Coolier - 新生・東方創想話

咲夜と月と吸血鬼と

2003/12/08 12:08:48
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 見上げた月は、赤かった―――――――。



 幼い頃、私は時を止めるという能力を持つことに気がついた。
 時間を止める、それは言葉のごとく、全てを止める。
 人も、
 水も、
 空気も、
 風も、
 熱さも、
 寒さも、
 血の流れも、
 心臓も――――――。
 ありとあらゆる者、森羅万象を止める事が出来た。
 その中で動くことの出来る私は一人ぼっちだった。
 周りに人がいたとしても、誰もそこに私がいるという真実に気付いてくれない。
 気付かずにただ通り過ぎていくだけ。
 寂しかった。
 そしていつしか、サビシサは憎しみに変わり、
 いつしか、手にはナイフを持っていた。
 才能からか私はそのナイフをとても器用に投げることが出来た。
 カーブしながら飛ばす方法や、百発百中の確立で的の中心に当てることが出来た。
 ある日、私は禁忌を犯した。
 人間では、あってはいけない行為。
 人殺し。
 そう、
 私は人をころしてしまった。
 理由はよく、憶えていない。
 時間を止めて人を殺した。
 その人は自分が死んだという事すら気付かずに死んだ。胸に突き刺さったナイフで死んだ。血は出ていなかった。
 根元まで刺さったナイフを引き抜き、血のついたそれを、暫く眺めていた。
 そのナイフをしまうと時間が動き出す。
 瞬間、辺りから悲鳴が沸き起こり、瞬間、私のほほに生暖かい物が飛んだ。
 真っ赤な、血。
 赤すぎて見たことも無い炎のように赤い血。
 全身、血まみれになった。
 人が駆け寄ってくる。
 私はまた時を止めた。
 そして逃げた。
 自分の侵した罪から目を反らした瞬間だった。
 走って走って息がつまりそうになっても逃げた。
 とこをどう走ったなんか判らない。
 走り続けて、辺りを見回したら、見たことも無い所に出ていた。
 そしてもう、夜になっていた。
 夕刻は過ぎ、もう暗黒の支配する夜へとなっていた。
 一体いくら走ったのだろうか、道に迷った。
 迷った。
 草木生い茂り、あたかも幻想卿のようだった。
「あなた」
 突然声がかかった。
 驚いて振り返った。
 そのには、長いツバキの帽子をぶった、人形のような女の子が立っていた。
「その血」
 それ以上の言葉は聞きたくなかった。
 だから時を止めて、ナイフを取り出した。
 私はもう、堕ちるしかないんだ―――――――――。
 目標は止まっている。
 このナイフを心臓に突き刺す事なんか蟻を殺すほどたやすい。
 ナイフを投げた。
 これで終わったはずだった。
 目の前の女の子は真っ赤な液体で染まって物言わぬようになるはずだった。
 だか違った。
 運命はそれを運命だとは認めなかった。
「ナイフなんて危ないわ。しまいなさい」
 喋った。
 喋って、横に逸れるという簡単な動作でナイフを避けた。
 時間をとめた中で彼女は喋って動いて見せた。
 驚いた。
「あなた、喋れるの?」
「ええ、運命は止まることが無いから」
 彼女は、そっと帽子を取った。
「貴方の名前は?」
 そっと、踏みよってくる。
 私は何故かそれを拒まなかった。
「十六夜、咲夜」
 それどころか名を名乗っていた。
 なぜなんて理由は無い。
「すばらしい能力ね。私のところで働かない?」
 そっと手を差し伸べた。
 その手はとても魅力的に見えた。
 そして私は彼女についていこうと思った。
 彼女さえいれば時を止めたとしても一人ぼっちになることは無い。
 一人ぼっちはモウ、イヤダから。
 私はその手を握った。
 そして時は動き出す。
「私はレミリア・スカーレット。よろしく」
「よろしく」
 それが彼女との出会いだった。


 咲夜は紅魔館の庭につるしてあるハンモックで目が醒めた。
 辺りはもう暗く随分と寝込んでしまったらしい。失態だ。
 夢を見ていた。
 どうやらムカシの夢だったらしい。
 懐かしい昔の夢
 私はここに来ることを引き換えにいろいろな者を失った。
 家族、それが最も大きな失った物だったが今はもう、顔すら思い出せない。
 むしろもう、どうでもいい。
「ちょっとー咲夜ー。どこにいるのー?」
 レミリアお嬢様が呼んでいる。
 私は「はーい、ただいま」と返事をすると、なんとなく空を見渡した。
 月がもう昇っていた。
 この季節では珍しい。


 見上げた月はあのころの月のように赤かった―――――――。


                                         END
初めての東方SSです。
まだ未熟者ですがよろしくお願いします。

どうでしたか? 楽しいと思ってくれれば幸いです。

                          蒼紫
日比谷蒼紫
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コメント



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1.40すけなり削除
すらっと読めて、内容も悪くない作品でした。<br>
<s>カナ打ちの人なのかな?</s>濁点が抜けている部分が所々ありました(汗