雨が止んだ後の空というのは、ただ快晴というだけである空よりも、ずっと清々しいものだ。
きっと、雨が空の汚いものをすべて洗い流しているからなのだろう。汚れが無くなって、邪魔なものが消えたから、太陽の光はよく届くし、風もすうっと気持ち良く吹いている。
霖之助は、こんな空が好きだった。決して外によく出るアウトドア派ではないけれど、そんな空の下は気持ちが良い。
だが同時に、少し憂鬱でもあった。
澄み渡る空を綺麗に吹く風は、いろいろな物事を香霖堂に運んでくれる。
だけれども、それが霖之助にとって良い事か悪い事か、風は判断してくれないのである。
そして、霖之助の長年の経験から考察すると、大抵ロクなことが起きない。というのが、霖之助の出した結論だ。自分でもあまり認めたくない結論だった。
ある雨上がりの日は、たしか魔理沙が扉を完膚なきまでに叩き壊していった。またある雨上がりの日は、霊夢が隠しておいたせんべいを持っていった。
今よくよく考えてみれば主な原因はあの二人なのだが、まあともかく雨上がりというのは良いイメージが湧かないのだ。
そんなトラウマ染みたこともあったからだろう。霖之助の気分は晴れやかながらも、その片隅は曇り、雨が降りそうだった。
それがなんの根拠もない妄想だと笑えれば、どれだけ楽なことか。
しかし、霖之助は自分の長年の勘に自信がある。だから、わかるのだ。今日は何かが起きるだろうな、と。
あの霊夢じゃないから、それが霖之助にとってどんなものかはわからない。だからこそ、不安だ。
イスに座り、本を読んでいた霖之助は重々しくため息をつく。
その瞬間、香霖堂の扉が音を立てて開かれた。やや遅れて、聞き覚えのない少女の声が聞こえてくる。
「たのもーっ!」
その声は、元気で、活発で、快活で……とにかく、明るい声だ。太陽みたいだな、と霖之助はガラにもなく思った。
霖之助が顔を上げて扉の辺りを見ると、そこには銀色の髪をした、やや古風な少女がいた。
しかし、その少女は霖之助の記憶の中に存在していない。初見さんだろう。霖之助は、営業スマイルの欠片もない無愛想な表情で、少女を迎え入れた。
「ん、いらっしゃい。初見の人かな」
「うむ! そなたが、店主の『森近霖之助』どのか?」
「……ああ、いかにも僕は森近霖之助だけど」
霖之助は眼鏡を掛け直して、読んでいた本にしおりを挟んで閉じた。
少女の物腰は丁寧、とは少し言い難いけれど、かといって乱暴ではなくこちらへの害意も感じられなかった。
霖之助の答えに、少女はジロジロと霖之助を見る。
本来ならば失礼だと怒るところなのかもしれないが、少女の視線は決して嫌なものではない。含むものがなく、ただ純粋だった。
例えるなら、子どもが珍しい道具を見つけたような。少女のやや幼めの外見もあいまって、嫌な気分にはならなかった。
しかし、ずっと見ていられると、落ち着かないのも事実だ。霖之助は少し困ったように眉尻を下げた。
「失礼、そんなに見ないでくれるかな。ちょっと落ち着かない」
霖之助がそう指摘すると、少女ははっと顔を上げ、頬を赤らめながら手を振り始めた。
「あっ、す、すまぬ! 数多の道具を自在に操る人物だと聞いていたから、ちょっと意外だなって思ったのじゃ」
動転した少女の言い分に、霖之助は「ふーん」と生返事を返した。
決して、少女の話を聞いていなかった訳ではない。ただ、少女の話で気になるところがあったのだ。
『数多の道具を自在に操る人物』というところである。いったい、誰に吹き込まれたのだろう。
いや、それはまあ、霖之助は道具屋だから、道具の知識についてはそれなりの自信がある。
だが、普通にそれまでである。
道具は、道具である限り自ら動いてはくれない。もちろん、霖之助にだって動かせない道具もある。外の世界の道具に至っては、動かせない物の方が多い。
それなのに、いったい誰からどんな事を吹き込まれたのだろうか。霖之助は内心で首を捻った。
いや、もしかしたら、案外この少女が勘違いしているだけかもしれない。なんとなく、早とちりしそうな少女である。
それが容易に想像できるからか、霖之助は少しだけ、ほんのわずかに苦笑いした。
しかし、大事なお客様になってくれる可能性を持った少女だ。ぞんざいに扱う訳にはいかない。
霖之助はすぐに表情をいつもの無に戻して、少女に尋ねた。
「まあ良いよ。さて、何をお探しで?」
「……怒っているか?」
おずおずと、少女がしおらしく上目遣いで尋ねてきた。
その言葉に、霖之助は首を傾げる。なぜ、この少女はこんなにも小さくなっているのだろうか。
気づくのに、さして時間はかからなかった。原因は、霖之助の表情だ。霖之助は、極端ではないにしろ、表情を顔に出しにくいタイプの人間である。
自覚しているが、特に欠点と言うほどでもないから放置していた。まさか、それがこんな形になるとは思わなかったけれど。
少女から見れば、注意されて、曖昧に返事をされて、無表情で話を進められているのだ。霖之助が不機嫌だと誤解するのには十分すぎる。
それをすぐに察した霖之助はそんな誤解を解く意図を持って、少女に出来るだけ優しく話しかけた。
「いや、怒ってはいないよ。悪いね、無愛想な顔で」
少し、嫌味ったらしかっただろうか。そんな誤解を受けないように、せめて少しだけでも霖之助は頬を緩めた。
すると少女は、ぱあっと顔を輝かせた。
「ほ、本当か?」
「ああ、本当だよ」
まるで本当に子供だ、と霖之助は思った。
にっこりと慣れない笑顔で語りかける霖之助を見て、少女は笑う。
「うむ、なら良かった! 自己紹介が遅れたな、我は物部布都! 改めてよろしくなのじゃ、霖之助!」
嬉しそうに、握手として手を差し出す少女改め、布都。
霖之助が頑張って作った笑顔は、引きつってはいなかったようである。霖之助はまずその事に安堵した。
そして、霖之助は底抜けに明るい少女の手に、ゆっくりと自分の手を持っていった。
「ああ、こちらこそよろしく。布都」
◇
少女ーー布都は、尸解仙というモノらしい。
大雑把に説明すると、布都は昔も昔、一度仮死状態となり、つい最近復活したばかりなのだとか。
それゆえか、布都は最近の事にとても疎い。やや奇抜(とは言え幻想郷ではマシな部類だが)な服装も、中途半端なアレンジをした故、らしい。
さて、この布都という少女。霖之助が見る限り、中々に好奇心が強い。
そして、何百年ぶりに復活した布都。加えて、ここ香霖堂の大変珍妙な道具の数々。
それら全てがあわさった結果、香霖堂では、静かな熱意が混じる霖之助の説明会が行われていた。
「これは、『ルービックキューブ』というものだ」
「るーびっくきゅーぶ?」
「そう。いわば、暇つぶしのために作られた知識玩具みたいだね。遊び方は簡単。六面全ての色を揃えるだけだ」
「ほうほう……霖之助! 我にそれを貸してくれ!」
布都が、霖之助に手を出してせがんでくる。今度はこの道具に興味を抱いたようだ。
ちなみに、これの一つ前は『手品用トランプ』というものに興味を持ち、その前は『知恵の輪』とやらに惹かれていた。
そこから前は覚えていないのだけれど、その度に、熱心に説明をすることになるのは変わりない。
しかし、霖之助は案外悪くない、と思った。
騒がしいのは嫌いだが、布都は憧れの目で霖之助の話をしっかりと聞いてくれる。説明にも、いっそう精が出ようというものだ。
霖之助の薀蓄(うんちく)は長い上に難解だから、あまり進んで聞きたがる者は少ない。
稗田の書物にすら、『早々に切り上げないとなかなか終わらない』とまで記される始末である。
まともに聞く者は、皆無だと言って良いだろう。
しかし、この布都という少女は違った。
この少女は、霖之助の薀蓄をよく聞き、理解し、興味を抱いて道具に接しているのだ。
布都は、少し間の抜けたところはあるけれど、霖之助の話を理解するだけの知識が彼女にはあった。
霖之助からすれば、非常に新鮮な体験だった。自らの薀蓄を、嬉々として聞いてくれるのだ。
話す側にとって、これほど語る意欲が湧く反応はないだろう。霖之助はいつになく饒舌だった。
「はい、どうぞ」
「おお……お? お!? こいつ……動くぞ!」
「いや、動かなかったらそれただの積み木じゃないか」
霖之助がルービックキューブを手渡すと、布都は楽しそうにそれをいじくり始めた。
霖之助は頬杖をつきながら、穏やかにそれを見つめている。
この流れも、何回繰り返しただろうか。布都が香霖堂にやってきて、数時間はこれを繰り返している。
別に、香霖堂にどれだけ布都がいようと霖之助は一向に構わないのだけど、いつになったら帰るのだろうか。
もしかしたら、この香霖堂の道具を全て漁りつくすまでずっと続けるつもりかもしれない。さすがの霖之助だって、そこまで付き合い切れる自信はない。
霖之助はすこし心配になって、布都に話しかけた。
「布都、もう結構時間が経つけど……帰らなくて良いのかい?」
「む? もうそんな時間か?」
布都が、ルービックキューブから目を離して、意外そうに霖之助を見た。
どうやら、時間が経つのも忘れていたらしい。
布都が、香霖堂の窓から外の様子を伺った。夕焼けの赤い光が、隙間から差し込んできている。
それを見た布都が、むむむと唸った。
「むぅ、名残惜しいが……そろそろ我は帰るとするかの」
「そうすると良い。僕ももうすぐ店を閉めるから、外まで一緒に出るよ」
霖之助が立ち上がると、布都が上目遣いで霖之助を見た。しまった、というような顔をしている。
「……もしや、邪魔だったか?」
「いやいや、違うよ。ただ、今日はそれなりに気分が良いから、気分が良いままで店を閉めたいだけさ」
「そ、そうか。それは良かった」
布都は胸をなで下ろした。その間に、霖之助が香霖堂の扉まで向かう。
そして、ドアを開く。外は、鮮やかな橙と赤で埋め尽くされていた。少しだけ目が痛い。
霖之助が思わず額から水平に手を当てる。
すると、その中に、やけに目立つ雲を見つけた。もくもくと威圧的に広がっている。
霖之助はすぐに察した。あれは、入道雲だ。夕立が降る、前兆のようなもの。
「ふむ、楽しかったぞ、霖之助。また来るから……」
「いや、待った」
布都の声を、霖之助が遮った。
不思議そうに首を傾げる布都。霖之助は、空に広がる雲を見ながら空を指差した。
「あれ、入道雲だ。かなりでかいから、すぐに夕立が降ってくると思うけど」
「なぬ?」
霖之助の言葉に、布都が同じように眉の上に手を当てて、顔を上げた。
抑えきれぬまぶしさからだろう、ほんの少し眉をしかめながら布都はつぶやいた。
「……本当じゃ」
「どうする? さすがに雨が降る中、追い出すつもりは無いし……なんなら、雨が止むまで香霖堂の中に居ても良いよ」
「我も、服が濡れるのは困るのぅ……わかった。お邪魔させてくれ」
霖之助は頷くと、扉に『準備中』の札をかけて、布都と共に香霖堂に戻った。
◇
「いただきます!」
「はい、どうぞ」
(……どうしてこうなった?)
霖之助は困惑していた。
目の前には、美味しそうに夕食を取る布都がいる。箸や食器は、香霖堂の予備のものだ。
もう時刻はすでに戌の刻(午後八時)を回っていて、もう夜であると言って良いだろう。
「うむ、おいしい! すっごくおいしいぞ霖之助!」
「ああ、うん。ありがとう」
布都が頬を膨らませながら、箸を進める。霖之助は、一応嬉しいのだけども曖昧に返事をした。
ーーなんで、布都と共に夕食をとっているのだろうか。自答する。原因は外の雨だ。
外ではまだ、雨の音が鳴り止まない。ざあざあぽつぽつと、ずっとずっと雨が降り続けている。
霖之助の記憶では、夕立とはそう長くは降り続けないはず。だから、霖之助はあまり深く考えずに布都を引き留めたのだ。
ところが、これはどうした事だ。もう何時間も経っている上、雨が止む気配はカケラほどもない。
いつのまにか夕飯時となったが、さすがに少女を放置して一人で食べるほど霖之助の肝は太くなかった。
霖之助は料理の心得もある。布都のぶんの料理もついでに作って、そして今に至ったのだ。
本来なら、もうとっくに布都は帰って、霖之助は本の続きを読んでいただろうが、本当にどうしてこうなったのだろう。
霖之助が顔を険しくして思考していて、まったく料理に手をつけていなかったからだろう。布都が料理に指指した。
「……む? 霖之助は食べないのか?」
「……いや、少し食欲が湧かなくてね。食べるかい?」
「良いのか!?」
「ああ、構わないよ」
布都に食器ごと料理を差し出して、霖之助は一人思案する。
外の様子からして、雨が止むのはかなり先になりそうだ。一気に降って、すぐに止む夕立かと思っていたが、どういうわけかずっと降り続けている。
最悪、布都には我慢して雨の中帰ってもらうか、それとも香霖堂に泊まってもらうかの二択になるかもしれない。
だが、さすがに一つ屋根の下で出会ったばかりの男女が一日を共にするというのは、いかがなものだろう。
断っておくが、決して間違いなどを起こす気はない。
だが万が一、もしあの文にでも見つかったらどうなるだろうか。想像するだけで悪寒が走った。
しかし、だからといってこの雨の中追い出すというのも、酷だろう。
……となると、選択肢は最初から一つしかない。霖之助は腹をくくった。
「布都」
「もぐ……ごくっ。なんじゃ?」
頬にご飯つぶをつけて、布都は首を傾げた。
そんな布都に、霖之助は提案する。内心で、誰も見てませんように、と神頼みをしながら。
「雨、止まないね。……今日止まなかったら、泊まっていくかい?」
「よ、良いのか!?」
布都が、心底ありがたそうに霖之助に目を向けた。
キラキラと瞳が輝いているのは、きっと霖之助の錯覚ではないはずだ。
霖之助は、布都のその勢いに若干面食らう。
「あ、ああ、構わないけど」
「ありがとう、霖之助! なあなあ、一緒に道具で遊ぼう!」
言うやいなや、香霖堂の商品がある部屋まで一緒に行こうと、布都が机を叩いた。
いつのまにか、食事も終わっている。亡霊姫もびっくりの早さだ。
しかし、この布都の喜びように、霖之助は疑問を抱いた。
もちろん、霖之助自身も布都とは気が合うと思っている。
人の話をよく聞くし、好奇心旺盛だし、マナーをちゃんと守るし、商品を購入する時はちゃんとお金を払ってくれる。
後半はお客が守る当然の事なのだけれど、あまりにもその『当然』が守られていないのである。
だから、半日程度の付き合いでも、霖之助は布都の事を好意的に見ていた。
だが、布都の反応はいささか大げさではないか。
布都の勢いにやや押されながら、霖之助はメガネを中指で治して布都に聞いた。
「……布都、随分と嬉しそうじゃないか」
「む? 当然じゃ! 霖之助と一緒におれるのじゃからな!」
そう言って布都は、にっこりと純粋に笑った。
その、ど真ん中を突き抜けたような答えに、霖之助はポカンとした表情を浮かべる。
しかしそれにお構いなしに、布都は続けた。その笑顔に邪なものは、まったく含まれていない。
「お主は頭が良いし物知りじゃし、一緒にいて楽しいのじゃ!」
布都の、その言葉に、霖之助は釣られたように目を微笑んだ。
なんだか、お兄ちゃんっ子の妹ができたような感覚だ。でも、案外こういうのも、悪くない。
「……そう」
霖之助は嬉しそうに一瞬だけ目を細めて、そしてすぐに戻した。
それに、布都が気づいたかどうかはわからない。ただ、布都は期待と興味の目で、霖之助を相変わらず見ているだけだった。
布都に答えるように、霖之助はゆっくりと立ち上がる。
「ふむ、じゃあ、もう店には誰もこないだろうし、ゆっくり道具を見ていくと良い。僕も、説明くらいならしてあげるよ」
「本当か? じゃあ……」
そう言って、二人は香霖堂の商品場へと向かった。
雨はまだ、止まない。
◇
ちゅんちゅんと鳴く鳥と、柔らかい光で、霖之助は目を覚ました。
「ん……」
布団から上半身を起こして、眼をこする。枕の近くにおいてあった眼鏡をとって、かけた。
ややぼやけていた視界も、だんだんと鮮明になっていく。
昨日は……そうだ、途中で布都が寝てしまって、布都を寝具まで運んだのだ。
その後霖之助も、迫り来る眠気に勝てず、布都からだいぶ離れて眠ったのだった。
記憶を思い起こし、ある程度意識がはっきりしてから、霖之助は布団から出て、立ち上がった。
顔を洗って、香霖堂生活スペースの居間にあたる部分に、霖之助は戻ってきた。
昨晩、布都と夕飯を食べた場所だ。そこに、置き手紙があった。
随分と達筆で、しかしどこか幼さを感じさせる筆跡。
霖之助は、それを読んでみた。
『ありがとう、霖之助。こんな形の礼になって申し訳ないが、これ以上遅く帰ると皆が心配するので帰らせてもらう。
ありがとう、また来ます。 物部布都』
そういえば彼女は、尸解仙の仲間たちと一緒に幻想入りしていたらしかった。霖之助はそれを思い出す。
皆、とは、その仲間たちのことだろう。
布都が帰ったことに、ほんの少しだけ寂しさを感じたが、それも一瞬だけ。
布都は、香霖堂とは長い付き合いになるだろう。なにせ、貴重なお客様候補だ。余計な事を、あの二人が言わなければ良いが。
霖之助がふと窓を見ると、雨の残り雫が、太陽に照らされて輝いていた。天気は快晴。
霖之助は窓に近寄って、空を見上げた。
そこには、雲一つないような、晴れやかな空。いや、雲どころか、まるでチリすらもない、綺麗な空。
風は、強く、しかし柔らかに吹いている。
霖之助は、こんな空が好きだ。気持ちよく吹く風。柔らかい日差し。
風と雨が運んでくるのは、今までロクでもない事ばかりだったけれど。
もしかして、布都という少女がこの風に乗せられて運ばれてきたのなら。そう考えると、霖之助はもっとこの空が好きになった。
その瞬間、香霖堂の扉が強く叩かれる。この乱暴な叩き方は、魔理沙か。
「はいはい、ちょっとお待ちを」
霖之助は香霖堂商品売り場に向かう。
なんだかんだで、魔理沙も長い付き合いの妹分だ。幼馴染の来客に、霖之助は苦笑いしながら急ぐ。
雨は、綺麗に全てを洗い流していた。
◆
『文々。新聞号外。
香霖堂店主、物部氏と恋人関係!?』
ちなみに、朝の間にこんな新聞が出回っていて、霖之助が魔理沙に吹っ飛ばされるのは完全な余談だろう。
きっと、雨が空の汚いものをすべて洗い流しているからなのだろう。汚れが無くなって、邪魔なものが消えたから、太陽の光はよく届くし、風もすうっと気持ち良く吹いている。
霖之助は、こんな空が好きだった。決して外によく出るアウトドア派ではないけれど、そんな空の下は気持ちが良い。
だが同時に、少し憂鬱でもあった。
澄み渡る空を綺麗に吹く風は、いろいろな物事を香霖堂に運んでくれる。
だけれども、それが霖之助にとって良い事か悪い事か、風は判断してくれないのである。
そして、霖之助の長年の経験から考察すると、大抵ロクなことが起きない。というのが、霖之助の出した結論だ。自分でもあまり認めたくない結論だった。
ある雨上がりの日は、たしか魔理沙が扉を完膚なきまでに叩き壊していった。またある雨上がりの日は、霊夢が隠しておいたせんべいを持っていった。
今よくよく考えてみれば主な原因はあの二人なのだが、まあともかく雨上がりというのは良いイメージが湧かないのだ。
そんなトラウマ染みたこともあったからだろう。霖之助の気分は晴れやかながらも、その片隅は曇り、雨が降りそうだった。
それがなんの根拠もない妄想だと笑えれば、どれだけ楽なことか。
しかし、霖之助は自分の長年の勘に自信がある。だから、わかるのだ。今日は何かが起きるだろうな、と。
あの霊夢じゃないから、それが霖之助にとってどんなものかはわからない。だからこそ、不安だ。
イスに座り、本を読んでいた霖之助は重々しくため息をつく。
その瞬間、香霖堂の扉が音を立てて開かれた。やや遅れて、聞き覚えのない少女の声が聞こえてくる。
「たのもーっ!」
その声は、元気で、活発で、快活で……とにかく、明るい声だ。太陽みたいだな、と霖之助はガラにもなく思った。
霖之助が顔を上げて扉の辺りを見ると、そこには銀色の髪をした、やや古風な少女がいた。
しかし、その少女は霖之助の記憶の中に存在していない。初見さんだろう。霖之助は、営業スマイルの欠片もない無愛想な表情で、少女を迎え入れた。
「ん、いらっしゃい。初見の人かな」
「うむ! そなたが、店主の『森近霖之助』どのか?」
「……ああ、いかにも僕は森近霖之助だけど」
霖之助は眼鏡を掛け直して、読んでいた本にしおりを挟んで閉じた。
少女の物腰は丁寧、とは少し言い難いけれど、かといって乱暴ではなくこちらへの害意も感じられなかった。
霖之助の答えに、少女はジロジロと霖之助を見る。
本来ならば失礼だと怒るところなのかもしれないが、少女の視線は決して嫌なものではない。含むものがなく、ただ純粋だった。
例えるなら、子どもが珍しい道具を見つけたような。少女のやや幼めの外見もあいまって、嫌な気分にはならなかった。
しかし、ずっと見ていられると、落ち着かないのも事実だ。霖之助は少し困ったように眉尻を下げた。
「失礼、そんなに見ないでくれるかな。ちょっと落ち着かない」
霖之助がそう指摘すると、少女ははっと顔を上げ、頬を赤らめながら手を振り始めた。
「あっ、す、すまぬ! 数多の道具を自在に操る人物だと聞いていたから、ちょっと意外だなって思ったのじゃ」
動転した少女の言い分に、霖之助は「ふーん」と生返事を返した。
決して、少女の話を聞いていなかった訳ではない。ただ、少女の話で気になるところがあったのだ。
『数多の道具を自在に操る人物』というところである。いったい、誰に吹き込まれたのだろう。
いや、それはまあ、霖之助は道具屋だから、道具の知識についてはそれなりの自信がある。
だが、普通にそれまでである。
道具は、道具である限り自ら動いてはくれない。もちろん、霖之助にだって動かせない道具もある。外の世界の道具に至っては、動かせない物の方が多い。
それなのに、いったい誰からどんな事を吹き込まれたのだろうか。霖之助は内心で首を捻った。
いや、もしかしたら、案外この少女が勘違いしているだけかもしれない。なんとなく、早とちりしそうな少女である。
それが容易に想像できるからか、霖之助は少しだけ、ほんのわずかに苦笑いした。
しかし、大事なお客様になってくれる可能性を持った少女だ。ぞんざいに扱う訳にはいかない。
霖之助はすぐに表情をいつもの無に戻して、少女に尋ねた。
「まあ良いよ。さて、何をお探しで?」
「……怒っているか?」
おずおずと、少女がしおらしく上目遣いで尋ねてきた。
その言葉に、霖之助は首を傾げる。なぜ、この少女はこんなにも小さくなっているのだろうか。
気づくのに、さして時間はかからなかった。原因は、霖之助の表情だ。霖之助は、極端ではないにしろ、表情を顔に出しにくいタイプの人間である。
自覚しているが、特に欠点と言うほどでもないから放置していた。まさか、それがこんな形になるとは思わなかったけれど。
少女から見れば、注意されて、曖昧に返事をされて、無表情で話を進められているのだ。霖之助が不機嫌だと誤解するのには十分すぎる。
それをすぐに察した霖之助はそんな誤解を解く意図を持って、少女に出来るだけ優しく話しかけた。
「いや、怒ってはいないよ。悪いね、無愛想な顔で」
少し、嫌味ったらしかっただろうか。そんな誤解を受けないように、せめて少しだけでも霖之助は頬を緩めた。
すると少女は、ぱあっと顔を輝かせた。
「ほ、本当か?」
「ああ、本当だよ」
まるで本当に子供だ、と霖之助は思った。
にっこりと慣れない笑顔で語りかける霖之助を見て、少女は笑う。
「うむ、なら良かった! 自己紹介が遅れたな、我は物部布都! 改めてよろしくなのじゃ、霖之助!」
嬉しそうに、握手として手を差し出す少女改め、布都。
霖之助が頑張って作った笑顔は、引きつってはいなかったようである。霖之助はまずその事に安堵した。
そして、霖之助は底抜けに明るい少女の手に、ゆっくりと自分の手を持っていった。
「ああ、こちらこそよろしく。布都」
◇
少女ーー布都は、尸解仙というモノらしい。
大雑把に説明すると、布都は昔も昔、一度仮死状態となり、つい最近復活したばかりなのだとか。
それゆえか、布都は最近の事にとても疎い。やや奇抜(とは言え幻想郷ではマシな部類だが)な服装も、中途半端なアレンジをした故、らしい。
さて、この布都という少女。霖之助が見る限り、中々に好奇心が強い。
そして、何百年ぶりに復活した布都。加えて、ここ香霖堂の大変珍妙な道具の数々。
それら全てがあわさった結果、香霖堂では、静かな熱意が混じる霖之助の説明会が行われていた。
「これは、『ルービックキューブ』というものだ」
「るーびっくきゅーぶ?」
「そう。いわば、暇つぶしのために作られた知識玩具みたいだね。遊び方は簡単。六面全ての色を揃えるだけだ」
「ほうほう……霖之助! 我にそれを貸してくれ!」
布都が、霖之助に手を出してせがんでくる。今度はこの道具に興味を抱いたようだ。
ちなみに、これの一つ前は『手品用トランプ』というものに興味を持ち、その前は『知恵の輪』とやらに惹かれていた。
そこから前は覚えていないのだけれど、その度に、熱心に説明をすることになるのは変わりない。
しかし、霖之助は案外悪くない、と思った。
騒がしいのは嫌いだが、布都は憧れの目で霖之助の話をしっかりと聞いてくれる。説明にも、いっそう精が出ようというものだ。
霖之助の薀蓄(うんちく)は長い上に難解だから、あまり進んで聞きたがる者は少ない。
稗田の書物にすら、『早々に切り上げないとなかなか終わらない』とまで記される始末である。
まともに聞く者は、皆無だと言って良いだろう。
しかし、この布都という少女は違った。
この少女は、霖之助の薀蓄をよく聞き、理解し、興味を抱いて道具に接しているのだ。
布都は、少し間の抜けたところはあるけれど、霖之助の話を理解するだけの知識が彼女にはあった。
霖之助からすれば、非常に新鮮な体験だった。自らの薀蓄を、嬉々として聞いてくれるのだ。
話す側にとって、これほど語る意欲が湧く反応はないだろう。霖之助はいつになく饒舌だった。
「はい、どうぞ」
「おお……お? お!? こいつ……動くぞ!」
「いや、動かなかったらそれただの積み木じゃないか」
霖之助がルービックキューブを手渡すと、布都は楽しそうにそれをいじくり始めた。
霖之助は頬杖をつきながら、穏やかにそれを見つめている。
この流れも、何回繰り返しただろうか。布都が香霖堂にやってきて、数時間はこれを繰り返している。
別に、香霖堂にどれだけ布都がいようと霖之助は一向に構わないのだけど、いつになったら帰るのだろうか。
もしかしたら、この香霖堂の道具を全て漁りつくすまでずっと続けるつもりかもしれない。さすがの霖之助だって、そこまで付き合い切れる自信はない。
霖之助はすこし心配になって、布都に話しかけた。
「布都、もう結構時間が経つけど……帰らなくて良いのかい?」
「む? もうそんな時間か?」
布都が、ルービックキューブから目を離して、意外そうに霖之助を見た。
どうやら、時間が経つのも忘れていたらしい。
布都が、香霖堂の窓から外の様子を伺った。夕焼けの赤い光が、隙間から差し込んできている。
それを見た布都が、むむむと唸った。
「むぅ、名残惜しいが……そろそろ我は帰るとするかの」
「そうすると良い。僕ももうすぐ店を閉めるから、外まで一緒に出るよ」
霖之助が立ち上がると、布都が上目遣いで霖之助を見た。しまった、というような顔をしている。
「……もしや、邪魔だったか?」
「いやいや、違うよ。ただ、今日はそれなりに気分が良いから、気分が良いままで店を閉めたいだけさ」
「そ、そうか。それは良かった」
布都は胸をなで下ろした。その間に、霖之助が香霖堂の扉まで向かう。
そして、ドアを開く。外は、鮮やかな橙と赤で埋め尽くされていた。少しだけ目が痛い。
霖之助が思わず額から水平に手を当てる。
すると、その中に、やけに目立つ雲を見つけた。もくもくと威圧的に広がっている。
霖之助はすぐに察した。あれは、入道雲だ。夕立が降る、前兆のようなもの。
「ふむ、楽しかったぞ、霖之助。また来るから……」
「いや、待った」
布都の声を、霖之助が遮った。
不思議そうに首を傾げる布都。霖之助は、空に広がる雲を見ながら空を指差した。
「あれ、入道雲だ。かなりでかいから、すぐに夕立が降ってくると思うけど」
「なぬ?」
霖之助の言葉に、布都が同じように眉の上に手を当てて、顔を上げた。
抑えきれぬまぶしさからだろう、ほんの少し眉をしかめながら布都はつぶやいた。
「……本当じゃ」
「どうする? さすがに雨が降る中、追い出すつもりは無いし……なんなら、雨が止むまで香霖堂の中に居ても良いよ」
「我も、服が濡れるのは困るのぅ……わかった。お邪魔させてくれ」
霖之助は頷くと、扉に『準備中』の札をかけて、布都と共に香霖堂に戻った。
◇
「いただきます!」
「はい、どうぞ」
(……どうしてこうなった?)
霖之助は困惑していた。
目の前には、美味しそうに夕食を取る布都がいる。箸や食器は、香霖堂の予備のものだ。
もう時刻はすでに戌の刻(午後八時)を回っていて、もう夜であると言って良いだろう。
「うむ、おいしい! すっごくおいしいぞ霖之助!」
「ああ、うん。ありがとう」
布都が頬を膨らませながら、箸を進める。霖之助は、一応嬉しいのだけども曖昧に返事をした。
ーーなんで、布都と共に夕食をとっているのだろうか。自答する。原因は外の雨だ。
外ではまだ、雨の音が鳴り止まない。ざあざあぽつぽつと、ずっとずっと雨が降り続けている。
霖之助の記憶では、夕立とはそう長くは降り続けないはず。だから、霖之助はあまり深く考えずに布都を引き留めたのだ。
ところが、これはどうした事だ。もう何時間も経っている上、雨が止む気配はカケラほどもない。
いつのまにか夕飯時となったが、さすがに少女を放置して一人で食べるほど霖之助の肝は太くなかった。
霖之助は料理の心得もある。布都のぶんの料理もついでに作って、そして今に至ったのだ。
本来なら、もうとっくに布都は帰って、霖之助は本の続きを読んでいただろうが、本当にどうしてこうなったのだろう。
霖之助が顔を険しくして思考していて、まったく料理に手をつけていなかったからだろう。布都が料理に指指した。
「……む? 霖之助は食べないのか?」
「……いや、少し食欲が湧かなくてね。食べるかい?」
「良いのか!?」
「ああ、構わないよ」
布都に食器ごと料理を差し出して、霖之助は一人思案する。
外の様子からして、雨が止むのはかなり先になりそうだ。一気に降って、すぐに止む夕立かと思っていたが、どういうわけかずっと降り続けている。
最悪、布都には我慢して雨の中帰ってもらうか、それとも香霖堂に泊まってもらうかの二択になるかもしれない。
だが、さすがに一つ屋根の下で出会ったばかりの男女が一日を共にするというのは、いかがなものだろう。
断っておくが、決して間違いなどを起こす気はない。
だが万が一、もしあの文にでも見つかったらどうなるだろうか。想像するだけで悪寒が走った。
しかし、だからといってこの雨の中追い出すというのも、酷だろう。
……となると、選択肢は最初から一つしかない。霖之助は腹をくくった。
「布都」
「もぐ……ごくっ。なんじゃ?」
頬にご飯つぶをつけて、布都は首を傾げた。
そんな布都に、霖之助は提案する。内心で、誰も見てませんように、と神頼みをしながら。
「雨、止まないね。……今日止まなかったら、泊まっていくかい?」
「よ、良いのか!?」
布都が、心底ありがたそうに霖之助に目を向けた。
キラキラと瞳が輝いているのは、きっと霖之助の錯覚ではないはずだ。
霖之助は、布都のその勢いに若干面食らう。
「あ、ああ、構わないけど」
「ありがとう、霖之助! なあなあ、一緒に道具で遊ぼう!」
言うやいなや、香霖堂の商品がある部屋まで一緒に行こうと、布都が机を叩いた。
いつのまにか、食事も終わっている。亡霊姫もびっくりの早さだ。
しかし、この布都の喜びように、霖之助は疑問を抱いた。
もちろん、霖之助自身も布都とは気が合うと思っている。
人の話をよく聞くし、好奇心旺盛だし、マナーをちゃんと守るし、商品を購入する時はちゃんとお金を払ってくれる。
後半はお客が守る当然の事なのだけれど、あまりにもその『当然』が守られていないのである。
だから、半日程度の付き合いでも、霖之助は布都の事を好意的に見ていた。
だが、布都の反応はいささか大げさではないか。
布都の勢いにやや押されながら、霖之助はメガネを中指で治して布都に聞いた。
「……布都、随分と嬉しそうじゃないか」
「む? 当然じゃ! 霖之助と一緒におれるのじゃからな!」
そう言って布都は、にっこりと純粋に笑った。
その、ど真ん中を突き抜けたような答えに、霖之助はポカンとした表情を浮かべる。
しかしそれにお構いなしに、布都は続けた。その笑顔に邪なものは、まったく含まれていない。
「お主は頭が良いし物知りじゃし、一緒にいて楽しいのじゃ!」
布都の、その言葉に、霖之助は釣られたように目を微笑んだ。
なんだか、お兄ちゃんっ子の妹ができたような感覚だ。でも、案外こういうのも、悪くない。
「……そう」
霖之助は嬉しそうに一瞬だけ目を細めて、そしてすぐに戻した。
それに、布都が気づいたかどうかはわからない。ただ、布都は期待と興味の目で、霖之助を相変わらず見ているだけだった。
布都に答えるように、霖之助はゆっくりと立ち上がる。
「ふむ、じゃあ、もう店には誰もこないだろうし、ゆっくり道具を見ていくと良い。僕も、説明くらいならしてあげるよ」
「本当か? じゃあ……」
そう言って、二人は香霖堂の商品場へと向かった。
雨はまだ、止まない。
◇
ちゅんちゅんと鳴く鳥と、柔らかい光で、霖之助は目を覚ました。
「ん……」
布団から上半身を起こして、眼をこする。枕の近くにおいてあった眼鏡をとって、かけた。
ややぼやけていた視界も、だんだんと鮮明になっていく。
昨日は……そうだ、途中で布都が寝てしまって、布都を寝具まで運んだのだ。
その後霖之助も、迫り来る眠気に勝てず、布都からだいぶ離れて眠ったのだった。
記憶を思い起こし、ある程度意識がはっきりしてから、霖之助は布団から出て、立ち上がった。
顔を洗って、香霖堂生活スペースの居間にあたる部分に、霖之助は戻ってきた。
昨晩、布都と夕飯を食べた場所だ。そこに、置き手紙があった。
随分と達筆で、しかしどこか幼さを感じさせる筆跡。
霖之助は、それを読んでみた。
『ありがとう、霖之助。こんな形の礼になって申し訳ないが、これ以上遅く帰ると皆が心配するので帰らせてもらう。
ありがとう、また来ます。 物部布都』
そういえば彼女は、尸解仙の仲間たちと一緒に幻想入りしていたらしかった。霖之助はそれを思い出す。
皆、とは、その仲間たちのことだろう。
布都が帰ったことに、ほんの少しだけ寂しさを感じたが、それも一瞬だけ。
布都は、香霖堂とは長い付き合いになるだろう。なにせ、貴重なお客様候補だ。余計な事を、あの二人が言わなければ良いが。
霖之助がふと窓を見ると、雨の残り雫が、太陽に照らされて輝いていた。天気は快晴。
霖之助は窓に近寄って、空を見上げた。
そこには、雲一つないような、晴れやかな空。いや、雲どころか、まるでチリすらもない、綺麗な空。
風は、強く、しかし柔らかに吹いている。
霖之助は、こんな空が好きだ。気持ちよく吹く風。柔らかい日差し。
風と雨が運んでくるのは、今までロクでもない事ばかりだったけれど。
もしかして、布都という少女がこの風に乗せられて運ばれてきたのなら。そう考えると、霖之助はもっとこの空が好きになった。
その瞬間、香霖堂の扉が強く叩かれる。この乱暴な叩き方は、魔理沙か。
「はいはい、ちょっとお待ちを」
霖之助は香霖堂商品売り場に向かう。
なんだかんだで、魔理沙も長い付き合いの妹分だ。幼馴染の来客に、霖之助は苦笑いしながら急ぐ。
雨は、綺麗に全てを洗い流していた。
◆
『文々。新聞号外。
香霖堂店主、物部氏と恋人関係!?』
ちなみに、朝の間にこんな新聞が出回っていて、霖之助が魔理沙に吹っ飛ばされるのは完全な余談だろう。
結局、文に見られてたのか・・・。
しかし、こんなに可愛いのに実は霖之助の前以外では結構策略家だったりして…
ありがとうございます!また見てくださると嬉しいです!
>>4,名前が無い程度の能力様
そう言っていただけると嬉しいですw やっぱり道中で文のフラグっぽいものをちょっぴりだけ立てといたので、これは激写させないともったいないと思って…感想、ありがとうございました!
>>奇声を発する程度の能力様
感想ありがとうございます!雰囲気はなるべく大事にしたいと思っているので、そう言っていただけると喜びます!
>>7,名前が無い程度の能力様
な、なるほど…元ネタ的にも、策略家な布都ちゃんは案外アリかもしれませんね…!ご感想、ありがとうございました!
是非続きや長編とかも読んでみたい!
楽しみにしてます〜