Coolier - 新生・東方創想話

2014/02/26 07:01:19
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 彼女と手をつないでいる時の事だった。
 かちりとした軽い音に振り返ってみると、聞屋が写真を撮っていた。
 記事にすると話していたが、紙の上に状況が再現されることはなかった。
 不思議に思い、聞屋の元へ行ってみると、記事として弱く、使えないとの事だった。
 今後使う予定はないとのことなので、写真を手に持ち、彼女の家へ帰っていった。
 彼女と手を合わせながら、その写真を眺める。
 それから、彼女の家で写真を見ることが、日々の暮らしの一部になった。

 いくつかの季節が過ぎていき、変化しない私とは裏腹に、写真は段々と変わっていった。
 端々は擦り切れ、全体的に茶色がかっていった。
 以前の聞屋に行ってみると、新しい写真を渡してくれた。
 その日から、私たちは写真を並べて見るようになった。

 数え切れないほどの季節が過ぎた。
 彼女の家に、今でも私はいる。そして、今日も写真を見続けている。
 一番初めのものは擦り切れ、茶色い紙になってしまっている。
 何十枚と並べられた写真。
 背中からまっすぐに伸びた長い髪。
 顔は見ることはできないが、思い出すことはできる。
 今日も日差しの下、彼女との写真を見続ける。

 季節の変化は変わらず、目の前の情景が変わり続けた。
 あの頃の写真は、細かな色の集合として、小さな機械に収められている。
 彼女の顔は、輪郭が曖昧になり、思い出すことは難しい。
 しかし、あの日の彼女の手の暖かさ。話した時の声。距離感は思い出すことができる。

 無限にある時間。置いていったものは多くはあるけれど、これからも永遠にとり続けていく。
 彼女との日々をもう一度、撮りつづけるために。
掌編・・・のつもりです。

お楽しみいただけましたら、幸いです。
ご意見・ご感想などありましたら、是非。
龍泡
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コメント



0.310簡易評価
2.80名前が無い程度の能力削除
アナログな写真という媒体だと、割合とすぐに劣化し失われてしまうかもしれません。そんなものにすがりつく妹紅が痛ましい。
5.90絶望を司る程度の能力削除
切ないですね。諸行無常の響き、その響きに動じない彼女は何を見続けるか?
10.80奇声を発する程度の能力削除
うーん、切ないですねぇ