ここは、ある国の街です。
街は今、クリスマスで賑わっています。
そのため街には色々な装飾が施され、たいへん綺麗でした。
そんな中、この賑わいや絢爛さに不釣合いな、みすぼらしい格好の一人の少女がいました。
魔理沙「マッチいりませんか?マッチ買ってください。」
少女は、マッチを売っているようです。
魔理沙「マッチいりませんか?」
レティ「溶けるから、いらない。」
街を歩く人は、少女のマッチを買おうとはしませんでした。
魔理沙「ああ、寒いったらありゃしないぜ。」
少女はマッチが売れないので、つらい思いをしていました。
魔理沙「・・・・・一回、家に帰るとするか。」
仕方なく少女は、家に帰ることにしました。
魔理沙「大体、季節外れもいいとこだぜ。」
・
・
・
魅魔「何やってるのよ。マッチ、全然売れてないじゃない。」
魔理沙「魅魔様、無茶言うなって。そもそも、こんなもん売れるはずないだろ?」
魅魔「お母さんって呼びなさい。」
魔理沙「わかったよ。お母さん。」
魅魔「で、あんたは一体どういう売りかたしてたの?」
魔理沙「マッチいりませんかー、って感じで。」
魅魔「・・・・・・甘い。」
魔理沙「甘いか?」
魅魔「そうね。紅魔館のケーキより甘いわ。」
魔理沙「食ったことあるのかよ?」
魅魔「ないわ。そんなことより、物を売るなら押しが大切なのよ。」
魔理沙「押しか・・・・。」
魅魔「そう。『買ってください』じゃなくて『買え!』ぐらいの勢いが必要ね。」
魔理沙「そうか。わかったぜ。お母さん。」
魅魔「わかったら、さっさと売ってきなさい。売れ行き次第でクリスマスの過ごし方がきまるからね。」
魔理沙「了解。」
少女はお母さんからのアドバイスを受け、マッチを持って再び街へむかいました。
魔理沙「へい!らっしゃいらっしゃい!マッチが安いよー!」
少女は威勢良く、マッチを売り始めました。
魔理沙「おう、そこの猫な人。マッチはいらないか?今なら非常にお得だよ。さあ、買った買った!」
橙「猫舌だから、いらない。」
マッチはやっぱり売れませんでした。
魔理沙「仕方ねえな・・・・・。」
少女は街を行く人を物色し始めました。
そして、ターゲットを定めると、声をかけました。
魔理沙「おう、そこのお嬢さん。マッチはいらないか?」
レミリア「え?」
魔理沙「今なら大変お得だぜ。買わなきゃ一生損するぜ。」
レミリア「いや、マッチなんかなくても、魔法があるから・・・・。」
魔理沙「つべこべ言ってないで、買えっつってんだ!!」
レミリア「きゃっ・・・・。誰か~!!」
魔理沙「へへ、助けなんて来ないぜ。さあ、大人しくマッチを・・・・。」
チャ・・・・
そのとき、少女の後ろに誰かが現れました。
その誰かは、少女の首元にナイフを突きつけてます。
魔理沙「・・・・・・・よう。」
咲夜「うちのお嬢様に押し売りとはね。褒めてあげるわ、その度胸。」
レミリア「あ~、ちょっと怖かった。」
魔理沙「その度胸に免じて、マッチを買ってくれ。」
咲夜「そうね。買ってあげるわ。」
魔理沙「へへ、毎度。それで御代のほうは・・・・。」
咲夜「刑務所のまずいご飯なんて、どうかしら?」
魔理沙「それは遠慮したいぜ。」
咲夜「・・・・・遅かったみたいよ。」
警察がやってきました。
どうやら、ナイフを持った人が予め通報していたようです。
レミリア「あ、おまわりさん。こっちこっち。」
妖夢「あなたを脅迫したっていう人は?」
レミリア「こっちの黒いほう。」
妖夢「わかりました。」
咲夜「後はまかせてもいいかしら?」
妖夢「どうぞ。後はこっちで何とかしますから。」
少女の首元のナイフは収められました。
代わりに首元には刀がそえられました。
妖夢「それじゃ、介錯つかまつる。」
魔理沙「おいおい、いきなり斬首か?」
妖夢「切腹のほうがいい?それだったら、うちの屋敷・・・、もとい刑務所でやることになるけど・・・・。」
魔理沙「いや、いい。」
妖夢「そう。それじゃ、覚悟!」
魔理沙「待て待て!」
妖夢「往生際が悪いわね。何よ。」
魔理沙「せめて、辞世の句ぐらい詠ませてくれ。」
妖夢「う~ん。まあ、いいか。それくらいなら。」
魔理沙「恩にきるぜ。」
少女は懐から一枚の紙を取り出しました。
妖夢「それでは、辞世の句をどうぞ。」
魔理沙「おう。じっくり聞いてくれ。」
そして少女は、紙に書いてあることを詠みました。
魔理沙「恋符『ノンディレクショナルレーザー』」
妖夢「え・・・・・?」
バババババババ・・・・・・・・・
少女から放たれた光は、周りの建物ごとおまわりさんを吹き飛ばしてしまいました。
魔理沙「よし!今のうちに・・・・・。」
少女はその場から逃亡しました。
妖夢「うぐぐ・・・・。無念・・・・。(がくっ)」
おまわりさんは、力尽きました。
・
・
・
魔理沙「・・・・・・と、いうわけだぜ。」
魅魔「マッチはただで盗られたと。」
魔理沙「まあな。」
魅魔「まあな、じゃないわよ。」
魔理沙「仕方ないじゃないか。このご時世、マッチなんか売れるはずがないだろ。」
魅魔「うーん。昔は売れたんだけどねえ・・・。」
魔理沙「どのくらい昔だよ?」
魅魔「こうなったら、仕方がない。」
魔理沙「唐突にどうした?諦めるのか?」
魅魔「あんたが保管しているコレクションを、売る。」
魔理沙「魅魔さ、お母さん!それだけは勘弁してくれ。」
魅魔「だって、これじゃあクリスマスで騒ぐなんて、とてもとても・・・・・。」
魔理沙「そんなこと言ったって・・・・。」
魅魔「わかった。百歩譲って、あんたが実験で作った数々の妖しげな薬。あれを売りなさい。」
魔理沙「あれをか?どんな効果が出るか、わからないものばっかりなんだが・・・・。」
魅魔「いいじゃない。困るのは買った人たちだけだから。」
魔理沙「・・・・・それもそうだな。」
魅魔「じゃ、行って来て。」
魔理沙「了解。」
少女はマッチの代わりに、薬を持って出かけました。
魅魔「あ、そうだ。」
魔理沙「どうした?お母さん。」
魅魔「今度売れなかったら、本当にコレクション売るからね。」
魔理沙「誰が買うっていうんだ?」
魅魔「あんたと同じ、コレクターよ。」
魔理沙「・・・・・・あいつか。」
魅魔「わかったら、気合入れて売ってきなさい。全部売れるまで帰ってきちゃだめよ。」
魔理沙「わかったよ。」
金髪碧眼な人形使いの顔を思い出しながら、少女は三度街へ出てきました。
魔理沙「くすり~、くすりはいらんかね~。」
少女は薬を売り始めました。
魔理沙「あ~、これこれ、そこの黒いのと白いのと赤いの。薬はいらんかね?」
ルナサ「リリカがまともになる薬下さい。」
メルラン「姉さんがニヤニヤ笑えれるようになる薬下さい。」
リリカ「メルラン姉さんが暴走しそうな薬ちょうだい~。」
魔理沙「はいよ。」
少女は薬をお客さんに渡しました。
メルラン「じゃ、姉さん、これ飲んで。」
ルナサ「いや。」
リリカ「物は試しよ。」
ルナサ「そう言って、私に毒味させる気ね?」
リリカ「ちがうよ~。私はただ、姉さんの笑う顔が見たくて・・・・・。(うるうる・・・。)」
メルラン「私も、姉さんにクリスマスプレゼントにと思って・・・・・・。(うるうる・・・。)」
ルナサ「・・・・・メルラン、口が笑ってる。」
メルラン「ひどい!姉さんはもう、私達を愛してないのね!」
リリカ「ひどい~!姉さんは私達を見捨てたのね・・・・。しくしく・・・・。」
メルラン「しくしく・・・・・。」
リリカ「しくしく・・・・・。」
ルナサ「・・・・ご、ごめん。言い過ぎた、かも・・・・・。」
メルラン「じゃあクリスマスプレゼント、受け取ってくれる?」
ルナサ「う・・・・。わ、わかった。」
リリカ「わ~い。さすが、私達の姉さんね。」
ルナサ「く・・・・・。それじゃ、飲むね・・・・。」
一番上のお姉さんらしい人は、薬を飲みました。
ゴクッ
ルナサ「・・・・・・・・・。」
メルラン「どう?」
リリカ「どう?」
魔理沙「どうだ?」
メルラン「どうだって、あなたが作った薬じゃないの?」
魔理沙「ああ、私が作ったぜ。ただし、試作品。」
リリカ「臨床実験ね~。」
魔理沙「まあ、そういうところだ。」
ルナサ「・・・・・・あは。」
魔理沙「!」
メルラン「姉さんが・・・・・・。」
リリカ「笑った・・・・・・・。」
ルナサ「あは、あははははは。」
魔理沙「どうやら、成功してたみたいだな。」
メルラン「これで演奏隊も、さらに明るく楽しくね。」
リリカ「よかったよかった。」
ルナサ「あ、あはは。あははははははは・・・・・・!」
リリカ「あ、姉さん。」
メルラン「何処行くの?」
お姉さんは笑いながら、大通りの方へ走っていきました。
そして持っていたヴァイオリンで、そのへんの人を手当たり次第殴り始めました。
ルナサ「あはははははは!あ~はははははは!」
ルーミア「いたいいたい!なにするのよ、黒いの!」
ルナサ「きゃ~はははははは!」
パコーン!
ルーミア「きゅう・・・・・・。」
ルナサ「あ~ははははは!あ~っはっはっはっはっは!」」
お姉さんは、暴走してしまいました。
メルラン「姉さん、楽しそう・・・。」
リリカ「よかったね~。」
魔理沙「冷静に見てるんじゃねえよ!何とかできないのか!?」
メルラン「警察がいるでしょ?まかせる。」
リリカ「私達は、あんまり警察には関わりたくないから~。」
魔理沙「あ~、その、なんと言うか・・・・・。」
メルラン「どうしたの。」
魔理沙「警察は、きっと来ないぜ。私が殺ったからな。」
リリカ「なんで、やっつけちゃったの?」
魔理沙「まあ、話せば長くなるが・・・・・。」
ルナサ「あ~ははははははは!ひゃ~はははははは!」
魔理沙「!!」
何時の間にかお姉さんは、空中にいました。
そして、ヴァイオリンの演奏をし始めました。
魔理沙「近所迷惑もいいところだぜ。」
リリカ「あ、でもこの旋律って・・・・。」
メルラン「そうね。あれだわ。」
魔理沙「あれって?」
メルラン「スードストラディヴァリウス。」
魔理沙「なんだって!?」
ドカーン!
ドカーン!
ルナサ「きゃーははははは!あ~っはっはっはっはっは!」
突然爆音が響き渡りました。
見ると、建物が半壊しています。
ドカーン!
ルナサ「あ~っはっはっはっはっは!」
ドカーン!
暴走したお姉さんは、破壊の限りを尽くしています。
その光景は、まさに地獄絵図。
聖なる日に舞い降りた、黒い悪魔。そんな感じです。
クリスマスで浮かれていた人々は、ただ逃げ惑うしかありませんでした。
魔理沙「おい!あんたら、あれを何とかできないのか?」
メルラン「何とかって言ったって。」
リリカ「ね~。」
魔理沙「止めろって言ってるんだ。」
メルラン「しかたないわね。行くわよ。」
リリカ「がんばってね~。」
メルラン「あんたも来なさい。」
リリカ「え~・・・・。」
メルラン「クリスマスケーキ、一個多くあげるから。」
リリカ「それじゃ、行きましょう!」
妹さんたちは、お姉さんを止めに行きました。
ルナサ「きゃ~ははははは!あ~っはっはっはっはっは!!」
リリカ「ねえさ~ん。」
ルナサ「きゃは?」
メルラン「いいものあげる。」
ルナサ「あは!あははははは。」
お姉さんはうれしそうです。
リリカ「姉さん、いい?」
メルラン「いいわよ。」
リリカ「せ~の・・・・・。」
パコ~ン!
ルナサ「あは・・・・・・・・・。」
ひゅ~ん・・・・・・・
ドサッ
妹さんたちは持っていた楽器で、お姉さんを思いっきりぶん殴りました。
お姉さんは気絶して、地上に落ちてきました。
リリカ「見事、撃墜~。」
メルラン「それじゃ、姉さん持って帰りましょ。」
妹さんたちも地上に降りてきました。
そして、お姉さんを回収しました。
メルラン「それじゃ、お騒がせしました。」
リリカ「しました~。」
魔理沙「ああ。随分騒がしかったぜ。」
メルラン「そうだ。薬のお代は?」
魔理沙「いいもん見せてもらったからな。お代は結構。」
メルラン「そう?」
リリカ「太っ腹だね~。」
メルラン「それじゃ、さようなら。」
こうしてお客さんたちは、去っていきました。
魔理沙「きっと、暴走する薬飲んだんだな・・・・・。」
少女はそう思いながら、再び薬を売り始めました。
魔理沙「あ~、くすり~、くすりはいらんかね~・・・・・。って、おい。」
見ると、街には誰一人としていません。
魔理沙「まあ、あんなことの後じゃあ、なあ・・・・・。」
辺りには建物の残骸や割れたガラスなどが敷き詰められています。
魔理沙「まいった・・・・。これじゃ、薬が売れないじゃないか。」
少女は途方にくれてしまいました。
お母さんの命令で、薬を全部売るまでは家に帰れないのです。
少女は、廃墟と化した街を歩きました。
魔理沙「くすり~、くすり~・・・・。誰もいないか。」
しかし街に誰もいない以上、薬は売れません。
ついに少女は、その場にへたりこんでしまいました。
魔理沙「あ~、疲れたぜ。」
少女は、寒い寒いと思いつつも、これからどうしたらいいのかを考えました。
そして、一つ思いつきました。
魔理沙「・・・・確か、頭が冴える薬、無かったか?」
そんな気がしたので、少女は薬を一つ取り出すと、それを飲み干しました。
頭が冴えれば何かアイデアが浮かぶ、そう思ったからです。
ゴクッ
魔理沙「・・・・・・・・・・あ。」
少女の身に、何か起こりました。
魔理沙「あ~、暖かいぜ。やっぱ部屋の床暖房は温泉に限るな。」
ちなみに、ここは外です。
少女はどうやら、幻覚を見ているようです。
魔理沙「お~、霊夢か。どうした?」
ちなみに、誰もいません。
やっぱり少女は、幻覚を見ているようです。
魔理沙「そーかそーか。やっぱりあんたは、私がいないと何にも出来ないんだな・・・・・。」
少女は誤って、そういう薬を飲んだようです。
魔理沙「うふ、うふ、うふふふふふふ・・・・・・。」
最早、何が見えているのわからないくらいトリップしてしまったようです。
こうして少女は幻覚を見ながら、クリスマスの夜を過ごしました。
・
・
・
翌日、通りには人が集まっていました。
そこには、氷付けになった、あの少女がいました。
その近くで、街娘がおまわりさんから尋問を受けています。
妖夢「なるほど。それであなたは、うっかり氷付けにしちゃったと。」
チルノ「だって、怖かったんだもん。うふ、うふ、とか笑って・・・・。」
妖夢「まあ、気持ちは分かるけど。」
チルノ「それで私、逮捕されるの・・・・・?」
妖夢「そうね・・・・・。」
街娘は不安そうな顔で、おまわりさんを見ます。
そしておまわりさんが口を開きました。
妖夢「無罪。」
チルノ「え?」
妖夢「無罪よ。」
チルノ「何で?」
妖夢「いや、むしろよくやったと言うべきね。」
チルノ「どういうこと?」
妖夢「昨晩街を破壊したテロリストは、黒いやつっていう目撃情報が入っててね。」
チルノ「それで?」
妖夢「私はその犯人が、これじゃないかと思ってる。」
チルノ「そうなの?」
妖夢「いや、間違いなくこれね。」
チルノ「ふーん。」
妖夢「何にせよあなたは無罪放免。後でうちに来なさい。お礼がしたいから。」
街娘は釈放されました。
おまわりさんは、氷付けになった少女を、刑務所へと運びました。
妖夢「昨日の恨みも、これで晴れたわ。」
こうして薬売りの少女に変貌したマッチ売りの少女は、氷付けにされたまま刑務所の牢屋に入れられてしまいましたとさ。
おしまい
キャスト
マッチ売りの少女 霧雨 魔理沙
お母さん 魅魔
通りすがりの人達 レティ・ホワイトロック、橙
押し売りの被害者 レミリア・スカーレット
ナイフを持った人 十六夜 咲夜
おまわりさん 魂魄 妖夢
薬を買ったお客さん プリズムリバー三姉妹
ぶん殴られた人 ルーミア
街娘 チルノ
街は今、クリスマスで賑わっています。
そのため街には色々な装飾が施され、たいへん綺麗でした。
そんな中、この賑わいや絢爛さに不釣合いな、みすぼらしい格好の一人の少女がいました。
魔理沙「マッチいりませんか?マッチ買ってください。」
少女は、マッチを売っているようです。
魔理沙「マッチいりませんか?」
レティ「溶けるから、いらない。」
街を歩く人は、少女のマッチを買おうとはしませんでした。
魔理沙「ああ、寒いったらありゃしないぜ。」
少女はマッチが売れないので、つらい思いをしていました。
魔理沙「・・・・・一回、家に帰るとするか。」
仕方なく少女は、家に帰ることにしました。
魔理沙「大体、季節外れもいいとこだぜ。」
・
・
・
魅魔「何やってるのよ。マッチ、全然売れてないじゃない。」
魔理沙「魅魔様、無茶言うなって。そもそも、こんなもん売れるはずないだろ?」
魅魔「お母さんって呼びなさい。」
魔理沙「わかったよ。お母さん。」
魅魔「で、あんたは一体どういう売りかたしてたの?」
魔理沙「マッチいりませんかー、って感じで。」
魅魔「・・・・・・甘い。」
魔理沙「甘いか?」
魅魔「そうね。紅魔館のケーキより甘いわ。」
魔理沙「食ったことあるのかよ?」
魅魔「ないわ。そんなことより、物を売るなら押しが大切なのよ。」
魔理沙「押しか・・・・。」
魅魔「そう。『買ってください』じゃなくて『買え!』ぐらいの勢いが必要ね。」
魔理沙「そうか。わかったぜ。お母さん。」
魅魔「わかったら、さっさと売ってきなさい。売れ行き次第でクリスマスの過ごし方がきまるからね。」
魔理沙「了解。」
少女はお母さんからのアドバイスを受け、マッチを持って再び街へむかいました。
魔理沙「へい!らっしゃいらっしゃい!マッチが安いよー!」
少女は威勢良く、マッチを売り始めました。
魔理沙「おう、そこの猫な人。マッチはいらないか?今なら非常にお得だよ。さあ、買った買った!」
橙「猫舌だから、いらない。」
マッチはやっぱり売れませんでした。
魔理沙「仕方ねえな・・・・・。」
少女は街を行く人を物色し始めました。
そして、ターゲットを定めると、声をかけました。
魔理沙「おう、そこのお嬢さん。マッチはいらないか?」
レミリア「え?」
魔理沙「今なら大変お得だぜ。買わなきゃ一生損するぜ。」
レミリア「いや、マッチなんかなくても、魔法があるから・・・・。」
魔理沙「つべこべ言ってないで、買えっつってんだ!!」
レミリア「きゃっ・・・・。誰か~!!」
魔理沙「へへ、助けなんて来ないぜ。さあ、大人しくマッチを・・・・。」
チャ・・・・
そのとき、少女の後ろに誰かが現れました。
その誰かは、少女の首元にナイフを突きつけてます。
魔理沙「・・・・・・・よう。」
咲夜「うちのお嬢様に押し売りとはね。褒めてあげるわ、その度胸。」
レミリア「あ~、ちょっと怖かった。」
魔理沙「その度胸に免じて、マッチを買ってくれ。」
咲夜「そうね。買ってあげるわ。」
魔理沙「へへ、毎度。それで御代のほうは・・・・。」
咲夜「刑務所のまずいご飯なんて、どうかしら?」
魔理沙「それは遠慮したいぜ。」
咲夜「・・・・・遅かったみたいよ。」
警察がやってきました。
どうやら、ナイフを持った人が予め通報していたようです。
レミリア「あ、おまわりさん。こっちこっち。」
妖夢「あなたを脅迫したっていう人は?」
レミリア「こっちの黒いほう。」
妖夢「わかりました。」
咲夜「後はまかせてもいいかしら?」
妖夢「どうぞ。後はこっちで何とかしますから。」
少女の首元のナイフは収められました。
代わりに首元には刀がそえられました。
妖夢「それじゃ、介錯つかまつる。」
魔理沙「おいおい、いきなり斬首か?」
妖夢「切腹のほうがいい?それだったら、うちの屋敷・・・、もとい刑務所でやることになるけど・・・・。」
魔理沙「いや、いい。」
妖夢「そう。それじゃ、覚悟!」
魔理沙「待て待て!」
妖夢「往生際が悪いわね。何よ。」
魔理沙「せめて、辞世の句ぐらい詠ませてくれ。」
妖夢「う~ん。まあ、いいか。それくらいなら。」
魔理沙「恩にきるぜ。」
少女は懐から一枚の紙を取り出しました。
妖夢「それでは、辞世の句をどうぞ。」
魔理沙「おう。じっくり聞いてくれ。」
そして少女は、紙に書いてあることを詠みました。
魔理沙「恋符『ノンディレクショナルレーザー』」
妖夢「え・・・・・?」
バババババババ・・・・・・・・・
少女から放たれた光は、周りの建物ごとおまわりさんを吹き飛ばしてしまいました。
魔理沙「よし!今のうちに・・・・・。」
少女はその場から逃亡しました。
妖夢「うぐぐ・・・・。無念・・・・。(がくっ)」
おまわりさんは、力尽きました。
・
・
・
魔理沙「・・・・・・と、いうわけだぜ。」
魅魔「マッチはただで盗られたと。」
魔理沙「まあな。」
魅魔「まあな、じゃないわよ。」
魔理沙「仕方ないじゃないか。このご時世、マッチなんか売れるはずがないだろ。」
魅魔「うーん。昔は売れたんだけどねえ・・・。」
魔理沙「どのくらい昔だよ?」
魅魔「こうなったら、仕方がない。」
魔理沙「唐突にどうした?諦めるのか?」
魅魔「あんたが保管しているコレクションを、売る。」
魔理沙「魅魔さ、お母さん!それだけは勘弁してくれ。」
魅魔「だって、これじゃあクリスマスで騒ぐなんて、とてもとても・・・・・。」
魔理沙「そんなこと言ったって・・・・。」
魅魔「わかった。百歩譲って、あんたが実験で作った数々の妖しげな薬。あれを売りなさい。」
魔理沙「あれをか?どんな効果が出るか、わからないものばっかりなんだが・・・・。」
魅魔「いいじゃない。困るのは買った人たちだけだから。」
魔理沙「・・・・・それもそうだな。」
魅魔「じゃ、行って来て。」
魔理沙「了解。」
少女はマッチの代わりに、薬を持って出かけました。
魅魔「あ、そうだ。」
魔理沙「どうした?お母さん。」
魅魔「今度売れなかったら、本当にコレクション売るからね。」
魔理沙「誰が買うっていうんだ?」
魅魔「あんたと同じ、コレクターよ。」
魔理沙「・・・・・・あいつか。」
魅魔「わかったら、気合入れて売ってきなさい。全部売れるまで帰ってきちゃだめよ。」
魔理沙「わかったよ。」
金髪碧眼な人形使いの顔を思い出しながら、少女は三度街へ出てきました。
魔理沙「くすり~、くすりはいらんかね~。」
少女は薬を売り始めました。
魔理沙「あ~、これこれ、そこの黒いのと白いのと赤いの。薬はいらんかね?」
ルナサ「リリカがまともになる薬下さい。」
メルラン「姉さんがニヤニヤ笑えれるようになる薬下さい。」
リリカ「メルラン姉さんが暴走しそうな薬ちょうだい~。」
魔理沙「はいよ。」
少女は薬をお客さんに渡しました。
メルラン「じゃ、姉さん、これ飲んで。」
ルナサ「いや。」
リリカ「物は試しよ。」
ルナサ「そう言って、私に毒味させる気ね?」
リリカ「ちがうよ~。私はただ、姉さんの笑う顔が見たくて・・・・・。(うるうる・・・。)」
メルラン「私も、姉さんにクリスマスプレゼントにと思って・・・・・・。(うるうる・・・。)」
ルナサ「・・・・・メルラン、口が笑ってる。」
メルラン「ひどい!姉さんはもう、私達を愛してないのね!」
リリカ「ひどい~!姉さんは私達を見捨てたのね・・・・。しくしく・・・・。」
メルラン「しくしく・・・・・。」
リリカ「しくしく・・・・・。」
ルナサ「・・・・ご、ごめん。言い過ぎた、かも・・・・・。」
メルラン「じゃあクリスマスプレゼント、受け取ってくれる?」
ルナサ「う・・・・。わ、わかった。」
リリカ「わ~い。さすが、私達の姉さんね。」
ルナサ「く・・・・・。それじゃ、飲むね・・・・。」
一番上のお姉さんらしい人は、薬を飲みました。
ゴクッ
ルナサ「・・・・・・・・・。」
メルラン「どう?」
リリカ「どう?」
魔理沙「どうだ?」
メルラン「どうだって、あなたが作った薬じゃないの?」
魔理沙「ああ、私が作ったぜ。ただし、試作品。」
リリカ「臨床実験ね~。」
魔理沙「まあ、そういうところだ。」
ルナサ「・・・・・・あは。」
魔理沙「!」
メルラン「姉さんが・・・・・・。」
リリカ「笑った・・・・・・・。」
ルナサ「あは、あははははは。」
魔理沙「どうやら、成功してたみたいだな。」
メルラン「これで演奏隊も、さらに明るく楽しくね。」
リリカ「よかったよかった。」
ルナサ「あ、あはは。あははははははは・・・・・・!」
リリカ「あ、姉さん。」
メルラン「何処行くの?」
お姉さんは笑いながら、大通りの方へ走っていきました。
そして持っていたヴァイオリンで、そのへんの人を手当たり次第殴り始めました。
ルナサ「あはははははは!あ~はははははは!」
ルーミア「いたいいたい!なにするのよ、黒いの!」
ルナサ「きゃ~はははははは!」
パコーン!
ルーミア「きゅう・・・・・・。」
ルナサ「あ~ははははは!あ~っはっはっはっはっは!」」
お姉さんは、暴走してしまいました。
メルラン「姉さん、楽しそう・・・。」
リリカ「よかったね~。」
魔理沙「冷静に見てるんじゃねえよ!何とかできないのか!?」
メルラン「警察がいるでしょ?まかせる。」
リリカ「私達は、あんまり警察には関わりたくないから~。」
魔理沙「あ~、その、なんと言うか・・・・・。」
メルラン「どうしたの。」
魔理沙「警察は、きっと来ないぜ。私が殺ったからな。」
リリカ「なんで、やっつけちゃったの?」
魔理沙「まあ、話せば長くなるが・・・・・。」
ルナサ「あ~ははははははは!ひゃ~はははははは!」
魔理沙「!!」
何時の間にかお姉さんは、空中にいました。
そして、ヴァイオリンの演奏をし始めました。
魔理沙「近所迷惑もいいところだぜ。」
リリカ「あ、でもこの旋律って・・・・。」
メルラン「そうね。あれだわ。」
魔理沙「あれって?」
メルラン「スードストラディヴァリウス。」
魔理沙「なんだって!?」
ドカーン!
ドカーン!
ルナサ「きゃーははははは!あ~っはっはっはっはっは!」
突然爆音が響き渡りました。
見ると、建物が半壊しています。
ドカーン!
ルナサ「あ~っはっはっはっはっは!」
ドカーン!
暴走したお姉さんは、破壊の限りを尽くしています。
その光景は、まさに地獄絵図。
聖なる日に舞い降りた、黒い悪魔。そんな感じです。
クリスマスで浮かれていた人々は、ただ逃げ惑うしかありませんでした。
魔理沙「おい!あんたら、あれを何とかできないのか?」
メルラン「何とかって言ったって。」
リリカ「ね~。」
魔理沙「止めろって言ってるんだ。」
メルラン「しかたないわね。行くわよ。」
リリカ「がんばってね~。」
メルラン「あんたも来なさい。」
リリカ「え~・・・・。」
メルラン「クリスマスケーキ、一個多くあげるから。」
リリカ「それじゃ、行きましょう!」
妹さんたちは、お姉さんを止めに行きました。
ルナサ「きゃ~ははははは!あ~っはっはっはっはっは!!」
リリカ「ねえさ~ん。」
ルナサ「きゃは?」
メルラン「いいものあげる。」
ルナサ「あは!あははははは。」
お姉さんはうれしそうです。
リリカ「姉さん、いい?」
メルラン「いいわよ。」
リリカ「せ~の・・・・・。」
パコ~ン!
ルナサ「あは・・・・・・・・・。」
ひゅ~ん・・・・・・・
ドサッ
妹さんたちは持っていた楽器で、お姉さんを思いっきりぶん殴りました。
お姉さんは気絶して、地上に落ちてきました。
リリカ「見事、撃墜~。」
メルラン「それじゃ、姉さん持って帰りましょ。」
妹さんたちも地上に降りてきました。
そして、お姉さんを回収しました。
メルラン「それじゃ、お騒がせしました。」
リリカ「しました~。」
魔理沙「ああ。随分騒がしかったぜ。」
メルラン「そうだ。薬のお代は?」
魔理沙「いいもん見せてもらったからな。お代は結構。」
メルラン「そう?」
リリカ「太っ腹だね~。」
メルラン「それじゃ、さようなら。」
こうしてお客さんたちは、去っていきました。
魔理沙「きっと、暴走する薬飲んだんだな・・・・・。」
少女はそう思いながら、再び薬を売り始めました。
魔理沙「あ~、くすり~、くすりはいらんかね~・・・・・。って、おい。」
見ると、街には誰一人としていません。
魔理沙「まあ、あんなことの後じゃあ、なあ・・・・・。」
辺りには建物の残骸や割れたガラスなどが敷き詰められています。
魔理沙「まいった・・・・。これじゃ、薬が売れないじゃないか。」
少女は途方にくれてしまいました。
お母さんの命令で、薬を全部売るまでは家に帰れないのです。
少女は、廃墟と化した街を歩きました。
魔理沙「くすり~、くすり~・・・・。誰もいないか。」
しかし街に誰もいない以上、薬は売れません。
ついに少女は、その場にへたりこんでしまいました。
魔理沙「あ~、疲れたぜ。」
少女は、寒い寒いと思いつつも、これからどうしたらいいのかを考えました。
そして、一つ思いつきました。
魔理沙「・・・・確か、頭が冴える薬、無かったか?」
そんな気がしたので、少女は薬を一つ取り出すと、それを飲み干しました。
頭が冴えれば何かアイデアが浮かぶ、そう思ったからです。
ゴクッ
魔理沙「・・・・・・・・・・あ。」
少女の身に、何か起こりました。
魔理沙「あ~、暖かいぜ。やっぱ部屋の床暖房は温泉に限るな。」
ちなみに、ここは外です。
少女はどうやら、幻覚を見ているようです。
魔理沙「お~、霊夢か。どうした?」
ちなみに、誰もいません。
やっぱり少女は、幻覚を見ているようです。
魔理沙「そーかそーか。やっぱりあんたは、私がいないと何にも出来ないんだな・・・・・。」
少女は誤って、そういう薬を飲んだようです。
魔理沙「うふ、うふ、うふふふふふふ・・・・・・。」
最早、何が見えているのわからないくらいトリップしてしまったようです。
こうして少女は幻覚を見ながら、クリスマスの夜を過ごしました。
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翌日、通りには人が集まっていました。
そこには、氷付けになった、あの少女がいました。
その近くで、街娘がおまわりさんから尋問を受けています。
妖夢「なるほど。それであなたは、うっかり氷付けにしちゃったと。」
チルノ「だって、怖かったんだもん。うふ、うふ、とか笑って・・・・。」
妖夢「まあ、気持ちは分かるけど。」
チルノ「それで私、逮捕されるの・・・・・?」
妖夢「そうね・・・・・。」
街娘は不安そうな顔で、おまわりさんを見ます。
そしておまわりさんが口を開きました。
妖夢「無罪。」
チルノ「え?」
妖夢「無罪よ。」
チルノ「何で?」
妖夢「いや、むしろよくやったと言うべきね。」
チルノ「どういうこと?」
妖夢「昨晩街を破壊したテロリストは、黒いやつっていう目撃情報が入っててね。」
チルノ「それで?」
妖夢「私はその犯人が、これじゃないかと思ってる。」
チルノ「そうなの?」
妖夢「いや、間違いなくこれね。」
チルノ「ふーん。」
妖夢「何にせよあなたは無罪放免。後でうちに来なさい。お礼がしたいから。」
街娘は釈放されました。
おまわりさんは、氷付けになった少女を、刑務所へと運びました。
妖夢「昨日の恨みも、これで晴れたわ。」
こうして薬売りの少女に変貌したマッチ売りの少女は、氷付けにされたまま刑務所の牢屋に入れられてしまいましたとさ。
おしまい
キャスト
マッチ売りの少女 霧雨 魔理沙
お母さん 魅魔
通りすがりの人達 レティ・ホワイトロック、橙
押し売りの被害者 レミリア・スカーレット
ナイフを持った人 十六夜 咲夜
おまわりさん 魂魄 妖夢
薬を買ったお客さん プリズムリバー三姉妹
ぶん殴られた人 ルーミア
街娘 チルノ