河を泳いでいると、竹林が見えた。
迷いの竹林だ。
だが、迷いの竹林という名前とは裏腹に、ほぼ確実に迷わない。
というのも、私には強力な味方、つまり案内人がいるからだ。
川縁を泳ぐと、我が盟友兼案内人との待ち合わせ場所に近づいてきた。
この距離からなら声をかけても聞こえるだろう。
「おーい、盟友!」
「ああ、もう来たのか。少し早かったな。」
「盟友よ、今日はどこに行く?」
普通の、いかにも普通の会話を投げ掛ける。
私はこういう普通の会話が大好きなのだ。
「なあにとり、もう『盟友』ってのやめてくれよ。普通に、『妹紅』って呼んでくれ。」
「ああ、そうだね。『妹紅』。」
「今日は暑すぎる。神社にでも行こうか。」
「ああ、木陰で涼みながら巫女に茶でもたかろう。」
一緒に竹林を歩く。
しばらくすると、人里のがやがやといった雑踏が聞こえてきた。
うるさいのはあまり好きではない。
さっさと森まで抜けてしまおう。
森の冷たい空気が体を包み込む、ひんやりしていて妙に気持ちいい。
ここを抜ければ巫女のいる神社だ。
歩いた疲れを巫女の入れる冷茶で癒してもらおう。
神社の近くまで来た、階段を登って麦茶に有り付こう。
「あら珍しい。あまり見かけない組み合わせね。」
「組み合わせどころか、片方ずつでもしばらく見かけなかったぜ。」
「魔理沙は地霊異変の時に一緒に行ったんじゃなかったの?」
「それがそれっきりなんだ。久しぶりだな、にとり。」
「まあ妹紅も一緒にお茶でも飲んで行きなさいよ。」
冷えた麦茶が体に沁みる。
「魔理沙たちはこの後宴会かい?」
「いや、今日はゆっくりするぜ、月が出てきたらちびちび呑みだすか。」
「じゃあにとり、邪魔しちゃ悪いしもう行こう。」
「ああ、わりーな。今度そっちにも遊びに行くぜ。」
神社を出た。
この後は川で休憩だ。
蝉の声と太陽の光輪が、意識を浮かせるような感じすら覚えさせる暑い夏の昼。
私たちは、川から突き出た岩に座り、木陰から大きな入道雲と山を見た。
「ああーきれいだねー。こういうのを見ると夏って暑いけどいいよなーって思うよねー。」
「まあ、そうだね。私は夜も好きだけど。」
「あー確かにね、夕立が止んだ後に虫が鳴いてたりして、くーっ納涼だー!って」
「はは、わかるよ。そういう感じ。少しひんやりしてるのが肌に吸い付くみたいだからかな?」
「うん、そんな感じかな。っと…」
「どうしたの?」
「神社でお茶飲んだのはいいんだけど、今度はお腹空いてきちゃって…」
「ああ、なるほど。そういうことなら、私の家でご飯つくろっか?」
「いいの?」
「いいよ、ちょうどこの後何しようか決めかねてたんだ。」
「じゃあ、ここから迷いの竹林まで歩くか。」
ちょっとした獣道、いや妖怪道とでも言うのか、そんな細い道を歩いていると、
山の麓まで下りてきた。さっきまで普通に暑いほど昼ムードだったのが、
今はもう斜陽が草木に赤い光を投じる時間だ。
「あちゃー、こっからまた歩くのか…。これなら川沿いに降りた方がよかったかもな。」
「うーん、あんまり知られてないんだけど、あの川時々物凄い深い所あるんだよね。
川に沿って下りた方が時間かかるんじゃないかな。」
「それなら仕方ないか。さて、人里で材料買って帰るか。」
「そうだね。妹紅の料理、早く食べたいな。」
「案外歩くのに時間かかるの忘れてたからね、ごめん…」
「ま、空腹は良き調味料、って昔から言われてるからね。」
さすがにこの時間になると人里の賑わいも偏っている。
今から飲みに行くのか、農家らしき男衆たちが闊歩している。
私たちは八百屋、肉屋、酒屋を回った。
にとりは普通の人間に見られるのはあまり好きではないのか、工学迷彩を付けて一緒に来た。
「さて、材料はそろったかな。
竹林の中に私の家があるから、そこまで案内するよ。」
「やっとご飯だね。」
「ああ、私の腕前を披露するときが来たようだな。」
妹紅は手を洗い、フライパンに油を引いていく。
中華鍋が温まってきたところに、材料を投入し、ザッザッと炒めていく。
「よーし出来た。にんにくの芽と牛肉をタレで炒めた奴だ。」
「じゃあ、妹紅も一緒に食べよう?」
「そうだな。じゃあ、一緒に…」
ぱちん。
「いただきまーす!」
空腹もそうだが、他愛もない話もいい調味料だ。と思う妹紅だった。
「…ごちそーさまでした」
「おそまつさんでした。」
「どうする?食休みに外行って涼む?」
「そうだな。星でも見るか。」
ドアを開けて外に出る。庭には竹で出来た椅子のパーツが置かれていた。
「これを組み立ててだな…。」
「すごいねー。竹でこんなのまで作れるんだ。
これは竹の素材としての好感度が上がるねー。」
「まあ見てなって。ほら、2人分イス完成。」
「おおっ!寝そべって星が見れる!これはいいよ!」
季節は夏真っ盛り。竹がより高く見せる夜空には満天の星。
耳を澄ませば虫やカエルの声。
「綺麗な所だねー。これじゃあもうどっこも行く気無くすんじゃない?」
「いやあ、そんなこともないよ。そっちだって山に川とか見所いっぱいじゃん。」
「それもそうだったね。今日はここで寝ようか?」
「だめだめ…室内で寝ないと風邪ひくよ?」
「ちぇっ。じゃあもうちょっと見て中はいろ。」
「私は先に寝るよー。おやすみー。にとりもすぐに寝なよ、
生活リズム壊すと怠いよ。」
「はいはーい、すぐに行くよー。」
星を見て、一人ため息をつく。
ああ、ありふれたこんな景色も改めて見ると綺麗だなぁ。
さて、私も寝るか。
終わり
迷いの竹林だ。
だが、迷いの竹林という名前とは裏腹に、ほぼ確実に迷わない。
というのも、私には強力な味方、つまり案内人がいるからだ。
川縁を泳ぐと、我が盟友兼案内人との待ち合わせ場所に近づいてきた。
この距離からなら声をかけても聞こえるだろう。
「おーい、盟友!」
「ああ、もう来たのか。少し早かったな。」
「盟友よ、今日はどこに行く?」
普通の、いかにも普通の会話を投げ掛ける。
私はこういう普通の会話が大好きなのだ。
「なあにとり、もう『盟友』ってのやめてくれよ。普通に、『妹紅』って呼んでくれ。」
「ああ、そうだね。『妹紅』。」
「今日は暑すぎる。神社にでも行こうか。」
「ああ、木陰で涼みながら巫女に茶でもたかろう。」
一緒に竹林を歩く。
しばらくすると、人里のがやがやといった雑踏が聞こえてきた。
うるさいのはあまり好きではない。
さっさと森まで抜けてしまおう。
森の冷たい空気が体を包み込む、ひんやりしていて妙に気持ちいい。
ここを抜ければ巫女のいる神社だ。
歩いた疲れを巫女の入れる冷茶で癒してもらおう。
神社の近くまで来た、階段を登って麦茶に有り付こう。
「あら珍しい。あまり見かけない組み合わせね。」
「組み合わせどころか、片方ずつでもしばらく見かけなかったぜ。」
「魔理沙は地霊異変の時に一緒に行ったんじゃなかったの?」
「それがそれっきりなんだ。久しぶりだな、にとり。」
「まあ妹紅も一緒にお茶でも飲んで行きなさいよ。」
冷えた麦茶が体に沁みる。
「魔理沙たちはこの後宴会かい?」
「いや、今日はゆっくりするぜ、月が出てきたらちびちび呑みだすか。」
「じゃあにとり、邪魔しちゃ悪いしもう行こう。」
「ああ、わりーな。今度そっちにも遊びに行くぜ。」
神社を出た。
この後は川で休憩だ。
蝉の声と太陽の光輪が、意識を浮かせるような感じすら覚えさせる暑い夏の昼。
私たちは、川から突き出た岩に座り、木陰から大きな入道雲と山を見た。
「ああーきれいだねー。こういうのを見ると夏って暑いけどいいよなーって思うよねー。」
「まあ、そうだね。私は夜も好きだけど。」
「あー確かにね、夕立が止んだ後に虫が鳴いてたりして、くーっ納涼だー!って」
「はは、わかるよ。そういう感じ。少しひんやりしてるのが肌に吸い付くみたいだからかな?」
「うん、そんな感じかな。っと…」
「どうしたの?」
「神社でお茶飲んだのはいいんだけど、今度はお腹空いてきちゃって…」
「ああ、なるほど。そういうことなら、私の家でご飯つくろっか?」
「いいの?」
「いいよ、ちょうどこの後何しようか決めかねてたんだ。」
「じゃあ、ここから迷いの竹林まで歩くか。」
ちょっとした獣道、いや妖怪道とでも言うのか、そんな細い道を歩いていると、
山の麓まで下りてきた。さっきまで普通に暑いほど昼ムードだったのが、
今はもう斜陽が草木に赤い光を投じる時間だ。
「あちゃー、こっからまた歩くのか…。これなら川沿いに降りた方がよかったかもな。」
「うーん、あんまり知られてないんだけど、あの川時々物凄い深い所あるんだよね。
川に沿って下りた方が時間かかるんじゃないかな。」
「それなら仕方ないか。さて、人里で材料買って帰るか。」
「そうだね。妹紅の料理、早く食べたいな。」
「案外歩くのに時間かかるの忘れてたからね、ごめん…」
「ま、空腹は良き調味料、って昔から言われてるからね。」
さすがにこの時間になると人里の賑わいも偏っている。
今から飲みに行くのか、農家らしき男衆たちが闊歩している。
私たちは八百屋、肉屋、酒屋を回った。
にとりは普通の人間に見られるのはあまり好きではないのか、工学迷彩を付けて一緒に来た。
「さて、材料はそろったかな。
竹林の中に私の家があるから、そこまで案内するよ。」
「やっとご飯だね。」
「ああ、私の腕前を披露するときが来たようだな。」
妹紅は手を洗い、フライパンに油を引いていく。
中華鍋が温まってきたところに、材料を投入し、ザッザッと炒めていく。
「よーし出来た。にんにくの芽と牛肉をタレで炒めた奴だ。」
「じゃあ、妹紅も一緒に食べよう?」
「そうだな。じゃあ、一緒に…」
ぱちん。
「いただきまーす!」
空腹もそうだが、他愛もない話もいい調味料だ。と思う妹紅だった。
「…ごちそーさまでした」
「おそまつさんでした。」
「どうする?食休みに外行って涼む?」
「そうだな。星でも見るか。」
ドアを開けて外に出る。庭には竹で出来た椅子のパーツが置かれていた。
「これを組み立ててだな…。」
「すごいねー。竹でこんなのまで作れるんだ。
これは竹の素材としての好感度が上がるねー。」
「まあ見てなって。ほら、2人分イス完成。」
「おおっ!寝そべって星が見れる!これはいいよ!」
季節は夏真っ盛り。竹がより高く見せる夜空には満天の星。
耳を澄ませば虫やカエルの声。
「綺麗な所だねー。これじゃあもうどっこも行く気無くすんじゃない?」
「いやあ、そんなこともないよ。そっちだって山に川とか見所いっぱいじゃん。」
「それもそうだったね。今日はここで寝ようか?」
「だめだめ…室内で寝ないと風邪ひくよ?」
「ちぇっ。じゃあもうちょっと見て中はいろ。」
「私は先に寝るよー。おやすみー。にとりもすぐに寝なよ、
生活リズム壊すと怠いよ。」
「はいはーい、すぐに行くよー。」
星を見て、一人ため息をつく。
ああ、ありふれたこんな景色も改めて見ると綺麗だなぁ。
さて、私も寝るか。
終わり
ただ、にとりの一人称で物語が進んでいるけど人里の買い物のくだりの
>私たちは八百屋、肉屋、酒屋を回った。
にとりは普通の人間に見られるのはあまり好きではないのか、工学迷彩を付けて一緒に来た。
という場面で、別の誰かの一人称に変わっています。実際それ以降の場面でも
>空腹もそうだが、他愛もない話もいい調味料だ。と思う妹紅だった。
という三人称の文章とにとりの一人称が混在しています。
何の前触れも無く語り手の視点が変わるのは読者を混乱させますので、物書きにとってそれはNGなのです(幸いこの物語のそれはよく読まないと見つけにくいレベルですが)。
あとは物語の前半の神社を訪れるくだりで、どこの神社へ訪れようとしているのかがはっきりしない(博麗神社なのか守矢神社なのか?)、神社での霊夢?と魔理沙の登場の仕方があっさり過ぎて唐突な為にとり達以外の誰が出て来たのか分かりにくい。霊夢?に至っては名前すら出て来ない(口調からして霊夢と思うけど名前を出さないと誰なのか読者には分からないし、説明無しで理解しろというのはただの傲慢です)等の点が気になりました。
ただ、それ以外はとても良かったです。短い文章ながらも夏の日の幻想郷の雰囲気が出ていたし、物語のテーマである「仲良しのにとりと妹紅」がちゃんと書けていました。初投稿でこれだけ出来たら立派なものです。
そもそも自分がダメ出した点は何度も推敲して修正したら済む程度のもので、物語として致命的な点は無いのです。あとは何度も投稿して経験を積んだらもっと良い物語も書けるようになるし、ファンも付いてくると思います。
個人的な意見と感想による超「上から目線」の長文駄文で大変失礼致しました。
創作の動機なんてそんなもんです。むしろそれで良い、どんどん欲求をブチまけてくだちい
とりあえずアドバイスらしきものは>>7氏が散々言ってるので、自分は感想のみ
実際、長く生きてて友好的な相手なら妹紅はうまく付き合える気がするからこれはこれでアリだと思います
>>霊夢の名前~
書いている時は頭の中でそのキャラだ、と認識していても、いざ投稿してみれば、その頭の中で考えていたことは文章中に出てこず、結果的に伝わっていないんですよね。
これからは、より推敲に時間を割きたいと思います。
はい、これからも自分の風景欲的な部分にどんどん従って行きたいと思います。
季節の色は作品に奥行きを出していていいですよね。
しかし妹紅とにとりって属性だけなら火と水ですね
良く考えれば完璧に対照的ですね…
ただ、さっぱりした性格をした二人なので、ある程度折り合いを付けてやっているのかな、という感じもします。
合間に適当な描写をいれれば全体的に面白味のある文になるはず、多分
日常だからあっさりな感じでも良いかもしれないけど
ありがとうございます。描写の塊のようなものがところどころにあるので、
もう少し散らして書ければよかったかな?と思います。