布都が部屋に行くと神子が書き初めを行っていた。猫の様にしなやかな姿勢で着物の重さを感じさせない程流麗に筆を操っている。着ている着物は縮緬の手描き友禅で、年始の為に人里で三人分作らせた。神子は藍、布都は桜、屠自古は松葉。布都は動き難い服装だと邪魔っけに感じていたが、同じ着物を着ているとは思えない神子の動きを見ると、自分の精進が足りないだけだったと気付かされる。
神子が行っているのは宮廷の所謂吉書始ではなく、発起した心を文字に書き表す庶民の手習いである。白紙に書かれた『御配』という文字は控えめな大きさではあるけれど力強く、書いた者の固い意思が感じられる。
その文字を見た布都の両目から涙が零れた。何と素晴らしい言葉なのだ。他者に対する施しの精神がありありと見受けられる。和を以て貴しと為す。『みくばり』の『み』は三に通じ、即ち仏教の三宝による衆中の導きを示している。豊聡耳神子は幻想郷においても変わらず、人人を導く尊き存在であるという決意がはっきりと伝わってくる。
布都が涙を流して『御配』の文字を見つめていると、神子がはっとした様子で傍に立つ布都を見上げ、そして涙を流している様子にぎょっとして身を引いた。
「どうした、布都」
問われた布都は慌てて自分の書いた書き初めを背に隠した。そこには『不乱』と書かれていた。不出来な己を律し、決して揺らぐ事無く神子に仕えようと決意した二文字。それを神子に見てもらいたくて持ってきた。書いた時にはこれ以上無い決意だと思ったが、神子の『御配』を目にした途端、色褪せてしまった。『不乱』は神子に仕える自分にのみ向けられた言葉だ。あまりにも自分の事しか考えていない言葉ではないか。神子は己の不変と衆中の幸せを同時に願っているというのに。自分のちっぽけさが虚しくて、布都の目から益益涙が溢れ出る。
「太子様、その文字」
布都が『御配』と書かれた書き初めを指さすと、神子は布都の指先から守る様に体をずらして文字を隠した。
「布都、これはな」
神子の言葉が終わる前に、布都は体を投げ出して平伏してみせた。皆まで言われずとも自分は神子の言いたい事がはっきり分かっているのだという事を示したかった。
「感服致しました。この布都めに、どうぞその御配の心をお授けください」
「は、みくばり? その心?」
「はい! その決意、布都も頂きとう御座います」
「別に構わぬが」
「有難き幸せで御座います!」
神子が心配する程頭を地面に擦り付けた後、布都は自室に戻って早速書き初めを書き直した。
そうしてそれを居間に飾った。神子の『御配』も無理を言って飾らせてもらった。神子の堅固たる『御配』の右に、紙一杯を使って書かれた布都の力強い『御配』。そうして左には屠自古の刺々しい『五瓩減』。布都はその言葉の意味が分からなかった。だが屠自古に聞くのも悔しくて「愚かな決意だな」と知った風な言葉を吐いた。その時の屠自古の呪殺すら出来そうな恨みの籠もった目付きを、布都は永遠に忘れられそうにない。
三人の書き初めを飾った布都は居間に座してじっとそれを見続けている。もっと言えば神子の『御配』を。それを前にすれば、自分にも神子の素晴らしさが僅かなりとも乗り移る様な気がして。外からは冬の澄んだ冷気が流れ込んでくるが、神子と同じ着物を着て神子の書き初めを前にした布都の敵ではない。清清しい冷気に乗って微かに漂う硬質な墨の香りを胸に吸い込み、それが神子の書いた文字から流れてくるのだと考えると、自分が何か革新的な生き物に生まれ変わっていく様な心持ちになる。
しばらく書き初めを見上げていると、足音が聞こえてきて背後の障子が開いた。急いで振り返り立ち上がると、神子が嬉しそうに紙パックの牛乳とガラスのコップを持って立っていた。
「布都、要るかい?」
神子がコップに牛乳を注ぎ入れる。透明なコップが一瞬で白濁してしまった。布都は牛乳が嫌いだった。体が受け付けず、飲むと気分が悪くなる。しかし他ならぬ太子様の誘いは断れないと、その牛乳を受け取って、息を止めてから一息に飲み干した。喉の奥に落ちた牛乳は初めの内こそ刃物の様に研ぎ澄まされた冷たさを持っていたが、段段と冷感は失せて温かみを持ち始める。温かさを持つと粘性まで持ち始め、腹の底に下った牛乳が粘粘と変じていく気がした。その粘りついてくる様な嫌な心地が気持ち悪さとなって腹の辺りから喉を上ってきた。体の中身が粘粘と変質していく。吐き気が込み上げてくる。苦行だった。
何故太子様はこんな物を飲ませてきたのだろう。悲しみすら覚えつつ神子を見ると、神子が顔を近づけてきてどうだったと聞いてきた。
「美味しゅう御座いました」
神子からもらったものを不味いとは口が裂けても言えなかった。布都の答えを聞いた神子は満足した様子で頷いて「布都ももっと牛乳を飲んだ方が良い」と神妙に呟いた。それを聞いた途端、布都は自分が何かとんでもない思い違いをしている様な気になった。そう考えた理由は自分でも分からない。ただ今まで信じて、自分を支えてきた柱が牛乳の粘り気と一緒に腐り落ちていく様な心地がした。自分は何か間違えた。そんな強迫的な思いが胸に満ちた。急に寒気を感じて、辺りに満ちた冷気に身を震わせる。
「太子様」
「うん?」
「何故牛乳を?」
神子は困った様な顔をしてから、コップに再度牛乳を注ぎ、自分で呷った。
「御配だ」
「そうでございますか。有難く存じます」
布都には意味が分からなかった。だが分からぬからと言って聞き返す事は出来ない。先程御配の心に感服し、書き初めとして書く許しを賜ったというのに、それが早速分かりませんでは格好が付かない。何とか頭を捻って、神子に飲まされた牛乳の意味を考えたが終ぞ分からなかった。
唸っている内に神子は去ってしまって、後には布都一人が残された。白濁した液体の何処に御配の心が込められているのか分からない。神子の貴き精神が分からない事が、悲しく悔しかった。何か間違っている気がしてならない。その間違いを分からぬまま放っておけば、いずれ恐ろしい事になる気がした。
たんたんたんと庭から布団の叩く音が聞こえてくる。屠自古が布団を干しているのだろう。書き初めを見ると、神子の左に屠自古の文字が並んでいる。『五瓩減』と書かれた言葉の意味は分からない。それが悔しく、寂しい。『御配』の意味も『五瓩減』の意味も分からない。自分だけが除け者にされている気がした。たんたんたんという規則正しい布団叩きの音が否応無く布都の耳に入り込んでくる。その単調で寂しげな音が、意味の分からない二つの言葉を前に困惑する布都の心を苛んでいく。真っ黒な墨汁が部屋に滲んで、辺りが陰っていく様な心地がした。腹の底に溜まった粘粘とした不快感が眩暈の様にぐるぐると脳天まで上ってくる。何かが掛け違っている気がするものの、気持ち悪さで思考が上手く廻らない。
幾ら考えても分からないので、布都は居ても立っても居られずに厠へ行った。厠で用を足してみても、腹の底の不快感は出て行かなかった。お腹を抑えながら厠を出ると、寒風と共に居間の方角から笑い声が聞こえてきた。酷く猛猛しい笑いだった。寒風に身を震わせつつ居間へ行ってみると、青娥がお腹を抱えて笑っていた。いいっひっひと邪悪な声で狂人の様に笑い転げている。青娥の両足が癲癇の如く震えているのが酷く恐ろしい。
「青娥殿、如何致した」
布都が恐る恐る声を掛けると、青娥は無理矢理笑いを止めてしゃくり上げつつ、立ち上がった。
「これはこれは、布都様。ぶふっ」
挨拶をしたかと思えば、また笑い出す。お腹を抱えて畳の上を転げまわりながら、いいっひっひと邪悪な笑いを上げている。狂った様な笑いが部屋の中を震わしている。あまりの奇怪な様子に、布都は逃げ出したくなる程の恐怖を覚えたが、勇気を振り絞って拳を握り、再度青娥に問いかけた。
「何ぞ、おかしな事がありましたか?」
青娥が転がるのをぴたりと止めて、笑いの余韻で筋肉の痙攣する面を上げて、震える指先を書き初めへ向ける。
「この飾られているの、左から順に屠自古様、神子様、そして布都様がお書きになられました?」
「その通りだ。文字の癖を見抜かれたのか? それよりどうしてそうまで笑っている」
「いや、だってこれ」
そうしてまたいいっひっひと笑い出した。何故笑っているのか分からない。布都にはそれが恐ろしかった。一体何がおかしいのか。書き初めを見上げても何処にもおかしな所等見当たらない。何か間違っている筈だ。『御配』と『五瓩減』の意味、青娥の笑う理由、自分の認識と現実とが掛け違っている所為で理解が出来ていない筈なのだ。それなのにその掛け違っている何かが一向に分からない。分からない内に書き初めは飾られ、そして青娥が笑っている。それが酷く不吉で不愉快だった。
笑い転げる青娥の前で布都がじっと立ち尽くしていると不意に背後から抱きしめられた。見ずともそれが神子だと分かる。神子に抱きしめられた布都は、益益悲しくなって涙が溢れてきた。神子の励ます様な優しい抱擁が居た堪れない。笑い転げている青娥が分からない。飾られた書き初めの意味が分からない。掛け違った何かが分からない。
「気にする必要は無い」
神子の見透かす様な言葉で、布都の涙が更に溢れる。お腹の辺りに牛乳の不快感が蟠っている。真新しい着物が重たくお腹の辺りが窮屈だ。神子の温かさが申し訳ない。青娥の狂った様な笑いが脳みそを揺さぶっている。外から流れてくる空気が寒寒と胸に入り込んでくる。墨の微かな匂いが漂ってくる。何処からか餅の焼ける匂いが漂ってくる。屠自古の焼いているであろう餅を思い浮かべると、それは白く濁って粘ついていた。
神子が行っているのは宮廷の所謂吉書始ではなく、発起した心を文字に書き表す庶民の手習いである。白紙に書かれた『御配』という文字は控えめな大きさではあるけれど力強く、書いた者の固い意思が感じられる。
その文字を見た布都の両目から涙が零れた。何と素晴らしい言葉なのだ。他者に対する施しの精神がありありと見受けられる。和を以て貴しと為す。『みくばり』の『み』は三に通じ、即ち仏教の三宝による衆中の導きを示している。豊聡耳神子は幻想郷においても変わらず、人人を導く尊き存在であるという決意がはっきりと伝わってくる。
布都が涙を流して『御配』の文字を見つめていると、神子がはっとした様子で傍に立つ布都を見上げ、そして涙を流している様子にぎょっとして身を引いた。
「どうした、布都」
問われた布都は慌てて自分の書いた書き初めを背に隠した。そこには『不乱』と書かれていた。不出来な己を律し、決して揺らぐ事無く神子に仕えようと決意した二文字。それを神子に見てもらいたくて持ってきた。書いた時にはこれ以上無い決意だと思ったが、神子の『御配』を目にした途端、色褪せてしまった。『不乱』は神子に仕える自分にのみ向けられた言葉だ。あまりにも自分の事しか考えていない言葉ではないか。神子は己の不変と衆中の幸せを同時に願っているというのに。自分のちっぽけさが虚しくて、布都の目から益益涙が溢れ出る。
「太子様、その文字」
布都が『御配』と書かれた書き初めを指さすと、神子は布都の指先から守る様に体をずらして文字を隠した。
「布都、これはな」
神子の言葉が終わる前に、布都は体を投げ出して平伏してみせた。皆まで言われずとも自分は神子の言いたい事がはっきり分かっているのだという事を示したかった。
「感服致しました。この布都めに、どうぞその御配の心をお授けください」
「は、みくばり? その心?」
「はい! その決意、布都も頂きとう御座います」
「別に構わぬが」
「有難き幸せで御座います!」
神子が心配する程頭を地面に擦り付けた後、布都は自室に戻って早速書き初めを書き直した。
そうしてそれを居間に飾った。神子の『御配』も無理を言って飾らせてもらった。神子の堅固たる『御配』の右に、紙一杯を使って書かれた布都の力強い『御配』。そうして左には屠自古の刺々しい『五瓩減』。布都はその言葉の意味が分からなかった。だが屠自古に聞くのも悔しくて「愚かな決意だな」と知った風な言葉を吐いた。その時の屠自古の呪殺すら出来そうな恨みの籠もった目付きを、布都は永遠に忘れられそうにない。
三人の書き初めを飾った布都は居間に座してじっとそれを見続けている。もっと言えば神子の『御配』を。それを前にすれば、自分にも神子の素晴らしさが僅かなりとも乗り移る様な気がして。外からは冬の澄んだ冷気が流れ込んでくるが、神子と同じ着物を着て神子の書き初めを前にした布都の敵ではない。清清しい冷気に乗って微かに漂う硬質な墨の香りを胸に吸い込み、それが神子の書いた文字から流れてくるのだと考えると、自分が何か革新的な生き物に生まれ変わっていく様な心持ちになる。
しばらく書き初めを見上げていると、足音が聞こえてきて背後の障子が開いた。急いで振り返り立ち上がると、神子が嬉しそうに紙パックの牛乳とガラスのコップを持って立っていた。
「布都、要るかい?」
神子がコップに牛乳を注ぎ入れる。透明なコップが一瞬で白濁してしまった。布都は牛乳が嫌いだった。体が受け付けず、飲むと気分が悪くなる。しかし他ならぬ太子様の誘いは断れないと、その牛乳を受け取って、息を止めてから一息に飲み干した。喉の奥に落ちた牛乳は初めの内こそ刃物の様に研ぎ澄まされた冷たさを持っていたが、段段と冷感は失せて温かみを持ち始める。温かさを持つと粘性まで持ち始め、腹の底に下った牛乳が粘粘と変じていく気がした。その粘りついてくる様な嫌な心地が気持ち悪さとなって腹の辺りから喉を上ってきた。体の中身が粘粘と変質していく。吐き気が込み上げてくる。苦行だった。
何故太子様はこんな物を飲ませてきたのだろう。悲しみすら覚えつつ神子を見ると、神子が顔を近づけてきてどうだったと聞いてきた。
「美味しゅう御座いました」
神子からもらったものを不味いとは口が裂けても言えなかった。布都の答えを聞いた神子は満足した様子で頷いて「布都ももっと牛乳を飲んだ方が良い」と神妙に呟いた。それを聞いた途端、布都は自分が何かとんでもない思い違いをしている様な気になった。そう考えた理由は自分でも分からない。ただ今まで信じて、自分を支えてきた柱が牛乳の粘り気と一緒に腐り落ちていく様な心地がした。自分は何か間違えた。そんな強迫的な思いが胸に満ちた。急に寒気を感じて、辺りに満ちた冷気に身を震わせる。
「太子様」
「うん?」
「何故牛乳を?」
神子は困った様な顔をしてから、コップに再度牛乳を注ぎ、自分で呷った。
「御配だ」
「そうでございますか。有難く存じます」
布都には意味が分からなかった。だが分からぬからと言って聞き返す事は出来ない。先程御配の心に感服し、書き初めとして書く許しを賜ったというのに、それが早速分かりませんでは格好が付かない。何とか頭を捻って、神子に飲まされた牛乳の意味を考えたが終ぞ分からなかった。
唸っている内に神子は去ってしまって、後には布都一人が残された。白濁した液体の何処に御配の心が込められているのか分からない。神子の貴き精神が分からない事が、悲しく悔しかった。何か間違っている気がしてならない。その間違いを分からぬまま放っておけば、いずれ恐ろしい事になる気がした。
たんたんたんと庭から布団の叩く音が聞こえてくる。屠自古が布団を干しているのだろう。書き初めを見ると、神子の左に屠自古の文字が並んでいる。『五瓩減』と書かれた言葉の意味は分からない。それが悔しく、寂しい。『御配』の意味も『五瓩減』の意味も分からない。自分だけが除け者にされている気がした。たんたんたんという規則正しい布団叩きの音が否応無く布都の耳に入り込んでくる。その単調で寂しげな音が、意味の分からない二つの言葉を前に困惑する布都の心を苛んでいく。真っ黒な墨汁が部屋に滲んで、辺りが陰っていく様な心地がした。腹の底に溜まった粘粘とした不快感が眩暈の様にぐるぐると脳天まで上ってくる。何かが掛け違っている気がするものの、気持ち悪さで思考が上手く廻らない。
幾ら考えても分からないので、布都は居ても立っても居られずに厠へ行った。厠で用を足してみても、腹の底の不快感は出て行かなかった。お腹を抑えながら厠を出ると、寒風と共に居間の方角から笑い声が聞こえてきた。酷く猛猛しい笑いだった。寒風に身を震わせつつ居間へ行ってみると、青娥がお腹を抱えて笑っていた。いいっひっひと邪悪な声で狂人の様に笑い転げている。青娥の両足が癲癇の如く震えているのが酷く恐ろしい。
「青娥殿、如何致した」
布都が恐る恐る声を掛けると、青娥は無理矢理笑いを止めてしゃくり上げつつ、立ち上がった。
「これはこれは、布都様。ぶふっ」
挨拶をしたかと思えば、また笑い出す。お腹を抱えて畳の上を転げまわりながら、いいっひっひと邪悪な笑いを上げている。狂った様な笑いが部屋の中を震わしている。あまりの奇怪な様子に、布都は逃げ出したくなる程の恐怖を覚えたが、勇気を振り絞って拳を握り、再度青娥に問いかけた。
「何ぞ、おかしな事がありましたか?」
青娥が転がるのをぴたりと止めて、笑いの余韻で筋肉の痙攣する面を上げて、震える指先を書き初めへ向ける。
「この飾られているの、左から順に屠自古様、神子様、そして布都様がお書きになられました?」
「その通りだ。文字の癖を見抜かれたのか? それよりどうしてそうまで笑っている」
「いや、だってこれ」
そうしてまたいいっひっひと笑い出した。何故笑っているのか分からない。布都にはそれが恐ろしかった。一体何がおかしいのか。書き初めを見上げても何処にもおかしな所等見当たらない。何か間違っている筈だ。『御配』と『五瓩減』の意味、青娥の笑う理由、自分の認識と現実とが掛け違っている所為で理解が出来ていない筈なのだ。それなのにその掛け違っている何かが一向に分からない。分からない内に書き初めは飾られ、そして青娥が笑っている。それが酷く不吉で不愉快だった。
笑い転げる青娥の前で布都がじっと立ち尽くしていると不意に背後から抱きしめられた。見ずともそれが神子だと分かる。神子に抱きしめられた布都は、益益悲しくなって涙が溢れてきた。神子の励ます様な優しい抱擁が居た堪れない。笑い転げている青娥が分からない。飾られた書き初めの意味が分からない。掛け違った何かが分からない。
「気にする必要は無い」
神子の見透かす様な言葉で、布都の涙が更に溢れる。お腹の辺りに牛乳の不快感が蟠っている。真新しい着物が重たくお腹の辺りが窮屈だ。神子の温かさが申し訳ない。青娥の狂った様な笑いが脳みそを揺さぶっている。外から流れてくる空気が寒寒と胸に入り込んでくる。墨の微かな匂いが漂ってくる。何処からか餅の焼ける匂いが漂ってくる。屠自古の焼いているであろう餅を思い浮かべると、それは白く濁って粘ついていた。
霊の五瓩・・・
あまりそういうイメージないけど
そして意味がわからない つまりどういうことだってばよ...
五キロ減と読むらしい
しかし足がない分・・・これは…
青娥もそりゃ笑うわ
布都ちゃんがピュアなだけなんだ!
屠自古の瓩はグーグル先生に聞いたので理解したが、
神子のは最後まで気がつかなかったのが悔しい
布都の字を見て神子はどう思ったことやら。
不変ww
布都ちゃんの勘違いの内容を聞かされて赤面する神子ちゃんまだー?