Coolier - 新生・東方創想話

病気の話

2003/10/22 08:28:02
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マヨヒガの昼。
「藍さまー。」
「どうした?橙。・・・顔が赤いぞ?」
「うん、そうみたいなんだ。で、この黒いの、何?」
橙の指先は、黒くなってしまっていた。
「・・・どうしたんだ?これは。」
「朝起きたら、こうなってた。」
「・・・何かの病気かも知れないな・・・・。大丈夫か?」
「大丈夫だよ、大丈夫・・・。」

バタッ
「!橙!橙!」
落ち葉が、ゆっくりと落ちていった。


マヨヒガの夜は、八雲家にとっては長い夜だった。
少なくとも今夜は。
「はぁ・・・はぁ・・・」
マヨヒガの一室で、橙は弱弱しいうめき声をあげて寝ていた。
「・・・藍さま・・・」
赤くなった顔でうわ言のように「藍さま、藍さま」と繰り返している。
「・・・紫様・・・。この病気は?」
狐の姿をした式神、八雲 藍が主人である八雲 紫に聞く。
「・・・『黒神病』。ここ幻想郷で、まれにかかる病気だわ。」
と、言うと紫は橙の手を見る。
橙の手は真っ黒に染まりかけていた。
「この黒いの、全部黒死病の菌よ。これが頭まで達した時が、この子の・・・・。」
そこまで行って、紫は言うのをやめた。
「・・・この進行度から行って、もってあと、4日程度ね。」
「どうすれば・・・ どうすれば 橙を救う事が出来ますか!?」
紫は少し考える。そして、
「・・・・紅月藻。」
「え?」
「紅月藻。幻想郷のどこかに生えると言われる薬草よ。只、もう今では殆どが採り尽くされてしまっている。」
「その薬草があれば、橙は・・。」
「えぇ、その薬草があれば。助かると思うわ。」
「・・・行ってきます。橙を助けに。」
「・・・止めても、無駄でしょうね。」

そして、藍はマヨヒガを飛び出した。




「・・・と、言うわけなんだ。」
博麗神社にて、
藍は博麗神社の巫女、霊夢とたまたま来ていた魔女、魔理沙と会っていた。
「・・・はぁ、今回ばかりは、ヤバいかもね。」
「紅月藻・・・紅月藻・・・と言ったら、やっぱ紅魔館の湖じゃねえか?」
「紅魔館・・・。お願いだ!そこに連れて行ってくれ!もし、橙がいなくなったら、私は・・・。」
と、土下座してまで二人に頼む藍。
「・・・別に土下座なんかしなくても、最初っからそのつもりだったわよ。」「左に同じ、だな。」
「・・・ありがとう・・・。」
「で、紅魔館の誰が知ってると思う?」
「パチュリーっしょ。やっぱ。後はチルノとレミリア辺りも知ってそうね。」
「・・・急ぐぞ、藍。人命・・・かな?が、かかってるんだろ?」
三人は紅魔館に向かって飛びたった。


紅魔館、ヴアル魔法図書館
「何よ、こんな時間に・・・・。」
「悪いな、パチュリー。実は・・・・。」


「成る程、それなら・・・。」
「知ってるのか!?」
思わず興奮する藍。
そして、パチュリーが近くにある滅茶苦茶分厚い本を取り出す。
「この本の3467ページに載ってる。えーと・・・。どうやら、紅月藻は、ここ幻想郷に生えていた薬草の一種ね。ありとあらゆる病気を治した・・・・」
「ちょっと待って!『生えていた』って・・・?」
パチュリーが苦い顔をする。
「・・・その紅月藻はね、ここ幻想郷のドコにも無いの。今はね。」
「そんな・・・!!」
「何とかならないのか?このままだと、私達としても寝覚めが悪くなるからな。」
「そうね・・・。」

パチュリー達はしばらく考えた。
そして、霊夢が口を開いた。
「蒐集家・・・・。」
「霊夢?」
「魔理沙のような蒐集家なら、もしかすると・・・・ほら、魔理沙。結構、集めた物のこと覚えてなさそうだし。」
「何だと!・・・って言ってもその通りだが。」
「じゃ、霧雨邸を探れば、もしかしたら・・・。」
「もしかしたら、ね。」

思い立ったらすぐ行動。
3人はパチュリーに礼を言い、飛び去っていった。


霧雨邸。
「・・・ねぇ、この家、掃除したの何年前?」
「あー?よく覚えてねぇなー・・・。」
「・・・・と、とにかく!橙の命がかかっているんだ!捜すぞ!」

3人は、パチュリーに貰った紅月藻のイラストを頼りに、捜し始めた。
「確か、薬草類はその辺に・・・。」
「うわ!なんだこのカエルは!」
「足の踏み場も無いわね・・・。」

ガサゴソゴソ・・・・。

「・・・これは似てるけど違う。」
「これは全く似てない雑草。」
「おぉ、なんか懐かしい物見つけたぜ。」

約1名、懐古モードになりつつある中、結局、2時間も捜してしまった。

「・・・ないな。」「ないわね。」「あぁ、見事に無いぜ。」

三人はその場で大の字に倒れた。

「・・・後、思い当たるのは?」
「・・・・さぁ・・・ここがダメとなると、後は・・・・。」
「「「う~ん・・・」」」

3人は途方にくれていた。
「・・・アリスはどうだ?」
突然、魔理沙が口を開いた。
「・・・アリス?誰それ?」
「ほら、あの人形使いの。」
「あぁ、アレ。アレがどうしたの?」
「アイツも、蒐集家だったよな。」
「・・・そうなのか?」
「・・・そうだっけ?」
「だーッ!二人とも!兎に角行くぞ!マーガトロイド邸に!」
余りのじれったさについ興奮する魔理沙。
「でも、私達そこの場所知らない・・・。」
「うるせー!私が知ってるから着いて来い!」


マーガトロイド邸。
「アリスー!」
「アリスー!居るー?」
霊夢と魔理沙の二人がかりで呼ぶも、反応が無い。
「・・・寝てるのかしら?」
「いや、あそこの窓を見ろ。」
藍が指差した窓には、明かりがついていた。
そして、こちらを覗いている人影が。
「なんだ、居るじゃない。おーい!」
「・・・・・。何の用?」
アリスは窓から覗いたまま、だ。
「・・・実はー!紅月藻があったら譲って欲しいんだけどー!」
「・・・何で?」そっけない口調だ。
「あぁ、コイツの式神・・・橙って言うんだが、が病気になって、その紅月藻じゃないと治せないんだー!」
魔理沙も懸命に叫ぶ。
すると、アリスは窓に引っ込んだ。
「アリス?」
30分後、アリスが手に瓶詰めの薬草を持ってやってきた。
それは明らかに、
「「「紅月藻!」」」
と、藍は土下座をしながら、
「お願いだ!それを譲って欲しい!頼む!」
と叫んだ。目には涙が浮かんでいる。

「・・・・。別に、いいけど。」
「本当か!?」
藍が九尾を全部逆立てて叫ぶ。
「その代わり」
「そ、その代わり?」
アリスは一瞬ためらった後、
「・・・その・・・霊夢の・・・顔のカタが欲しい。」
「「「は!?」」」

「どうしても・・・・その、新しい人形のために・・・えと、その・・。」

3人は固まったが、
「行け、霊夢。」
「え!?」
「頼む、橙のためなんだ。」
「で、でも・・・・。」
「ホラ、アイツはお前をご指名なんだぜ?」
「うー・・・わ、わかったわよ!」

霊夢は一歩前に出て、
「カタを取らせてあげるけど、その代わり、その薬草を絶対渡すって誓いなさい!」
アリスは顔をほころばせて、
「OKOK 交渉成立。さ、取らせて頂くわ。ウフフフ・・・」

アリスは霊夢の顔に右の手のひらを押し付けた。
そして、
「動かないで。動くといいのが取れないから。」
と言った、その直後・・・。

バァン!!
と激しい音がした。
「きゃあっ!?」
霊夢は激しく吹っ飛ぶ。

そして、アリスの手には、霊夢の顔をかたどったカタが置かれていた。
「コレにゴムを流し込めば・・・ウフフフフ」
「・・・(危なくないか?コイツ・・・)」
「あ、薬草ね。はい、これ。」
アリスは藍に紅月藻を手渡した。

「や、やったー!ついに 念願の 紅月藻を手に入れた!」
子供のようにはしゃぐ藍。
「・・・おい、はしゃいでないで、早く橙の所へ行ってやれ。」
「・・・痛・・・そうよ。病気なんでしょう?」
「あ、ああ、待ってろよ、橙・・・。」

と飛び立とうとしたその時、目の前にスキマが開いた。
その中からは・・・
「紫様!」
「急いで!橙の様子が・・・!」
「分かりました。」
「乗りかかった船ってヤツで、私達も行くぜ!」「大した事出来ないけどね。」
藍、魔理沙、霊夢の3人は、スキマの中に入っていった。


布団で苦しんでいる橙は、黒神病のアザが肩の所まで来ていた。
「コイツは・・・・酷いな。」
「紫様、紅月藻です。」
藍は紫に紅月藻を手渡した。
「早速、解毒剤を作ることにするわ。貴方たちも、手伝ってくれるわよね?」
「はい!」「あぁ!」「えぇ!」


そして、解毒剤は無事に完成した・・・。
「・・・・。」

藍は、ゆっくりと、解毒剤を橙の口に流し込んでいく・・・。
「・・・・ドキドキするぜ。」
「しっ!」

全部飲み終えた橙の体に異変が起きた。
みるみるうちにアザが消えていくではないか。
「橙!よかった・・・・。」
思わず涙を流す藍。
「このまま行けば、明日の昼までには治るでしょう。じゃ、久しぶりに仕事したら、疲れたわー・・・じゃ。」
紫は欠伸をすると、自分の寝室へ向かった。

朝日が昇りかけてきた。
「藍さま、ありがとう・・・。」
布団の中で、微笑みながら橙は藍に言った。
「・・・」
藍は、何も言わずに橙を抱きしめていた。


「・・・良かったわね。」「あぁ、ハッピーエンドだな。」
「全く、あそこで死なれたら本当に寝覚めが悪くなるところだったわ。」
「ハハ、そうだな。それにしても、あんな複雑な解毒剤、初めてお目にかかったぜ・・・。」
「そうね、なんだか疲れちゃった。」「あぁ、一件落着したことだし、帰ろうか。」

霊夢と魔理沙はマヨヒガから帰ろうとした。
が、
「待て!」
藍に呼び止められる。
「何?」
「ありがとう。お前たちのおかげで、橙を助けることが出来た。」
「私達は別に何もしてないぜ?」
「いいや。・・・これ、貰ってくれ。」
二人に差し出したのは、お稲荷さんだった。
「私の特別製だ。もしよかったら。」
「ありがとう、後で食べることにするわ。」
「あぁ、最も、すぐになくなっちまうけどな。」
「ハハ、・・・そうだ、後2人ほど、礼を言わなくてはならない人物が居たな・・・。」
「あぁ・・・居たわね・・。」
「まぁ、後でいいか。じゃあな。本当にありがとう。」
「そこまで礼を言われると、照れるぜ。」
「貴方も体に気をつけて。じゃ。」

二人は飛び去って行った。
「さて、橙の様子でもみるとするか・・・。」


2日後
橙はすっかり完治し、いまでは飛んだり跳ねたりしている。
「藍さまー 遊んでー。」
「いいぞ?何をする?」
「かくれんぼー。藍様が鬼ね。」
「よし、10数えるからな、いーち、にーい・・・・・。」



ヴアル魔法図書館では。
「パチュリー?居るの?」
メイド長、十六夜 咲夜が図書館に入っていった。
「昼食なら、いらないわ。」
と、お稲荷さんを食べながらパチュリーが出てきた。
「それ、どうしたの?」
「朝起きたら、図書館の前に置いてあったの。」
「ふーん・・・ でも、たまには図書館から出ないとカビるわよ?」
「もー 分かったから。」
「フフッ じゃあね。」
と言うと、咲夜は図書館を出て行った。
「・・・美味しいな、コレ。」



博麗神社では。
「げ!何、ソレ。」
アリスが、自分の分身を引き連れてやってきていた。
「一分の一霊夢人形・・・どう、かな?」
「うーん・・・ 世の中には3人同じ人が居るって言うけど、ここまで同じだと・・・ねぇ。」
「・・・良かった・・。テーマは「兎に角似せる」ってことで作ったんだ。」
「・・・・。」
突然、アリスが思い出したかのように、
「ねぇ、霊夢。そういえば、今日起きたら、門の前にお稲荷さんが置いてあったんだけど。知らない?」

ども、毛玉(略です。
ここまで長い作品を見ていただき、ありがとうございました。

がんばって長文!と言ったのはいいものの、中々難しいですね。
まだ東方キャラの個性を掴めてない気がします。
・・・がんばろう・・・。
毛玉3番部隊副隊長
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コメント



0.730簡易評価
16.70名前が無い程度の能力削除
助かってよかたよ~
20.50名前が無い程度の能力削除
ほんわかしました。
きれいにまとまっている、
すてきな作品だとおもいます。