【紅魔館:墓地】
「……」
「まぁた来てたのね、仕事そっちのけで…」
「っお嬢様、雨が降ってますのに…」
「傘くらい自分でさせるわよ… そう言えば墓守りの係なんて決めてなかったわね、お前の方で決めておきなさい」
「……」
「…決めるまでもなさそうね」
「……」
「あれから…半年?一年?十年? 毎日毎日墓石磨いて花を飾ってお茶も供えてボンヤリしちゃって話し掛けて…本業に支障が出ない程度になさいね」
「なんで」
「んん?」
「なんで…こんなに、早く…」
「と言うかあんた、御主人サマがいるんだからこっち向きなさいよ 墓石を磨き過ぎて私の顔でも映ってるの?」
「ッすみません…!」
「まったくこんなに濡れて…ほら傘持ちなさい、濡らしたらぶつからね」
「すいま…ぁぁ大丈夫ですっ自分で拭きます…」
「妖怪と人間の寿命差から来る死に別れ… 悲哀の小説の題材には持って来いの、ありふれた話よ」
「……」
「分かっていた筈よ いつかはこうなると」
「……だからってこんな…死ぬ少し前にだって、久しぶりに博麗の巫女達と…」
「燃え尽きる直前の炎は一際明るいと言うわよ」
「……ケホッ」
「お前が“彼女”と出会った時点で、もう彼女は棺桶に脚の小指を突っ込んでいたのよ」
「…お嬢様は、彼女の死を…」
「『死は不意に来る狩人に非ず』…死期程見定めやすい運命はないわ ましてやそれが寿命によるものとなれば、ね」
「…私は」
「私は、彼女に話したい事が、沢山あったんです」
「してあげたい事も、教えたい事も…逆にそうして貰いたい事も、あったんです あった、筈なんです」
「なのに、それが何なのかすら分からない内にこんなッこんな…」
「…くちゅんッ」
「……失礼、しました…」
「ん… 馴れる事だ」
「……」
「この先、色んな奴等が死んでいく どいつもこいつも死んでいく 次から次へと死んでいくぞ」
「寿命の長短、身心の強弱、環境の善し悪し…そんなあれやこれやがくんずほずれつ絡んで揉めて、誰がいつどうやって死ぬのか分からない」
「先程『死期程見定めやすい運命はない』と…」
「私も お前も」
「………………はい」
「そんな中こいつは“早い奴”だった、それだけの事」
「…と言うのは流石に軽過ぎるが、概ねはそう言う事よ」
「……」
「…お前は黙ってばかりだなぁ 主人の前で塞ぎ込み過ぎっ」
「…申し訳ありません」
「今さっき『もっと話しておけばよかった』といじけたばかりじゃないの …それとも、私との思い出作りはもう充分かしら?」
「ッそそんな事…!」
「無いなら、手始めに日課の野菜の収穫といこうかしら? そろそろ時間よ」
「…ぁ もう夜明け前… 失礼しました」
「業務に差し障りの無い時間に済ませようと言う意識は認めるけど、早起き遅寝じゃ集中力に差し障るわ」
「彼女も、自分の死後に、自分との間に、そんな思い出を作って欲しくはないでしょうし、ね」
「仰る通りです…」
「さぁって…今度のトマトは美味しく出来てるかしらねぇ?」
「今度は上手くいってる筈ですよ、きっと」
「根拠は?」
「“あの人”の亡骸から少々…切って乾かして粉にして、畑に撒きました」
「……私達、彼女が死んで悲しいなーって話をしてたのよね?」
「ですが、あの人も御嬢様の御役に立てた方が喜ぶでしょう きっと」
「……やるわね、貴女も 中々」
「光栄です」
【眠れる門の番龍 紅美鈴 ここに眠る】
「……」
「まぁた来てたのね、仕事そっちのけで…」
「っお嬢様、雨が降ってますのに…」
「傘くらい自分でさせるわよ… そう言えば墓守りの係なんて決めてなかったわね、お前の方で決めておきなさい」
「……」
「…決めるまでもなさそうね」
「……」
「あれから…半年?一年?十年? 毎日毎日墓石磨いて花を飾ってお茶も供えてボンヤリしちゃって話し掛けて…本業に支障が出ない程度になさいね」
「なんで」
「んん?」
「なんで…こんなに、早く…」
「と言うかあんた、御主人サマがいるんだからこっち向きなさいよ 墓石を磨き過ぎて私の顔でも映ってるの?」
「ッすみません…!」
「まったくこんなに濡れて…ほら傘持ちなさい、濡らしたらぶつからね」
「すいま…ぁぁ大丈夫ですっ自分で拭きます…」
「妖怪と人間の寿命差から来る死に別れ… 悲哀の小説の題材には持って来いの、ありふれた話よ」
「……」
「分かっていた筈よ いつかはこうなると」
「……だからってこんな…死ぬ少し前にだって、久しぶりに博麗の巫女達と…」
「燃え尽きる直前の炎は一際明るいと言うわよ」
「……ケホッ」
「お前が“彼女”と出会った時点で、もう彼女は棺桶に脚の小指を突っ込んでいたのよ」
「…お嬢様は、彼女の死を…」
「『死は不意に来る狩人に非ず』…死期程見定めやすい運命はないわ ましてやそれが寿命によるものとなれば、ね」
「…私は」
「私は、彼女に話したい事が、沢山あったんです」
「してあげたい事も、教えたい事も…逆にそうして貰いたい事も、あったんです あった、筈なんです」
「なのに、それが何なのかすら分からない内にこんなッこんな…」
「…くちゅんッ」
「……失礼、しました…」
「ん… 馴れる事だ」
「……」
「この先、色んな奴等が死んでいく どいつもこいつも死んでいく 次から次へと死んでいくぞ」
「寿命の長短、身心の強弱、環境の善し悪し…そんなあれやこれやがくんずほずれつ絡んで揉めて、誰がいつどうやって死ぬのか分からない」
「先程『死期程見定めやすい運命はない』と…」
「私も お前も」
「………………はい」
「そんな中こいつは“早い奴”だった、それだけの事」
「…と言うのは流石に軽過ぎるが、概ねはそう言う事よ」
「……」
「…お前は黙ってばかりだなぁ 主人の前で塞ぎ込み過ぎっ」
「…申し訳ありません」
「今さっき『もっと話しておけばよかった』といじけたばかりじゃないの …それとも、私との思い出作りはもう充分かしら?」
「ッそそんな事…!」
「無いなら、手始めに日課の野菜の収穫といこうかしら? そろそろ時間よ」
「…ぁ もう夜明け前… 失礼しました」
「業務に差し障りの無い時間に済ませようと言う意識は認めるけど、早起き遅寝じゃ集中力に差し障るわ」
「彼女も、自分の死後に、自分との間に、そんな思い出を作って欲しくはないでしょうし、ね」
「仰る通りです…」
「さぁって…今度のトマトは美味しく出来てるかしらねぇ?」
「今度は上手くいってる筈ですよ、きっと」
「根拠は?」
「“あの人”の亡骸から少々…切って乾かして粉にして、畑に撒きました」
「……私達、彼女が死んで悲しいなーって話をしてたのよね?」
「ですが、あの人も御嬢様の御役に立てた方が喜ぶでしょう きっと」
「……やるわね、貴女も 中々」
「光栄です」
【眠れる門の番龍 紅美鈴 ここに眠る】
逆に時間かけたらもっといいものが書けるようなセンスも感じませんけどね。
マジで驚いたので元の点数プラス十点で。
面白くなりそうなネタだっただけに非常に残念です。