コレは、レミリア達が幻想郷にやって来る前の物語──。
◇◇◇
~ 極めて近く、限りなく遠い世界 西の都 ~
雲一つない、満月の晩のことであった。
「ぎょえーーっっ!!」
凄まじい悲鳴が閑静な住宅街に響く。
何事かと、外へ飛び出した住人達は皆息をのんだ。
月明かりの下で、ドアノブカバーに似た帽子を被り、ピンク色の服を着て、背中に大きな翼が生えた少女が、頭部の無い死体から溢れ出る血を啜っていたからだ。
戦慄し、動けない住人達をよそに、少女は服に血が付くのも構わずに、無我夢中で血を飲み続けた。
「う~☆ やっぱり、A型の血はまろみがあって、のどごしが違うわ~♪。 さてと……、帰るとするか」
少女は、血にまみれた顔を満足げに綻ばせると、翼をはばたかせて、夜空へと消えていった。
この事件は、住民達にとって恐怖の始まりにすぎなかった。
なんせ、それから連日のように同じような犠牲者が続出したのだから。
目撃者達の証言。
そして犠牲者達の遺体から、吸血鬼のエキスが検出されたことにより、怪少女の正体は吸血鬼と暫定される。
吸血鬼。
強大な身体能力、どんな傷でもすぐに修復する再生能力、そして様々な特殊能力を持つ、恐るべき化け物である。
警察は、対化物部隊を動員し、市中の警戒に当たらせた。
だが、犠牲者を減らせるどころか、屈強な隊員達も次々と吸血鬼少女のエサになる始末。
警察はやむえず、ステルス迷彩偵察機等、ハイテク機器を駆使して得た吸血鬼少女の氏名や住所等の個人情報をハンターオフィスに渡し、賞金を懸けることにした。
吸血鬼少女の名は、レミリア・スカーレット。
この”おたずねもの”の首に懸けられた賞金額は、100万ユキチ君たらずであった。
◇◇◇
それは、トカゲと言うには、あまりにも大きすぎた。
体が大きく、皮膚がぶ厚く、目方が重く、そして圧倒的すぎた。
それは、正にドラゴンだった。
~ モンスター図鑑「超獣戯画」 ドラゴン紹介ページのキャッチコピーより ~
◇◇◇
極めて近く、限りなく遠い世界において、時空の”ゆらぎ”から出現するドラゴンが社会問題の一つになっていた。
ドラゴン。
動物界脊索動物門爬虫綱有鱗目ドラゴン亜目に属するこの生物は、巨体で生命力が極めて高く、個体によっては、知能が人間以上だったり、炎や有毒ガス等のブレス攻撃を行ってくる恐ろしい怪物だ。
”ゆらぎ”から際限なく湧いてくるドラゴンに対し、軍隊では対処しきれず、世界政府は特に危険なドラゴンに高額の賞金を懸け、賞金稼ぎ達に退治を促していた。
◇◇◇
ドカーン!! ドカーン!! ドバババーーー!!
「グギャアアアーーッ!!」
砲弾や機関銃による弾幕を受けたドラゴンの断末魔が荒野に響き渡る。
巨大なドラゴンを仕留めたのは、真っ赤でイカス戦車。
硝煙が漂う中、戦車のハッチが開き、戦車帽を被った中年の男が顔を出す。
「やれやれ、今月で十匹めか……」
ため息をつきながら、スマホを操作する男の名は、半田反太(はんた はんた)。
プロハンターのライセンスを持ち、愛戦車レッドウルフを駆り、強大なドラゴンをも単独で仕留める凄腕の賞金首(ブラックリスト)ハンターである。
手強い賞金首を難なく仕留めていき、搭乗する戦車も相まって、付いた異名は、”赤い悪魔”。
その”赤い悪魔”は、すごぶるマンネリな気分であった。
「しっかし、相変わらずドラゴンばっかりだなあ……」
スマホで開いたハンターオフィスのサイトに並ぶのは見慣れたトカゲ面の怪物達。
近年、各国の警察組織は、プロハンターと専属契約を結び、警察職員として雇うことで、手強い犯罪者でも、建前上自前で対処することが可能となった。
その為、昔と違い賞金首となるのは、国家権力が対処しきれないドラゴンばかり。
どれも高額であるが、さすがに同じ系統のモンスター退治が続けば飽きるというもの。
「一服するか。 ……おっ!」
ポケットから煙草を取り出そうとすると、スマホの着信音が鳴り響く。
スマホには賞金稼ぎ仲間の名が表示されていた。
「どうした、タケシ? ……何!? おうよ、竜退治はもう飽きた! ……分かった、すぐに合流するぜ!!」
タケシとの電話を終えると、続けて賞金稼ぎであり、恋人でもある愛しい彼女、アメリアへ電話をかける。
「タケシから、「竜退治は、もう飽きた! どうだ~、みんな~」って誘われてな。 ターゲットは、最近頻繁に西の都の住人を襲う吸血鬼だってよ。 ともかく、久々のドラゴン以外の賞金首だ。 サクッと片付けて帰るから、パインサラダ期待してるぜ!」
反太は、さりげなくフラグを立て終えると、タケシ達との合流ポイントへ意気揚々と向かうのであった。
◇◇◇
初夏の日差しが照りつける中、血まみれの帽子と洋服を纏い、大きな翼を背中に生やした幼い容姿の少女が空を飛んでいた。
非行、もとい、飛行少女の名は、レミリア・スカーレット。
ぺロリたくなるような可愛らしい容姿に反し、恐るべき怪物、吸血鬼だ。
「う~☆ 太陽が黄色いわ~♪」
さんさんと輝く太陽に、眩しそうに目を細めるレミリア。
吸血鬼である彼女が、直射日光を浴びて平気でいられる理由。
それは、レミリアが発するオーラがパリアのように彼女の全身を覆い、吸血鬼の弱点である太陽の紫外線を完全に遮断しているからだ。
とある出来事により、念能力を習得してからの、レミリアにとっては嬉し過ぎる副産物といえよう。
兎にも角にも、太陽とお友達になれたことで、朝帰りも余裕で行えるようになったレミリアは、最高にハイ!ってやつな気分であり、大都会である西の都へ行き、好みのタイプの人間を吸血して、大満足な気分で帰宅の途中である。
西の都で人間を襲い続け、住人達に恐怖を与えているレミリアは、襲った人間の血を吸うだけでなく、吸血鬼のバカ力で犠牲者の頭部を確実に潰していた。
その残虐極まりない行為は、レミリアの育ちの良さを表していた。
吸血鬼にチューチューされた人間は、頭部を潰す等、致命的な損傷を与えないままでいると、吸血鬼のエキスにより、屍生人(ゾンビ)と化す。
屍生人は凶暴であり、周囲の生きている人間を無差別に襲う。
つまり、残飯が他の新鮮な食料を傷めるようなものである。
レミリアがそれを防ぐために後始末をしっかりしているのは、吸血鬼の貴族である親から徹底的に叩き込まれた食事マナーの賜物であろう。
もっとも、人間に吸血鬼の食事マナーなど理解されるはずもなく、レミリアが犠牲者の頭部を粉砕する行為は、住人達に猟奇的と捉えられ、より一層の恐怖を与えていたが。
「うにゅ? なんだ、アレ?」
住処である紅魔館まであと少しというところで、レミリアは急停止した。
眼下に広がる荒野に、紅魔館へ向かって土埃を上げて進む奇妙な車の集団を見つけたからだ。
進む先には、紅魔館しかない。
それにくわえて、どの車の”あな”にも機銃やら大砲やらミサイル等が付けられており、レミリアは奇天烈な集団が何なのか、すぐさま理解する。
彼奴等は敵だと。
「ロードローラーが1! タンクローリーが1! 戦車が1! 装甲車が3! バギーが1! 救急車が1! バスが1! タクシーが1! バキュームカーが1! 霊柩車が1! 痛車が1! 痛車にも大砲が装備されてる。 リフォーム前の紅魔館にとっては脅威となるわね!」
脅威と言ったにも関わらず、レミリアは愉悦の笑みを浮かべ、集団の先頭を走るロードローラーへと向かって行く。
その様は、まるで新しいオモチャを買ってもらってハシャグ子供のようであった。
レミリアは、ロードローラーの剥き出しの運転席に降り立つと、運転手の男に向かって「にぱ~☆」と微笑む。
最も恐るべき化け物、吸血鬼であるレミリアだが、見た目はお持ち帰りしたくなるぐらいかぁいいロリっ娘。
プロハンターのライセンスこそ持っていないが、”凶声のタケシ”の通り名で知られる賞金稼ぎは、突然目の前に現れた少女に驚くも、すぐさまニヤケ顔を晒す。
そのニヤケ男に向かって、レミリアは腕を振るう。
「きんもーっ☆な顔して、何想像してんのさ!」
「ピチューン!?」
レミリアの腕の一振りで、タケシだったモノは、奇声を上げてバラバラになった。
「まずは、ひと~つ♪」
様々なハチャメチャな特殊能力を持ち、すばらしい身体能力を誇る吸血鬼。
その拳は空を裂き、蹴りは大地を割るという。
技を超えた純粋なパワーこそ、吸血鬼最大の武器。
そう、吸血鬼のパワーにかかれば、人間達を軽々とぼろ雑巾のように引きちぎるなど、容易なことなのである。
そしてレミリアは、気力が110以上になると、特殊能力”紅の眼”が発現し、全ての念系統の能力を100%引き出せるようになる為、そのパワーはドラゴンをも凌駕するのだ。
敵ユニットを一つ撃破したレミリアの気力は110となった。
レミリアは、眼を紅く輝かせ、他の車達へ襲い掛かっていく。
「ぎゃおー! やっつけちゃうぞー!」
襲撃すること、モケーレ・ムベンベの如し。
◇◇◇
~ おぜうさま無双ターン開始☆ ~
レミリアの攻撃!
クリティカルヒット!!
「うわああっ!? まてっ、まてよっ! ウボァー!!」
ピチューーーーン!!
「ふた~つ♪」
レミリアの攻撃!
痛恨の一撃!!
「うっ!? バ、バカな……。 俺はまだ何もやっちゃいないんだぞ……」
ピチューーーーン!!
「み~つ♪」
レミリアの攻撃!
「しっ、死にたく」
運転手は首をはねられた!!
ピチューーーーン!!
「よ~つ♪」
レミリアの攻撃!
レミリアは、がんばった!
「いい夢を……、見させてもらったぜ……。 か、母ちゃん……」
ピチューーーーン!!
「いつつ♪」
レミリアは、ヘルファイアを放った!
車に直撃し、大炎上!!
「運転席の中まで燃えてきて、暑っ苦しいなあ。 おーい、出してくださいよ、ねえ?」
ピチューーーーン!!
「む~つ♪」
レミリアの攻撃!
SMAAAASH!!
「オレは……、死ぬのか……」
ピチューーーーン!!
「ななつ♪」
レミリアのパンチラキック!
「び、美幼女の縞パンツ!? 我が生涯に一片の悔い無し!!」
こうかは、ばつぐんだ!
ピチューーーーン!!
「や~つ♪」
レミリアは、MAP兵器『神槍 スピア・ザ・グングニル』を使った!
あぼーーん!!
「脱出できなかったら、負けかなと思ってる」
ピチューーーーン!!
「⑨♪」
あぼーーん!!
「ヤ、ヤスクニで……、会おう……」
ピチューーーーン!!
「とお♪」
あぼーーん!!
「ひぎぃぃぃ!? 逝くぅぅぅーーッ!!」
ピチューーーーン!!
「じゅういち♪」
あぼーーん!!
「仏仏仏仏仏仏仏仏仏仏仏」
ピチューーーーン!!
「じゅうに♪」
レミリアは、パンチで、キックで、特殊能力等で車を次々と撃破していった。
残された車は、反太のレッドウルフのみ。
なんということでしょう!
レミリアの攻撃によって、反太の愉快な仲間達はアッ!というまに全滅だ!
まるでアニメのやられメカのような仲間達の最期の様に、反太はビックリ仰天!
「ぜ、全滅!? 十二台の車が全滅!? 三分もたずに……。 ば、化け物め、圧倒的じゃないかぁ~ッ! ……ッ!? こ、こっちに来る!?」
圧倒的な力を見せ付けられ、テンパってる反太をよそに、レミリアは、レッドウルフの前方まで来ると、地面から2Mぐらい浮かび上がり、くるりと180度回って、おしりペンペン♪
その行為は、逃げ腰だったハンターを激怒させ、また、闘志を爆発させた。
「と、とさかキターーッ! オレをなめきった不幸を呪え! オーラよ、高まれ!」
車の運転レベルが極めて高く、操作系能力者である反太。
仲間を殺られた上に、サイコーに侮辱され、怒り心頭の反太はオーラをレッドウルフの駆動部分に纏わせていく。
これにより、反太の鋭敏な操縦技能に対し、操縦系統に無限の反応速度を付加。
名付けて、”オーラ・コーティング”。(特許申請中)
「まだまだァーーッ! 熱血! 必中! 集中! 不屈! 加速! 突撃ィィィィィ!!」
一般的な操作系能力者は、強化することが苦手である。
しかし、反太は、運転する車を強化する程度の能力、”オーラ・コマンド”を習得していたのであった。
さあ、準備万端!
「覚悟しろ、化け物め! 人間の可能性ってやつを見せてやる! とっておきのコンバットパターンだ!」
のんきに欠伸をしているレミリアに向かい、グレネードを数発狙い撃ち。
「円の動きで追い込み、続けて集中砲火!」
”加速”により、戦車であるレッドウルフのスピードがスポーツカー並みに向上。
グレネードの着弾後、すぐさまレミリアを中心にドリフトを行いつつ、対空砲で連続攻撃。
「伊達や酔狂でこんだけの兵器を積んじゃいない! 釣りはいらんぞ、全部持っていけーーッ!!」
レッドウルフの穴という穴から砲弾やら、ミサイルやら、火炎放射やら、電撃やら、レーザー等を次々と発射。
ド派手な弾幕は、幼女サイズのレミリアに全て”必中”!
凄まじい閃光と爆音、そして巻き上がる大量の土砂。
攻撃は、オーバーキルであった━━
「仇をとってやったぜ、みん……なッ!?」
かに思えた。
現実は非情である。
爆煙が風に流され、コクピットのディスプレイに映し出されたのは、周囲に球状の膜のようなモノを張ったレミリアの姿。
レミリアは、弾幕の着弾寸前に、オーラを核攻撃にも耐えうるほど強固なバリアフィールドに変化させた、通称オーラ・バリアを張っていたのだ。
レミリアの健在ぶりを見て、ビビる半田。
「な、何…だと…!?」
百戦錬磨の兵(つわもの)が驚愕するのは無理もない。
”熱血”で威力を倍増させた近代兵器による凄まじい弾幕により、遺伝子の欠片まで焼き尽くされてるはずのレミリアが無傷だったのだから。
圧倒的な存在を目にしたことによる”脱力”により、気力を低下させてしまった反太。
それに対し、レミリアの気力は限界突破!
「リアル弾幕ごっこは、もう終わりかしら? 今度は私のターンね! このみなぎるオーラ力(ちから)で落ちちゃいなちゃ~い!」
レミリアのオーラ・バリアの一部が次々と剥がれ落ちていき、念弾へ変わるとレッドウルフへ襲い掛かかる。
「なんとぉーっ! 逃げまわりゃ、当たりはしない!」
普通の運転手であれば、避けることは出来ずに蜂の巣になっていただろう。
だが、反太の運転レベルは伊達じゃない!
気を取り戻し、運転に”集中”することにより、神業のごときドリフトで、レミリアから次々と放たれる念弾を回避していく。
これぞ、運転技術の極めゴースト・ドリフト!
見事かわしきった反太は、反撃する為に特殊レーダーでレミリアを探す。
「化け物め、どこさいった!?」
すると、レミリアを表す紅いマークはレーダーのド真ん中。
つまり、
「……やべえ、上を取られた!」
「さあ、飽きてきたから、ディオ・ブランドーごっこでもするよ! ロードローラーだッ!!!」
レミリアは、タケシが乗っていたロードローラーを抱えたまま、レッドウルフにのしかかった。
”不屈”の効果により、レッドウルフは装甲タイルを10枚失うだけで済み、潰れることは免れたが、ロードローラーの重みにより、重量オーバーとなり、自走不可能に!
反太は、すぐさま脱出ボタンを押すが、
「脱出するしかない! ……って、脱出できねぇーーーッ!?」
「もう遅い! 脱出不可能よッ! 無駄無駄無駄無駄ァーーーッ!」
脱出装置が故障したにも関わらず、オラオラオラッ!と必死にボタンを押し続ける反太に対し、レミリアは元気一杯ロードローラーを殴り続け、レッドウルフへめり込ませていく。
「怯えろ! 竦め! 戦車の性能を活かせぬまま死んで逝けぇーーッ!!」
「ア、アメリアァァァァァァ!!」
スカーレット・デビルの咆哮と共に繰り出された、とっておきのダメ押しというヤツだ!により、反太は恋人の名を絶叫し、ロードローラーでレッドウルフごとペッチャンコ♪
仲間のロードローラーで、愛戦車ごとプチッと潰される死に様。
”赤い悪魔”の通り名を持つ凄腕のハンターにとっては、あまりにも悲惨な最期であった。
哀・戦車編━━完。
多くの賞金稼ぎ達を、見事返り討ちにしたレミリア。
だが、レミリア達の戦いはこれからだ!
◇◇◇
~ 極めて近く、限りなく遠い世界 西の都 ~
雲一つない、満月の晩のことであった。
「ぎょえーーっっ!!」
凄まじい悲鳴が閑静な住宅街に響く。
何事かと、外へ飛び出した住人達は皆息をのんだ。
月明かりの下で、ドアノブカバーに似た帽子を被り、ピンク色の服を着て、背中に大きな翼が生えた少女が、頭部の無い死体から溢れ出る血を啜っていたからだ。
戦慄し、動けない住人達をよそに、少女は服に血が付くのも構わずに、無我夢中で血を飲み続けた。
「う~☆ やっぱり、A型の血はまろみがあって、のどごしが違うわ~♪。 さてと……、帰るとするか」
少女は、血にまみれた顔を満足げに綻ばせると、翼をはばたかせて、夜空へと消えていった。
この事件は、住民達にとって恐怖の始まりにすぎなかった。
なんせ、それから連日のように同じような犠牲者が続出したのだから。
目撃者達の証言。
そして犠牲者達の遺体から、吸血鬼のエキスが検出されたことにより、怪少女の正体は吸血鬼と暫定される。
吸血鬼。
強大な身体能力、どんな傷でもすぐに修復する再生能力、そして様々な特殊能力を持つ、恐るべき化け物である。
警察は、対化物部隊を動員し、市中の警戒に当たらせた。
だが、犠牲者を減らせるどころか、屈強な隊員達も次々と吸血鬼少女のエサになる始末。
警察はやむえず、ステルス迷彩偵察機等、ハイテク機器を駆使して得た吸血鬼少女の氏名や住所等の個人情報をハンターオフィスに渡し、賞金を懸けることにした。
吸血鬼少女の名は、レミリア・スカーレット。
この”おたずねもの”の首に懸けられた賞金額は、100万ユキチ君たらずであった。
◇◇◇
それは、トカゲと言うには、あまりにも大きすぎた。
体が大きく、皮膚がぶ厚く、目方が重く、そして圧倒的すぎた。
それは、正にドラゴンだった。
~ モンスター図鑑「超獣戯画」 ドラゴン紹介ページのキャッチコピーより ~
◇◇◇
極めて近く、限りなく遠い世界において、時空の”ゆらぎ”から出現するドラゴンが社会問題の一つになっていた。
ドラゴン。
動物界脊索動物門爬虫綱有鱗目ドラゴン亜目に属するこの生物は、巨体で生命力が極めて高く、個体によっては、知能が人間以上だったり、炎や有毒ガス等のブレス攻撃を行ってくる恐ろしい怪物だ。
”ゆらぎ”から際限なく湧いてくるドラゴンに対し、軍隊では対処しきれず、世界政府は特に危険なドラゴンに高額の賞金を懸け、賞金稼ぎ達に退治を促していた。
◇◇◇
ドカーン!! ドカーン!! ドバババーーー!!
「グギャアアアーーッ!!」
砲弾や機関銃による弾幕を受けたドラゴンの断末魔が荒野に響き渡る。
巨大なドラゴンを仕留めたのは、真っ赤でイカス戦車。
硝煙が漂う中、戦車のハッチが開き、戦車帽を被った中年の男が顔を出す。
「やれやれ、今月で十匹めか……」
ため息をつきながら、スマホを操作する男の名は、半田反太(はんた はんた)。
プロハンターのライセンスを持ち、愛戦車レッドウルフを駆り、強大なドラゴンをも単独で仕留める凄腕の賞金首(ブラックリスト)ハンターである。
手強い賞金首を難なく仕留めていき、搭乗する戦車も相まって、付いた異名は、”赤い悪魔”。
その”赤い悪魔”は、すごぶるマンネリな気分であった。
「しっかし、相変わらずドラゴンばっかりだなあ……」
スマホで開いたハンターオフィスのサイトに並ぶのは見慣れたトカゲ面の怪物達。
近年、各国の警察組織は、プロハンターと専属契約を結び、警察職員として雇うことで、手強い犯罪者でも、建前上自前で対処することが可能となった。
その為、昔と違い賞金首となるのは、国家権力が対処しきれないドラゴンばかり。
どれも高額であるが、さすがに同じ系統のモンスター退治が続けば飽きるというもの。
「一服するか。 ……おっ!」
ポケットから煙草を取り出そうとすると、スマホの着信音が鳴り響く。
スマホには賞金稼ぎ仲間の名が表示されていた。
「どうした、タケシ? ……何!? おうよ、竜退治はもう飽きた! ……分かった、すぐに合流するぜ!!」
タケシとの電話を終えると、続けて賞金稼ぎであり、恋人でもある愛しい彼女、アメリアへ電話をかける。
「タケシから、「竜退治は、もう飽きた! どうだ~、みんな~」って誘われてな。 ターゲットは、最近頻繁に西の都の住人を襲う吸血鬼だってよ。 ともかく、久々のドラゴン以外の賞金首だ。 サクッと片付けて帰るから、パインサラダ期待してるぜ!」
反太は、さりげなくフラグを立て終えると、タケシ達との合流ポイントへ意気揚々と向かうのであった。
◇◇◇
初夏の日差しが照りつける中、血まみれの帽子と洋服を纏い、大きな翼を背中に生やした幼い容姿の少女が空を飛んでいた。
非行、もとい、飛行少女の名は、レミリア・スカーレット。
ぺロリたくなるような可愛らしい容姿に反し、恐るべき怪物、吸血鬼だ。
「う~☆ 太陽が黄色いわ~♪」
さんさんと輝く太陽に、眩しそうに目を細めるレミリア。
吸血鬼である彼女が、直射日光を浴びて平気でいられる理由。
それは、レミリアが発するオーラがパリアのように彼女の全身を覆い、吸血鬼の弱点である太陽の紫外線を完全に遮断しているからだ。
とある出来事により、念能力を習得してからの、レミリアにとっては嬉し過ぎる副産物といえよう。
兎にも角にも、太陽とお友達になれたことで、朝帰りも余裕で行えるようになったレミリアは、最高にハイ!ってやつな気分であり、大都会である西の都へ行き、好みのタイプの人間を吸血して、大満足な気分で帰宅の途中である。
西の都で人間を襲い続け、住人達に恐怖を与えているレミリアは、襲った人間の血を吸うだけでなく、吸血鬼のバカ力で犠牲者の頭部を確実に潰していた。
その残虐極まりない行為は、レミリアの育ちの良さを表していた。
吸血鬼にチューチューされた人間は、頭部を潰す等、致命的な損傷を与えないままでいると、吸血鬼のエキスにより、屍生人(ゾンビ)と化す。
屍生人は凶暴であり、周囲の生きている人間を無差別に襲う。
つまり、残飯が他の新鮮な食料を傷めるようなものである。
レミリアがそれを防ぐために後始末をしっかりしているのは、吸血鬼の貴族である親から徹底的に叩き込まれた食事マナーの賜物であろう。
もっとも、人間に吸血鬼の食事マナーなど理解されるはずもなく、レミリアが犠牲者の頭部を粉砕する行為は、住人達に猟奇的と捉えられ、より一層の恐怖を与えていたが。
「うにゅ? なんだ、アレ?」
住処である紅魔館まであと少しというところで、レミリアは急停止した。
眼下に広がる荒野に、紅魔館へ向かって土埃を上げて進む奇妙な車の集団を見つけたからだ。
進む先には、紅魔館しかない。
それにくわえて、どの車の”あな”にも機銃やら大砲やらミサイル等が付けられており、レミリアは奇天烈な集団が何なのか、すぐさま理解する。
彼奴等は敵だと。
「ロードローラーが1! タンクローリーが1! 戦車が1! 装甲車が3! バギーが1! 救急車が1! バスが1! タクシーが1! バキュームカーが1! 霊柩車が1! 痛車が1! 痛車にも大砲が装備されてる。 リフォーム前の紅魔館にとっては脅威となるわね!」
脅威と言ったにも関わらず、レミリアは愉悦の笑みを浮かべ、集団の先頭を走るロードローラーへと向かって行く。
その様は、まるで新しいオモチャを買ってもらってハシャグ子供のようであった。
レミリアは、ロードローラーの剥き出しの運転席に降り立つと、運転手の男に向かって「にぱ~☆」と微笑む。
最も恐るべき化け物、吸血鬼であるレミリアだが、見た目はお持ち帰りしたくなるぐらいかぁいいロリっ娘。
プロハンターのライセンスこそ持っていないが、”凶声のタケシ”の通り名で知られる賞金稼ぎは、突然目の前に現れた少女に驚くも、すぐさまニヤケ顔を晒す。
そのニヤケ男に向かって、レミリアは腕を振るう。
「きんもーっ☆な顔して、何想像してんのさ!」
「ピチューン!?」
レミリアの腕の一振りで、タケシだったモノは、奇声を上げてバラバラになった。
「まずは、ひと~つ♪」
様々なハチャメチャな特殊能力を持ち、すばらしい身体能力を誇る吸血鬼。
その拳は空を裂き、蹴りは大地を割るという。
技を超えた純粋なパワーこそ、吸血鬼最大の武器。
そう、吸血鬼のパワーにかかれば、人間達を軽々とぼろ雑巾のように引きちぎるなど、容易なことなのである。
そしてレミリアは、気力が110以上になると、特殊能力”紅の眼”が発現し、全ての念系統の能力を100%引き出せるようになる為、そのパワーはドラゴンをも凌駕するのだ。
敵ユニットを一つ撃破したレミリアの気力は110となった。
レミリアは、眼を紅く輝かせ、他の車達へ襲い掛かっていく。
「ぎゃおー! やっつけちゃうぞー!」
襲撃すること、モケーレ・ムベンベの如し。
◇◇◇
~ おぜうさま無双ターン開始☆ ~
レミリアの攻撃!
クリティカルヒット!!
「うわああっ!? まてっ、まてよっ! ウボァー!!」
ピチューーーーン!!
「ふた~つ♪」
レミリアの攻撃!
痛恨の一撃!!
「うっ!? バ、バカな……。 俺はまだ何もやっちゃいないんだぞ……」
ピチューーーーン!!
「み~つ♪」
レミリアの攻撃!
「しっ、死にたく」
運転手は首をはねられた!!
ピチューーーーン!!
「よ~つ♪」
レミリアの攻撃!
レミリアは、がんばった!
「いい夢を……、見させてもらったぜ……。 か、母ちゃん……」
ピチューーーーン!!
「いつつ♪」
レミリアは、ヘルファイアを放った!
車に直撃し、大炎上!!
「運転席の中まで燃えてきて、暑っ苦しいなあ。 おーい、出してくださいよ、ねえ?」
ピチューーーーン!!
「む~つ♪」
レミリアの攻撃!
SMAAAASH!!
「オレは……、死ぬのか……」
ピチューーーーン!!
「ななつ♪」
レミリアのパンチラキック!
「び、美幼女の縞パンツ!? 我が生涯に一片の悔い無し!!」
こうかは、ばつぐんだ!
ピチューーーーン!!
「や~つ♪」
レミリアは、MAP兵器『神槍 スピア・ザ・グングニル』を使った!
あぼーーん!!
「脱出できなかったら、負けかなと思ってる」
ピチューーーーン!!
「⑨♪」
あぼーーん!!
「ヤ、ヤスクニで……、会おう……」
ピチューーーーン!!
「とお♪」
あぼーーん!!
「ひぎぃぃぃ!? 逝くぅぅぅーーッ!!」
ピチューーーーン!!
「じゅういち♪」
あぼーーん!!
「仏仏仏仏仏仏仏仏仏仏仏」
ピチューーーーン!!
「じゅうに♪」
レミリアは、パンチで、キックで、特殊能力等で車を次々と撃破していった。
残された車は、反太のレッドウルフのみ。
なんということでしょう!
レミリアの攻撃によって、反太の愉快な仲間達はアッ!というまに全滅だ!
まるでアニメのやられメカのような仲間達の最期の様に、反太はビックリ仰天!
「ぜ、全滅!? 十二台の車が全滅!? 三分もたずに……。 ば、化け物め、圧倒的じゃないかぁ~ッ! ……ッ!? こ、こっちに来る!?」
圧倒的な力を見せ付けられ、テンパってる反太をよそに、レミリアは、レッドウルフの前方まで来ると、地面から2Mぐらい浮かび上がり、くるりと180度回って、おしりペンペン♪
その行為は、逃げ腰だったハンターを激怒させ、また、闘志を爆発させた。
「と、とさかキターーッ! オレをなめきった不幸を呪え! オーラよ、高まれ!」
車の運転レベルが極めて高く、操作系能力者である反太。
仲間を殺られた上に、サイコーに侮辱され、怒り心頭の反太はオーラをレッドウルフの駆動部分に纏わせていく。
これにより、反太の鋭敏な操縦技能に対し、操縦系統に無限の反応速度を付加。
名付けて、”オーラ・コーティング”。(特許申請中)
「まだまだァーーッ! 熱血! 必中! 集中! 不屈! 加速! 突撃ィィィィィ!!」
一般的な操作系能力者は、強化することが苦手である。
しかし、反太は、運転する車を強化する程度の能力、”オーラ・コマンド”を習得していたのであった。
さあ、準備万端!
「覚悟しろ、化け物め! 人間の可能性ってやつを見せてやる! とっておきのコンバットパターンだ!」
のんきに欠伸をしているレミリアに向かい、グレネードを数発狙い撃ち。
「円の動きで追い込み、続けて集中砲火!」
”加速”により、戦車であるレッドウルフのスピードがスポーツカー並みに向上。
グレネードの着弾後、すぐさまレミリアを中心にドリフトを行いつつ、対空砲で連続攻撃。
「伊達や酔狂でこんだけの兵器を積んじゃいない! 釣りはいらんぞ、全部持っていけーーッ!!」
レッドウルフの穴という穴から砲弾やら、ミサイルやら、火炎放射やら、電撃やら、レーザー等を次々と発射。
ド派手な弾幕は、幼女サイズのレミリアに全て”必中”!
凄まじい閃光と爆音、そして巻き上がる大量の土砂。
攻撃は、オーバーキルであった━━
「仇をとってやったぜ、みん……なッ!?」
かに思えた。
現実は非情である。
爆煙が風に流され、コクピットのディスプレイに映し出されたのは、周囲に球状の膜のようなモノを張ったレミリアの姿。
レミリアは、弾幕の着弾寸前に、オーラを核攻撃にも耐えうるほど強固なバリアフィールドに変化させた、通称オーラ・バリアを張っていたのだ。
レミリアの健在ぶりを見て、ビビる半田。
「な、何…だと…!?」
百戦錬磨の兵(つわもの)が驚愕するのは無理もない。
”熱血”で威力を倍増させた近代兵器による凄まじい弾幕により、遺伝子の欠片まで焼き尽くされてるはずのレミリアが無傷だったのだから。
圧倒的な存在を目にしたことによる”脱力”により、気力を低下させてしまった反太。
それに対し、レミリアの気力は限界突破!
「リアル弾幕ごっこは、もう終わりかしら? 今度は私のターンね! このみなぎるオーラ力(ちから)で落ちちゃいなちゃ~い!」
レミリアのオーラ・バリアの一部が次々と剥がれ落ちていき、念弾へ変わるとレッドウルフへ襲い掛かかる。
「なんとぉーっ! 逃げまわりゃ、当たりはしない!」
普通の運転手であれば、避けることは出来ずに蜂の巣になっていただろう。
だが、反太の運転レベルは伊達じゃない!
気を取り戻し、運転に”集中”することにより、神業のごときドリフトで、レミリアから次々と放たれる念弾を回避していく。
これぞ、運転技術の極めゴースト・ドリフト!
見事かわしきった反太は、反撃する為に特殊レーダーでレミリアを探す。
「化け物め、どこさいった!?」
すると、レミリアを表す紅いマークはレーダーのド真ん中。
つまり、
「……やべえ、上を取られた!」
「さあ、飽きてきたから、ディオ・ブランドーごっこでもするよ! ロードローラーだッ!!!」
レミリアは、タケシが乗っていたロードローラーを抱えたまま、レッドウルフにのしかかった。
”不屈”の効果により、レッドウルフは装甲タイルを10枚失うだけで済み、潰れることは免れたが、ロードローラーの重みにより、重量オーバーとなり、自走不可能に!
反太は、すぐさま脱出ボタンを押すが、
「脱出するしかない! ……って、脱出できねぇーーーッ!?」
「もう遅い! 脱出不可能よッ! 無駄無駄無駄無駄ァーーーッ!」
脱出装置が故障したにも関わらず、オラオラオラッ!と必死にボタンを押し続ける反太に対し、レミリアは元気一杯ロードローラーを殴り続け、レッドウルフへめり込ませていく。
「怯えろ! 竦め! 戦車の性能を活かせぬまま死んで逝けぇーーッ!!」
「ア、アメリアァァァァァァ!!」
スカーレット・デビルの咆哮と共に繰り出された、とっておきのダメ押しというヤツだ!により、反太は恋人の名を絶叫し、ロードローラーでレッドウルフごとペッチャンコ♪
仲間のロードローラーで、愛戦車ごとプチッと潰される死に様。
”赤い悪魔”の通り名を持つ凄腕のハンターにとっては、あまりにも悲惨な最期であった。
哀・戦車編━━完。
多くの賞金稼ぎ達を、見事返り討ちにしたレミリア。
だが、レミリア達の戦いはこれからだ!
とにかく、自分でこれは確実に面白いと自信を持ててから投稿してください。
東方キャラの名を使っただけのパロネタ詰め込みだけの内容が面白いのか考えてから投稿してください。
お願いします。
黒歴史ノート時代から光るものはあるから磨けば評価は出来ると思ってましたが、そろそろマジで勘弁してください。
近代兵器に魔法付加が最強だと思う
スパロボのコマンドは確かに念能力みたいだわね
こういうのって実際最強だと思うけど、逆に幼女サイズのレミリアの超体術とは相性悪そうって理屈でよく少年漫画じゃ噛ませにされるイメージ
実際はコンパクト超機動超体術じゃ超パワー弾幕に勝てない気がする
まあ幼女がマッチョに勝つ話は嫌いじゃないわ
単純に原作愛を一切感じないから不快なんだわ
さらにパロディネタしかない作品て、もはや元どこだよ。
東方を知ってるやつじゃなくて、
パロディネタを知ってるやつに向けて書いてる時点で、東方創想話でやる必要はない。
1さん
黒歴史ノート(汗)に書いてあるモノ以外で、
頭の中である程度まとまっているいくつかのモノの内の一つに、
東方以外のネタを極力省いたモノがあります。
面白いモノにできましたら、投稿します。
2さん
好きな作品のキャラや設定等に、
自分なりのいろいろな妄想を加えたり、
独自解釈するのは楽しいです。
それが、二次創作の醍醐味だと思います。
3さん
当初は、半田反太のように、東方以外のキャラのみ、
念能力を持っている設定でした。
しかし、東方の各キャラが持つ『~程度の能力』って、
念能力に通じるモノがあると思いまして、
東方キャラ達も、念能力者という設定にしました。
だからこそ目を背けたいとも思う。
ところで某作品の念能力ですが、あれは今まで漠然としていた特殊能力を理論で説明できるようにしたもの、という説があります。
ゆえに東方だけでなく、その気になれば全ての特殊能力を念に置き換える事が可能なはず。