Coolier - 新生・東方創想話

『大事な』予定

2013/12/15 17:27:19
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注意!

 この話を書いている私は、東方projectの原作を8作品しかプレイしておらず、旧作もやったことがありません。
 文章を書くのはまだ訓練中で、所々おかしな点があるかもしれません。(一応確認しています。)
 原作の設定を無視していたり、追加されている設定もあったりします。
 オリキャラが登場します。そのオリキャラが小悪魔といい感じだったりもします。

 そういった事が苦手、あるいは嫌いな方は戻る事をお勧めします。
















 昼の大図書館。今は誰も訪ねてこないので、静かである。
 あの強盗娘も最近は来ていないので、なおさらだった。非常に私は嬉しい。全く、あの女。何が「貸りていく」だ。確かにここは図書館だがそういう図書館ではない。というか、せめてでも貸りたらすぐ返せ。
 後々全部私に雑務が回ってくるじゃないか。

 人間の癖に……、ん、人間?

 私はこれまで忘れていた『大事な』予定を急に思い出し、焦る。整理しようと持っていた本を全部床にぶちまけ、駆け出した。残念ながら、その時は焦り過ぎて飛ぶという発想は出てこなかった。

 そして、私は机に座って黙々と魔導書を読む『今の』私の主であるパチュリー様の前に立って、近距離ながらも勢いで叫んでしまう。

 「パチュリー様っ!」

 そうすると、パチュリー様は不機嫌そうにして返す。

 「何よこあ、私は今読書中なの。静かにしてくれる?」

 その言葉に私は息の切れたままの声で言う。本当に体力がないな私。パチュリー様の事も言っていられない。

 「あのぉ……あしたぁ……。はぁはぁ……。」

 「こあ、取り敢えず落ち着きなさい。え、何?明日がどうかしたの?」

 私は、パチュリー様に言われたとおりに深呼吸をして、息を整えてからまた話し始める。

 「明日、お休みを頂きたいのですが。」

 「明日?何か用事でもあるのかしら。」

 「話すと少し長くなるのですが、よろしいですか?」

 「ええ、別に構わないわ。話して頂戴。」とパチュリー様が魔導書を閉じていうので、私は話し始める。

 「約束があるんです。」

 「約束?」

 パチュリー様は興味津々に聞いてくる。それに私は自身の記憶を掘り起こしながら答える。

 「私がパチュリー様の使い魔になる前、私は普通の悪魔として、人の人生を狂わせたり、力を与えたり、時には口に出すのもはばかわれる様な事もしていました。その中で、ちょうどパチュリー様に出会う前、私が最後に悪魔として契約を結んだ或る人間の男と交わした約束です。」

 「それはどんな約束なのかしら?」

 パチュリー様が子供のように瞳を輝かせて聞いてくる。そんなに興味を持つ話題ではないと思うのだが。でもパチュリー様がこうやって興味を持つのはとても珍しいことなので、私は話を続ける。

 「『彼が地獄から釈放された時に必ず迎えに行く』そんな約束です。」

 「ん?それはおかしくないかしら?悪魔と取引をした人間は死後……」

 パチュリー様はまさしく頭の上に?の字を浮かべて考えている。

 「確かにその通りです。でも、彼は違いました。私は彼が死んでからすぐに彼との契約を切ったんです。」

 「契約を切った!?」

 とても広く、深い知識をお持ちのパチュリー様としても、あり得ない事だった様だ。

 「そうです。だから彼は死後、悪魔に連れて行かれることはありませんでした。しかし私、悪魔に魂を売ったとして、彼は地獄で二百年の間、罰を受ける事となりました。その二百年の獄期が終わるのが明日なんです。」

 「成る程、明日は休んでいいわ。あと、一つ聞いていいかしら?」

 「はいなんでしょう?」

 パチュリー様が明日の事を認めてくれたのでよかった。引き続いてパチュリー様の追求に答える。

 「なぜ彼が死んだ後、貴女は契約を切ったのかしら?何か大きな理由でもあったの?」

 私は未だに錆びつかない二世紀前の過去のページをめくり、伝える。

 「それは、私が彼に呼び出された時、召喚された時にまで遡ります。私は召喚主であった彼に『貴方の望みは何?何でもかなえてあげるわ。ただし、死んだ後、貴方の魂を頂くけどね。』と問いました。
 すると彼は次に予想外の事を言い出します。彼が望んだのは、『私』でした。
 つまり、『私を嫁に取りたい』といった事でした。」

 「変わった人間もいるものね、それで貴女はどうしたの?」

 さすがに、今のは酷いと思う。私は悪魔、小悪魔である以前に、一人の女だ。♀だ。乙女なのだ。故にそんな事を言われたら傷つく。
 なんて言っていてはきりがないので、この辺りで思考を止めて、また語り出す。

 「私はその望みに応えてしまいました。」

 「でもそれが契約を切る理由にならないはずよ。」

 一日の間、ほとんど無表情でいるパチュリー様が顔に疑問を浮かべながら、再び聞いてくる。

 「なったんです。『なってしまった』んです。」

 「『なってしまった』?」

 「はい。非情な事に。私も初めはただ彼の嫁として、彼の死を待とうとしていました。でも、過ぎて行く彼との生活の中、彼の私への計り知れないほどの愛に私は負け、私は彼を『愛してしまった』んです。それは、悪魔としては絶対にあってはならない、タブーの他の何物でもありませんでした。しかし、私は人間である彼を『愛してしまった』んです。
 そして、彼が死ぬとき、彼は私にこう言いました。『良い人生だった。本当に有難う。もういい。充分だった。』と。私はこの彼の言葉を聞いた時、自分が悪魔として生まれた事、私が彼に悪魔として出会った事を心底悔みました。
 それと共に、私は自分がまだ彼と『悪魔の契約』でしか一緒に人生を歩んでいない事に、初めて『恥』を覚えました。
 悪魔であった私がそういった事を考えるのは滑稽かもしれませんが。」

 「そう……。」

 パチュリー様は悲しそうな眼をしてこちらを見ている。

 「でも私は彼のその言葉に何も返してあげられませんでした。その時、私にできたのは、徐々に失われて行く彼の手の暖かさを感じながら、ただただ悲しみに暮れ、泣き続けるだけでした。
 その罪滅ぼしにでもと、彼と私の契約を切ったんです。そして、人間を愛し、悪魔の契約を切った私は、魔界を追放され、小悪魔になりました。その後、パチュリー様に出会い、今に至ります。」

 私が話し終えると、パチュリー様は机に顔を向けてうつむいたまま泣いていた。パチュリー様が泣いている所を見たのはこれで二回目だ。そこまでして、私の事を想ってくれたのだろうか。
 何より、今はそっとしておいてあげよう。





次の日


 「それじゃあ気を付けて行ってくるのよ。」とパチュリー様。どうやら私の事を心配してくれているようだ。

 「はい!パチュリー様っ!」

 また癖で叫んでしまったが、その時パチュリー様は怒らなかった。

 「こ、こあ」

 「どうかしましたか、パチュリー様?」

 「そ、その……、この図書館の本も、増える一方でしょ。だから……、だからまた新しく一人司書を雇おうと思うのだけど……。
 貴女の知り合いに、『近日中に入れて、貴女と仲が良くて、貴女と一度、一生歩んだ事のある、人間の男』とか居たりしないかしら?」 

 パチュリー様……。パチュリー様はお世辞にも素直とは言えない。でも優しい。特にこういう時は。

 「有難うございます。パチュリー様。」

 「何の事かしら……。」

 照れている。パチュリー様が照れている。パチュリー様が照れるのは、泣く事の次に少ない。
 そんな、暖かなパチュリー様に気遣われ、私は紅魔館を出た。

 彼にあったらまず何をしようか。ただ黙って彼を抱きしめようか。それとも、昔の話をしようか。
 いや……、最初は彼に謝ろう。「あの時、何も答えてあげられなくて、ごめんなさい。」と。

 この幻想郷では、悪魔と人間でも、一緒に歩んでいける。
 その中には、『魂の取引』も『悪魔の契約』もない。あるのは、『純粋な愛』、それだけだ。
 彼と私の愛は、『死』や『種族の壁』でも隔てることはできなかったのだ。

 ふと、道端を見ると、そこには、二輪のイヌサフランが肩を寄せ合って、花を咲かせていた。
 どうも、今回が東方創想話初投稿の虎八です。
 
 気分を害された方、不愉快に思われ、ディスプレイを手で貫いてしまった方、私の文章力のせいで、話を伝えきる事のできなかった方にはお詫び申し上げます。「申し訳、御座いませんでした!orz」

 おかしな点や、誤字などがあれば、お教え願います。次の話を書く時の参考にさせて頂くので。


 そう言えば、イヌサフランの花ことばは、「永続」「頑固」「楽しい思い出」「悔いなき青春」「華やかな美しさ」とからしいですよ。

 それでは、次のお話のあとがきでお会いしましょう。最後まで読んで頂き有難うございました。

 わたしはこれでそれでは。
虎八
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コメント



0.130簡易評価
1.30名前が無い程度の能力削除
こあぁ…。これ小説やない、粗筋や…。
8.無評価名前が無い程度の能力削除
うーん、なんでしょうね…小悪魔の話にパチュリーが目を輝かせ、泣いてしまうのは若干違和感があったり。
まぁ東方の二次設定は原作準拠じゃない限り自由な場合が多いんで、そこは大丈夫かと。
ただ、最後のイヌサフランはいきなり出てきて私は「???」ってなりました。本文中に伏線らしきものがあったら、その意味合いが強くなったってのでは。
後書きのディスプレイ云々は不覚にも笑いましたw
そそわのコメントは辛辣な方も居ると思いますが、頑張ってください。
9.40名前が無い程度の能力削除
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