――落ち着け、落ち着け、状況を整理するんだ。
おそらく奴を倒せば異変は終わり、万事解決って訳だ。
向かってくる弾は連弾、射線から離れて現状維持。
私を狙っていない低速弾は周囲に停滞しているが慌てなくても大丈夫、すぐどこかへ消える。
左手の相棒――八卦炉はいつでもアレを発射出来る、魔力残量はあと一発分のみ。
それだけ確認したら弾幕の中で見え隠れする奴の影を目掛けて小弾幕を撃ち続ける。
次の弾幕は少し間のある連弾、大きく誘導しながら一発づつ左右に避ける。
整理しろ、奴のペースに乗せられるな。
自らのペースを保ち続けるんだ。
熱くなると周りが見えなくなる、自分の短所くらい分かっている。
ペースを持って行かれたが最後、それは全ての終わりを意味するんだ。
素早く大きい弾幕がばらまかれ、誘導を繰り返し大きく動いていた私は避けきれないことを察知した。
相棒を素早く利き手に持ち替え、左手をしっかりと添える。
そして体の中央に来るように両腕を真っ直ぐに伸ばす。
最後に息を軽く吸い込み短く唱える。
『恋符、マスタースパーク』
相棒から放たれる極太の光線。
強すぎる光から目を守るため、情報収集の為に開ききったそれを薄くする。
こうしないとこいつが全てを吐ききった後、眩しすぎて相手の弾幕が見えなくなってしまうのだ。
自慢の箒に大量の魔力供給、出力を上げて空中で姿勢を固定。
そして体の中心で全ての衝撃を受け止める。
狭い視界で尚も周囲の状況を確認する。
弾幕は全く飛んできていない。
……よし、大丈夫。
マスタースパークは敵を捉えている。
いつもならスペルカードを大声で叫んでいるが、今はそんな余裕は無い。
あいつが来たらすぐに倒してしまうから、
あいつが来る前に倒さないといけないから、
……また置いていかれてしまうから。
「今日の私はクリア重視型だぜ」
収束していく光線と共に、箒の出力を下げていく。
そして今にも砕け散りそうな右手を庇いながら、軽口を叩く。
そう、全ては作戦通り。
このまま行けば全てが上手くいく。
オプションに追加の魔力供給を済ませ、全弾を奴に注ぎ込む。
……だが削り足りない、圧倒的に削り足りない。
再び弾幕がばらまかれる。
空中で自らの体を固定するのがやっとのマスタースパークの反動で、抜けることができるタイミングを逃した。
だが八卦炉の魔力はもうすっからかんだ。
――避けきれない
弾が私の腹部に命中した瞬間、突如として襲いかかる猛烈な吐き気と怠惰感を押し切る。
異変を起こす奴らの弾幕は全てが体に危害を与えないが、心を直接へし折りに来る弾。
次当たれば折れない自信は正直無い。
体勢を立て直しつつ、思考を巡らせろ。
もう少し発射タイミングを遅らせ、弾幕の除去に専念するべきだった。
いや、いっそのこと早めて抜けられるタイミングで抜けてしまった方が良かったのではないか。
独特の不愉快な感覚に耐えながら次の戦略を組み立てる。
やられた時に散らばった魔力をすぐさま回収し相棒に詰め込み、二発分のエネルギーに変える。
少し減ったオプションに魔力を焼べつつ箒の出力を微調整、
再び八卦炉を左に持ち、自らの弾幕の全弾のターゲットを奴に絞り込む。
私に残っているのはこのマスタースパーク二発分の魔力だけ。
この二発が無くなり、私が墜ちるのか。
それとも削り切って、奴を墜とすのか。
二つに一つのギリギリの勝負だ。
自分のペースを維持したまま、奴の弾幕を避けつつ反撃を繰り出す。
しかし油断したところに、奴はすかさず弾幕を撃ち込んでくる。
――まただ、避けきれない。
『恋符、マスタースパーク』
まず一発、負けるよりすぐにぶっ放した方が遥かにマシだ。
周囲の弾幕を一掃しながら全意識を箒の再調整の計算に費やす。
もう少し出力を下げる?
今遅れたせいで被弾したばかりだろう。
これ以上遅くしてどうする、自滅でもする気か。
なら上げるか?
速すぎても飛んで火に入る烏天狗というし、すぐに自爆するだろう。
私はあいつらとは違って自由自在に飛ぶことができるわけでもないのだ。
遅いか速いか、絶妙な配分が求められる。
私にとってはこの設定で勝ち負けが決まると言っても過言ではない。
収束し始め、衝撃が小さくなったマスタースパークを左手で制御、空いた右手で急いで箒の調整を行い、再び空を飛ぶ。
再調整の甲斐もあり、弾幕の隙間を飛び回り続ける。
大きな弾幕の隙間を飛び、
小さな連弾を細かい動きで避け続ける。
奴を落とす為に。異変を解決する為に。
そして何より、あいつを見返す為に。
――あぁ、もう振り切れないか。
ならしょうがない。
慣れた手つきで相棒を右手へ投げ、素早く構える。
本日ラストだ、しっかり削ってきてくれよ。
いつものあの魔法の呪文を素早く、そして大きく唱える。
――あいつにも届くぐらいの!
『恋符、マスタァァスパァァァァク!!』
心なしか、いつもより些か衝撃が強いような気がした。
こいつも私の勝利を祈ってくれているのだろうか。
それともこのいつものノリが一番ということを教えてくれているのだろうか。
箒の最大出力よりも強い力で私が後ろへ押され始めた。
「おいおい、はしゃぎ過ぎだぜ!」
こいつがどうにかして私を励まそうとしている。
そう考えると右手の痛みはもうどこかへ消えてしまった。
やっぱりいつも通りが一番だ。
熱くなると周囲を顧みない、そんな普通の魔法使いである霧雨魔理沙は今日も熱く叫ぶんだぜ。
魔力を全て使い切り、もう使うことのない空っぽの相棒が傷付かない様に、魔女の万能帽子の中へと突っ込む。
そして弾幕のターゲット座標設定を確認し、両手を箒へと伸ばす。
その時ふと、異変に気付く。
箒の出力が常に最大出力に設定されていて、制御が出来ない。
――完全に暴走している。
度重なる調整、急激に増加する出力。
とうとうお前までイカれちまったのか?
――いや、お前がそんなやつじゃないことはこの私がよく分かっている。
察するに、相棒相棒と呼ばれる八卦炉の最大出力に負けたのが悔しくて張り合ってるってとこか。
なに、心配しなくてもお前も立派な一本の私の相棒さ。
第一お前がいなけりゃ私は飛ぶことすら出来ないんだぜ?
まあ相棒のお前がそういう気分なら、付き合ってやるのも私の役目だ。
自らの口元にそっと手をやると、どうも思っていた以上にニヤけていたらしい。
「――さて、共に逃げ切ってやるとしようか!」
最大出力の相棒に跨り、一心不乱に飛び回り続ける。
ひたすらに、がむしゃらに、奴を墜とすまで。
ギリギリを飛び、弾幕の中を掻い潜る。
越える、越えてやるんだ。
全ての柵を超えて、余計なものに縛られずに誰にも負けない自由を手に入れるんだ。
最高速で弾を避け続ける。
いつも通りの自分の不安を全て押し切るニヤケ顔で。
そうして空間と空間の間を行ったり来たりしている内に、ふと気付く。
「――囲まれたか」
そして私の体の全ての力が抜けた。
落下している最中に、ふと目線を下に向けると紅白の巫女がチラリと視界に入った。
相変わらず無傷の紅白衣装と涼しい顔を引っさげてふらふらと飛んでいる。
あいつと目が合う。
しかしあいつは顔を前へと戻し、奴へと向かっていく。
……やっぱりお前は私なんかより目の前の異変の方が大事なのか。
そうか、そりゃそうだよな。
お前は異変が起こればすぐさま解決する幻想郷の守護者、博麗の巫女。
それに比べて私は異変が起きればすぐさま出しゃばるただの魔法使い、霧雨魔理沙だ。
そりゃそこらへんにいる人間なんて一々構ってられないものな。
……畜生畜生畜生!!
また私は何もできなかった!
また私はあいつに全てを押し付けるんだ!
また私は博麗の巫女に、異変を丸投げするんだ!
また私はあいつの友達を自称しておいて、あいつの人外としての格を上げるんだ!
『博麗の巫女は人間じゃない』
『博麗の巫女はこの幻想郷の守護者なんだ』
『博麗の巫女は私達とは違う所にいらっしゃるんだ』
こんな話に現実味を帯びさせるのは私のような出しゃばる奴なんだ!!
「……今回は譲ってやるぜ」
なんていう苦し紛れな捨て台詞を足元の天に向かって吐き捨てながら、一直線に地へ落ちていく。
……畜生…………
「いってて……」
見事な不時着を決めた自分勝手な私は、自分勝手な相棒を庇い強く打った腰をさすりつつ寝そべる。
そして私を支える相棒一個と一本をそっと静かに横へ置き、空を見上げる。
「たまには見物も悪くないよな」
そう呟きながら、頭上を流れる弾幕を見物するという何とも無意味なことに興じたのだった。
もっとも、そんな事をしたところでこの頬を流れているものを止められるわけでもないのだが。
しかし二人の弾幕ごっこはそれ程までに見事で、そして綺麗であった。
その弾幕は、私の目には……
例えるならばそう、晴れた夜空の流星群のように映ったのだ。
あの流れ星を飄々と避けるあいつに指を指す。
それはまるで、星を眺める少女が星を取ってくれとねだる時のように。
それは届かないものと決め付ける時のように。
――いいや、それじゃあダメだろう。
私はあいつに右の掌を見せつける。
それはまるで、すぐ近くにあるのに掴めないものを必死に掴み取ろうとする時のように。
どうにかして届かないものに届こうとする時のように。
「絶対に、いつか越えてやる」
そんな小さな声の大きな決意は届いたのだろうか。
「勿論、付いて来てくれるだろう?」
誰に向けられたわけでもないその言葉は、この満天の星に消えていった。
おそらく奴を倒せば異変は終わり、万事解決って訳だ。
向かってくる弾は連弾、射線から離れて現状維持。
私を狙っていない低速弾は周囲に停滞しているが慌てなくても大丈夫、すぐどこかへ消える。
左手の相棒――八卦炉はいつでもアレを発射出来る、魔力残量はあと一発分のみ。
それだけ確認したら弾幕の中で見え隠れする奴の影を目掛けて小弾幕を撃ち続ける。
次の弾幕は少し間のある連弾、大きく誘導しながら一発づつ左右に避ける。
整理しろ、奴のペースに乗せられるな。
自らのペースを保ち続けるんだ。
熱くなると周りが見えなくなる、自分の短所くらい分かっている。
ペースを持って行かれたが最後、それは全ての終わりを意味するんだ。
素早く大きい弾幕がばらまかれ、誘導を繰り返し大きく動いていた私は避けきれないことを察知した。
相棒を素早く利き手に持ち替え、左手をしっかりと添える。
そして体の中央に来るように両腕を真っ直ぐに伸ばす。
最後に息を軽く吸い込み短く唱える。
『恋符、マスタースパーク』
相棒から放たれる極太の光線。
強すぎる光から目を守るため、情報収集の為に開ききったそれを薄くする。
こうしないとこいつが全てを吐ききった後、眩しすぎて相手の弾幕が見えなくなってしまうのだ。
自慢の箒に大量の魔力供給、出力を上げて空中で姿勢を固定。
そして体の中心で全ての衝撃を受け止める。
狭い視界で尚も周囲の状況を確認する。
弾幕は全く飛んできていない。
……よし、大丈夫。
マスタースパークは敵を捉えている。
いつもならスペルカードを大声で叫んでいるが、今はそんな余裕は無い。
あいつが来たらすぐに倒してしまうから、
あいつが来る前に倒さないといけないから、
……また置いていかれてしまうから。
「今日の私はクリア重視型だぜ」
収束していく光線と共に、箒の出力を下げていく。
そして今にも砕け散りそうな右手を庇いながら、軽口を叩く。
そう、全ては作戦通り。
このまま行けば全てが上手くいく。
オプションに追加の魔力供給を済ませ、全弾を奴に注ぎ込む。
……だが削り足りない、圧倒的に削り足りない。
再び弾幕がばらまかれる。
空中で自らの体を固定するのがやっとのマスタースパークの反動で、抜けることができるタイミングを逃した。
だが八卦炉の魔力はもうすっからかんだ。
――避けきれない
弾が私の腹部に命中した瞬間、突如として襲いかかる猛烈な吐き気と怠惰感を押し切る。
異変を起こす奴らの弾幕は全てが体に危害を与えないが、心を直接へし折りに来る弾。
次当たれば折れない自信は正直無い。
体勢を立て直しつつ、思考を巡らせろ。
もう少し発射タイミングを遅らせ、弾幕の除去に専念するべきだった。
いや、いっそのこと早めて抜けられるタイミングで抜けてしまった方が良かったのではないか。
独特の不愉快な感覚に耐えながら次の戦略を組み立てる。
やられた時に散らばった魔力をすぐさま回収し相棒に詰め込み、二発分のエネルギーに変える。
少し減ったオプションに魔力を焼べつつ箒の出力を微調整、
再び八卦炉を左に持ち、自らの弾幕の全弾のターゲットを奴に絞り込む。
私に残っているのはこのマスタースパーク二発分の魔力だけ。
この二発が無くなり、私が墜ちるのか。
それとも削り切って、奴を墜とすのか。
二つに一つのギリギリの勝負だ。
自分のペースを維持したまま、奴の弾幕を避けつつ反撃を繰り出す。
しかし油断したところに、奴はすかさず弾幕を撃ち込んでくる。
――まただ、避けきれない。
『恋符、マスタースパーク』
まず一発、負けるよりすぐにぶっ放した方が遥かにマシだ。
周囲の弾幕を一掃しながら全意識を箒の再調整の計算に費やす。
もう少し出力を下げる?
今遅れたせいで被弾したばかりだろう。
これ以上遅くしてどうする、自滅でもする気か。
なら上げるか?
速すぎても飛んで火に入る烏天狗というし、すぐに自爆するだろう。
私はあいつらとは違って自由自在に飛ぶことができるわけでもないのだ。
遅いか速いか、絶妙な配分が求められる。
私にとってはこの設定で勝ち負けが決まると言っても過言ではない。
収束し始め、衝撃が小さくなったマスタースパークを左手で制御、空いた右手で急いで箒の調整を行い、再び空を飛ぶ。
再調整の甲斐もあり、弾幕の隙間を飛び回り続ける。
大きな弾幕の隙間を飛び、
小さな連弾を細かい動きで避け続ける。
奴を落とす為に。異変を解決する為に。
そして何より、あいつを見返す為に。
――あぁ、もう振り切れないか。
ならしょうがない。
慣れた手つきで相棒を右手へ投げ、素早く構える。
本日ラストだ、しっかり削ってきてくれよ。
いつものあの魔法の呪文を素早く、そして大きく唱える。
――あいつにも届くぐらいの!
『恋符、マスタァァスパァァァァク!!』
心なしか、いつもより些か衝撃が強いような気がした。
こいつも私の勝利を祈ってくれているのだろうか。
それともこのいつものノリが一番ということを教えてくれているのだろうか。
箒の最大出力よりも強い力で私が後ろへ押され始めた。
「おいおい、はしゃぎ過ぎだぜ!」
こいつがどうにかして私を励まそうとしている。
そう考えると右手の痛みはもうどこかへ消えてしまった。
やっぱりいつも通りが一番だ。
熱くなると周囲を顧みない、そんな普通の魔法使いである霧雨魔理沙は今日も熱く叫ぶんだぜ。
魔力を全て使い切り、もう使うことのない空っぽの相棒が傷付かない様に、魔女の万能帽子の中へと突っ込む。
そして弾幕のターゲット座標設定を確認し、両手を箒へと伸ばす。
その時ふと、異変に気付く。
箒の出力が常に最大出力に設定されていて、制御が出来ない。
――完全に暴走している。
度重なる調整、急激に増加する出力。
とうとうお前までイカれちまったのか?
――いや、お前がそんなやつじゃないことはこの私がよく分かっている。
察するに、相棒相棒と呼ばれる八卦炉の最大出力に負けたのが悔しくて張り合ってるってとこか。
なに、心配しなくてもお前も立派な一本の私の相棒さ。
第一お前がいなけりゃ私は飛ぶことすら出来ないんだぜ?
まあ相棒のお前がそういう気分なら、付き合ってやるのも私の役目だ。
自らの口元にそっと手をやると、どうも思っていた以上にニヤけていたらしい。
「――さて、共に逃げ切ってやるとしようか!」
最大出力の相棒に跨り、一心不乱に飛び回り続ける。
ひたすらに、がむしゃらに、奴を墜とすまで。
ギリギリを飛び、弾幕の中を掻い潜る。
越える、越えてやるんだ。
全ての柵を超えて、余計なものに縛られずに誰にも負けない自由を手に入れるんだ。
最高速で弾を避け続ける。
いつも通りの自分の不安を全て押し切るニヤケ顔で。
そうして空間と空間の間を行ったり来たりしている内に、ふと気付く。
「――囲まれたか」
そして私の体の全ての力が抜けた。
落下している最中に、ふと目線を下に向けると紅白の巫女がチラリと視界に入った。
相変わらず無傷の紅白衣装と涼しい顔を引っさげてふらふらと飛んでいる。
あいつと目が合う。
しかしあいつは顔を前へと戻し、奴へと向かっていく。
……やっぱりお前は私なんかより目の前の異変の方が大事なのか。
そうか、そりゃそうだよな。
お前は異変が起こればすぐさま解決する幻想郷の守護者、博麗の巫女。
それに比べて私は異変が起きればすぐさま出しゃばるただの魔法使い、霧雨魔理沙だ。
そりゃそこらへんにいる人間なんて一々構ってられないものな。
……畜生畜生畜生!!
また私は何もできなかった!
また私はあいつに全てを押し付けるんだ!
また私は博麗の巫女に、異変を丸投げするんだ!
また私はあいつの友達を自称しておいて、あいつの人外としての格を上げるんだ!
『博麗の巫女は人間じゃない』
『博麗の巫女はこの幻想郷の守護者なんだ』
『博麗の巫女は私達とは違う所にいらっしゃるんだ』
こんな話に現実味を帯びさせるのは私のような出しゃばる奴なんだ!!
「……今回は譲ってやるぜ」
なんていう苦し紛れな捨て台詞を足元の天に向かって吐き捨てながら、一直線に地へ落ちていく。
……畜生…………
「いってて……」
見事な不時着を決めた自分勝手な私は、自分勝手な相棒を庇い強く打った腰をさすりつつ寝そべる。
そして私を支える相棒一個と一本をそっと静かに横へ置き、空を見上げる。
「たまには見物も悪くないよな」
そう呟きながら、頭上を流れる弾幕を見物するという何とも無意味なことに興じたのだった。
もっとも、そんな事をしたところでこの頬を流れているものを止められるわけでもないのだが。
しかし二人の弾幕ごっこはそれ程までに見事で、そして綺麗であった。
その弾幕は、私の目には……
例えるならばそう、晴れた夜空の流星群のように映ったのだ。
あの流れ星を飄々と避けるあいつに指を指す。
それはまるで、星を眺める少女が星を取ってくれとねだる時のように。
それは届かないものと決め付ける時のように。
――いいや、それじゃあダメだろう。
私はあいつに右の掌を見せつける。
それはまるで、すぐ近くにあるのに掴めないものを必死に掴み取ろうとする時のように。
どうにかして届かないものに届こうとする時のように。
「絶対に、いつか越えてやる」
そんな小さな声の大きな決意は届いたのだろうか。
「勿論、付いて来てくれるだろう?」
誰に向けられたわけでもないその言葉は、この満天の星に消えていった。
よく考えたら魔理沙は道具を使いこなして戦っているわけだから競争用バイクや愛銃で戦っているようなものだから多分こんな感じになるんでしょうね
人間臭い汗臭い拘りがあっていいですね
もう少し物語が見えると良いのかも。
魔理沙には頑張ってもらいたいですね。既に精一杯頑張っている彼女にこんな声はかけられませんが