Coolier - 新生・東方創想話

東方不健康の私的解釈

2014/04/23 21:59:05
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 熱中すると飽きのくるまで張りきり通しなのが霧雨魔理沙の悪い癖。今日も今日とて紅魔館で見つけた魔導書にかかりきりである。魔法薬やその材料からにじみでる摩訶不思議な匂いに、ここ二三日風呂に入っていない少女の体臭が綯い交ざって、不健康に蠱惑的な空気が充満する部屋。キャミソールとドロワの他には身に付けているものとてなく、既に興味のないガラクタに囲まれたベッドの上で胡座をかき、ひどい猫背の痩せぎすな体をかぶせるようにして、股ぐらに据えた本をむさぼり読んでいる。
 鬱陶しいのか、色ばかり派手で艶のない金髪を時おり払うものの、まとめる気は更にない。文字を追う瞳にはいっぱいの好奇心と探究心がギラギラ輝いて、それだけならまあ健全に見えなくもないが、その下にしっとり浮きだした隈のせいで台無しである。ページを繰る指のボロボロの深爪は、難解な記述にぶち当たる度にガリガリと噛んでしまう為で、指によっては出血しているがまるで頓着しない。
 衣食住のすべてを投げだしたような執心ぶりだけれど、さすがに体が悲鳴をあげたのか、不意に立ち上がるとゴミやガラクタを蹴散らしながら冷蔵庫に向かい、中から食べ残しのピザの箱を持って戻ってきた。
 ベッドへ箱をほうって、しばらくはまた読書に取り組んでいたが、遂にその手がページを離れ、意識と顔は本に向けたまま、パタパタとシミだらけのシーツの上をさまよう。お目当ての感触に出会うと器用に紙箱のふたを開け、四片ほど残っていた冷たいピザを探りだし、ぞんざいにひっ掴んで口へ運ぶ。
 前述と同じ姿勢だから髪にピザソースがつくけれど、ちっとも気にしない。硬くなった生地をクチャクチャ音をたてて咀嚼し、ミミを残して食べきるとぽいと捨てた。べたべたの指先を口に含み舐めしゃぶる。その手でページをめくるのだから、持ち主や里の貸本屋が見たら卒倒するに違いない。
 なに、死ぬまで借りておくのだから問題ないと魔理沙は思っている。やがて不老不死になれたらもちろん返さないし、ダメならダメで死んだ後にいくら文句を言われようと知ったことではない。紙面に散らばった生地の粉やソースのシミもそのままに、記述は無情にも次項へ進む。
 そんな所業を何回か繰り返し、ピザがなくなってから約五時間後、魔導書は最後のページをさらけだして、その背表紙を残すのみとなった。魔理沙は閉じられた魔導書をぼうっと眺めながら、数日に渡る忘我の悦びを反芻する。何度も何度も。その度に悦びは色褪せて、ついさっきまであんなに自分を虜にしていた物が急につまらなく思えてくる。
 ひとつ大きな伸びをしたあと本を放り投げ、どこか不貞腐れた顔で魔理沙は身を横たえた。睡魔は機を得たりと襲いかかる。寝入りばなの沈みゆく意識の中、
目が覚めたらすっかり中身を忘れていればいいのにと思った。
不健康な女の子はかわいい。あきっぽい女の子もかわいい
三元
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コメント



0.290簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
なんか知らんがなんか気にいった不思議な感じです
6.80名前が無い程度の能力削除
研究者というよりは求道者って感じ。まさに魔法使いです。
7.80奇声を発する程度の能力削除
何か良いですね