現と幻が交わる幻想郷。その一角に、人間の背丈を優に超える程に伸びた向日葵で埋め尽くされた場所がある。
曰く「太陽の畑」……健やかな黄色い花弁は夏を連想させ、夏は燦々と地面を灼く太陽を連想させる。
この幻想的な向日葵は自然に生えたものではない。巨大と言えど所詮は植物なのだ。種が無ければ芽吹かず、土が無ければ育たず、水が無ければ咲かない。此処の管理をしている者が居る。――名を「風見幽香」と言う。
「ふふ……今日も美しいわ、私の向日葵さん達……」
常盤色の髪。深緋の眸。豊かな乳房と蠱惑的な身躯を薄着で隠したその女性は誰が見ても瑰麗と称する程の美貌の持ち主である――安い言葉を用いれば、人間離れした美しさ。経城傾国の美貌。蠱惑的で魅力的、……然れど花と同じく、美しいものには棘がつきもの。その棘は触れれば肉を深く抉る、とても危険な凶器。
砕いて言えば、彼女は人間ではないのだ。人あらざる者、――妖怪。それも、かなり凶暴で残忍な。
その深淵よりも深く溟い本性は、花の前では蔽い隠される。
彼女は花に称賛の言葉を贈る。返答は勿論の事、無い。だが彼女はそんな当たり前の事など至極どうでも良い程に花を愛していた。
その愛は深海の底を突き破るほど深く、滄海よりも美しい。
「――早く、早く……その根で私を支配して欲しい……」
彼女は花弁を愛しているのではない。――根を愛しているのだ。
その感覚を共有したいと思い始めたのはつい最近の事だ。
根が土に根付く感覚を、水を吸う感覚を、感じたい。
先ず左手の人差し指と中指の間の肉を抉った。妖怪の身躯はこの小さな傷を治そうと働く。それを抑えるのにかなりの労力を要したが、これから味わえるであろう根の感覚というのに想いを馳せれば全然苦にならなかった。
抉った箇所に夾雑物の一切を除いた土を注ぎ、そして種を植えた。
しばらく水を与え、放置して幾日か経つと……ああ、何という事か。まだ生えたばかりのいと短い根が懸命に伸びようとする光景がありありと脳裏に浮かぶではないか。そのもどかしい感覚さえも愛撫のようでたまらない。
蹂躙される私の総て。――嗚呼、この瞬間を至福の時だと言うのか。
恍惚に紅潮する彼女の貌。蕩けた常盤色の眸、それを双眸と言わないのには理由がある。
彼女には右眼が無かった。本来、眼球が有る場所には向日葵が咲いていたのだ。
眼窩に根が這う感覚もまた愛おしいもので……もどかしいもので、たまらなく幸福だった。
いつかこの根が私の脳髄に達し、脳漿と混ざり融け合って、初めて私は根になれる。
その最期の瞬間は、小屋ではなく根の中で迎えたいのだ。土壌の中でも構わない。
小屋に振り向き、帰る彼女。朱く長いスカートが風に靡き、魅惑的な太腿が露わになる。
その太腿は肌色ではなく、深緑色。
太腿一面がびっしりと藻で覆われている事は、もはや言うまでもないだろう……。
曰く「太陽の畑」……健やかな黄色い花弁は夏を連想させ、夏は燦々と地面を灼く太陽を連想させる。
この幻想的な向日葵は自然に生えたものではない。巨大と言えど所詮は植物なのだ。種が無ければ芽吹かず、土が無ければ育たず、水が無ければ咲かない。此処の管理をしている者が居る。――名を「風見幽香」と言う。
「ふふ……今日も美しいわ、私の向日葵さん達……」
常盤色の髪。深緋の眸。豊かな乳房と蠱惑的な身躯を薄着で隠したその女性は誰が見ても瑰麗と称する程の美貌の持ち主である――安い言葉を用いれば、人間離れした美しさ。経城傾国の美貌。蠱惑的で魅力的、……然れど花と同じく、美しいものには棘がつきもの。その棘は触れれば肉を深く抉る、とても危険な凶器。
砕いて言えば、彼女は人間ではないのだ。人あらざる者、――妖怪。それも、かなり凶暴で残忍な。
その深淵よりも深く溟い本性は、花の前では蔽い隠される。
彼女は花に称賛の言葉を贈る。返答は勿論の事、無い。だが彼女はそんな当たり前の事など至極どうでも良い程に花を愛していた。
その愛は深海の底を突き破るほど深く、滄海よりも美しい。
「――早く、早く……その根で私を支配して欲しい……」
彼女は花弁を愛しているのではない。――根を愛しているのだ。
その感覚を共有したいと思い始めたのはつい最近の事だ。
根が土に根付く感覚を、水を吸う感覚を、感じたい。
先ず左手の人差し指と中指の間の肉を抉った。妖怪の身躯はこの小さな傷を治そうと働く。それを抑えるのにかなりの労力を要したが、これから味わえるであろう根の感覚というのに想いを馳せれば全然苦にならなかった。
抉った箇所に夾雑物の一切を除いた土を注ぎ、そして種を植えた。
しばらく水を与え、放置して幾日か経つと……ああ、何という事か。まだ生えたばかりのいと短い根が懸命に伸びようとする光景がありありと脳裏に浮かぶではないか。そのもどかしい感覚さえも愛撫のようでたまらない。
蹂躙される私の総て。――嗚呼、この瞬間を至福の時だと言うのか。
恍惚に紅潮する彼女の貌。蕩けた常盤色の眸、それを双眸と言わないのには理由がある。
彼女には右眼が無かった。本来、眼球が有る場所には向日葵が咲いていたのだ。
眼窩に根が這う感覚もまた愛おしいもので……もどかしいもので、たまらなく幸福だった。
いつかこの根が私の脳髄に達し、脳漿と混ざり融け合って、初めて私は根になれる。
その最期の瞬間は、小屋ではなく根の中で迎えたいのだ。土壌の中でも構わない。
小屋に振り向き、帰る彼女。朱く長いスカートが風に靡き、魅惑的な太腿が露わになる。
その太腿は肌色ではなく、深緑色。
太腿一面がびっしりと藻で覆われている事は、もはや言うまでもないだろう……。
この作品にあるのは設定だけですよ
たしかに、独特の文調で作品の雰囲気を出す手法はありますが、それは高等技術ですので。
慾を言えば、設定自体は面白いのでコレにストーリーを書き加えて欲しかったです。
人間とは違う!
いや違うか?いやいや違う
だって人間ここまでタフじゃないし
限られた装飾しか出来ないし
ピアスとかぐらいだし
もっとボリュームがあればもっと面白味のあるものになっただろうと思うと、非常にもったいない感じ