美鈴が階下を歩いていたので思わず呼び止めると、美鈴は晴れ晴れとした笑顔をこちらに向けた。別段用事も無かったので挨拶程度の会話を交わすと美鈴は去っていく。それを見送る私の意識の端には、何やら違和感がこびりついていた。妙に明るかったというか、元気だったというか、何か良い事でもあったのかと思わせる様子でもあり、何か期待する様な、隠す様な、悪戯をした子供が親の様子を窺う様な態度でもあった。おかしいと言えばおかしいが、普段から意味も無く明るさを振りまいている美鈴であったから、気にかかりはすれどもそこまで不思議にも思わなかった。私と違ってとにかく明るい事が美鈴の良さである。美鈴が明るくしているのであれば、好ましく思う事はあれ不安は無い。そう考えながら、私は魔理沙から取り返した本を持って図書館へと向かった。
その報を聞いたのは、長話になりかけていたパチュリー様との会話を切り上げた時で、私がパチュリー様に会釈をして外へ向かおうとすると、入り口の扉が物凄い勢いで開かれ妖精メイドが入ってきた。
「美鈴さんが殺されました!」
それを聞いても私は特に何も思わなかった。妖精メイドは皆悪戯好きで、平気で嘘を吐く。美鈴なんて何度殺されたか分からない。いつもの事であった。ただ妖精メイドがいつになく熱心だったので、私は仕方無く妖精メイドに手を引かれて裏の林へ向かった。そこで美鈴が死んでいた。
皆が泣き声を上げる中、手を引かれて倒れている美鈴の傍に寄った。生きている様にしか見えなかった。冗談だろうと思って喉を触ると温かい。けれど呼吸をしていないし、脈拍も無い。何度呼びかけてみても反応が無い。温かみが少しずつ失われていく。まさか本当に死んでしまったのかと、美鈴の傍で放心していると永遠亭の医者がやって来た。検死をするからと妖精メイド達に引き摺られて美鈴から放された。やがて医者が美鈴の死亡を伝え、皆がいよいよ強く泣き出した。そんな訳が無いと医者を問い詰めたが、倒れていた美鈴に呼吸も脈拍も無かったのは事実でどうしたって否定出来ない。蘇生も出来ないと聞かされて私はどうしようもなく立ち尽くした。皆の上げる泣き声を聞いている内に、美鈴の死が現実味を帯びて、気持ちが悪くなった。気が付くと自分の部屋に居て、ベッドに寝転がっていた。どうする事も出来ずにそのまま横たわっていると、夜半になって妖精メイドがやって来た。美鈴を弔うから大広間に来て欲しいと言われたが、気分が悪かったので辞退した。何だか立ち上がるのが億劫な程、頭が重たくて仕方が無かった。
結局目の冴えたまま朝を迎えて、窓から日が射してくるのをじっと見つめ続けていると、お嬢様が妖精メイドを伴ってやって来た。日光を嫌うお嬢様の為に妖精メイド達が電灯を点け窓を閉めている。流石に眠っている訳にはいかず、何とか起きだして鏡を見ると老婆の様な自分の姿があった。呆然としていると、お嬢様が心配して声を掛けてくれた。その声は震えていて悲しみに満ちていた。鏡に映った入り口にお嬢様の姿は映っていないが、きっとそこに立つお嬢様は泣き出しそうな顔をしているだろう。私だけが悲しい訳じゃない。皆泣いている。
ふと自分の腕に感覚が無い事に気が付いた。体を触り回しても全く感触が無い。体中から感覚が消えていた。驚いたものの、あまり不思議に思わなかった。美鈴が消えた事で私の感覚が色褪せてしまったのだろう。それは極自然の事に思えた。
せめて今日の午前中だけは一人にさせて欲しいと願うと、お嬢様はそれを応諾してくれた。午後になったらもう一度様子を伺いに来ると言ってお嬢様は引き下がった。考えてみれば、お嬢様は夜行性でこの時間は眠っている。それなのに私を気遣って見舞ってくれた。お嬢様に無理をさせてしまっている自分が情けなかった。
妖精メイド達が去っていくのを鏡越しに見つめていると、ひょこりと美鈴が顔を覗かせた。まさかという驚きに喉が詰まる。目が合うと、美鈴は驚いた様子で目を見開き、すぐに顔を引っ込めた。
思わず振り返ったが、そこには廊下に出たお嬢様と妖精メイド達の姿しか無い。
「待って! 扉を閉めないで!」
扉を閉めようとしていた妖精メイドを押し退けて部屋の外へ出たが、廊下に美鈴の姿は無い。
「どうしたの、咲夜」
「いえ」
白昼夢だろうか。私が部屋の中に戻ると妖精メイドが扉を閉めようとしたので、それを制止して、開け放しておく様に言った。
鏡台の前に座って、鏡の奥の開け放した入口を見つめる。扉を開けていればまた美鈴の姿が見られる気がした。何と無い予感があった。どうしてそう思うのだろうと自分の思考を不思議に思う。美鈴は既に亡くなっているというのに、些細な空目に縋って美鈴に会おうとこうして鏡を覗きこんでいる。鏡の中の自分は酷い顔だ。まるで狂人の様だ。そしてその見立ては間違いないだろう。鏡を覗いて美鈴が現れるのを待つ私はきっとおかしくなっている。おかしくなった自分を自覚しながらも鏡を覗くのを止めようとは思わない。腕を抓ってみたが、抓られた痛覚も抓った感触も無かった。きっと私は自分自身を制御出来なくなっている。だから体の感覚は失せたし、空目をするし、こうして鏡を覗いている。それだけ美鈴の事を大切に思っていたのだろう。美鈴が失われた事で狂っていく自分を好ましく思う。
しばらく鏡を見つめていると果たして美鈴が顔を覗かせた。もう驚きは無い。当たり前の事だと思える。
「美鈴、入ってきて」
私の事に反応して美鈴がおっかなびっくり鏡の中の私の部屋に入ってきた。鏡に映る美鈴は生気に満ち溢れていてとても死んでいるとは思えない。それを証明する様に鏡の中の美鈴が言った。
「ごめんなさい、咲夜さん。私、死んでなんか居ないんです」
「ええ、分かっているわ」
心の何処かでそう思っていた。
美鈴は死んだのでは無い。ただ私の傍から失せてしまっただけで、何処か別の世界で、きっと美鈴は生きている。そんな気がしてならなかった。
鏡の中の美鈴は私の生んだ願望かもしれない。だから私の望んだ事を喋ってくれたのかもしれない。そうだとしても、例え今見ているのが願望の生んだ錯覚であろうとも、鏡に映った姿と同じ様に、美鈴はきっと何処かで元気に生きている。そう信じたかった。
「ごめんなさい、咲夜さん。こんな事を」
「良いのよ」
「ごめんなさい。こんな、咲夜さんがこんなに落ち込むなんて」
「良いの。仕方が無い事なんだから」
私の傍から離れてしまった事は悲しいが仕方が無い。それが神の摂理であるならば、美鈴を責めたって何にもならない。
美鈴を呼ぶとおずおずと近寄ってきた。手を頭の後ろへ回すと、鏡の中で美鈴が私の手を掴む。感触は無い。私は美鈴の手を掴んで、肩に乗せ、頬を押し当てた。鏡の中の美鈴が私を後ろから抱きしめてくる。在りし日の匂いが漂ってきた。つい昨日まで嗅いでいた匂いの筈なのに、何故だか酷く懐かしい。
「きっとあなたはこうして何処かで生きている」
「咲夜、さん?」
「それだけで良いの」
もしかしたら美鈴はこうして落ち込んだ自分を慰めに来てくれたんじゃないだろうか。そんな都合の良い事を考えてしまう自分が居る。
「怒って……いますよね」
「いいえ」
落ち込んだらこうして美鈴が会いに来てくれるのなら、落ち込み続けているのも良いかもしれない。そんな事を考えてしまう弱い自分が居る。
「ありがとう、美鈴。でももう大丈夫」
そう。いつまでも悲しんでは居られない。例えどれだけ大切な人を思おうと、人として己の寿命を全うする事が私の誇り。それを違えれば、私は私でなくなってしまう。
「あなたの知る私は強かった?」
「それは、勿論です。咲夜さんはいつだって」
「だからもう大丈夫」
美鈴の困惑した様な、苦しそうな表情。そんな顔をしないで欲しい。美鈴にはいつも明るい顔で居て欲しい。例え別の世界に居ても、いつもの美鈴で居て欲しい。大切な人にはいつもその人で在り続けてもらいたい。
私はそう思う。そしてきっと、美鈴もそう思ってくれる。
だから私は最期の時まで私で居よう。
美鈴の傍に居た私で在り続けよう。
「さようなら、美鈴」
私は未練を捨てて美鈴と決別して前へ歩む。いつまでも悲しまず紅魔館のメイドとして強い自分で在り続ける。それが私であり、私なりの美鈴への弔い。
涙を流すまいと目を瞑っている内に意識が遠のいていくのを感じた。ベッドまで行くのも億劫で、私はそのまま鏡台に打ち伏した。
美鈴の匂いが私の事を包んでいた。
目を覚ますと部屋の中は真っ暗で、電気が消えていた。窓からは日が射している。時計を見ると、どうやら明け方の様だ。強い自分で居ると誓ったばかりなのに、メイドの本分を怠って随分と寝てしまった。焦りながら立ち上がるその一瞬、鏡を見たがもう美鈴の姿は見えなかった。ただ、何だか近くに居てくれる気がした。まだ弱い自分が残っているなと苦笑しつつ朝の支度をしようと振り返り、部屋の違和感に気が付いた。お嬢様と妹様が私のベッドの上で眠っていた。更に床には何人もの妖精メイドが転がっている。ふと嫌な予感を覚えた。突然死んでしまった美鈴の姿が、辺りに転がる皆と被って見えた。
そんなまさかとお嬢様の容態を確認しようとして、足元に引っかかってたたらを踏む。見ると美鈴が倒れていた。美鈴が体を丸めて横たわり、あろう事か呻き声を上げながら身を捩り、もうちょっと寝かせてくれと言っていた。その手には板が握られていて、曙光でぼやけたそれには『ドッキリ』と書かれている様に見えた。
私が美鈴の顔を踏むと、もうちょっと強くと美鈴が呻いたので、思いっきり力を込めて踏んづけた。
その報を聞いたのは、長話になりかけていたパチュリー様との会話を切り上げた時で、私がパチュリー様に会釈をして外へ向かおうとすると、入り口の扉が物凄い勢いで開かれ妖精メイドが入ってきた。
「美鈴さんが殺されました!」
それを聞いても私は特に何も思わなかった。妖精メイドは皆悪戯好きで、平気で嘘を吐く。美鈴なんて何度殺されたか分からない。いつもの事であった。ただ妖精メイドがいつになく熱心だったので、私は仕方無く妖精メイドに手を引かれて裏の林へ向かった。そこで美鈴が死んでいた。
皆が泣き声を上げる中、手を引かれて倒れている美鈴の傍に寄った。生きている様にしか見えなかった。冗談だろうと思って喉を触ると温かい。けれど呼吸をしていないし、脈拍も無い。何度呼びかけてみても反応が無い。温かみが少しずつ失われていく。まさか本当に死んでしまったのかと、美鈴の傍で放心していると永遠亭の医者がやって来た。検死をするからと妖精メイド達に引き摺られて美鈴から放された。やがて医者が美鈴の死亡を伝え、皆がいよいよ強く泣き出した。そんな訳が無いと医者を問い詰めたが、倒れていた美鈴に呼吸も脈拍も無かったのは事実でどうしたって否定出来ない。蘇生も出来ないと聞かされて私はどうしようもなく立ち尽くした。皆の上げる泣き声を聞いている内に、美鈴の死が現実味を帯びて、気持ちが悪くなった。気が付くと自分の部屋に居て、ベッドに寝転がっていた。どうする事も出来ずにそのまま横たわっていると、夜半になって妖精メイドがやって来た。美鈴を弔うから大広間に来て欲しいと言われたが、気分が悪かったので辞退した。何だか立ち上がるのが億劫な程、頭が重たくて仕方が無かった。
結局目の冴えたまま朝を迎えて、窓から日が射してくるのをじっと見つめ続けていると、お嬢様が妖精メイドを伴ってやって来た。日光を嫌うお嬢様の為に妖精メイド達が電灯を点け窓を閉めている。流石に眠っている訳にはいかず、何とか起きだして鏡を見ると老婆の様な自分の姿があった。呆然としていると、お嬢様が心配して声を掛けてくれた。その声は震えていて悲しみに満ちていた。鏡に映った入り口にお嬢様の姿は映っていないが、きっとそこに立つお嬢様は泣き出しそうな顔をしているだろう。私だけが悲しい訳じゃない。皆泣いている。
ふと自分の腕に感覚が無い事に気が付いた。体を触り回しても全く感触が無い。体中から感覚が消えていた。驚いたものの、あまり不思議に思わなかった。美鈴が消えた事で私の感覚が色褪せてしまったのだろう。それは極自然の事に思えた。
せめて今日の午前中だけは一人にさせて欲しいと願うと、お嬢様はそれを応諾してくれた。午後になったらもう一度様子を伺いに来ると言ってお嬢様は引き下がった。考えてみれば、お嬢様は夜行性でこの時間は眠っている。それなのに私を気遣って見舞ってくれた。お嬢様に無理をさせてしまっている自分が情けなかった。
妖精メイド達が去っていくのを鏡越しに見つめていると、ひょこりと美鈴が顔を覗かせた。まさかという驚きに喉が詰まる。目が合うと、美鈴は驚いた様子で目を見開き、すぐに顔を引っ込めた。
思わず振り返ったが、そこには廊下に出たお嬢様と妖精メイド達の姿しか無い。
「待って! 扉を閉めないで!」
扉を閉めようとしていた妖精メイドを押し退けて部屋の外へ出たが、廊下に美鈴の姿は無い。
「どうしたの、咲夜」
「いえ」
白昼夢だろうか。私が部屋の中に戻ると妖精メイドが扉を閉めようとしたので、それを制止して、開け放しておく様に言った。
鏡台の前に座って、鏡の奥の開け放した入口を見つめる。扉を開けていればまた美鈴の姿が見られる気がした。何と無い予感があった。どうしてそう思うのだろうと自分の思考を不思議に思う。美鈴は既に亡くなっているというのに、些細な空目に縋って美鈴に会おうとこうして鏡を覗きこんでいる。鏡の中の自分は酷い顔だ。まるで狂人の様だ。そしてその見立ては間違いないだろう。鏡を覗いて美鈴が現れるのを待つ私はきっとおかしくなっている。おかしくなった自分を自覚しながらも鏡を覗くのを止めようとは思わない。腕を抓ってみたが、抓られた痛覚も抓った感触も無かった。きっと私は自分自身を制御出来なくなっている。だから体の感覚は失せたし、空目をするし、こうして鏡を覗いている。それだけ美鈴の事を大切に思っていたのだろう。美鈴が失われた事で狂っていく自分を好ましく思う。
しばらく鏡を見つめていると果たして美鈴が顔を覗かせた。もう驚きは無い。当たり前の事だと思える。
「美鈴、入ってきて」
私の事に反応して美鈴がおっかなびっくり鏡の中の私の部屋に入ってきた。鏡に映る美鈴は生気に満ち溢れていてとても死んでいるとは思えない。それを証明する様に鏡の中の美鈴が言った。
「ごめんなさい、咲夜さん。私、死んでなんか居ないんです」
「ええ、分かっているわ」
心の何処かでそう思っていた。
美鈴は死んだのでは無い。ただ私の傍から失せてしまっただけで、何処か別の世界で、きっと美鈴は生きている。そんな気がしてならなかった。
鏡の中の美鈴は私の生んだ願望かもしれない。だから私の望んだ事を喋ってくれたのかもしれない。そうだとしても、例え今見ているのが願望の生んだ錯覚であろうとも、鏡に映った姿と同じ様に、美鈴はきっと何処かで元気に生きている。そう信じたかった。
「ごめんなさい、咲夜さん。こんな事を」
「良いのよ」
「ごめんなさい。こんな、咲夜さんがこんなに落ち込むなんて」
「良いの。仕方が無い事なんだから」
私の傍から離れてしまった事は悲しいが仕方が無い。それが神の摂理であるならば、美鈴を責めたって何にもならない。
美鈴を呼ぶとおずおずと近寄ってきた。手を頭の後ろへ回すと、鏡の中で美鈴が私の手を掴む。感触は無い。私は美鈴の手を掴んで、肩に乗せ、頬を押し当てた。鏡の中の美鈴が私を後ろから抱きしめてくる。在りし日の匂いが漂ってきた。つい昨日まで嗅いでいた匂いの筈なのに、何故だか酷く懐かしい。
「きっとあなたはこうして何処かで生きている」
「咲夜、さん?」
「それだけで良いの」
もしかしたら美鈴はこうして落ち込んだ自分を慰めに来てくれたんじゃないだろうか。そんな都合の良い事を考えてしまう自分が居る。
「怒って……いますよね」
「いいえ」
落ち込んだらこうして美鈴が会いに来てくれるのなら、落ち込み続けているのも良いかもしれない。そんな事を考えてしまう弱い自分が居る。
「ありがとう、美鈴。でももう大丈夫」
そう。いつまでも悲しんでは居られない。例えどれだけ大切な人を思おうと、人として己の寿命を全うする事が私の誇り。それを違えれば、私は私でなくなってしまう。
「あなたの知る私は強かった?」
「それは、勿論です。咲夜さんはいつだって」
「だからもう大丈夫」
美鈴の困惑した様な、苦しそうな表情。そんな顔をしないで欲しい。美鈴にはいつも明るい顔で居て欲しい。例え別の世界に居ても、いつもの美鈴で居て欲しい。大切な人にはいつもその人で在り続けてもらいたい。
私はそう思う。そしてきっと、美鈴もそう思ってくれる。
だから私は最期の時まで私で居よう。
美鈴の傍に居た私で在り続けよう。
「さようなら、美鈴」
私は未練を捨てて美鈴と決別して前へ歩む。いつまでも悲しまず紅魔館のメイドとして強い自分で在り続ける。それが私であり、私なりの美鈴への弔い。
涙を流すまいと目を瞑っている内に意識が遠のいていくのを感じた。ベッドまで行くのも億劫で、私はそのまま鏡台に打ち伏した。
美鈴の匂いが私の事を包んでいた。
目を覚ますと部屋の中は真っ暗で、電気が消えていた。窓からは日が射している。時計を見ると、どうやら明け方の様だ。強い自分で居ると誓ったばかりなのに、メイドの本分を怠って随分と寝てしまった。焦りながら立ち上がるその一瞬、鏡を見たがもう美鈴の姿は見えなかった。ただ、何だか近くに居てくれる気がした。まだ弱い自分が残っているなと苦笑しつつ朝の支度をしようと振り返り、部屋の違和感に気が付いた。お嬢様と妹様が私のベッドの上で眠っていた。更に床には何人もの妖精メイドが転がっている。ふと嫌な予感を覚えた。突然死んでしまった美鈴の姿が、辺りに転がる皆と被って見えた。
そんなまさかとお嬢様の容態を確認しようとして、足元に引っかかってたたらを踏む。見ると美鈴が倒れていた。美鈴が体を丸めて横たわり、あろう事か呻き声を上げながら身を捩り、もうちょっと寝かせてくれと言っていた。その手には板が握られていて、曙光でぼやけたそれには『ドッキリ』と書かれている様に見えた。
私が美鈴の顔を踏むと、もうちょっと強くと美鈴が呻いたので、思いっきり力を込めて踏んづけた。
それも含めて、咲夜の反応が冷静というかご都合すぎて、いまいち話に入り込めませんでした。
自分はこの作品が好きです。美鈴が死んだことを前半部でさらに強調すると、読者を「あれ、もしかしてこの作品はシリアスなのかな」と疑わせ、オチの切れ味が増すように思います。
でも今回はなんとなくいつもよりわかりやすいんだろうなと思いました
咲夜がおばあさんになってボケっちゃったのか本当に只のヤラセが洒落にならなかったのか
それともそのいずれでもないのか
死因が分からなければお嬢様が狙われても防げないのに?
この世界では里人ですらそんな平和ボケはいないと思うが