Coolier - 新生・東方創想話

まだ見ぬ春

2003/11/01 09:08:57
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ここは幻想郷
多くの妖怪とわずかの人間が住む場所である。
時は五月、人間界ではゴールデンウィークの真っ最中である。
もっとも幻想郷にそんなものは存在しないが。
しかし、それにしては天気がおかしい。
雪、それも1週間続きの猛吹雪なのである。
多くの妖怪が春を待ちわびていた。
巫女さんは花見でもしたいなと思っていたし、
魔法使いはそれなりに楽しんでいたし、
メイドは燃料の心配をしていた。
そんな中で最も春を待ちわびていたのは
春を告げる妖精ことリリーホワイトだった。

(春は、来ない)
窓を見上げては肩を落とす。
溜息をついたのは何度目だったか
リリーホワイトは今日も家の中にいた。
もう5月も1週間を過ぎた。
それなのに桜の1本も咲いていない。
それどころか草木は凍り、蛙は冬眠し、氷精たちが我が物顔で外を遊びまわっていた。
(早く春になってほしい)
春の妖精である彼女も決して寒さに強いほうではなかったのでずっと家の中で待っていたのだ。
春を告げる事ができる日を。
今日こそは、と思うのだが吹雪は止まず、春一番も吹かない。
まるでどこぞのメイドが時を止めたかのようだった。
(もしかして、本当に春が来なくなってしまったのだろうか)
ここは幻想郷、
セカンドインパクトを起こすぐらいの能力を持つ妖怪は、たくさんではないが、いないとも言えない。
そう思った瞬間急に彼女は怖くなった。
自分の存在意義がなくなってしまうだけではない。
自分そのものがなくなってしまうように思えたからだ。
(そう簡単に春がなくなるとは思えない。でも、もし・・・)
雑念を振り払うように彼女は外へと飛び出した。

なぜ雲の上に行こうと思ったのかはわからなかった。
少なくとも私は雲の上になんて行ったことなかった。
理由は至極簡単。
寒いから。
でも私は行かなければならないような気がした。
それは上から見れば何かわかるかもしれないと思ったからかもしれないし、
吹雪に混じる桜の花びらを見つけたからかもしれない。
もしかしたらただの勘だったのかもしれない。
だが、そんなことは関係ないのだ。
私にとって大事なのは春があること。
そして、雲の上で私が見たのは、
見間違うことなき薄紅色をした、絶景だった。

うれしかった。
自分が消えずにすんだとかそういった次元の問題ではなかった。
自分が春の妖精というだけでうれしくなってしまうのだ。
それぐらいに美しい春だったのだ。

ようやくの春の到来にすっかり舞い上がってしまったリリーだったが、
目の前に珍しい人間を見て、すっかり自分の使命を思い出した。
いまならとても美しいものが伝えられそうな気がした。
果たして彼女が春を伝えるために作ったものはとても美しかった。
が、やはり彼女は舞い上がっていたのだ。
彼女が作り出した春への思いは、美しい弾幕となって人間に降り注いだのであった。
初めて書いたSSです。
なにとぞ、ご評価を
びく
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コメント



0.420簡易評価
1.30すけなり削除
最後の段落で少し躓いたかな。(目の前に珍しい人間を見て→目の前の珍しい人間を見てor目の前に珍しい人間を見て→目の前に珍しい人間を見つけて とか)  ともあれ悪くはないですよ。次回作もふぁいとです。
2.40ななすぃ削除
家の窓から空を見上げるリリーが頭の中に浮かびました。…いいですね(*´д`)
18.80名前が無い程度の能力削除
春の妖精だもの、春が遅れたらふあんでしかたない。