とある夏のお昼時。霧の湖に屋台が一つ。
直射日光こそ漂う霧で和らいでいるものの、10割に達するだろう湿度が不快指数を押し上げている。
私ことリグルナイトバグは、上着の袖とズボン丈を切り詰める事でそれに対抗しているものの、圧倒的劣勢。クソジメ暑い。
そんな不快指数満天の空間に、チルノの不満気な声が響き渡る。
「ミスティアが言ったんじゃん。夏の新メニューのアイデア考えてってさァ」
「何でも良い、とも言ってたよねー」
ルーミアも続いて言葉を吐く。
それが確認なのか抗議なのかはイマイチわからないけど、確かにみすちーはそう言っていた。
カウンターに立つみすちーの前にあるのは、新メニューの試作品。
「ああ、言ったわよ。夏を連想するクールなメニューをヨロシクね、ってさ」
夏といえば青い空、白い雲、降り注ぐ蝉しぐれ、スイカと麦茶と麦わら帽子―――。
「それがなんで、鍋って発想になるんだよ!」
―――そして、赤より紅い坦々鍋。
▽
「氷精ちゃんさぁ。クソ暑い中メシ食いに来て、『鍋始めました』って暖簾が掛かってるの見たら、店主のコトどう思うよ」
「アホかって思う」
「じゃあなんで提案したの」
「店主がミスティアだから」
「誰かッ! 誰かコイツに火を!」
「みすちー落ち着いて」
青筋を浮かべて暴れるみすちーを嗜める。
ただでさえ暑いんだからエキサイトしないで欲しい。
「でもさみすちー。別に作る必要は無かったんじゃないの?」
「まあ、それもそうね……あれ、私何で作ったんだろ……?」
本気で頭を捻るみすちーにため息が止まらない。彼女の忘れ癖には困ったもんだ。
こないだだって、別の新作の試食に呼ばれていったら。
『私こんなの作ったっけ? 何これ怖ッ。近寄らんとこ』
相手と現物を見ても思い出さないんだから性質が悪い。
結局、ハイキックとローリングソバットを一発ずつで思い出してくれた。今回はどうだろう。
「記憶の、スイッチは、ここかなっ?」
「痛い痛い! お尻は止めてお尻……思い出した!」
「理由はなんだった?」
「ヒマだったから」
どうやら、とび蹴り解禁のようです。
「脚が鳴るね」
「ままま待って。過程は関係ないわ。最後にどうなったかが重要なの」
「クソ暑いのに鍋パになったんですけど!」
しかも坦々鍋て。殺意しか感じられないチョイスだ。
「あー最近耳掃除してないからなー。リグルの美声がイマイチ聞こえないなー残念だナー」
「じゃあシてあげるから、おいで」
「……その手の箸で?」
「最後に聞きたい音があれば」
「土下座させてください」
最初っからそう言えばいいのだ。
「いやーしかし辛そうだねーこれ」
ルーミアがカウンターに座り、箸を構えた。
え、まさか食べるつもり?
「や、やめといたほうがいいんじゃ」
「一口位食べとかないと、食いしん坊キャラの名が廃るからねー」
小さな口をいっぱいに開け、肉と野菜を口に放り込む。彼女が咀嚼するたびに、柔らかそうな頬が豪快に揺れ動く。
相変わらず良い食べっぷりだ。見ているだけでお腹が減ってきそう。
「どお?」
「……何で今は冬じゃないんだろう」
「ホントそれね。はい、お水」
「ありがとー」
「タオルもいかが~」
みすちーが濡れタオルを放って寄越す。
一瞬で水を飲み干したルーミアがそれを空中でキャッチ。畳む間も惜しいと言わんばかりに、そのまま顔に押し当てた。
「むおー、きもちいー。ぶいぶいぶい」
「何それ?」
「エクステンドの音ー。あー辛かった」
「ルーミアで辛いなら、あたいらじゃ火ィ吹くね」
「ちょっと辛くし過ぎたかなぁ」
4人の中で辛味耐性が一番強いのはルーミアだ。
体質とかじゃなくて、手当たり次第食べてるうちに強くなったんだと思う。
「てかさ、やっぱミスティアが食べるべきでしょ」
「え、なんで」
「作ったのあんたじゃん。ヒマだとか言ってさ。バカなんじゃないの」
「提案したのは氷精ちゃんでしょうが、こんな時期に鍋とかさぁ。ナニ考えてんのってゆー」
「「お?」」
互いに歩み寄り一触即発。早いよ、早すぎるよ喧嘩腰。
ガンを飛ばしあう二人の表情は少なくとも、フリルやリボンを纏った少女がしていい表情では無い。
「チョーシくれてっとシメちゃうよ? 妖精さんよォ」
「ジョートーだよチン公が! 名古屋コーチンと一緒に冷凍保存してくれるわ!」
「「ああッ!?」」
あーもう、どうしたもんかね。
チルノはともかく、みすちーもああ見えて喧嘩っ早いところがあるからなぁ。
「まーまー落ち着いて、落ち着いて」
「ちょっとルーミア!」
「止めないでよ!」
ルーミアが仲裁に入るなんて珍しい。何か秘策でもあるのかな。
「誰もやめろとは言ってないよー」
えっ。
「スペルカードセット!」
「「2枚!」」
「レッツロール!!」
「ちょいちょいちょい」
掛け声とともに妖弾と氷弾が乱れ舞う。溜まり場が戦域に早変わりだ。
弾雨が降り注ぐ中、全速力で元凶の元へ向かった。
「もー、見境ないんだから! ねえどうして煽ったのさ」
「殴り合いよかマシかなぁって」
「そりゃまあ、確かに……」
いかに頑丈な妖怪妖精といえど、拳で顔面を打ち抜いたら痛々しい事になる。
弾幕ごっこに誘導した方が、確かに賢い。
その誘導された二人は、湖の上で弾幕ごっこの真っ最中だ。
戦況はチルノの優勢。地の利に加え、昼間という時間帯がみすちーの手札の大半を禁じてしまっているからだ。
「それに『あの二人で』『弾幕ごっこで』食べる人を決めるワケだからー」
「……私とルーミアはもう対象外で、後で文句も言えない?」
「Exactly(そーなのさー)」
「黒いヤツ」
「よく言われるー」
と、そんな事を話しているうちに弾幕は早くもクライマックス。
チルノがヒューマンケージを突破し、カードを抜き打つ。
「妖精にソレが効くかっての! 氷符『アイシクルマシンガン』!」
「ぎゃー!」
小ツララの群れがみすちーに殺到。
羨むべきか否か。氷まみれになったみすちーは失速し、そのまま湖に水没した。
「あたいってばマジ最強」
「おめでとー」
陸に戻り、勝利のポーズをキメるチルノの背後でド派手な水音。
水も滴る良いスズメとなったみすちーが、のっそりと上陸を果たした。
「みすちー大丈……何そのフクザツそうな顔」
「その、なんだ。喰らった氷は冷たいし、不本意とはいえ水浴び出来たしで……」
「湖はともかく、氷柱が当たった一瞬でそこまで冷えるもんなの?」
「アレよ、藁縋的な」
痛いだけだと思うけどなぁ。あるいは目覚めてしまったのか。
「とりあえず。はい、お鍋」
上着を脱いで水を絞るみすちーに、元凶をつきつける。
負けた以上、その責は果たしてもらわないと。
「え、なに?」
「何不思議そうな顔してんのよ。負けたんだからセキニン取りなさいよね!」
「さーさー。お箸を取って、取り皿持ってー」
「その、なんだ。小骨は拾ってあげるから」
赤い鍋。止まらない汗。降り注ぐ夏の光。
それでもみすちーは食べねばならない。敗者に権利は存在しないのだ。
「あ、あの」
「「「なにかね?」」」
「いや、その……い、いただきまぁす!」
▽
「もうちょっと夏っぽいのにしようよー」
仕切り直し。
坦々鍋に関してはみすちーが叫びながら食べている。
「辛い! 熱い! 汗スゴイ!」
量は2人前らしいので、まあ何とか食べきれると思う。頑張れみすちー。
「冷やし中華……はもうやってるんだっけ」
「まあ定番だよねぇ。ちなみに味はイマイチー」
「みすちー冷たい料理は苦手なのかな」
以前作った冷しゃぶとかマカロニサラダとかも、ことごとくイマイチだったなぁ。
そう伝えたら『リグルサンは上手く作れるんですかねェ?』と、やらしい絡み方をされた。
なので和風サラダで応戦したところ、膝から崩れ落ちて負けを認めた。
私だって料理くらいできるのさ。ふふん。
「やっぱアレだ。カキ氷」
「言うと思ったよ」
でた、チルノの得意技。真っ先に出なかったのが不思議なくらいだ。
「言われるとも思った。そこで捻りを加えてみるワケよ!」
そう言うとチルノは器に手を翳し、冷気を収束させる。
普段は氷の塊を作り、それを道具で削り出す。ところが今回は、最初から『カキ氷』を作っているようだ。
じっくり1分程かけて完成したそれは、カキ氷にしては凝った形をしていた。
「これは……鉄砲?」
「人間のオッサンが担いでるの見た事あるー」
「名付けて火器氷! どうよ、カンペキなデキでしょ?」
大きさはお皿に載るサイズに縮められているけど。人間の猟師が手にしているモノにそっくりだ。
鉄砲の事は詳しくないけど、小さな部品までキチンと形成されているみたい。
というか、細かいところまで鉄砲の形を覚えていたことに驚きだ。チルノなのに。
「凄いな。よくこんなに細かく作れたね」
「ふふん、楽勝よラクショー。あ、シャーベット状になってるからそのまま食べられるよ」
「それも何気にスゴイね」
「でもこのままじゃなー。味をつけないと」
ルーミアが取り出したのはシロップが入ったビン。
まあ確かに、いくら凝った形でも、味の無い氷を食べるのは遠慮したいところ。
なんだけど……。
「よりにもよってイチゴを選ぶか」
氷の銃に赤いシロップが掛けられていく。
本体はともかく、器が赤く染まっていくのはなんていうか、こう。
「何かマジモンっぽくていいねー」
「生き血を啜る氷の銃……最高にクールね!」
よもやかき氷にスプラッタが混じろうとは。
「ぐあー! 食べ終わった!」
「あ、お疲れ……ちょっとなんてカッコしてんの!」
ヤケクソ気味な叫びと共に現れたのは、真っ赤な顔に無数の汗を浮かべたみすちーだった。
が、それ以上に。水没で脱いだ上着に続いて、なんとブラウスとインナースカートまで脱いでしまっていた。
「熱いし暑いのよ! もーナリフリ構ってられないワケよ!」
「だだだ、だからって、女の子が下着一丁はマズイって!」
「いいじゃない! どーせこの場はメスしかいないんだし!」
駄目だこりゃ。
とりあえず屋台に積んでいるハズの着替えを持ってきてやらないと。
「あーもー、汗とまんない」
「まるで顔面のナイアガラやー」
「夏の犬みたいなツラになってる」
「ああッ! こっ、氷! 貰うからね!」
そう叫ぶと凄い勢いでカキ氷を食べ始めた。
「たまらんのぉ! 口の中が極楽鳥じゃあ!!」
「一体それはどこ弁なのかー」
「スッ、スゲエ。鳥が鉄砲を喰ってる」
「あーもう。みっとも無いなぁ」
下着一丁で何事かを喚きながら、氷を貪る女。
場所を整えれば立派なホラーが出来上がりそうだ。
「ごちそーさま!」
「まったくもう。ホラ、着替え。それと口拭いて」
「何かリグルお母さんみたい」
「みすちーのお母さんとか、絶対なりたくない」
「ひでえ」
ともあれ、みすちーの所業により火器氷はあっという間に無くなってしまった。
形を整えたカキ氷だから、味見する必要も無いしから問題ないか。
「とりあえず、やるとしたらフツーのカキ氷の方が良いかもね」
「どうしてよ」
「いや、精神衛生上」
「やれやれ。軟弱な妖怪が増えたなー」
「人食いが言うと説得力あるな」
まあ私達も人食いっちゃあ人食いだけどさ。
「リグルはなんか意見ないの?」
「うーん。フロートとかシンプルでいいんじゃない?」
「何で4からリストラされたんだろ……」
「それじゃなくてね」
高速戦闘が当たり前のシステムじゃ、ハブかれるのも仕方ないでしょ。
「この時期じゃ、アイスの調達大変じゃないかなー」
「人里だとあんまし見かけないって弁当帽子が言ってた」
「案外そんなものなんだね」
「買うと高いし、作るとメンドクサイからねぇ、アイスって」
ちょっと意外だったけど、手の届きやすい方に流れるのは当然っちゃ当然か。
ただ、高くてメンドクサイっていうのは私達がやっても同じだよね。ううむ。
「ここまで出た意見を纏めるとー」
「鍋、カキ氷、フロート」
「鍋の存在感が凄い」
約3割が冬の食べ物、約6割がデザートという、あからさまに偏ったラインナップ。
まあ後は麺か野菜くらいしかなさそうだから仕方ないのかもしれないけどさ。
ただし鍋。テメーは駄目だ。
「もういっそのコトさ、全部合体させようよ」
面倒くさそうな顔をしたチルノが提案を出した。合体ってどういうコトだろう。
「その名もメガフロート! 大きな鍋の中にソーダと氷ブチ込んで、アイスをしこたま浮かべて、後は好きに食べる!」
「スゲーいい加減なメニューになったなぁ」
「バイキングみたいだねー」
「いっそ鍋よりタライがいいかも」
「時間制限を設けないと大変なコトになりそう」
大雑把な話だけど、ただアイスやカキ氷を出すよりかは面白そうだ。
溶けるのが心配だけども、この時期なら溶ける前に売れてくれるかな?
「まあ無いよかマシか。採用!」
「おっしゃあ! 流石あたい!」
「え、大丈夫なの? こんなにアッサリ決めちゃって」
「フツーのメニューよか楽しそうだしね。手間暇に関しては、ウナギやおでんやってる時点で今更だわ」
「それもそうか」
みすちーの一声によってようやく会議は終了。まあ会議の大半が鍋食ってただけなんだけどさ。
「ところで、アイスとソーダとかって高いんでしょ? 買うお金とか大丈夫なの?」
「それに関してはまあ、なんとか出来ると思う。あてはあるから」
「ならいいけど」
材料集めからだし、実際に始めるにはちょっと時間がかかるかな。待ち遠しい。
上手くいくといいなぁ。
▽
「いやしかしアレだね。何がウケるか解らないもんだね」
「ホントにねぇ」
あれから2週間後の屋台。
仮設の台には空のタライ。メガフロートのお披露目から数時間が経っている。
すでに客はおらず、屋台の設備も火を落とした。
今はみすちーと二人で、お疲れ様の乾杯をしている所だ。
結論から言えば、メガフロートは大成功。
このクソ暑い中ちまちま頼んで食ってられっかい! という幻想少女特有の男らしさが功を奏したのだろう。
ただアイスとソーダが思った以上に早く無くなってしまい、途中からただのカキ氷バイキングになってしまった。
まあみんな気にせず食べてたけどね。冷たければ何でもいいみたい。ワイルドだなぁ。
「まー大した利益にはなりそうも無いけど、偶にはいいね」
「え、コレ儲からないの?」
「アイスの材料が結構張るのよ」
そう言いながら畳まれたメモ紙を渡された。中身は材料の箇条書き。
牛乳、卵、砂糖、生クリーム……そして、それらを冷やしてアイスにする為の氷と塩。
「まあ氷はタダだから、これでもマシな方だけど」
「へぇ、よく買い集められたね」
「ま、そこはひとえに私の実力よ」
「へーそーなのかー」
「ひでぇ棒読み」
何にしても、成功してよかったなぁ。一時はどうなることかと思ったけどね。
こうして私たちは笑顔で夜を過ごし―――。
「ちょっといいかい?」
聞き慣れない声に二人揃って振り返ると、メガネをかけた女性が一人。
「あ、寺の金貸し」
そういえば少し前から、里の寺に狸が住み始めたとか。
妖怪相手に金貸しをやってて、たまに利用してるってみすちーが言ってたな。
「こんばんわ。さっそくだけど、約束の金を返して貰おうかのう」
「屋台の修理代のヤツなら期限まだでしょ」
「何を言っとる、その後じゃ。こないだ条件付けて、追加で貸しただろうに。めがふろーと、がどうとかって」
「……あっ」
「どういうことみすちー?」
青い顔に冷や汗をかきながら、みすちーが語りだす。
「め、メガフロートの為にお金を借りようとしたんだけど、前に借りた金が返し終わって無くてさ」
「本当は前のを返さないと貸さないんじゃが、返済期限を短くすることを条件に貸したワケよ」
「で、みすちーはそれをすっかり忘れてたと」
「まいったね、ハハハ」
「いやハハハじゃ無いでしょ!」
忘れっぽいにも程がある。一歩間違えれば大事になってたよコレ。
具体的には内臓をキリ取られたり、お尻に麻薬を詰めて密輸の片棒を担がされたりするらしい。超怖い。
「返せんのか? その時は金額分、寺で奉公して貰う約束だぞ?」
「か、返しますよ! 私! の隣のヤツが!」
「バラして喰うぞお前」
とんでもないコト言い出しやがった。
いくら親しい仲とはいえ、借金の肩代わりなんてする気は無い。
そんな目で見つめても駄目。て、手を握った位で……猫撫で声は……マズい……。
「あうう、ていうか、アレだ。今日の売り上げ渡せばいいじゃん」
「言ったでしょ? 売上げ少ないって。足りないのよぅ」
「じゃどうやって払うつもりだったの!?」
「今まで襲った人間の持ち物をいくつかとって置いてあるんだけど。それを里の半獣経由で売り払うつもりだったの」
みすちーは所謂『不良妖怪』なので、里で何かをするのに不便が多い。
だからこうして里の守護神である半獣に、間を取り持ってもらうことも少なくない。
安全確実に取引が出来る代わりに、余計な行程が増えるから時間もかかってしまうのだけど。
「今からじゃ間に合わないからさぁ~。お願いだよりぐる~ん」
「その声止めて! ゾワゾワするからぁ!」
ローレライの姓は伊達じゃない。みすちーが耳元で喋る度に身体が溶けてしまいそうになり、みすちーの言葉に従いたくなってくる。
こんな技能を持ってたなんて知らなかった。まさか、ライブで楽器担当なのはこれが理由なのだろうか。
ええい、このままじゃマズイ。
「リグルキック!!」
「コブシッ!?」
うっかり殴ってしまった。
とにかくこの隙に、みすちーに大事なコトを言わなきゃならない。
「そ、そもそも私、お金なんて持ってないから!」
「ええっ!? だってホラ、蟲の知らせサービスで!」
「いつの話してるのさ。もうとっくに休業状態だよ」
そもそもアレは、蟲の地位向上の為にやってたコトで。利益なんてほとんど無かったもの。
結局、大した効果も無くて辞めちゃったし。
「決まりじゃな。それじゃあ行こうか、スズメさん。聖も会いたいと言っていたから、丁度いいわい」
「え、な、何で私に? あ、さては鳥獣伎楽のファン?」
「ライブが煩いからボコるそうじゃ」
何時かは誰かに目を付けられると思ってたけど。
よりにもよって怪力尼僧とは。
ハクの無い怒り顔をしながら、人差し指でオデコをツン。通称『滅ッ』の破壊力は、平安の大妖を一撃で涅槃送りにするらしい。
「いいの!? お寺の住職がそんなコトしてさぁ!」
「妖怪への愛ゆえに、じゃよ。響子が言ってたぞ。『愛殺は心のオアシス』とのう」
「漢字間違ってんぞ! ちょっ、リグル助けて!」
「まーせっかくだし、善行積んできなよ」
「はっ、薄情者ォ!」
「ジゴージトクでしょうが」
こうしてみすちーはお寺に連れられていった。
なんとなくドナドナを流したい気分だけど、あいにく音楽のプロが行ってしまった。
「なんか、今日のみすちーは散々だなぁ」
さっき言った通り、自業自得なんだけどさ。
寺で読経でもすれば、みすちーの忘れっぽさも少しは改善されるかな。無理か。
ライブの相棒も寺に居るらしいから、一層ヒドイ事になりそうな気もする。
とりあえず、今度からかいに行ってやろっと。
悔しそうに喚くみすちーを想像して、意地悪な笑みを浮かべながら、私は自宅へと飛び立った。
リグルが料理できる設定も意外でした
真っ赤な顔で必死に食べてるミスティアかわいい(辛くて目尻に涙がたまってるとなおかわいい)
可愛らしくて面白かったです
面白かったです。
辺りの一連の会話で、一味違うな、と思った
自分は軽量二脚だからまあなんでも良いですが