深い深い山の奥で、チルノは座って待っていた。
いつもは自分の縄張りである湖からあまり出ないチルノが、である。
「・・・そろそろ、だよね」
チルノはここ数日、ずっとこの山奥で待っていた。
自分の憧れの人を、ずっとこの山奥で待っていた。
正確には人ではなく、冬の妖怪なのだが。
時を止められたかのように長い冬が続き、それが一夜にして終わったかと思ったら『彼女』は消えてしまった。
春になったのを合図に、『彼女』はチルノの前から姿を消したのだ。
『そろそろお別れね、チルノ』
『・・・また寂しくなるなぁ』
『今年はまだいい方じゃない。じゃ、冬になったらまた会いましょう』
『・・・いつ・・・・・またここに来たらいいかな?』
『冬よ。春とは違う、今年の冬は予定通りに来る』
『そう・・・・じゃあね・・・・・・バイバイ』
あれから半年以上経った。
いつもはもう1ヶ月以上待つのだから確かに今年は待ってる時間が短かったかも知れない。
だがそれでも、チルノには少しばかり長すぎる時間だった。
山のどこで待っていようか。
どうやって出迎えようか。
何の話をしてやろうか。
チルノはそんな事ばかり考えながら日々を過ごし、冬が来るのを待った。
人間に『暦の冬』がいつなのかも聞いた。夜が更けて、日付が変われば『暦の冬』になる。
星と月の動きで時間は大体分かる。もうすぐだ。もうすぐなんだ。
「早く来い・・・早く来い・・・」
彼女は心の中で何度もつぶやいた。冬が来る事を、『彼女』が現れる事を念じつつ。
山奥で、もうすぐ冬で、真夜中という事もあってかなり寒い。
チルノにとってはむしろ過ごしやすいくらいだが、これだけ寒ければきっと来てくれる・・・彼女はそう思っている。
・・・というよりも、この時期になったらそう思わずに、信じずにはいられなかった。
「明日かな・・・明日こそ来るかな・・・」
『・・・・思ったよりもずいぶん生真面目だったのね、チルノ』
「!?」
『それとも、私に会えなくて寂しかったの?』
声が聞こえた。聞き覚えのある、懐かしい声。
だが声の主が見当たらない。チルノは周りを見回した。
「レティ!?レティだよね!?」
『ええ、いかにも私よ』
「どこ・・・どこにいるの・・・・?」
『・・・・・あなたがいる所から少し離れてるわね。すぐ向かうわ』
「すぐ向かう・・・って事は、もう『来た』の!?」
見えない相手にチルノは半ば叫んでいた。感情の昂りを抑える事など到底できない。
『今来たばかりよ。暦の上の冬・・・12月に間に合うようにね』
「会いたかったよ、レティ・・・・・」
『私もよ。チルノがどれだけ成長してるのか楽しみ・・・急いでいくわ』
「うんっ・・・・」
あふれる涙をグッとこらえて、チルノは答えた。
せっかくの再会なのに、涙は見せられない。泣いてなんかいられない。
1分と経たないうちに、辺りの空気がどんどん冷えてくるのを感じた。
チルノにはまだ扱えない、冷気を超えた寒気。『彼女』の能力だ。
冬の足音が、聞こえる。
いつもは自分の縄張りである湖からあまり出ないチルノが、である。
「・・・そろそろ、だよね」
チルノはここ数日、ずっとこの山奥で待っていた。
自分の憧れの人を、ずっとこの山奥で待っていた。
正確には人ではなく、冬の妖怪なのだが。
時を止められたかのように長い冬が続き、それが一夜にして終わったかと思ったら『彼女』は消えてしまった。
春になったのを合図に、『彼女』はチルノの前から姿を消したのだ。
『そろそろお別れね、チルノ』
『・・・また寂しくなるなぁ』
『今年はまだいい方じゃない。じゃ、冬になったらまた会いましょう』
『・・・いつ・・・・・またここに来たらいいかな?』
『冬よ。春とは違う、今年の冬は予定通りに来る』
『そう・・・・じゃあね・・・・・・バイバイ』
あれから半年以上経った。
いつもはもう1ヶ月以上待つのだから確かに今年は待ってる時間が短かったかも知れない。
だがそれでも、チルノには少しばかり長すぎる時間だった。
山のどこで待っていようか。
どうやって出迎えようか。
何の話をしてやろうか。
チルノはそんな事ばかり考えながら日々を過ごし、冬が来るのを待った。
人間に『暦の冬』がいつなのかも聞いた。夜が更けて、日付が変われば『暦の冬』になる。
星と月の動きで時間は大体分かる。もうすぐだ。もうすぐなんだ。
「早く来い・・・早く来い・・・」
彼女は心の中で何度もつぶやいた。冬が来る事を、『彼女』が現れる事を念じつつ。
山奥で、もうすぐ冬で、真夜中という事もあってかなり寒い。
チルノにとってはむしろ過ごしやすいくらいだが、これだけ寒ければきっと来てくれる・・・彼女はそう思っている。
・・・というよりも、この時期になったらそう思わずに、信じずにはいられなかった。
「明日かな・・・明日こそ来るかな・・・」
『・・・・思ったよりもずいぶん生真面目だったのね、チルノ』
「!?」
『それとも、私に会えなくて寂しかったの?』
声が聞こえた。聞き覚えのある、懐かしい声。
だが声の主が見当たらない。チルノは周りを見回した。
「レティ!?レティだよね!?」
『ええ、いかにも私よ』
「どこ・・・どこにいるの・・・・?」
『・・・・・あなたがいる所から少し離れてるわね。すぐ向かうわ』
「すぐ向かう・・・って事は、もう『来た』の!?」
見えない相手にチルノは半ば叫んでいた。感情の昂りを抑える事など到底できない。
『今来たばかりよ。暦の上の冬・・・12月に間に合うようにね』
「会いたかったよ、レティ・・・・・」
『私もよ。チルノがどれだけ成長してるのか楽しみ・・・急いでいくわ』
「うんっ・・・・」
あふれる涙をグッとこらえて、チルノは答えた。
せっかくの再会なのに、涙は見せられない。泣いてなんかいられない。
1分と経たないうちに、辺りの空気がどんどん冷えてくるのを感じた。
チルノにはまだ扱えない、冷気を超えた寒気。『彼女』の能力だ。
冬の足音が、聞こえる。