Coolier - 新生・東方創想話

亡姫の舞 幽玄の桜

2003/11/08 03:22:05
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/*ファンタズム、および妖々夢内のおまけテキストのネタバレ?があります。ご注意*/
















白玉楼の事件より少しばかり時は流れ。
季節通りに葉桜を満開にした西行妖の前で、幽々子は舞う。
傍らには茶を味わう妖夢と、結界修復の報告兼遊びに来た紫。
少し前までは、葉桜を眺めながら三人で茶を楽しんでいたのだが、

「久しぶりにあなたの舞が見たいわね」

との紫の一言、さらに妖夢が賛同した結果である。
まぁ、確かに久しぶりだが、舞うことは嫌いではない。
霊の弾く琴の音に、扇を、腕を、体を乗せた。




舞い始めて少したったころ、不意に奇妙な感覚にとらわれた。
違和感のある既知感…とでも表せばいいだろうか。
昔、これと似たようなことがあった。
だが、何か違う――何が違う?

答えは出ない。
そもそも、普段舞うのはそのほとんどが屋敷内だ。
花見の席などで外で舞うことがあっても、西行妖の前で、というのは初めてのはず。


なのに確かに、この空間を、この空気を、私は知っている―――。


気がつけば曲は佳境に入っていた。
半ばトランス状態の頭で思う。
曲が終われば舞も終わる。
この感覚も、舞が終われば消えるのだろうか。
ああ、曲が終わる。舞が終わる。

―――私が、終わる―――。

舞の終焉、その忘我の境地の中で。

何かが、繋がったような気がした。













舞が、終わった。
幽々子の舞が見事なのはいつものことだが、今日はことさら美しかった。
隣を見れば、妖夢は固まっている。
いつも傍にいる彼女でも、これほどのを見るのは初めてだったのだろう。
自分とて、正直感動している。
これほどのものをみたのは、そう、彼女が生きていたあの時以来だろうか。


と、終わりの型のままとまっていた幽々子が動き出した。
どこか遠くを見ているような虚ろな目。
ぼんやりと笑みを浮かべて。
まるで背後の満開の桜を表すように両手を広げ。
そして、ゆるりと、舞い始める。

「その、舞は―」

紫は知っている。
それは、あの日、彼女が舞ったものと同じ。
しかし今の彼女に何故舞える?
そのときの事を覚えていない、彼女に。



あの日、満開だった桜の代わりといわんばかりに、

見事な葉桜を満開に咲かせた妖の前で、亡霊の姫は舞う。

妖と呼ばれる前、この桜を愛した歌人の詩をのせて。


―――散らばこそ 生のかぎりに 舞いしはな
         みやびかすかに さかせよさくら―――



そして舞い終わったあと、
あの日彼女は自らの命を―――。













「幽々子!」

「っ!」

半ば悲鳴のような友人の声で、我に返った。

「ゆか…り?」

どうやら舞い終わったあと、しばらくぼんやりとしすぎてたようだ。
なんだろう、何かを感じてたような、何かを思い出したような。
だがもう、感じない、思い出せない。
そのことに、どこかほっとしている自分がいる。

「…幽々子?あなた…」

「どうしたの?あんな声を上げるなんてあなたらしくない。
 びっくりして止まっちゃったじゃない」

「曲はもう、止まってるわよ?」

どこか、確かめるような口調。
だから、私は「いつも通り」かるく返す。

「あら、久しぶりだから少し夢中になってたのかしら。
 気付かなかった」

「…そう。
 ぼーっとしてたから、つい声をかけちゃったわ」

その顔に浮かぶのは、安堵、だろうか。
何故だろう。
その理由が分からないようで、分かる気もする。

ああ、まだ少し繋がっている気がする。
分かってはいけない。
思い出せば、私は、また、あのときのように―。

「…妖夢。
 硬直してないで、お茶、くれない?」

「あ…は、はい!」

「久しぶりだったからかしら。
 すごく疲れた」

「…年?」

「あなたにだけは言われたくないわ…」

「どーゆーいみかしらぁ?」

「…幽々子様。紫様。
 お茶でものんで、落ち着いてください…」


「「(ずず…) ふぅ…」」


(どっちもおばさんくさい…)

「さて、失礼なことを考えた妖夢へのお仕置きは、何がいいかしら?」

「な!なんでわかっ…!」

「そうねぇ…こう、精神的にじわじわと…」

「ゆ、紫様っ!?」


そして繋がりは完全に途絶える。

その、間際。

目の前の桜が満開になったような気がした。



途中まではスラスラと書けたのですが、締めに苦しんだの何の…^^;
とりあえず無理やり終わらせてます(ぉぉ
おかげでみょんなバランスです。
妖夢の性格もなんかみょんです。
タイトルすらみょんです。
お察しください(マテ

作中の短歌は「幽雅にさかせ~」をもじっただけのものですので
そっち方面の人から見れば突っ込み満載かと思われますが、
どうかご容赦のほどを~^^;
みみみ
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コメント



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1.30珠笠削除
幽々子の舞を、綺麗に表現してると思いました。 重い話のようでいて、読後感は花見のようでした(^-^)
2.30ぱず削除
妖夢がいい味だしてますね~。
この三人良いです(^^