Coolier - 新生・東方創想話

血を吸う鬼

2003/10/30 22:56:46
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(読む前に)
 この作品はダーク系です。恐らく。そういうのが苦手な方は注意して下さい。




「こんにちわ、霊夢」
「あら、来たのねレミリア」
 夏の陽射しが照りつける幻想郷。いつものように人気の無い博麗神社を、レミリアが訪れていた。
「今お昼ご飯を作ってたの。レミリアも要る?」
「私はいいわ。もう食べてきちゃったもの」
「そう…それじゃあ出来るまで、ちょっと待っててね」
「うん」
 そう言い残し、霊夢は台所へと戻っていった。

 トントンと包丁を使う音が響く。レミリアは、その様子をじっと見ていた。
「何? そんなに珍しい?」
 一旦包丁を動かす手を止める霊夢。
「違うよ。霊夢はご飯を作るの上手いなあ、と思って」
「まあ、ね」
 再び包丁を動かし始める霊夢。その時。
「……痛っ……」
「! 霊夢!? 大丈夫!?」
 霊夢が、指を切った。
「う、うん。あはは、ちょっとドジっちゃった」
「早く血を止めないと……!」
「そうね、今―――」
 包帯を持ってくる、と言おうとした霊夢を、レミリアの行動が止めた。
「ん………」
 レミリアは、傷口に舌を這わせていた。
「レミ……リア……?」
「…んっ……はっ…」
 一心不乱に指を舐めるレミリアを見て、霊夢は声をかける事を躊躇った。そして、今はただレミリアの好きにさせる事にした。

「………ぷあっ」
 しばらくして、レミリアがようやく指から口を離す。霊夢の指の皮が、少しふやけてしまった。
「……あ……ごめんなさい、霊夢……」
 自分のした事を顧みて、しゅんとするレミリア。
「い、いいのよ。お陰で血もだいぶ止まったみたいだし」
 霊夢も、レミリアを必要以上に責めたりはしなかった。とりあえず、包帯を巻いておいたので、大丈夫だろう。
「あ、ありがとう……」
 上目遣いに霊夢をみるレミリア。この姿を見て、誰がこの少女を妖怪の中でも強大な種族、『吸血鬼』だと思うだろう。
「それで? 私の血の味はどうだった?」
 そんなレミリアの様子を見た霊夢が、少し悪戯っぽく尋ねる。
「えっ………」
 レミリアの体が、固まった。それを見て、霊夢が少し慌てる。
「あ……レ、レミリア、ごめんね? 変な事訊いちゃって…」
「う、ううん………………あ、そ、そうだ。私もう帰らなきゃ……」
 レミリアは、そそくさと外に出て行った。
「え? もう帰るの?」
「う、うん。ちょっと用事を思い出しちゃったの。ごめんね! また明日来るから―――」
「ちょ、ちょっと! レミリア!?」
 霊夢の制止の声も聞かず、レミリアは飛んでいってしまった。
「………何なの………?」
 霊夢は首を傾げた。


 その時、レミリアの瞳が紅く明滅していた事に、霊夢は気が付かなかった。





 次の日。レミリアは昨日言った通り、神社にやって来た。
「こんにちわ、霊夢」
「あら、来たのねレミリア」
 昨日と同じ様に、霊夢はレミリアを家の中に通した。

「昨日はごめんね? 急に帰ったりしちゃって」
「別にいいわよ。で? どうして急に帰っちゃったりしたの?」
 そう訊いた時、一瞬レミリアの顔に陰が射した。
「………………ちゃんと、考えてきたの」
 そう言ったレミリアの声は小さくて、よく聞き取れなかった。
「…え? 何?」

 ――――――がんっっっ!!

「―――がっっ!?」
 一瞬、何が起きたのか霊夢には理解出来なかった。ただ分かったのは、後頭部の痛みと、目の前に紅く光るレミリアの目がある事だけだった。
「……霊夢……昨日の霊夢の質問だけどね……」
「うっ……ぐっ…!?」
 よく見ると、レミリアの手が霊夢の首を絞め、体を持ち上げたまま、家の壁に叩きつけているのが見えた。
「霊夢の血………とっても………………とおっっっても………美味しかったよぉ………」
 レミリアは、くすくす笑いながら舌なめずりをした。
「あ、ぐ……! レミリ、ア……く、苦、し……」
 霊夢はレミリアの腕を掴み、引き剥がそうとしたが―――出来ない。レミリアの腕は、びくとも動かなかった。
「でも……だからってね、すぐに血を吸っちゃいけないでしょ……? だから、一晩考えてみたの…本当に霊夢の血を吸っていいのかなって……」
「離、して……!」
「それでね………………やっぱり、私、霊夢の血が吸いたい………………だって………霊夢の血、とっても甘くて……今まで飲んできた血の中で、一番、美味しかったの………!!」
「レミ、リア………!」
 力を振り絞り、何とかレミリアの拘束から逃れようとする。しかし、やはり無理だった。

 あの時。レミリアが霊夢の指を舐めたあの時。霊夢の『血』がレミリアの魔性を目覚めさせた。その結果が、これだった―――

「大丈夫……痛くても……すぐに分からなくなるから……」
「あ、ああ、あ…! や…やあっ……! 止め、て―――」


「――――――いただきます」








   がりっ







「……がっ!? あ、うぐああ、ああっっ……!!」
 直後、全身を駆け抜ける悪寒と痛み。首からどくどくと温かいものが流れ出す感覚。徐々に力が抜けてゆく。
「んんっ……んぐっ…んぐっ…」
 レミリアに、全身の血を吸われる。ごくごくと嚥下されてゆく。更にそれよりも多くの血液が溢れて服に染み渡り、それでもなお服を伝って、ぼたぼたと畳に染み込んでゆく。
「ひっ……ううっ………あ………ぁ……… ………」
 見開かれた霊夢の瞳から、一筋の涙が零れた。
「や……め………………レ……ミ………リ………………ア………………ァ………………」
 びく、びく、と霊夢の体がニ、三度痙攣した。ずるずると畳にくず折れるその体。そして、そのまま動かなくなった―――

「………ごちそうさまぁ………とっても美味しかったよ………」
 血だまりの中から、顔を上げ、満足そうに笑うレミリア。その表情は、どこまでも無邪気だ。
「…でも…またあんまり血が飲めなかったな……どうして私っていつもこうなんだろう…?」
 そう言って、口の周りの血を拭う。その服は、血で真っ赤に染まっている。それはまさに、『スカーレットデビル』そのままの姿だった。
「でも…いつかきっと、上手く吸えるようになるよね、霊夢………………………………………霊夢?」
 レミリアが、霊夢の体を揺する。しかし、その体はレミリアの手の動きに合わせて揺れるだけ。
「………霊夢……………死んじゃったの?」
 ゆさゆさ。ゆさゆさ。
 動かない。
「………ごめんね、霊夢。今、起こしてあげるから………」
 そう言うと、レミリアはもう一度、霊夢の首筋に、牙を突き立てた。




 そして、次の日。
 夏の陽射しが照りつける幻想郷。いつものように人気の無い博麗神社を、魔理沙が訪れていた。
「おーい、霊夢ー? 居ないのかー?」
 霊夢の名を呼ぶが、返事はない。
「それじゃあ、勝手に上がらせてもらうぜ………っと?」
 そうして魔理沙が上がろうとした時、薄暗い部屋の中からゆらりと霊夢が出て来た。
「何だ、いたのか? …レミリアもいるみたいだな」
 部屋の奥から感じる妖気で、魔理沙は神社にレミリアがいる事が分かった。
「それじゃあ、入ろうぜ」
「………………………………」
「………霊夢?」
「………………………………」
「どうしたんだよ、霊夢」
「………………………………」
「………なあ、霊夢」
「………………………………」


「………………どうして、包丁なんか持ってるんだ………………?」






































 どうしたの? 霊夢?
 駄目じゃない。血を吸うのに、そんなもので刺しちゃあ。まだその体に慣れてないの?
 ほら、私達にはちゃんとした牙があるんだからさ、これを使わないと、ね?
 あーあ。こんなに血が流れちゃって、もったいないなあ………
 え? どうして魔理沙の血が欲しかったのかって?
 ん~…やっぱり、美味しそうだったから、かなあ?
 霊夢の血も美味しかったけど、魔理沙の血も吸ってみないとね。

 ………どうしたの? 霊夢、泣いてるの?
 …ああ、魔理沙の事? 大丈夫よ。死んじゃっても、霊夢みたいに私の仲間にしてあげるから。
 だから、泣かないで。ほら、魔理沙の血が全部無くなる前に、早く飲みましょう?



 きっと、とっても美味しいよ………………………………

…で? どうして『Break me』を作成している途中にこんな話を考えつくのでしょうか、私は。

ダーク作品に挑戦、という事でここは一つ…
謎のザコ
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コメント



0.2720簡易評価
1.40ななすぃ削除
(((((;゚Д゚))))) しっかりと、ダーク分を補給させていただきました。
2.40奈々氏削除
(((((((( ;゚Д゚)))))))衿原涕勿挂湶衿清淦勿拔淦衿原涕衿原涕衿ク
…でも、こういう話好き。ъ(゜д゜)五・洳勿!!
3.40使削除
読ませる度はこちらの方が上ですね。バッドエンド分大量に摂取させていただきました。
4.40すけなり削除
一変して恐いものですか…。少し場を想像してしまい鳥肌が……(汗
5.40珠笠削除
紅い眼と紅くなった眼と何も映していない眼。。。うぅ、想像するだに妖艶デスネ。…アレ?
6.30ミタニ削除
こういう「一線を越える」のはフランのほうがイメージ合うんですが、あの娘は血の吸い方知らないんだよね。
7.40たまゆる削除
好きですこういうの。
8.30諸田真削除
((((((((;゚Д゚)))…もうだめぽ。そこでアリスの出番ですy(スキマ
9.30MDFC削除
Break meの幸福感を一撃で灰にする、その手腕に萌え(えー
10.40ヒミツのナナシちゃん削除
ダークっていうよりもホラーかサイコですね・・・。引き込まれ度は抜群でした。<BR>でも激しく((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル。
11.30tomo999削除
う~ん、ダークです。一般のファンの丁度逆を狙った形ですかね?
12.50七しぃ削除
空白部分の 間 というかなんというか雰囲気出てます
(((( ;゚Д゚))))コワー  でも(・∀・)イイ!
13.50Kom削除
流石、間の取り方とかが上手いですねぇ。文体と雰囲気の構成がマッチしていて違和感無く読めました。
それでもやっぱり(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクブルジョワー
45.無評価SSを読む程度の能力削除
霊夢の死亡シーンに…
72.80na7氏削除
包丁持っているシーンに生々しさがあって怖かったでした。