「わかりました……パチュリー様のお話を総合すると……」
紅魔館の門番・紅美鈴は、その職場にて珍しい人物に話しかけられていた。
基本的に出不精なはずの大図書館の魔法使い・パチュリーである。
「魔理沙に弾幕をパクられたのが悔しいから、自分も何かパクりたい、と……」
パチュリーの相談を受け、美鈴は率直な感想を返す。
「すげえ今更な話題ですね」
「別にいいじゃない! 時間差でキレたって!!」
パチュリーはむきゅんむきゅんと怒った。
「まぁ、別に私としてはどうでもいいですが……なんで私に相談したんです?」
「しょっちゅう魔理沙にボコされてるから、何か弾幕の一つや二つラーニングしてないかなって」
「そんな青魔道士じゃあるまいし」
門番という立場上、幾度となく紅魔館に進入する魔理沙とは手合わせする回数も多い。だが、基本的に拳士なので、魔法使いの魔理沙の弾幕を参考にする意味はない。
「大体パチュリー様だってあんな力任せの魔法パクったところで喘息で扱いきれないのがオチなんじゃないですか?」
「む、むきゅー! そうかもしれないけれど! じゃあ私は一体何をパクればいいのよ!」
「何もパクることに執心しなくたって……」
むきゅんむきゅんと地団太を踏むパチュリーの様子に、美鈴はふむ、と考え込む。
「ならば、パクるのは別に技に限らなくたってよいのでしょう」
「むきゅう?」
そして、魔理沙がやって来た。
『魔理沙がやって来たぞー!!』
門番妖精部隊の声が響く。そしてそれらを手馴れた感じでちぎっては投げながら、霧雨魔理沙は紅魔館の門にたどり着いた。
「よーす、邪魔するぜ……おや?」
そこで彼女は、ちょっと見慣れないものを見る。
いつもどおりの美鈴と、その傍らの紫の魔女。
「なんだってパチュリーがこんなところにいるんだぜ?」
「なんだっていいんだぜ!」
「!?」
パチュリーから帰ってきた予想外に威勢のいい返答に、魔理沙はびっくりする。
「結局被害を受けるのは図書館なんだぜ。だったらたまには私も美鈴に協力してあげようと思ったのよぜ」
「私の真似かそれ!? そんな無理やりぜをつけるんじゃないぜ!?」
結局、特徴的で手軽に真似できるものとして口調に落ち着いたパチュリー・ノーレッジである。
だが、結構魔理沙を面食らわせる効果はあったようで。
「おいおい、美鈴からも何か言ってやってくれよ。おかしいだろこんなの」
「いやいや、そうは思わないんですぜ?」
「お前もかよ。ってかもうただの盗賊の子分みたいになってるじゃねーか」
「さぁ、今日は喘息の調子もいいんだぜ!」
「背水の陣だぜ! 今回は一人じゃないから完璧だぜ!」
「やめろォ! 何か恥ずかしくなってくるじゃないか!」
魔理沙っぽい口調ではやし立ててくる美鈴とパチュリーに、魔理沙は悶えた。
「ちくしょう。なんか興が削がれたから今日は帰るぜ!」
そして、そそくさと帰っていってしまったのだ。
これは予想外の大収穫と言えるだろう。
「やったんだぜー!」
紅魔館の門の前に、そんな大合唱が響いた。
口調を真似したことで魔理沙を撃退した。
門番妖精部隊から友達の妖精へ語られたことが発端の噂話は、瞬く間に幻想郷中に広まった。
その事実は、幻想郷にあまねく存在する、魔理沙に被害を受けているものや魔理沙をやりこめたりからかったりしたい人たちのニーズにがっちりとかみ合った。
さらに、日常的に口調を真似ることにより、パチュリーがだんだんと健康体になって外に出歩くようになったという逸話から、だぜは健康に良いという結論に至り、幻想郷において魔理沙の口調の真似が爆発的に大流行した。
そうして会う人会う人にだぜだぜ言われ続けた魔理沙は、
「ちくしょうお前らは馬鹿だ」
と言い残して引きこもってしまった。
突然だが、俺の名前は姫神聖魔龍。
この幻想郷に幻想入りしたてほやほやの外来人だ。
わかってる。だいたいわかってるとも。
幻想入りした暁には大体ルーミアとかその辺と出くわして、食われるか逃げ延びるかの分岐になるってな。
「わはー」
ほら来た。なんかすごい二次創作臭のするルーミアがこっちきたぞ。
どうせ『あなたは取って食べれる人類?』とか聞いてくるんだろ! 紅魔郷本編みたいに!!
「おまえは取って食べれる人類なんだぜ?」
Oh、決め付けられた。
確かに妖怪にとっちゃ取って食べれる人類なのは間違いない。しかも外来人なんだから何の躊躇もいらないだろう。
取って食べれるか聞いてくれるだけでもありがたいというものだ。
だが、そんな諭すように言われると、なんだ、その、悲しくなる。
どうせ俺なんてほかの奴に食い物にされるくらいにしか役に立たない、そんな人類みたいに言われてる気がして。
「そーなんだぜー」
Oh、肯定された。
くそっ、なんだこの中途半端に魔理沙みたいなルーミアは! フュージョンでもしたのかよ!
しかし、こんなところでへこたれてはいられない。なんとか人里にたどり着かねばならないのだ。こうなれば、郷に入っては郷に従え。
こっちも魔理沙風に乗り切ってやる。
「魅魔様に勝っちゃった。うふ、うふ、うふふふふふふふ」
「うわキモッ!」
必殺の黒歴史が効いたようで、ルーミアは食欲をなくして俺の前から去っていった。
フッ、俺の勝ちだ……。
俺はそうして意気揚々と人里へと歩いていき、その途中でミスティアに食われてその生命活動を停止……死んだのだ。
幻想郷全土を覆った魔理沙の真似ブーム。
結局それは一つのブームで終わることはなく、一種の方言として幻想郷に根付くに至った。
「今日も農作業に精が出るんだぜ!」
「打つと動くぜ! 餅つきでは大事なことだぜ!」
今日も牧歌的な風景の中で、男女が威勢よくだぜだぜ言っている。
この幻想郷で生まれた子供達も、なんの疑問もなくだぜだぜ言うようになるだろう。
図らずも、霧雨魔理沙という存在は幻想郷にある意味消えない歴史を刻むことになったのだ。
「いやですわ。弾幕勝負なんてはしたない」
当の霧雨魔理沙は、周りがあんまりにもだぜだぜ言うものだから、自らが没個性状態になっていることに深く悩んだ。
そして結局、あえておしとやかキャラへの転換を推し進めてよくわからないことになった挙句、すっかりとおとなしくなってしまった。
「はっはっは、あの魔理沙がな! まったく昔からは考えられないんだぜ!」
「もう、お父様ったら、からかわないでくださいまし!」
そしていつしか人里の両親と仲直りし、今では実家の道具店を継いで、幸せに暮らしているという。
紅魔館の門番・紅美鈴は、その職場にて珍しい人物に話しかけられていた。
基本的に出不精なはずの大図書館の魔法使い・パチュリーである。
「魔理沙に弾幕をパクられたのが悔しいから、自分も何かパクりたい、と……」
パチュリーの相談を受け、美鈴は率直な感想を返す。
「すげえ今更な話題ですね」
「別にいいじゃない! 時間差でキレたって!!」
パチュリーはむきゅんむきゅんと怒った。
「まぁ、別に私としてはどうでもいいですが……なんで私に相談したんです?」
「しょっちゅう魔理沙にボコされてるから、何か弾幕の一つや二つラーニングしてないかなって」
「そんな青魔道士じゃあるまいし」
門番という立場上、幾度となく紅魔館に進入する魔理沙とは手合わせする回数も多い。だが、基本的に拳士なので、魔法使いの魔理沙の弾幕を参考にする意味はない。
「大体パチュリー様だってあんな力任せの魔法パクったところで喘息で扱いきれないのがオチなんじゃないですか?」
「む、むきゅー! そうかもしれないけれど! じゃあ私は一体何をパクればいいのよ!」
「何もパクることに執心しなくたって……」
むきゅんむきゅんと地団太を踏むパチュリーの様子に、美鈴はふむ、と考え込む。
「ならば、パクるのは別に技に限らなくたってよいのでしょう」
「むきゅう?」
そして、魔理沙がやって来た。
『魔理沙がやって来たぞー!!』
門番妖精部隊の声が響く。そしてそれらを手馴れた感じでちぎっては投げながら、霧雨魔理沙は紅魔館の門にたどり着いた。
「よーす、邪魔するぜ……おや?」
そこで彼女は、ちょっと見慣れないものを見る。
いつもどおりの美鈴と、その傍らの紫の魔女。
「なんだってパチュリーがこんなところにいるんだぜ?」
「なんだっていいんだぜ!」
「!?」
パチュリーから帰ってきた予想外に威勢のいい返答に、魔理沙はびっくりする。
「結局被害を受けるのは図書館なんだぜ。だったらたまには私も美鈴に協力してあげようと思ったのよぜ」
「私の真似かそれ!? そんな無理やりぜをつけるんじゃないぜ!?」
結局、特徴的で手軽に真似できるものとして口調に落ち着いたパチュリー・ノーレッジである。
だが、結構魔理沙を面食らわせる効果はあったようで。
「おいおい、美鈴からも何か言ってやってくれよ。おかしいだろこんなの」
「いやいや、そうは思わないんですぜ?」
「お前もかよ。ってかもうただの盗賊の子分みたいになってるじゃねーか」
「さぁ、今日は喘息の調子もいいんだぜ!」
「背水の陣だぜ! 今回は一人じゃないから完璧だぜ!」
「やめろォ! 何か恥ずかしくなってくるじゃないか!」
魔理沙っぽい口調ではやし立ててくる美鈴とパチュリーに、魔理沙は悶えた。
「ちくしょう。なんか興が削がれたから今日は帰るぜ!」
そして、そそくさと帰っていってしまったのだ。
これは予想外の大収穫と言えるだろう。
「やったんだぜー!」
紅魔館の門の前に、そんな大合唱が響いた。
口調を真似したことで魔理沙を撃退した。
門番妖精部隊から友達の妖精へ語られたことが発端の噂話は、瞬く間に幻想郷中に広まった。
その事実は、幻想郷にあまねく存在する、魔理沙に被害を受けているものや魔理沙をやりこめたりからかったりしたい人たちのニーズにがっちりとかみ合った。
さらに、日常的に口調を真似ることにより、パチュリーがだんだんと健康体になって外に出歩くようになったという逸話から、だぜは健康に良いという結論に至り、幻想郷において魔理沙の口調の真似が爆発的に大流行した。
そうして会う人会う人にだぜだぜ言われ続けた魔理沙は、
「ちくしょうお前らは馬鹿だ」
と言い残して引きこもってしまった。
突然だが、俺の名前は姫神聖魔龍。
この幻想郷に幻想入りしたてほやほやの外来人だ。
わかってる。だいたいわかってるとも。
幻想入りした暁には大体ルーミアとかその辺と出くわして、食われるか逃げ延びるかの分岐になるってな。
「わはー」
ほら来た。なんかすごい二次創作臭のするルーミアがこっちきたぞ。
どうせ『あなたは取って食べれる人類?』とか聞いてくるんだろ! 紅魔郷本編みたいに!!
「おまえは取って食べれる人類なんだぜ?」
Oh、決め付けられた。
確かに妖怪にとっちゃ取って食べれる人類なのは間違いない。しかも外来人なんだから何の躊躇もいらないだろう。
取って食べれるか聞いてくれるだけでもありがたいというものだ。
だが、そんな諭すように言われると、なんだ、その、悲しくなる。
どうせ俺なんてほかの奴に食い物にされるくらいにしか役に立たない、そんな人類みたいに言われてる気がして。
「そーなんだぜー」
Oh、肯定された。
くそっ、なんだこの中途半端に魔理沙みたいなルーミアは! フュージョンでもしたのかよ!
しかし、こんなところでへこたれてはいられない。なんとか人里にたどり着かねばならないのだ。こうなれば、郷に入っては郷に従え。
こっちも魔理沙風に乗り切ってやる。
「魅魔様に勝っちゃった。うふ、うふ、うふふふふふふふ」
「うわキモッ!」
必殺の黒歴史が効いたようで、ルーミアは食欲をなくして俺の前から去っていった。
フッ、俺の勝ちだ……。
俺はそうして意気揚々と人里へと歩いていき、その途中でミスティアに食われてその生命活動を停止……死んだのだ。
幻想郷全土を覆った魔理沙の真似ブーム。
結局それは一つのブームで終わることはなく、一種の方言として幻想郷に根付くに至った。
「今日も農作業に精が出るんだぜ!」
「打つと動くぜ! 餅つきでは大事なことだぜ!」
今日も牧歌的な風景の中で、男女が威勢よくだぜだぜ言っている。
この幻想郷で生まれた子供達も、なんの疑問もなくだぜだぜ言うようになるだろう。
図らずも、霧雨魔理沙という存在は幻想郷にある意味消えない歴史を刻むことになったのだ。
「いやですわ。弾幕勝負なんてはしたない」
当の霧雨魔理沙は、周りがあんまりにもだぜだぜ言うものだから、自らが没個性状態になっていることに深く悩んだ。
そして結局、あえておしとやかキャラへの転換を推し進めてよくわからないことになった挙句、すっかりとおとなしくなってしまった。
「はっはっは、あの魔理沙がな! まったく昔からは考えられないんだぜ!」
「もう、お父様ったら、からかわないでくださいまし!」
そしていつしか人里の両親と仲直りし、今では実家の道具店を継いで、幸せに暮らしているという。
なんとも考え深い話だ
何かの暗喩に違いない(白目)
>と言い残して引きこもってしまった。
この捨て台詞だけ最高に面白い
おとしやか魔理沙の話とかちょっと見たいかも…