┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
最強の賢者と最強のメカニックがお届けする
最新ヴァーチャルマッスゥイーン
試してくれる人募集
応募は以下アドレスまで!
[email protected]
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
なんとも怪しげなチラシが某文屋によって届けられる。
チラシのおまけとして文々。新聞がつつまれていた。
「オマケが新聞?逆でしょうよ」
冷静にツッコミを入れるレミリア
自室の窓ガラスにふと目をやる。
粉々に砕け散り、破片は部屋の中に散乱している。
新聞を持ってきた烏天狗がブチ破ったのである。
はぁ、とため息を付いた瞬間、綺麗に掃除され、窓も修復されていた。
「お嬢様」
レミリアの机の正面に咲夜が立っていた。手には何か手帳らしきものを持っている
「ご苦労様。で、どうなったの?」
「はい、とりあえずネタ帳をすり替えてきました。これを元に賠償金請求できます。」
「なるほどね、それはいい考えだわ」
「ところで、この最新マシーン、何だと思う?」
「ヴァーチャル…なんでしょうか。何か疑似的に何か見せるとか体験させるとか…」
「疑似的、ねぇ。」
「お嬢様、先に言わせていただきますが、今回はメンツがひどすぎます。」
「八雲紫と河城にとりのタッグは恐らくロクなことになりません。お忘れください。」
「とは言っても、暇つぶしにはなりそうだけど…楽しそうじゃない?」
「どうしてもというのなら…」
少し困った表情で考え込む咲夜
「分かりました。但し一つだけ私と約束を」
「ほぅ?」
「私が先に試します。その後にお嬢様がお試しください。」
「でも咲夜、あなたに何かあったらどうするの?」
「そのお言葉非常に嬉しいんですが、そっくりそのままお返しします。」
まぁ、咲夜なら何かあっても何とかするだろう
とレミリアは結論を出した。
「分かったわ。じゃぁそれでお願いね?」
無意識のうちに満面の笑みをこぼすレミリア
咲夜がそっと時を止めたのは言うまでもない。
さっそく怪しげなアドレスにメールをすると、すぐさま返信がきた。
よほど暇だったのだろう。
内容は明後日、お昼12時くらいに妖怪の山の入り口に集合だそうだ。
「じゃぁ、咲夜、明後日お願いね?」
「はい、かしこまりました。では私も楽しみにしております。」
ガッシャァアアアアン!!!!!
盛大な音と共に窓ガラスが砕け散った。
キラキラとガラスの破片が空を舞う
外の光に反射され、まるでダイヤモンドダストのように光を乱反射させる。
その光の中に佇む者が1人
幻想郷のブン屋、烏天狗の射命丸文である。
凛とした表情でレミリア達を睨む。
「咲夜さん?私の…フゴゴ!?」
凛々しい佇まいから一転、厳重に紐で縛られ
芋虫のようにふにゃふにゃとうごめく文。
どうやら咲夜が時間を止めて縛ったようだ。
「ファフヤふぁん!ふぁふぁふぃの!ふぁふぇふぃふぇ!」
猿ぐつわされ、何を言っているのかは分からないが
恐らく咲夜に向かって文句を言っていたのであろう。
「あなたが欲しいのはコレかしら?」
手帳をパラパラとさせる
「ほふふぇふ!ふぉへへふ!ふぁふぇふぃふぇ!」
レミリアはため息をつくと、猿ぐつわを外す
「んっぱぁ!レミリアさん!ちょっと教育がなってませんよ!」
開口一番の文句にレミリアはまたため息をつき、イスに座りなおす。
「ちょっと、窓ガラス2枚目よ?」
咲夜は腕組みをし、語尾を強める。
「咲夜さんが手帳を奪わなければ2枚目はありませんでしたが?」
ゲスい顔をして煽る
一瞬仁王像のような表情をした咲夜をレミリアは見逃さなかった。
「あなたじゃ話にならないわね。ホント。」
「手帳をさっさと返してくれれば…えっ!?」
「こ、ここは?あれ?文さん何で縛られてるんですか?」
「あれ?咲夜さんとレミリアさん?あええ?」
咲夜と文の間に現れたのは、文の同僚、白狼天狗の犬走椛
またしても時間を止めて拉致してきたのである。
「もみじ!助けてください!とらわれてしまっているのです!」
「んー…」
唐突に縛り上げる事はしないと思うけど、大方何か悪さでもしたんじゃないかなぁと
文の言葉を信じず、ふと窓際に目をやる。
無残にも砕け散った高そうな窓枠と散らばるガラス片
2,3秒凝視すると、椛もため息をついた
「レミリアさん、咲夜さん、すいません。うちのが悪さしまして…」
しっぽもへにゃりとし、椛が謝る
「なんで謝ってるんですか!おかしいでしょ!」
「黙って」
しっぽがピーンと立ち、椛は文を睨み付ける
文は喋らなくなった。
「窓ガラス…うーん。弁償しないといけないのですが…生憎手持ちが」
「まぁ、きちんとした謝罪が聞けたし、今回は良しとしましょう。」
はい、と椛に手帳を渡す
「い、今です!私を抱えて逃げてください!もみじ!」
「…」
無言で文を睨む椛
「本当にすいませんでした。何かあれば必ずお助けします。」
「あら、その方が高くつくかもしれませんよ?」
「できることならば!」
「と、言うわけですが、お嬢様、如何致しましょうか」
「そうね。咲夜に一任するわ。」
天狗側に大きな貸しができてなんだかウキウキの咲夜
お土産に大きなおにくを手渡す。
「い、いや、ご迷惑をかけてしまったのにお土産なんて!とんでもないです」
「まぁまぁ。突然連れてきた非礼をお詫びしないといけませんし。」
椛のしっぽが大きくぱたぱたと揺れているのを確認し
咲夜はふふっと可愛く笑う
「でも体は正直なのですね?」
「うっ…うう…」
椛は戻る途中何度も振り返りお辞儀をしていた。
文は麻袋の中に入れられており、時折もごもごと動いていた。
「まったく、天狗に貸しを作ってどうするんだか」
「ふふっ、どうしましょうか♪」
━━━━━ 運命の日まで後1日 ━━━━━
朝食―――
一日のエネルギーを蓄える為の大切な食事である。
レミリアの運命の前日の朝食は
ご飯 出し巻き ウインナー のり 鮭 納豆である。
そう、運命の日の前日なのである。
「何が運命の日だ!」
突然レミリアは、バンっ!と強く机を叩き立ち上がる。
他紅魔の住人は驚きのあまり箸を止め、レミリアを見る。
我に返ったレミリアは数秒固まった後、顔を真っ赤にしながらゆっくりとすわり
俯きながら黙々と食事を始めた
もう一回寝てもいいのよ?とパチュリーに馬鹿にされながらもレミリアは耐えた
しかし終始涙目である。ちょいちょい時が止まったのはいうまでもない。
次の日には(自分の中で)大きなイベントが始まるのである
しかし気になったのは参加者、他に誰かいるのかがなんとなく気になっていた。
稀に博麗神社で行われる飲み会では幻想郷の住人が集まってくる
その中で親交を深められているものや、まったく喋った事がないものもいる。
何となく話しにくいのは嫌だなぁと気になるのである。
そこでもう一度怪しげなメールアドレス宛に問い合わせメールを送ってみた。
またもやすぐさま返信が返ってきた。本当に暇なのだろうか。不安になる。
メールには参加者の名前が記述されており、レミリアはまず、自分たちだけではない事実にホッとした。
そこに書かれていた名前は
・東風谷早苗
・物部布都
の2名だけであった。
(やばい言うほど仲良くない)
咲夜自体は早苗とは仲が良いであろうが
物部布都
完全に誰だお前状態のレミリア。
気になるレミリアは物部布都について調べて回ることにした。
----- 図書館
「ぱちぇー」
「はいはい。もう寝坊助さんは大丈夫?」
「忘れなさいよ。」
早速パチュリーに聞いてみる。
「物部布都…ちょっとまってなさい」
むきゅむきゅと不思議な足音をさせながら本を漁る。
そしては幻想郷登場人物一覧と書かれた本を持って帰ってきた
「最近出て来た豊聡耳神子一派の1人ね。一般的に ふとちゃん って呼ばれてるらしいわ。」
「ふとちゃんねぇ。どんな人なのかしら」
「うーん、結構勘違いする時があるって事以外は…」
「そうだ、魔理沙なら知ってるんじゃないかしら。今日来るわよ」
「ほうほう、じゃぁ話を聞いてみようか」
バァン!
言い終わると同時にドアが盛大に開く
「おーっす!本交換しにきたぜ!」
測ったかのようなタイミングである。
魔理沙はきちんと前回分の本を持参し、交換しにきていた。
えらく行儀よくなったもんだと思われるかもしれないが、一つ大きな事件が起こった結果である
━━━━━━━━━━━━━━少し過去のお話━━━━━━━━━━━━━━
「ちょっと魔理沙、勝手に持って行くのやめてくれない?」
「いやだぜ」
「じゃぁ、前回持って行ったもの返してから持って行ってよ」
「いやだぜ」
「お気に入りの本もあるのよ?私の気持ち考えた事ある?」
「特にないぜ」
「うーん…」
しょんぼりするパチュりー
「ふん、まぁもらっていくぜーじゃぁなー」
しょんぼりするパチュリーをヨソに本を持って出ようとする。
「返さないなら毎日お前の家を焼くぞ?」
おっさんの声のようなダミ声で恐ろしい言葉を囁いた。
魔理沙はびっくりして後ろを振り返る
しかし、パチュリーは肩を落とし、椅子に座ろうと歩いている所であった。
疑問に思いつつも魔理沙は紅魔館を後にした
その日の夜
「しかし、この本凄いな…ためになるぜ。っと、そろそろ寝るか」
明かりを消し、布団に潜りこむ、そして目を瞑った時に異音に気が付く
パチッパチッと何か変な音がする。
不思議に思い体を起こすと、窓の外がぼんやりと赤っぽい
【返さないなら毎日お前の家を焼くぞ】
あの時聞いた言葉を思い出しハッとする。
慌てて外に出ると、燃えていた。家の壁の一部が
とっさに水をかけ、鎮火させる。
恐怖のあまり体が震えていた。
その晩、魔理沙は一睡もすることができなかった。
そして夜が明けると同時に紅魔館へ向かう…
勢いよく図書館のドアを開け、パチュリーの元に向かう。
パチュリーはいつものように椅子に座り本を読んでいた。
「おい!本当に家に火をつけるヤツがあるかよ!!!!」
バンッ!と机を強く叩き、睨み付ける。
「なんの事かしら。それより本でも返しにきたの?」
「とぼけるな!!!殺す気か!!!」
「そう、返しにきたのではないなら帰りなさい。」
「お前!人の話聞いてるのか!!」
「何を言っているのはさっぱり理解できないけど」
「あなたの家がどうなろうとしった事ではないし、昨晩はずっと本を読んでたわ。」
「勝手に本を持って行く癖に、火が付いたら犯人呼ばわり?いい加減にしてちょうだい!」
突き放す発言と声を荒げるパチュリーにびっくりした魔理沙だった。
「…疑って悪かった。が、本は借りてくぜ」
またしても、本を1冊持って図書館から出ようとすると
「外壁で良かったな。次は内側から攻めるぞ」
と囁かれた。
バッと後ろを振り返ると、少し遠くでパチュリーが変わらず本を読んでいる
不審にも思いつつも魔理沙は無言で紅魔館を後にした。
少し昼寝をしつつ、なんだかんだで夜
今日はぐっすり寝れるだろうと布団に入る。
疲れが溜まっていたのかすぐに意識が遠くなる
が
パチッ…パチッ…
昨晩と同じ音で今度はコゲくさいにおいがする。
そしてなんだか熱い。
飛び起きると、部屋の隅っこが結構な勢いで燃えていた。
集まってたゴミにも引火したのだろう。
また慌てて水をかけ鎮火させ、他の部屋や家の外も見回った
特に異常は見られず、ベッドに腰掛ける。
「外壁で良かったな。次は内側から攻めるぞ」
また、アノ言葉が脳裏に浮かぶ
体の震えが止まらない。
もう一度、窓を見直すが、鍵はかかっている。
最後に玄関のドアを確認したが、鍵はかけられている
誰かが侵入した形跡はないのだ。
と、玄関先から戻ろうとした瞬間
「運よく目が覚めたのか。惜しい惜しい…もう少しで殺せたのに」
「
惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい
殺せたのに殺せたのに殺せたのに殺せたのに殺せたのに殺せたのに
惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい
殺せたのに殺せたのに殺せたのに殺せたのに殺せたのに殺せたのに
惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい
殺せたのに殺せたのに殺せたのに殺せたのに殺せたのに殺せたのに
」
「うわああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
魔理沙は半ば発狂した感じで部屋を荒らした。
実験道具などがガシャガシャと割れ、家具や食器棚も破損した。
長い時間自分の家の中を荒らして回った。
もう家の中は修復がきくかどうか怪しいレベルまで痛めつけられていた。
一通り自分の家を荒らしまくった後、ついに魔理沙は泣き崩れてしまった。
睡眠不足もあるだろうが、魔理沙の精神はもう限界に来ていた。
やがて魔理沙は、瓦礫の山と化した家から
泣きながら今まで借りていた本をまとめる。
まとめ終わる頃には夜が明けていたので、また紅魔館にやってきた。
大きな荷物を背負い、図書館に入る
疲れ切っており、目は少し虚ろである。
「あら、大きな荷物ね。魔理沙。引っ越しでもするの?」
「パチュリー、本、返すから…助けてくれよ…」
その場に泣き崩れ落ちる魔理沙。
パチュリーは小悪魔にコーヒーでも用意するように命じ
魔理沙を椅子に座らせた。
「どうしたのよ」
「今日は、部屋の隅っこが燃えた…」
「運よく目を覚ましたのかって…惜しいって…殺せたのにって…!!」」
パチュリーは無言で立ち上がり、返ってきた本を確認する。
「魔理沙、あなたこんな本まで持って行ってたのね。」
パチュリーは一冊の本を取り出す。
取扱い厳重注意、と書かれた本である。
「この本はね。とある火の魔導師が書いたものなの」
「凄い思念がかかっていたから私が退治して使役しようと思ってたものなの」
「まぁ、私がご主人様になるって事ね」
「だからあなたが勝手に持って行ったから怒っているのだわ。」
「どうすりゃ…」
「ちょっと呼び出すわ。」
パチュリーが短く詠唱すると、本の中から赤いローブをまとった老人が具現化してきた。
「おや、盗人と主人。何か?」
「もう魔理沙の家に火をつけるのをヤメなさい。というか何考えてるの?」
「ふん。盗人が1人死のうが関係ないわい」
「死にたいのはあなたのほうね?いいのよ?あなたが死んでも私は困らないわ?」
「おお、怖い、怖い。もうしないよ。命令は忠実に聞かねばな。」
まるで反省していない老人はフォフォと笑いながら本の中に帰って行った。
「まったく、勝手に持って行くからよ?」
「ごめん…ごめん…」
「まぁ、1冊毎交換ならいいわよ。あなたの知識を広げるのは私もいい事だと思うから」
「ただし、持って行く本のチェックはさせてね?今回見たいな事になったら困るでしょ?」
「うん…うん…」
グズグズと泣きながら魔理沙はパチュリーと約束をした。
パチュリーは大泣きする魔理沙を抱きしめ、優しく頭をなでた。
一瞬パチュリーが歪んだ笑顔をs
━━━━━━━━━━━━━━ここまで━━━━━━━━━━━━━━
そんなこんなで、魔理沙もすっかり良い子になった。
「お、レミリアじゃん、珍しいな!どうしたんだ?」
「本当に最高のタイミングね。あなた。ところで、物部布都って名前に聞き覚えは?」
「聞き覚えも何も弾幕勝負もしたし、この間の宗教乱闘騒ぎでもカチあったぜ」
「どんな人なのかしら?」
「んー」
わしわしと頭を掻く。同時に帽子もわしわしとうごく
「バカじゃないか…そうか、アホの子だ!」
「はぁ?」
予想外の返答に困るレミリア
「っていうかレミリア、お前見てただろ?遠くから。宗教戦争の時だ。」
「ええ?」
「ほら、皿を投げまくってたやついただろ」
「あぁーーー!」
名前と顔がやっと一致した。
可愛らしい子だなぁという印象はあった。
「ってアホの子って何よ。」
「まぁ、アホってか天然ってか悪いヤツじゃないんだけどなぁ」
「まぁ釈然としないけど名前と顔が一致しただけでも十分だわ。」
ありがと、と軽く挨拶をし自室に戻る。
明日はどんな事が起こるのか、本当に楽しみで仕方がないのである。
無意識のうちに羽もゆらゆらと気分よく揺れる
━━━━━ とうじつ! ━━━━━
寝起きもバッチリ、睡眠時間もバッチリ、ご飯もいっぱい食べた。
さぁ、いくわよ!
元気な掛け声と共に玄関の扉が開かれ、レミリアと咲夜は妖怪の山へと向かう
妖怪の山、麓。
ここには妖怪から神まで幅広く住んでいる山
麓から長い階段が伸びており、【守谷神社はこちら】と看板も立てられていた
一般の村人なども参拝によく訪れるようである
案内役がいるのかとキョロキョロしていると
目の前に突然大きなスキマが現れ、中から八雲紫が顔をのぞかせた。
「お、来た来た。もう他参加者はそろってるわ。こちらへどうぞ」
案内されるままにスキマの中にはいると
壁一面鉄張りでよく分からないものがたくさんついた本当に奇妙な部屋であった。
別の部屋に案内されると、そこには早苗と物部布都がくつろいでいた。
「あ、咲夜さん!こんにちわ!」
「こんにちわ。早苗。良くあなたの保護者OKしたわね」
「いやー大変だったんですよぉー。諏訪子様なんて田んぼに頭を…」
キャッキャと仲の良い2人は楽しそうに話をしている
と、レミリアと布都の目があう
(何か話かけておくか…)
「あなたが物部布都ね?レミリアよ」
「おぉ、例の湖の館の主人じゃな?よろしくたのもう!」
ドヤーっと文字が出てきそうなくらい意味不明なドヤ顔
「え、ええ。」
レミリアは苦笑いしながらも快く握手
「にしても、噂の主人がこんな可愛らしい子とはな!おっと、可愛らしい子は失礼じゃったか」
「いやいや、お世辞が上手ね。悪くないわ。」
「この間のヤツ、見てたわよ。お皿投げるなんてインパクト大きすぎて良く覚えてるわ」
「いやはや、恥ずかしいもんだな。」
たわいない話やをワイワイと行い、それなりに打ち解けた。
時折見せる布都の純粋な笑顔にドキッとしながらも、お互い聞き上手話し上手で
良い雰囲気であった。
「ところで」
早苗が問いかける
「なぜ参加を?」
「ただの興味本位だよ。」
「私はお嬢様の実験台ですわ」
「我は…うう…」
バツが悪そうにしている布都
布都は少し俯いたままちょっと憂鬱な表情を浮かべている。
「どうしたんだ?」
すかさずレミリアが心配そうにのぞきこむ
「じ、実はお恥ずかしい話なんだが、同門にな、勝手に応募されて…」
「断ったり来なければいいんじゃなかったのか?」
「いや、まぁ、我でなければ行けない、だのなんだの持ち上げられてしまってな…」
「ついつい気分も良くなって来てしまったわけなんだが…不安じゃ」
しょんぼりしている表情も良い!とレミリアは羽をぱたぱた
咲夜が怖い表情をしたのは気のせいだと信じる。
「まぁまぁ、でもそのおかげで今日出会えたじゃないか。今度ウチに遊びにくるといい。歓迎しよう」
「ほ、本当か!うれしいぞ!」
「ああ、もう友人だ」
「ゆ、友人…」
パァァと布都が笑顔になる。眼はキラキラしていて嬉しい感情があふれ出ている。
そんなに嬉しかったのか?とレミリアは不思議に思うが、悪い気はしなかった。
むしろなんだかレミリア本人まで嬉しくなっていた。
良い雰囲気であったが、咲夜が早苗に話題を振った
「早苗は何で参加を?」
「決まってるじゃないですか!」
「巨大ロボの操作をしたいんですよ!」
「それから…」
と言いかけた時、唐突に扉が開き、紫とにとりが現れた。
「本日はお集まりいただき、ありがとうございます。開発責任者の八雲紫よ」
「技術責任者のにとりだよ!」
「さて、今回の最新ヴァーチャルマッスゥイーンの説明を、にとりよろしくね」
「あいよ。今回のマシーンは自分が体験したいなーといった世界が体験できるんだ」
そこにベッドがあるだろ?そこに寝て、頭に器具を付けて眠りにつくんだ
そうするとあら不思議、架空の世界が体験できるってことなんだよ
簡単に説明するとこんなもんだよ」
「質問が」
咲夜が手を上げる
「頭に着けて架空の世界って何されるのかしら?」
「微量の電気を流すんだ。そして一種の幻覚ガスを注入する
心配しなくてもいい、幻覚ガスに関しては八意先生のチェック済みさ!
大丈夫かい?」
「ええ、ありがと」
「他に質問は…?……なさそうだね。早速だけど誰かやってみるかい」
「定員は複数いけるようには作ってるけど、今回は1名でね。順番にやってもらうよ。時間は30分、経過した段階で起こすから心配無用」
「では」
またしても咲夜が手を上げる
他誰も手を上げようとしない。
レミリアはやや不安そうにも咲夜を見つめる
咲夜はレミリアに優しく笑顔を返し、ベッドに横たわる。
実験者の2人はテキパキと準備を進め、咲夜に謎の器具をかぶせ固定したのち
眠らせた。
「さ、問題なし、スタートだよ。このモニターを注目!」
にとりが指をさしたのは咲夜の頭上にぶら下がる四角いもの
モニターと呼ばれたそれには咲夜がうつる
「どんなことをしているかモニタリングできるんだよ!楽しみだねぇ」
「趣味悪いわね。とても見せられないものだったらどうするのよ」
「まぁ、実験の意味もあるし、その辺は祈るしかないね」
変なの見ないでよ、レミリアは心の中で咲夜にお願いをした。
━━━━━━━━━━━━━━咲夜の世界
(真っ暗ね。でも疑似体験なら思い浮かべるだけでいいのかしら)
咲夜は紅魔館をイメージすると
一瞬ノイズが目の前を走り、咲夜のイメージどおり風景が広がる
「うわっ!」
思わず声を上げる、あまりにもリアルな世界にビックリしたのだ。
ドキドキしながら門前へ歩く
門の前に見覚えのある人物が見える。
ゆっくりと歩いて近づくと、
そこにはピシッと直立不動で立つ、美鈴がいた
「あ、咲夜さん、お帰りなさい!」
「え、ええ。ただいま…今日は寝てないのね」
「へ?いやだなぁ。こんな緊張した現場で寝れませんってばー」
ニコニコと話す美鈴。
これが理想の美鈴?とやや疑問に思っていると、遠くから声が聞こえる
「おらー!今日こそは!」
「あ、魔理沙さんですね。飽きてきましたし、そろそろおしまいにしましょう!」
美鈴はふわっと浮かび上がると、魔理沙はその行動に反応し、不意打ちのマスタースパークを放つ
「不意打ちも戦術の一つですね!良く考えましたね!ですがっ!」
美鈴はマスタースパークに対し、真正面に移動すると、ぐっと体重を片足にかけ
そのまま、蹴とばした
ゴォン!と低い音がし、推進先が180度変わる
「えっ?」
魔理沙はマスパをモロに受け、空中で意識を失い、落下する。
ゴリッ。グチャッ
「はい、おしまいです!」
「あ、咲夜さん、少し遅れていきますって伝えてください」
一瞬の出来事と、魔理沙の最期を見聞きした咲夜は目を見開き止まってた。
「咲夜さん?」
「ふ、ふぇ!?あ、あ、う、うん」
「変な咲夜さん」
と不思議そうな表情をした美鈴は、鼻歌を歌いながら落下した魔理沙に近づく
何度かつついた後、おもむろに魔理沙の腕をつかみ
くいっと引っ張った。
ブチブチと千切れる音がし、赤い何かが飛び散る。
美鈴はケラケラと笑い、そして口にする。
じゅるじゅると嫌な音がする。
一瞬気が遠くなりそうだった。
震えが止まらなかった。
(え、ちょ、な、何これ…私ってこんな事望んでるの?ウソでしょ…)
ただ、このまま見続けるわけにはいかず、何も感じていないフリをして館の中に入る
ゴォンと扉がしまる音が響き渡るがシーンと静まり返っている。
喧しいメイド妖精達の姿が見えない。
(静かね…)
コツコツと自分の足音だけが響く
しかし先ほどの光景が目に焼き付いて忘れられない。
なんだか館の住人には出会いたくなかったので、真っ先に
自分の部屋へ向かった。
ドアを開けると
いつもとはレイアウトが違うことに気が付く
(間違えたのかしら?)
恐る恐る部屋を物色してみたところ、愛用のナイフがあったり
何より、ベッドカバーが同じなので自分の部屋だろうと、ベッドに腰掛けた。
そして先ほどの光景をまた思い出し、吐き気をもよおしてしまうため
ぶんぶんと頭を振って忘れようとする。
(にしても何なのかしらアレは…うっぷ)
(私の深層心理こんな感じだったの?どうして…)
「うおあああああああ!!やめて!やめてくれええええええ!!!!」
と、外から声というか悲鳴が聞こえてきた。
嫌な予感がしながらも窓際に移動し、恐る恐る外の様子を伺う。
銀髪のメイド服を来た女の子が
縛られている男に向かってナイフを投げている。
コーンと男の額にナイフがささる。
断末魔の悲鳴を上げ息絶える
続けざまナイフを投げると、首にナイフが突き刺さると
ブシャアッと噴水のように飛沫を上げる。
その光景を見て女の子は飛び跳ねて喜ぶ
「や、やだ!な、何なの!?」
思わず声が漏れる。
こちらに気が付かず、女の子はメイド妖精に指示し、違う男を連れてこさせていた。
次は素早く近づきナイフを腹に
咲夜はとっさにしゃがみ込み、見るのをヤメた。
野太い叫び声がする。
顔は見ていないが、銀髪で青いメイド服を来て、ナイフを使うのは
自分である。
「いや…違う…違う…私…そんな事したくない!したくない!したくない!」
しゃがみ込み、耳を両手でふさぎガタガタと体を震わせながら涙をこぼす。
震えながらも立ち上がり、館から逃げ出そうとゆっくりと部屋を後にし
少し歩くスピードを上げ、玄関ホールへと向かう。
玄関ホールから誰かの会話が聞こえてきた。
身をかがめ、恐る恐る確認する。
「何?咲夜が帰ってきただと?」
「はい。様子が変だったのでなんだろうと思ってました。」
「バカ言うな。咲夜は裏庭で射撃してるんだ。そいつは…」
レミリアと美鈴が玄関先で話をしているのを確認した。
正面突破はできそうにない。
「今回のエサだよ!!!!!」
そうレミリアが叫ぶと咲夜がいる方向に向かって鋭利な刃物を投げつけた。
(バレてる!)
来た方向逆回りし、一旦厨房に逃げ込む
厨房の中を確認せずに入る。
ゴリゴリぷちぷちゴリゴリゴリゴリ
ゴリぐちゃぐちゃゴリゴリぐちゃぐちゃゴリゴリゴリ
ゴリゴリゴリぐちゃぐちゃゴリゴリぐちゃぐちゃゴリ
砕かれる音とねちっこい音がし、咲夜の頬に何かが飛ぶ
「わっ」
手で拭うと、血であった。
ハッと我に返り目の前を凝視する。
人間が破砕機のような機械に頭から突っ込んでいる
無情にも機械は止まらず男を粉砕し、血肉が飛び散る。
「おぐっ…!」
我慢しきれず咲夜は床に嘔吐し、部屋を出る。
「ハハッ!逃げられるとでも思ったか!!!」
そこには目を見開いたレミリアが立っていた。
自分の知っているレミリアではないと判断した咲夜は
本能的に時を止める。
「な、なに…このお嬢様に似た気持ち悪い物体は…」
そのまま咲夜は無視して玄関ホールに向かい、外に出る
そして外にでた所で時を動かす。
ぐにゃぁと景色が歪む。
「えっ!?な、なに!?」
フッと景色が入れ替わる。
そこは紅魔館の図書館である。
「わ、私外に出たはずじゃ…?」
と、正面にパチュリーが見える。
目が合ってしまった。
しかしパチュリーは普段と同じように眠そうな表情をしていた。
「あら、咲夜。真っ青な顔してどうしたの?大丈夫?こっちへいらっしゃい」
他のメンツと違って、特に変な所もない
図書館の扉の外側からは、妖精メイドらしき声でざわざわと言っているのが分かる。
「あ、あああ…」
戻ってこれたのだ。自分の良く知る紅魔館に
目を真っ赤にし、グズグズと泣きながらパチュリーに近づく
「どうしたの?大丈夫?レミィにいたずらでもされたのかしら?」
「ぱ、パチュリーさまぁ…」
優しい言葉に思わず泣きそうになる咲夜
「落ち着いて。紅茶でも飲みなさい」
すっと差し出される紅茶
良く見ると赤い凄く赤い
鉄のようなにおいがする。
そして、カップの下から、プカンと
眼球が浮かび上がる
眼球はこちらをじっと見つめ、プカプカと浮く
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
咲夜は立ち上がり逃げ出だそうとする
「待ちなさい」
咲夜の足に無数のツタが現れ、足が引っかかる。
「ふふ、残念だったわね…元に戻れたと思った…?」
ふいに腕をつかまれる。
普段のパチュリーからは考えられない力で握られ、抵抗してもはなすことができない
「なかなか良い体してるじゃないの。味見させて?」
パチュリーは小さなナイフを生成すると、少し腕を切りつけた。
「あぅっ!」
血が流れ出すと、それを指でぬぐい、ペロリと舐めた。
パチュリーは目を大きく開き、にやにやしながら指をなめ続けた。
「な、なんなの…」
表情に恐怖を覚えていると、
見た目は記憶の中の人と同じ、だけどどこか何か違う者たちが
ゾロゾロと歩いてきた。
(気持ち悪いだなんて泣いている時じゃない。殺さないと殺される)
一矢報いようと咲夜が身構える。
(まったく。本当にお嬢様じゃなくてよかった。あのクソ河童。機械もろとも消し去ってやる。)
(ん?機械?…あー。そうだ)
ふと咲夜が何か気が付く。
モデル立ちをし、腰に片手をあて、もう片方の手で ふぁさと髪をかきあげ、優雅に一言
「いやいや、私としたことが。良いですか?ここは私の世界です。」
「さぁ消え去りなさい!」
空しい叫び声が響く
「あ、あれ?そういうのはないの?」
「ちょっと、もういいわー終わりにして頂戴。聞こえてるんでしょ?にとりー!ゆかりー!」
空しい叫び声が響く
「えっ、ちょ、ちょっとどういうことよ?」
「貴方、ここから抜け出せるとでも思ったの?あなたの世界?いいえ、ここは」
「私たちの世界よ」
と、偽レミリアが急に懐に飛び込んできた。
「クカカ」
思いっきり腹を殴られる。
内臓がピンボールのように暴れる感覚がした。
激痛に膝を付き、お腹を押さえるが、体中を激痛が走り回り
呼吸すら一瞬満足にできなかった。
殺される-
この異常なシチュエーションで咲夜は本能のままに時を止める
いつも通りの光景、時は止まり、自分以外のものは動いていないようである。
(くそっ、何なのよこの状況は)
ここで殺しておこうかとも考えたが、ダメージが非常に大きい。
ひとまず諦め、身を隠せる場所を探そうと背中を向けた
その瞬間
グジュッと音がし、右足に激痛が走る。
「あ"あ"あ"!!!!」
ふくらはぎあたり、ナイフが突き刺さっていた。
バッと振り返ると、偽物の自分がニヤニヤとしながら立っているのが分かる。
「時間を止めれるのは自分だけだと思った?」
「さっき1回やったでしょ?コピーさせてもらったわ。」
パァンと破裂音がしたのと同時に時が動き出す。
「あれぇ、どうしてナイフなんか刺さって蹲っているのかしら?無様ね」
「死になさい」
無表情の偽美鈴が突っ込んでくる。
時を止めたそばから偽咲夜が解除する。
タイミングがズレてしまい、一気に偽美鈴が咲夜の懐に入り込み胸倉をつかむ。
「くそっ!このっ!はなっせ!」
必死に抵抗するが、つかまれた腕はビクともしない。
偽美鈴の腕が振りあがる。
そして
強烈な一撃が咲夜の顔面を襲う。
「~~!!!!」
血の味が口いっぱいに広がり、硬いものが口の中で転がる。歯が何本か折れたようだ。
その場に倒れ込んだ咲夜だが、髪の毛をつかまれ無理やり立たされる。
「い、いだっ。いだっ!美鈴、やめ"、いだいっ」
偽美鈴は表情を変えない。
そのまま、壁に咲夜の顔を打ち付ける。
「あがああああああああああああああああああっ」
壁にヒビが入り、一部が崩れる
咲夜の鼻は折れ、出血が激しい。意識が遠のく。一瞬落ちる。
すると偽美鈴の手が一瞬光り光が咲夜の体内に入る
「うぐぁっ!」
咲夜が無理やり意識を取り戻す
偽美鈴は、抵抗ができない咲夜の頭を掴んだまま持ち上げる。
ブチブチと咲夜の髪の毛が切れる。
「うぐぅううう…い、いだい"…う"う"う"う"…」
その正面に立った偽咲夜ニタニタと汚く笑い、一気にナイフで切りつける
「いや"あ"あ"あ"あ"!!!!!!!!」
全身に小さな切り傷が一瞬でつけられる。
咲夜の青い服が血で染まり、ドス黒く染まる。
「や、やめ…て…」
意識が飛びそうになるとまた、無理やり意識を戻させられる。
偽美鈴はそのまま髪の毛をつかみ持ち上げ、ある程度の高さまで上げると
手を放した。
踏ん張れない咲夜はその場に崩れ落ちる。
崩れ落ちる最中、咲夜の脇腹に向かって
偽美鈴の蹴りが入る。
ボキっという音とミシミシっと言う音が聞こえる。
「ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
そのまま本棚に叩きつけられる。
叩きつけられた瞬間、頭が激しく動き、咲夜は白目をむく
そのまま崩れ落ちた咲夜はピクピクと体を僅かに痙攣させるだけ。
「トドメは私よ。美鈴、回復させなさい」
偽美鈴は咲夜に近づき、胸のあたりに手を当て、生命エネルギーを送る
ビクッと大きく体を震わせ、数回吐血した後、ハーハーと息をし始める咲夜。
かろうじて薄目が開く。
正面には偽レミリアのようなものが見える。
「も、もう…やめ…やめ…て…くださ…い…」
涙を流しながら懇願する。
ゾクゾクと体を震わせた偽レミリアはすこし涎を垂らす。
「ハァ…ハァ・・・・・・死になさい」
レミリアの目の前に大きな槍が生成される。
咲夜も見たことがある、レミリアのグングニル。
「2fくぇtgふgbfくぉfgひqh」
汚い叫び声と共に放たれた槍は一直線に咲夜をロックオンする。
もう体はピクリとも動かない。
咲夜はすっと目を閉じる。
(せめて私が知っているお嬢様を思い浮かべたい。偽物は見たくない)
(…どうせなら、本物のお嬢様に殺して欲しかったなぁ…)
悔しさで涙が止まらない。声を出したいが声すら出ない。
空気を切り裂く音、咲夜を貫こうと槍は勢いを止めない
そして
ゴォォォォン!と鈍い音がこだまする…
(あ、あれ…は、外した…?)
体が緊張しているが、まだ意識はある。
その時
「咲夜あああああああ!!!!」
「!!!!」
咲夜は耳を疑った。
目が開かず確認はできないが、聞き覚えのある。声
「お、お前…な、なんだこの状況は…ええい。口を開けろ!って開けれないのか。むぅ。しょうがないよな。緊急事態だもんな」
ブツブツと言っていると思ったら、モゴモゴと聞こえる。
次の瞬間
柔らかいものが唇にあたり、苦いものが流れ込んできた。
「飲め」
咲夜は思わずゴクリを飲み込む。
(うぐあああああ…)
咲夜は大きく痙攣をおこす。
何度か痙攣をした後、ある程度体が楽になったのが分かる。
「全快、ではないが。これで命の心配はないだろう。」
目をゆっくり開け,
目の前の人物と目があう。目の前の人物は最高の笑顔を見せる。
永遠の紅い幼き月 レミリア・スカーレット 降臨
「お、おじょ…う…さま…?」
「ああ、お前の知っている私だ。」
「おじょぉ"ざま"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"」
涙と鼻水が止まらない。
良く見ると片手にグングニルが握られており、手から少し出血している。
「すびばぜん…ずびばぜん…」
「もう喋るな。後にしろ。回復にはもう少し時間がかかりそうだ。」
「大人しくまってろ」
優しく微笑み頭を数回撫でる。
ふぅ、と一息つくと
レミリアは立ち上がり偽軍団を睨み付ける。
ぼわっとレミリアの全身から赤い霧が出る。
背中から生えた羽は怒りを象徴するようにいきり立つ
眉間に激しくシワがよる。
眉毛はこれでもかといきり立ち、ピクピクしている。
「これでグングニルのつもりか。まるでおもちゃだな」
グッと力を入れると、グングニルだったものがサラサラと砂のようになり手から落ちる。
「お前が私の偽物?ふぅん。紅魔館のメンツ?これが?」
平静を保っているつもりだが、声が震え、怒りしかこもっていない
殺気がぶわっと広範囲に広がる。
すぅっと大きく息を吸い込む。
「身の程を知れぇえええええええええ!!!!!!!!」
咆哮が響き渡り衝撃波が出る
本棚が全て崩壊し、広々とした空間だけが残った。
「ふん、身の程を知るのはどっちか思い知らせてくれるわ。」
一瞬怖気づきそうになる偽レミリアだが。新たにグングニルを生成すると構える。
「何だか知らんが、ついでに貴様も血祭に上げてや、ガァァアアアアアアアアアアア!!!!!!」
一気に近づいたレミリアの手刀が偽レミリアの右腕を切断する。
「ハハッ!!!!脆いな!!!脆いな!!」
「き、貴様…!ひ、卑怯なっ…」
「悪魔に卑怯もクソもあるか。バカかお前」
「お前ら…咲夜を殺そうとしたよな?な?な?殺そうとしたよな?」
目を見開き【睨み付ける】さっきよりも強い殺気を出す。
その瞬間、偽紅魔組はビクッと体を震わせ、硬直する。
威圧の一番の矛先になった偽レミリア
強気だったのが一転、ガクガクと体を震わせ、目には涙をためている
「ゆ、ゆるしt…ヘブッ」
レミリアの拳が顔面にクリーンヒット
歯は砕け、鼻は折れ、ぐらぁと倒れ込むが
レミリアはそれを無理やり起こし、何度も何度も殴りつけた。
やがて原型をとどめなくなると上空に放り投げ、大玉を投げつけた
それにあたった偽レミリアだったものはそのまま壁に叩きつけられた。
「次はお前らだ。」
ギロリと硬直している偽紅魔組を睨み付ける。
本能的に動いたのか、偽美鈴が飛びかかった。
「遅い!」
飛び込んできた偽美鈴の下に潜りこむと、そのまま思いっきり
アッパーを食らわす。その衝撃で上に偽美鈴が飛ばされる
一瞬で生成したグングニルを投げる
グシャと音を立てながら貫通し、壁に刺さる
槍と一緒に壁に叩きつけられた美鈴はそのままぐったりと動かなくなった。
「ハッ。手ごたえなさすぎだろ。うちの美鈴の方が比べものにならないほど強いぞ」
偽咲夜と偽パチュリーは大きく間合いを取る。
それに合わせてレミリアも咲夜の前へと移動する。
「咲夜、遅くなってすまない。少しは回復したか?既に2匹駆除したが後2匹だ。
スグに終わらせる、私に任せておけ」
「お嬢様…」
自分の為に本気で怒っているレミリア
見たこともない怒りで本当は凄く怖かったのだが
自分の為って所が本当に嬉しくて、安堵感安心感を一気に感じ
涙が止まらない。
チッと偽パチュリーが舌打ちをし、大きな魔方陣を生成させた。
詠唱を始めると、魔法陣は6つに分かれ、青く光りながら上空に配置された。
地鳴りが鳴り響き、館全体が揺れる。
良く聞こえないが、偽パチュリーが指を指した瞬間
魔法陣がら滝のように水が流れ出した。
「いやああああああああん!!!!!」
情けない叫び声を上げたのはレミリアである。
「さっ、さっ、さくやぁ~~~ど、ど、ど、どうしよう~~~」
「りゅ、流水だょぉ~~~!!!」
涙目になり咲夜に抱きつく。
先ほどのレミリアはどこで買えますか?といったレベルで、もはや別人である。
「お嬢様」
「い、いい案があるのか?!早く!」
「私、もう死んでもよいです。」
ニコリとほほ笑む咲夜、鼻血をたらしている
この鼻血は怪我のせいではない。なんでかな?
「アッカァーーーン!これマズいでぇ!」
水が津波のように襲い掛かる。
「どわああああああああああああ!!!!」
「とぅ!!」
大きな声が響くと同時に
大きな箱が上空から2人の隣に落ちてきた。
箱から手が伸びる。茫然としていると首根っこらへんをつかまれ、引っ張り上げられた。
それは箱ではなく船であった。
その瞬間、大量の水が流れてくる。
強い水流に船は大きく揺れる。
「間一髪じゃったな!」
2人の目の前には、一仕事を終え、満足しているような表情の布都が腕を組み仁王立ちしていた。
「え、ふ、布都!?なんでここに?」
「ふっふっふ。友人の危機に助けに行くのは当たり前であろう?」
驚きのあまりポカーンとした表情の2人。
咲夜はとある疑問が浮かんだ
「あの、お嬢様。少し余裕ができましたので、手短にお願いします。物部様もそうですがどうやってここに?」
「そうだな。説明できていなかったな」
「咲夜が眠った後、何かおかしくなったようだ。」
「でしょうね」
「で、戻れなくなった」
「でしょうね」
「実は見れていたからどういう状況かは理解できてたんだ」
「ええっ!そうなんですか!」
「そんなわけで紫とにとりを締めあげた」
「でしょうね」
「干渉機能を動作させ、入ってきたってわけだ」
「えぇっ、大丈夫なんですか?それ」
「省略するが、早苗がいたおかげだよ」
「あ、なるほど、奇跡って自由でいいですよね。これは二次創作設定ですよ?ご都合ですよ?」
「何を言っているんだ」
「なるほど、理解はできました。で、どうやったら戻れるのですか?」
「あいつらが邪魔してね。なんでも しすてむのばぐ というものらしい。アレを駆除する必要があるみたいだ」
「うむ、あやつらを倒してしまえば元に戻れるのだ」
布都は船の先頭に立ち、何やら部屋全体を確認している
「しかし、ここは水場にはむいとらんのう」
「レミリア殿。穴を開けて水を出したいのだが、良い場所はあるか?
流れ的にあっちの方向が良いのだが」
「大きな穴かしら?」
「できる限り大きなものを」
何が良い方向なのかさっぱり分からなかったレミリアだが
そんな事を聞いている暇はない。
「よしきた。任せておけ」
レミリアは大きな赤い玉を生成すると、壁に向けて投げる。
ゴォン!ドォン!と大きな爆発音と共に穴ができ、ズゴゴゴゴと水が飲みこまれていく。
しばらくするとたっぷりあった水はもう無くなっていた。
「クソッ、余計な事を!」
偽パチュリーは水の量を増やしたりしていたが、意味がない事を悟ると
魔法陣を閉じた。
船をおりた3人、パチュリーはまたしても魔法陣を出現させる
今度は赤く光っている。
「青は水なら、赤は火であろう?」
布都が大きな声で問う
偽パチュリーは図星の表情を見せる。
「そうであろう!そうであろう!」
予想が当たったのか凄くうれしそうである。
「…風水には龍脈というものがあってだな。地中に流れる気のルートがあるんじゃが、ここは龍脈から近いようじゃな」
偽パチュリーは詠唱を終える。
一気に気温が上がり、赤い魔法陣から無数の火の蛇が布都を狙って放たれる。
------------------------------------------------------------------------------------------
その瞬間、時が止まり、咲夜と偽咲夜の2人だけの世界となる。
「往生際が悪い!」
咲夜は時を動かす。
動かしたら偽咲夜はまた時を止める。
(本家を舐めるな…!)
咲夜は必死で対抗する。
------------------------------------------------------------------------------------------
「布都!!!」
レミリアが叫ぶ
「心配無用。」
「我に対抗しようなぞ片腹痛いわ!」
「熱龍【火焔龍脈】」
布都は跪き、片手で勢いよく地面を平手でたたく。
パァン!と乾いた大きな音がし、地面が割れそこから
グオオオオと大きな咆哮と共に火の龍が飛び出す。
火の龍はそのまま火の蛇を全て飲み込み、偽パチュリーをも飲み込む。
高温で焼かれ、断末魔の悲鳴を上げたのち、偽パチュリーは黒焦げになりパラパラと散って言った。
「ふむ、大したことなかったな。戻れ!」
再び地面を叩くと、火の龍は出現した穴に戻って行く。
「良い子じゃ。あっちち!!!」
思わず布都は火の龍を撫でてしまう。ちょっとやけどした。
その布都を見て、火の龍は鼻で笑いながら帰って行った。
うだるような熱さから一転、一気に冷え込む。
「あいつ我をバカにしながら帰りよった!」
馬鹿にされた悔しさとやけどの痛みを堪え涙目になる。
1人になった偽咲夜は明らかに動揺している。
動揺している今がチャンスとばかりに
レミリアが間髪いれず、偽咲夜に飛びかかる
布都もそれに続く。
「死ねっ!!!」
ニヤっと偽咲夜が笑い
「チャンス」
フッとレミリアの目の前から消える。
「どこいった!」
背後から声がする
「ここですよ」
偽咲夜と時止め合戦をしていた咲夜だが
ついに気力を使い果たしてしまい。顔色悪く肩で息をしている。
その首元には偽咲夜がナイフを突きつけている。
「フフフッ…この子がすごく大事なんですね?」
「助けたいですか?助けたいですよね!?!?!?」
「きっさまあああああああああああああ」
怒りに任せて攻撃をしかけようとするレミリアだが
「レミリア!!!!!」
布都が体を張って止め、一発ビンタを食らわせる。
「何をする!!!」
フーフーと鼻息荒く布都を睨み付ける。
布都も負けていない。臆せず睨み返す。
「お主は何を考えておる!!良く見ろ!お主が攻撃したとて相手が咲夜殿の首を刺す方が早い!」
「こんなもの誰が見ても分かるであろう!」
「咲夜殿の主人じゃろ!冷静に判断せんか!」
ハッとした表情を見せ、俯く。
「ごめん。ありがとう」
「うむ、どうやって打破できるかを考えなければな。」
「惜しい!でもビックリしてちょっとさしちゃった!」
咲夜の首から少し血が流れる。
ピクッと体を震わせたが、頭に来ると相手の思うつぼである
2,3深呼吸をし、じっとチャンスを待つ
「あら、こないのぉ?まぁ、でもどう足掻いても私生き残れないし」
「この子道連れにするから絶望する表情見せてね。」
「残り10秒でぇ~っす」
「ま、まて!」
布都の呼びかけも空しく、カウントを始める。
―――――――――――――――――――――――
「あ、ヤバいですね。お願いしますね」
「めんどくさ…あ、あやや、い、行きます行きます。やめて。手帳斬らないで」
―――――――――――――――――――――――
「3!」
「待てと言うのに!またんか!」
「2!」
偽咲夜は悦な表情を見せながらカウントダウンを行っている。
「1!」
「や、やめてくれええええええ!!!!」
レミリアの悲痛な叫びがこだまする
ブオッと一瞬風が起こる
「ぜぇ~ろぉ~♪」
「噴水、開始!」
目を見開きナイフを動かそうとする
が
「あれっ、えっ!?」
ナイフを持った腕が誰かに捕まれ動かない
「まったく、まぁこれでガラス窓の御代はチャラにしてくださいよ?
にしても流石幻想郷最速の私。気が付かれないように近づいて腕をつかむとか相当すごいですね。私」
偽咲夜の背後には射命丸文がけだるそうな表情で偽咲夜の腕を片手でつかんでいた。
偽咲夜は必死に抵抗するが動く気配はない。
文に至っては欠伸し、ボリボリと腹を掻いている。
「くっそおおおおおお!!!」
偽咲夜は捕まれながらも、もう片方の手で素早くナイフを握り、文を刺そうと体をひねった。
そのひねる動作に合わせ文も動き、遠心力に任せて投げ飛ばした。
「後はヨロシク。レミリアさん」
「馬鹿め!こっちには時を止めれるんだぞ!バカ烏が!流石鳥類!」
笑顔の文の額に青筋が浮く
「言い忘れてました。作業復旧。バグに対する処理は全て消し去ったそうです。」
「後は【そのもの】を駆除するだけだそうですよ。」
そう、時を止めようとしても止まらないのだ。
「クソッ!クソッ!」
「見た目が咲夜なだけに非常にやりにくいが、これでチェックメイトだ」
レミリアは飛んできた偽咲夜をつかみ、高く飛び上がると、地面に向かって投げた。
特大のグングニルを生成しようとしたが
地面に着く瞬間、無数のナイフが生成されるのを偽咲夜とレミリアは見た。
「うおああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
そのまま叩きつけられ体中にナイフがつきささる。
そのままサラサラと粉状になり、消えて行った。
「ざまぁ…見なさい…」
咲夜がいつのまにか落下地点近くにいた。
「咲夜!」
慌ててレミリアが駆け寄り、抱き上げる
「やって…やりました…瀟洒なメイドは…後始末も…できます…」
「無理をするな!!!急いで帰るぞ!」
「はい…お手数を…おかけしました…」
ふわっと景色が真っ白になった。
----------------------------------現実の世界
レミリア、布都、文が目を覚ます。
「おかえりなさい!無事でよかった!」
椛がニコニコと出迎える。
「あやや、これは中々疲れるものですねぇ」
レミリアが咲夜を見るが、まだ目を覚まさない
「おい!!咲夜はまだか」
「ちょっとまって、長かったから時間かかってるだけだよ!」
にとりも汗をかきながらモニタとにらめっこする。
そして
「うーん…」
咲夜が目を覚ました。
「咲夜!咲夜っ!」
レミリアは目に涙をためて咲夜に抱きついた。
子供のように、ごめんなさい、と連呼しながら泣きじゃくった。
「お嬢様…よかった…戻ってこれたんですね…」
咲夜もレミリアを抱きしめ戻ってこれた喜びに涙を流した。
「私が…興味を持たなかったら…咲夜の言うことを聞いていれば…!」
「いいんです。お嬢様。お嬢様に何もなくて、良かった…本当に…」
…
やがて少し落ち着いた咲夜は
「みなさんもありがとうございました。」
深々と頭を下げる。
と、視線の端っこのほうで、ヤムチャのように横たわり汗だくになりながら
ハーハーと息をしている早苗が目に入った。
「ちょ、ちょっと大丈夫?早苗?」
「お、がえり"なざい…ゼーゼー」
「ちょっともう無理…ゼーゼー」
ずっと力を使っていた早苗は、ちょっと話しかけないでと呟き、またゼーゼーと息をしはじめた。
「あ、送って行ってきますね。椛、後はよろしくお願いします。」
そそくさと、早苗を抱き上げ出て行こうとする文
「あ、文さん!」
咲夜の呼びかけに振り向きはしないが、動きを止める文
「ありがとうございました!」
その言葉を聞いて、文は無言で片腕をグッとあげ、そのまま出て行った。
「文さん、照れてるんですよきっと。多分すごくニヤニヤしてたと思いますよ」
あまり慣れてないから、と椛がフォローを入れる。
「あ、椛さん、文さんはどうしてあの世界に?」
「話せば長くなるんですが…」
回想=============================================
境内で将棋をしている諏訪子と神奈子。
「まて、諏訪子。その手はちょっとアレだ。卑怯だ。軍神が卑怯と判断すればそれは卑怯なのだ。」
「馬鹿言わないで、どう考えても正当な攻めじゃないの。だめだめ!」
参ったなぁとくしゃくしゃを頭を掻く神奈子
と、突然感じる非常に強い気に気が付き、双方大きく体を震わせる。
「早苗!?な、何だ。何をしているんだ!?」
「神奈子!今日はカッパの所行くって言ってたよね!」
「すぐにいくぞ!」
と、飛び出したのは良いが、場所が分からない。
「あー、今日も良い天気ですねぇ」
椛がふわふわと飛んでいるのを見つけた。
「おい!天狗!」
「は、はぃいいい!?」
すごい剣幕で呼ばれた椛は半泣きになりながらも返事をする。
「早苗の場所を知っているか!」
「あー、えっと、あの、あ、文さんが詳しいかと…」
あの烏か…と神奈子は舌打ちをするが、大きく息を吸い込み
大声で呼ぶ
「烏天狗の射命丸!!!!どこだ!!!!すぐにこい!!!」
と、叫んだのと同時に神奈子達の目の前に文が直立不動で立っていた。
目は丸く、脂汗を掻きながら
「ひゃい。にゃんのごようでちょうか」
と喋るのが精いっぱいである。
「早苗の居場所を知りたい」
「分かりました、すぐご案内します。」
先ほどの気を文も感じ取っており、一瞬にして状況を把握すると、今回の事件の場所へ案内した。
場所は妖怪の山中腹、カッパが住んでいる滝近くの岩場、そこに入口があった。
「早苗!」
神奈子が扉を開けると
ベットに寝ている咲夜とレミリア、何やら器具をつけている布都がおり。
部屋の端っこでは陣を形成し、中心に鎮座している早苗がいた。
チラっと神奈子達の方を見るが、また視線を落とし、集中した。
何が起きているか分からない4人はただ、茫然とするだけであるが
モニタに気が付き、非常にヤバい状況であるのを確認した。
やがて布都が眠り、モニタの中に入り込んだ。
まだついていけない神奈子と諏訪子はにとりを捕まえ、状況説明をさせた。
とりあえずピンチで咲夜を救おうとしている
早苗は何も起きないように奇跡の力をフルパワーで使っている
事が分かった。
と、椛がひらめき
「文さん…」
と笑顔のまま文の肩にポン、と手を置く
「な、なんですか」
「借りを返すチャンスですね。」
「は?嫌です。」
椛は笑顔のまま、手帳に刀を当てつける。
文は機材を自分で頭にセットした。
「早苗!人数が増えても大丈夫なのかい!?」
と、にとりが叫ぶと
「大丈夫です!行ってください!」
と、早苗も大きな返事をする。
タイミングを計る為、文は寝っころがり、スタンバイ。
「おい、早苗大丈夫か?」
「汗拭こうか?お水とってこようか?」
「今日の晩御飯は何?」
「私たちも入ろうか?大丈夫か?」
「そうだよねぇ。入ろう入ろう。楽しそう」
「ちくわ大明神」
「あ、それより、私今日の晩御飯はお魚がいいなぁ」
「行ける?本当に?」
「どすこいどすこい」
「さぁいつでも準備万端!神の力を思い知らせてやろう」
と神奈子と諏訪子が早苗を心配してか、喋りかけまくる
が
「うるさい!!!気が散る!!!」
「あんたら2人入るとかキャパ超えるわ!!」
「出て行けぇ!!!!」
ものすごい剣幕で2人を一喝する。
神奈子と諏訪子はしょんぼりしながら出て行った。
にとりは何やらよく分からない文字と睨めっこをしていたのだが
突然、神降臨!と叫ぶとガタガタと何かを始めた。
「見つけた!これがあいつらのObjectだね!!!よしよし!これがアイツのメソッドで…
実行中なのに消すとエラーが起こるから…参照元は…よし、大丈夫だ!
よし、return false; 無効化できたよ!!後は排除するだけだ!
あいつらはもう能力はつかえないよ!」
にとりが叫び、文に伝言をお願いする。
ふと椛がモニタを見ると、咲夜の首元にナイフが突きつけられていた。
「あ、ヤバいですね。お願いしますね」
「めんどくさ…あ、あやや、い、行きます行きます。やめて。手帳斬らないで」
回想ここまで=============================================
「そんな事があったのね…椛、ごめんなさい。巻き込んでしまって…
文さんにもきちんと伝えてください。」
神妙な面持ちで頭を下げる咲夜
きょとんとした表情を一瞬見せた椛だが
「やだな、これで借りは返しましたよ?」
にっこりと笑って返した。
ひとまず解散ね、とレミリアが腰に手を当て、解散宣言する。
「とりあえず、にとりと紫、後日連絡するから逃げるなよ」
「みんな無事だったんだし終わりよければ~~で済ませてよ。って紫がいない!」
紫はドタバタの内に逃亡
にとりは仕方なく1人で片付けを始めた。
「布都、本当に助かった。後、色々ありがとう。布都がいなければ全員無事で帰れてなかっただろう」
「何、お安い御用よ。役に立てて何よりじゃ」
がしっと両者は硬い握手をし、帰路についた。
---------
いつもの何もない時間がまた始まった。
「肉体的には大丈夫そうだが、精神的によろしくない事件だったから」
と、一週間休みを取らされた咲夜。
ベッドでゴロゴロしていたが、どうにも時間が潰せない。
窓のから外の様子を伺う。
もちろん、ナイフを投げる少女はいない。
代わりにメイド妖精が大量の洗濯物を干している。
そこへサッカーボールが勢いよく飛んできて洗濯物干しに豪快にあたる。
ガンガラガッシャーン!と盛大な音を立て洗濯物が全滅する。
怒号と泣き声が交差する。
しょうがないなぁと時を止めようとするが
『仕事はしてはいけない。私の絶対命令だぞ』
のレミリアの言葉を思い出し、見守る。
少ししっかりした中型妖精がやってきてキビキビと指示をしている。
ひと段落しそうな所で咲夜は部屋を出てゆっくりと歩く。
メイド妖精がざわざわとバタバタとしており、活気ある館内
少し小腹がすいたので、厨房へと向い、ドアを開ける。
ゴリゴリぷちぷちゴリゴリゴリゴリ
ゴリぷちぷちゴリゴリぷちぷちゴリゴリゴリ
ゴリゴリゴリぷちぷちゴリゴリぷちぷちゴリ
すり潰される音がとプチプチと潰れるような音がし、咲夜の頬に何かが飛ぶ
「わっ」
手で拭うと、何か茶色いものであった。
香ばしいにおいがする。
ハッと我に返り目の前を凝視する。
メイド妖精が一生懸命すり鉢で何かをすっている。
どうやらごまあえにするゴマのようだ。
晩御飯の用意がはじまってるのなら邪魔はしないでおこうと
その辺にあったおやつの残りのクッキーをひとつつまみ、厨房を後にする。
仕事の邪魔をしないように館内を散歩する。
すると玄関ホールから話声が聞こえてきた。
「何ィ?掃除が終わらないだと!」
「はい。やってもやってもメイド妖精が散らかすんです。」
「マジか…アイツはいつもどうやってたんだよ」
レミリアと美鈴が玄関先で話をしていた。
(それは一日の最初にきちんと細かく分担指示をしていないからですよ)
と思っているとレミリアと目があった。
「咲夜、どうだ体の調子は」
「ええ、おかげさまでゆっくりさせていただいておりますわ」
「咲夜さん、どうやって綺麗にしているんですか?」
「ふふ、もう今日は手遅れよ。諦めなさい。」
「掃除は明日にしてご飯の所行ってきます。」
そういうと美鈴は厨房まで飛んでいく。
「ぎぇえええええええ!!!!!なんですか!!!このゴマの量は!!!!!!」
美鈴の情けない叫び声に思わず吹き出してしまう。
「今日はゴマ尽くしですね」
「そうだな。これは後で文句いわねば。さて、食堂でコーヒーでも飲もうか」
「お嬢様」
「なんだ?」
「ふふ、いつまでもお慕いしておりますわ。」
突然のセリフにレミリアはドキッとし、思わず赤面する。
「ふ、ふん!あ、当たり前だろ!」
羽はぴこぴこ嬉しそうに動いていた。
最強の賢者と最強のメカニックがお届けする
最新ヴァーチャルマッスゥイーン
試してくれる人募集
応募は以下アドレスまで!
[email protected]
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
なんとも怪しげなチラシが某文屋によって届けられる。
チラシのおまけとして文々。新聞がつつまれていた。
「オマケが新聞?逆でしょうよ」
冷静にツッコミを入れるレミリア
自室の窓ガラスにふと目をやる。
粉々に砕け散り、破片は部屋の中に散乱している。
新聞を持ってきた烏天狗がブチ破ったのである。
はぁ、とため息を付いた瞬間、綺麗に掃除され、窓も修復されていた。
「お嬢様」
レミリアの机の正面に咲夜が立っていた。手には何か手帳らしきものを持っている
「ご苦労様。で、どうなったの?」
「はい、とりあえずネタ帳をすり替えてきました。これを元に賠償金請求できます。」
「なるほどね、それはいい考えだわ」
「ところで、この最新マシーン、何だと思う?」
「ヴァーチャル…なんでしょうか。何か疑似的に何か見せるとか体験させるとか…」
「疑似的、ねぇ。」
「お嬢様、先に言わせていただきますが、今回はメンツがひどすぎます。」
「八雲紫と河城にとりのタッグは恐らくロクなことになりません。お忘れください。」
「とは言っても、暇つぶしにはなりそうだけど…楽しそうじゃない?」
「どうしてもというのなら…」
少し困った表情で考え込む咲夜
「分かりました。但し一つだけ私と約束を」
「ほぅ?」
「私が先に試します。その後にお嬢様がお試しください。」
「でも咲夜、あなたに何かあったらどうするの?」
「そのお言葉非常に嬉しいんですが、そっくりそのままお返しします。」
まぁ、咲夜なら何かあっても何とかするだろう
とレミリアは結論を出した。
「分かったわ。じゃぁそれでお願いね?」
無意識のうちに満面の笑みをこぼすレミリア
咲夜がそっと時を止めたのは言うまでもない。
さっそく怪しげなアドレスにメールをすると、すぐさま返信がきた。
よほど暇だったのだろう。
内容は明後日、お昼12時くらいに妖怪の山の入り口に集合だそうだ。
「じゃぁ、咲夜、明後日お願いね?」
「はい、かしこまりました。では私も楽しみにしております。」
ガッシャァアアアアン!!!!!
盛大な音と共に窓ガラスが砕け散った。
キラキラとガラスの破片が空を舞う
外の光に反射され、まるでダイヤモンドダストのように光を乱反射させる。
その光の中に佇む者が1人
幻想郷のブン屋、烏天狗の射命丸文である。
凛とした表情でレミリア達を睨む。
「咲夜さん?私の…フゴゴ!?」
凛々しい佇まいから一転、厳重に紐で縛られ
芋虫のようにふにゃふにゃとうごめく文。
どうやら咲夜が時間を止めて縛ったようだ。
「ファフヤふぁん!ふぁふぁふぃの!ふぁふぇふぃふぇ!」
猿ぐつわされ、何を言っているのかは分からないが
恐らく咲夜に向かって文句を言っていたのであろう。
「あなたが欲しいのはコレかしら?」
手帳をパラパラとさせる
「ほふふぇふ!ふぉへへふ!ふぁふぇふぃふぇ!」
レミリアはため息をつくと、猿ぐつわを外す
「んっぱぁ!レミリアさん!ちょっと教育がなってませんよ!」
開口一番の文句にレミリアはまたため息をつき、イスに座りなおす。
「ちょっと、窓ガラス2枚目よ?」
咲夜は腕組みをし、語尾を強める。
「咲夜さんが手帳を奪わなければ2枚目はありませんでしたが?」
ゲスい顔をして煽る
一瞬仁王像のような表情をした咲夜をレミリアは見逃さなかった。
「あなたじゃ話にならないわね。ホント。」
「手帳をさっさと返してくれれば…えっ!?」
「こ、ここは?あれ?文さん何で縛られてるんですか?」
「あれ?咲夜さんとレミリアさん?あええ?」
咲夜と文の間に現れたのは、文の同僚、白狼天狗の犬走椛
またしても時間を止めて拉致してきたのである。
「もみじ!助けてください!とらわれてしまっているのです!」
「んー…」
唐突に縛り上げる事はしないと思うけど、大方何か悪さでもしたんじゃないかなぁと
文の言葉を信じず、ふと窓際に目をやる。
無残にも砕け散った高そうな窓枠と散らばるガラス片
2,3秒凝視すると、椛もため息をついた
「レミリアさん、咲夜さん、すいません。うちのが悪さしまして…」
しっぽもへにゃりとし、椛が謝る
「なんで謝ってるんですか!おかしいでしょ!」
「黙って」
しっぽがピーンと立ち、椛は文を睨み付ける
文は喋らなくなった。
「窓ガラス…うーん。弁償しないといけないのですが…生憎手持ちが」
「まぁ、きちんとした謝罪が聞けたし、今回は良しとしましょう。」
はい、と椛に手帳を渡す
「い、今です!私を抱えて逃げてください!もみじ!」
「…」
無言で文を睨む椛
「本当にすいませんでした。何かあれば必ずお助けします。」
「あら、その方が高くつくかもしれませんよ?」
「できることならば!」
「と、言うわけですが、お嬢様、如何致しましょうか」
「そうね。咲夜に一任するわ。」
天狗側に大きな貸しができてなんだかウキウキの咲夜
お土産に大きなおにくを手渡す。
「い、いや、ご迷惑をかけてしまったのにお土産なんて!とんでもないです」
「まぁまぁ。突然連れてきた非礼をお詫びしないといけませんし。」
椛のしっぽが大きくぱたぱたと揺れているのを確認し
咲夜はふふっと可愛く笑う
「でも体は正直なのですね?」
「うっ…うう…」
椛は戻る途中何度も振り返りお辞儀をしていた。
文は麻袋の中に入れられており、時折もごもごと動いていた。
「まったく、天狗に貸しを作ってどうするんだか」
「ふふっ、どうしましょうか♪」
━━━━━ 運命の日まで後1日 ━━━━━
朝食―――
一日のエネルギーを蓄える為の大切な食事である。
レミリアの運命の前日の朝食は
ご飯 出し巻き ウインナー のり 鮭 納豆である。
そう、運命の日の前日なのである。
「何が運命の日だ!」
突然レミリアは、バンっ!と強く机を叩き立ち上がる。
他紅魔の住人は驚きのあまり箸を止め、レミリアを見る。
我に返ったレミリアは数秒固まった後、顔を真っ赤にしながらゆっくりとすわり
俯きながら黙々と食事を始めた
もう一回寝てもいいのよ?とパチュリーに馬鹿にされながらもレミリアは耐えた
しかし終始涙目である。ちょいちょい時が止まったのはいうまでもない。
次の日には(自分の中で)大きなイベントが始まるのである
しかし気になったのは参加者、他に誰かいるのかがなんとなく気になっていた。
稀に博麗神社で行われる飲み会では幻想郷の住人が集まってくる
その中で親交を深められているものや、まったく喋った事がないものもいる。
何となく話しにくいのは嫌だなぁと気になるのである。
そこでもう一度怪しげなメールアドレス宛に問い合わせメールを送ってみた。
またもやすぐさま返信が返ってきた。本当に暇なのだろうか。不安になる。
メールには参加者の名前が記述されており、レミリアはまず、自分たちだけではない事実にホッとした。
そこに書かれていた名前は
・東風谷早苗
・物部布都
の2名だけであった。
(やばい言うほど仲良くない)
咲夜自体は早苗とは仲が良いであろうが
物部布都
完全に誰だお前状態のレミリア。
気になるレミリアは物部布都について調べて回ることにした。
----- 図書館
「ぱちぇー」
「はいはい。もう寝坊助さんは大丈夫?」
「忘れなさいよ。」
早速パチュリーに聞いてみる。
「物部布都…ちょっとまってなさい」
むきゅむきゅと不思議な足音をさせながら本を漁る。
そしては幻想郷登場人物一覧と書かれた本を持って帰ってきた
「最近出て来た豊聡耳神子一派の1人ね。一般的に ふとちゃん って呼ばれてるらしいわ。」
「ふとちゃんねぇ。どんな人なのかしら」
「うーん、結構勘違いする時があるって事以外は…」
「そうだ、魔理沙なら知ってるんじゃないかしら。今日来るわよ」
「ほうほう、じゃぁ話を聞いてみようか」
バァン!
言い終わると同時にドアが盛大に開く
「おーっす!本交換しにきたぜ!」
測ったかのようなタイミングである。
魔理沙はきちんと前回分の本を持参し、交換しにきていた。
えらく行儀よくなったもんだと思われるかもしれないが、一つ大きな事件が起こった結果である
━━━━━━━━━━━━━━少し過去のお話━━━━━━━━━━━━━━
「ちょっと魔理沙、勝手に持って行くのやめてくれない?」
「いやだぜ」
「じゃぁ、前回持って行ったもの返してから持って行ってよ」
「いやだぜ」
「お気に入りの本もあるのよ?私の気持ち考えた事ある?」
「特にないぜ」
「うーん…」
しょんぼりするパチュりー
「ふん、まぁもらっていくぜーじゃぁなー」
しょんぼりするパチュリーをヨソに本を持って出ようとする。
「返さないなら毎日お前の家を焼くぞ?」
おっさんの声のようなダミ声で恐ろしい言葉を囁いた。
魔理沙はびっくりして後ろを振り返る
しかし、パチュリーは肩を落とし、椅子に座ろうと歩いている所であった。
疑問に思いつつも魔理沙は紅魔館を後にした
その日の夜
「しかし、この本凄いな…ためになるぜ。っと、そろそろ寝るか」
明かりを消し、布団に潜りこむ、そして目を瞑った時に異音に気が付く
パチッパチッと何か変な音がする。
不思議に思い体を起こすと、窓の外がぼんやりと赤っぽい
【返さないなら毎日お前の家を焼くぞ】
あの時聞いた言葉を思い出しハッとする。
慌てて外に出ると、燃えていた。家の壁の一部が
とっさに水をかけ、鎮火させる。
恐怖のあまり体が震えていた。
その晩、魔理沙は一睡もすることができなかった。
そして夜が明けると同時に紅魔館へ向かう…
勢いよく図書館のドアを開け、パチュリーの元に向かう。
パチュリーはいつものように椅子に座り本を読んでいた。
「おい!本当に家に火をつけるヤツがあるかよ!!!!」
バンッ!と机を強く叩き、睨み付ける。
「なんの事かしら。それより本でも返しにきたの?」
「とぼけるな!!!殺す気か!!!」
「そう、返しにきたのではないなら帰りなさい。」
「お前!人の話聞いてるのか!!」
「何を言っているのはさっぱり理解できないけど」
「あなたの家がどうなろうとしった事ではないし、昨晩はずっと本を読んでたわ。」
「勝手に本を持って行く癖に、火が付いたら犯人呼ばわり?いい加減にしてちょうだい!」
突き放す発言と声を荒げるパチュリーにびっくりした魔理沙だった。
「…疑って悪かった。が、本は借りてくぜ」
またしても、本を1冊持って図書館から出ようとすると
「外壁で良かったな。次は内側から攻めるぞ」
と囁かれた。
バッと後ろを振り返ると、少し遠くでパチュリーが変わらず本を読んでいる
不審にも思いつつも魔理沙は無言で紅魔館を後にした。
少し昼寝をしつつ、なんだかんだで夜
今日はぐっすり寝れるだろうと布団に入る。
疲れが溜まっていたのかすぐに意識が遠くなる
が
パチッ…パチッ…
昨晩と同じ音で今度はコゲくさいにおいがする。
そしてなんだか熱い。
飛び起きると、部屋の隅っこが結構な勢いで燃えていた。
集まってたゴミにも引火したのだろう。
また慌てて水をかけ鎮火させ、他の部屋や家の外も見回った
特に異常は見られず、ベッドに腰掛ける。
「外壁で良かったな。次は内側から攻めるぞ」
また、アノ言葉が脳裏に浮かぶ
体の震えが止まらない。
もう一度、窓を見直すが、鍵はかかっている。
最後に玄関のドアを確認したが、鍵はかけられている
誰かが侵入した形跡はないのだ。
と、玄関先から戻ろうとした瞬間
「運よく目が覚めたのか。惜しい惜しい…もう少しで殺せたのに」
「
惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい
殺せたのに殺せたのに殺せたのに殺せたのに殺せたのに殺せたのに
惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい
殺せたのに殺せたのに殺せたのに殺せたのに殺せたのに殺せたのに
惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい惜しい
殺せたのに殺せたのに殺せたのに殺せたのに殺せたのに殺せたのに
」
「うわああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
魔理沙は半ば発狂した感じで部屋を荒らした。
実験道具などがガシャガシャと割れ、家具や食器棚も破損した。
長い時間自分の家の中を荒らして回った。
もう家の中は修復がきくかどうか怪しいレベルまで痛めつけられていた。
一通り自分の家を荒らしまくった後、ついに魔理沙は泣き崩れてしまった。
睡眠不足もあるだろうが、魔理沙の精神はもう限界に来ていた。
やがて魔理沙は、瓦礫の山と化した家から
泣きながら今まで借りていた本をまとめる。
まとめ終わる頃には夜が明けていたので、また紅魔館にやってきた。
大きな荷物を背負い、図書館に入る
疲れ切っており、目は少し虚ろである。
「あら、大きな荷物ね。魔理沙。引っ越しでもするの?」
「パチュリー、本、返すから…助けてくれよ…」
その場に泣き崩れ落ちる魔理沙。
パチュリーは小悪魔にコーヒーでも用意するように命じ
魔理沙を椅子に座らせた。
「どうしたのよ」
「今日は、部屋の隅っこが燃えた…」
「運よく目を覚ましたのかって…惜しいって…殺せたのにって…!!」」
パチュリーは無言で立ち上がり、返ってきた本を確認する。
「魔理沙、あなたこんな本まで持って行ってたのね。」
パチュリーは一冊の本を取り出す。
取扱い厳重注意、と書かれた本である。
「この本はね。とある火の魔導師が書いたものなの」
「凄い思念がかかっていたから私が退治して使役しようと思ってたものなの」
「まぁ、私がご主人様になるって事ね」
「だからあなたが勝手に持って行ったから怒っているのだわ。」
「どうすりゃ…」
「ちょっと呼び出すわ。」
パチュリーが短く詠唱すると、本の中から赤いローブをまとった老人が具現化してきた。
「おや、盗人と主人。何か?」
「もう魔理沙の家に火をつけるのをヤメなさい。というか何考えてるの?」
「ふん。盗人が1人死のうが関係ないわい」
「死にたいのはあなたのほうね?いいのよ?あなたが死んでも私は困らないわ?」
「おお、怖い、怖い。もうしないよ。命令は忠実に聞かねばな。」
まるで反省していない老人はフォフォと笑いながら本の中に帰って行った。
「まったく、勝手に持って行くからよ?」
「ごめん…ごめん…」
「まぁ、1冊毎交換ならいいわよ。あなたの知識を広げるのは私もいい事だと思うから」
「ただし、持って行く本のチェックはさせてね?今回見たいな事になったら困るでしょ?」
「うん…うん…」
グズグズと泣きながら魔理沙はパチュリーと約束をした。
パチュリーは大泣きする魔理沙を抱きしめ、優しく頭をなでた。
一瞬パチュリーが歪んだ笑顔をs
━━━━━━━━━━━━━━ここまで━━━━━━━━━━━━━━
そんなこんなで、魔理沙もすっかり良い子になった。
「お、レミリアじゃん、珍しいな!どうしたんだ?」
「本当に最高のタイミングね。あなた。ところで、物部布都って名前に聞き覚えは?」
「聞き覚えも何も弾幕勝負もしたし、この間の宗教乱闘騒ぎでもカチあったぜ」
「どんな人なのかしら?」
「んー」
わしわしと頭を掻く。同時に帽子もわしわしとうごく
「バカじゃないか…そうか、アホの子だ!」
「はぁ?」
予想外の返答に困るレミリア
「っていうかレミリア、お前見てただろ?遠くから。宗教戦争の時だ。」
「ええ?」
「ほら、皿を投げまくってたやついただろ」
「あぁーーー!」
名前と顔がやっと一致した。
可愛らしい子だなぁという印象はあった。
「ってアホの子って何よ。」
「まぁ、アホってか天然ってか悪いヤツじゃないんだけどなぁ」
「まぁ釈然としないけど名前と顔が一致しただけでも十分だわ。」
ありがと、と軽く挨拶をし自室に戻る。
明日はどんな事が起こるのか、本当に楽しみで仕方がないのである。
無意識のうちに羽もゆらゆらと気分よく揺れる
━━━━━ とうじつ! ━━━━━
寝起きもバッチリ、睡眠時間もバッチリ、ご飯もいっぱい食べた。
さぁ、いくわよ!
元気な掛け声と共に玄関の扉が開かれ、レミリアと咲夜は妖怪の山へと向かう
妖怪の山、麓。
ここには妖怪から神まで幅広く住んでいる山
麓から長い階段が伸びており、【守谷神社はこちら】と看板も立てられていた
一般の村人なども参拝によく訪れるようである
案内役がいるのかとキョロキョロしていると
目の前に突然大きなスキマが現れ、中から八雲紫が顔をのぞかせた。
「お、来た来た。もう他参加者はそろってるわ。こちらへどうぞ」
案内されるままにスキマの中にはいると
壁一面鉄張りでよく分からないものがたくさんついた本当に奇妙な部屋であった。
別の部屋に案内されると、そこには早苗と物部布都がくつろいでいた。
「あ、咲夜さん!こんにちわ!」
「こんにちわ。早苗。良くあなたの保護者OKしたわね」
「いやー大変だったんですよぉー。諏訪子様なんて田んぼに頭を…」
キャッキャと仲の良い2人は楽しそうに話をしている
と、レミリアと布都の目があう
(何か話かけておくか…)
「あなたが物部布都ね?レミリアよ」
「おぉ、例の湖の館の主人じゃな?よろしくたのもう!」
ドヤーっと文字が出てきそうなくらい意味不明なドヤ顔
「え、ええ。」
レミリアは苦笑いしながらも快く握手
「にしても、噂の主人がこんな可愛らしい子とはな!おっと、可愛らしい子は失礼じゃったか」
「いやいや、お世辞が上手ね。悪くないわ。」
「この間のヤツ、見てたわよ。お皿投げるなんてインパクト大きすぎて良く覚えてるわ」
「いやはや、恥ずかしいもんだな。」
たわいない話やをワイワイと行い、それなりに打ち解けた。
時折見せる布都の純粋な笑顔にドキッとしながらも、お互い聞き上手話し上手で
良い雰囲気であった。
「ところで」
早苗が問いかける
「なぜ参加を?」
「ただの興味本位だよ。」
「私はお嬢様の実験台ですわ」
「我は…うう…」
バツが悪そうにしている布都
布都は少し俯いたままちょっと憂鬱な表情を浮かべている。
「どうしたんだ?」
すかさずレミリアが心配そうにのぞきこむ
「じ、実はお恥ずかしい話なんだが、同門にな、勝手に応募されて…」
「断ったり来なければいいんじゃなかったのか?」
「いや、まぁ、我でなければ行けない、だのなんだの持ち上げられてしまってな…」
「ついつい気分も良くなって来てしまったわけなんだが…不安じゃ」
しょんぼりしている表情も良い!とレミリアは羽をぱたぱた
咲夜が怖い表情をしたのは気のせいだと信じる。
「まぁまぁ、でもそのおかげで今日出会えたじゃないか。今度ウチに遊びにくるといい。歓迎しよう」
「ほ、本当か!うれしいぞ!」
「ああ、もう友人だ」
「ゆ、友人…」
パァァと布都が笑顔になる。眼はキラキラしていて嬉しい感情があふれ出ている。
そんなに嬉しかったのか?とレミリアは不思議に思うが、悪い気はしなかった。
むしろなんだかレミリア本人まで嬉しくなっていた。
良い雰囲気であったが、咲夜が早苗に話題を振った
「早苗は何で参加を?」
「決まってるじゃないですか!」
「巨大ロボの操作をしたいんですよ!」
「それから…」
と言いかけた時、唐突に扉が開き、紫とにとりが現れた。
「本日はお集まりいただき、ありがとうございます。開発責任者の八雲紫よ」
「技術責任者のにとりだよ!」
「さて、今回の最新ヴァーチャルマッスゥイーンの説明を、にとりよろしくね」
「あいよ。今回のマシーンは自分が体験したいなーといった世界が体験できるんだ」
そこにベッドがあるだろ?そこに寝て、頭に器具を付けて眠りにつくんだ
そうするとあら不思議、架空の世界が体験できるってことなんだよ
簡単に説明するとこんなもんだよ」
「質問が」
咲夜が手を上げる
「頭に着けて架空の世界って何されるのかしら?」
「微量の電気を流すんだ。そして一種の幻覚ガスを注入する
心配しなくてもいい、幻覚ガスに関しては八意先生のチェック済みさ!
大丈夫かい?」
「ええ、ありがと」
「他に質問は…?……なさそうだね。早速だけど誰かやってみるかい」
「定員は複数いけるようには作ってるけど、今回は1名でね。順番にやってもらうよ。時間は30分、経過した段階で起こすから心配無用」
「では」
またしても咲夜が手を上げる
他誰も手を上げようとしない。
レミリアはやや不安そうにも咲夜を見つめる
咲夜はレミリアに優しく笑顔を返し、ベッドに横たわる。
実験者の2人はテキパキと準備を進め、咲夜に謎の器具をかぶせ固定したのち
眠らせた。
「さ、問題なし、スタートだよ。このモニターを注目!」
にとりが指をさしたのは咲夜の頭上にぶら下がる四角いもの
モニターと呼ばれたそれには咲夜がうつる
「どんなことをしているかモニタリングできるんだよ!楽しみだねぇ」
「趣味悪いわね。とても見せられないものだったらどうするのよ」
「まぁ、実験の意味もあるし、その辺は祈るしかないね」
変なの見ないでよ、レミリアは心の中で咲夜にお願いをした。
━━━━━━━━━━━━━━咲夜の世界
(真っ暗ね。でも疑似体験なら思い浮かべるだけでいいのかしら)
咲夜は紅魔館をイメージすると
一瞬ノイズが目の前を走り、咲夜のイメージどおり風景が広がる
「うわっ!」
思わず声を上げる、あまりにもリアルな世界にビックリしたのだ。
ドキドキしながら門前へ歩く
門の前に見覚えのある人物が見える。
ゆっくりと歩いて近づくと、
そこにはピシッと直立不動で立つ、美鈴がいた
「あ、咲夜さん、お帰りなさい!」
「え、ええ。ただいま…今日は寝てないのね」
「へ?いやだなぁ。こんな緊張した現場で寝れませんってばー」
ニコニコと話す美鈴。
これが理想の美鈴?とやや疑問に思っていると、遠くから声が聞こえる
「おらー!今日こそは!」
「あ、魔理沙さんですね。飽きてきましたし、そろそろおしまいにしましょう!」
美鈴はふわっと浮かび上がると、魔理沙はその行動に反応し、不意打ちのマスタースパークを放つ
「不意打ちも戦術の一つですね!良く考えましたね!ですがっ!」
美鈴はマスタースパークに対し、真正面に移動すると、ぐっと体重を片足にかけ
そのまま、蹴とばした
ゴォン!と低い音がし、推進先が180度変わる
「えっ?」
魔理沙はマスパをモロに受け、空中で意識を失い、落下する。
ゴリッ。グチャッ
「はい、おしまいです!」
「あ、咲夜さん、少し遅れていきますって伝えてください」
一瞬の出来事と、魔理沙の最期を見聞きした咲夜は目を見開き止まってた。
「咲夜さん?」
「ふ、ふぇ!?あ、あ、う、うん」
「変な咲夜さん」
と不思議そうな表情をした美鈴は、鼻歌を歌いながら落下した魔理沙に近づく
何度かつついた後、おもむろに魔理沙の腕をつかみ
くいっと引っ張った。
ブチブチと千切れる音がし、赤い何かが飛び散る。
美鈴はケラケラと笑い、そして口にする。
じゅるじゅると嫌な音がする。
一瞬気が遠くなりそうだった。
震えが止まらなかった。
(え、ちょ、な、何これ…私ってこんな事望んでるの?ウソでしょ…)
ただ、このまま見続けるわけにはいかず、何も感じていないフリをして館の中に入る
ゴォンと扉がしまる音が響き渡るがシーンと静まり返っている。
喧しいメイド妖精達の姿が見えない。
(静かね…)
コツコツと自分の足音だけが響く
しかし先ほどの光景が目に焼き付いて忘れられない。
なんだか館の住人には出会いたくなかったので、真っ先に
自分の部屋へ向かった。
ドアを開けると
いつもとはレイアウトが違うことに気が付く
(間違えたのかしら?)
恐る恐る部屋を物色してみたところ、愛用のナイフがあったり
何より、ベッドカバーが同じなので自分の部屋だろうと、ベッドに腰掛けた。
そして先ほどの光景をまた思い出し、吐き気をもよおしてしまうため
ぶんぶんと頭を振って忘れようとする。
(にしても何なのかしらアレは…うっぷ)
(私の深層心理こんな感じだったの?どうして…)
「うおあああああああ!!やめて!やめてくれええええええ!!!!」
と、外から声というか悲鳴が聞こえてきた。
嫌な予感がしながらも窓際に移動し、恐る恐る外の様子を伺う。
銀髪のメイド服を来た女の子が
縛られている男に向かってナイフを投げている。
コーンと男の額にナイフがささる。
断末魔の悲鳴を上げ息絶える
続けざまナイフを投げると、首にナイフが突き刺さると
ブシャアッと噴水のように飛沫を上げる。
その光景を見て女の子は飛び跳ねて喜ぶ
「や、やだ!な、何なの!?」
思わず声が漏れる。
こちらに気が付かず、女の子はメイド妖精に指示し、違う男を連れてこさせていた。
次は素早く近づきナイフを腹に
咲夜はとっさにしゃがみ込み、見るのをヤメた。
野太い叫び声がする。
顔は見ていないが、銀髪で青いメイド服を来て、ナイフを使うのは
自分である。
「いや…違う…違う…私…そんな事したくない!したくない!したくない!」
しゃがみ込み、耳を両手でふさぎガタガタと体を震わせながら涙をこぼす。
震えながらも立ち上がり、館から逃げ出そうとゆっくりと部屋を後にし
少し歩くスピードを上げ、玄関ホールへと向かう。
玄関ホールから誰かの会話が聞こえてきた。
身をかがめ、恐る恐る確認する。
「何?咲夜が帰ってきただと?」
「はい。様子が変だったのでなんだろうと思ってました。」
「バカ言うな。咲夜は裏庭で射撃してるんだ。そいつは…」
レミリアと美鈴が玄関先で話をしているのを確認した。
正面突破はできそうにない。
「今回のエサだよ!!!!!」
そうレミリアが叫ぶと咲夜がいる方向に向かって鋭利な刃物を投げつけた。
(バレてる!)
来た方向逆回りし、一旦厨房に逃げ込む
厨房の中を確認せずに入る。
ゴリゴリぷちぷちゴリゴリゴリゴリ
ゴリぐちゃぐちゃゴリゴリぐちゃぐちゃゴリゴリゴリ
ゴリゴリゴリぐちゃぐちゃゴリゴリぐちゃぐちゃゴリ
砕かれる音とねちっこい音がし、咲夜の頬に何かが飛ぶ
「わっ」
手で拭うと、血であった。
ハッと我に返り目の前を凝視する。
人間が破砕機のような機械に頭から突っ込んでいる
無情にも機械は止まらず男を粉砕し、血肉が飛び散る。
「おぐっ…!」
我慢しきれず咲夜は床に嘔吐し、部屋を出る。
「ハハッ!逃げられるとでも思ったか!!!」
そこには目を見開いたレミリアが立っていた。
自分の知っているレミリアではないと判断した咲夜は
本能的に時を止める。
「な、なに…このお嬢様に似た気持ち悪い物体は…」
そのまま咲夜は無視して玄関ホールに向かい、外に出る
そして外にでた所で時を動かす。
ぐにゃぁと景色が歪む。
「えっ!?な、なに!?」
フッと景色が入れ替わる。
そこは紅魔館の図書館である。
「わ、私外に出たはずじゃ…?」
と、正面にパチュリーが見える。
目が合ってしまった。
しかしパチュリーは普段と同じように眠そうな表情をしていた。
「あら、咲夜。真っ青な顔してどうしたの?大丈夫?こっちへいらっしゃい」
他のメンツと違って、特に変な所もない
図書館の扉の外側からは、妖精メイドらしき声でざわざわと言っているのが分かる。
「あ、あああ…」
戻ってこれたのだ。自分の良く知る紅魔館に
目を真っ赤にし、グズグズと泣きながらパチュリーに近づく
「どうしたの?大丈夫?レミィにいたずらでもされたのかしら?」
「ぱ、パチュリーさまぁ…」
優しい言葉に思わず泣きそうになる咲夜
「落ち着いて。紅茶でも飲みなさい」
すっと差し出される紅茶
良く見ると赤い凄く赤い
鉄のようなにおいがする。
そして、カップの下から、プカンと
眼球が浮かび上がる
眼球はこちらをじっと見つめ、プカプカと浮く
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
咲夜は立ち上がり逃げ出だそうとする
「待ちなさい」
咲夜の足に無数のツタが現れ、足が引っかかる。
「ふふ、残念だったわね…元に戻れたと思った…?」
ふいに腕をつかまれる。
普段のパチュリーからは考えられない力で握られ、抵抗してもはなすことができない
「なかなか良い体してるじゃないの。味見させて?」
パチュリーは小さなナイフを生成すると、少し腕を切りつけた。
「あぅっ!」
血が流れ出すと、それを指でぬぐい、ペロリと舐めた。
パチュリーは目を大きく開き、にやにやしながら指をなめ続けた。
「な、なんなの…」
表情に恐怖を覚えていると、
見た目は記憶の中の人と同じ、だけどどこか何か違う者たちが
ゾロゾロと歩いてきた。
(気持ち悪いだなんて泣いている時じゃない。殺さないと殺される)
一矢報いようと咲夜が身構える。
(まったく。本当にお嬢様じゃなくてよかった。あのクソ河童。機械もろとも消し去ってやる。)
(ん?機械?…あー。そうだ)
ふと咲夜が何か気が付く。
モデル立ちをし、腰に片手をあて、もう片方の手で ふぁさと髪をかきあげ、優雅に一言
「いやいや、私としたことが。良いですか?ここは私の世界です。」
「さぁ消え去りなさい!」
空しい叫び声が響く
「あ、あれ?そういうのはないの?」
「ちょっと、もういいわー終わりにして頂戴。聞こえてるんでしょ?にとりー!ゆかりー!」
空しい叫び声が響く
「えっ、ちょ、ちょっとどういうことよ?」
「貴方、ここから抜け出せるとでも思ったの?あなたの世界?いいえ、ここは」
「私たちの世界よ」
と、偽レミリアが急に懐に飛び込んできた。
「クカカ」
思いっきり腹を殴られる。
内臓がピンボールのように暴れる感覚がした。
激痛に膝を付き、お腹を押さえるが、体中を激痛が走り回り
呼吸すら一瞬満足にできなかった。
殺される-
この異常なシチュエーションで咲夜は本能のままに時を止める
いつも通りの光景、時は止まり、自分以外のものは動いていないようである。
(くそっ、何なのよこの状況は)
ここで殺しておこうかとも考えたが、ダメージが非常に大きい。
ひとまず諦め、身を隠せる場所を探そうと背中を向けた
その瞬間
グジュッと音がし、右足に激痛が走る。
「あ"あ"あ"!!!!」
ふくらはぎあたり、ナイフが突き刺さっていた。
バッと振り返ると、偽物の自分がニヤニヤとしながら立っているのが分かる。
「時間を止めれるのは自分だけだと思った?」
「さっき1回やったでしょ?コピーさせてもらったわ。」
パァンと破裂音がしたのと同時に時が動き出す。
「あれぇ、どうしてナイフなんか刺さって蹲っているのかしら?無様ね」
「死になさい」
無表情の偽美鈴が突っ込んでくる。
時を止めたそばから偽咲夜が解除する。
タイミングがズレてしまい、一気に偽美鈴が咲夜の懐に入り込み胸倉をつかむ。
「くそっ!このっ!はなっせ!」
必死に抵抗するが、つかまれた腕はビクともしない。
偽美鈴の腕が振りあがる。
そして
強烈な一撃が咲夜の顔面を襲う。
「~~!!!!」
血の味が口いっぱいに広がり、硬いものが口の中で転がる。歯が何本か折れたようだ。
その場に倒れ込んだ咲夜だが、髪の毛をつかまれ無理やり立たされる。
「い、いだっ。いだっ!美鈴、やめ"、いだいっ」
偽美鈴は表情を変えない。
そのまま、壁に咲夜の顔を打ち付ける。
「あがああああああああああああああああああっ」
壁にヒビが入り、一部が崩れる
咲夜の鼻は折れ、出血が激しい。意識が遠のく。一瞬落ちる。
すると偽美鈴の手が一瞬光り光が咲夜の体内に入る
「うぐぁっ!」
咲夜が無理やり意識を取り戻す
偽美鈴は、抵抗ができない咲夜の頭を掴んだまま持ち上げる。
ブチブチと咲夜の髪の毛が切れる。
「うぐぅううう…い、いだい"…う"う"う"う"…」
その正面に立った偽咲夜ニタニタと汚く笑い、一気にナイフで切りつける
「いや"あ"あ"あ"あ"!!!!!!!!」
全身に小さな切り傷が一瞬でつけられる。
咲夜の青い服が血で染まり、ドス黒く染まる。
「や、やめ…て…」
意識が飛びそうになるとまた、無理やり意識を戻させられる。
偽美鈴はそのまま髪の毛をつかみ持ち上げ、ある程度の高さまで上げると
手を放した。
踏ん張れない咲夜はその場に崩れ落ちる。
崩れ落ちる最中、咲夜の脇腹に向かって
偽美鈴の蹴りが入る。
ボキっという音とミシミシっと言う音が聞こえる。
「ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
そのまま本棚に叩きつけられる。
叩きつけられた瞬間、頭が激しく動き、咲夜は白目をむく
そのまま崩れ落ちた咲夜はピクピクと体を僅かに痙攣させるだけ。
「トドメは私よ。美鈴、回復させなさい」
偽美鈴は咲夜に近づき、胸のあたりに手を当て、生命エネルギーを送る
ビクッと大きく体を震わせ、数回吐血した後、ハーハーと息をし始める咲夜。
かろうじて薄目が開く。
正面には偽レミリアのようなものが見える。
「も、もう…やめ…やめ…て…くださ…い…」
涙を流しながら懇願する。
ゾクゾクと体を震わせた偽レミリアはすこし涎を垂らす。
「ハァ…ハァ・・・・・・死になさい」
レミリアの目の前に大きな槍が生成される。
咲夜も見たことがある、レミリアのグングニル。
「2fくぇtgふgbfくぉfgひqh」
汚い叫び声と共に放たれた槍は一直線に咲夜をロックオンする。
もう体はピクリとも動かない。
咲夜はすっと目を閉じる。
(せめて私が知っているお嬢様を思い浮かべたい。偽物は見たくない)
(…どうせなら、本物のお嬢様に殺して欲しかったなぁ…)
悔しさで涙が止まらない。声を出したいが声すら出ない。
空気を切り裂く音、咲夜を貫こうと槍は勢いを止めない
そして
ゴォォォォン!と鈍い音がこだまする…
(あ、あれ…は、外した…?)
体が緊張しているが、まだ意識はある。
その時
「咲夜あああああああ!!!!」
「!!!!」
咲夜は耳を疑った。
目が開かず確認はできないが、聞き覚えのある。声
「お、お前…な、なんだこの状況は…ええい。口を開けろ!って開けれないのか。むぅ。しょうがないよな。緊急事態だもんな」
ブツブツと言っていると思ったら、モゴモゴと聞こえる。
次の瞬間
柔らかいものが唇にあたり、苦いものが流れ込んできた。
「飲め」
咲夜は思わずゴクリを飲み込む。
(うぐあああああ…)
咲夜は大きく痙攣をおこす。
何度か痙攣をした後、ある程度体が楽になったのが分かる。
「全快、ではないが。これで命の心配はないだろう。」
目をゆっくり開け,
目の前の人物と目があう。目の前の人物は最高の笑顔を見せる。
永遠の紅い幼き月 レミリア・スカーレット 降臨
「お、おじょ…う…さま…?」
「ああ、お前の知っている私だ。」
「おじょぉ"ざま"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"」
涙と鼻水が止まらない。
良く見ると片手にグングニルが握られており、手から少し出血している。
「すびばぜん…ずびばぜん…」
「もう喋るな。後にしろ。回復にはもう少し時間がかかりそうだ。」
「大人しくまってろ」
優しく微笑み頭を数回撫でる。
ふぅ、と一息つくと
レミリアは立ち上がり偽軍団を睨み付ける。
ぼわっとレミリアの全身から赤い霧が出る。
背中から生えた羽は怒りを象徴するようにいきり立つ
眉間に激しくシワがよる。
眉毛はこれでもかといきり立ち、ピクピクしている。
「これでグングニルのつもりか。まるでおもちゃだな」
グッと力を入れると、グングニルだったものがサラサラと砂のようになり手から落ちる。
「お前が私の偽物?ふぅん。紅魔館のメンツ?これが?」
平静を保っているつもりだが、声が震え、怒りしかこもっていない
殺気がぶわっと広範囲に広がる。
すぅっと大きく息を吸い込む。
「身の程を知れぇえええええええええ!!!!!!!!」
咆哮が響き渡り衝撃波が出る
本棚が全て崩壊し、広々とした空間だけが残った。
「ふん、身の程を知るのはどっちか思い知らせてくれるわ。」
一瞬怖気づきそうになる偽レミリアだが。新たにグングニルを生成すると構える。
「何だか知らんが、ついでに貴様も血祭に上げてや、ガァァアアアアアアアアアアア!!!!!!」
一気に近づいたレミリアの手刀が偽レミリアの右腕を切断する。
「ハハッ!!!!脆いな!!!脆いな!!」
「き、貴様…!ひ、卑怯なっ…」
「悪魔に卑怯もクソもあるか。バカかお前」
「お前ら…咲夜を殺そうとしたよな?な?な?殺そうとしたよな?」
目を見開き【睨み付ける】さっきよりも強い殺気を出す。
その瞬間、偽紅魔組はビクッと体を震わせ、硬直する。
威圧の一番の矛先になった偽レミリア
強気だったのが一転、ガクガクと体を震わせ、目には涙をためている
「ゆ、ゆるしt…ヘブッ」
レミリアの拳が顔面にクリーンヒット
歯は砕け、鼻は折れ、ぐらぁと倒れ込むが
レミリアはそれを無理やり起こし、何度も何度も殴りつけた。
やがて原型をとどめなくなると上空に放り投げ、大玉を投げつけた
それにあたった偽レミリアだったものはそのまま壁に叩きつけられた。
「次はお前らだ。」
ギロリと硬直している偽紅魔組を睨み付ける。
本能的に動いたのか、偽美鈴が飛びかかった。
「遅い!」
飛び込んできた偽美鈴の下に潜りこむと、そのまま思いっきり
アッパーを食らわす。その衝撃で上に偽美鈴が飛ばされる
一瞬で生成したグングニルを投げる
グシャと音を立てながら貫通し、壁に刺さる
槍と一緒に壁に叩きつけられた美鈴はそのままぐったりと動かなくなった。
「ハッ。手ごたえなさすぎだろ。うちの美鈴の方が比べものにならないほど強いぞ」
偽咲夜と偽パチュリーは大きく間合いを取る。
それに合わせてレミリアも咲夜の前へと移動する。
「咲夜、遅くなってすまない。少しは回復したか?既に2匹駆除したが後2匹だ。
スグに終わらせる、私に任せておけ」
「お嬢様…」
自分の為に本気で怒っているレミリア
見たこともない怒りで本当は凄く怖かったのだが
自分の為って所が本当に嬉しくて、安堵感安心感を一気に感じ
涙が止まらない。
チッと偽パチュリーが舌打ちをし、大きな魔方陣を生成させた。
詠唱を始めると、魔法陣は6つに分かれ、青く光りながら上空に配置された。
地鳴りが鳴り響き、館全体が揺れる。
良く聞こえないが、偽パチュリーが指を指した瞬間
魔法陣がら滝のように水が流れ出した。
「いやああああああああん!!!!!」
情けない叫び声を上げたのはレミリアである。
「さっ、さっ、さくやぁ~~~ど、ど、ど、どうしよう~~~」
「りゅ、流水だょぉ~~~!!!」
涙目になり咲夜に抱きつく。
先ほどのレミリアはどこで買えますか?といったレベルで、もはや別人である。
「お嬢様」
「い、いい案があるのか?!早く!」
「私、もう死んでもよいです。」
ニコリとほほ笑む咲夜、鼻血をたらしている
この鼻血は怪我のせいではない。なんでかな?
「アッカァーーーン!これマズいでぇ!」
水が津波のように襲い掛かる。
「どわああああああああああああ!!!!」
「とぅ!!」
大きな声が響くと同時に
大きな箱が上空から2人の隣に落ちてきた。
箱から手が伸びる。茫然としていると首根っこらへんをつかまれ、引っ張り上げられた。
それは箱ではなく船であった。
その瞬間、大量の水が流れてくる。
強い水流に船は大きく揺れる。
「間一髪じゃったな!」
2人の目の前には、一仕事を終え、満足しているような表情の布都が腕を組み仁王立ちしていた。
「え、ふ、布都!?なんでここに?」
「ふっふっふ。友人の危機に助けに行くのは当たり前であろう?」
驚きのあまりポカーンとした表情の2人。
咲夜はとある疑問が浮かんだ
「あの、お嬢様。少し余裕ができましたので、手短にお願いします。物部様もそうですがどうやってここに?」
「そうだな。説明できていなかったな」
「咲夜が眠った後、何かおかしくなったようだ。」
「でしょうね」
「で、戻れなくなった」
「でしょうね」
「実は見れていたからどういう状況かは理解できてたんだ」
「ええっ!そうなんですか!」
「そんなわけで紫とにとりを締めあげた」
「でしょうね」
「干渉機能を動作させ、入ってきたってわけだ」
「えぇっ、大丈夫なんですか?それ」
「省略するが、早苗がいたおかげだよ」
「あ、なるほど、奇跡って自由でいいですよね。これは二次創作設定ですよ?ご都合ですよ?」
「何を言っているんだ」
「なるほど、理解はできました。で、どうやったら戻れるのですか?」
「あいつらが邪魔してね。なんでも しすてむのばぐ というものらしい。アレを駆除する必要があるみたいだ」
「うむ、あやつらを倒してしまえば元に戻れるのだ」
布都は船の先頭に立ち、何やら部屋全体を確認している
「しかし、ここは水場にはむいとらんのう」
「レミリア殿。穴を開けて水を出したいのだが、良い場所はあるか?
流れ的にあっちの方向が良いのだが」
「大きな穴かしら?」
「できる限り大きなものを」
何が良い方向なのかさっぱり分からなかったレミリアだが
そんな事を聞いている暇はない。
「よしきた。任せておけ」
レミリアは大きな赤い玉を生成すると、壁に向けて投げる。
ゴォン!ドォン!と大きな爆発音と共に穴ができ、ズゴゴゴゴと水が飲みこまれていく。
しばらくするとたっぷりあった水はもう無くなっていた。
「クソッ、余計な事を!」
偽パチュリーは水の量を増やしたりしていたが、意味がない事を悟ると
魔法陣を閉じた。
船をおりた3人、パチュリーはまたしても魔法陣を出現させる
今度は赤く光っている。
「青は水なら、赤は火であろう?」
布都が大きな声で問う
偽パチュリーは図星の表情を見せる。
「そうであろう!そうであろう!」
予想が当たったのか凄くうれしそうである。
「…風水には龍脈というものがあってだな。地中に流れる気のルートがあるんじゃが、ここは龍脈から近いようじゃな」
偽パチュリーは詠唱を終える。
一気に気温が上がり、赤い魔法陣から無数の火の蛇が布都を狙って放たれる。
------------------------------------------------------------------------------------------
その瞬間、時が止まり、咲夜と偽咲夜の2人だけの世界となる。
「往生際が悪い!」
咲夜は時を動かす。
動かしたら偽咲夜はまた時を止める。
(本家を舐めるな…!)
咲夜は必死で対抗する。
------------------------------------------------------------------------------------------
「布都!!!」
レミリアが叫ぶ
「心配無用。」
「我に対抗しようなぞ片腹痛いわ!」
「熱龍【火焔龍脈】」
布都は跪き、片手で勢いよく地面を平手でたたく。
パァン!と乾いた大きな音がし、地面が割れそこから
グオオオオと大きな咆哮と共に火の龍が飛び出す。
火の龍はそのまま火の蛇を全て飲み込み、偽パチュリーをも飲み込む。
高温で焼かれ、断末魔の悲鳴を上げたのち、偽パチュリーは黒焦げになりパラパラと散って言った。
「ふむ、大したことなかったな。戻れ!」
再び地面を叩くと、火の龍は出現した穴に戻って行く。
「良い子じゃ。あっちち!!!」
思わず布都は火の龍を撫でてしまう。ちょっとやけどした。
その布都を見て、火の龍は鼻で笑いながら帰って行った。
うだるような熱さから一転、一気に冷え込む。
「あいつ我をバカにしながら帰りよった!」
馬鹿にされた悔しさとやけどの痛みを堪え涙目になる。
1人になった偽咲夜は明らかに動揺している。
動揺している今がチャンスとばかりに
レミリアが間髪いれず、偽咲夜に飛びかかる
布都もそれに続く。
「死ねっ!!!」
ニヤっと偽咲夜が笑い
「チャンス」
フッとレミリアの目の前から消える。
「どこいった!」
背後から声がする
「ここですよ」
偽咲夜と時止め合戦をしていた咲夜だが
ついに気力を使い果たしてしまい。顔色悪く肩で息をしている。
その首元には偽咲夜がナイフを突きつけている。
「フフフッ…この子がすごく大事なんですね?」
「助けたいですか?助けたいですよね!?!?!?」
「きっさまあああああああああああああ」
怒りに任せて攻撃をしかけようとするレミリアだが
「レミリア!!!!!」
布都が体を張って止め、一発ビンタを食らわせる。
「何をする!!!」
フーフーと鼻息荒く布都を睨み付ける。
布都も負けていない。臆せず睨み返す。
「お主は何を考えておる!!良く見ろ!お主が攻撃したとて相手が咲夜殿の首を刺す方が早い!」
「こんなもの誰が見ても分かるであろう!」
「咲夜殿の主人じゃろ!冷静に判断せんか!」
ハッとした表情を見せ、俯く。
「ごめん。ありがとう」
「うむ、どうやって打破できるかを考えなければな。」
「惜しい!でもビックリしてちょっとさしちゃった!」
咲夜の首から少し血が流れる。
ピクッと体を震わせたが、頭に来ると相手の思うつぼである
2,3深呼吸をし、じっとチャンスを待つ
「あら、こないのぉ?まぁ、でもどう足掻いても私生き残れないし」
「この子道連れにするから絶望する表情見せてね。」
「残り10秒でぇ~っす」
「ま、まて!」
布都の呼びかけも空しく、カウントを始める。
―――――――――――――――――――――――
「あ、ヤバいですね。お願いしますね」
「めんどくさ…あ、あやや、い、行きます行きます。やめて。手帳斬らないで」
―――――――――――――――――――――――
「3!」
「待てと言うのに!またんか!」
「2!」
偽咲夜は悦な表情を見せながらカウントダウンを行っている。
「1!」
「や、やめてくれええええええ!!!!」
レミリアの悲痛な叫びがこだまする
ブオッと一瞬風が起こる
「ぜぇ~ろぉ~♪」
「噴水、開始!」
目を見開きナイフを動かそうとする
が
「あれっ、えっ!?」
ナイフを持った腕が誰かに捕まれ動かない
「まったく、まぁこれでガラス窓の御代はチャラにしてくださいよ?
にしても流石幻想郷最速の私。気が付かれないように近づいて腕をつかむとか相当すごいですね。私」
偽咲夜の背後には射命丸文がけだるそうな表情で偽咲夜の腕を片手でつかんでいた。
偽咲夜は必死に抵抗するが動く気配はない。
文に至っては欠伸し、ボリボリと腹を掻いている。
「くっそおおおおおお!!!」
偽咲夜は捕まれながらも、もう片方の手で素早くナイフを握り、文を刺そうと体をひねった。
そのひねる動作に合わせ文も動き、遠心力に任せて投げ飛ばした。
「後はヨロシク。レミリアさん」
「馬鹿め!こっちには時を止めれるんだぞ!バカ烏が!流石鳥類!」
笑顔の文の額に青筋が浮く
「言い忘れてました。作業復旧。バグに対する処理は全て消し去ったそうです。」
「後は【そのもの】を駆除するだけだそうですよ。」
そう、時を止めようとしても止まらないのだ。
「クソッ!クソッ!」
「見た目が咲夜なだけに非常にやりにくいが、これでチェックメイトだ」
レミリアは飛んできた偽咲夜をつかみ、高く飛び上がると、地面に向かって投げた。
特大のグングニルを生成しようとしたが
地面に着く瞬間、無数のナイフが生成されるのを偽咲夜とレミリアは見た。
「うおああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
そのまま叩きつけられ体中にナイフがつきささる。
そのままサラサラと粉状になり、消えて行った。
「ざまぁ…見なさい…」
咲夜がいつのまにか落下地点近くにいた。
「咲夜!」
慌ててレミリアが駆け寄り、抱き上げる
「やって…やりました…瀟洒なメイドは…後始末も…できます…」
「無理をするな!!!急いで帰るぞ!」
「はい…お手数を…おかけしました…」
ふわっと景色が真っ白になった。
----------------------------------現実の世界
レミリア、布都、文が目を覚ます。
「おかえりなさい!無事でよかった!」
椛がニコニコと出迎える。
「あやや、これは中々疲れるものですねぇ」
レミリアが咲夜を見るが、まだ目を覚まさない
「おい!!咲夜はまだか」
「ちょっとまって、長かったから時間かかってるだけだよ!」
にとりも汗をかきながらモニタとにらめっこする。
そして
「うーん…」
咲夜が目を覚ました。
「咲夜!咲夜っ!」
レミリアは目に涙をためて咲夜に抱きついた。
子供のように、ごめんなさい、と連呼しながら泣きじゃくった。
「お嬢様…よかった…戻ってこれたんですね…」
咲夜もレミリアを抱きしめ戻ってこれた喜びに涙を流した。
「私が…興味を持たなかったら…咲夜の言うことを聞いていれば…!」
「いいんです。お嬢様。お嬢様に何もなくて、良かった…本当に…」
…
やがて少し落ち着いた咲夜は
「みなさんもありがとうございました。」
深々と頭を下げる。
と、視線の端っこのほうで、ヤムチャのように横たわり汗だくになりながら
ハーハーと息をしている早苗が目に入った。
「ちょ、ちょっと大丈夫?早苗?」
「お、がえり"なざい…ゼーゼー」
「ちょっともう無理…ゼーゼー」
ずっと力を使っていた早苗は、ちょっと話しかけないでと呟き、またゼーゼーと息をしはじめた。
「あ、送って行ってきますね。椛、後はよろしくお願いします。」
そそくさと、早苗を抱き上げ出て行こうとする文
「あ、文さん!」
咲夜の呼びかけに振り向きはしないが、動きを止める文
「ありがとうございました!」
その言葉を聞いて、文は無言で片腕をグッとあげ、そのまま出て行った。
「文さん、照れてるんですよきっと。多分すごくニヤニヤしてたと思いますよ」
あまり慣れてないから、と椛がフォローを入れる。
「あ、椛さん、文さんはどうしてあの世界に?」
「話せば長くなるんですが…」
回想=============================================
境内で将棋をしている諏訪子と神奈子。
「まて、諏訪子。その手はちょっとアレだ。卑怯だ。軍神が卑怯と判断すればそれは卑怯なのだ。」
「馬鹿言わないで、どう考えても正当な攻めじゃないの。だめだめ!」
参ったなぁとくしゃくしゃを頭を掻く神奈子
と、突然感じる非常に強い気に気が付き、双方大きく体を震わせる。
「早苗!?な、何だ。何をしているんだ!?」
「神奈子!今日はカッパの所行くって言ってたよね!」
「すぐにいくぞ!」
と、飛び出したのは良いが、場所が分からない。
「あー、今日も良い天気ですねぇ」
椛がふわふわと飛んでいるのを見つけた。
「おい!天狗!」
「は、はぃいいい!?」
すごい剣幕で呼ばれた椛は半泣きになりながらも返事をする。
「早苗の場所を知っているか!」
「あー、えっと、あの、あ、文さんが詳しいかと…」
あの烏か…と神奈子は舌打ちをするが、大きく息を吸い込み
大声で呼ぶ
「烏天狗の射命丸!!!!どこだ!!!!すぐにこい!!!」
と、叫んだのと同時に神奈子達の目の前に文が直立不動で立っていた。
目は丸く、脂汗を掻きながら
「ひゃい。にゃんのごようでちょうか」
と喋るのが精いっぱいである。
「早苗の居場所を知りたい」
「分かりました、すぐご案内します。」
先ほどの気を文も感じ取っており、一瞬にして状況を把握すると、今回の事件の場所へ案内した。
場所は妖怪の山中腹、カッパが住んでいる滝近くの岩場、そこに入口があった。
「早苗!」
神奈子が扉を開けると
ベットに寝ている咲夜とレミリア、何やら器具をつけている布都がおり。
部屋の端っこでは陣を形成し、中心に鎮座している早苗がいた。
チラっと神奈子達の方を見るが、また視線を落とし、集中した。
何が起きているか分からない4人はただ、茫然とするだけであるが
モニタに気が付き、非常にヤバい状況であるのを確認した。
やがて布都が眠り、モニタの中に入り込んだ。
まだついていけない神奈子と諏訪子はにとりを捕まえ、状況説明をさせた。
とりあえずピンチで咲夜を救おうとしている
早苗は何も起きないように奇跡の力をフルパワーで使っている
事が分かった。
と、椛がひらめき
「文さん…」
と笑顔のまま文の肩にポン、と手を置く
「な、なんですか」
「借りを返すチャンスですね。」
「は?嫌です。」
椛は笑顔のまま、手帳に刀を当てつける。
文は機材を自分で頭にセットした。
「早苗!人数が増えても大丈夫なのかい!?」
と、にとりが叫ぶと
「大丈夫です!行ってください!」
と、早苗も大きな返事をする。
タイミングを計る為、文は寝っころがり、スタンバイ。
「おい、早苗大丈夫か?」
「汗拭こうか?お水とってこようか?」
「今日の晩御飯は何?」
「私たちも入ろうか?大丈夫か?」
「そうだよねぇ。入ろう入ろう。楽しそう」
「ちくわ大明神」
「あ、それより、私今日の晩御飯はお魚がいいなぁ」
「行ける?本当に?」
「どすこいどすこい」
「さぁいつでも準備万端!神の力を思い知らせてやろう」
と神奈子と諏訪子が早苗を心配してか、喋りかけまくる
が
「うるさい!!!気が散る!!!」
「あんたら2人入るとかキャパ超えるわ!!」
「出て行けぇ!!!!」
ものすごい剣幕で2人を一喝する。
神奈子と諏訪子はしょんぼりしながら出て行った。
にとりは何やらよく分からない文字と睨めっこをしていたのだが
突然、神降臨!と叫ぶとガタガタと何かを始めた。
「見つけた!これがあいつらのObjectだね!!!よしよし!これがアイツのメソッドで…
実行中なのに消すとエラーが起こるから…参照元は…よし、大丈夫だ!
よし、return false; 無効化できたよ!!後は排除するだけだ!
あいつらはもう能力はつかえないよ!」
にとりが叫び、文に伝言をお願いする。
ふと椛がモニタを見ると、咲夜の首元にナイフが突きつけられていた。
「あ、ヤバいですね。お願いしますね」
「めんどくさ…あ、あやや、い、行きます行きます。やめて。手帳斬らないで」
回想ここまで=============================================
「そんな事があったのね…椛、ごめんなさい。巻き込んでしまって…
文さんにもきちんと伝えてください。」
神妙な面持ちで頭を下げる咲夜
きょとんとした表情を一瞬見せた椛だが
「やだな、これで借りは返しましたよ?」
にっこりと笑って返した。
ひとまず解散ね、とレミリアが腰に手を当て、解散宣言する。
「とりあえず、にとりと紫、後日連絡するから逃げるなよ」
「みんな無事だったんだし終わりよければ~~で済ませてよ。って紫がいない!」
紫はドタバタの内に逃亡
にとりは仕方なく1人で片付けを始めた。
「布都、本当に助かった。後、色々ありがとう。布都がいなければ全員無事で帰れてなかっただろう」
「何、お安い御用よ。役に立てて何よりじゃ」
がしっと両者は硬い握手をし、帰路についた。
---------
いつもの何もない時間がまた始まった。
「肉体的には大丈夫そうだが、精神的によろしくない事件だったから」
と、一週間休みを取らされた咲夜。
ベッドでゴロゴロしていたが、どうにも時間が潰せない。
窓のから外の様子を伺う。
もちろん、ナイフを投げる少女はいない。
代わりにメイド妖精が大量の洗濯物を干している。
そこへサッカーボールが勢いよく飛んできて洗濯物干しに豪快にあたる。
ガンガラガッシャーン!と盛大な音を立て洗濯物が全滅する。
怒号と泣き声が交差する。
しょうがないなぁと時を止めようとするが
『仕事はしてはいけない。私の絶対命令だぞ』
のレミリアの言葉を思い出し、見守る。
少ししっかりした中型妖精がやってきてキビキビと指示をしている。
ひと段落しそうな所で咲夜は部屋を出てゆっくりと歩く。
メイド妖精がざわざわとバタバタとしており、活気ある館内
少し小腹がすいたので、厨房へと向い、ドアを開ける。
ゴリゴリぷちぷちゴリゴリゴリゴリ
ゴリぷちぷちゴリゴリぷちぷちゴリゴリゴリ
ゴリゴリゴリぷちぷちゴリゴリぷちぷちゴリ
すり潰される音がとプチプチと潰れるような音がし、咲夜の頬に何かが飛ぶ
「わっ」
手で拭うと、何か茶色いものであった。
香ばしいにおいがする。
ハッと我に返り目の前を凝視する。
メイド妖精が一生懸命すり鉢で何かをすっている。
どうやらごまあえにするゴマのようだ。
晩御飯の用意がはじまってるのなら邪魔はしないでおこうと
その辺にあったおやつの残りのクッキーをひとつつまみ、厨房を後にする。
仕事の邪魔をしないように館内を散歩する。
すると玄関ホールから話声が聞こえてきた。
「何ィ?掃除が終わらないだと!」
「はい。やってもやってもメイド妖精が散らかすんです。」
「マジか…アイツはいつもどうやってたんだよ」
レミリアと美鈴が玄関先で話をしていた。
(それは一日の最初にきちんと細かく分担指示をしていないからですよ)
と思っているとレミリアと目があった。
「咲夜、どうだ体の調子は」
「ええ、おかげさまでゆっくりさせていただいておりますわ」
「咲夜さん、どうやって綺麗にしているんですか?」
「ふふ、もう今日は手遅れよ。諦めなさい。」
「掃除は明日にしてご飯の所行ってきます。」
そういうと美鈴は厨房まで飛んでいく。
「ぎぇえええええええ!!!!!なんですか!!!このゴマの量は!!!!!!」
美鈴の情けない叫び声に思わず吹き出してしまう。
「今日はゴマ尽くしですね」
「そうだな。これは後で文句いわねば。さて、食堂でコーヒーでも飲もうか」
「お嬢様」
「なんだ?」
「ふふ、いつまでもお慕いしておりますわ。」
突然のセリフにレミリアはドキッとし、思わず赤面する。
「ふ、ふん!あ、当たり前だろ!」
羽はぴこぴこ嬉しそうに動いていた。
あえてもう一度言うレミ布都か!
かまわん、レミ布都でまた話を書いてくれてもいいんだぞ(チラチラッ
でも今回咲夜メインになった感があるのでちょっと布都が割り食った気がしますね
まぁよかったと思うよ!
↑感想になってねーぞ。出直してこい。