ヴワル魔法図書館。
館長でもあり居候でもあるパチュリー・ノーレッジは毎日毎日毎日毎日毎日とにかく毎日白黒の魔女、霧雨 魔理沙が本を借りては戻し、借りては戻しを繰り返すのに頭を悩ませていた。
借りるのは結構だが、本を元の並び順に戻そうとしなかったり、パチュリーがちょっと席を離れたスキに、勝手に借りて行ってしまうことも多々あった。
本の整理をしたりするのは、咲夜の仕事なのだが、本の並びが滅茶苦茶になってるたびに、咲夜に小言を言われる。
ウンザリしてきた。
「よう、今日も返しに来たぜ。また借りるんだが。」
ご本人の登場だ。
「・・・また来たの。よく飽きないわね。」
「飽きないからこそ来るんだぜ。今年の目標はここの本を全部読破することだからな。」
「勝手に目標作らないでよ。」
「えーと、今日返しに来たのはこれだ。」
と、魔理沙は分厚い本を取り出す。
それをパチュリーの手に押し付けると、魔理沙は図書館に奥に向かう。
「ちょっと、また借りるんじゃないでしょうね?」
後をついていきながら、パチュリーが言う。
「勿論、また借りていくぜ。」
「貸し出ししてる覚えは無いんですけど。」
「それじゃあ図書館の意味が無いぜ。」
「そりゃ、そーだけど・・・。」
言い争いも、そろそろエスカレートしてきた。
「いいだろ!減るもんじゃないし!」
「思いっきり減る物だから怒ってるんでしょ!」
パチュリーと魔理沙は顔を赤くして怒っている。
「大体、読みたい本が一日無いぐらいでギャーギャー騒ぐな!」
「ひっどーい!私にとって本が人生の何であるか知ってるの!?」
「知るか!」
「もー!これでもくらえー!」
突然、パチュリーはレーザーを4方向に撃ち出した。
「うわ!?」
魔理沙は間一髪で避ける。
「この!この!」
激しい弾幕が、魔理沙を追い詰める。
その時、パチュリーの後ろの本棚がグラグラゆれているのを発見した。
「パチュリー!危な・・・」
「え?」
ドサドサドサ・・・!!
魔理沙が叫ぶも、時既に遅し。
パチュリーは上から落ちてきた本の雪崩に飲み込まれてしまった。
「・・・ヤバイぜ。パチュリー!?」
魔理沙は本の山をどかしていった。
そして、本の山の一番下に・・・。
「お、パチュリー発見だぜ。」
パチュリーは、鼻血を出して気を失っている。
幸い、命に別状は無いみたいだ。
「ふぅ、ここで死なれちゃあ、ここの住人に何されるかわから・・・。」
ふと、上に目を上げたとき、魔理沙は凍りついた。
たまたま掃除に来たメイド長、十六夜 咲夜がドアの所に立っていた。
「・・・魔理沙、なんで、パチュリー様を・・・。」
普段は冷静な咲夜の声が震えていた。
「お、落ち着け。な?いいか?パチュリーは死んでな・・・。」
ヒュッ!サクッ!
魔理沙が少し動いた途端、魔理沙の頭をナイフが掠めた。
「・・・冗談、キツイぜ・・・。」
咲夜の目は「怒りに満ちた獣を狙う目」になっていた。
「・・・何も、ここでお嬢様の手を借りることは、ない。全ては!ここで、霧雨 魔理沙。あんたを始末することで、完了する。・・・それが、私の、役目ッ!」
「いや、頼むから、話を聞いてくれ。」
「問答無用!パチュリー様の仇!」
「違うって!」
「黙れ!このゴキブリめ!」
「・・・やべぇぜ・・・これ、説明しても分かってくれそうにないし・・・。仕方ないっ!すまねぇ、咲夜!騒ぎが大きくなんねぇ内にあんたを、気絶させてやるぜ!」
と、言った直後、魔理沙の視界から咲夜は消えていた。
「ハッ!」
魔理沙がしゃがむのと、咲夜のナイフが振られるのがほぼ同時だった。
魔理沙は『勘』でかろうじて、咲夜の攻撃を避けた。
「・・・弾幕ごっこ、なんかじゃあ、無いんだよ?」
殺る気満々の咲夜。
魔理沙は、本棚にへばりついていた。
(マスタースパークで一気に決着を・・・!)
魔理沙は懐を探る・・・・。
(・・・!しまった!符を忘れてきちまった!)
魔理沙は咄嗟にその場から駆け出すが、
「逃すか!」
と、咲夜が突然目の前に現れる。
そして、素早く、ナイフを魔理沙の心臓に向けて―――
「すまん!パチュリー!私の命がかかってる!」
魔理沙は近くにある分厚い本を取ると、自分の胸の前に当てる。
ドスッ!ナイフが本に刺さるが、貫通はしない。
「うおりゃああッ!」
ブォン!
魔力で魔理沙の筋力不足をカバーしつつ、本ごと咲夜を投げ飛ばす!
「きゃあっ!」
咲夜は投げ飛ばされるが、空中で姿勢を立て直す。
そして、タンッ、と本棚を蹴ると、再び魔理沙に飛びかかってきた。
魔理沙は、再び本を盾にする。
「同じ手が通用するとでも?」
ドスッ!!
「ぐ・・・!」
勢いがついたナイフの直撃は、ハードカバーの本でも防ぎきれなかった。
魔理沙のわき腹にナイフが刺さる。
「そのまま、臓物ぶちまけるがいいわ!霧雨 魔理沙!」
「そんな・・・惨い死に方はゴメンだぜ!」
魔理沙は近くにあった分厚い本を本棚から引っ張り出すと、咲夜に向かって投げつけた。
「!時よ、止ま・・・。」
ゴツン!
本の角が咲夜の鼻にクリーンヒット、咲夜の体は大きくのけぞる。
魔理沙はそのスキに・・・わき腹にナイフは刺さったままだが、這いずって少しでも咲夜から離れようとする。
「仇を討つ・・・!」
咲夜は体勢を立て直すと、
懐からなにやら丸い物を出した。
「こんな時のために、パチュリー様特製魔法球!木っ端微塵になるがいい!」
ポイッ コロコロコロ・・・・。
「・・・地面に落ちてから、約3秒。」
魔理沙の顔が少し引きつった。
そして、叫んだ。
「・・・・最期になる前に・・・最後の攻撃をするぜ!」
魔理沙はわき腹に刺さったナイフを抜く。
そして、思いっきり咲夜に向かって投げつけたつもりだった、が・・・。
ブン!
魔理沙の投げたナイフは咲夜から大きく逸れて飛んでいった。
「・・・・終りね。」
次の瞬間、閃光が走った―――
「クソッ!」
魔理沙は転がって、爆風から逃れようとした。
ドォォォォォン・・・・・・。
七色の爆風を放ちながら、魔法球は爆発した。
煙が充満する中、咲夜は魔理沙を捜し始めた。
死体を確認しないと安心できないからだ。
「・・・・いた。」
魔理沙は、辛うじて生きていた。
だが、本当に辛うじて、だ。
腹部からの夥しい流血がソレを物語っていた。
咲夜はそんな彼女を見て、
「ゴキブリ・・・ まさに、ゴキブリね。どう?絶望ってヤツは?」
しかし、魔理沙は絶望していなかった。
ヨロヨロと立ち上がった魔理沙の表情は、笑っていた。
「・・・・ハハッ・・・」
「・・・頭がおかしくなったよーね。」
「・・・元から、かな。」
「じゃ、トドメを刺すとするわ。その体が残らないように、ね!」
メイド秘技「殺人ドール -Lunatic-」
数百本はあるであろうナイフが、咲夜から放たれる。
そして、それらは全て、魔理沙に向かって飛んでいく――――
魔理沙は動かなかった。そして―――
「・・・・私の行動に、最初から無駄なんて、無かったんだよ。」
と、不敵な笑みを浮かべる魔理沙。
「何、を―――」
ドスッ!!
魔理沙が咲夜に投げたナイフが、咲夜の後ろから咲夜の腹部を貫いた。
「・・・さっきのナイフに、『物を持ち主の所に返す魔法』を使ったんだ。昨日、パチュリーから借りた本に載っていたぜ・・・。」
「何てこと・・・!」
腹部を抑え、膝をつく咲夜。
カラカラカラァン!
術が解除された全てのナイフが、魔理沙に刺さらず、落ちた。
「・・・すまねぇ!」
最後の力を振り絞り、魔理沙は咲夜に体当りをする。
咲夜はその衝撃で、少し吹き飛び・・・ 本棚に激突。
グラ・・・・
ドサドサドサ・・・!
本の雪崩に、咲夜は飲み込まれていった。
「・・・・とりあえず、二人を、ここから連れて行かなきゃ、な・・・。」
本の雪崩から、気絶している咲夜を引っ張り出す。
そして、腹部を自分のエプロンで抑える。
パチュリーを運ぼうとした所で、魔理沙はガクッと膝をついた。
「・・・ハハ・・・私も限界みたいだ・・・。」
そのまま、力無く倒れる。
「・・・・生きていたら、また会おうぜ。」
そこで、魔理沙の意識は、飛んだ。
「魔理沙!魔理沙!」
魔理沙が目を覚ましたのは、紅魔館の来客用寝室でのことだった。
包帯でぐるぐる巻きにされている自分がいた。
目を開けると、霊夢、パチュリー、レミリア、フランドールが自分を覗き込んでいた。
「いやー、驚いたわよ。まさか図書館で血まみれになって倒れているなんて。」と、霊夢。
「パチュリーがあの時意識を取り戻さなかったら、今頃どうなっていたことか・・・。」と、レミリア
「大丈夫?」と、フランドール。
「それは・・。」と、魔理沙が説明しようとするが、腹部を貫く痛みを感じ、蹲る。
「動くと、傷口が開くから!」
と、霊夢は魔理沙を寝かせる。
「・・・ごめんなさい!あの時、私がカッとなって攻撃しなければ・・・・。」
パチュリーが泣きながら、頭を下げる。
「・・・いや、いいんだ。勝手に借りたりしてた私のせいでもあるんだし。」
と、魔理沙が宥める。
「・・・そうだ!咲夜は?」
「隣の部屋で、寝てる。」
レミリアが言う。
「本の当たり所が悪かったみたい。でも、パチュリーが回復魔法をかけといたから、すぐに目覚めると思う。」
フランドールも言う。
「そうか・・・・。」
と、一息つく魔理沙。
突然、部屋のドアが思いっきり開く。
「見つけた!霧雨 魔理沙!覚悟ォォォォ!・・・って、何で、死んだはずの・・・?」
咲夜だった。包帯姿のままで入ってきた。
「・・・え?私が死んだと思ってた?」
「・・・は、はい。」
魔理沙は咲夜に、事の一部始終を話した。
「・・・早とちり、だったわけね・・・。」
顔を赤くして、バツの悪そうな顔をしながら、呟く。
「・・・ごめん。」
魔理沙は少し笑い
「いいんだ、気にしないでくれ。こう言う事を引きずるのはよくないと思うぜ。」
それを聞いた咲夜も、少し笑った。
「ところで!」
突然、レミリアが声を出す。
「図書館、誰が掃除すると思ってるの?」
「「「「「あ」」」」」
二人の戦闘で図書館は一部がボロボロになってしまっていた。
「完治したら、騒ぎを起こした貴方達3人が掃除すること!いい?」
「「「はぁーい・・・。」」」
少し、3人の気が重くなった。
2日後
3人は早朝から図書館の掃除を始めていた。
「あー!この本、破れてるー!」
パチュリーの悲鳴。
「ごめん、それ、私が咲夜の攻撃を防ぐ時に使った本だ。」
「こっちの本なんか血がついてるしー!」
「それも、私が咲夜にブチ当てた本だ。」
「なんでこんな扱いするのよー!」
「しょうがないだろ!こっちだって必死なんだ!」
「うるさーい!このゴキブリー!」
「何だと!弾幕るか!?」
「二人とも!ちゃんと掃除しろーッ!」
紅魔館は、今日も平和である・・・。
館長でもあり居候でもあるパチュリー・ノーレッジは毎日毎日毎日毎日毎日とにかく毎日白黒の魔女、霧雨 魔理沙が本を借りては戻し、借りては戻しを繰り返すのに頭を悩ませていた。
借りるのは結構だが、本を元の並び順に戻そうとしなかったり、パチュリーがちょっと席を離れたスキに、勝手に借りて行ってしまうことも多々あった。
本の整理をしたりするのは、咲夜の仕事なのだが、本の並びが滅茶苦茶になってるたびに、咲夜に小言を言われる。
ウンザリしてきた。
「よう、今日も返しに来たぜ。また借りるんだが。」
ご本人の登場だ。
「・・・また来たの。よく飽きないわね。」
「飽きないからこそ来るんだぜ。今年の目標はここの本を全部読破することだからな。」
「勝手に目標作らないでよ。」
「えーと、今日返しに来たのはこれだ。」
と、魔理沙は分厚い本を取り出す。
それをパチュリーの手に押し付けると、魔理沙は図書館に奥に向かう。
「ちょっと、また借りるんじゃないでしょうね?」
後をついていきながら、パチュリーが言う。
「勿論、また借りていくぜ。」
「貸し出ししてる覚えは無いんですけど。」
「それじゃあ図書館の意味が無いぜ。」
「そりゃ、そーだけど・・・。」
言い争いも、そろそろエスカレートしてきた。
「いいだろ!減るもんじゃないし!」
「思いっきり減る物だから怒ってるんでしょ!」
パチュリーと魔理沙は顔を赤くして怒っている。
「大体、読みたい本が一日無いぐらいでギャーギャー騒ぐな!」
「ひっどーい!私にとって本が人生の何であるか知ってるの!?」
「知るか!」
「もー!これでもくらえー!」
突然、パチュリーはレーザーを4方向に撃ち出した。
「うわ!?」
魔理沙は間一髪で避ける。
「この!この!」
激しい弾幕が、魔理沙を追い詰める。
その時、パチュリーの後ろの本棚がグラグラゆれているのを発見した。
「パチュリー!危な・・・」
「え?」
ドサドサドサ・・・!!
魔理沙が叫ぶも、時既に遅し。
パチュリーは上から落ちてきた本の雪崩に飲み込まれてしまった。
「・・・ヤバイぜ。パチュリー!?」
魔理沙は本の山をどかしていった。
そして、本の山の一番下に・・・。
「お、パチュリー発見だぜ。」
パチュリーは、鼻血を出して気を失っている。
幸い、命に別状は無いみたいだ。
「ふぅ、ここで死なれちゃあ、ここの住人に何されるかわから・・・。」
ふと、上に目を上げたとき、魔理沙は凍りついた。
たまたま掃除に来たメイド長、十六夜 咲夜がドアの所に立っていた。
「・・・魔理沙、なんで、パチュリー様を・・・。」
普段は冷静な咲夜の声が震えていた。
「お、落ち着け。な?いいか?パチュリーは死んでな・・・。」
ヒュッ!サクッ!
魔理沙が少し動いた途端、魔理沙の頭をナイフが掠めた。
「・・・冗談、キツイぜ・・・。」
咲夜の目は「怒りに満ちた獣を狙う目」になっていた。
「・・・何も、ここでお嬢様の手を借りることは、ない。全ては!ここで、霧雨 魔理沙。あんたを始末することで、完了する。・・・それが、私の、役目ッ!」
「いや、頼むから、話を聞いてくれ。」
「問答無用!パチュリー様の仇!」
「違うって!」
「黙れ!このゴキブリめ!」
「・・・やべぇぜ・・・これ、説明しても分かってくれそうにないし・・・。仕方ないっ!すまねぇ、咲夜!騒ぎが大きくなんねぇ内にあんたを、気絶させてやるぜ!」
と、言った直後、魔理沙の視界から咲夜は消えていた。
「ハッ!」
魔理沙がしゃがむのと、咲夜のナイフが振られるのがほぼ同時だった。
魔理沙は『勘』でかろうじて、咲夜の攻撃を避けた。
「・・・弾幕ごっこ、なんかじゃあ、無いんだよ?」
殺る気満々の咲夜。
魔理沙は、本棚にへばりついていた。
(マスタースパークで一気に決着を・・・!)
魔理沙は懐を探る・・・・。
(・・・!しまった!符を忘れてきちまった!)
魔理沙は咄嗟にその場から駆け出すが、
「逃すか!」
と、咲夜が突然目の前に現れる。
そして、素早く、ナイフを魔理沙の心臓に向けて―――
「すまん!パチュリー!私の命がかかってる!」
魔理沙は近くにある分厚い本を取ると、自分の胸の前に当てる。
ドスッ!ナイフが本に刺さるが、貫通はしない。
「うおりゃああッ!」
ブォン!
魔力で魔理沙の筋力不足をカバーしつつ、本ごと咲夜を投げ飛ばす!
「きゃあっ!」
咲夜は投げ飛ばされるが、空中で姿勢を立て直す。
そして、タンッ、と本棚を蹴ると、再び魔理沙に飛びかかってきた。
魔理沙は、再び本を盾にする。
「同じ手が通用するとでも?」
ドスッ!!
「ぐ・・・!」
勢いがついたナイフの直撃は、ハードカバーの本でも防ぎきれなかった。
魔理沙のわき腹にナイフが刺さる。
「そのまま、臓物ぶちまけるがいいわ!霧雨 魔理沙!」
「そんな・・・惨い死に方はゴメンだぜ!」
魔理沙は近くにあった分厚い本を本棚から引っ張り出すと、咲夜に向かって投げつけた。
「!時よ、止ま・・・。」
ゴツン!
本の角が咲夜の鼻にクリーンヒット、咲夜の体は大きくのけぞる。
魔理沙はそのスキに・・・わき腹にナイフは刺さったままだが、這いずって少しでも咲夜から離れようとする。
「仇を討つ・・・!」
咲夜は体勢を立て直すと、
懐からなにやら丸い物を出した。
「こんな時のために、パチュリー様特製魔法球!木っ端微塵になるがいい!」
ポイッ コロコロコロ・・・・。
「・・・地面に落ちてから、約3秒。」
魔理沙の顔が少し引きつった。
そして、叫んだ。
「・・・・最期になる前に・・・最後の攻撃をするぜ!」
魔理沙はわき腹に刺さったナイフを抜く。
そして、思いっきり咲夜に向かって投げつけたつもりだった、が・・・。
ブン!
魔理沙の投げたナイフは咲夜から大きく逸れて飛んでいった。
「・・・・終りね。」
次の瞬間、閃光が走った―――
「クソッ!」
魔理沙は転がって、爆風から逃れようとした。
ドォォォォォン・・・・・・。
七色の爆風を放ちながら、魔法球は爆発した。
煙が充満する中、咲夜は魔理沙を捜し始めた。
死体を確認しないと安心できないからだ。
「・・・・いた。」
魔理沙は、辛うじて生きていた。
だが、本当に辛うじて、だ。
腹部からの夥しい流血がソレを物語っていた。
咲夜はそんな彼女を見て、
「ゴキブリ・・・ まさに、ゴキブリね。どう?絶望ってヤツは?」
しかし、魔理沙は絶望していなかった。
ヨロヨロと立ち上がった魔理沙の表情は、笑っていた。
「・・・・ハハッ・・・」
「・・・頭がおかしくなったよーね。」
「・・・元から、かな。」
「じゃ、トドメを刺すとするわ。その体が残らないように、ね!」
メイド秘技「殺人ドール -Lunatic-」
数百本はあるであろうナイフが、咲夜から放たれる。
そして、それらは全て、魔理沙に向かって飛んでいく――――
魔理沙は動かなかった。そして―――
「・・・・私の行動に、最初から無駄なんて、無かったんだよ。」
と、不敵な笑みを浮かべる魔理沙。
「何、を―――」
ドスッ!!
魔理沙が咲夜に投げたナイフが、咲夜の後ろから咲夜の腹部を貫いた。
「・・・さっきのナイフに、『物を持ち主の所に返す魔法』を使ったんだ。昨日、パチュリーから借りた本に載っていたぜ・・・。」
「何てこと・・・!」
腹部を抑え、膝をつく咲夜。
カラカラカラァン!
術が解除された全てのナイフが、魔理沙に刺さらず、落ちた。
「・・・すまねぇ!」
最後の力を振り絞り、魔理沙は咲夜に体当りをする。
咲夜はその衝撃で、少し吹き飛び・・・ 本棚に激突。
グラ・・・・
ドサドサドサ・・・!
本の雪崩に、咲夜は飲み込まれていった。
「・・・・とりあえず、二人を、ここから連れて行かなきゃ、な・・・。」
本の雪崩から、気絶している咲夜を引っ張り出す。
そして、腹部を自分のエプロンで抑える。
パチュリーを運ぼうとした所で、魔理沙はガクッと膝をついた。
「・・・ハハ・・・私も限界みたいだ・・・。」
そのまま、力無く倒れる。
「・・・・生きていたら、また会おうぜ。」
そこで、魔理沙の意識は、飛んだ。
「魔理沙!魔理沙!」
魔理沙が目を覚ましたのは、紅魔館の来客用寝室でのことだった。
包帯でぐるぐる巻きにされている自分がいた。
目を開けると、霊夢、パチュリー、レミリア、フランドールが自分を覗き込んでいた。
「いやー、驚いたわよ。まさか図書館で血まみれになって倒れているなんて。」と、霊夢。
「パチュリーがあの時意識を取り戻さなかったら、今頃どうなっていたことか・・・。」と、レミリア
「大丈夫?」と、フランドール。
「それは・・。」と、魔理沙が説明しようとするが、腹部を貫く痛みを感じ、蹲る。
「動くと、傷口が開くから!」
と、霊夢は魔理沙を寝かせる。
「・・・ごめんなさい!あの時、私がカッとなって攻撃しなければ・・・・。」
パチュリーが泣きながら、頭を下げる。
「・・・いや、いいんだ。勝手に借りたりしてた私のせいでもあるんだし。」
と、魔理沙が宥める。
「・・・そうだ!咲夜は?」
「隣の部屋で、寝てる。」
レミリアが言う。
「本の当たり所が悪かったみたい。でも、パチュリーが回復魔法をかけといたから、すぐに目覚めると思う。」
フランドールも言う。
「そうか・・・・。」
と、一息つく魔理沙。
突然、部屋のドアが思いっきり開く。
「見つけた!霧雨 魔理沙!覚悟ォォォォ!・・・って、何で、死んだはずの・・・?」
咲夜だった。包帯姿のままで入ってきた。
「・・・え?私が死んだと思ってた?」
「・・・は、はい。」
魔理沙は咲夜に、事の一部始終を話した。
「・・・早とちり、だったわけね・・・。」
顔を赤くして、バツの悪そうな顔をしながら、呟く。
「・・・ごめん。」
魔理沙は少し笑い
「いいんだ、気にしないでくれ。こう言う事を引きずるのはよくないと思うぜ。」
それを聞いた咲夜も、少し笑った。
「ところで!」
突然、レミリアが声を出す。
「図書館、誰が掃除すると思ってるの?」
「「「「「あ」」」」」
二人の戦闘で図書館は一部がボロボロになってしまっていた。
「完治したら、騒ぎを起こした貴方達3人が掃除すること!いい?」
「「「はぁーい・・・。」」」
少し、3人の気が重くなった。
2日後
3人は早朝から図書館の掃除を始めていた。
「あー!この本、破れてるー!」
パチュリーの悲鳴。
「ごめん、それ、私が咲夜の攻撃を防ぐ時に使った本だ。」
「こっちの本なんか血がついてるしー!」
「それも、私が咲夜にブチ当てた本だ。」
「なんでこんな扱いするのよー!」
「しょうがないだろ!こっちだって必死なんだ!」
「うるさーい!このゴキブリー!」
「何だと!弾幕るか!?」
「二人とも!ちゃんと掃除しろーッ!」
紅魔館は、今日も平和である・・・。