霊夢は灯台を後にした。
・
・
・
二人に合流(して仕返しでも)しようと、歩いていた霊夢。
霊夢「・・・・・こっちの方かしら?」
とりあえず、勘を頼りに道を定めた。
霊夢「まったく、何だってこんな目にあわなきゃならんのやら・・・・・。」
なんて独り言を言ってると、何かを見つけた。
橙「ええ~と、これをこうして、あそこにはこれを描いて・・・・。」
見ると、『橙』がなにやら作業をしていた。
霊夢「何してるのよ、紅白な猫。」
橙「結界を張ってるの。」
霊夢「結界?」
見ると、地面に魔方陣が描いてあったり、人形(ひとかた)がおいてあったりしている。
橙「そ。完成したら、並みの妖怪は入って来れないって。」
霊夢「そんなもん、何処で覚えたのよ?」
橙「前に、藍様が教えてくれた。」
霊夢「ふ~ん。」
橙「ここに篭城してれば、安全でしょ?」
霊夢「ほんとにそう思う?」
橙「よし、あとは中央で呪文、と・・・。」
霊夢「こら。人の話を聞け・・・・。」
橙は魔方陣の中央に立ち、
橙「つきたてのほやほや~、たきたてのほかほか~・・・・。」
霊夢「適当に言ってない?」
妖しげな呪文を唱え始めた。
そして
橙「・・・・・・・・・テンコォォォォ~~!!!}
霊夢「!!」
ゴゴゴゴゴゴゴ!!
橙が叫んだと同時に、橙の周りに結界が張られた。
橙「やった、大成功!」
霊夢「は~、うさんくさい結界だこと。」
橙「これで安全ね。」
霊夢「どれ・・・・・。」
試しに霊夢は、結界に触ってみた。
ぱり~ん!
橙「あ~~~~~~~~~!!!!!」
結界は、壊れた。
霊夢「何よ。脆い結界ね。」
橙「・・・・・・・・・。」
霊夢「これじゃ、蚊帳にもなりやしない。」
橙「・・・・・・・・・。」
橙は、放心している。
霊夢「身を守りたいなら、うちの結界ぐらいじゃないとね。それじゃ、頑張ってね。」
そういうと霊夢は、去っていった。
橙「・・・・・・・・・・。」
橙はまだ放心している。
と、そこへ。
フランドール「紅白の臭いがする・・・・・・。」
フランドールが現われた。
フランドール「微妙に違ったかしら?」
橙「・・・・・・・・・・・。」
フランドール「猫ね。でも私、猫の皮の剥ぎ方なんて知らないし・・・・。」
そう言ってフランドールは、戦利品の一つ、パイプ椅子を取り出し、
ばこ~ん!
橙をぶん殴った。
橙「・・・・・・・・・。」
ぱた
橙は、倒れた。
フランドール「さて、次、次。」
次の標的を求め、フランドールは去って行った。
・
・
・
魔理沙は、とりあえず待っていた。
魔理沙「・・・・待ってたところで、帰ってくるのか、こないのか。」
すぐそこでは、レミリアがお昼寝中である。
魔理沙「こうして見ると、害は無さそうなんだがな。」
?「そうね。」
背後から声。
魔理沙「まったく、可愛いもんだろ。あんたを待つって言ったりして。」
霊夢「休憩の口実がほしかったのよ。きっと。」
現われたのは、博麗霊夢。
霊夢「ほら、起きなさい。」
レミリア「う~、あと五分・・・・・。」
霊夢「起きないと、虫眼鏡を通して日光を当てるよ?」
レミリア「おはようございます。」
レミリア、目覚める。
レミリア「あら、生きてたのね。」
霊夢「おかげさんでね。」
魔理沙「さて、役者がそろったところで、出発といこうか。」
レミリア「そうね。」
霊夢「待て。」
出発しようとした二人を引き止める霊夢。
魔理沙「何だ?」
霊夢「今度、私を見捨てて逃げ出したら、背中から容赦なく針と札を撃ちこむわよ?」
魔理沙「・・・・・ああ、わかったよ。」
レミリア「・・・・・うん。」
霊夢「解ればよろしい。」
二人に釘を刺すと、霊夢は歩き出した。
レミリア「どれくらい、本気だと思う?」
魔理沙「そうだな。神社ぶっ壊されたときを想像してみな。」
レミリア「・・・・・大層、おそろしや。」
・
・
・
一方、妖夢は。
妖夢「これだけ探しても見つからないなんて・・・。まさか、幽々子様に遊ばれてるとか?」
割とありえない話ではない、と思ったりする。
そんなことを思いながら歩いていると、
妖夢「あら・・・・・・・。」
藍「・・・・・・・・・。」←(例のポーズ)
妖夢は何かを発見した。
妖夢「どっかで見た地蔵、ね。」
と、どっかで見た地蔵を検分していると、
藍「わあっ!」
地蔵が大声をあげた。
ちゃ・・・・
妖夢「・・・・・・・・・・。」
藍「あれ・・・?」
妖夢は微動だにせず、さらに、藍に刀を向けた。
妖夢「その方法で、何人殺った?」
藍「いや~、別に殺るつもりはなかったんだけど。」
妖夢「けど?」
藍「約一名をちょっと驚かせたら、走って逃げて行って、そこの肥溜めにドボン、さ。」
妖夢「ちょっと拝見。」
見ると、そこには何やら青っぽいのが浮いている。
妖夢「で、私がそんな手にかかると思って?」
藍「やってみなけりゃわからん。」
妖夢「まあ、いいわ。ところで、うちのお嬢様、見なかった?」
藍「知らない。」
妖夢「そう。じゃ、あなたには用無しということで・・・・・。」
藍「こらこら。罪も無い狐を捌くのか?」
妖夢は、藍に向けていた刀を振りかざした。
藍「・・・・・・・(やられる!)」
妖夢「そこに隠れてるやつ、出てきなさい!」
藍「!?」
ひゅ~ん
と、妖夢が向いた方向から、すごい勢いで何かが飛んできた。
スコーン!
藍「おうあ・・・・・・・。」
飛んできたそれ、本は、藍に命中した。
妖夢「く・・・・・・!」
妖夢は正面に駆け出し、刀を振った。
そして、出て来たのは
フランドール「やるわね。ちょっとは楽しめそうかしら?」
妖夢「・・・・・・・・。」
殺る気満々のフランドール。
妖夢は無言で構えをとり、そして
ばっ!
斬りかかった。
カキィン!
妖夢「せい!はぁ!」
フランドール「ふふふ・・・・・・。」
カキィン!
カキィン!
金属同士の接触音が響く。
藍「いたたたた・・・・・。」
その間に、藍が復活した。
藍「誰よ?本なんか投げてきたのは。」
見ると、妖夢とフランドールが、激闘を繰り広げている。
藍「あ~、今のうちに、地蔵になりすましておくか。」
割とシリアスな展開に置いていかれる藍。
やむえず、地蔵のポーズをとる。
妖夢「く・・・。私の楼観剣が、パイプ椅子ごときに・・・・。」
フランドール「もうおしまい?」
相手が一筋縄ではいかないことを確信する妖夢。
妖夢「(幽々子様を見つけなければならない以上、こんなところで時間は取れない・・・)。」
フランドール「それじゃあ、今度はこっちからいくわよ!」
妖夢「(敵に背を見せるは恥!しかし、私は今しばらく生き恥をさらす!)。」
フランドール「人のお話、聞いてる?」
妖夢「(さて、どうやって離脱したものか・・・・)。」
フランドール「・・・・聞いてないみたいね。」
フランドールはパイプ椅子で、人の話を聞かない妖夢に攻撃を仕掛けた。
そして
ぱか~ん!
フランドール「ふふふ・・・。手応えアリね。」
確かな手応えに満足するフランドール。
しかし
藍「(・・・・・・・痛い)。」
フランドール「む・・・。変わり身の術・・・・。」
殴られたのは、地蔵に扮した藍だった。
見ると、妖夢の姿は無い。
フランドール「逃げるなんて卑怯よ。」
藍「そーだそーだ。私を盾にするなんて、卑怯千万!」
フランドール「ん?」
藍「(っとと、いかんいかん)。」
うっかり声をあげた藍は、努めて動くまいとする。
フランドール「はて?誰か喋らなかったかしら?」
藍「(叫んだけど、喋ってはいない)。」
フランドール「ん~・・・・・・。気のせいね。」
藍「(まあ、気のせいだ)。」
とりあえず、気のせいだったということにしておく。
藍「(ふふふ・・・。私の足元には、さっきあんたが投げた本がある。)。」
フランドール「さて、本を回収しなきゃね。」
藍「(いい子だ。ご褒美に、ギャフンと言わせてやるよ)。」
何故か、地蔵化した(?)藍を気にすることなく、フランドールは本を回収する。
そして、
藍「わああぁぁぁぁ~~~~!!!!」
藍が大声をあげた。
藍「わあああああ~~!!」
フランドール「・・・・・・・・・・。」
藍「わあああ~!」
フランドール「・・・・・・・・。」
藍「わあ~・・・・・・。」
フランドール「・・・・・・・・・。」
藍「テンコ~・・・・・。」
ゴン!
藍「ギャフン・・・・・。」
ぱた・・・
本の角で頭を殴られ、藍はその場に倒れ伏した。
・
・
・
で、無事撤退を果たした妖夢。
妖夢「あ~、疲れた。」
先ほどの戦いで、随分と体力を消耗したらしい。
でもって、幽々子捜索で精神的にも疲れているらしい。
妖夢「もう、打ち上げるかなあ、これ。」
狼煙をあげて、霊夢らと合流しようかと考えた妖夢。
と、そのとき
ガサ・・・
妖夢「?」
茂みから、音がした。
妖夢「誰かいる・・・・?」
妖夢は、そちらの方に近づく。
そして、そこにいたのは
妖夢「幽々子様・・・・?」
妖夢の目に映ったのは、開始以来ずっと探していた妖夢の主人、『西行寺 幽々子』そのひとである。
妖夢「幽々子様!」
たまらず妖夢は、声をあげる。
幽々子「あら、妖夢。」
事もなさげに反応する幽々子。
しかし、妖夢にはそんなことはどうでもよかった。
妖夢「幽々子様!よくぞご無事で・・・・。」
幽々子「あなたも、よく無事だったわね。よかったよかった。」
妖夢「迎えに上がるのが遅れて、申し訳ございません。」
幽々子「ほんとよ~。退屈だったわ。」
そして互いに駆け寄る主従。
と、そのとき
妖夢「う・・・・・。」
ばた~ん
妖夢は、派手に倒れた。
幽々子「妖夢?」
妖夢「・・・・・・・・・。」
幽々子「お昼寝かしら?」
妖夢の身体は、動かなくなっていた。
幽々子「・・・・・・あ、やっちゃったんだ。」
妖夢「・・・やっちゃったんだ、じゃないです。」
幽々子がやっちゃったと思った瞬間、妖夢の半分が話し掛けてきた。
妖夢「も~、折角の感動の再会なのに、いきなり魂抜くことないでしょう。」
幽々子「ごめんごめん。うれしくって、つい。」
妖夢「つい、じゃありません。」
どうやら幽々子は、妖夢の半分人間の部分に、うっかり死を与えてしまったたようだ。
で、妖夢の意識は、人魂の部分に移ったらしい。
人魂からは短い手がはえて、頭の部分には顔がうっすらと映っている。
幽々子「で、どうしようか?」
妖夢「どうしようって、私を元に戻してはくれないんですか?」
幽々子「ほら、死と反魂を一緒にしちゃいけないって・・・。」
妖夢「・・・・・・・・・。」
幽々子「冗談はさておき、早く戻しちゃいましょうか。」
そう言って、幽々子は妖夢の身体に近づく。
その瞬間、
?「悪いけど、そのままでいて頂戴。」
ガッ!
幽々子「う・・・・・・・。」
バタ・・・・
妖夢「ゆ、幽々子様!」
咲夜「騒がない。死人に口なし。」
突然現われた咲夜は、幽々子に当て身を喰らわせた。
幽々子は意識を失い、その場に倒れた。
妖夢「ちょっと!なんてことするのよ!」
咲夜「だって、あなたが生き返ったら、また相手しなきゃいけないし。」
妖夢「だからって、当て身かますことないじゃない。」
咲夜「・・・・しょうがないじゃない。あんなことがあった後じゃ。」
妖夢「あんなことって・・・・・・?・・・・・あ~。」
咲夜「殺せる保障なんて、あったもんじゃないわ。」
まあ、ルナサのことであろう。
妖夢「でも、幽々子様はギャグキャラじゃないわ。」
咲夜「ほとんどネタキャラじゃない。似たようなもんよ。」
妖夢「む~・・・・・。」
咲夜「と、いうわけで、悪く思わないでね。」
妖夢「あ~、ちょっと待って。」
咲夜「何よ?」
妖夢「何か来るわ。」
咲夜「?」
・
・
・
霊夢「ふと思ったけど。」
魔理沙「唐突だな。で、何だ?」
霊夢「あっちの方で、度々シリアス臭いにおいがプンプンするんだけど。」
魔理沙「ああ。それは気のせいじゃないぜ。実は、あんたが行方不明の間に。」
霊夢「何があったの?」
魔理沙「鳥肌が立つくらいのシリアス臭さがにおってな。たまらんぜ、あれは。」
レミリア「誰が、そんなにおい出したのかしら?」
魔理沙「主犯は、庭師だろうな。あれは真面目すぎていかん。」
霊夢「大丈夫かな?」
魔理沙「お、珍しく人の心配か?」
レミリア「雨・・・、いや、槍が降るわね。私は雨のほうが困るけど。」
霊夢「失礼ね!私はただ・・・。」
魔理沙「ただ・・・、何だ?」
霊夢「そんなシリアス臭いのと、無事一緒にいられるのかって、思っただけ。」
・
・
・
咲夜「へぷし!」
フランドール「くしゅん!」
妖夢「は、は、はっくしょん!」
咲夜とフランドール、そして妖夢の半分は、同時にクシャミをした。
咲夜「人気者は困るわ。」
フランドール「そうね。」
気を取り直して、戦闘に入る二人。
咲夜「さっきは驚いたわ。私に気配を感じさせないで、背中をとるなんて。」
フランドール「ふふふ・・・・・。」
咲夜「余裕ですわね、妹様?」
フランドール「余裕よ!」
弾幕飛び、ナイフ飛びの激戦を繰り広げる二人。
妖夢「・・・・・私は、どうすれば?」
身体は幽々子に殺られ、意識はもう半分の部分に有る妖夢。
そんなんじゃあ、何も出来ない。
ガッ!
妖夢「!?」
妖夢は、音をした方を見た。
すると、咲夜の攻撃を受けたフランドールが吹っ飛んできた。
ゲシッ!
妖夢「ぶっ!」
フランドールは、妖夢に直撃した。
妖夢「こら!もうちょっと方向を考えろ~!」
短い手を上下させて、妖夢は訴えかける。
しかし、死人の訴えは聞こえていないらしい。
妖夢「・・・・・・化けて出るよ?」
聞こえません。
咲夜「余裕があるのは結構ですが、もっと相手を見ていただきたいものです。」
フランドール「・・・・・・・・・・。」
バッ!
妖夢のことなど眼中に無い咲夜が、フランドールに駆け寄る。
咲夜「(この距離、この速さなら、反撃は受けない・・・・!)」
咲夜はそう確信した。
フランドールは、膝をついたままである。
膝をついたまま何をしているかというと、
妖夢「って、ちょっと、人の身体を漁らないでよ!」
フランドール「今忙しいから、ちょっと黙っててくれない?」
妖夢「火事場の泥棒じゃない!ああ、楼観剣だけは・・・・・。」
死体から武器を剥ぎ取っていた。
咲夜「剣ごときで、私の攻撃を防げるとお思いですか!?」
フランドール「・・・・・・・・・ふふ。」
勝利を確信している咲夜に、フランドールは不適な笑みを浮かべる。
そして、
フランドール「恋符『マスタースパーク』!」
咲夜「な・・・・・!」
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・
咲夜の攻撃が、フランドールに当たる直前の出来ごとである。
突然の、予想外のカウンター攻撃に、咲夜は成す術なく光にのまれていった。
薄れ行く意識の中、咲夜の頭の中は
咲夜「(普通に死ねるのね。よかった、ギャグキャラ扱いじゃなくて・・・・・・)。」
という思いで一杯だったそうな。
フランドール「さてと、この剣、借りてくわよ?」
妖夢「丁寧に使ってね。もう、とっとと元に戻りたいから、早く決着をつけてきて頂戴。」
フランドール「言われなくてもそうするわ。」
妖夢「ああ、それと、紅白一行がこっちに向かってると思うから。」
フランドール「何で、そんなことがわかるのかしら?」
妖夢「さっきのマスタースパークが、集合の合図だったのよ。」
フランドール「ふ~ん。」
妖夢「そういうわけだから、さっさと行ってきて。」
フランドール「もう逃がさないわ。」
楼観剣と白楼剣を持って、フランドールは全てに決着をつけに行った。
妖夢「はあ・・・・。ずっとシリアスで通してきたつもりなのに、こんなオチはないじゃない・・・。」
残された妖夢の独り言。
妖夢「・・・・・グレるよ、本気で・・・・・。」
続く
そんな経緯をもつ『岡崎 夢美』と『北白河 ちゆり』は、せっせと何かを作っていた。
夢美「ねえ。」
ちゆり「何だ?」
夢美「何で、前回は私たちは名前が出てなかったの?」
ちゆり「ああ、きっと作者の陰謀・・・・。」
ぴんぽんぱんぽ~ん
魅魔『放送禁止コード言ったやつ!くれぐれも気をつけるように。』
ぴんぽんぱんぽ~ん
ちゆり「盗聴されてるのか?」
夢美「地獄耳なだけじゃないかしら。」
その後は、黙々と製作を続ける。
夢美「・・・・・出来た。」
ちゆり「何作ってたんだ?」
ちゆりは、特に何もしてなかったらしい。
夢美「爆弾。」
ちゆり「そんなもん、どうするつもりだ?」
夢美「決まってるじゃない。あの悪霊のところに投げつけるのよ。」
ぴんぽんぱんぽ~ん
魅魔『今、悪霊って言ったやつ。出て来な。』
ぴんぽんぱんぽ~ん
ちゆり「・・・・それで、どさくさにまぎれて船に逃げ帰るか。」
夢美「そういうことよ。それじゃ、がんばってね。」
ちゆり「・・・・・・は?」
夢美「あんたが、あの建物に爆弾をしかけてくるのよ。」
ちゆり「でも、あの辺はもうとっくに禁止エリア・・・・・。」
夢美「そこは、知恵で乗り切って。」
ちゆり「根性のほうが必要だと思うけどな。」
夢美「それに、主催者さんもお呼びみたいだし。」
ちゆり「用があるのは、御主人様のほうじゃなかったか?」
夢美「つべこべ言わずに、さっさと行く。」
ちゆり「とほほ・・・・・。」
主人の命には逆らえない。
仕方なく、建物の方へ向かうちゆり。
そこへ現われる人影。
?「それじゃあ、困るのよ。」
ちゆり「誰だ!?」
?「人に名前を聞くときは・・・・。」
ちゆり「ああ、私か?そうだな。岡崎 夢美だ。職業、変態科学者。」
?「フランドールよ。邪教徒さん。」
ちゆり「あ~、この世界では、科学は邪教か。ところで、何で困るんだ?」
フランドール「こんな楽しいこと。簡単に終わってもらったら、つまらないじゃない。」
ちゆり「いや、私たちは、早く帰りたいんだけど・・・・。」
フランドール「問答無用!」
フランドールは本を振りかざし、ちゆりに殴りかかった。
パコーン!
ちゆり「ぐは・・・・・・・。」
ちゆりは防ぎきれず、本の角を脳天に喰らって倒れた。
その一部始終を見ていた、薄情な御主人。
夢美「まあ、素敵。前に来たときはこんなの見れなかったわ。」
フランドール「あなたも、これの一撃がほしいのかしら?」
夢美「何で、こんな時に限って、データの収集が出来ないのかしら・・・・。」
フランドール「お話、聞いてるの?」
夢美「・・・・そもそも、何でこの世界に生まれなかったのかしら・・・・。」
フランドール「・・・・・。」
夢美「考えてたら、悔しくなってきたわ。」
フランドール「悔しかったら、どうするの?」
夢美「こうする!」
夢美は、懐から何かを取り出す。
夢美「夢美謹製!超小型地球破壊爆弾!」
ちゆり「それだけはやめろ~!!」
死んでたはずのちゆりが、突如復活した。
そして、何処からともなく取り出したパイプ椅子で、思いっきり夢美の頭を殴りつけた。
バコーン!
夢美「・・・・・・きゅう・・・・・。」
ぱた
地球の破壊者は、倒れた。
ちゆり「やった・・・。私は・・・、地球を救った・・・ん・・・だ・・・・。」
ぱた
地球を救った救世主も、倒れた。
残された幻想郷の破壊神は、
フランドール「これは、使えるわね・・・・・・。」
パイプ椅子を拾い上げると、その場から去って行った。
小さな地球防衛戦争になど、興味はないのである。
・
・
・
こっちは妖夢。
主人はまだ見つからないらしい。
妖夢「・・・・・・寝てるのかな?」
幽々子がやられたという放送は、未だに無い。
それ故妖夢は、幽々子を探し続けている。
妖夢「う~ん、どうしようか・・・・。」
なんて考えてたその時、
ヒュ!
上から何かが飛んできた。
キン!
それを刀で打ち落とす妖夢。
妖夢「出てきな。」
妖夢は、それ、ナイフが飛んできた方に向かって語りかけた。
咲夜「流石ね。」
出て来たのは、咲夜。
妖夢「名無しの中国と、ちんどん長女を見たわ。アレは、あなたがやったのね。」
咲夜「そうよ。」
妖夢「次は私・・・・、ってこと?」
構えを取る妖夢。
咲夜「そのつもりだったんだけどね。」
妖夢「?」
咲夜「やっぱりあんたは、一筋縄じゃいかないみたいね。だから、今はやめとく。」
妖夢「・・・・・・ふ!」
妖夢は咲夜に斬りかかった。
カキィン!
刀をナイフで受け止める咲夜。
咲夜「・・・・殺る気なの?」
妖夢「さっきのナイフのお返しよ。それ以外なんでもないわ。」
咲夜「そう。」
二人の殺気が消える。
咲夜「ところで、うちのお嬢様、見なかった?」
妖夢「あんたのとこのお嬢様なら、手下を連れて歩いてたわ。」
咲夜「その手下とは?」
妖夢「紅白なのと白黒なの。」
咲夜「やっぱり。」
妖夢「で、お返しに、私の質問に答えて。」
咲夜「見てないわ。」
妖夢「まだ、何も言ってない。」
咲夜「あんたのところのお嬢様でしょ?見てないわ。残念だけどね。」
妖夢「そう。」
情報交換をする二人。
咲夜「・・・・・・さて、これでお互いに貸し借りは無く、用も無くなったわね。」
妖夢「次に合ったときは・・・・・。」
咲夜「どうなるのかしら?楽しみね・・・。」
二人は、互いに背を向けると、それぞれ別方向に歩いて行った。
・
・
・
ここは・・・・・。
何処?
神社?
あー、帰って来れたんだ。
魔理沙「あー、帰って来れたぜ。」
あら、魔理沙。
生きてたのね。
言っとくけど、あんたの家じゃあないわ。
レミリア「やっぱりここが、一番居心地がいいわねー。」
・・・・あんたは自分の家に帰れ。
ま、無事だったからいいか。
魔理沙「それにしても、まさか霊夢がなあ。」
レミリア「そうよねえ。今でも信じられないわ。」
え?
ちょっと、何のことよ?
魔理沙「あのまま行方不明になるなんて、誰が思ったことやら。」
レミリア「今ごろ地獄ね。」
魔理沙「地獄の鬼の大将になってたりな。」
何で?
私はここにいるわ。
魔理沙「ま、そう簡単に死ぬようなやつじゃないから、そのうちフラっと帰ってくるだろ。」
レミリア「それもそうね。」
いや、だから。
私、ここにいるって。
レミリア「それじゃあ、鬼が居ないこの機会を利用して・・・・。」
魔理沙「お嬢様、あんたも悪(ワル)だねえ。くくく・・・・。」
レミリア「ふふふ・・・・。」
?
待て。
何しようっての?
魔理沙「略奪、開始~!!」
レミリア「おじゃましま~す。」
!!
こら!
勝手に人の家に上がるな!
魔理沙、箪笥を漁るな。
レミリア、台所行っても血なんてないわよ。
魔理沙「お。」
レミリア「どうしたの?」
魔理沙「来いよ。面白いもん、見つけたぜ。」
何見つけたのよ・・・・。
魔理沙「霊夢の日記。」
!
何ぃ~~!
レミリア「面白そうね。読ませて。」
魔理沙「慌てるなって。ゆっくり見ようじゃねえか。」
見るな!
見るな!
魔理沙「・・・・・・・・。」
レミリア「・・・・・・・。」
・・・・・・・。
魔理沙「・・・・・・・プ。」
レミリア「・・・・・・ふふ。」
魔理沙「ぶわはははははは!」
レミリア「あはははは。」
こら。
何を見た!?
魔理沙「あ~、あいつらしいぜ。まさかこんな・・・・。」
レミリア「ね~。そんなんでこんなんだなんてねえ。」
何よ?
何処見てるのよ?
やめて。
これ以上見るな。
魔理沙「それじゃあ、続きを・・・・・。」
やめてって!
レミリア「うふふふふ・・・・。」
やめろ~~~!!!
・
・
・
霊夢「やめろ~~~!!!」
ガバ!
布団から飛び起きる霊夢。
霊夢「って、あれ?ここは何処?」
アリス「お目覚めかしら?」
霊夢「見ての通りよ。」
アリス「見ての通りね。」
傍にいたのは、七色の人形使い『アリス・マーガトロイド』。
霊夢「あんたがここまで運んできたの?」
アリス「そうよ。旧友のよしみでね。」
霊夢「トドメぐらい、簡単にさせたんじゃない?この状況だったらね。」
アリス「それも考えたんだけどね。」
霊夢「けど?」
アリス「まあ、あんたが生きてた方が、何かと都合がいいと思ってね。」
霊夢「それはどうも。で、あんたは何してるの?それに、ここは何処?」
アリス「ここは、島にある灯台よ。」
霊夢「で?」
アリス「私はここで、新しく手に入れた人形たちと篭城しているところよ。」
霊夢「新しく手に入れた人形?」
アリス「ええ。」
アリスは自慢気に説明し始めた。
アリス「ええと、まずは民家で拾った『名無しの中国人形』。」
霊夢「・・・・・・は?」
アリス「次に『宵闇のそーなのかー人形』。」
霊夢「・・・・・・ちょっと。」
アリス「それから、『合奏ちんどん人形』。これは三体セットね。」
霊夢「待て待て。」
アリス「何よ?」
霊夢「その人形って、もしかして・・・。」
アリス「その辺で拾ったのよ。」
霊夢「・・・・・あんた、何時からネクロマンシーまでやり始めたのよ。」
アリス「人形の操術を応用しただけなんだけど。」
霊夢「ひょっとして、私も死んでたら・・・・。」
アリス「そうねえ。『博麗の腐乱死体人形』になってたかもね。」
霊夢「腐らすな。」
アリス「『博愛の仏蘭西人形』みたいな名前で、お洒落じゃない。」
霊夢「そんな寒いギャグのネタにされるなんて、絶対いやだ。」
人形の説明は、とりあえず終わったようだ。
アリス「まあ、しばらくここで、ゆっくりしていくのがいいわ。」
霊夢「うん。そうさせてもらう。」
アリス「何か、聞きたいこととか、ある?」
霊夢「そうねえ。私が気絶してる間、誰か死んだって放送無かった?」
アリス「ええと、確か、異世界がどうこう、邪教徒がどうこうって放送があったとおもうわ。」
霊夢「あ~、わかんないわ。」
アリス「後は、悪霊言うな、放送禁止コードに気をつけろとか言う放送くらいね。」
霊夢「魅魔も必死ね。」
アリス「そうだ。忘れてたけど、あんた、今までどうしてたの?」
霊夢「今まで?そうね。わがままお嬢様のお守りかな?」
アリス「それで、盾にされてこのザマと。」
霊夢「まあね。それで、あとは魔理沙が一緒だったんだけど。」
アリス「盾にされて。」
霊夢「このザマよ。」
アリス「二人とも、案外心配してるんじゃない?」
霊夢「それは、絶対に無い。」
・
・
・
魔理沙「へ~っくしょい!」
レミリア「くしゅん。」
魔理沙「あ~、誰かウワサしてんのか?人気者は困るぜ。」
レミリア「霊夢、大丈夫かな?」
魔理沙「あいつのことだ。死にはしないだろ。」
レミリア「死んでなきゃ、後が怖いわ。」
魔理沙「・・・・・それもそうか。霊夢、極楽浄土は、きっといいところだから、さっさと逝くのがいいぜ。」
・
・
・
アリス「で、そんな二人と、何でチーム組んでたの?」
霊夢「魔理沙が言うには、脱出の方法があるって。」
アリス「ほんとなの?」
霊夢「さあ?」
アリス「信用できないわ。」
霊夢「実のところ、私もあんまり信用してない。っていうか、信用出来なくなった。」
アリス「それじゃ、私と組まない?手数と盾は多いわよ。」
霊夢「う~ん・・・・・・。考えとく。」
アリス「そう。それじゃあ、私は人形の様子を見てくるわ。ごゆっくりね。」
霊夢「・・・・・・。」
そう言って、アリスは部屋を去っていった。
~~~・・・、~~~~・・・
霊夢「何か、外が騒がしいわねえ。」
・
・
・
アリスが拾った人形の自慢をしていたころ、灯台のある一室。
テーブルにイス、時計、料理用と思われるガスコンロなどが備わっている部屋。
その部屋の中では、
美鈴「ナマエ、ナマエ!ワタシノナマエ、イウヨロシ!」
リリカ「チュウゴク、チュウゴクー!」
美鈴「チガウチガウ。ワタシメイリンアルヨ。」
ルーミア「ソーナノカー。」
メルラン「ワタシ、スゴクフツウ!」
ルナサ「・・・・・オチツケ。アンタ、フツウジャナイ・・・・・。」
当の人形たちが騒いでいた。
リリカ「ワーイ!ヒアソビヒアソビ~!」
何を思ってか、ちんどん人形の一人が、ガスコンロをいじり始めた。
ルナサ「・・・・ヒアソビ、ヨクナイ・・・・・・・。」
メルラン「ジョウショウキリュウ、オコル。」
ルーミア「ソーナノカー。」
美鈴「ワタシ、ホンメイリンアルヨ!チュウゴクチガウアルネ!」
リリカ「チュウゴクウルサイヨー。ヤイチャエー。」
ボッ!
ちんどん人形3は、中国人形に火をつけた。
美鈴「アツイ!アツイアルヨ!」
リリカ「ヒダルマ、ヒダルマ~!」
ルナサ「・・・・・・カジ、ナル・・・・・。」
ルーミア「ソーナノカー。」
ルナサ「・・・・・ショウカ、スル・・・・。」
メルラン「エキタイハッケン。ブッカケル。」
ルナサ「・・・・・ソレ、アブラ・・・・・。」
パシャ
ちんどん人形2が、液体(油)を中国人形にぶっかける。
ボワアアア~!
火が油に引火した。
美鈴「ギイヤアアアア~!アツイアルヨ~~!」
ルナサ「・・・・・・ヒ、コッチ、キタ・・・・・・・。」
ルーミア「ソーナノカー。」
メルラン「アツイ~。」
リリカ「ネエサン、タノシソウ。」
部屋は、火の海と化した。
・
・
・
アリスは霊夢と話を終えると、人形の様子を見に行った。
アリス「・・・・なんとなく騒がしかったけど、何かあったのかな?」
アリスの中に、疑惑が湧く。
アリス「・・・・・気温が上がってきたわねえ。」
そう思っているうちに、部屋に着いた。
そして、部屋のドアのノブに手をかけて開けようとした。
カチャ・・・・。
アリス「・・・・・・・あれ?」
カチャ、カチャ・・・・。
開かない。
アリス「どうしたのかしら?」
仕方ないので、ちょっと力をこめて開けようと試みた。
アリス「せ~の・・・・!」
どど~ん!!!!
・
・
・
どど~ん!!!!
霊夢「なによ、もう。うるさいなあ・・・・。」
あまりの騒々しさに、霊夢はベッドから這い出た。
そして、先ほどアリスが歩いていったほうへ向かって行った。
霊夢「なんか、気温が上がってきたわねえ。」
なんて思っていると、霊夢の視界に、大変なものが映った。
何かと黒焦げの廊下、そして廊下に落ちている黒焦げの人。
霊夢「・・・・・何があったのよ?」
アリス「・・・・・・・・。」
アリスに話し掛けても返事は無い。
続いて霊夢は、部屋を覗いてみた。
そこには、黒焦げの人形が五体。
霊夢「・・・・・だから、一体何があったの・・・・?」
霊夢にはわからんが、部屋は密室でその中で火災。
人形たちはまとめて焼死。
アリスはドアを開けたときに発生したバックドラフトで死亡。
まあ、そういうわけである。
霊夢「誰も答えてくれないし、さっさと行くか・・・。皆の衆、ご冥福をお祈りするわ・・・・。」
霊夢は灯台を後にした。
・
・
・
二人に合流(して仕返しでも)しようと、歩いていた霊夢。
霊夢「・・・・・こっちの方かしら?」
とりあえず、勘を頼りに道を定めた。
霊夢「まったく、何だってこんな目にあわなきゃならんのやら・・・・・。」
なんて独り言を言ってると、何かを見つけた。
橙「ええ~と、これをこうして、あそこにはこれを描いて・・・・。」
見ると、『橙』がなにやら作業をしていた。
霊夢「何してるのよ、紅白な猫。」
橙「結界を張ってるの。」
霊夢「結界?」
見ると、地面に魔方陣が描いてあったり、人形(ひとかた)がおいてあったりしている。
橙「そ。完成したら、並みの妖怪は入って来れないって。」
霊夢「そんなもん、何処で覚えたのよ?」
橙「前に、藍様が教えてくれた。」
霊夢「ふ~ん。」
橙「ここに篭城してれば、安全でしょ?」
霊夢「ほんとにそう思う?」
橙「よし、あとは中央で呪文、と・・・。」
霊夢「こら。人の話を聞け・・・・。」
橙は魔方陣の中央に立ち、
橙「つきたてのほやほや~、たきたてのほかほか~・・・・。」
霊夢「適当に言ってない?」
妖しげな呪文を唱え始めた。
そして
橙「・・・・・・・・・テンコォォォォ~~!!!}
霊夢「!!」
ゴゴゴゴゴゴゴ!!
橙が叫んだと同時に、橙の周りに結界が張られた。
橙「やった、大成功!」
霊夢「は~、うさんくさい結界だこと。」
橙「これで安全ね。」
霊夢「どれ・・・・・。」
試しに霊夢は、結界に触ってみた。
ぱり~ん!
橙「あ~~~~~~~~~!!!!!」
結界は、壊れた。
霊夢「何よ。脆い結界ね。」
橙「・・・・・・・・・。」
霊夢「これじゃ、蚊帳にもなりやしない。」
橙「・・・・・・・・・。」
橙は、放心している。
霊夢「身を守りたいなら、うちの結界ぐらいじゃないとね。それじゃ、頑張ってね。」
そういうと霊夢は、去っていった。
橙「・・・・・・・・・・。」
橙はまだ放心している。
と、そこへ。
フランドール「紅白の臭いがする・・・・・・。」
フランドールが現われた。
フランドール「微妙に違ったかしら?」
橙「・・・・・・・・・・・。」
フランドール「猫ね。でも私、猫の皮の剥ぎ方なんて知らないし・・・・。」
そう言ってフランドールは、戦利品の一つ、パイプ椅子を取り出し、
ばこ~ん!
橙をぶん殴った。
橙「・・・・・・・・・。」
ぱた
橙は、倒れた。
フランドール「さて、次、次。」
次の標的を求め、フランドールは去って行った。
・
・
・
魔理沙は、とりあえず待っていた。
魔理沙「・・・・待ってたところで、帰ってくるのか、こないのか。」
すぐそこでは、レミリアがお昼寝中である。
魔理沙「こうして見ると、害は無さそうなんだがな。」
?「そうね。」
背後から声。
魔理沙「まったく、可愛いもんだろ。あんたを待つって言ったりして。」
霊夢「休憩の口実がほしかったのよ。きっと。」
現われたのは、博麗霊夢。
霊夢「ほら、起きなさい。」
レミリア「う~、あと五分・・・・・。」
霊夢「起きないと、虫眼鏡を通して日光を当てるよ?」
レミリア「おはようございます。」
レミリア、目覚める。
レミリア「あら、生きてたのね。」
霊夢「おかげさんでね。」
魔理沙「さて、役者がそろったところで、出発といこうか。」
レミリア「そうね。」
霊夢「待て。」
出発しようとした二人を引き止める霊夢。
魔理沙「何だ?」
霊夢「今度、私を見捨てて逃げ出したら、背中から容赦なく針と札を撃ちこむわよ?」
魔理沙「・・・・・ああ、わかったよ。」
レミリア「・・・・・うん。」
霊夢「解ればよろしい。」
二人に釘を刺すと、霊夢は歩き出した。
レミリア「どれくらい、本気だと思う?」
魔理沙「そうだな。神社ぶっ壊されたときを想像してみな。」
レミリア「・・・・・大層、おそろしや。」
・
・
・
一方、妖夢は。
妖夢「これだけ探しても見つからないなんて・・・。まさか、幽々子様に遊ばれてるとか?」
割とありえない話ではない、と思ったりする。
そんなことを思いながら歩いていると、
妖夢「あら・・・・・・・。」
藍「・・・・・・・・・。」←(例のポーズ)
妖夢は何かを発見した。
妖夢「どっかで見た地蔵、ね。」
と、どっかで見た地蔵を検分していると、
藍「わあっ!」
地蔵が大声をあげた。
ちゃ・・・・
妖夢「・・・・・・・・・・。」
藍「あれ・・・?」
妖夢は微動だにせず、さらに、藍に刀を向けた。
妖夢「その方法で、何人殺った?」
藍「いや~、別に殺るつもりはなかったんだけど。」
妖夢「けど?」
藍「約一名をちょっと驚かせたら、走って逃げて行って、そこの肥溜めにドボン、さ。」
妖夢「ちょっと拝見。」
見ると、そこには何やら青っぽいのが浮いている。
妖夢「で、私がそんな手にかかると思って?」
藍「やってみなけりゃわからん。」
妖夢「まあ、いいわ。ところで、うちのお嬢様、見なかった?」
藍「知らない。」
妖夢「そう。じゃ、あなたには用無しということで・・・・・。」
藍「こらこら。罪も無い狐を捌くのか?」
妖夢は、藍に向けていた刀を振りかざした。
藍「・・・・・・・(やられる!)」
妖夢「そこに隠れてるやつ、出てきなさい!」
藍「!?」
ひゅ~ん
と、妖夢が向いた方向から、すごい勢いで何かが飛んできた。
スコーン!
藍「おうあ・・・・・・・。」
飛んできたそれ、本は、藍に命中した。
妖夢「く・・・・・・!」
妖夢は正面に駆け出し、刀を振った。
そして、出て来たのは
フランドール「やるわね。ちょっとは楽しめそうかしら?」
妖夢「・・・・・・・・。」
殺る気満々のフランドール。
妖夢は無言で構えをとり、そして
ばっ!
斬りかかった。
カキィン!
妖夢「せい!はぁ!」
フランドール「ふふふ・・・・・・。」
カキィン!
カキィン!
金属同士の接触音が響く。
藍「いたたたた・・・・・。」
その間に、藍が復活した。
藍「誰よ?本なんか投げてきたのは。」
見ると、妖夢とフランドールが、激闘を繰り広げている。
藍「あ~、今のうちに、地蔵になりすましておくか。」
割とシリアスな展開に置いていかれる藍。
やむえず、地蔵のポーズをとる。
妖夢「く・・・。私の楼観剣が、パイプ椅子ごときに・・・・。」
フランドール「もうおしまい?」
相手が一筋縄ではいかないことを確信する妖夢。
妖夢「(幽々子様を見つけなければならない以上、こんなところで時間は取れない・・・)。」
フランドール「それじゃあ、今度はこっちからいくわよ!」
妖夢「(敵に背を見せるは恥!しかし、私は今しばらく生き恥をさらす!)。」
フランドール「人のお話、聞いてる?」
妖夢「(さて、どうやって離脱したものか・・・・)。」
フランドール「・・・・聞いてないみたいね。」
フランドールはパイプ椅子で、人の話を聞かない妖夢に攻撃を仕掛けた。
そして
ぱか~ん!
フランドール「ふふふ・・・。手応えアリね。」
確かな手応えに満足するフランドール。
しかし
藍「(・・・・・・・痛い)。」
フランドール「む・・・。変わり身の術・・・・。」
殴られたのは、地蔵に扮した藍だった。
見ると、妖夢の姿は無い。
フランドール「逃げるなんて卑怯よ。」
藍「そーだそーだ。私を盾にするなんて、卑怯千万!」
フランドール「ん?」
藍「(っとと、いかんいかん)。」
うっかり声をあげた藍は、努めて動くまいとする。
フランドール「はて?誰か喋らなかったかしら?」
藍「(叫んだけど、喋ってはいない)。」
フランドール「ん~・・・・・・。気のせいね。」
藍「(まあ、気のせいだ)。」
とりあえず、気のせいだったということにしておく。
藍「(ふふふ・・・。私の足元には、さっきあんたが投げた本がある。)。」
フランドール「さて、本を回収しなきゃね。」
藍「(いい子だ。ご褒美に、ギャフンと言わせてやるよ)。」
何故か、地蔵化した(?)藍を気にすることなく、フランドールは本を回収する。
そして、
藍「わああぁぁぁぁ~~~~!!!!」
藍が大声をあげた。
藍「わあああああ~~!!」
フランドール「・・・・・・・・・・。」
藍「わあああ~!」
フランドール「・・・・・・・・。」
藍「わあ~・・・・・・。」
フランドール「・・・・・・・・・。」
藍「テンコ~・・・・・。」
ゴン!
藍「ギャフン・・・・・。」
ぱた・・・
本の角で頭を殴られ、藍はその場に倒れ伏した。
・
・
・
で、無事撤退を果たした妖夢。
妖夢「あ~、疲れた。」
先ほどの戦いで、随分と体力を消耗したらしい。
でもって、幽々子捜索で精神的にも疲れているらしい。
妖夢「もう、打ち上げるかなあ、これ。」
狼煙をあげて、霊夢らと合流しようかと考えた妖夢。
と、そのとき
ガサ・・・
妖夢「?」
茂みから、音がした。
妖夢「誰かいる・・・・?」
妖夢は、そちらの方に近づく。
そして、そこにいたのは
妖夢「幽々子様・・・・?」
妖夢の目に映ったのは、開始以来ずっと探していた妖夢の主人、『西行寺 幽々子』そのひとである。
妖夢「幽々子様!」
たまらず妖夢は、声をあげる。
幽々子「あら、妖夢。」
事もなさげに反応する幽々子。
しかし、妖夢にはそんなことはどうでもよかった。
妖夢「幽々子様!よくぞご無事で・・・・。」
幽々子「あなたも、よく無事だったわね。よかったよかった。」
妖夢「迎えに上がるのが遅れて、申し訳ございません。」
幽々子「ほんとよ~。退屈だったわ。」
そして互いに駆け寄る主従。
と、そのとき
妖夢「う・・・・・。」
ばた~ん
妖夢は、派手に倒れた。
幽々子「妖夢?」
妖夢「・・・・・・・・・。」
幽々子「お昼寝かしら?」
妖夢の身体は、動かなくなっていた。
幽々子「・・・・・・あ、やっちゃったんだ。」
妖夢「・・・やっちゃったんだ、じゃないです。」
幽々子がやっちゃったと思った瞬間、妖夢の半分が話し掛けてきた。
妖夢「も~、折角の感動の再会なのに、いきなり魂抜くことないでしょう。」
幽々子「ごめんごめん。うれしくって、つい。」
妖夢「つい、じゃありません。」
どうやら幽々子は、妖夢の半分人間の部分に、うっかり死を与えてしまったたようだ。
で、妖夢の意識は、人魂の部分に移ったらしい。
人魂からは短い手がはえて、頭の部分には顔がうっすらと映っている。
幽々子「で、どうしようか?」
妖夢「どうしようって、私を元に戻してはくれないんですか?」
幽々子「ほら、死と反魂を一緒にしちゃいけないって・・・。」
妖夢「・・・・・・・・・。」
幽々子「冗談はさておき、早く戻しちゃいましょうか。」
そう言って、幽々子は妖夢の身体に近づく。
その瞬間、
?「悪いけど、そのままでいて頂戴。」
ガッ!
幽々子「う・・・・・・・。」
バタ・・・・
妖夢「ゆ、幽々子様!」
咲夜「騒がない。死人に口なし。」
突然現われた咲夜は、幽々子に当て身を喰らわせた。
幽々子は意識を失い、その場に倒れた。
妖夢「ちょっと!なんてことするのよ!」
咲夜「だって、あなたが生き返ったら、また相手しなきゃいけないし。」
妖夢「だからって、当て身かますことないじゃない。」
咲夜「・・・・しょうがないじゃない。あんなことがあった後じゃ。」
妖夢「あんなことって・・・・・・?・・・・・あ~。」
咲夜「殺せる保障なんて、あったもんじゃないわ。」
まあ、ルナサのことであろう。
妖夢「でも、幽々子様はギャグキャラじゃないわ。」
咲夜「ほとんどネタキャラじゃない。似たようなもんよ。」
妖夢「む~・・・・・。」
咲夜「と、いうわけで、悪く思わないでね。」
妖夢「あ~、ちょっと待って。」
咲夜「何よ?」
妖夢「何か来るわ。」
咲夜「?」
・
・
・
霊夢「ふと思ったけど。」
魔理沙「唐突だな。で、何だ?」
霊夢「あっちの方で、度々シリアス臭いにおいがプンプンするんだけど。」
魔理沙「ああ。それは気のせいじゃないぜ。実は、あんたが行方不明の間に。」
霊夢「何があったの?」
魔理沙「鳥肌が立つくらいのシリアス臭さがにおってな。たまらんぜ、あれは。」
レミリア「誰が、そんなにおい出したのかしら?」
魔理沙「主犯は、庭師だろうな。あれは真面目すぎていかん。」
霊夢「大丈夫かな?」
魔理沙「お、珍しく人の心配か?」
レミリア「雨・・・、いや、槍が降るわね。私は雨のほうが困るけど。」
霊夢「失礼ね!私はただ・・・。」
魔理沙「ただ・・・、何だ?」
霊夢「そんなシリアス臭いのと、無事一緒にいられるのかって、思っただけ。」
・
・
・
咲夜「へぷし!」
フランドール「くしゅん!」
妖夢「は、は、はっくしょん!」
咲夜とフランドール、そして妖夢の半分は、同時にクシャミをした。
咲夜「人気者は困るわ。」
フランドール「そうね。」
気を取り直して、戦闘に入る二人。
咲夜「さっきは驚いたわ。私に気配を感じさせないで、背中をとるなんて。」
フランドール「ふふふ・・・・・。」
咲夜「余裕ですわね、妹様?」
フランドール「余裕よ!」
弾幕飛び、ナイフ飛びの激戦を繰り広げる二人。
妖夢「・・・・・私は、どうすれば?」
身体は幽々子に殺られ、意識はもう半分の部分に有る妖夢。
そんなんじゃあ、何も出来ない。
ガッ!
妖夢「!?」
妖夢は、音をした方を見た。
すると、咲夜の攻撃を受けたフランドールが吹っ飛んできた。
ゲシッ!
妖夢「ぶっ!」
フランドールは、妖夢に直撃した。
妖夢「こら!もうちょっと方向を考えろ~!」
短い手を上下させて、妖夢は訴えかける。
しかし、死人の訴えは聞こえていないらしい。
妖夢「・・・・・・化けて出るよ?」
聞こえません。
咲夜「余裕があるのは結構ですが、もっと相手を見ていただきたいものです。」
フランドール「・・・・・・・・・・。」
バッ!
妖夢のことなど眼中に無い咲夜が、フランドールに駆け寄る。
咲夜「(この距離、この速さなら、反撃は受けない・・・・!)」
咲夜はそう確信した。
フランドールは、膝をついたままである。
膝をついたまま何をしているかというと、
妖夢「って、ちょっと、人の身体を漁らないでよ!」
フランドール「今忙しいから、ちょっと黙っててくれない?」
妖夢「火事場の泥棒じゃない!ああ、楼観剣だけは・・・・・。」
死体から武器を剥ぎ取っていた。
咲夜「剣ごときで、私の攻撃を防げるとお思いですか!?」
フランドール「・・・・・・・・・ふふ。」
勝利を確信している咲夜に、フランドールは不適な笑みを浮かべる。
そして、
フランドール「恋符『マスタースパーク』!」
咲夜「な・・・・・!」
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・
咲夜の攻撃が、フランドールに当たる直前の出来ごとである。
突然の、予想外のカウンター攻撃に、咲夜は成す術なく光にのまれていった。
薄れ行く意識の中、咲夜の頭の中は
咲夜「(普通に死ねるのね。よかった、ギャグキャラ扱いじゃなくて・・・・・・)。」
という思いで一杯だったそうな。
フランドール「さてと、この剣、借りてくわよ?」
妖夢「丁寧に使ってね。もう、とっとと元に戻りたいから、早く決着をつけてきて頂戴。」
フランドール「言われなくてもそうするわ。」
妖夢「ああ、それと、紅白一行がこっちに向かってると思うから。」
フランドール「何で、そんなことがわかるのかしら?」
妖夢「さっきのマスタースパークが、集合の合図だったのよ。」
フランドール「ふ~ん。」
妖夢「そういうわけだから、さっさと行ってきて。」
フランドール「もう逃がさないわ。」
楼観剣と白楼剣を持って、フランドールは全てに決着をつけに行った。
妖夢「はあ・・・・。ずっとシリアスで通してきたつもりなのに、こんなオチはないじゃない・・・。」
残された妖夢の独り言。
妖夢「・・・・・グレるよ、本気で・・・・・。」
続く
最後に妖夢…今まで中々キマってたのになぁw