「ニンジンだ。ニンジン喰え! 全力でてゐ食べろ」
「何をする? 何がしたい? あなたはにとりとかいったね。突然こんな夜更けに現れていったいなんなの?」
「ニンジン! ニンジン! ニンジン! 全部ニンジン!」
「いやいや、人の話を聞いて? ちょっと」
「ニンジンニンジンニンジンニンジン、私は今日畑で採れたてニンジンをてゐに食べさせたいと思った」
「……生のニンジンはあんまり好きじゃないの。もう少し、ゆでるとかしてよ」
「そういわれて、引き下がる私だと思う?」
「私は貴女のこと良く知らないし」
「そう? でも、些細な問題ね。そういわれると思ってゆがいたニンジンも持ってきたよ。あっちを見て」
「名にあれ? こんなに大量に茹でてきたの? ニンジンがピラミッドになってる」
「そうだよ。そう。全部ね。てゐに食べてもらいたいと思ってゆがいてきた」
「確かに、おいしそうだけど。多すぎじゃない。とても、食べきれない。他のウサギ妖怪にも食べさせていい?」
「ん? 月のウサギには食べさせないならいいよ」
「え? なんで、月のウサギは駄目なの?」
「ほら、夜に月が見えるじゃない」
「え? 何の話?」
「だからね。ニンジン食べると夜目がきくから月が良く見えてしまうよ」
「見えちゃ困るの?」
「困る困る。だって、ねえ。あれだもの」
「あれって、何?」
「あそこのあの娘が月での生活思い出して悲しくて泣いてしまうかもしれない」
「そうかな?」
「そうそう。そうに違いない」
「でも、さっきからニンジンスティックを鈴仙は食べてるよ」
「あ、本当だ! ……どうしよう」
「……ニンジン」
「そう、ニンジン」
「ニンジン! ニンジン!」
「もしかして、てゐは励ましてくれてるの?」
「もうこうなったら、こうするしかないでしょう!」
「そう。だね! ニンジン、ニンジン! ニンジン、ニンジン!」
「ニンジン、ニンジン! ニンジン、ニンジン!」
「ニンジン、ニンジン! ニンジン、ニンジン!」
「……ああこれ、来年まで確実にニンジンが主食だ」
「ニンジン! 何かニンジン言った?」
「ううん、なんでもないよ。今日はこんなにニンジンありがとうね」
「ニンジン、ニンジン! ニンジン、ニンジン!」
「ニンジン、ニンジン! ニンジン、ニンジン!」