私の名は『十六夜 咲夜』。
紅魔館で働くしがないメイドだ。
そして、『時間を操る程度の能力』を持っている。
『時間』。
私はコレを自在に操れる。
戻すことも、進めることも、止めることも。
私がちょっと望んだだけで、全ては止まり、加速し、戻る。
世界の全ての時間を私は操れる。
しかし、私は日常生活にほんのちょっと使うだけで満足だ。
弾幕ごっこの時だってそうだ。
自分がやられそうになったからと言って時を戻すことも無い。
ただ時を止めてナイフの軌道を変えるだけで満足だ。
全ては、あるべきままが一番いいのだ。
無闇にソレを変えるのは良くないことだ。
『運命』・・・ どう足掻いても、それには逆らえない。
私がどんなに時を戻そうが、なんだろうが、ソレも『運命の内』に入っているのだろう。
実を言うと、紅魔館で働き始めたばかりの頃、私は一度だけお嬢様に反逆したことがある。
自分の能力に自信があったと言うのか、今考えても動機は分からない。
その頃の私は、お嬢様の能力を知らなかった。
何故お嬢様が畏怖されているのか、ハッキリ言って分からなかった。
『あんなお子様より、私の方が強いに決まってる』
そう考えたのだろうか?
自分の裏を垣間見た気がした。
あれは、もう3年前のことだろうか・・・。
紅い満月のことだった。
地下室で、それは行われた。
時を止め、レミリアお嬢様を地下室まで運ぶ。
運んで、準備を全て終えてから、時を元に戻す。
「・・・何のつもり?」
私はレミリアお嬢様を十字架で磔にしていた。
両手両足をワイヤーで固定している。
「分からない。何故貴女が畏怖されてるのかが。
貴女が本当に強いのかどうかも。自分より弱い奴に仕えていられるほど、私が我慢強くない。」
私はレミリアお嬢様にナイフを突きつけていた。
「だって、まだ見せてないもの。」
レミリアお嬢様は無表情で言う。その態度が私のカンに障った。
「なら、見せて欲しいわ。」
ビリッ・・・。
私は事前に奪っておいたお嬢様のスペルカードを全て破り捨てた。
「10秒後に、私はお嬢様を殺します。スペルカードも無いその状態。もう自分の能力に頼るしかないわ。さぁ、見せて頂戴。」
「一つ、聞くわ。」
「何?遺言は受け付けてるけど?」
「もし、貴女が私を殺したとして、貴女はどうするの?」
「別に・・・この館を出て行く。それだけ。」
レミリアお嬢様は少し微笑んだ。
その笑の意味は、今でも分からない。
「10秒経過。さようなら。スカーレットデビル。」
私はレミリアお嬢様に向けてありったけのナイフを投げた。
私はこの時、勝利を確信した。が、現実と言うのはそう甘いものではない。
「・・・ふぅ。」
なんと言う事か。
私のナイフはお嬢様に全く刺さらなかった。
刺さらない代わりに、お嬢様を固定してあるワイヤーを切断し、後ろの闇に消えた。
「ば、バカな・・・!」
自由になったお嬢様が、私を見下す。
「・・・ね、今のが私の能力よ?理解できた?」
冷や汗が出るのを感じた。
「理解できないようね。教えてあげる。」
「クッ・・・時よ!止まれ!」
・・・止まらない。
全ては正常に流れていく。
目の前のお嬢様は意地悪く笑った。
「出来ないでしょ?」
「な・・・ 何故・・・ どうして?」
「次に起こる事、私には分かる・・・。」
レミリア様の瞳が紅く光った。
「こ・・この・・!」
私はパニックに陥っていたのか、再びありったけのナイフを投げた。
が、全てお嬢様には全く当たらない。
しかも、お嬢様は全く動いていないのだ。
私はこの時、更なる恐怖を感じた。
「例え貴女が何万本のナイフを投げようと!この館を大爆発させようと!決して私に当たることは、ない。何故だと思う?」
「――――ッ」
「今の貴女、怯えた子犬の目をしてるわ・・・すごくいい目・・・食べちゃいたい・・・。」
レミリアお嬢様が一歩私に近づいた。
「最後だから、教えてあげる。これから、貴女が時間をいくら戻そうが進めようが止めようが、『結末』を決して変える事は出来ない。貴女はこれから防御するんだろうけど、その行為すらも、私の前では無意味。何もかも、ね。・・・私の能力、わかった?」
「・・・・」
答えることが出来なかった。
「教えてあげる。あなたの結末を。」
「イヤァァァァ!!」
私は恐怖の余り、スペルカードを使わずにはいられなかった。
メイド秘技『殺人ドール』
私の最終技だ。
私はこれに全てをかけた。
しかし、お嬢様は涼しい顔で全てのナイフをかわす。否、最初からナイフはお嬢様に向かっていなかった。
全てのナイフは、お嬢様から大きくそれた。
そして、周りの壁に跳ね返され、私自身に帰ってくる―――!
時を止めようとしたが、無駄な足掻きだった。止められない止められない止められな――――
ドスドスドスドスッ!
頭が真っ白になった。
気づくと、全身にナイフが刺さっていた。
幸い、頭には刺さってなかったが、私に致命傷を与えるには十分の量のナイフだった。
「はう・・・・ああ・・・・。」
私は膝をついた。
意識が薄れていく。 ・・・・・・・・・・
「冥土の土産よ。私の能力は『運命を操る程度の能力』」
レミリアお嬢様の声だけが響く。
「運命を変えた・・・・と、言うの・・・・?」
最初から、お嬢様は勝っていたのだ。
『投げたナイフが一切当たらない運命!』
『時が止められないほどパニックになる運命!』
『ナイフが自分自身に戻ってくるのも運命!』
お嬢様は自分自身で運命を『作り出して』いたのだ。
「そう。やっと理解できたようね。」
「・・・私は、どうなる・・・?結末・・・・は?」
「死ぬわ。このまま行くと。」
私は、息を吐いた。そして、
「・・・やっと分かりました・・・お嬢様・・・貴女は私にとって大きすぎる存在だったのですね・・・・
死に際になって、やっと分かりました・・・
私はうぬぼれていた・・・自分の能力に敵うものなんて・・・ないと思ってました。
最後に・・・・もう一度だけ顔を見せてくださ・・・・。」
そこで私の意識は切れた。
目が覚めると、そこは天国でも地獄でもなかった。
自分の部屋で、私は全身を包帯でぐるぐる巻きにされてベッドに横になっていた。
「・・・起きた様ね。」
「・・・お、嬢様・・・。」
そこにはお嬢様が立っていた。
「貴女、もう私に逆らわないと誓える?」
お嬢様は脅すような口調で私に聞いた。
「・・・・はい。」
「ならいいわ。」
「一つ、教えてください。」
「何?」
「・・・この『運命』は貴女が創った運命なのですか?」
お嬢様は答えなかった。
私は、その後罰を受けた。
が、後悔はしていない。
あれから、3年。
私は今、ここに存在できることに幸せを感じている。
ずっと図書館に閉じこもってるけど、その知識に敵うものはいない、パチュリー・ノーレッジ
少し頼りにならないが、誰とでも親しく話せる、紅 美鈴。
最近、破壊癖が抑えられるようになってきた、お嬢様の妹様、フランドール・スカーレット。
そして、お嬢様を打ち負かした 霧雨 魔理沙と博麗 霊夢。
私はこの館で働いて、沢山の出会いを経験した。
とても素敵な出会い。もし、私が人間界で生きていたとするなら、こんな出会いは無かったのだろう。
私は、いつも思う。
『ここで働いてるのは、お嬢様の創った運命ではない』
と言う事を。
紅魔館で働くしがないメイドだ。
そして、『時間を操る程度の能力』を持っている。
『時間』。
私はコレを自在に操れる。
戻すことも、進めることも、止めることも。
私がちょっと望んだだけで、全ては止まり、加速し、戻る。
世界の全ての時間を私は操れる。
しかし、私は日常生活にほんのちょっと使うだけで満足だ。
弾幕ごっこの時だってそうだ。
自分がやられそうになったからと言って時を戻すことも無い。
ただ時を止めてナイフの軌道を変えるだけで満足だ。
全ては、あるべきままが一番いいのだ。
無闇にソレを変えるのは良くないことだ。
『運命』・・・ どう足掻いても、それには逆らえない。
私がどんなに時を戻そうが、なんだろうが、ソレも『運命の内』に入っているのだろう。
実を言うと、紅魔館で働き始めたばかりの頃、私は一度だけお嬢様に反逆したことがある。
自分の能力に自信があったと言うのか、今考えても動機は分からない。
その頃の私は、お嬢様の能力を知らなかった。
何故お嬢様が畏怖されているのか、ハッキリ言って分からなかった。
『あんなお子様より、私の方が強いに決まってる』
そう考えたのだろうか?
自分の裏を垣間見た気がした。
あれは、もう3年前のことだろうか・・・。
紅い満月のことだった。
地下室で、それは行われた。
時を止め、レミリアお嬢様を地下室まで運ぶ。
運んで、準備を全て終えてから、時を元に戻す。
「・・・何のつもり?」
私はレミリアお嬢様を十字架で磔にしていた。
両手両足をワイヤーで固定している。
「分からない。何故貴女が畏怖されてるのかが。
貴女が本当に強いのかどうかも。自分より弱い奴に仕えていられるほど、私が我慢強くない。」
私はレミリアお嬢様にナイフを突きつけていた。
「だって、まだ見せてないもの。」
レミリアお嬢様は無表情で言う。その態度が私のカンに障った。
「なら、見せて欲しいわ。」
ビリッ・・・。
私は事前に奪っておいたお嬢様のスペルカードを全て破り捨てた。
「10秒後に、私はお嬢様を殺します。スペルカードも無いその状態。もう自分の能力に頼るしかないわ。さぁ、見せて頂戴。」
「一つ、聞くわ。」
「何?遺言は受け付けてるけど?」
「もし、貴女が私を殺したとして、貴女はどうするの?」
「別に・・・この館を出て行く。それだけ。」
レミリアお嬢様は少し微笑んだ。
その笑の意味は、今でも分からない。
「10秒経過。さようなら。スカーレットデビル。」
私はレミリアお嬢様に向けてありったけのナイフを投げた。
私はこの時、勝利を確信した。が、現実と言うのはそう甘いものではない。
「・・・ふぅ。」
なんと言う事か。
私のナイフはお嬢様に全く刺さらなかった。
刺さらない代わりに、お嬢様を固定してあるワイヤーを切断し、後ろの闇に消えた。
「ば、バカな・・・!」
自由になったお嬢様が、私を見下す。
「・・・ね、今のが私の能力よ?理解できた?」
冷や汗が出るのを感じた。
「理解できないようね。教えてあげる。」
「クッ・・・時よ!止まれ!」
・・・止まらない。
全ては正常に流れていく。
目の前のお嬢様は意地悪く笑った。
「出来ないでしょ?」
「な・・・ 何故・・・ どうして?」
「次に起こる事、私には分かる・・・。」
レミリア様の瞳が紅く光った。
「こ・・この・・!」
私はパニックに陥っていたのか、再びありったけのナイフを投げた。
が、全てお嬢様には全く当たらない。
しかも、お嬢様は全く動いていないのだ。
私はこの時、更なる恐怖を感じた。
「例え貴女が何万本のナイフを投げようと!この館を大爆発させようと!決して私に当たることは、ない。何故だと思う?」
「――――ッ」
「今の貴女、怯えた子犬の目をしてるわ・・・すごくいい目・・・食べちゃいたい・・・。」
レミリアお嬢様が一歩私に近づいた。
「最後だから、教えてあげる。これから、貴女が時間をいくら戻そうが進めようが止めようが、『結末』を決して変える事は出来ない。貴女はこれから防御するんだろうけど、その行為すらも、私の前では無意味。何もかも、ね。・・・私の能力、わかった?」
「・・・・」
答えることが出来なかった。
「教えてあげる。あなたの結末を。」
「イヤァァァァ!!」
私は恐怖の余り、スペルカードを使わずにはいられなかった。
メイド秘技『殺人ドール』
私の最終技だ。
私はこれに全てをかけた。
しかし、お嬢様は涼しい顔で全てのナイフをかわす。否、最初からナイフはお嬢様に向かっていなかった。
全てのナイフは、お嬢様から大きくそれた。
そして、周りの壁に跳ね返され、私自身に帰ってくる―――!
時を止めようとしたが、無駄な足掻きだった。止められない止められない止められな――――
ドスドスドスドスッ!
頭が真っ白になった。
気づくと、全身にナイフが刺さっていた。
幸い、頭には刺さってなかったが、私に致命傷を与えるには十分の量のナイフだった。
「はう・・・・ああ・・・・。」
私は膝をついた。
意識が薄れていく。 ・・・・・・・・・・
「冥土の土産よ。私の能力は『運命を操る程度の能力』」
レミリアお嬢様の声だけが響く。
「運命を変えた・・・・と、言うの・・・・?」
最初から、お嬢様は勝っていたのだ。
『投げたナイフが一切当たらない運命!』
『時が止められないほどパニックになる運命!』
『ナイフが自分自身に戻ってくるのも運命!』
お嬢様は自分自身で運命を『作り出して』いたのだ。
「そう。やっと理解できたようね。」
「・・・私は、どうなる・・・?結末・・・・は?」
「死ぬわ。このまま行くと。」
私は、息を吐いた。そして、
「・・・やっと分かりました・・・お嬢様・・・貴女は私にとって大きすぎる存在だったのですね・・・・
死に際になって、やっと分かりました・・・
私はうぬぼれていた・・・自分の能力に敵うものなんて・・・ないと思ってました。
最後に・・・・もう一度だけ顔を見せてくださ・・・・。」
そこで私の意識は切れた。
目が覚めると、そこは天国でも地獄でもなかった。
自分の部屋で、私は全身を包帯でぐるぐる巻きにされてベッドに横になっていた。
「・・・起きた様ね。」
「・・・お、嬢様・・・。」
そこにはお嬢様が立っていた。
「貴女、もう私に逆らわないと誓える?」
お嬢様は脅すような口調で私に聞いた。
「・・・・はい。」
「ならいいわ。」
「一つ、教えてください。」
「何?」
「・・・この『運命』は貴女が創った運命なのですか?」
お嬢様は答えなかった。
私は、その後罰を受けた。
が、後悔はしていない。
あれから、3年。
私は今、ここに存在できることに幸せを感じている。
ずっと図書館に閉じこもってるけど、その知識に敵うものはいない、パチュリー・ノーレッジ
少し頼りにならないが、誰とでも親しく話せる、紅 美鈴。
最近、破壊癖が抑えられるようになってきた、お嬢様の妹様、フランドール・スカーレット。
そして、お嬢様を打ち負かした 霧雨 魔理沙と博麗 霊夢。
私はこの館で働いて、沢山の出会いを経験した。
とても素敵な出会い。もし、私が人間界で生きていたとするなら、こんな出会いは無かったのだろう。
私は、いつも思う。
『ここで働いてるのは、お嬢様の創った運命ではない』
と言う事を。