「――様、お嬢様っ!!」
素晴らしく快適な睡眠は、我らがメイド長――十六夜咲夜によってかき消された。
「・・・なによ咲夜・・・・・まだ真夜中じゃない。主の快眠を奪った罪は簡単には償えないわよ・・・?そうね・・・・・明日はカチューシャをイヌミミに替えて「わふっ」と「くぅ~ん」だけで買い出ししてきなさい。」
「アホみたいなこと言ってないで早く起きてください!博麗の巫女が攻め込んできました!!!」
「……………、マジで?」
なんでこんな時間に来てんの?あとなんかさらっとアホ呼ばわりされたんだけど。
「いやいやおかしいでしょ!?何で吸血鬼の館に満月の夜に来てんのアイツ!今代の巫女ってそういう人だったの?「こんなに月も紅いから本気で殺すわよ・・・!」とか言っちゃう恥ずかしいやつなの!?」
「現にもう来ちゃってるんだからどうしようもないじゃないですか!とにかくわたしは時間を稼いでくるんで、その間に準備しといてくださいね!」
「え?ちょっ、咲夜!」
そう言って咲夜は最初からそこにいなかったように姿を消し、代わりに私の勝負服(深い意味は無い)がパサリと目の前に落ちてきた。
「時間止めてる間に支度したほうが良かったんじゃ・・・」
うちのメイド長は割りと天然だから困る。まあそのぐらい人間臭いほうが気が楽だからいいんだけどね。
間髪を入れずに低い振動と共に爆音が聞こえてきた。音からしてそんなに遠くでもないらしい。
「と、とにかく早く着替えなきゃ・・・!」
とりあえずパジャマを脱いでワンピースを頭から被る。レミリア・スカーレットの貴重なうふふシーンをしばらくお楽しみください。なんちって。
「・・・よし!スペルカードも持ったし、帽子も完璧な角度ね。待ってなさい博麗の巫女!!!」
やる気まんまんで寝室のドアノブに手を掛けた時、背中に猛烈な違和感を覚えた。例えるなら長袖の上着を着た時にインナーの袖がまくれ上がった時みたいな感覚だ。
「これって・・・っまさか!」
肩越しに背中を確認すると違和感の正体がそこにいた。
自分の羽根が、自慢のコウモリ型の羽根が服の中でくしゃくしゃになってる。それはもう卵から孵ったばかりのコウモリのように!・・・・・あれ?コウモリって卵生よね?鳥類だし。
・・・いやいや実際ふざけてる状況じゃない。はっきり言って大ピンチだこれ。何故なら私一人では対処しようがないからだ。自慢じゃないが私は身体が硬い。子供は体が柔らかいとか言うけど、どうやら吸血鬼にそれは当てはまらないらしいらしい。だから背中にある服の穴にに手が届かない。いつもは咲夜にやってもらっているからこんな些細な事に気付かなかった。
「ああアカンでコレはぁ・・・っ!紅魔館の危機やでホンマ・・・!」
ちなみにこの状態だと私は飛べない。いや正確には飛べるけど羽根の力でワンピースの上半分が吹き飛ぶことになる。そうなったらどうなるか、想像してほしい――玉座に座る、幼いながらも圧倒的なカリスマを放つ少女。その前に現れる正義の味方、博麗の巫女。吸血姫は巫女の純粋で力強い眼差しを受け、満足そうに哄笑しながら立ち上がる。二人は少なく言葉を交わし、どちらともなくカードを出し、空に向かい大地を蹴り「破ァッ!!!」服がはじけ飛んだ――
「どこの戦闘民族だよちくしょうっ!!!」
あまりに場違いな演出に一人ツッコミを入れてしまった。その後普通に弾幕ごっこができるわけがない。良くて巫女がドン引きしてまた後日に、最悪の場合妖怪の賢者にわいせつ物陳列罪で通報されて強制異変解決、紅魔館・1050年地底行きなんてことになりかねない。さっきも言ったがこれは紅魔館始まって以来最大の危機なのだ。
「だ、誰かに羽根をだしてもらわないと紅魔館がヤバイ!!誰か適任は・・・」
美鈴とパチェ、小悪魔は弾幕勝負後だろうから恐らく満身創痍だろう。妖精メイドは異変騒ぎに興奮しきってて使い物にならない。
「誰か・・・・・」
咲夜は言わずもがな戦闘中。フランは地下室の扉の解錠に時間がかかりすぎるし、そもそもあの子が素直に言うことを聞くとは思えない。
「・・・・・・・・誰か・・・・・・」
紅魔館の外に都合良く人はいないだろう。なにせ紅霧をまき散らしてる館だ。妖怪すら近づかないだろう。
「・・・・・一体、どぉうすればぁっ・・・・」
まさに八方塞がり。気分は追い詰められた新世界の神だ。咲夜ぁ・・・何してるっ・・・出せっ!・・・・ここにある二つの羽根を・・・・引っ張れぇ!!!
ベッドの上でもがき、戦闘が終わるのをただただ恐れ、後悔の雨が頬を伝うのを感じていた。嗚呼、もし満月だからと気を抜かずに警戒していたら、こんな無意味な異変を起こさなければ、自分が紅魔館の主にならなければ!
不意に、耳を圧迫するような静寂が訪れた。
ついに咲夜が敗れたのだ。つまりこの館に残っているのは私一人、哀れな裸の王様となったのだ。そして巫女と出会った瞬間、上裸の王様となるのだ。
「・・・いやだ・・・まだ終われない・・・幻想郷一の変態として残りの人生を浪費するなんていやぁぁあああ!!!!」
ドアを蹴破り、全力で走る。こうなったら恥も外聞もない。逃げに逃げまくって相手が諦めるのを待つ、それしかない!!!待っててみんな・・!紅魔館は私が必ず守るから!!
視界が霞むほどの速度で館中を駆け巡る。しかし涙で滲んだ視界の所為か焦りの所為か、
「ふげっ!!!」
「うぉっ!?だ、大丈夫か?」
無様にカーペットに躓いて転んだ。強かに顔面をぶつけたが、気にせず立ち上がる、と
「い、痛そうだったけど平気か・・・?」
白黒の服を着た・・・魔法使い?がいた。
「・・・え?あなた」
誰?と言う前にすぐ近くから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「お嬢様に怒られる前に1ボムでも潰さないと~」
「黙ってお使いにでもでたら?」
幸か不幸か咲夜の戦っていた場所の近くに来ていたらしい。どうやら咲夜は戦闘不能寸前のまま、まだ戦っていたらしい。そして目の前には手の開いている人間!
「っ!!!あなた!!私の服の背中のとこ、二つ穴があいてるでしょ!?そこから羽根を引っ張って!!!」
「え?まあいいけど・・・」
「早く!!!!!」
クルリと後ろを向いて開放の瞬間を待つ。永遠にも感じられる時間の後、本来あるべき場所に羽根が収まるのを感じた。
「例を言うわ、白黒の人!この恩はいずれ――」
「そろそろ姿、見せてもいいんじゃない?お嬢さん」
「ああもう!とにかくありがとうね!!!」
「ああちょっと!!おまえの――」
待ってなさい博麗の巫女!!今までの苦悩、全部お前にたたきつけてやるわ!!!
「・・・・・・・・・何だったんだいまのは」
白黒の人もとい、霧雨魔理沙は一人頭を掻いていた。
「さっきのは誰だったんだ?館の主の子供とかか?まあ何でもいいけど・・・」
さっき走っていった少女の落とし物を拾い上げて呟いた。
「これって腰に巻いてたリボンだよな・・・コレ無しで飛び回ったりしたら大変な事になると思うんだけど・・・」
素晴らしく快適な睡眠は、我らがメイド長――十六夜咲夜によってかき消された。
「・・・なによ咲夜・・・・・まだ真夜中じゃない。主の快眠を奪った罪は簡単には償えないわよ・・・?そうね・・・・・明日はカチューシャをイヌミミに替えて「わふっ」と「くぅ~ん」だけで買い出ししてきなさい。」
「アホみたいなこと言ってないで早く起きてください!博麗の巫女が攻め込んできました!!!」
「……………、マジで?」
なんでこんな時間に来てんの?あとなんかさらっとアホ呼ばわりされたんだけど。
「いやいやおかしいでしょ!?何で吸血鬼の館に満月の夜に来てんのアイツ!今代の巫女ってそういう人だったの?「こんなに月も紅いから本気で殺すわよ・・・!」とか言っちゃう恥ずかしいやつなの!?」
「現にもう来ちゃってるんだからどうしようもないじゃないですか!とにかくわたしは時間を稼いでくるんで、その間に準備しといてくださいね!」
「え?ちょっ、咲夜!」
そう言って咲夜は最初からそこにいなかったように姿を消し、代わりに私の勝負服(深い意味は無い)がパサリと目の前に落ちてきた。
「時間止めてる間に支度したほうが良かったんじゃ・・・」
うちのメイド長は割りと天然だから困る。まあそのぐらい人間臭いほうが気が楽だからいいんだけどね。
間髪を入れずに低い振動と共に爆音が聞こえてきた。音からしてそんなに遠くでもないらしい。
「と、とにかく早く着替えなきゃ・・・!」
とりあえずパジャマを脱いでワンピースを頭から被る。レミリア・スカーレットの貴重なうふふシーンをしばらくお楽しみください。なんちって。
「・・・よし!スペルカードも持ったし、帽子も完璧な角度ね。待ってなさい博麗の巫女!!!」
やる気まんまんで寝室のドアノブに手を掛けた時、背中に猛烈な違和感を覚えた。例えるなら長袖の上着を着た時にインナーの袖がまくれ上がった時みたいな感覚だ。
「これって・・・っまさか!」
肩越しに背中を確認すると違和感の正体がそこにいた。
自分の羽根が、自慢のコウモリ型の羽根が服の中でくしゃくしゃになってる。それはもう卵から孵ったばかりのコウモリのように!・・・・・あれ?コウモリって卵生よね?鳥類だし。
・・・いやいや実際ふざけてる状況じゃない。はっきり言って大ピンチだこれ。何故なら私一人では対処しようがないからだ。自慢じゃないが私は身体が硬い。子供は体が柔らかいとか言うけど、どうやら吸血鬼にそれは当てはまらないらしいらしい。だから背中にある服の穴にに手が届かない。いつもは咲夜にやってもらっているからこんな些細な事に気付かなかった。
「ああアカンでコレはぁ・・・っ!紅魔館の危機やでホンマ・・・!」
ちなみにこの状態だと私は飛べない。いや正確には飛べるけど羽根の力でワンピースの上半分が吹き飛ぶことになる。そうなったらどうなるか、想像してほしい――玉座に座る、幼いながらも圧倒的なカリスマを放つ少女。その前に現れる正義の味方、博麗の巫女。吸血姫は巫女の純粋で力強い眼差しを受け、満足そうに哄笑しながら立ち上がる。二人は少なく言葉を交わし、どちらともなくカードを出し、空に向かい大地を蹴り「破ァッ!!!」服がはじけ飛んだ――
「どこの戦闘民族だよちくしょうっ!!!」
あまりに場違いな演出に一人ツッコミを入れてしまった。その後普通に弾幕ごっこができるわけがない。良くて巫女がドン引きしてまた後日に、最悪の場合妖怪の賢者にわいせつ物陳列罪で通報されて強制異変解決、紅魔館・1050年地底行きなんてことになりかねない。さっきも言ったがこれは紅魔館始まって以来最大の危機なのだ。
「だ、誰かに羽根をだしてもらわないと紅魔館がヤバイ!!誰か適任は・・・」
美鈴とパチェ、小悪魔は弾幕勝負後だろうから恐らく満身創痍だろう。妖精メイドは異変騒ぎに興奮しきってて使い物にならない。
「誰か・・・・・」
咲夜は言わずもがな戦闘中。フランは地下室の扉の解錠に時間がかかりすぎるし、そもそもあの子が素直に言うことを聞くとは思えない。
「・・・・・・・・誰か・・・・・・」
紅魔館の外に都合良く人はいないだろう。なにせ紅霧をまき散らしてる館だ。妖怪すら近づかないだろう。
「・・・・・一体、どぉうすればぁっ・・・・」
まさに八方塞がり。気分は追い詰められた新世界の神だ。咲夜ぁ・・・何してるっ・・・出せっ!・・・・ここにある二つの羽根を・・・・引っ張れぇ!!!
ベッドの上でもがき、戦闘が終わるのをただただ恐れ、後悔の雨が頬を伝うのを感じていた。嗚呼、もし満月だからと気を抜かずに警戒していたら、こんな無意味な異変を起こさなければ、自分が紅魔館の主にならなければ!
不意に、耳を圧迫するような静寂が訪れた。
ついに咲夜が敗れたのだ。つまりこの館に残っているのは私一人、哀れな裸の王様となったのだ。そして巫女と出会った瞬間、上裸の王様となるのだ。
「・・・いやだ・・・まだ終われない・・・幻想郷一の変態として残りの人生を浪費するなんていやぁぁあああ!!!!」
ドアを蹴破り、全力で走る。こうなったら恥も外聞もない。逃げに逃げまくって相手が諦めるのを待つ、それしかない!!!待っててみんな・・!紅魔館は私が必ず守るから!!
視界が霞むほどの速度で館中を駆け巡る。しかし涙で滲んだ視界の所為か焦りの所為か、
「ふげっ!!!」
「うぉっ!?だ、大丈夫か?」
無様にカーペットに躓いて転んだ。強かに顔面をぶつけたが、気にせず立ち上がる、と
「い、痛そうだったけど平気か・・・?」
白黒の服を着た・・・魔法使い?がいた。
「・・・え?あなた」
誰?と言う前にすぐ近くから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「お嬢様に怒られる前に1ボムでも潰さないと~」
「黙ってお使いにでもでたら?」
幸か不幸か咲夜の戦っていた場所の近くに来ていたらしい。どうやら咲夜は戦闘不能寸前のまま、まだ戦っていたらしい。そして目の前には手の開いている人間!
「っ!!!あなた!!私の服の背中のとこ、二つ穴があいてるでしょ!?そこから羽根を引っ張って!!!」
「え?まあいいけど・・・」
「早く!!!!!」
クルリと後ろを向いて開放の瞬間を待つ。永遠にも感じられる時間の後、本来あるべき場所に羽根が収まるのを感じた。
「例を言うわ、白黒の人!この恩はいずれ――」
「そろそろ姿、見せてもいいんじゃない?お嬢さん」
「ああもう!とにかくありがとうね!!!」
「ああちょっと!!おまえの――」
待ってなさい博麗の巫女!!今までの苦悩、全部お前にたたきつけてやるわ!!!
「・・・・・・・・・何だったんだいまのは」
白黒の人もとい、霧雨魔理沙は一人頭を掻いていた。
「さっきのは誰だったんだ?館の主の子供とかか?まあ何でもいいけど・・・」
さっき走っていった少女の落とし物を拾い上げて呟いた。
「これって腰に巻いてたリボンだよな・・・コレ無しで飛び回ったりしたら大変な事になると思うんだけど・・・」
ほっこりしました
がんばれ!レミリア!
ショッギョ・ムッジョ!